特許第5890705号(P5890705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890705
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20160308BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   F28F9/02 301D
   F28F9/22
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-39811(P2012-39811)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-174398(P2013-174398A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩成 太照
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】植野 泰典
(72)【発明者】
【氏名】北 加寿紀
(72)【発明者】
【氏名】濱本 浩
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−082168(JP,U)
【文献】 特開2008−292022(JP,A)
【文献】 実開昭54−017158(JP,U)
【文献】 特開平10−220919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0223739(US,A1)
【文献】 特開2008−267764(JP,A)
【文献】 特開2006−226563(JP,A)
【文献】 特表2008−528943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 9/22
F25B 39/02
F25B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる複数のチューブと、
上記チューブの上端部に連通する上側タンクと、
上記チューブの下端部に連通する下側タンクと、
上記上側タンク及び下側タンクの内部を仕切ることによって上記チューブを複数のパスに分けるための仕切部とを備えたヒートポンプ装置用の熱交換器において、
冷媒が上方へ向けて流れる第1上昇流パスと、該第1上昇流パスに連なって冷媒が下方へ向けて流れる第1下降流パスと、該第1下降流パスに連なって冷媒が上方へ向けて流れる第2上昇流パスと、上記第2上昇流パスに連なって冷媒が下方へ向けて流れる第2下降流パスとを少なくとも有し、
冷媒流れ方向最下流パスは、冷媒が下方へ向けて流れる下降流パスであり、
冷媒流れ方向最上流パスは、冷媒が上方へ向けて流れる上昇流パスであり、
上記第1上昇流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第1上昇流パス断面積は、上記第1下降流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第1下降流パス断面積よりも小さく設定され、
上記第2上昇流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第2上昇流パス断面積は、上記第1上昇流パス断面積よりも小さく設定され
上記第2下降流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第2下降流パス断面積は、上記第1下降流パス断面積よりも小さく設定されていることを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヒートポンプ装置で使用される熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空調装置として利用されるヒートポンプ装置は、圧縮機と、室外に配置される室外熱交換器と、膨張弁と、室内に配置される室内熱交換器とを備えており、空調用空気を室内熱交換器に送風して冷媒と熱交換させることによって所望温度の空調風を生成するように構成されている。
【0003】
