(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車のシートフレームに設けられるアームレストは、その先端部がシートの前方を向いた初期位置とシートの上方を向いた収納位置との間で角度を調整できるようにするための角度調整機構を備えたものが一般的である(例えば特許文献1〜3を参照)。従来のアームレストにおいて、その角度調整機構は、アームレストフレームの基端部に対してロックドラムやロックバネなどのロック部材が溶接結合で組み立てられていた(特許文献1,2)。このため、アームレストフレームは、その板厚を厚くしておく必要があり、700gを超える重いものであった。また、特許文献3のアームレストも角度調節機構がユニットになっておらず重量が重く嵩張るので、輸送コストが高く、アームレストのデザインが変更されるたびに、金型や製造ラインを新たに作り直す必要があった。
【0003】
したがって、アームレストは、複雑な機構を有する付加価値の高い角度調整機構については極めて軽量小型のものとして日本で組み立て、金型さえあれば比較的容易に行うことができるアームレストフレームの製造や、アームレスト全体の組み立て作業については海外など自動車組立工場の近くで行うといった生産態様に柔軟に対応できるものが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、各部材の板厚を薄くしてアームレストを軽量化することや、アームレストのデザインの変更などに合理的に対応することや、輸送コストなどを考慮したアームレストの生産態様にも柔軟に対応することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
シートフレームに取り付けられ、
初期位置から一定の角度調整可能範囲の間は、上方回動が可能で下方回動が不能な状態で、角度調整可能範囲を上方に超えると、収納位置までの上方回動及び初期位置までの下方回動が可能な状態で保持する、
機能を有するアームレスト機構部ユニットであって、
上限ストッパー受部及び下限ストッパー受部が設けられた取付金具と、
変位カム及び復帰カムが端面に設けられ、取付金具に固定結合されたロックドラムと、
一端がロックドラムの内方へ向かって延びる自由端で、他端がベースプレートに固定された、ロックドラムの外周面に密着状態で巻き付けられたもので、自由状態でロックドラムの外径よりも小さな内径を有するロックバネと、
上限ストッパー突部と下限ストッパー突部とユニット結合片Aとを具備し、内部にロックドラムに対して回動可能な起立筒部を設け、該起立筒部の外周面にロックバネの固定端側を所定巻き数だけ巻き付けてその固定端を固定するベースプレートと、
ロックドラム及びロックバネの内側に挿入される内筒部と、その内筒部にロックバネの自由端の位置を保持するバネガイドと、ユニット結合片Bとが設けられたカバープレートと
で構成されて、
これらの部材が、ベースプレートのユニット結合片Aとカバープレートのユニット結合片Bとを結合することにより一体化された構造をなし、
アームレストが初期位置から角度調整可能範囲にあるときは、アームレストの下方回動に対しては、ロックバネがロックドラムに対して締まり勝手になってその回動を不能にする一方、上方回動に対しては、緩み勝手になってその回動を可能にし、
アームレストが角度調整可能範囲を上方に超えると、ロックバネの自由端がロックドラムの変位カムで押されて緩まった状態でバネガイドに乗り上げて保持されることにより、その上方回動及び下方回動を可能にし、
アームレストが収納位置に達すると、ベースプレートの上限ストッパー突部と取付金具の上限ストッパー受部とが当接してその上方回動が規制され、
アームレストが下方回動で初期位置に達すると、ベースプレートの下限ストッパー突部と取付金具の下限ストッパー受部とが当接してその下方回動が規制されるとともに、ロックバネの自由端がロックドラムの復帰カムによってバネガイドによる保持が解かれてロック状態に復帰される
ことを特徴とするアームレスト機構部ユニット。
を提供することによって解決される。
【0007】
このアームレスト機構部ユニットは、アームレストの角度を変化させる回動機構、所定角度に調整されたアームレストが沈み込まないロック状態とするロック機構、及びアームレストの角度調整可能範囲を決めるストッパー機構などを全て備えたものとなっており、アームレストの角度調整に係る全ての機能がそのユニット内で完結している。また、ベースプレートとカバープレートを一体にかしめて、機構部を上下から包む構造としたことで、アームレスト機構部ユニットの板厚を薄くし、ユニット全体の軽量化が可能になると同時に、ユニット構造に合わせてた結合構造とすることでアームレストフレームの軽量化も可能となる。さらに、アームレストフレームに角度調整に係る機構を設ける必要がなくなるので、アームレストのデザインが変更された場合などには、アームレストフレームの金型さえ変更すればよく、製造ラインを新たに作り直す必要がなく合理的である。加えて、本発明のアームレスト機構部ユニットは、アームレストフレームを要することなく、ユニット単独で組み立てることができる。このため、アームレスト機構部ユニットについては日本で組み立て、アームレストフレームの製造や、アームレスト全体の組み立て作業については海外や自動車組立工場の近くで行うといった生産態様にも柔軟に対応することが可能になる。
【0008】
