(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890689
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】生分解性積層ラミネート紙
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20160308BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20160308BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20160308BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/10ZBP
C08L67/04
D21H27/30 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-2024(P2012-2024)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-141763(P2013-141763A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166649
【氏名又は名称】五洋紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】宗 敏康
(72)【発明者】
【氏名】小西 優也
(72)【発明者】
【氏名】中元 道徳
【審査官】
細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−301668(JP,A)
【文献】
特開平08−239461(JP,A)
【文献】
特開平09−272789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
C08L 67/04
D21H 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一の面に、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層を介して、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層を積層してなる生分解性積層ラミネート紙。
【請求項2】
乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層の厚さが5〜25μmである請求項1記載の生分解性積層ラミネート紙。
【請求項3】
ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層の厚さが5〜25μmである請求項1又は2記載の生分解性積層ラミネート紙。
【請求項4】
ポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)が、ポリ乳酸100重量部に対して他の生分解性脂肪族ポリエステル0〜80重量部からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性積層ラミネート紙。
【請求項5】
他の生分解性脂肪族ポリエステルが、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性積層ラミネート紙。
【請求項6】
紙基材の少なくとも一の面に、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層を介して、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステル組成物(B)の層を溶融共押出しによって積層してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の生分解性積層ラミネート紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性の積層ラミネート紙に関するものであり、特に、食品包装容器の組み立て時に容易にヒートシールが可能であり、必要に応じ、イージーピーラブルにすることが可能で、製造の容易な生分解性積層ラミネート紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品をはじめとした各種容器包装材用のラミネート紙に使用されるプラスチックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6などが使用されている。これらのプラスチックを使用した包装材用のラミネート紙は、使用後に自然環境下に廃棄されると分解されることなく残留し景観を損ない、また魚、野鳥等の生物の生活環境を汚染するなどの様々な問題を引き起こす。このような状況から、近年、環境保護に対する社会的認識の高まりと共にプラスチック加工全般に対して自然環境下に廃棄された際に経時的に分解、消失し自然環境に負荷をかけない、環境持続型のプラスチックラミネート紙が求められている。
【0003】
ポリ乳酸は自然環境下に棄却されても微生物によって容易に分解されること、及び自然産物よりの製造が可能なことから環境持続型のプラスチックとして利用が進んでいる。しかし、ポリ乳酸は、硬くて、脆く、その上、ラミネート加工に難点が多く、加工条件に大幅な制約が生ずる。
【0004】
ポリ乳酸の硬くて、脆いという問題を改善するために、組成物としては、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールからなるポリエステル可塑剤を含むポリ乳酸組成物(特許文献1)、ポリ乳酸と、ヒドロキシカルボン酸を含む脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールとの脂肪族ポリエステルとの組成物(特許文献2)、乳酸単位とポリエステル単位とを有する乳酸系ポリエステルからなるポリヒドロキシカルボン酸用の耐衝撃性付与剤(特許文献3)などがある。
