特許第5890714号(P5890714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890714大型ディーゼルエンジンのための電子制御式燃料噴射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890714
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】大型ディーゼルエンジンのための電子制御式燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 47/00 20060101AFI20160308BHJP
   F02M 61/10 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   F02M47/00 P
   F02M47/00 F
   F02M47/00 B
   F02M47/00 A
   F02M47/00 C
   F02M61/10 G
   F02M61/10 Q
   F02M61/10 P
   F02M61/10 R
   F02M47/00 E
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-67071(P2012-67071)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-202408(P2012-202408A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】11159584.9
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512043740
【氏名又は名称】オエンメティ・オフィチネ・メカニケ・トリノ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】OMT Officine Meccaniche Torino S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・コッポ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・ネグリ
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−280958(JP,A)
【文献】 特開2000−240524(JP,A)
【文献】 特開2001−159379(JP,A)
【文献】 特開2006−170153(JP,A)
【文献】 特開2009−222057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 47/00
F02M 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ディーゼルエンジンのための電子制御式燃料噴射装置であって、
燃料供給ライン(26)に接続されると共に円錐形バルブシート(28)が設けられたデリバリーチャンバ(24)を有する本体(22)を備え、
上記デリバリーチャンバ(24)を通って伸びると共に、上記円錐形バルブシート(28)と協働する円錐形シール面(32)を有するニードル(30)を備え、上記ニードル(30)は、上記円錐形シール面(32)が上記円錐形バルブシート(28)に接する閉鎖位置と、上記円錐形シール面(32)が上記円錐形バルブシート(28)から離れて間隔を空けられる開放位置との間で縦軸(A)に沿って移動可能であり、上記デリバリーチャンバ(24)の中の油圧が、上記ニードル(30)をその開放位置の方向に押す第1油圧力を生成し、
流入量制限器(48)を介して上記燃料供給ライン(26)に接続されると共に、流出量制限器(52)を介して排気ライン(50)に接続された制御チャンバ(44)を備え、この制御チャンバ(44)内の油圧が、上記ニードル(30)をその閉鎖位置の方向に押す第2油圧力を生成し、
上記制御チャンバ(44)と低圧容量(14)との間で上記排気ライン(50)を介しての油圧連絡を選択的に開放および閉鎖するための電子制御式制御バルブ(54)を備える燃料噴射装置において、
上記流入量制限器(48)は、上記ニードル(30)の完全閉鎖位置に対応するチョーク位置と、上記ニードル(30)の初期開放に対応する非チョーク位置との間で移動可能である可変チョーク部(60)を有すると共に、
上記流入量制限器(48)は、上記ニードル(30)と共に移動自在な少なくとも1つのオリフィス(84,104,106)を有しており、上記可変チョーク部(60)は、上記ニードル(30)と共に移動自在な表面(32,100)と、上記本体(22)に対して固定された表面(28,96)との間に形成される間隙(88,108)を有していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
