(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の耐力壁において、最下方の座屈拘束ブレース106は、その上端部が一方の柱材102に結合され、その下端部が他方の柱材104の基端部105に結合される。そのため、この柱材104の基端部105には、鉛直荷重200に加えて、座屈拘束ブレース106から受ける水平荷重300が大きく作用する。水平荷重300は、柱材104下方のアンカーボルト108を介して、基礎100に伝達される。
【0006】
したがって、従来の耐力壁では、基礎100が水平荷重300で破壊されることを防ぐため、アンカーボルト108が埋設される箇所から更に外側方向にむけて、一定以上の幅寸法が必要とされる。
【0007】
例えば、
図6に示すような1階のビルトインガレージでは、基礎100を切り欠くようにして駐車スペースを形成する必要がある。このような場合に、耐力壁が形成される部分の基礎100を幅広に形成すると、その分だけ駐車スペースを確保しにくくなる。
【0008】
以上のように、従来の耐力壁では、基礎100のアンカーボルト108に作用する水平荷重300を受けるために、耐力壁が形成される部分の基礎100を幅狭に形成することが困難であり、そのためにスペースの有効活用が困難になるという問題があった。
【0009】
本発明は、前記問題点に鑑みて発明したものであって、基礎上で座屈拘束ブレースを用いて耐力壁を形成するにあたり、基礎の破壊を防止しながらもその基礎を極力幅狭に形成し、スペースの一層の有効活用を図ることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、
本発明を、下記構成を具備した耐力壁の構造とする。
【0011】
本発明は、基礎に第一柱材と第二柱材が立設され、
前記第一柱材と前記第二柱材の間に、く字状をなすように互いに逆向きに傾斜した下側座屈拘束ブレースと上側座屈拘束ブレースの対が、上下に少なくとも二対配置され、最も下に位置する前記下側座屈拘束ブレースの上端部が前記第一柱材に接合され、
この下側座屈拘束ブレースの下端部が前記第二柱材の基端部に接合され
、前記第二柱材の基端部と前記基礎との接合は、前記第二柱材の基端部に接続される柱脚金具に、前記基礎に埋設されるアンカーボルトとサブアンカーボルトを固着させることで行われ、前記柱脚金具は、前記第二柱材の基端部に接続される天板を備えた接続部と、前記基礎に固着されるプレート部とを一体に備え、前記プレート部は、前記プレート部を長手方向に二分する半部に、平面視において前記接続部と重なるようにアンカーボルト固着孔が貫通形成され、前記プレート部の残り半部に、平面視において前記接続部から側方に外れて位置するようにサブアンカーボルト固着孔が貫通形成されたものであり、前記アンカーボルトは、前記第二柱材からの鉛直荷重と水平荷重を共に受けるように、前記第二柱材の下方位置で前記アンカーボルト固着孔に固着され、前記サブアンカーボルトは、前記第二柱材からの水平荷重を受けるように、前記第二柱材の下方位置から前記第一柱材側に寄った位置で前記サブアンカーボルト固着孔に固着されることを特徴とする
耐力壁の構造である。
【0012】
本発明では、前記柱脚金具に外壁ファスナーを一体に設け、前記外壁ファスナーに対して外壁を取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、基礎上で座屈拘束ブレースを用いて耐力壁を形成するにあたり、基礎の破壊を防止しながらもその基礎を極力幅狭に形成し、スペースの一層の有効活用を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1、
図2には、本発明の一実施形態の耐力壁Aを示しており、
図3−
図5には、この耐力壁Aを形成するために用いる柱脚金具Bを示している。
【0019】
図1、
図2に示すように、本実施形態の耐力壁Aは、建物1階のビルトインガレージに形成されるものであって、耐力壁Aを立設する基礎2は、この基礎2よりも低床の駐車スペース4と隣接して形成される。基礎2には、耐力壁Aを形成するための第一柱材6と第二柱材8が立設される。これら柱材6,8を立設するための構造については後述する。
【0020】
第一柱材6と第二柱材8との間には、二対の座屈拘束ブレース10が接合される。座屈拘束ブレース10は、長尺板状のブレース芯材を、長尺である座屈拘束部材12に内挿したものである(