フィルムやシートとしては、ガラス転移点の低い脂肪族ポリエステルを含む生分解性プラスチックフィルム又はシート(特許文献4)、特定のポリエステル樹脂と反応性アクリル樹脂を含むポリ乳酸系フィルム(特許文献5)などがある。
積層したフィルムの例としては、印刷性や隠蔽性を改良するために、無機充填剤を入れた乳酸系の脂肪族ポリエステルと脂肪族芳香族系のポリエステルの基材層に脂肪族ポリエステル共重合体と脂肪族・芳香族ポリエステルの組成物で被覆した2層フィルム(特許文献6)がある。
ラミネート紙としては、ポリ乳酸材、澱粉等の生分解性材料からなるフィルムを備えたポリ乳酸紙及びこれからなる食品容器(特許文献7)等が提案されている。また、ポリ乳酸系重合
体のラミネート紙箱組立時の糊付方法に関する技術(特許文献8)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−283557号公報
【特許文献2】特開平9−272789号公報
【特許文献3】特開2001−335623号公報
【特許文献4】特開平9−111107号公報
【特許文献5】特開2010−189536号公報
【特許文献6】特許第4776241号公報
【特許文献7】特開2010−189828号公報
【特許文献8】特開2005−29218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の組成物では、硬さや脆さが十分に改善されると耐熱性が大きく低下したり、加工時のポリ乳酸の分子量の低下やブリードアウトの問題を避けることが困難である。
【0007】
また、特許文献2、3及び4では、用途として包装用材料が挙げられているが、包装特性としては必ずしも十分ではない。また、特許文献5は特定物品の包装であり、特許文献6は印刷特性等に関するものである。更に、特許文献7の食品容器も必ずしも十分な性能を有しているとは云い難く、特許文献8は箱の組立に関するもので汎用性を欠く。
【0008】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、生分解性のあるポリ乳酸を使用して包装用のラミネート紙としての諸特性を満たすことのできる生分解性積層ラミネート紙を提供することにある。包装用の諸特性としては、ラミネート加工時の幅広い、ロスの少ない加工性、容器等の加工時に十分なヒートシール性を満たすこと、更に必要に応じ、ヒートシール部が容易に剥離できるイージーピーラブルにし得ること、更にまた、ラミネート紙の防水性、特に折り曲げ時に防水性の損傷のないことであり、本発明はこれらを満足し得る生分解性積層ラミネート紙をポリ乳酸系樹脂によって提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の特徴の第1は、紙基材の少なくとも一の面に、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層を介して、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層を積層してなる生分解性積層ラミネート紙である。
【0010】
本発明の特徴の第2は、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層の厚さが5〜25μmである請求項1記載の生分解性積層ラミネート紙である。
【0011】
本発明の特徴の第3は、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層の厚さが5〜25μmである請求項1又は2記載の生分解性積層ラミネート紙である。
【0012】
本発明の特徴の第4は、ポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)が、ポリ乳酸100重量部に対して他の生分解性脂肪族ポリエステル0〜80重量部からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性積層ラミネート紙である。
【0013】
本発明の特徴の第5は、他の生分解性脂肪族ポリエステルが、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性積層ラミネート紙である。
【0014】
本発明の特徴の第6は、紙基材の少なくとも一の面に、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層を介して、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステル組成物(B)の層を溶融共押出しによって積層してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の生分解性積層ラミネート紙である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生分解性積層ラミネート紙は、特定量の乳酸を含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層を基材である紙との接着層として使用したことにより、ラミネーション時の加工安定性が著しく改善されるとともに、ヒートシール性も良好で、必要に応じ、イージーピーラブルな生分解性積層ラミネート紙が提供される。また、本発明の生分解性積層ラミネート紙によれば、同一の積層ラミネート紙でヒートシール条件により完全なシール性(イージーピーラブルでないシール性)の個所とイージーピーラブルなシール性の個所を共存させることができる。また、積層ラミネート紙の防水性、特に折り曲げ時の防水性が損なわれることがなく、包装用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の生分解性積層ラミネート紙の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の生分解性積層ラミネート紙は、
