(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890676
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】積層型圧電アクチュエータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 41/083 20060101AFI20160308BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20160308BHJP
H01L 41/27 20130101ALI20160308BHJP
H02N 2/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
H01L41/083
H01L41/09
H01L41/27
H02N2/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-276495(P2011-276495)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-128020(P2013-128020A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391005824
【氏名又は名称】株式会社日本セラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】稲田 豊
【審査官】
境 周一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−101765(JP,U)
【文献】
特開2005−223013(JP,A)
【文献】
特開2000−049033(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0168106(US,A1)
【文献】
特開2008−130842(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0116768(US,A1)
【文献】
特開2004−158494(JP,A)
【文献】
特開平07−215761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミックス層と一層おきに外部電極に接続された内部電極とが交互に積層されてなる積層型圧電アクチュエータであって、
内部電極の外周部近傍の圧電セラミックス層が、ランタン、ネオジウム、カリウム、アルミニウム、ニオブ、ジルコニウムおよびマグネシウムから選ばれた1以上の成分を他の部分の圧電セラミックス層よりも多く含有し、
前記内部電極の外周部近傍の圧電セラミックスの密度が、前記内部電極の中央部近傍の圧電セラミックスの密度より小さいことを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。
【請求項2】
圧電セラミックス層と一層おきに外部電極に接続された内部電極とが交互に積層されてなる積層型圧電アクチュエータの製造方法であって、
圧電セラミックスの粉末をグリーンシートに成形する工程と、
前記成形されたグリーンシートに、電極ペーストを所定のパターンで塗布する工程と、
前記電極ペーストが塗布される所定のパターンの外周部に、前記圧電セラミックスの焼結体の密度を低下させる添加物を含有するドープペーストを塗布する工程と、
前記各ペーストが塗布されたグリーンシートを所定枚数積層し、一体化し、焼成する工程と、を有することを特徴とする積層型圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記添加物は、ランタン、ネオジウム、アルミニウム、ニオブ、カリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムから選ばれた1または複数の成分からなる化合物であることを特徴とする請求項2記載の積層型圧電アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電セラミックス層と一層おきに外部電極に接続された内部電極とが交互に積層されてなる積層型圧電アクチュエータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電セラミックスの厚み縦変位(d33モード)を利用した電気/機械変換素子が積層型圧電アクチュエータとして知られている。積層型圧電アクチュエータは、ミクロンオーダーでの変位量制御が可能であり、発生力が大きい等の特徴を有することから、精密加工装置や光学装置等の位置決め機構に使用されている。