上記流入量制限器(48)は、上記円錐形シール面(32)を設けている上記ニードル(30)のエリアに形成された、少なくとも1つのオリフィス(84)を有することを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
上記オリフィス(84)は、上記ニードル(30)内に形成された細長い穴(86)に通じている半径方向内側の端部を有しており、この細長い穴(86)は、上記制御チャンバ(44)内に開口する上端を有していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
上記オリフィス(84)は、上記円錐形シール面(32)が上記バルブシート(28)に接するエリアの真上に、上記ニードル(30)の上記円錐形シール面(32)に開口する半径方向外側の端部を有していることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
上記可変チョーク部(60)は、上記ニードル(30)の上記円錐形シール面(32)と上記円錐形バルブシート(28)との間に形成された間隙(88)により形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
制御ピストン(90)が、スリーブ(92)内にスライド自在に案内されると共に、上記ニードル(30)と共に移動自在であり、かつ、この制御ピストン(90)は、上記制御チャンバ(44)と上記ニードル(30)との間に配置されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
上記流入量制限器(48)は、上記スリーブ(92)の円筒形内部表面(96)に形成された第1環状溝(94)と、上記制御ピストン(90)の円筒形外部表面(100)に形成された第2環状溝(98)とを有することを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項8】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
上記第1環状溝(94)は、上記スリーブ(92)に形成された第1オリフィス(102)によって上記燃料供給ライン(26)に接続されており、上記第2環状溝(98)は、制御ピストン(90)に形成された第2オリフィス(104)および第3オリフィス(106)によって上記制御チャンバ(44)に接続されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項9】
請求項に記載の燃料噴射装置において、
上記ニードル(30)の上記閉鎖位置で、上記第1環状溝(94)および上記第2環状溝(98)は互いにオフセットされており、上記ニードル(30)の初期開口の位置で、上記第1環状溝(94)および上記第2環状溝(98)は少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
上記可変チョーク部(60)は、上記スリーブ(92)の上記円筒形内部表面(96)と上記制御ピストン(90)の上記円筒形外部表面(100)との間に形成された環状間隙(108)によって形成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ディーゼルエンジンのための電子制御式燃料噴射装置に関する。本発明は、特に、例えば舶用推進のためのディーゼルエンジン等の大型2ストロークディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムのための燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コモンレール高圧噴射システムは、高圧アキュミュレータ(コモンレール)の燃料を加圧するよう設計されているポンプ(通常、一定の排気量を有する)を備え、燃料噴射装置を提供している。この燃料噴射装置は、バルブシートと、燃料噴射装置本体において閉鎖位置と開放位置との間を移動できるニードルとを備えている。このニードルの位置は、2つの油圧力の強度によって決定され、この油圧力は、影響を受ける適切な表面(影響面)への加圧流体の作用によって生成される。
【0003】
バルブシート上流のデリバリーチャンバの加圧燃料は、バルブシートからニードルを上昇させる方向に作用する。従って、この加圧燃料は、開放方向に作用する。電子制御式制御バルブは、制御チャンバの油圧を調節し、この制御チャンバは、燃料噴射装置を閉じる方向に作用する力を生成する。制御バルブをアクティブにすることは、インジェクタシートを開放するよう作用する力がインジェクタシートを閉じるよう作用する力に勝る点まで制御チャンバの圧力を減少させて、ニードルをバルブシートから上昇させ、そして燃料噴射させる。