図2参照)。
【0021】
これら座屈拘束ブレース10は、下側の座屈拘束ブレース10(以下「下側座屈拘束ブレース14」という。)と、これの上側に位置する座屈拘束ブレース(以下「上側座屈拘束ブレース16」という。)とで対をなして配置される。本実施形態では、下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16の対を、上下に二対配している。
【0022】
下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16は、く字状をなすように互いに逆向きに傾斜して配置される。具体的には、建物の外側に位置する第一柱材6対して、傾斜した下側座屈拘束ブレース14の上端部が接合され、第一柱材6より屋内側に位置する第二柱材8に対して、下側座屈拘束ブレース14の下端部が接合される。そして、下側座屈拘束ブレース14とは逆向きに傾斜した上側座屈拘束ブレース16の下端部が第一柱材6に接合され、上側座屈拘束ブレース16の上端部が第二柱材8に接合される。
【0023】
本実施形態では、下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16が二対配されるため、全体としては、下方から上方へと下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16が交互に配される。
【0024】
このようにして形成される耐力壁Aでは、屋内側である第二柱材8の基端部18に、最下方に配される下側座屈拘束ブレース14の下端部が接合される。そのため第二柱材8の基端部18には、下方にむけて大きな鉛直荷重が作用することに加えて、特に地震等が生じたときにはこの下側座屈拘束ブレース14を通じて、屋内側(つまり駐車スペース4側)にむけて大きな水平荷重が作用する。一方、第一柱材6の基端部20には、下方にむけて大きな鉛直荷重が作用するものの、水平荷重は大きく作用することがない。
【0025】
そこで、第一柱材6を基礎2に立設するための構造としては従来と同様の構造を用い、第二柱材8を基礎2に立設するための構造として、
図3−
図5に記載の柱脚金具Bを用いる。
【0026】
柱脚金具Bは、平面視矩形状のプレート部22をその長手方向aに二分する半部22A上に箱型の接続部24を形成し、プレート部22の残り半部22Bを、平面視において接続部24から側方に突出するように形成したものである。第二柱材8の基端部18は、この接続部24に接続固定される。
【0027】
プレート部22の半部22Aには、アンカーボルト固着孔26を、箱型である接続部24の内部空間と連通するように厚み方向に貫通形成している。また、プレート部22の半部22Bには、サブアンカーボルト固着孔28を厚み方向に貫通形成している。このアンカーボルト固着孔26とサブアンカーボルト固着孔28は、プレート部22の長手方向aに150mm程度の所定距離d1をあけて並設される。
【0028】
接続部24は、上板30と周壁32とで内部空間を囲んだ形状であり、周壁32の一部には、プレート部22の短手方向bにむけて開口する開口部分34を設けている。また、プレート部22の長手方向aの中央部分には、短手方向bの両縁部から立設される一対の外壁ファスナー36を設けている。外壁ファスナー36は、図示略の外壁を固定するための部位である。この外壁ファスナー36は、厚み方向に固定孔38を貫通形成した縦板39と、縦板39の下端から水平方向に延長される横板40とで、側面視L字状に形成され、横板40の部分が溶接によりプレート部22に一体化される。
【0029】
また、プレート部22の長手方向aの中央部分には、一対の外壁ファスナー36で挟まれる箇所に、縦板状の補強リブ41を立設している。補強リブ41は、プレート部22の短手方向bの中央に位置し、この補強リブ41を介して、接続部24の周壁32とプレート部22とが強固に結合され、柱脚金具B全体が補強される。また、接続部24に作用する水平荷重が、この補強リブ41を通じてもプレート部22に伝達される。
【0030】
基礎2側には、柱脚金具Bを固着させるための構造として、アンカーボルト42とサブアンカーボルト44とを、所定距離d2をあけて埋設しておく(
図2参照)。ここでの所定距離d2は、柱脚金具Bで設定した所定距離d1と一致させる。
【0031】
