(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁歪材料から構成される一対の磁歪棒と、それら一対の磁歪棒の一端を支持する第1ヨークと、前記一対の磁歪棒の他端を支持する第2ヨークと、前記一対の磁歪棒にそれぞれ巻回される一対のコイルと、前記一対の磁歪棒の一端および他端にそれぞれ磁極を違えて配設される一対の永久磁石と、それら一対の永久磁石を連結するバックヨークと、を備え、前記第1ヨークに対する第2ヨークの相対移動により、前記一対の磁歪棒が伸張または収縮することで、発電を行う発電素子において、
前記第1ヨークに対する第2ヨークの相対移動が強制並進振動であり、
前記一対の磁歪棒が、前記一対の磁歪棒の高さ方向の中央を通る平面上に位置し、かつ、前記強制並進運動の直進方向に直交する仮想線に対してそれぞれ傾斜して配設されることを特徴とする発電素子。
前記ハの字状に配設される一対の磁歪棒は、前記仮想線を対称軸として線対称に配設されると共に、前記仮想線の位置が前記強制並進運動の振幅の原点とされることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電素子。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁歪材料の逆磁歪効果を利用して振動発電を行う発電素子が開示される。この発電素子について、
図5(a)を参照して説明する。
図5(a)は、従来の発電素子901の正面図である。なお、
図5(a)において、コイル、永久磁石およびバックヨークの図示は省略する。
【0003】
図5(a)に示すように、発電素子901は、一対の磁歪棒911,912と、それら一対の磁歪棒911,912の一端を支持する第1ヨーク921と、一対の磁歪棒911,912の他端を支持する第2ヨーク922と、一対の磁歪棒911,912にそれぞれ巻回される一対のコイルと、一対の磁歪棒911,912の一端および他端にそれぞれ磁極を違えて配設される一対の永久磁石と、それら一対の永久磁石を連結することで一対の磁歪棒911,912にバイアス磁界を付与するバックヨークとを主に備える。
【0004】
発電素子901は、第1ヨーク921を振動体に固着すると共に、第2ヨーク922を自由端とした状態で設置され、振動体の振動に伴って、磁歪棒911,912の軸直角方向へ第2ヨーク922を振り子運動(自由振動)させることで、磁歪棒911,921の一方および他方に軸方向の伸張および収縮をそれぞれ発生させる。即ち、
図5(a)に示すように、振り子運動により、磁歪棒911,921が曲げ変形されることで、一方(磁歪棒911)に軸方向の収縮が、他方(磁歪棒912)に軸方向の伸張が、それぞれ発生される。これにより、磁歪棒911,912の軸方向と平行な方向に磁束密度が変化し(逆磁歪効果)、磁歪棒911,912にそれぞれ巻回されたコイルに電流が発生し、発電が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、発電素子1の全体構成について説明する。
図1(a)は、本発明の一実施の形態における発電素子1の上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の矢印Ib方向から視た発電素子1の側面図である。また、
図2(a)は、発電素子1の下面図であり、
図2(b)は、
図1(a)のIIb−IIb線における発電素子1の断面図である。なお、
図1及び
図2では、コイル31,32が模式的に図示される。
【0013】
図1及び
図2に示すように、発電素子1は、相対的に強制並進運動(強制振動)される二部材(第1部材M1及び第2部材M2)の間に介設されて使用され、それら第1部材M1及び第2部材M2の強制並進運動に伴って磁歪棒11,12に軸方向(長手方向)の変形が付与されることで、磁歪棒11,12の逆磁歪効果を利用して振動発電を行う。なお、本実施の形態では、第1部材M1が自動車の車体フレームであり、第2部材M2がエンジンブラケットである。
【0014】
なお、第1部材M1及び第2部材M2は、第1部材M1に対して第2部材M2が、矢印X1又はX2方向(
図1(a)上下方向、
図1(b)紙面垂直方向)に相対的に直進する(強制並進運動する)。
【0015】
発電素子1は、磁歪材料から構成される一対の磁歪棒11,12と、それら一対の磁歪棒11,12の軸方向一端(