【0004】
電子制御式燃料噴射装置の動作原理は、制御チャンバが流入量制限器によって高圧ラインに接続されており、そして、流出量制限器によって排気ラインに接続されていることを想定している。
【0005】
流入量制限器および流出量制限器の大きさは、制御バルブが開放されたときに、閉じる方向の力が開放する方向の力よりも小さくなることを確実にするのに十分低い値に、制御チャンバの圧力が下がることができるように選択されなければならない。これが起こった時点で、ニードルはインジェクタシートを開放し、その結果、インジェクタシート下流のチャンバ(いわゆるサック(sac))への燃料移動を可能にして、燃料ホールを通って、燃料が燃焼チャンバに注入される。
【0006】
燃料噴射装置が開くと、上記サックは、利用できるレール圧力のかなりの部分に加圧されて、その結果、開放する方向に作用する力が増加する。これは、高圧燃料の影響を受ける表面が、ニードルの断面積の全てを覆うからである。
【0007】
燃料噴射装置を閉じる必要があるとき、制御バルブの位置はリセットされ、その結果、制御チャンバと低圧力燃料ラインとの間の接続を無効にする。制御チャンバの圧力は再び上昇するが、上記で説明された理由のため、ニードルが再びインジェクタシートの方向に移動し始める前に、開放段階の開始に必要な圧力よりもかなり高い値に達する必要がある。
【0008】
閉鎖段階中のニードルの速さは、技術的要求により制約され、望ましい値は、制御チャンバのニードルの断面積に対する流入量制限器の大きさの適正化により得ることができる。
【0009】
燃料噴射装置を開放し始めるための制御チャンバに必要な減圧を達成するために変えることができる唯一のパラメータは、流出量制限器の大きさである。開放方向の圧力影響エリアと、ニードルを閉じるときの閉鎖方向の圧力影響エリアとの間の差が大きくなればなるほど、流出量制限器を大きくするべきである。
【0010】
これは、流出量制限器の大きさが、ニードルシート直径と制御チャンバ直径との比に近づくにつれて増加することを意味している。
【0011】
より大型の流出量制限器は、制御バルブ設計および噴射効率に関してより多くの問題をもたらす。なぜなら、これらの応用に用いられる一般的な2方向ポペットバルブにおいて、制御チャンバの圧力は、バルブを開放する方向に作用するからである。より大型の流出量制限器は、より大きなポペットを必要とし(そうでなければ、バルブを通過することが主な制限となる)、これは、制御チャンバの圧力の影響面をより大きくする原因となる。結局、これは、(命令信号がないときにバルブを閉じた状態に維持するために)バネに対する力の要求と、このバネの力に打ち勝つために必要なアクチュエータに対する力の要求とを増加させる。これはまた、より大型の構成要素を用いる必要があることを意味している。そして、このことは、エンジンに対する幾何学的な制約と、制御バルブの早さの要求(例えば、より大きくより強いソレノイドは通常、より遅い)とに起因して、必ずしも受け入れられるとは限らない。
【0012】
さらに、より大型の流出量制限器は、噴射制御を実行するために、燃料噴射装置によって噴射される流量が大きくなる。これは、明らかに効率損失の原因である。燃料を加圧するために費やされるエネルギーが、制御回路を介してこれを広げることによって浪費されるからである。
【0013】
これらの問題は、大型2ストロークディーゼルエンジンにおいて、さらに重大になる。なぜなら、シート直径と制御チャンバ直径との比が非常に大きいからである。これは、未燃焼炭化水素(UHC)および粒子放出物を低減するために用いられるニードル上のスライドバルブの存在が、シート直径をスライドバルブ直径よりも大きくさせることによる。これは、より大きい噴射流量を伴う、より大型の流出量制限器を選択する原因となる。
【0014】
これらの問題点は、示されたコモンレール技術を大型2ストロークエンジンの燃料噴射装置に適用することを困難にさせる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、上述の問題に対する解決策を提供することである。
【0016】
本発明に従って、この目的は、請求項1の特徴を備える燃料噴射装置により達成される。
【0017】
本発明は、大型ディーゼルエンジンの電子制御式燃料噴射装置の性能を最適化することを可能にする。特に、本発明は、噴射サイクル中に燃料噴射装置を開放したままにするために、電子制御バルブが噴射しなければならない制御流量を最小化することを可能にする。
【0018】
制御流量の減少は、2つの主な利点をもたらす。
(i)燃料噴射装置本体に組み込むことができる、より小型で、より早い電子アクチュエータ(ソレノイドまたは圧電スタック)を用いることができる。
