特許第5890715号(P5890715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890715非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890715
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/136 20100101AFI20160308BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160308BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160308BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H01M4/136
   H01M4/36 C
   H01M4/58
   H01M4/62 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-71437(P2012-71437)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-206583(P2013-206583A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 翠
(72)【発明者】
【氏名】久保田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 英俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐一
(72)【発明者】
【氏名】兒島 洋一
(72)【発明者】
【氏名】本川 幸翁
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238594(JP,A)
【文献】 特開2000−353526(JP,A)
【文献】 特開2010−277839(JP,A)
【文献】 特開2009−252489(JP,A)
【文献】 特開2007−134274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用正極において、
前記活物質層に、オリビン構造を有するLiFePOを含む活物質粒子を有し、
さらに、前記活物質層に、金属シリコンと、導電剤とを含み、
前記活物質粒子の表面の少なくとも一部がカーボン層で被覆されており、
前記金属シリコンの量が、前記活物質粒子(カーボン層で被覆された量も含む)の量の1〜10質量%である
ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極。
【請求項2】
前記活物質粒子の表面の全面がカーボン層で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の正極と、
リチウムの吸蔵放出が可能な負極と、
前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータとを有し、
非水電解質中に前記正極と前記負極と前記セパレータとが設けられたことを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池の正極に関し、高率放電特性及び放電電圧降下を改善する非水電解質二次電池用正極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池は、高エネルギー密度を有するなどの理由から、広く普及している。このような非水電解質二次電池には、正極−負極間にリチウムイオンを移動させて充放電を行う原理が利用されている。
【0003】
非水電解質二次電池に用いられる正極活物質として、LiCoO及びLiNiOなどの層状岩塩構造を有する化合物や、LiMnなどのスピネル型構造を有する化合物などのリチウム遷移金属複合酸化物が知られている。また、これらの複合酸化物における遷移金属の一部を、他の金属で置換した化合物も提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、正極層中に活物質とは別にLiNi1−xTi(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)であらわされる化合物を添加材として適量含有した正極が提案されている。
【0005】
特許文献2には、2層以上の正極活物質層をもつ正極を採用し、正極集電体に接する層をオリビン型リン酸鉄リチウム酸化物やスピネル型マンガン酸リチウム酸化物から構成したものが提案されている。
【0006】
特許文献3には、電解液中のフッ素由来のフッ化水素がマンガン系材料やコバルト系材料に悪影響を与えないためにシリコンなどを添加した正極活物質組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−129481号公報
【特許文献2】特開2007−012441号公報