ヒートポンプ装置の室外熱交換器としては、例えば、特許文献1、2に開示されているように、上下方向に延びる多数のチューブと、チューブの上端部及び下端部に連通する上側及び下側ヘッダタンクとを備えたものが知られている。チューブを上下方向に延びる姿勢とすることで、空調装置を暖房運転して室外熱交換器を蒸発器として作用させる際にチューブの外面に付着した凝縮水をスムーズに下方へ排水することが可能になる。
【0004】
特許文献1の熱交換器は、冷媒が全てのチューブに対し同方向に流れるように構成された、いわゆる1パスタイプの熱交換器である。1パスタイプの熱交換器では、冷媒の流速が低くなりがちで高い熱交換性能が得られないという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献2のように、上側及び下側ヘッダタンクの内部に仕切部材を設け、複数のチューブからなるパスを、冷媒流れ方向に複数連なるように設けることが考えられる。この構造の熱交換器はいわゆるマルチフロータイプと呼ばれ、冷媒が熱交換器の内部で上下に複数回ターンしながら流れて冷媒の流速が上昇し、よって、1パスタイプのものに比べて熱交換性能を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−304377号公報
【特許文献2】特開2001−141382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空調装置を冷房運転する場合には、上記室外熱交換器は凝縮器として作用するが、このとき、チューブが上下方向に延びていることから、冷媒の流れは上下方向となる。例えば、特許文献2のようなマルチフロータイプの熱交換器では、冷媒が、例えば冷媒流れ方向最上流のパスを下向きに流れた場合、最上流パスに隣接する下流側パスを上向きに流れることになり、これが繰り返される。
【0008】
冷媒が上向きに流れる上昇流のパスでは、冷媒の流れが重力に逆らう方向の流れであるため、冷媒の流速が遅くなる。この傾向は、特に凝縮した液冷媒に顕著に見られ、上昇流パスのチューブ内に液冷媒が滞留し易くなる。チューブ内に液冷媒が滞留すると、その滞留した液冷媒が他の冷媒の流れを妨げることになるとともに、熱交換器の放熱面積の縮小を招き、熱交換器全体として見たときに熱交換性能が低下してしまう問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チューブが上下方向に延びるマルチフロータイプの熱交換器において、冷媒の滞留を抑制することによって熱交換性能をより一層向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、上昇流パスの流路断面積を下降流パスの流路断面積をよりも小さくし、かつ、下流側の上昇流パスの流路断面積を上流側の上昇流パスに比べて小さくした。
【0011】
第1の発明は、上下方向に延びる複数のチューブと、
上記チューブの上端部に連通する上側タンクと、
上記チューブの下端部に連通する下側タンクと、
上記上側タンク及び下側タンクの内部を仕切ることによって上記チューブを複数のパスに分けるための仕切部とを備えたヒートポンプ装置用の熱交換器において、
冷媒が上方へ向けて流れる第1上昇流パスと、該第1上昇流パスに連なって冷媒が下方へ向けて流れる第1下降流パスと、該第1下降流パスに連なって冷媒が上方へ向けて流れる第2上昇流パスと、上記第2上昇流パスに連なって冷媒が下方へ向けて流れる第2下降流パスとを少なくとも有し、
冷媒流れ方向最下流パスは、冷媒が下方へ向けて流れる下降流パスであり、
冷媒流れ方向最上流パスは、冷媒が上方へ向けて流れる上昇流パスであり、
上記第1上昇流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第1上昇流パス断面積は、上記第1下降流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第1下降流パス断面積よりも小さく設定され、
上記第2上昇流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第2上昇流パス断面積は、上記第1上昇流パス断面積よりも小さく設定され