【0003】
図3A〜
図3C、
図3Dは、それぞれ従来の積層コンデンサ型構造の積層型圧電アクチュエータ200を示す断面図および平面図である。また、
図3Aは、積層型圧電アクチュエータ200の積層方向に沿った断面による断面図である。積層型圧電アクチュエータ200は、圧電セラミックス層201と内部電極202a、202bとが交互に積層され、内部電極202a、202bは対向する側面に一層おきに露出した構造を有している。内部電極202aは、内部電極202aが露出している側面において外部電極203aによって接続されている。一方、内部電極202bは、内部電極202bが露出している側面において外部電極203bによって接続されている。
【0004】
図3B、
図3Cは、いずれも積層型圧電アクチュエータ200の積層方向に垂直な断面による断面図である。また、
図3Dは、積層型圧電アクチュエータ200の平面図である。積層型圧電アクチュエータ200では、内部電極202aと内部電極202bとの重なり部分が圧電活性部202cとなっている。また、内部電極202a、202bの一方のみが位置する部分および内部電極202a、202bが位置しない部分が圧電不活性部202dとなっている。このような積層型圧電アクチュエータ200を駆動すると、圧電活性部202cの変位に起因して圧電活性部202cと圧電不活性部202dとの間に応力が発生し、積層型圧電アクチュエータ200を破壊することが知られている。
【0005】
積層型圧電アクチュエータ200のこのような欠点を解消するために、内部電極を全体に設け、側面に露出した内部電極を一層おきに絶縁膜で覆い、絶縁膜の上から外部電極を設けた全面電極構造が提案されている。このような構造では内部電極が一層おきに外部電極に接続されている。また、圧電不活性部において圧電セラミックス層に内部電極と平行にスリットを形成し、このスリットによって圧電活性部と圧電不活性部との間に発生する応力を緩和する応力緩和型構造が提案されている。
【0006】
しかしながら、全面電極型構造の積層型圧電アクチュエータは、製造工程が複雑であり、かつ、圧電セラミックス層の厚みを薄くすることが困難である等の問題を有している。また、応力緩和型構造の積層型圧電アクチュエータについても、圧電セラミックス層の厚みを薄くすることが困難であるという問題がある。これに対して、積層型圧電アクチュエータ200は、積層コンデンサの製造工程をそのまま用いることができるために、生産性の面において優れている。したがって、積層型圧電アクチュエータ200は、圧電セラミックス層の厚みを薄くすることが容易であるという利点を有している。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているように、基本的には積層コンデンサ型構造を有するが、内部電極のパターンを調整することによって、応力緩和を図る積層型圧電アクチュエータが提案されている。
図4A〜
図4Cは、特許文献1に開示されている従来の積層型圧電アクチュエータ210を示す断面図であり、
図4Dは、積層型圧電アクチュエータ210を示す平面図である。
【0008】
積層型圧電アクチュエータ210では、圧電セラミックス層211と内部電極212a、212bとが交互に積層されている。そして、隣り合う2面の側面に一層おきに内部電極212aが露出し、内部電極212aが露出していない他の隣り合う2面の側面に内部電極212bが露出している。内部電極212aは、これが露出した側面において外部電極213aによって接続され、内部電極212bは、これが露出した側面において外部電極213bによって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−341838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、
図4Dからも明らかなように、断面上で対角に位置する2つの領域Sは、内部電極212a、212bのどちらの投影領域にも存在しない圧電不活性部212dに含まれる。この領域Sは内部電極212a、212bが重なり合う圧電活性部212cと接している。したがって、積層型圧電アクチュエータ210を駆動させると、領域Sと圧電活性部212cと境界部分で大きな応力が発生し、積層型圧電アクチュエータ210が破壊に至るおそれがある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、局部的に発生する応力を低減し、破壊を防止するとともに、長寿命化を実現できる積層型圧電アクチュエータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の積層型圧電アクチュエータは、圧電セラミックス層と一層おきに外部電極に接続された内部電極とが交互に積層されてなる積層型圧電アクチュエータであって、内部電極の外周部近傍の圧電セラミックスの密度が、前記内部電極の中央部近傍の圧電セラミックスの密度より小さいことを特徴としている。