本発明のアームレスト機構部ユニットは、鋼板製のアームレストフレームの基端部に装着してかしめ結合などによって一体化させることにより、アームレストとなる。本発明のアームレスト機構部ユニットはアームレストフレームと、一金型、一工程でかしめて一体化させることができる。この後、アームレスト機構部ユニット及びアームレストフレームを表皮で覆い、表皮の内部に注入した発泡樹脂により全体を一体化させるとよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によって、各部材の板厚を薄くしてアームレストを軽量化することや、アームレストのデザインの変更などに合理的に対応することや、輸送コストなどを考慮したアームレストの生産態様にも柔軟に対応することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のアームレスト機構部ユニット(以下、「ユニット」と表記する。)の好適な実施態様について、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明のユニット10をアームレストフレーム20に装着している状態を示した斜視図である。
図2は、本発明のユニット10をアームレストフレーム20に装着した状態を示した斜視図である。
図3は、ユニット10及びアームレストフレーム20を表皮で覆い、表皮50の内部に注入した発泡樹脂60により全体を一体化させた状態を示した断面図である。以下においては、自動車のシートに備えられるアームレストを例に挙げて説明する。
【0012】
本実施態様において、ユニット10は、
図1に示すように、アームレストフレーム20の基端部に設けられた貫通穴21に装着して一体化させるものとなっている。ユニット10とアームレストフレーム20との一体化は、
図2及び
図3のかしめ結合部α(3箇所)で示すように、鋼板製のアームレストフレーム20の縁部に設けられた壁部の先端を内側に折り返し、ユニット10の立壁15eにかしめ結合することにより、アームレストフレーム20の軽量化を追求している。アームレストフレーム20の縁部の壁部は、かしめ結合部α以外の部分もその先端を内側に折り返しており(
図2におけるカール22を参照)、自動車が衝突した際でも安全なようにしている。
【0013】
図3に示すように、ユニット10及びアームレストフレーム20を表皮50で覆って、注入口61からアームレストフレーム20と表皮50との隙間に発泡樹脂60(発泡ポリウレタン)を注入して全体を一体化させることによりアームレスト10が完成する。後述するロックバネ13の固定端13bは、ユニット10における注入口61とは反対側に配されている。加えて、後述するベースプレート14には、
図4に示すように、空間部14eを設けており、この空間部14eから注入口61がのぞくようにしている。これにより、注入口61がシートバックの幅に収まる様にアームレストの回動中心に近付けて、アームレストの完成品をシートフレーム(シートバック)に取り付けた際に、注入口61が見えないようにすることが可能となっている。ユニット10は、その取付金具11がシートフレーム(図示省略)に対して固定され、アームレストが初期位置から一定の角度調整可能範囲にあるときは、上方回動を可能としながらも下方回動が不能な状態でアームレストを保持し、角度調整可能範囲を上方に超えると、収納位置までの上方回動及び初期位置までの下方回動が可能な状態でアームレストを保持する機能を有している。
【0014】
図4は、本発明のユニット10を分解した状態を示した斜視図である。本実施態様において、ユニット10は、
図4に示すように、上限ストッパー受部11a及び下限ストッパー受部11bが設けられた取付金具11と、変位カム12a及び復帰カム12bが端面に設けられたロックドラム12と、ロックドラム12の外周面に密着状態で巻き付けられるロックバネ13と、上限ストッパー突部14aと下限ストッパー突部14bとユニット結合片14c(ユニット結合片A)とを具備して内部に起立筒部14dが設けられたベースプレート14と、内筒部15aとバネガイド15bとユニット結合片15c(ユニット結合片B)と補助カム15dとが設けられたカバープレート15と、取付金具11とベースプレート14との間に配された樹脂ワッシャー16とで構成している。
【0015】
ロックバネ13は、ロックドラム12の外周面に密着状態で巻き付けられる。自由状態のロックバネ13の内径は、ロックドラム12の外径よりも僅かに(2〜5%)小さくなっている。ロックバネ13の一端は、内向きに折り曲げられており、ロックドラム12の変位カム12a及び復帰カム12bから作用を受ける自由端13aとなっている。一方、ロックバネ13の他端は、ベースプレート14に対して固定された固定端13bとなっている。本実施態様においては、バネ押さえ17をベースプレート14に対して結合固定してその間にロックバネ13の固定端13bを挟み込むことにより、固定端13bをベースプレート14に固定している。ロックバネ13の内周面は、複数のきざみ13cを設けて粗面化しており、ロックドラム12に対するロックバネ13のロック力を増大させている。
【0016】
ロックドラム12は、その嵌合凹部12cに取付金具11の嵌合凸部11cを嵌め合わせてかしめることにより取付金具11に対して結合固定され(