上記第2下降流パスを構成するチューブの流路断面積を合計した第2下降流パス断面積は、上記第1下降流パス断面積よりも小さく設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、仕切部によってマルチフロータイプの熱交換器が構成される。そして、第1上昇流パス断面積が第1下降流パス断面積よりも小さいので、第1上昇流パスのチューブを流れる冷媒の流速が高まる。これにより、第1上昇流パスのチューブの上下端の圧力差が大きくなるので、冷媒が下から上に流れ易くなり、冷媒の滞留が抑制される。
【0013】
また、冷媒流れ方向下流側の第2上昇流パス断面積を、上流側の第1上昇流パス断面積よりも小さくしているので、凝縮が進んだ第2上昇流パスでの冷媒の流速を高く維持することが可能になる。
【0014】
また、第2下降流パスにおける冷媒の流速を高めることが可能になる。
【0015】
また、熱交換器を凝縮器とする場合、冷媒流れ方向最下流のパスでは、凝縮が進んで殆どが液冷媒となる。この液冷媒を下降流とすることで、上昇流にした場合に比べて冷媒の滞留が起こりにくくなる。
【0016】
また、熱交換器を凝縮器とする場合、冷媒流れ方向最上流のパスには、スーパーヒート状態の冷媒が流入することが多い。このスーパーヒート状態の冷媒を上昇流としても滞留が起こりにくい。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、第1上昇流パス断面積を、下降流パスの流路断面積よりも小さくし、第2上昇流パス断面積を、第1上昇流パス断面積よりも小さくしたので、第1上昇流パスでの冷媒の流速を高めて冷媒の滞留を抑制できる。これにより、熱交換性能をより一層向上させることができる。
【0018】
また、第2下降流パス断面積を、第1下降流パス断面積よりも小さくしたので、熱交換器内部の冷媒の流速を全体として高めることができる。
【0019】
また、冷媒流れ方向最下流パスを下降流パスとしたので、最下流パスにおいて殆どが液冷媒となっている冷媒の滞留を効果的に抑制できる。
【0020】
また、冷媒流れ方向最上流パスを上昇流パスとしたので、スーパーヒート状態の冷媒を上昇流とすることができ、冷媒の滞留が起こりやすい領域を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態1にかかる熱交換器の正面図である。
図2】本発明の実施形態1にかかる熱交換器の側面図である。
図3】本発明の実施形態1にかかる熱交換器の底面図である。
図4】本発明の実施形態1にかかる熱交換器のパス割を示す概略図である。
図5】本発明の実施形態2にかかる図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる熱交換器1を示すものである。この熱交換器1は、自動車に搭載される空調装置の一部を構成するヒートポンプ装置の室外熱交換器として機能するものである。
【0024】
ヒートポンプ装置は、図示しないが、従来周知のものであり、圧縮機と、室外熱交換器1と、膨張弁と、室内に配設される室内熱交換器とを備えている。室内熱交換器には、空調用空気が送風機によって送風されるようになっている。空調用空気と冷媒とを熱交換させることによって所望温度の空調風を生成して室内に供給する。
【0025】
室外熱交換器1は、走行風が当たるように自動車の車体前端部に配設されている。また、室外熱交換器1には、図示しないクーリングファンによって外部空気が送風されるようになっている。
【0026】
図2にも示すように、室外熱交換器1は、コア10と、上側ヘッダタンク20と、下側ヘッダタンク30とを備えている。図1に示すように、コア10は、多数のチューブ11,11,…及びフィン12,12,…と、エンドプレート13,13とを備えている。これらチューブ11、フィン12及びエンドプレート13はアルミニウム合金製である。
【0027】
チューブ11は、流路断面の形状が外部空気の流れ方向に長い形状とされた扁平チューブである。チューブ11,11,…は、自動車に搭載された状態で上下方向(略鉛直)に延びるように、かつ、互いに水平方向に間隔をあけて配置されている。隣り合うチューブ11,11は、側面同士が略平行となるように配置されている。全てのチューブ11,11,…の流路断面の形状、及び流路断面積は同じである。
【0028】
フィン12は、外部空気の流れ方向から見て上下方向に連続する波形に成形された、いわゆるコルゲートフィンであり、隣り合うチューブ11,11の間に配設されている。つまり、コア10のチューブ11とフィン12とは交互に並んでいる。フィン12は、隣り合うチューブ11,11の側面にろう付けされている。