【0013】
これにより、圧電活性部と圧電不活性部との境界部付近を低密度化し、動作時にはその部分の変位量を小さくすることができ、その境界部付近に発生する応力を低減できる。また、低密度部分ではクラックが進行しにくいため、圧電アクチュエータの破壊を防止し、その長寿命化を実現できる。
【0014】
(2)また、本発明の積層型圧電アクチュエータは、前記内部電極の外周部近傍の圧電セラミックス層が、ランタンおよびネオジウム等の希土類元素、カリウム、アルミニウム、ニオブ、ジルコニウムならびにマグネシウムから選ばれた1以上の成分を他の部分の圧電セラミックス層よりも多く含有することを特徴としている。
【0015】
これにより、内部電極の外周部近傍の圧電セラミックス層を組成する部分の焼結性を低くすることができ、低密度化することができる。そして、圧電アクチュエータの破壊を防止し、その長寿命化を実現できる。
【0016】
(3)また、本発明の積層型圧電アクチュエータの製造方法は、圧電セラミックス層と一層おきに外部電極に接続された内部電極とが交互に積層されてなる積層型圧電アクチュエータの製造方法であって、圧電セラミックスの粉末を含むグリーンシートを成形する工程と、前記成形されたグリーンシートに、電極ペーストを所定のパターンで塗布する工程と、前記電極ペーストが塗布される所定のパターンの外周部に、前記圧電セラミックスの焼結体の密度を低下させる添加物を含有するドープペーストを塗布する工程と、前記各ペーストが塗布されたグリーンシートを所定枚数積層し、一体化し、焼成する工程と、を有することを特徴としている。
【0017】
これにより、圧電活性部と圧電不活性部との境界部付近を低密度化し、動作時にはその部分の変位量を小さくすることができ、その境界部付近に発生する応力を低減できる。また、低密度部分ではクラックが進行しにくいため、圧電アクチュエータの破壊を防止し、その長寿命化を実現できる。
【0018】
(4)また、本発明の積層型圧電アクチュエータの製造方法は、前記添加物が、ランタンおよびネオジウム等の希土類元素、アルミニウム、ニオブ、カリウム、ジルコニウムならびにマグネシウムから選ばれた1または複数の成分からなる化合物であることを特徴としている。
【0019】
これにより、内部電極の外周部近傍の圧電セラミックス層を組成する部分の焼結性を低くすることができ、低密度化することができる。そして、圧電アクチュエータの破壊を防止し、その長寿命化を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧電活性部と圧電不活性部との境界部付近を低密度化し、動作時にはその部分の変位量を小さくし、そこに発生する応力を小さくできる。その結果、局部的に発生する応力を低減し、破壊を防止するとともに、長寿命化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図1B】本発明の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図1C】本発明の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図1D】本発明の積層型圧電アクチュエータを示す平面図である。
【
図1E】本発明の積層型圧電アクチュエータを示す正面図である。
【
図2A】パンチングシートの一例を示す平面図である。
【
図2B】電極ペーストを塗布されたパンチングシートの一例を示す平面図である。
【
図2C】各種ペーストを塗布されたパンチングシートの一例を示す平面図である。
【
図3A】従来の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図3B】従来の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図3C】従来の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図3D】従来の積層型圧電アクチュエータを示す平面図である。
【
図4A】従来の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図4B】従来の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図4C】従来の積層型圧電アクチュエータを示す断面図である。
【