図1に示すように、紙基材(P)の少なくとも一の面に、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層を介して、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層を積層してなることを特徴とする。
【0018】
紙基材(P)との接着層として使用される、乳酸を含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(A)としては、乳酸ユニットを他の二塩基酸とジオールから成る脂肪族ポリエステル(以下、単にポリエステルと称する場合がある)の重量を基準として、0.7〜10重量%、好ましくは0.8〜8重量%含有するものが好適である。
乳酸成分は乳酸2分子が環状化したラクタイドやポリ乳酸が挙げられるが、乳酸またはラクタイドが好ましい。
ポリエステル成分は二塩基酸とジオールから成る。二塩基酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸であり、これらは単独で又は2種以上併用しても良い。これらの中で好ましい二塩基酸はコハク酸である。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等であり、これらの中で好ましいジオールは1,4−ブチレングリコールである。
【0019】
ポリエステル成分と乳酸成分との使用割合は、ポリエステル成分である二塩基酸とジオールは等モル比率で高分子樹脂が得られやすいので、二塩基酸、ジオール各100単位に対して乳酸が2〜20単位である乳酸系脂肪族ポリエステルが好適に用いられる。
例えば、コハク酸、1,4−ブタンジオール、乳酸から成る乳酸系脂肪族ポリエステルの場合は、乳酸が2単位(2モル%:0.86重量%)のポリブチレンサクシネート樹脂は、ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準(PL)に適合することが確認されているので好都合である。一方、乳酸の上限は20単位(20モル%:7.96重量%)が好ましい。
また、二塩基酸とジオールは、等モル比率からジオールが過剰の1.5モル当量程度までの乳酸系ポリエステルが知られている。これをコハク酸、1,4−ブタンジオール、乳酸からなる乳酸系脂肪族ポリエステルに適用した場合、二塩基酸又はジオールの単位を基準に乳酸量は0.7〜10重量%程度が好ましく、0.8〜8重量%程度がより好ましい。乳酸系脂肪族ポリエステル中の乳酸の含有量が上記範囲外では、上層のトップ層であるポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層との接着性及び紙基材(P)との接着性が悪くなる。
【0020】
乳酸系ポリエステルを製造するには、二塩基酸とジオールと乳酸またはラクタイドとを所要量混合して加熱し乳酸成分を還流しながら生成する水を留去する。更に好ましい方法は、二塩基酸とグリコールを窒素気流下で加熱混合し、生成する水を留去して、脂肪族ポリエステルを得る。得られたポリエステルと所要のラクタイドをトルエンの存在下に加熱生成する水を留去して乳酸系ポリエステルを得る方法が好ましい。加熱は、水の留去を促進するために段階的に高め、最終的には減圧下に攪拌するのが良い。この時、エステル交換触媒として、酢酸鉛、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトオキシド、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛等を少量添加することができる。しかし、前述のPL基準に適合するには、マグネシウム、チタン、ゲルマニウム化合物が用いられる。得られた乳酸系ポリエステルは、GPCを用いたポリスチレン換算した重量平均分子量が、好ましくは5000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは100,000以上の重合体である。
【0021】
接着層としての乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層の厚さは、紙基材との接着性及びその上層のトップ層である、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステル(B)の層との接着性に大きく関係する。その最小厚さは5μmであり、これ以上であれば十分である。この接着層としての乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層は、トップ層である乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステル(B)の層と溶融共押出しする場合、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上であるときに、トップ層の厚さは8μmまで絞ることが可能で、これによりダイスの両端部のエアーギャップによる吐出幅の縮小も少なくなり、厚薄むらやサージングも減少するので好都合である。厚過ぎると経済性も悪く、且つトップ層のヒートシール温度に影響があるので25μmまでが好ましい。