図3におけるかしめ結合部βを参照)、シートフレームに対して回動できない状態となる。一方、ベースプレート14及びカバープレート15は、ロックドラム12に対して回動することが可能な状態となっており、アームレストフレーム20と一体的に回動するようになっている。ベースプレート14の起立筒部14dの外周面は、ロックドラム12の外周面と連続して配され、ロックバネ13の固定端13b側が所定巻き数だけ巻き付けられる。これにより、固定端13bに全ての負荷がかからないようにしている。
【0017】
カバープレート15の内筒部15aは、ロックドラム12の内側に挿入される。内筒部15aには、ロックバネ13の自由端13aの位置を一定に保持するためのバネガイド15bが設けられている。ロックバネ13の自由端13aは、バネガイド15bの脇(バネガイド15bと補助カム15dの隙間)を通って内筒部15aの中心方向へ突出した状態とされる。ユニット10は、
図1に示すように、ベースプレート14のユニット結合片14cとカバープレート15のユニット結合片15cとをかしめ結合(かしめ結合部γを参照)することにより、上記部材を一体的に組み合わせた構造をなしている。
【0018】
本実施態様のユニット10の動作について説明する。
図5は、アームレストを回動操作しているときにおける、ロックドラム12の復帰カム12b及び変位カム12aと、ロックバネ13の自由端13aと、カバープレート15のバネガイド15b及び補助カム15dとの相対的位置関係を説明する展開図である。
図5(a)は、アームレストを下向きに回動操作して初期位置に達する直前の状態を、
図5(b)は、アームレストを初期位置から上向きに回動操作して角度調整可能範囲にある状態を、
図5(c)は、アームレストが角度調整可能範囲の上限位置に達した状態を、
図5(d)は、ロックバネ13の自由端13aがバネガイド15bに乗り上げた状態で保持された状態を、
図5(e)は、アームレストが収納位置に達した状態をそれぞれ示した図である。
【0019】
アームレストを初期位置から上向きに回動操作して角度調整可能範囲の上限位置までのいずれか(
図5(b))の状態にあるときは、アームレストの下方回動に対しては、ロックバネ13がロックドラム12に対して締まり勝手になって回動不可能な状態にある。一方、上方回動に対しては、ロックバネ13が緩み勝手になり、その自由端13aは、ロックドラム12の端面とバネガイド15bとの間の隙間内を、ロックドラム12の端面に対して移動する(
図5の紙面右向きに移動する)ことが可能な状態となる。
【0020】
図5(b)に示す状態からアームレストをさらに上方回動させ、
図5(c)に示すように、アームレストが角度調整可能範囲の上限位置に達すると、ロックバネ13は、その自由端13aがロックドラム12の変位カム12aで押されて緩まった状態となる。また、この直後、
図5(d)に示すように、カバープレート15の補助カム15dによって、ロックバネ13の自由端13aは、バネガイド15dに乗り上げた位置に案内され、その状態で保持される。すなわち、ロックバネ13の自由端13aは、バネガイド15bに緩む方向に押されたままの状態となっている。このため、
図5(d)の状態となった後は、アームレストは、上方回動及び下方回動の双方が可能な状態となる。
【0021】
図5(d)に示す状態からアームレストをさらに上方回動させ、
図5(e)に示すように、アームレストが収納位置に達すると、ベースプレート14の上限ストッパー突部14a(
図4)と取付金具11の上限ストッパー受部11b(
図4)とが当接し、アームレストはそれよりも上方に回動できない状態となる。
【0022】
図5(d)から
図5(e)までのいずれかの状態からアームレストを下方回動させて初期位置に移動させると、ベースプレート14の下限ストッパー突部14b(
図4)と取付金具11の下限ストッパー受部11b(
図4)とが当接し、アームレストはそれよりも下方に回動できない状態となる。またこのとき、
図5(a)に示すように、ロックドラム12の復帰カム12bによって、ロックバネ13の自由端13aが案内されて初期位置に復帰する。すなわち、ロックバネ13は、バネガイド15bによる保持が解かれた状態となり、下方回動が不可能なロック状態に復帰される。
【0023】
本実施態様のアームレストは、以上の手順により角度調整することが可能となっている。また、上の説明からは、アームレストの角度を変化させる回動機構、所定角度に調整されたアームレストが沈み込まないロック状態とするロック機構、及びアームレストの角度調整可能範囲を決めるストッパー機構など、アームレストの角度調整に係る機能の全てがユニット10で完結していることが分かる。したがって、アームレストフレーム20のデザインの変更などに容易に対応するだけでなく、輸送コストなどを考慮したアームレストの生産態様にも柔軟に対応することが可能になる。具体的には、ユニット10をA工場で組み立て、アームレストフレーム20をA工場とは異なるB工場で製造し、B工場で製造されたアームレストフレーム20の基端部に対してA工場で組み立てられたユニット10をA工場とは異なるC工場(若しくはB工場)で装着するといった生産態様にも対応することができる。この場合、A工場で組み立てられたユニット10を、装着工程が行われるC工場(若しくはB工場)まで輸送する際には、ユニット10のみを輸送すればよく、荷嵩を抑えることができるので、その輸送コストを抑えることができ、金型や生産ラインなどの設備も合理的にできる。