特許第5890741号(P5890741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890741
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】吊り装置の二重化旋回吊り具
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/19 20060101AFI20160308BHJP
   G21C 19/02 20060101ALI20160308BHJP
   B66C 1/34 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   G21C19/19 C
   G21C19/02 X
   B66C1/34 D
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-100763(P2012-100763)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-228290(P2013-228290A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 慶太
(72)【発明者】
【氏名】大谷 正治
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英俊
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智尋
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−040827(JP,B1)
【文献】 特開2002−211883(JP,A)
【文献】 実開平06−020378(JP,U)
【文献】 特開平08−169687(JP,A)
【文献】 特開昭57−033188(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3112022(JP,U)
【文献】 実公昭36−001552(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−173482(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21C 19/19
G21C 19/32
B66C 1/00− 3/20
B66C 13/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造物から少なくとも二重の懸垂手段により懸垂された上フレームと、下フレームと、前記上フレーム及び下フレームを旋回自在に結合する旋回軸と、前記下フレームに旋回及び揺動自在に設けられ吊り荷を保持するフック及び玉掛け部を有する吊り装置において、前記上フレームと前記下フレームを回動自在に接続する係止部を設けたことを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項2】
請求項1に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記係止部は前記上フレームと前記下フレームを常時接触状態に保つことを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記係止部は前記上フレームと前記下フレームの間に設けられてラジアル荷重とアキシャル荷重を負荷する旋回軸受からなることを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記係止部は前記上フレームと前記下フレームの間に設けられ、前記旋回軸の外周に設けられた中空旋回軸からなることを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項5】
請求項1に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記係止部は前記上フレームと前記下フレームを常時非接触状態に保つことを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項6】
請求項1又は2又は5のいずれか一項に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記係止部は前記上フレームと前記下フレームの間に設けられた脱落防止金具からなることを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項7】
請求項6に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記脱落防止金具は、前記上フレームと前記下フレームの一方に設けられた円周溝と、前記上フレームと前記下フレームの他方に設けられ円周溝と係合する係合部からなることを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載された吊り装置の二重化旋回吊り具において、前記上フレーム内に前記旋回軸を回動する旋回駆動機構を設け、前記旋回軸及び前記下フレームを自動的に旋回することを特徴とする吊り装置の二重化旋回吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所での放射性物質の移送等に用いられる吊り装置のように、吊り荷の保持部に高い信頼性を要求されるクレーン等の吊り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の原子力施設において、放射性物質の輸送・貯蔵用容器であるキャスクを搬送するクレーンは、吊り荷の落下を確実に防止する基本的安全機能を維持するため、ワイヤロープやフック等の主要部の二重化が要求されている。