アンカーボルト42は、基礎2の上面のうち屋内側の端縁近傍から突出させる。サブアンカーボルト44は、基礎2の上面のうち、アンカーボルト42よりも屋外側(つまり第一柱材6が立設される側)の箇所から突出させる。より具体的には、このサブアンカーボルト44は、第一柱材6と第二柱材8とを結ぶ線分上に位置させる。
【0032】
柱脚金具Bは、基礎2から突出したアンカーボルト42をアンカーボルト固着孔26に挿通させて上方からナット46を締結させ、同じく基礎2から突出したサブアンカーボルト44をサブアンカーボルト固着孔28に挿通させて上方からナット48を締結させることにより、基礎2に対して強固に固着される。アンカーボルト42へのナット46の締結は、箱型である接続部24の内部空間で行う。
【0033】
一方、第一柱材6は、従来と同様の柱脚金具50を用いて基礎2に立設される。柱脚金具50は、第二柱材8用の柱脚金具Bのうちプレート部22の半部22A側と接続部24だけを有する構造である。この柱脚金具50に対して、基礎2の上面のうち屋外側の端縁近傍から突出させたアンカーボルト52を固着させることにより、第一柱材6は基礎2に固着される。
【0034】
以上のような構造で形成される本実施形態の耐力壁Aでは、第二柱材8の基端部18に接続される接続部24を有する柱脚金具Bにおいて、この接続部24と平面視において(つまり真上から視たときに)重なる位置にてアンカーボルト42が固着され、接続部24から平面視において屋外側に外れた位置にてサブアンカーボルト44が固着される。
【0035】
そのため、並設される両アンカーボルト42,44のうち、屋内側のアンカーボルト42は、第二柱材8からの鉛直荷重と水平荷重を共に受ける。これに対して、屋外側のサブアンカーボルト44は、第二柱材8から一定距離だけ外れた位置にあるため、第二柱材8からの水平荷重はプレート部22や補強リブ41を介して受けるものの、第二柱材8からの垂直荷重は殆ど受けない構造である。
【0036】
言い換えると、この耐力壁Aの構造は、第二柱材8の鉛直下方にあるアンカーボルト42が、第二柱材8からの鉛直荷重を受け、第二柱材8からの水平荷重についてはサブアンカーボルト44との間で分担して受ける構造である。そのため、従来例である
図6では、柱材104の下方のアンカーボルト108から屋内側にむけて235mmほどの幅を形成するように基礎100を設けているのに対して、本実施形態では、第二柱材8の下方のアンカーボルト42から屋内側にむけて85mmほどの幅を形成するだけで、水平荷重による基礎2の破壊が防止される。
【0037】
つまり、本実施形態の耐力壁Aの構造を採用することによって、耐力壁Aを立設する基礎2を極力幅狭に形成することができ、その分のスペースを駐車スペース4等に有効活用することができる。この構造は、1階のビルトインガレージ等に対して有効な構造であるが、他の部分においても当然に採用可能である。
【0038】
図1、
図2に示すように、本実施形態のサブアンカーボルト44は、アンカーボルト42と同径に設け、且つアンカーボルト42よりも短いアンカー長さに設けている。これは、サブアンカーボルト44に作用する水平荷重(つまり剪断荷重)はアンカーボルト42に作用する水平荷重と同程度であるのに対して、サブアンカーボルト44には鉛直荷重が殆ど作用しないからである。但し、両アンカーボルト42,44を同一のアンカー長さに設けても構わない。
【0039】
また、本実施形態では、下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16を上下二対配しているが、これを一対配するだけでもよいし、或いは上下三対以上配してもよい。下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16を複数対配して耐力壁Aを形成することで、狭い幅であっても高い耐力値を得ることが可能となり、結果としてスペースの有効活用が実現される。
【0040】
例えば、450mmの幅をあけて立設される第一柱材6と第二柱材8との間に、下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16を一対配することで耐力壁Aを形成した場合、この耐力壁Aは1/200rad変形時の耐力値が9564Nとなる。これに対して、同じく450mmの幅をあけて立設される第一柱材6と第二柱材8との間に、下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16を上下二対配することで耐力壁Aを形成した場合、この耐力壁Aは1/200rad変形時の耐力値が13893Nとなる。この耐力値は、600mmの幅をあけて立設される第一柱材6と第二柱材8との間に、下側座屈拘束ブレース14と上側座屈拘束ブレース16を一対配した場合の耐力値と同程度である。