【特許文献3】特許第4101435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者等は先行技術を鋭意検討した結果、以下の問題点があることを見出した。特許文献1では、正極活物質層に化合物を含有することにより、充電終止電圧を高くし、正極活物質を高容量化しているが、正極電位の上昇により、電解液との反応性が加速される。従って、電解液の分解、ガス発生、活物質の劣化などの問題が生じる場合があり、高率放電特性が十分に発揮されるとはいえない。
【0009】
特許文献2では、正極活物質層を2層以上にすることにより過充電特性の向上に対する改善効果は期待できるが、これら酸化物層の厚さがその平均粒径以下、すなわち、数μm程度であり、これらの酸化物層には導電剤が含まれていない状態であるため、高率放電特性が十分であるとはいえない。
【0010】
特許文献3では、高温で電解液と反応しやすいマンガン系、ニッケル系またはコバルト系正極活物質と、金属またはその酸化物を混合することで電解液との副反応を抑制させ、電池を長寿命化している。しかし、使用可能な正極活物質がこれら3種類に限定されており、近年、大型リチウムイオン二次電池用正極活物質として注目されている、オリビン系正極活物質、特にLiFePOについて言及されておらず、電子伝導性が低いLiFePOを用いて良好な正極活物質を得るためにはどのようにするべきかを開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、高率放電特性及び放電電圧降下を改善する非水電解質二次電池用正極を提供することである。
【0012】
本発明者らは、このような問題点について鋭意検討した結果、正極層中に、LiFePO系正極活物質と、該活物質とは別に添加材として金属Siが含有されている電極を非水電解質二次電池用正極として用いることにより、高率放電特性及び放電電圧降下を解決できることを見出した。
【0013】
前述した目的を達成するために、以下の発明を提供する。
(1)集電体上に活物質層を有する非水電解質二次電池用正極において、前記活物質層に、オリビン構造を有するLiFePOを含む活物質粒子を有し、さらに、前記活物質層に、金属シリコンと、導電剤とを含み、前記活物質粒子の表面の少なくとも一部がカーボン層で被覆されており、前記金属シリコンの量が、前記正極活物質の量の1〜10質量%であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極。
(2)前記活物質粒子の表面の全面がカーボン層で被覆されていることを特徴とする(1)に記載の非水電解質二次電池用正極。
(3)(1)または(2)に記載の正極と、リチウムの吸蔵放出が可能な負極と、前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータとを有し、非水電解質中に前記正極と前記負極と前記セパレータとが設けられたことを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明の非水電解質二次電池用正極は、活物質粒子表面のカーボン層に加え、添加剤として金属Si及び導電剤が電極層内に備えられているので、電極内部に十分な電子伝導性が与えられる。電極の内部抵抗を低減できるため、高率放電特性及び放電電圧降下を改善する正極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る非水電解質二次電池用正極を示す概略断面図。
図2】本発明に係る正極を用いた非水電解質二次電池の概略断面図。
図3】実施例2、比較例1、及び比較例4の初回充放電曲線。
図4】実施例2、比較例1、及び比較例4の放電レート5.0Cにおける充放電曲線。
図5】実施例2、比較例1、及び比較例4の放電レート10.0Cにおける充放電曲線。
図6】実施例2、比較例1、及び比較例4のサイクル試験の結果。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(正極の構成)
本発明に係る非水電解質二次電池用正極1は、集電体3の上に活物質層5を有する。活物質層5には、表面にカーボン層9(炭素被覆)を有する活物質粒子7と、シリコン粒子11と、導電剤13とを含む。なお、実際は結着剤などにより活物質層5を形成しているが、結着剤の図示は省略した。
【0017】
活物質粒子7は、オリビン構造を有するLiFePOを含む。本発明では、産出量が多く安価で安定な鉄を原料に用いた、LiFePO系材料を正極活物質に用いたものである。しかし、LiFePOは電子伝導性が低いため、粒子表面の少なくとも一部にカーボン層9がないと放電容量が小さく、高率放電特性に劣るため、導電性を改善するため前記正極活物質の粒子表面に厚さ1〜5nm程度のカーボンコーティングを施すことが好ましい。厚さ1nm未満ではカーボン層が薄く、電子伝導性が上がらないため、電池特性を改善できない。また、厚さ5nmを超えるとカーボン層9が厚く、抵抗成分になってしまう。なお、より電子伝導性が向上するため、カーボン層9は、活物質粒子7の表面の全体を覆っていることが好ましい。
【0018】
シリコン粒子11は、金属シリコンの粉末である。金属シリコン粉末としては、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、平均粒径50nm〜50μmのシリコンの粉末を使用できる。
なお、金属シリコンの添加量は、活物質粒子7の量(炭素被覆の量も含む)に対して1質量%〜10質量%とする事が好ましい。1質量%未満では添加効果がほとんど得られない。また、10質量%を超えると、スラリー中で金属シリコン同士が凝集し、塗布後の正極が不均一になってしまう。