(ii)燃料噴射装置の効率が上昇する。すなわち、これは、補助電力要求が減少するので全エンジン効率の増加をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面を参照して、単なる限定されない例によって行う以下の詳細な説明の過程で明確になる。
図1図1は、本発明による燃料噴射装置の動作原理を示す回路図である。
図2図2は、本発明による燃料噴射装置の第1実施形態の軸方向断面図である。
図3図3は、図2の矢印IIIで示される部分の拡大図である。
図4図4は、本発明による燃料噴射装置の第2実施形態の軸方向断面図である。
図5図5は、図4の矢印Vで示される部分の拡大図である。
図6図6は、図5の矢印VIで示される部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、ディーゼルエンジンのための燃料噴射システムは、参照番号10で示されている。この燃料噴射システムは、供給ポンプ12を備える。この供給ポンプ12は、低圧燃料タンク14から燃料を吸入して、高圧コモンレール16に加圧された燃料を搬送する。このコモンレール16は、複数の高圧パイプ18(これら高圧パイプ18のうちの1つだけが図1に示されている)に接続されており、この複数の高圧パイプ18の各々は、それぞれの燃料噴射装置20に接続されている。
【0021】
上記燃料噴射装置20は、燃料供給ライン26を介して高圧パイプ18に接続されているデリバリーチャンバ24を有する本体22を備えている。このデリバリーチャンバ24には、円錐形バルブシート28を設けている。
【0022】
上記燃料噴射装置20は、ニードル30を備える。このニードル30は、デリバリーチャンバ24を通って伸びると共に、バルブシート28と協働する円錐形シール面32を有している。このニードル30は、閉鎖位置と開放位置との間を縦軸Aに沿って移動可能である。閉鎖位置では、上記シール面32はバルブシート28に接しており、開放位置では、上記シール面32はバルブシート28から離れて間隔を空けられている。バネ34は、ニードル30を上記閉鎖位置の方向に押す。デリバリーチャンバ24に含まれている燃料の油圧は、ニードル30をその開放位置に押す第1油圧力を生成する。
【0023】
上記本体22は、バルブシート28を介してデリバリーチャンバ24と流体連結している縦穴すなわちサック38を有する噴霧器36を備えている。この噴霧器36には、1以上の噴射穴40を設けている。上記ニードル30には、サック38内に入り込んでいるスライドバルブ42を設けている。
【0024】
上記燃料噴射装置20は、デリバリーチャンバ24からシールされた制御チャンバ44を備えている。この制御チャンバ44は、流入量制限器48を有する吸気ライン46を介して燃料供給ライン26に接続されている。この制御チャンバ44はまた、流出量制限器52を有する排気ライン50に接続されている。制御チャンバ44内の油圧は、ニードル30をその閉鎖位置の方向に押す第2油圧を生成する。
【0025】
電子制御式2方向制御バルブ54は、制御チャンバ44と低圧容量(例えば、タンク貯蔵所14によって形成される)との間の油圧連結を選択的に開閉する。この制御バルブ54は、電子アクチュエータ56により制御されており、この電子アクチュエータ56は、電子制御ユニット58により制御信号を受信する。
【0026】
制御バルブ54が閉じられたとき、制御チャンバ44およびデリバリーチャンバ24内の圧力は、レール圧力に等しい。制御チャンバ44内の圧力の影響面が、デリバリーチャンバ内の圧力の影響面よりも大きいと仮定すると、閉鎖位置に向かってニードル30を押す力は、開放位置に向かってニードル30を押す力よりも大きい。制御バルブが開けられると、制御チャンバ44内の圧力が下がり、開放位置に向かってニードル30を押す力が、閉鎖位置に向かってニードル30を押す力よりも大きくなる。従って、ニードル30はバルブシート28から離れ、デリバリーチャンバ24に含まれている加圧燃料が噴霧器36のサック38内に入れられて、スライドバルブが噴射穴40から覆いを取り外すのに十分にニードルが持ち上げられた時点で、噴射穴40を介して燃料が噴射される。
【0027】
ニードル30の開放を開始するためには、バルブに対する制御チャンバ44の圧力をある値まで下げなければならない。この値は、ニードル30がサック38を加圧するのに足りるほど持ち上がった後に、開放位置にニードル30を維持するのに十分な値よりもかなり低い。
【0028】
先行技術に従うと、これは、大型の流出量制限器52を必要とするであろう。しかし、大型の流出量制限器52は、実際には、噴射段階のほんの一部分の間だけ必要とされる。実際のところ、サック38を加圧するのに十分にニードル30が持ち上がるとすぐに、開放位置に向かってニードル30を押す力は非常に大きくなり、制御チャンバ44内の圧力を高いレベルで維持することができる。