接着層としての乳酸系脂肪族ポリエステル(A)の層の存在は、トップ層である、ポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層の脆さを改善し、ラミネート紙両端のトリミング時の欠けを改善してトリミング収率を高めることができる。
【0022】
接着層の上には、トップ層として、ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)の層が積層される。
本発明に用いられるポリ乳酸は、D−乳酸ユニット、L−乳酸ユニット、DL−ポリ乳酸ユニットを主たる構成成分とするD−ポリ乳酸、L−ポリ乳酸、DL−ポリ乳酸で、これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。D−ポリ乳酸、L−ポリ乳酸はそれぞれの重合体成分の内、構成する含有量の多い成分の性質が発現し、80モル%以上になると結晶性が高くなる。D−乳酸ユニットとL−乳酸ユニットとが50モル%近く混在すると、非晶性に近づく。なお、延伸性の面では、結晶性の高いポリ乳酸と結晶性の低いポリ乳酸とが適当に混合されるのが好ましい。
【0023】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、適度の製膜性や機械的性質の点で50,000〜500,000が好ましい。本発明のポリ乳酸は、上記乳酸ユニット以外に他の単量体ユニットを含んでも良い。他の単量体としては、エチレングリコールを始めとするジオール類、ポリエチレングリコールを始めとする重合体、シュウ酸、アジピン酸を始めとする二塩基酸、ラクトン類が挙げられる。これらの共重合量は10モル%以下が好ましい。
【0024】
配合される他の生分解性脂肪族ポリエステルは、ポリ乳酸以外の生分解性脂肪族ポリエステルで、二塩基酸とジオールから成る。二塩基酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸であり、これらは単独で又は2種以上併用しても良い。これらの中で好ましい二塩基酸はコハク酸である。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等であり、これらの中で好ましいジオールは1,4−ブチレングリコールである。この中にオキシカルボン酸を成分として含むことができる。
オキシカルボン酸の例として、乳酸を使用する場合は、接着層として使用される前述の乳酸系脂肪族ポリエステル(A)と同類となる。トップ層に使用される生分解性脂肪族ポリエステルと接着層に使用される乳酸系ポリエステルと同一物を使用することは、経済的にも好ましい。
生分解性脂肪族ポリエステルの製法は、接着層に使用される乳酸系脂肪族ポリエステルと類似である。
【0025】
トップ層としてのポリ乳酸単独、またはポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物(B)はヒートシール性に大きく関係する。
ポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルの配合割合は、ポリ乳酸100重量部に対して他の生分解性ポリエステル0〜80重量部が好適である。ポリ乳酸単独の場合はヒートシール温度は高く、イージーピーラブルのシール温度や幅が狭く、同一積層ラミネート紙で堅牢なシール性とイージーピーラブルなシール性を両立することはかなり困難である。これに対して、低融点の生分解性脂肪族ポリエステルの配合量を増すとシールの温度幅が広くなり、堅牢なシール性とイージーピーラブルなシール性の両立を実現することができる。しかし、配合量80重量部を越えると低融点化したり、また両立が困難となる傾向がある。
配合する場合は、混合組成物を溶融下に混練するのが好ましい。溶融混練は、一軸または二軸のスクリュー式加熱押出機で250℃以下の温度でノズルより押出しペレット化するか、直接スリット状のTダイよりカーテン状に押し出し、紙基材上にラミネートされる。
溶融共押出は、接着層用の樹脂と上層トップ層用の樹脂が別々の押出機で溶融した後、共押出ダイスより押出され、紙基材の上に積層される。
【0026】
スリット状のTダイより押し出されたカーテン状の溶融体は、繰り出しロールから繰り出された紙基材とともに、一定の温度に保たれた冷却ロール上にゴム製のタッチロールで挟み込まれて積層される。この時、ポリ乳酸単独またはこれに近い組成物では、Tダイの両端部分において一定の流量の確保が困難で、この部分を過剰に加熱すると焼けやすく安定した加工を行うことが困難である。
本発明の樹脂又は樹脂組成物に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、燐酸エステル、イソシアネート、カルボジイミド等の熱安定剤を添加することができる。また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、流動性パラフィン、エチレンビスステアリルアマイドのような滑剤等の加工助剤も使用可能である。この場合も、食品用途にはPL基準に適合するように考慮する必要がある。
基材となる紙としては特に制約されず、例えばクラフト紙、コート紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙等を基材とすることができる。
【0027】
積層ラミネート紙は包装に使用されることが多く、例えば、トレー、カップ、各種紙容器、オムツ等である。この内、容器類はヒートシールによって組み立てられることが多いので、優れたヒートシール性が要求される。また、一度組み立てられたものを開封する際に容易に剥離できる(イージーピーラブル)ことも重要な性質である。