【0003】
ここでの二重化とは、ある役割を果たす機構が破損等によって機能を維持できなくなった場合に、同じ役割を果たす別の代替機構により機能が維持され安全性が確保されることをいう。従来の吊り装置においても、ワイヤロープ等による吊り下げ部や、吊り荷の保持部を二重化したものは既に存在している。
【0004】
図5に、従来の吊り装置の構成を示す。図5において1と2はクレーンに設けられたトロリから吊り下げられたワイヤロープである。2系統のワイヤロープ1、2をシーブ3に交互に多重掛けすることにより、吊り装置上部の吊り下げ部の二重化を実現している。また、吊り装置下部の吊り荷保持部において、フレーム4の下部には、フック17が回動自在に取り付けられ、フレーム4の側面には玉掛け部18が設けられている。これにより図示しない吊り荷をロープ、リンク等の懸垂手段で二重に保持している。フック17と玉掛け部18で吊り荷を保持することにより、いずれかが破損した場合でも吊り荷を保持することが出来るようにしている。
【0005】
ただし、この時、搬送作業のために吊り荷を回転させようとしても、従来はフック以外の玉掛け部に旋回機構が設けられていない為、吊り荷の旋回は不可能であった。これまで二重化した状態で旋回可能な吊り具は存在しておらず、そのため、従来施設においては、別途吊り荷の旋回設備が必要だった。
【0006】
特許文献1には、キャスク等の吊下装置において、キャスクの落下防止を考慮した直交する2つの容器トラニオン軸を保持する第一の保持部と第二の保持部を有する二重化された吊り機構が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、移送キャスク設備において、特に図5に示すように反射体交換プラグを吊り下げる主巻上治具25及び吊りワイヤ27aと、副巻上治具26及び吊りワイヤ27bからなる二重化された吊り機構が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、旋回吊りビームにおいて、中央のフック11と、両端に一対のフックを有する吊りビームとを同時回転可能とし、作業性を向上する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−8545号公報
【特許文献2】特開2004−45146号公報
【特許文献3】特開昭60−77086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1には、旋回機構について二重化してその安全性を図る構成は開示されていない。また、特許文献2にも同じく旋回機構について二重化してその安全性を図る構成は開示されていない。さらに、特許文献3にはレバー18a、18bによりフレーム2とビーム13を固定して同時に回動させる構成は開示されているが、旋回機能を保ったままこれを二重化する構成は開示されていない。
【0011】
上記原子力施設等においては、敷地面積が限られているために旋回設備の設置が困難な場合がある。その場合に、吊り装置で吊り下げ部や吊り荷保持部や旋回部の二重化を保ったまま旋回可能であれば、吊り装置以外の特別な旋回設備を必要とせずに、基本的安全機能を維持したまま作業性を大幅に向上させることができる。
【0012】
そこで本発明の目的は、上述した課題に鑑み、旋回可能な二重化された吊り具を有する吊り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成する二重化旋回吊り具を実現するには、吊り荷の保持部の二重化を維持したままで旋回を可能とする必要がある。これには吊り具のフレームを上下に分割し、上部にワイヤロープなどによる懸垂部、下部に吊り荷の保持部を設けた上で、その間に旋回機構を設ければよい。この旋回機構は下フレームの懸垂も担う必要がある。
【0014】
旋回部の二重化には、旋回軸を介して上下フレームを接続し、同時に吊り荷荷重に耐えられる他の旋回軸受を介して上下フレームを接続することにより、二重化旋回吊り具が実現できる。
【0015】
クレーン本体からの吊り下げに関してはワイヤロープを複数本使用することにより二重化が可能であり、吊り下げ部、旋回部、吊り荷の保持部を二重化することにより、吊り具全体として二重化された二重化旋回吊り具が実現できる。
【0016】
また、旋回機構の二重化は、旋回軸を外側中空軸と内側中実軸の二重構造とすること等によっても実現できる。
【0017】
また、旋回軸受の代わりに脱落防止金具を用いて二重化旋回吊り具を実現する。
【0018】
本発明は、支持構造物から少なくとも二重の懸垂手段により懸垂された上フレームと、下フレームと、上フレーム及び下フレームを旋回自在に結合する旋回軸と、下フレームに旋回及び揺動自在に設けられ吊り荷を保持するフック及び玉掛け部を有する吊り装置において、上フレームと下フレームを回動自在に接続する係止部を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、係止部は上フレームと下フレームを常時接触状態に保つことを特徴とする。
【0020】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、係止部は上フレームと下フレームの間に設けられてラジアル荷重とアキシャル荷重を負荷する旋回軸受からなることを特徴とする。
【0021】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、係止部は上フレームと下フレームの間に設けられ、旋回軸の外周に設けられた中空旋回軸からなることを特徴とする。