【0029】
これらの考察に基づいて、本発明は、流入量制限器48が、噴射ニードル30の完全閉鎖位置に対応するチョーク位置と、このニードル30の初期開放の位置に対応する非チョーク位置との間で移動可能である可変チョーク部を有する。従って、ニードル30がバルブシート28に接すると、流入量制限器48は、大幅にチョークされる。その後、このチョークは弱められ、最終的には、ニードルストロークの第1ステージで除外される。
【0030】
図1において、矢印60は、概略的に流入量制限器48の可変チョーク部を表わしており、点線62は、可変チョーク部60がニードル30の移動により制御される事実を表わしている。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、流入量制限器48は、ニードル30と共に移動自在な少なくとも1つのオリフィスを備えており、可変チョーク部60は、ニードル30と共に移動自在な第1表面と本体22に対して固定された第2表面との間に形成された間隙を備えている。
【0032】
本発明による解決策において、小型の流出量制限器52は、燃料噴射装置の開放を引き起こすのに足りるレベルに制御チャンバ52の圧力を至らせるのに十分である。理想的には、流入量制限器48が完全にチョークされたならば、どんなサイズの流出量制限器52でも制御チャンバ44を完全に排出するのに十分であろう(時間の問題だけであろう)。その結果、ニードル30が持ち上がって、開放する力がサック加圧に起因して増加すると、流入量制限器48は完全に開き、制御チャンバ44の圧力は、閉鎖段階が始まるであろうレベルに近い値で固定される。
【0033】
大型の流出量制限器を介して排出される多い燃料流量の問題を解決することに加えて、本発明による解決策には、燃料噴射装置の切り換え時間を減らすことについての更なる利点がある。なぜなら、噴射中の制御チャンバ44内の圧力レベルは、燃料噴射装置の閉鎖を引き起こすのに必要なレベルの近くで維持されており、このことは、マルチショットおよび超低負荷運転において重要だからである。
【0034】
本発明の第1実施形態は、図2に示されている。
【0035】
図2に示されている例において、上記本体22は、ロックナット64と、下部本体部66と、中部本体部68と、上部本体部70とを備える。下部本体部66と中部本体部68とは、ロックナット64によって上部本体部70に固定されている。噴霧器36は、ねじ込みブッシュ72によって下部本体部66に固定されている。
【0036】
以下の詳細な説明および特許請求の範囲において、「下部(lower)」、「上部(upper)」、「上に(above)」、「下に(below)」等への言及は、図に示されており、かつ、一般に使用位置に対応している燃料噴射装置の位置を参照する。しかし、上記燃料噴射装置はどのような位置にでも取り付け可能であり、空間位置への言及が本発明の範囲を限定することを目的としていないということが理解される。
【0037】
ニードル30の上部は、下部本体部66により支えられているブッシング74内にスライド自在に案内される。バネ34は、デリバリーチャンバ24内に収納されており、ブッシング74とニードル30の放射状の肩との間で圧縮されている。
【0038】
制御チャンバ44は、ニードル30の上部前面と、ブッシング74の円筒形壁部と、中部本体部68の前面とにより形成されている。流出量制限器は、中部本体部に形成されたオリフィス52により形成されている。
【0039】
制御バルブ54は、軸方向に移動可能なステム76を備え、このステム76は、中部本体部68のガイド穴78内にスライド自在である。この典型的な実施形態において、電動アクチュエータ56は、磁気コア80とコイル82とを有している。
【0040】
流入量制限器48は、円錐形シール面32を有しているニードル30のエリアに形成された1以上のオリフィス84を備えている。この(各々の)オリフィス84は、ニードル30内に形成された細長い穴86と連通している半径方向内端を有する。この細長い穴86の上端は、制御チャンバ44内に開口している。
【0041】
図3の拡大された細部によく示されているように、上記(各々の)オリフィス84の半径方向外端は、円錐形シール面32がバルブシート28に接するエリアの真上で、ニードル30の円錐形シール面32に開口している。
【0042】
上記可変チョーク部60は、ニードル30の円錐形シール面32とバルブシート28との間に形成された間隙88により形成されている。この間隙88のサイズは、ニードル30が閉じられたときに最小であり、ニードルがバルブシート28から離れるにつれて増加する。従って、上記(各々の)オリフィス84は、ニードルが閉じられたときにチョークされ、ニードル30の初期の開放後に非チョークになる。