【0019】
導電剤13は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、活性炭、黒鉛などを挙げることができる。
【0020】
集電体3は、アルミニウムを95質量%以上含むアルミニウム合金箔などである。
【0021】
(非水電解質二次電池用正極の製造方法)
正極は、活物質粒子7を含むスラリーを集電体3上に塗布することで作製される。具体的には、まず、表面にカーボン層9を有する活物質粒子7の粉末に、さらにシリコン粒子11、導電剤13を加えると共に、結着剤、またはブタジエンゴムなどの分散剤、またはカルボキシメチルセルロースほかセルロース誘導体などの増粘剤を加えた混合物を、水系溶媒か有機溶媒中に加えてスラリーとする。次に、このスラリーを集電体上に、片面ないしは両面に塗布し、焼成して溶媒を揮発乾固する。
【0022】
なお、スラリーの塗布性や集電体と活物質材料との密着性、集電性を上げるために、活物質粒子7と導電剤13を用いてスプレードライ法により造粒して焼成した二次粒子を、スラリー中に含有させることができる。造粒した二次粒子の塊は概略0.5〜20μm程度の大きな塊になるが、これによりスラリー塗布性が飛躍的に向上して、電池電極の特性と寿命もさらに良好となる。スプレードライ法に用いるスラリーは水系溶媒または非水系溶媒のいずれも用いることができる。
【0023】
結着剤としては、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル系共重合体などが挙げられる。
【0024】
溶媒としては、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用できる。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、水などが挙げられる。結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒に用いるのが好ましく、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどを用いる場合は、水を溶媒に用いるのが好ましい。
【0025】
(非水電解質二次電池)
本発明の正極を用いた高容量な二次電池を得るには、従来公知の負極活物質を用いた負極や電解液、セパレータ、電池ケース等の各種材料を、特に制限なく使用することができる。本発明の非水電解質二次電池は、正極と負極との間にセパレータを配置して、電池素子を形成している。このような電池素子を巻回、または積層して円筒形や角形の電池ケースに入れた後、電解質を注入した非水電解質二次電池である。
【0026】
具体的には、図2に示したように、本発明の非水電解質二次電池31は、正極33、負極35を、セパレータ37を介して、セパレータ−負極−セパレータ−正極の順に積層配置し、正極33が内側になるように巻回して極板群を構成し、これを電池缶41内に挿入する。そして正極33は正極リード43を介して正極端子47に、負極35は負極リード45を介して電池缶41にそれぞれ接続し、非水電解質二次電池31内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出し得るようにする。次いで、電池缶41内に電解質39を極板群を覆うように充填した後、電池缶41の上端(開口部)に、円形蓋板とその上部の正極端子47からなり、その内部に安全弁機構を内蔵した封口体49を、環状の絶縁ガスケットを介して取り付けることで製造することができる。
【0027】
負極活物質としては非水電解質二次電池に使用できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボンやソフトカーボンなどの炭素材料、Al、Si、Snなどのリチウムと化合することができる金属材料や合金材料、チタン酸リチウム(LiTi12)などの酸化物材料を用いることができる。
これらの負極活物質を、結着剤や導電助剤、増粘剤などとともに溶媒中に分散させ、スラリーを形成し、このスラリーを銅箔やステンレス箔などの集電体上に塗布・乾燥・焼成して負極が形成される。
【0028】
負極に用いられる結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、コアシェルバインダー、ポリイミドやポリアミドイミドなどのイミド系樹脂などが用いられる。
また、負極に用いられる導電助剤としては、正極に用いるのと同様のもの、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、活性炭、黒鉛などを挙げることができる。
さらに、負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロール(CMC)の水溶液などを用いることができる。
【0029】
正極と負極のセパレータとしては、一般的に用いられているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの高分子膜が用いられる。
また、非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの有機溶媒に溶解させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)を用いることができる。