【0022】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、係止部は上フレームと下フレームを常時非接触状態に保つことを特徴とする。
【0023】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、係止部は上フレームと下フレームの間に設けられた脱落防止金具からなることを特徴とする。
【0024】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、脱落防止金具は、上フレームと下フレームの一方に設けられた円周溝と、上フレームと下フレームの他方に設けられ円周溝と係合する係合部からなることを特徴とする。
【0025】
また、吊り装置の二重化旋回吊り具において、上フレーム内に旋回軸を回動する旋回駆動機構を設け、旋回軸及び下フレームを自動的に旋回することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、支持構造物から少なくとも二重の懸垂手段により懸垂された上フレームと、下フレームと、上フレーム及び下フレームを旋回自在に結合する旋回軸と、下フレームに旋回及び揺動自在に設けられ吊り荷を保持するフック及び玉掛け部を有する吊り装置において、上フレームと下フレームを接続する係止部を設けたことにより、吊り具として二重化を保ったまま吊り荷の旋回を行うことができ、旋回設備を削減するとともに、旋回設備使用時に行っていた吊り荷の掛け換え作業をなくすことができ、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例1の吊り具を示す一部を破断した正面図である。
図2】本発明の実施例2の吊り具を示す一部を破断した正面図である。
図3】本発明の実施例3の吊り具を示す一部を破断した正面図である。
図4】本発明の実施例4の吊り具を示す一部を破断した側面図である。
図5】従来例の吊り具の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1を示す。実施例1は吊り下げ部と旋回と吊り荷の保持部を共に二重化した上で、さらに旋回駆動機構を設けた吊り具の構造を示す。
【0030】
図1において、吊り具の上フレーム4a内に固定された上ハウジング5に、ナット6と一体に固定された旋回軸7aが、スラスト軸受8aにより回転自在に支持されている。旋回軸7aの下端は、下フレーム9内に設けられた下ハウジング10に固定されている。
【0031】
下フレーム9は、上フレーム4aに対してさらに旋回軸受11aによって回転自在かつ懸垂可能に接続されている。旋回軸受はラジアル荷重とアキシャル荷重に対し支持可能に構成されている。実施例1では、下フレーム9によるアキシャル荷重を負荷された場合にこれを支持可能としている。従って、旋回軸7aあるいは旋回軸受11aのいずれかが破損して機能を失った場合でも、残った旋回軸7aあるいは旋回軸受11aによって下フレーム9の旋回および懸垂が可能となり、旋回機構の二重化を実現している。
【0032】
下フレーム9には、例えば旋回自在かつ揺動可能にフック17が取り付けらているが、それと別に玉掛け部18を設けている。これによりフック17と玉掛け部18のいずれかが破損しても、残った側で吊り荷の保持が可能となり、吊り荷の保持部の二重化を実現している。
【実施例2】
【0033】
図2は本発明の実施例2を示す。図2において、旋回軸受11aの代わりに、旋回軸7aと同様に、上ハウジング5にスラスト軸受8bにより旋回可能に支持された中空旋回軸7bを用いる。中空旋回軸7bの下端は下ハウジング10に固定されている。
【0034】
実施例2の構成によれば、中空旋回軸7bを旋回軸7aの外周に同心円上に設けることにより、旋回機構をよりコンパクトに構成する事が出来る。
【実施例3】
【0035】
図3は本発明の実施例3を示す。吊り具の二重化として、旋回軸受11aの代わりに脱落防止金具11bを使用することでも二重化が実現可能である。
【0036】
脱落防止金具11bは、上フレーム4aと下フレーム9に各々固定された一対の係合部品が常時は非接触または摺動状態にあり、旋回軸7aが破断したときに、係合して上フレーム4aと下フレーム9を互いに係止する。脱落防止金具11bは、一方が円周溝で他方が円周溝に係合する金具等で構成し、回動可能に構成することができる。
【0037】
旋回機構の二重化を考慮せず、単に吊り荷や吊り具の落下防止を図る場合には、数ヵ所独立して設けた脱落防止金具を設けることで足りる。但しこの場合には旋回機構の二重化機能を持たない。
【実施例4】
【0038】
図4は本発明の実施例4を示す。図4では、更に旋回軸7aを、ナット6、スプロケット12、13、チェーン14、減速機15を介してモータ16で駆動することにより、動力により下フレーム9を旋回制御している。なお、図4はチェーン伝動を用いているが、特にチェーン伝動に拘らず、ベルト伝動や歯車機構等の他の伝動機構でも旋回軸7aを旋回制御することが可能である。上記構造によれば、重量物からなるキャスク等の吊り荷を容易に操作することが可能となる。
【0039】
下フレーム9には、旋回自在かつ揺動可能にフック17が取り付けられ、さらに玉掛け部18を有し、フック17と玉掛け部18のいずれかが破損しても、残ったフック17又は玉掛け部18で吊り荷の保持が可能な二重化構造を備えている。
【符号の説明】
【0040】
1、2…ワイヤロープ
3…シーブ
4…フレーム
4a…上フレーム
5…上ハウジング
6…ナット
7a…旋回軸
7b…中空旋回軸
8a…スラスト軸受
8b…スラスト軸受
9…下フレーム
10…下ハウジング
11a…旋回軸受
11b…脱落防止金具
12、13…スプロケット
14…チェーン
15…減速機
16…モータ
17…フック
18…玉掛け部
図1
図2
図3
図4
図5