【0041】
以上、図面に基づいて詳述したように、本実施形態の耐力壁Aの構造は、基礎2に第一柱材6と第二柱材8が立設され、傾斜した座屈拘束ブレース10の上端部が第一柱材6に接合され、この座屈拘束ブレース10の下端部が第二柱材8の基端部18に接合された構造である。第二柱材8の基端部18と基礎2との接合は、第二柱材8の基端部18に接続される柱脚金具Bに、基礎2に埋設されるアンカーボルト42とサブアンカーボルト44を固着させることで行われる。アンカーボルト42は、第二柱材8からの鉛直荷重と水平荷重を共に受けるように、第二柱材8の下方位置で柱脚金具Bに固着される。サブアンカーボルト44は、第二柱材8からの水平荷重を受けるように、第二柱材8の下方位置から第一柱材6側に寄った位置で柱脚金具Bに固着される。
【0042】
このようにすることで、座屈拘束ブレース10から第二柱材8に大きな水平荷重が作用しても、この水平荷重は、柱脚金具Bを介して真下のアンカーボルト42だけでなく、第一柱材6寄りに位置するサブアンカーボルト44にも分配される。そのため、基礎2の幅を狭く設けた場合であっても、この基礎2が水平荷重(剪断荷重)により破壊を生じることが防止される。これにより、基礎2の幅を極力狭く形成して、スペースをさらに有効活用することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の耐力壁Aの構造では、柱脚金具Bに外壁ファスナー36を一体に設け、この外壁ファスナー36に対して外壁を取り付けるようになっている。
【0044】
そのため、柱脚金具Bを介して第二柱材8を立設すれば、その時点で、柱脚金具Bと一体の外壁ファスナー36によって外壁の取り付け位置が確定することになり、外壁の取り付け作業が簡素化される。
【0045】
また、本実施形態の柱脚金具Bは、傾斜した座屈拘束ブレース10の下端部が結合される柱材(第二柱材)8と、基礎2との間で介在される金具であって、この柱材8の基端部18に接続される接続部24と、基礎2に固着されるプレート部22とを一体に備えている。プレート部22は、平面視において接続部24と重なる位置に貫通形成されるアンカーボルト固着孔26と、平面視において接続部24から側方に外れた位置に貫通形成されるサブアンカーボルト固着孔28とを有する。
【0046】
このような柱脚金具Bを用いて耐力壁Aを形成することで、座屈拘束ブレース10から柱材8に大きな水平荷重が作用しても、この水平荷重は、柱脚金具Bのアンカーボルト固着孔26に貫通固定されるアンカーボルト42だけでなく、サブアンカーボルト固着孔28に貫通固定されるサブアンカーボルト44にも、分配される。そのため、耐力壁Aを立設する基礎2を幅狭に設けた場合であっても、この基礎2が水平荷重(剪断荷重)により破壊を生じることが防止される。これにより、基礎2の幅を極力狭く形成して、スペースをさらに有効活用することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の柱脚金具Bでは、プレート部22は、外壁が取り付けられる外壁ファスナー36を、一体に有する。
【0048】
そのため、柱脚金具Bを介して柱材8を立設すれば、その時点で、柱脚金具Bと一体の外壁ファスナー36によって外壁の取り付け位置が確定することになり、外壁の取り付け作業が簡素化される。
【0049】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、下側座屈拘束ブレース14の下端部が結合される第二柱材8を屋内側に設定しているが、この第二柱材8が屋外側に立設される構造であってもよい。その場合でも、同様の柱脚金具Bを用いて耐力壁Aを形成することで、耐力壁Aが立設される基礎2を極力幅狭に設け、スペースを有効活用することができる。
【0050】
その他の構成についても、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更は当然に可能である。