【0030】
本発明に係る非水電解質二次電池用正極は、活物質層中に金属シリコンを添加するために、活物質層の導電ネットワークが良好に働き、これを用いた非水電解質二次電池は高率放電特性に優れる。
【0031】
また、本発明に係る非水電解質二次電池用正極は、活物質層中に金属シリコンを添加するために、活物質層の導電ネットワークが良好に働き、これを用いた非水電解質二次電池は放電中の放電電圧を高いまま維持できる。
【0032】
本発明に係る非水電解質二次電池用正極は、活物質としてオリビン構造のLiFePOを用いるため、サイクル特性に優れる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
<実施例1>
(正極の作製)
正極活物質として炭素被覆リン酸鉄リチウム(炭素含有量1.2±0.5質量%、炭素被覆の厚さ2〜3nm)100質量部、導電剤としてアセチレンブラック6.8質量部、結着剤として水分散バインダである固形分濃度40質量%のアクリル系共重合体3質量部(固形分として)、並びに分散剤として、水溶液中の固形分濃度2質量%のカルボキシメチルセルロース2質量部(固形分として)、金属Si10質量部を、溶媒であるイオン交換水20gに分散してスラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布し(塗工量120g/m)、70℃で10分間乾燥させた後、所定の電極密度(1.80g/cc)になるまでプレス処理により加圧し、正極を作製した。
【0034】
(評価セルの作製)
上記のプレス処理した正極材料を作用極に用いた3極式評価セルを作製した。対極及び参照極にはリチウム金属を用いた。電解液として、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比で2:5:3)にLiPFを1.3mol/L溶解させた非水電解液を用い、セパレータとして、微多孔質ポリエチレン膜を用いた。外装体には、ポリプロピレンブロックを加工した樹脂製容器を用い、作用極、対極、及び参照極に設けた各端子の開放端部が外部露出するように電極群を収納封口した。
【0035】
(電池の試験)
上記電池を用いて、充放電特性を評価するために試験を行った。
初回充放電試験は、0.1Cで4.2Vまで充電し、0.1Cで2.0Vまで放電させた。
高率放電試験は、0.5Cで4.2Vまで充電し、5.0Cまたは10.0Cで2.0Vまで放電させた。
サイクル試験は、0.5Cで4.2Vまで充電し、0.5Cで2.0Vまで放電するサイクルを20回繰り返した。
【0036】
<実施例2>
正極において、金属Si添加量を5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。その後、実施例1と同様にして評価セルを作製し、電池試験を行った。
【0037】
<実施例3>
正極において、金属Si添加量を1質量部とする以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。その後、実施例1と同様にして評価セルを作製し、電池試験を行った。
【0038】
<比較例1>
正極において、金属Siを添加しない以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。その後、実施例1と同様にして評価セルを作製し、電池試験を行った。
【0039】
<比較例2>
正極において、金属Si添加量を0.5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。その後、実施例1と同様にして評価セルを作製し、電池試験を行った。
【0040】
<比較例3>
正極において、金属Si添加量を10.5質量部とする以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。しかし、粒子が凝集し、均一なスラリーが得られなかった。このスラリーを用いて塗布電極を作製したが、乾燥後の電極表面に凝集物が点在し、表面の活物質層は均一ではなかった。その後、実施例1と同様にして評価セルを作製し、電池試験を行った。
【0041】
<比較例4>
正極において、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用い、金属Si添加量を1重量部とする以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。その後、実施例1と同様にして評価セルを作製し、電池試験を行った。正極活物質にコバルト酸リチウムを用いたセルについては、初回充放電試験は0.1Cで4.3Vまで充電し、0.1Cで2.75Vまで放電させた。高率放電試験は、0.5Cで4.3Vまで充電し、5.0Cまたは10.0Cで2.75Vまで放電させた。サイクル試験は、0.5Cで4.3Vまで充電し、0.5Cで2.75Vまで放電するサイクルを20回繰り返した。
【0042】
実施例1〜3、比較例1〜4の金属Si添加量及び初回放電容量を表1に示し、実施例2、比較例1、及び比較例4の初回充放電曲線を図3に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1、図3より、本実施例1〜3は金属Siを添加しなかった比較例1、金属Siの添加量を本発明範囲外とした比較例2、3および、正極活物質を本発明以外のものとした比較例4に比べ、初回放電容量が高いことが分かる。これは、正極活物質に金属Siを添加することにより、活物質や活物質粒子表面に被覆されているカーボン層、導電剤間の導電ネットワークが良好に働き、電極内部に十分な電子伝導性が与えられるためと考えられる。