図1(a)左側)を支持する第1ヨーク21と、一対の磁歪棒11,12の軸方向他端(
図1(a)右側)を支持する第2ヨーク22と、一対の磁歪棒11,12にそれぞれ巻回される一対のコイル31,32と、一対の磁歪棒11,12に磁極を違えて配設される一対の永久磁石41,42と、それら一対の永久磁石41,42を連結するバックヨーク50とを備える。
【0016】
磁歪棒11,12は、厚み寸法(
図1(b)紙面垂直方向寸法)に対して高さ寸法(
図1(b)上下寸法)が大きな断面長方形の板状体であり、互いに同一形状に形成されると共に、面積が大きな側面同士を対向させて上面視ハの字状に配置される。なお、本実施の形態では、磁歪材料として、鉄ガリウム合金が採用される。
【0017】
第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、非磁性材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)から構成される部材であり、第1部材M1及び第2部材M2にそれぞれ配設(固着)される。即ち、第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、第1部材M1及び第2部材M2の相対運動に連動して、相対的に強制並進運動される。よって、強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向)をX軸、後述する仮想線SY方向をY軸と仮定した場合、磁歪棒11,12は、その一端(
図1(a)左側)に対し他端(
図1(a)右側)が、Y軸方向(
図1(a)左右方向の)の変位、及び、Z軸(
図1(a)紙面垂直方向)周りの回転が拘束された状態で、X軸に沿って相対的に直進される。
【0018】
ここで、第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、磁歪棒11,12を、仮想線SYを対称軸として線対称となる上面視ハの字状に配設(支持)する。仮想線SYは、磁歪棒11,12の高さ方向(
図1(b)上下方向)の中央を通る平面上に位置し、かつ、第1部材M1に対して第2部材M2が相対的に直進する方向(強制並進運動の方向、矢印X1又はX2方向)に直交する直線である。
【0019】
発電素子1(第1ヨーク21及び第2ヨーク22)は、強制並進運動の振幅の原点が仮想線SY上に位置するように、第1部材M1及び第2部材M2に配設される。よって、強制並進運動(強制振動)の振幅が原点にある状態(発電素子1の初期位置)では、磁歪棒11,12が仮想線SYに対して線対称に配置される。この発電素子1の初期位置では、磁歪棒11,12に外力が作用せず、無負荷状態となる。
【0020】
第1ヨーク21及び第2ヨーク22は、磁歪棒11,12が突出される面が、磁歪棒11,12の軸方向に垂直な平面として形成される。但し、これらの面を磁歪棒11,12の軸方向に非垂直な平面(例えば、強制並進運動の直進方向(矢印X1,X2方向)に平行な面)としても良い。
【0021】
なお、第1ヨーク21及び第2ヨーク22による磁歪棒11,12の支持(接合)は、第1ヨーク21及び第2ヨーク22に凹設されたスリットに磁歪棒11,12の端部を挿入し、スリットの内面と磁歪棒11,12との間の隙間に接着剤を充填することで行われる。
【0022】
但し、かかる支持(接合)は、第1ヨーク21及び第2ヨーク22を圧縮変形させ、スリットの内面を磁歪棒11,12に密着させる方法や、第1ヨーク21及び第2ヨーク22と磁歪棒11,12とを締結ねじにより締結固定する方法、或いは、これらを組み合わせた方法であっても良い。
【0023】
コイル31,32は、銅線から構成される線材を磁歪棒11,12にそれぞれ巻回したコイルである。コイル31,32と磁歪棒11,12との間には隙間が設けられる。本実施の形態では、コイル31,32の巻数が同一の巻数とされる。但し、巻数は、コイル31,32で異なっていても良い。
【0024】
永久磁石41,42及びバックヨーク50は、磁歪棒11,12にバイアス磁界を付与するための部材であり、それぞれ断面矩形の棒状に形成される。永久磁石41,42は、磁歪棒11,12の一端および他端(
図2(a)左側および右側)の下面にそれぞれ磁着される磁石であり、磁歪棒11,12の間に架設される。バックヨーク50は、磁性材料から構成され、永久磁石41,42の間に架設される。