図4D】従来の積層型圧電アクチュエータを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明は、以下に説明する具体的な形態に限定されるものではない。
【0023】
(積層型圧電アクチュエータの構成)
図1Aは、積層型圧電アクチュエータ10を示す積層方向に沿った断面による断面図である。積層型圧電アクチュエータ10は、圧電セラミックス層11と内部電極12a、12bとが交互に積層されている。圧電セラミックス層11は、圧電セラミックス材料の焼結体で形成されている。内部電極12a、12bは、積層型圧電アクチュエータ10の対向する側面10a、10bに一層おきに露出するように形成されている。
【0024】
図1B、
図1Cは、いずれも積層型圧電アクチュエータ10の積層方向に垂直な断面による断面図である。
図1B、
図1Cに示すように、内部電極12a、12bのパターンは、概ね積層型圧電アクチュエータ10の断面外形に相似しており、その一辺に側面への突出した領域を有する凸字状である。内部電極12a、12bの周縁では、圧電セラミックス層11が連続しており、一辺に開口を有するロ字状の外周部11a、11bが形成されている。なお、積層型圧電アクチュエータ10は、内部電極のパターンを問わず積層コンデンサ型構造の圧電アクチュエータに広く適用される。
【0025】
内部電極12aは、内部電極12aが露出している側面10a、10bで、外部電極13aに接続され、内部電極12bは、内部電極12bが露出される側面10aで外部電極13bによって接続されている。積層型圧電アクチュエータ10では、内部電極12a、12bは、それぞれ外部電極13a、13bと接続される部分のみが側面10bに露出している。このような構造とすることにより、耐湿性が高められる。
【0026】
圧電セラミックス層11としてはd33モードでの駆動特性に優れるPNN−PZT系の圧電セラミックスが、内部電極12a、12bとしては銅電極が、外部電極13a、13bとしては銀電極が、それぞれ好適に用いられる。
【0027】
また、
図1D、
図1Eは、それぞれ積層型圧電アクチュエータ10の平面図および正面図である。
図1Dでは、積層型圧電アクチュエータ10を端面から積層方向に見たときの、内部電極12a、12bの投影が重なる範囲を圧電活性部12cとして破線で表している。内部電極12aと内部電極12bとの重なり部分が圧電活性部12cとなり、内部電極12a、12bの一方のみが位置する部分および内部電極12a、12bが位置しない部分が圧電不活性部12dとなる。
図1Eでは、積層型圧電アクチュエータ10を正面から見たときの、積層方向に内部電極12a、12bの投影が重なる範囲を圧電活性部12cとして破線で表している。
【0028】
圧電セラミックス層11において内部電極12a、12bの外周部11a、11b近傍の圧電セラミックス層には、ランタンおよびネオジウム等の希土類元素、カリウム、アルミニウム、ニオブ、ジルコニウムならびにマグネシウムから選ばれた1以上の成分が他の部分よりも多く含まれており、中央部と比較し難焼結性となっている。
【0029】
なお、外周部11a、11b近傍の圧電セラミックスに含まれる上記の成分が中央部近傍の圧電セラミックスに含まれる上記の成分に対して、0.1重量%以上多いことが好ましい。外周部11a、11b近傍とは、圧電不活性部12dおよび圧電活性部12cと圧電不活性部12dの境界付近をいう。また、上記の中央部近傍とは、圧電不活性部12dの境界付近を除いた圧電活性部12cをいう。
【0030】
また、内部電極12a、12bの外周部11a、11b近傍の圧電セラミックスの密度は、内部電極12a、12bの中央部近傍の圧電セラミックスの密度より小さい。なお、上記の外周部近傍の圧電セラミックスの密度が中央部近傍の圧電セラミックスの密度に対して、5%以上小さいことが好ましい。
【0031】
内部電極12a、12bの外周部11a、11b近傍の密度が小さいことは、内部電極12a、12bの外周部と中央部との間で圧電セラミックス層11の焼結性が相違することに起因する。圧電活性部と圧電不活性部との境界部付近において圧電セラミックス層11が低密度化されている。
【0032】
これにより、その境界部付近の変位量が小さく、そこに発生する応力が小さくなるため、積層型圧電アクチュエータ10内でクラックが進行し難くなる。そして、積層型圧電アクチュエータ10の破壊を防止し、その長寿命化を実現できる。なお、上記の外周部近傍の圧電セラミックスの平均粒径が中央部近傍の圧電セラミックスの平均粒径に対して、50%以上小さいことが好ましい。
【0033】
(積層型圧電アクチュエータの製造方法)