【0029】
コア10のチューブ11及びフィン12の並び方向両外端部には、エンドプレート13がそれぞれ配設されている。エンドプレート13は、外端部のフィン12に沿って上下方向に延びており、該フィン12にろう付けされている。
【0030】
上側ヘッダタンク20は、チューブ11及びフィン12の並び方向(略水平方向)に延びる円筒部材21と、円筒部材21の両端部を閉塞するキャップ22,22と、上側仕切板(仕切部)23とを備えている。円筒部材21、キャップ22及び上側仕切板23はアルミニウム合金製である。
【0031】
円筒部材21の周壁部には、その下側部分に、チューブ11の上端部を挿入するための複数のチューブ挿入孔21a,21a,…が円筒部材21の長手方向に所定の間隔をあけて形成されている。チューブ11の上端部はチューブ挿入孔21aに挿入された状態で、該チューブ挿入孔21aの周縁部にろう付けされている。
【0032】
また、円筒部材21の周壁部には、その上側部分に、上側仕切板23を外部から挿入するためのスリット21bが形成されている。スリット21bは、室外熱交換器1の左右方向(図1の左右方向)の中央部よりも右寄りに位置している。上側仕切板23はスリット21bに挿入された状態で該スリット21bの周縁部にろう付けされている。上側仕切板23によって上側ヘッダタンク20の内部空間が左右方向に2分割される。上側仕切板23よりも左側の空間が左側空間R1とされ、上側仕切板23よりも右側の空間が右側空間R2とされている。
【0033】
キャップ22は、円筒部材21の端部開口に嵌合するように形成され、該円筒部材21の開口周縁部にろう付けされている。
【0034】
下側ヘッダタンク30は、上側ヘッダタンク20と同じ基本構造を有しており、円筒部材31と、キャップ32,32と、第1下側仕切板(仕切部)33と、第2下側仕切板(仕切部)34とを備えている。円筒部材31の周壁部には、チューブ挿入孔31a,31a,…と、第1下側仕切板33が挿入される第1スリット31bと、第2下側仕切板34が挿入される第2スリット31cとが形成されている。
【0035】
第1スリット31bは、熱交換器1の左右方向の中央部よりも左寄りに位置している。また、第2スリット31cは、上記上側ヘッダタンク20の上側仕切板23よりも右寄りに位置している。
【0036】
第1下側仕切板33は第1スリット31bに挿入された状態で該第1スリット31bの周縁部にろう付けされ、また、第2下側仕切板34は第2スリット31cに挿入された状態で該第2スリット31cの周縁部にろう付けされている。
【0037】
第1下側仕切板33及び第2下側仕切板34によって上側ヘッダタンク20の内部が左右方向に3分割される。第1下側仕切板33よりも左側の空間が左側空間S1とされ、第1下側仕切板33と第2下側仕切板34との間の空間が中央空間S2とされ、第2下側仕切板34よりも右側の空間が右側空間S3とされている。
【0038】
図3にも示すように、下側ヘッダタンク30には、冷媒流入管36と、冷媒流出管37とが設けられている。冷媒流入管36は、下側ヘッダタンク30の第1下側仕切板33よりも左側の下部に取り付けられ、下側ヘッダタンク30の左側空間S1に連通している。冷媒流入管36は、左側空間S1の左右方向略中央部に位置している。冷媒流出管37は、下側ヘッダタンク30の第2下側仕切板34よりも右側の下部に取り付けられ、下側ヘッダタンク30の右側空間S3に連通している。冷媒流出管37は、右側空間S3の左右方向略中央部に位置している。冷媒流入管36及び冷媒流出管37は上下方向に延びている。
【0039】
図4に示すように、下側ヘッダタンク30の左側のキャップ32と第1下側仕切板33との間のチューブ11,11,…群により、冷媒が上方へ向けて流れる第1上昇流パスP1が構成されている。第1上昇流パスP1の流路断面積は、第1上昇流パスP1を構成する全チューブ11,11,…の流路断面積を合計した面積であり、本実施形態では、280mm以下である。第1上昇流パスP1は、冷媒流れ方向最上流パスである。
【0040】
第1下側仕切板33と上側仕切板23との間のチューブ11,11,…群によって第1上昇流パスP1の下流側に連なって冷媒が下方へ向けて流れる第1下降流パスP2が構成されている。第1下降流パスP2の流路断面積は、第1下降流パスP2を構成する全チューブ11,11,…の流路断面積を合計した面積である。