【0043】
流入量制限器48を制御チャンバ44に接続する上記細長い穴は、下降波面が制御チャンバ44から流入量制限器48の出口および後部まで移動するのに要する時間だけ、制御チャンバ44の圧力の低下に対して流入量制限器48の反応を遅らせることによって、本発明特有の機能性を確実にすることに積極的な役割を果たす。これは、サック38を加圧するのに十分な時間を割り当てて、その結果、流出量制限器52の最小実行サイズでニードル30を首尾よく開放する。
【0044】
この解決策の注目に値する利点は、実施のコストが、既に燃料噴射装置に存在するシートを用いるためごく僅かであるということである。
【0045】
従来の構造と比較して、本発明を用いた噴射装置は、最大60%少ない制御流量で作動することができる。これは、エンジン全体の性能に関して、0.26%増に等しい。
【0046】
このような最適化によって得られる主な利点は、制御バルブ44をシールし、運転するために必要な力を減少させることであり、燃料噴射装置本体に一体化することができる速くてコンパクトなアクチュエータを使用することが可能である。これは、マルチショットモードで必要になる短い切換え時間で作動可能な燃料噴射装置を得るために必須である。
【0047】
本発明の第2実施形態は、図4に示されている。先に開示されている要素に対応する要素は、同じ参照番号で示されている。
【0048】
図4に示されている解決策は、より大きな従来のコモンレール燃料噴射装置の配置であり、この配置では、別個の制御ピストン90が、ニードル30を閉鎖状態に維持するために用いられている。この制御ピストン90の下端は、ニードル30の上端に接している。この制御ピストン90は、ニードル30と共に軸方向に移動する。本体22は、下部本体部66と中部本体部68との間に配置されたスリーブ92を備えている。バネ34は、このスリーブ92と制御ピストン90との間に形成された低圧チャンバに取り付けられている。
【0049】
制御チャンバ44は、制御ピストン90の上部前面と、スリーブ92の円筒形壁部と、中部本体部68の前面とで形成されている。流出量制限器は、中部本体部68に形成されたオリフィス52により形成されている。制御バルブ54は、上記第1実施形態と比較して変わりがない。
【0050】
図5によりよく示されているように、流入量制限器48は、スリーブ92の円筒形内部表面96に形成された第1環状溝94と、制御ピストン90の円筒形外部表面100に形成された第2環状溝98とを備えている。
【0051】
上記第1環状溝94は、スリーブ92に形成された第1オリフィス102によって燃料供給ライン26に接続されている。第2環状溝98は、制御ピストン90に形成された第2オリフィス104と第3オリフィス106とによって制御チャンバ44に接続されている。
【0052】
ニードル30が閉じられたとき、第1環状溝94および第2環状溝98は、図5に示されるように、互いにオフセットされる。制御ピストン90が上方に動くと、第1環状溝94および第2環状溝98は、少なくとも部分的に重ね合わせられる。
【0053】
図6によりよく示されているように、可変チョーク部60は、スリーブ92の円筒形内部表面96と制御ピストン90の円筒形外部表面100との間に形成された環状間隙108によって形成されている。ニードル30が閉じられると、制御チャンバ44は、2つの経路を通って燃料供給ライン26に通じる。この2つの経路の内、一方の経路は、環状間隙108と第1環状溝94と第1オリフィス102とを含んでおり、他方の経路は、第2オリフィス104および第3オリフィス106と第2環状溝98と環状間隙108と第1環状溝94と第1オリフィス102とを含んでいる。
【0054】
上記環状間隙108は、ニードル30の閉鎖位置で流入量制限器48をチョークする。ニードル30の初期の開放中に、流入量制限器のチョークは、第1環状溝94および第2環状溝98が重なり合うため取り除かれる。
【0055】
上記環状間隙108のサイズと、第1環状溝94および第2環状溝98の間の重なりの長さとは、流入量制限器48を通る有効流量(significant flow rate)が確立する前にサック38の加圧を可能にするために、都合よく選択される。
【0056】
上記第2実施形態は、構造においてよりシンプルであり、ニードル30および制御チャンバ44の異なる直径を選択することの更なる柔軟性を提供する。第1実施形態と比較して、第2実施形態は、ニードルと制御ピストンとそれぞれのスリーブとの間の間隙内の燃料流に起因して、燃料噴射装置が閉じられたときに高圧燃料漏れが発生し、この漏れた高圧燃料が最後にバネチャンバに行き着いて、そこからタンクに放出されるという不利益がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6