次に、積層型圧電アクチュエータ10の製造方法の一例について説明する。まず、PNN−PZT系等の圧電セラミックスの粉末にバインダ等の有機物成分や溶媒を混合してスラリー化する。このようにして得られた混合物をドクターブレード法や押出成形法等の方法によって、シート状に成形する。続いて、得られた帯状のグリーンシートからパンチング等の方法によって所定形状のパンチングシートを得る。
図2Aは、パンチングシート21の一例を示す平面図である。
【0034】
パンチングシート21に、スクリーン印刷法等を用いて、所定のパターンでAg−Pdペーストまたは白金ペースト等の電極ペーストを塗布する。塗布された電極ペーストは、焼成後に内部電極12a、12bとなる。
図2Bは、所定のパターンに電極ペーストを塗布されたパンチングシートの一例を示す平面図である。
図2Bでは、説明をわかりやすくするために、1枚のパンチングシート21で代表させて電極パターン22が塗布された状態を示している。なお、印刷は、塗布の一種に含まれる。
【0035】
図2Cは、所定のパターンに各種ペーストを塗布されたパンチングシートの一例を示す平面図である。
図2Cの平面図に示すように、電極パターン22の外周部に、例えば、枠状の添加物塗布パターン23で、圧電セラミックスの圧電特性を低下させる添加物を含有するペースト(以下「ドープペースト」という)を塗布する。ドープペーストに含まれる成分は、圧電セラミックスの結晶サイズを小さくするものであることが好ましい。たとえば、ドープペーストには、ランタンおよびネオジウム等の希土類元素、アルミニウム、ニオブ、カリウム、ジルコニウムならびにマグネシウムから選ばれた1または複数の成分からなる化合物を主成分として含まれたものを用いることができる。
【0036】
これらの金属成分は焼成時に圧電セラミックス層11へと拡散するが、その拡散量の制御、つまりドープペーストの塗布量の制御は、例えば、スクリーンのメッシュを変える方法やドープペーストの粘度を調整する方法、印刷回数を変える方法等によって行うことができる。なお、ドープペーストの印刷工程と電極ペースト印刷工程の順番を入れ替えてもよい。また、ドープペーストの印刷と電極ペーストの印刷を繰り返し行ってもよい。
【0037】
電極ペーストおよびドープペースト(以下「各種ペースト」という)が塗布されていないパンチングシート21を数枚積層した後に、その上に、各種ペーストが塗布されたパンチングシート21を重ね合わせる。その際には、端面にまで電極ペーストが印刷されている辺が、対向する一対の辺に交互に位置するように各種ペーストが塗布されたパンチングシート21を重ね合わせる。そして、さらにその上に各種ペーストが塗布されていないパンチングシート21を数枚積み重ねて、熱プレス処理する。これによりパンチングシート21どうしが熱圧着されて、一体化される。
【0038】
得られた熱圧着体を、脱脂、焼成して焼成体を得る。この焼成時に、ドープペーストに含まれる金属成分(Al、Nb、K、La等)が、主にドープペーストが塗布された外周部の近傍の圧電セラミックス層11の一部へ拡散する。これにより、内部電極12a、12bの外周部12c、12dでは圧電セラミックスの焼結性が低下する。その一方で、内部電極12a、12bの中央部では原料組成がほぼ保持されるために、焼結が進行する。
【0039】
なお、LaやNdをドープした場合、圧電セラミックス結晶粒子の格子位置に置換され、異状粒成長を抑制し、粒子サイズを減少させる。また、AlやMgをドープした場合には、PZT等の圧電セラミックスと固相反応せず粒界にとどまることで粒成長を阻害し、圧電セラミックス層の焼結温度を上昇させ、その焼結体を低密度化すると考えられる。ただし、Alを少量添加した場合には、格子欠陥として酸素空孔を増やし、かえって粒成長を促進させ、焼結温度を低下させる。一方、Zr、Nbを添加し、PZTのZr、Nbの配合比が増加した場合には、物質の表面拡散が抑制され粒子サイズが減少し、圧電セラミックス層の焼結温度を上昇させ、その焼結体を低密度化すると考えられる。また、Kを添加した場合は、1000℃程度でKの揮発が進行するため、圧電セラミックス層内の粒成長は抑制されないが、焼結体の密度は低下すると考えられる。
【0040】
このように、積層型圧電アクチュエータ10では応力の集中する電極端面の密度を中央部と比較して低密度としている。その結果、変位量が小さいため発生する応力が小さくなり、クラックが進行しにくくなる。そして、積層型圧電アクチュエータ10は破壊し難くなり、その長寿命化につながる。
【符号の説明】
【0041】
10 積層型圧電アクチュエータ
10a、10b 側面
11 圧電セラミックス層
11a 外周部
12a、12b 内部電極
12c 圧電活性部
12d 圧電不活性部
13a、13b 外部電極
21 パンチングシート
22 電極パターン
23 添加物塗布パターン