ヒートシール性は、一定の温度に加熱した上下の2枚の金属板(熱盤)に、一定の圧力で一定の時間押え付けられ接着された2枚の試料の剥離強度によって測定され、これにより包装性能を推測することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
実施例1
(積層ラミネート紙の製造)
紙基材の繰り出し機より、104.7g/m
2 の上質紙を繰り出した。一方、ポリ乳酸(ユニチカ株式会社製、テラマック(登録商標)TE−2000C)100重量部に対して、コハク酸と1,4−ブタンジオール各100モル%に対して乳酸2モル%を共縮合させた乳酸系脂肪族ポリエステル(三菱化学株式会社製、GSPla(登録商標)FZ81PD)を25重量部混合した樹脂組成物を予備乾燥し、90mmの押出機で溶融してラミネート紙の上層のトップ層になるように共押出ダイスに接続し、一方、乳酸系脂肪族ポリエステル(三菱化学株式会社製、GSPla(登録商標)FZ81PD)を90mmの押出機により溶融し、紙基材と上記トップ層との間で接着層になるように共押出ダイスに接続した。共押出ダイスはダイス幅1350mm、ダイリップギャップ0.8mmであり、押出温度は260℃に設定した。上層トップ層の厚さ、接着層の厚さは、それぞれ15μmであった。
加工特性及びヒートシール性を、下記の方法で評価・測定した。結果を表1に示す。
【0030】
(加工特性の評価)
55
m/分の運転速度下で加工時のダイスの両端部からの溶融物の耳端部の変動、ラミネーションの幅、及び厚さ変動幅(厚さむら)を観察、測定した。尚、厚さ変動幅は、機械方向と幅方向とを測定し、最高と最低との差で示した。更に、耳端部のスリットの状況を観察して、割れ及びクズの発生状況を観察した。また、ラミネート加工の高速化を調べるため、運転速度を110m/分まで高めて運転状況を観察し、可能か不可能か、又は、可能であっても安定か、不安定かについて評価した。結果を表1に示す。
尚、ラミネート層と紙基材との接着性は、ラミネート層を剥がした場合に紙が剥がれる程度で評価し、完全に剥がれる◎、一部剥がれる○、剥がれるが密着している△、抵抗なく剥がれる×の基準により評価した。
【0031】
(ヒートシール性)
幅10mmの短冊状のラミネート紙2枚をラミネーション層同士を向かい合わせて、一定の温度に保たれた2枚の熱盤に3kg/cm
2 の圧力を2秒加えることのできる試験機(志賀包装機株式会社製)により、ラミネート層同士を熱接着した試料を作成した。この場合、2枚のラミネート紙のそれぞれの一端を熱盤よりはみ出させ非接着部分を作り、この両端を引張り試験機にかけて接着面に対して90
°の方向に引張ったときの剥離強度を測定した。引張速度は300mm/分であった。結果を表1に示す。
完全なシールの場合は紙層破壊となり、一方、ヒートシール層で剥離されると引張り強度が数値化されイージーピーラブルとなる。
【0032】
比較例1
接着層の乳酸系脂肪族ポリエステルを使用せず、上層のトップ層を実施例1のポリ乳酸(テラマック(登録商標)TE−2000C)100重量部に対して乳酸系脂肪族ポリエステル(
GSPla(登録商標)FZ81PD)25重量部混合した樹脂組成物からなる、30μm厚さの単層のラミネート紙を作成して、加工性とヒートシール性を評価・測定した。結果を表1に示す。
【0033】
比較例2
接着層の乳酸系脂肪族ポリエステルを使用せず、上層のトップ層をポリ乳酸(テラマック(登録商標)TE−2000C)からなる、30μm厚さの単層のラミネート紙を作成して、加工性とヒートシール性を評価・測定した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
接着層の乳酸系脂肪族ポリエステル(
GSPla(登録商標)FZ81PD)の層の厚さを8μmとした以外は実施例1と同様の方法で、積層ラミネート紙を作成して、加工性、ヒートシール性を評価・測定した。結果を表1に示す。
【0035】
実施例3
上層トップ層としてポリ乳酸(テラマック(登録商標)TE−2000C)を用い、厚さを15μmとした以外は実施例1と同様の方法で積層ラミネート紙を作成して、加工性、ヒートシール性を評価・測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
上記表1より、乳酸系脂肪族ポリエステルを紙基材と、トップ層のポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物との接着層として積層したラミネート紙は、ヒートシール温度が或る温度以上でラミネート層間の剥離強度が高まり測定可能となり、即ち、疑似接着状態になりイージーピーラブル状態を出現することができる。その後、十分な接着強度となり紙層破壊に至る。
即ち、同一のラミネート紙でヒートシール条件を調節することによって、ある場所では完全なシール性を有し、ある場所ではイージーピーラブルなシール性、即ち、疑似接着状態を作り出すことができる。特に、トップ層をポリ乳酸単独とした場合の接着層の有無によって顕著に変わる(実施例3と比較例2)。
【0038】
更に、接着層とトップ層とを共押出で生産すると顕著に加工性が改善され、特に押出ダイス耳端部の流れが改善されラミネーション幅が広がり、この部分の変動が安定し、スリット時の割れ、ゴミの発生がなく、収率よく全幅が利用できるので、歩留りが大きく改善されるとともに、加工速度を高めることができるので生産性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明によれば、ラミネーション時の加工安定性が著しく改善されるとともに、ヒートシール性も良好で、必要に応じ、イージーピーラブルとすることの可能な生分解性積層ラミネート紙が提供され、その有用性は極めて大である。
【符号の説明】
【0040】
(A)乳酸系脂肪族ポリエステル
(B)ポリ乳酸単独、又はポリ乳酸と他の生分解性脂肪族ポリエステルとの組成物
(P)紙基材