【0041】
上側仕切板23と第2下側仕切板34との間のチューブ11,11,…群によって第1下降流パスP2の下流側に連なって冷媒が上方へ向けて流れる第2上昇流パスP3が構成されている。第2上昇流パスP3の流路断面積は、第2上昇流パスP3を構成する全チューブ11,11,…の流路断面積を合計した面積であり、本実施形態では、170mm以下である。
【0042】
第2下側仕切板34と下側ヘッダタンク30の右側のキャップ32との間のチューブ11,11,…群によって第2上昇流パスP3の下流側に連なって冷媒が下方へ向けて流れる第2下降流パスP4が構成されている。第2下降流パスP4の流路断面積は、第2下降流パスP4を構成する全チューブ11,11,…の流路断面積を合計した面積である。第2下降流パスP4は、冷媒流れ方向最下流パスである。
【0043】
下側ヘッダタンク30の左側のキャップ32と第1下側仕切板33との離間寸法Aと、第1下側仕切板33と上側仕切板23との左右方向の離間寸法Bとを比較すると、寸法Aの方が短く設定されている。また、上側仕切板23と第2下側仕切板34との左右方向の離間寸法Cと、第2下側仕切板34と上側ヘッダタンク20の右側のキャップ22との離間寸法Dとを比較すると、寸法Cの方が短く設定されている。また、寸法Aと寸法Cとを比較すると、寸法Cの方が短く設定されている。さらに、寸法Bと寸法Dとを比較すると、寸法Dの方が短く設定されている。
【0044】
従って、第1上昇流パスP1の流路断面積は、第1下降流パスP2の流路断面積よりも小さく設定され、また、第2上昇流パスP3の流路断面積は、第2下降流パスP4の流路断面積よりも小さく設定されている。また、第2上昇流パスP3の流路断面積は、第1上昇流パスP1の流路断面積よりも小さく設定され、また、第2下降流パスP4の流路断面積は、第1下降流パスP2の流路断面積よりも小さく設定されている。
【0045】
上記のように寸法A〜Dを設定することにより、パスP1〜P4を構成するチューブ11の本数が決定される。これらチューブ11の全てが同じ断面積であるので、寸法A〜Dの変更によって各パスP1〜P4の流路断面積を容易に設定することが可能である。
【0046】
次に、上記のように構成された室外熱交換器1の使用状態について説明する。図示しないが圧縮機から吐出された冷媒は、室外熱交換器1の冷媒流入管36から下側ヘッダタンク30の左側空間S1に流入する。左側空間S1に流入した冷媒は、左側空間S1に連通するチューブ11、即ち、第1上昇流パスP1を構成するチューブ11に流入して上方へ流れた後、上側ヘッダタンク20の左側空間R1に流入する。左側空間R1に流入した冷媒は右側へ流れなら、第1下降流パスP2を構成するチューブ11に流入して下方へ流れた後、下側ヘッダタンク30の中央空間S2に流入する。中央空間S2に流入した冷媒は右側へ流れながら、第2上昇流パスP3を構成するチューブ11に流入して上方へ流れた後、上側ヘッダタンク20の右側空間R2に流入する。右側空間R2に流入した冷媒は右側へ流れながら、第2下降流パスP4を構成するチューブ11に流入して下方へ流れた後、下側ヘッダタンク30の右側空間S3に流入し、冷媒流出管37から流出する。
【0047】
このように冷媒が室外熱交換器1の内部で上下に複数回ターンしながら流れるようになっているので、冷媒の流速が上昇し、熱交換性能を高めることが可能になる。
【0048】
そして、第1上昇流パスP1の流路断面積が第1下降流パスP2の流路断面積よりも小さいので、第1上昇流パスP1のチューブ11を流れる冷媒の流速が高まる。これにより、第1上昇流パスP1のチューブ11の上下端の圧力差が大きくなるので、冷媒が下から上に流れ易くなり、第1上昇流パスP1における冷媒の滞留が抑制される。
【0049】
同様に、第2上昇流パスP3の流路断面積が第2下降流パスP4の流路断面積よりも小さいので、第2上昇流パスP3のチューブ11を流れる冷媒の流速も高まる。これにより、第2上昇流パスP3のチューブ11の上下端の圧力差が大きくなるので、冷媒が下から上に流れ易くなり、第2上昇流パスP3における冷媒の滞留が抑制される。
【0050】
さらに、第1上昇流パスP1、第1下降流パスP2、第2上昇流パスP3、第2下降流パスP4の順に凝縮が進んでいくので、液相冷媒の割合は冷媒流れ方向下流側のパスほど多くなる。