しかしながら、比較例1、2では金属Siの添加効果が見られず、初回放電容量が低かった。また、比較例3では金属Siの添加量が多いため金属Si同士が凝集しあい、乾燥後の電極表面に凝集物が点在しており、所望の初回放電容量を得ることが困難であった。
また、比較例4では、コバルト酸リチウムを正極活物質として金属Siを添加したものであるが、当該活物質は電子伝導性が良好なため、金属Siを添加しても導電性向上の効果は見られず、逆に金属Siが不純物、抵抗体として働いてしまったものと考えられる。
【0045】
実施例1〜3、比較例1〜4の金属Si添加量及び放電レート5.0Cにおける放電容量、放電電圧を表2に示し、実施例2、比較例1、及び比較例4の放電レート5.0Cにおける充放電曲線を図4に示す。なお、放電電圧は、放電開始電圧から放電終止電圧までの平均値である。
【0046】
【表2】
【0047】
表2、図4より、本実施例1〜3は金属Siを添加しなかった比較例1、金属Siの添加量を本発明範囲外とした比較例2、3および、正極活物質を本発明以外のものとした比較例4に比べ、放電レート5.0Cにおける放電容量及び放電電圧が高いことが分かる。これは、正極活物質に金属Siを添加することにより、活物質や活物質粒子表面に被覆されているカーボン層、導電剤間の導電ネットワークが良好に働き、電極内部に十分な電子伝導性が与えられるためと考えられる。
しかしながら、比較例1、2では金属Siの添加効果が見られず、放電レート5.0Cにおける放電容量および放電電圧が低かった。また、比較例3では金属Siの添加量が多いため金属Si同士が凝集しあい、乾燥後の電極表面に凝集物が点在しており、良好な正極を得ることが困難であった。
また、比較例4では、コバルト酸リチウムを正極活物質として金属Siを添加したものであるが、当該活物質は電子伝導性が良好なため、金属Siを添加しても導電性向上の効果は見られず、逆に金属Siが不純物、抵抗体として働いてしまったものと考えられる。
【0048】
実施例1〜3、比較例1〜4の金属Si添加量、放電レート10.0Cにおける放電容量を表3に示し、実施例2、比較例1、及び比較例4の放電レート10.0Cにおける充放電曲線を図5に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3、図5より、本実施例1〜3は金属Siを添加しなかった比較例1、金属Siの添加量を本発明範囲外とした比較例2、3および、正極活物質を本発明以外のものとした比較例4に比べ、放電レート10.0Cにおける放電容量および放電電圧が高いことが分かる。これは、正極活物質に金属Siを添加することにより、活物質や活物質粒子表面に被覆されているカーボン層、導電剤間の導電ネットワークが良好に働き、電極内部に十分な電子伝導性が与えられるためと考えられる。
しかしながら、比較例1、2では金属Siの添加効果が見られず、放電レート10.0Cにおける放電容量および放電電圧が低かった。また、比較例3では金属Siの添加量が多いため金属Si同士が凝集しあい、乾燥後の電極表面に凝集物が点在しており、良好な正極を得ることが困難であった。
また、比較例4では、コバルト酸リチウムを正極活物質として金属Siを添加したものであるが、当該活物質は電子伝導性が良好なため、金属Siを添加しても導電性向上の効果は見られず、逆に金属Siが不純物、抵抗体として働いてしまったものと考えられる。
【0051】
実施例1〜3、比較例1〜4の20サイクル後の容量維持率を表4に示し、実施例2、比較例1、及び比較例4のサイクル試験の結果を図6に示す。
なお、前記容量維持率は、実施例1〜3、比較例1〜4各々の初期容量を100%とし、20サイクル後の容量を比率で表したものである。
【0052】
【表4】
【0053】
表4、図6より、正極活物質にリン酸鉄リチウムを用いた本実施例1〜3、及び比較例1〜3は、正極活物質を本発明以外のものとした比較例4に比べ、20サイクル後の容量維持率が高いことが分かる。これは、リン酸鉄リチウム正極活物質に金属Siを添加することにより、活物質や活物質粒子表面に被覆されているカーボン層、導電剤間の導電ネットワークが良好に働き、電極内部に十分な電子伝導性が与えられるためと考えられる。
しかしながら、比較例4では、コバルト酸リチウムを正極活物質として金属Siを添加したものであるが、当該活物質は電子伝導性が良好なため、金属Siを添加しても導電性向上の効果は見られず、逆に金属Siが不純物、抵抗体として働いてしまったものと考えられる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0055】
1………正極
3………集電体
5………活物質層
7………活物質粒子
9………カーボン層
11………シリコン粒子
13………導電剤
31………非水電解質二次電池
33………正極
35………負極
37………セパレータ
39………電解質
41………電池缶
43………正極リード
45………負極リード
47………正極端子
49………封口体
図1
図2
図3
図4
図5
図6