【0025】
永久磁石41及び永久磁石42は、上述したように、磁極を互いに異ならせて磁歪棒11,12に配設(磁着)される。即ち、永久磁石41は、磁歪棒11,12に接続される面側にN極、バックヨーク50に接続される面側にS極が配置される一方、永久磁石42は、磁歪棒11,12に接続される面側にS極、バックヨーク50に接続される面側にN極が配置される。
【0026】
これにより、磁歪棒11,12と、永久磁石41,42と、バックヨーク50とにより磁気ループが形成され、永久磁石41,42の起磁力によるバイアス磁界が磁歪棒11,12に付与される。その結果、磁歪棒11,12の磁化容易方向(磁化の方向または磁化が生じ易い方向)が、磁歪棒11,12の軸方向(長手方向)に設定される。
【0027】
なお、永久磁石41,42は、バックヨーク50に固着され、相対変位不能とされる一方、磁歪棒11,12に対しては磁着されるので、相対変位可能(滑動可能)とされる。これにより、強制振動の入力時に、永久磁石41,42及びバックヨーク50によって磁歪棒11,12の変形が妨げられることが抑制される。
【0028】
発電素子1は、磁歪棒11,12が仮想線SYに対してそれぞれ傾斜されるので、その傾斜の分、磁歪棒11,12にそれぞれ軸方向(長手方向)への変形を付与することができる。即ち、1の磁歪棒(磁歪棒11及び磁歪棒12)の全体としての変形を、軸方向への伸張または収縮とすることができるので、発電に必要な磁束密度の変化を得ることができ、その結果、強制振動においても、発電を可能とすることができる。
【0029】
また、発電素子1は、磁歪棒11,12が仮想線SYを挟んでハの字状に配設される。よって、強制振動の入力により、第1ヨーク21に対して第2ヨーク22が初期位置(
図1(a)の状態)から一方向(矢印X1方向、
図1(a)上方向)に相対的に直進(強制並進運動)されると、発電素子1は、磁歪棒11,12の内の一方の磁歪棒12を伸張させると共に他方の磁歪棒11を収縮させ、逆に、第1ヨーク21に対して第2ヨーク22が初期位置から他方向(矢印X2方向、
図1(a)下方向)に相対的に直進されると、磁歪棒11,12の変形方向を反転させ、磁歪棒11,12の内の一方の磁歪棒12を収縮させると共に他方の磁歪棒11を伸張させる。これにより、発電に必要な磁束密度の時間的変化が断続的とならず、連続させることができるので、発電を安定的に行うことができる。
【0030】
更に、発電素子1によれば、磁歪棒11,12のハの字状が、仮想線SYに対して線対称に配設され、仮想線SYの位置が強制並進運動の振幅の原点とされる(即ち、仮想線SYの位置で無負荷の状態となり、その状態を起点として矢印X1方向および矢印X2方向の最大振幅が等しくなる)ので、磁歪棒11,12のそれぞれに発生する最大変形量(最大応力)を同一とすることができる。よって、磁歪棒11,12の変形態様を均一化して、発電を安定的に行うことができる。また、磁歪棒11,12の負荷を同一として、寿命(メンテナンスサイクル)を均一化できる。
【0031】
次いで、
図3及び
図4を参照して、仮想線SYに対する磁歪棒11,12の傾斜角度の設定方法について説明する。
図3は、磁歪材料に作用する応力とその応力作用時の磁束密度との関係を図示するグラフであり、
図4は、磁歪棒11の上面模式図である。なお、
図3では、実測値の内の代表的な3つの特性のみを図示する。また、
図4は、
図1(a)に対応する。
【0032】
図3に特性S1,S2,S3として図示するように、磁歪材料(磁歪棒11)の磁束密度は、付与される応力(
図3では圧縮応力)の値によって変化すると共に、その応力の変化に対する磁束密度の変化の態様は、永久磁石41,42により付与される磁歪棒11のバイアス磁界の大きさに応じて異なる。なお、特性S1,S2,S3のそれぞれのバイアス磁界は、7.8kA/m、23.4kA/m及び39.0kA/mである。
【0033】
発電素子1の発電効率を高めるためには、磁歪棒11に作用する応力の変化に対して、磁束密度の変化が大きな領域(即ち、傾きが大きい領域)で使用されることが好ましい。また、発電素子1は、上述したように、強制並進運動の振幅の原点において無負荷状態とされるので、
図3の原点付近(即ち、応力が0MPa)から磁束密度が大きく変化する特性であることが好ましい。