【0051】
このことに対応して、本実施形態では、第1上昇流パスP1よりも第2上昇流パスP3の流路断面積を小さくしているので、凝縮が進んだ第2上昇流パスP3での冷媒の流速を高く維持することが可能になる。また、第1下降流パスP2よりも第2下降流パスP4の流路断面積を小さくしているので、凝縮が進んだ第2下降流パスP4での冷媒の流速を高く維持することが可能になる。
【0052】
以上説明したように、この実施形態1にかかる室外熱交換器1によれば、第1上昇流パスP1の流路断面積を、第1下降流パスP2の流路断面積よりも小さくし、第2上昇流パスP3の流路断面積を、第1上昇流パスP1の流路断面積よりも小さくしたので、冷媒の流速を高めて冷媒の滞留を抑制できる。これにより、熱交換性能をより一層向上させることができる。
【0053】
第2上昇流パスP3においても同様に第2下降流パスP4よりも流路断面積が小さいので、第2上昇流パスP3での冷媒の流速を高めて冷媒の滞留を抑制できる。
【0054】
また、第2下降流パスP4の流路断面積を、第1下降流パスP2の流路断面積よりも小さくしたので、室外熱交換器1内部の冷媒の流速を全体として高めることができる。
【0055】
また、冷媒流れ方向最下流の第2下降流パスP4では、凝縮が進んで殆どが液冷媒となる。この液冷媒を下降流としているので、上昇流にした場合に比べて冷媒の滞留が起こりにくくなる。
【0056】
また、冷媒流れ方向最上流の第1上昇流パスP1には、スーパーヒート状態の冷媒が流入することが多い。このスーパーヒート状態の冷媒を上昇流にしているので、冷媒の滞留が起こりにくい。
【0057】
また、第1上昇流パスP1の流路断面積を280mm以下としたので、自動車の空調装置に用いる場合に冷媒の流速を適切に高めることができ、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0058】
また、第2上昇流パスP3の流路断面積を170mm以下としたので、このことによっても冷媒の流速を適切に高めることができ、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0059】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2にかかる室外熱交換器1のパス割りを示す概略図である。
【0060】
この実施形態2の室外熱交換器1は、パスの数が実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0061】
上側ヘッダタンク20には、左側仕切板24と右側仕切板25とが設けられている。左側仕切板24よりも左側の空間が左側空間R3とされ、左側仕切板24と右側仕切板25との間の空間が中央空間R4とされ、右側仕切板25よりも右側の空間が右側空間R5とされている。上側ヘッダタンク20に冷媒流入管36が設けられている。この冷媒流入管36は、上側ヘッダタンク20の左側仕切板24よりも左側の上部に取り付けられ、上側ヘッダタンク20の左側空間R3に連通している。
【0062】
また、下側ヘッダタンク30にも、左側仕切板35と右側仕切板36とが設けられている。左側仕切板35よりも左側の空間が左側空間S4とされ、左側仕切板35と右側仕切板38との間の空間が中央空間S5とされ、右側仕切板38よりも右側の空間が右側空間S6とされている。冷媒流出管37は、下側ヘッダタンク30の右側仕切板38よりも右側の下部に取り付けられ、下側ヘッダタンク30の右側空間S6に連通している。
【0063】
上側ヘッダタンク20の左側のキャップ22と上側ヘッダタンク20の左側仕切板24との間のチューブ11,11,…群により、冷媒が下方へ向けて流れる最上流の下降流パスP5が構成されている。
【0064】
上側ヘッダタンク20の左側仕切板24と下側ヘッダタンク30の左側仕切板35との間のチューブ11,11,…群によって下降流パスP5の下流側に連なって冷媒が上方へ向けて流れる上降流パス(本発明の第1上昇流パス)P6が構成されている。
【0065】
下側ヘッダタンク30の左側仕切板35と上側ヘッダタンク20の右側仕切板25との間のチューブ11,11,…群によって上昇流パスP6の下流側に連なって冷媒が下方へ向けて流れる下降流パスP7(本発明の第1下降流パス)が構成されている。
【0066】
上側ヘッダタンク20の右側仕切板25と下側ヘッダタンク30の右側仕切板38との間のチューブ11,11,…群によって下降流パスP7の下流側に連なって冷媒が上方へ向けて流れる上昇流パスP8(本発明の第2上昇流パス)が構成されている。
【0067】
下側ヘッダタンク30の右側仕切板38と右側キャップ32との間のチューブ11,11,…群によって上昇流パスP8の下流側に連なって冷媒が下方へ向けて流れる下降流パスP9(本発明の第2下降流パス)が構成されている。
【0068】
上側ヘッダタンク20の左側仕切板24と下側ヘッダタンク30の左側仕切板35との離間寸法Gと、下側ヘッダタンク30の左側仕切板35と上側ヘッダタンク20の右側仕切板25との離間寸法Hとを比較すると、寸法Gの方が短く設定されている。
【0069】
上側ヘッダタンク20の右側仕切板25と下側ヘッダタンク30の右側仕切板38との離間寸法Iと、下側ヘッダタンク30の右側仕切板38と右側キャップ32との離間寸法Jとを比較すると、寸法Iの方が短く設定されている。
【0070】
また、寸法Gと寸法Iとを比較すると、寸法Iの方が短く設定されている。さらに、寸法Hと寸法Jとを比較すると、寸法Jの方が短く設定されている。
【0071】
また、上側ヘッダタンク20の左側仕切板24と下側ヘッダタンク30の左側仕切板35との離間寸法Gと、上側ヘッダタンク20の左側仕切板25と下側ヘッダタンク30の右側仕切板38との離間寸法Iとを比較すると、寸法Iの方が短く設定されている。
【0072】
尚、上側ヘッダタンク20の左側のキャップ22と上側ヘッダタンク20の左側仕切板24との離間寸法Fは、各寸法G〜Jよりも長く設定されている。
【0073】
以上説明したように、この実施形態2にかかる室外熱交換器1によれば、上昇流パスP6の流路断面積を、下降流パスP7の流路断面積よりも小さくし、上昇流パスP8の流路断面積を、上昇流パスP6の流路断面積よりも小さくしたので、冷媒の流速を高めて冷媒の滞留を抑制できる。これにより、熱交換性能をより一層向上させることができる。
【0074】
上昇流パスP8においても同様に下降流パスP9よりも流路断面積が小さいので、冷媒の流速を高めて冷媒の滞留を抑制できる。
【0075】
尚、上記実施形態では、本発明を車両用空調装置の室外熱交換器1に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、家庭用の空調装置や、各種冷凍装置等の熱交換器にも適用することが可能である。
【0076】
また、本発明は、室内熱交換器にも適用することができる。
【0077】
また、上記室外熱交換器1は、蒸発器として使用する場合と凝縮器として使用する場合の両方で冷媒の流れ方向を同方向とするように構成されたヒートポンプ装置に適用するのが好ましい。室外熱交換器1に流通する冷媒の流れ方向を変えないように構成されたヒートポンプ装置としては、例えば特開2012−6514号公報に開示されている。このヒートポンプ装置の室外熱交換器として本発明にかかる熱交換器1と使用することで、実施形態1の場合、膨張弁を経て減圧された冷媒が冷媒流入管36から下側ヘッダタンク30に流入した後、第1上昇流パスP1、第1下降流パスP2、第2上昇流パスP3、第2下降流パスP4の順に流れる。このとき、第1上昇流パスP1及び第2上昇流パスP3の流路断面積を、それぞれ第1下降流パスP2及び第2下降流パスP4に比べて小さくしていることから、第1上昇流パスP1及び第2上昇流パスP3での液冷媒の流速を高めて冷媒の滞留を抑制することができる。これにより、室外熱交換器1の空気通過面の温度分布を均一に近づけることができ、部分的な着霜を抑制することができる。よって、蒸発器とする場合にも熱交換性能を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明にかかる熱交換器は、例えば、車両用空調装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 室外熱交換器
10 コア
11 チューブ
12 フィン
13 エンドプレート
20 上側ヘッダタンク
23 仕切板(仕切部)
30 下側ヘッダタンク
33,34 仕切板(仕切部)
P1 第1上昇流パス
P2 第1下降流パス
P3 第2上昇流パス
P4 第2下降流パス
図1
図2
図3
図4
図5