【0034】
この点より、
図3に図示される3つの態様であれば、原点付近から傾きの大きな線形領域を得ることのできる特性S1が好ましい。なお、バイアス磁界を特性S1の場合(7.8kA/m)よりも小さくした場合には、磁束密度の変化が飽和する(即ち、傾きが小さくなる)最大応力(特性S1の場合は約50MPa)が小さくなり、使用できる(即ち、発電に寄与する)応力範囲が狭くなる。
【0035】
このように、使用する磁歪材料を用いて、
図3に示す応力と磁束密度の関係を作成することで、磁歪棒11に付与すべきバイアス磁界の大きさを決定することができ、本実施の形態では、特性S1が採用され、バイアス磁界の大きさが7.8kA/mと決定される。その結果、使用すべき永久磁石41,42の特性、及び、磁歪棒11に付与すべき最大応力(約50MPa)を得ることができる。
【0036】
図4に示すように、磁歪棒11の軸方向(長手方向)の長さ寸法(第1ヨーク21及び第2ヨーク22による支持部位間の距離)をL、強制振動により入力される振幅(
図1(a)の矢印X1方向の振幅)をD、仮想線SYに対する磁歪棒11の傾斜角度をθ、と定義する。
【0037】
この場合、磁歪棒11の軸方向の収縮量(たわみ量)は、D×sinθであるので、磁歪棒11の軸方向のひずみεは、ε=D×sinθ/Lとなり、よって、磁歪棒11の軸方向の応力(圧縮応力)は、σ=E×ε=E×(D×sinθ/L)となる(以下「式1」と称す)。なお、Eは、磁歪棒11のヤング率(本実施の形態ではE=70000N/平方mm)である。
【0038】
上述したように、本実施の形態では、磁歪棒11に作用すべき応力σの最大値は50MPaである(即ち、磁歪棒11に0MPa〜50MPaの範囲での応力変動を付与する形態が、磁束密度の変化が大きくなり、最も発電効率が良い。
図3参照)。よって、式1において、応力σが50MPaとなるように、振幅D、傾斜角度θ及び磁歪棒11の長さ寸法Lをそれぞれ設定することで、傾斜角度θが決定される。
【0039】
なお、発電素子1の使用環境(即ち、第1部材M1及び第2部材M2の間隔および相対変位量)により振幅D及び磁歪棒11の長さ寸法Lがそれぞれ確定している場合には、傾斜角度θが一の値に決定される。
【0040】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0041】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0042】
上記実施の形態では、第1ヨーク21が一の部材として形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、磁歪棒11を支持する部分と磁歪棒12を支持する部分とが別体とされた二の部材から形成されていても良い。第2ヨーク22についても同様である。
【0043】
上記実施の形態では、磁歪棒11,12が仮想線SYに対して線対称に配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、磁歪棒11,12が仮想線SYに対して非対称(仮想線SYに対する磁歪棒11の傾斜方向と仮想線SYに対する磁歪棒12の傾斜方向とが同じ方向の場合を含む)であっても良い。即ち、磁歪棒11,12が、仮想線SY(即ち、強制並進運動の直進方向(
図1(a)矢印X1,X2方向)に直交する線)に対してそれぞれ傾斜して配設されていれば良い。
【0044】
上記実施の形態では、初期位置(強制並進運動の振幅の原点にある状態)では磁歪棒11,12が無負荷状態とされる状態で発電素子1が構成(使用)される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、初期位置において、磁歪棒11,12に一定荷重が付与される状態で発電素子1を使用しても良い。即ち、磁歪棒11,12を軸方向に収縮させた(軸方向に圧縮応力を付与した)状態で、発電素子1を構成(使用)しても良い。
【0045】
ここで、このように、磁歪棒11,12に初期応力(初期圧縮応力)を付与する場合には、永久磁石41,42の磁力を変更し、付与するバイアス磁界の値を設定し直す。例えば、磁歪棒11,12に付与される初期応力が80MPaであれば、磁歪棒11に80MPa〜130MPaの範囲での応力変動を付与できるように、バイアス磁界を23.4kA/mとする。これにより、
図3の特性S2における線形領域を使用できるので、発電効率の向上を図ることができる。なお、バイアス磁界の値だけでなく、長さ寸法L等の他のパラメータも併せて変更することは当然可能である。
【0046】
上記実施の形態では、その説明を省略したが、発電素子1の適用対象として、自動車を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、船舶や鉄道車両などの移動体、工場設備(例えば、プレス機)などの固定物、人体などであっても良い。即ち、その移動や駆動、運動に起因して少なくとも強制振動(共生並進運動)を発生するものであれば良くその形態は限定されない。
【0047】
また、第1部材M1及び第2部材M2として、自動車の車体フレーム及びエンジンブラケットを例示したが、これに限られるものではない。例えば、自動車の車体フレーム及びサスペンションアーム、自動車の車体フレームとドア、などであっても良い。いずれの場合であっても、発電素子1は、例えば、車体フレーム及びエンジンブラケットに直接配設される必要はない。即ち、車体フレーム及びエンジンブラケットは必ずしも強制並進運動のみを発生させるものではないので、車体フレームに対するエンジンブラケットの相対移動に伴い強制並進運動する二部材を備えた構造体を設け、その構造体の二部材(第1部材M1及び第2部材M2)の間に発電素子1は配設することが好ましい。
<その他>
<手段>
この目的を達成するために、技術的思想1の発電素子は、磁歪材料から構成される一対の磁歪棒と、それら一対の磁歪棒の一端を支持する第1ヨークと、前記一対の磁歪棒の他端を支持する第2ヨークと、前記一対の磁歪棒にそれぞれ巻回される一対のコイルと、前記一対の磁歪棒の一端および他端にそれぞれ磁極を違えて配設される一対の永久磁石と、それら一対の永久磁石を連結するバックヨークと、を備え、前記第1ヨークに対する第2ヨークの相対移動により、前記一対の磁歪棒が伸張または収縮することで、発電を行う発電素子において、前記第1ヨークに対する第2ヨークの相対移動が強制並進振動であり、前記一対の磁歪棒が、前記一対の磁歪棒の高さ方向の中央を通る平面上に位置し、かつ、前記強制並進運動の直進方向に直交する仮想線に対してそれぞれ傾斜して配設される。
技術的思想2の発電素子は、技術的思想1記載の発電素子において、前記一対の磁歪棒は、前記仮想線を挟んでハの字状に配設される。
技術的思想3の発電素子は、技術的思想1又は2に記載の発電素子において、前記ハの字状に配設される一対の磁歪棒は、前記仮想線を対称軸として線対称に配設されると共に、前記仮想線の位置が前記強制並進運動の振幅の原点とされる。
<効果>
技術的思想1記載の発電素子によれば、第1ヨークに対して第2ヨークが相対的に強制並進運動されるところ、一対の磁歪棒を、一対の磁歪棒の高さ方向の中央を通る平面上に位置し、かつ、強制並進運動の直進方向に直交する仮想線に対してそれぞれ傾斜させて配設するので、その傾斜の分、一対の磁歪棒にそれぞれ軸方向への変形を付与することができる。即ち、1の磁歪棒の全体としての変形を、軸方向への伸張または収縮とすることができるので、発電に必要な磁束密度の変化を得ることができ、その結果、強制振動においても、発電を可能とすることができる。
技術的思想2記載の発電素子によれば、技術的思想1記載の発電素子の奏する効果に加え、一対の磁歪棒は、仮想線を挟んでハの字状に配設されるので、強制並進運動が仮想線に対して一方向へ入力される場合には、一対の磁歪棒の内の一方を伸張させると共に他方を収縮させ、強制並進運動が仮想線に対して他方向へ入力される場合には、一対の磁歪棒の変形方向を反転させ、一方を収縮させると共に他方を伸張させることができる。これにより、発電に必要な磁束密度の時間的変化が断続的とならず、連続させることができるので、発電を安定的に行うことができる。
技術的思想3記載の発電素子によれば、技術的思想1又は2に記載の発電素子の奏する効果に加え、一対の磁歪棒は、仮想線に対して線対称となるハの字状に配設され、仮想線の位置が強制並進運動の振幅の原点とされる(即ち、仮想線の位置で無負荷の状態となり、その状態を起点として正側および負側の最大振幅が等しくなる)ので、一対の磁歪棒のそれぞれに発生する最大変形量(最大応力)を同一とすることができる。よって、一対の磁歪棒の変形態様を均一化して、発電を安定的に行うことができる。