特許第5890745号(P5890745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890745
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】硬貨検知センサおよび硬貨検出装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20160308BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   G07D9/00 410B
   G07D1/00GBB
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-111766(P2012-111766)
(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公開番号】特開2013-239030(P2013-239030A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】307003777
【氏名又は名称】株式会社日本コンラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 与志一
(72)【発明者】
【氏名】富野 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】竹花 圭二
(72)【発明者】
【氏名】木村 康行
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】時庭 正明
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−175307(JP,A)
【文献】 特開昭54−66896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 9/04
G07D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面コイルを配設した基板からなる硬貨検知センサであって、
前記基板は、硬貨収納筒内の硬貨の積層方向に沿う第一の面および第二の面を有し、
前記平面コイルは、前記基板の第一の面および第二の面に、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設され、
その配設は、前記基板の第一の面に配設された複数の平面コイルのうち、隣接する平面コイル間の中間位置付近に、前記基板の第二の面に配設された平面コイルの中心が位置するようにしたものであり、
複数の前記平面コイルは、それぞれによる発振周波数の変化を検出するために、それぞれ独立して通電可能であることを特徴とする硬貨検知センサ。
【請求項2】
平面コイルを配設した基板からなる硬貨検知センサであって、
前記基板は、硬貨積層方向に沿う第一の面および第二の面を有し、
前記基板の第一の面と第二の面にそれぞれ半分ずつ形成されたコイル状導体パターンを電気的に接続して1個の平面コイルを構成するものであり、
前記平面コイルは、前記基板の第一の面および第二の面に、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設され、
その配設は、前記基板の第一の面において平面コイルの半分が形成される領域と、前記基板の第二の面において別の平面コイルの半分が形成される領域とが基板の板厚方向に重なるようにしたものであり、
複数の前記平面コイルは、それぞれによる発振周波数の変化を検出するために、それぞれ独立して通電可能であることを特徴とする硬貨検知センサ。
【請求項3】
前記平面コイルを形成するコイル状導体パターンは、第一の直線方向に沿う第一の直線導体パターンと、第二の直線方向に沿う第二の直線導体パターンとの組み合せにより構成され、
前記基板の第一の面に配設されたコイル状導体パターンと前記基板の第二の面に配設されたコイル状導体パターンを形成する第一の直線導体パターン同士および第二の直線導体パターン同士は、基板の板厚方向に重ならないように配設されることを特徴とする請求項1または2に記載の硬貨検知センサ。
【請求項4】
前記基板の第一の面に形成されたコイル状導体パターンの導体幅と、前記基板の第二の面に形成されたコイル状導体パターンの導体幅とが異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬貨検知センサ。
【請求項5】
硬貨積層方向に沿うように平面コイルが配設された基板と、
高周波の発振信号を供給して前記平面コイルに交流磁界を発生させ、該平面コイルの近傍に存在する硬貨の枚数に応じて発振周波数が変化するように構成される発振回路と、
前記発振回路の発振周波数を検出し、該発振周波数にもとづいて硬貨の枚数を算出する計数手段とを備える硬貨検出装置であって、
硬貨積層方向に沿う第一の面および第二の面を有する前記基板と、
前記基板の第一の面および第二の面に、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように並列状に配設される複数の平面コイルと、
複数の前記平面コイルのうち、選択された一つの平面コイルに発振回路の発振信号を供給する発振切替手段とを備え、
前記計数手段は、
選択された平面コイルによる発振周波数の変化を検出する周波数検出手段と、
該発振周波数にもとづいて、選択された平面コイルの硬貨検知領域に存在する硬貨の枚数を算出する硬貨枚数算出手段とを備え、
前記硬貨枚数算出手段は、前記発振切替手段による平面コイルの切り替え毎に、選択された平面コイルの硬貨検知領域に存在する硬貨の枚数を算出し、複数の平面コイルに係る算出結果にもとづいて硬貨の積層枚数を算出することを特徴とする硬貨検出装置。
【請求項6】
前記発振切替手段は、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルのうち、最下部の平面コイルから上部に配設された平面コイル側へ順に切替えることを特徴とする請求項5に記載の硬貨検出装置。
【請求項7】
前記発振切替手段は、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルのうち、最上部の平面コイルから下部に配設された平面コイル側へ順に切替えることを特徴とする請求項5に記載の硬貨検出装置。
【請求項8】
前記計数手段は、前回算出した硬貨積層枚数を記憶する記憶部を備えるとともに、該記憶部に記憶された硬貨積層枚数を検知する位置に配設された平面コイルから発振信号の供給を開始させ、該平面コイルに係る算出結果にもとづいて、次に発振信号を供給する平面コイルの順序を判定することを特徴する請求項5に記載の硬貨検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨を積層状に整列収納する硬貨収納筒内の硬貨枚数を検出するのに使用される硬貨検知センサや、硬貨検知センサによる発振周波数の変化にもとづいて硬貨の枚数を算出する硬貨検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、硬貨収納筒に積層状に整列収納された硬貨の枚数を検出する技術として、特許文献1に示すように、プリント基板の片面に硬貨収納筒に沿う1つの平面コイルを配設したものを過去に提案した。この提案では、平面コイルに所定の発振周波数の交流磁界を発生させる平面コイルを含む発振回路と、該平面コイルの近傍に存在する硬貨収納筒に収納された硬貨の枚数に応じて変化する該発振周波数を検出する周波数カウンタと、検出した該発振周波数にもとづいて硬貨の枚数を算出する計数手段とを備えることにより、硬貨収納筒に収納された硬貨の枚数を検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−175307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるものでは、特許文献1の図5に示すように、硬貨の枚数に応じて変化する発振周波数の波形が、10〜60枚までの範囲では適度な勾配の直線となっているものの、0〜10枚付近の範囲と、60枚以上の範囲ではなだらかな曲線となっているため、検出精度が低下するという問題があった。
【0005】
その理由としては、特許文献1に示される平面コイルが、大型で矩形状あって、平面コイルの中心から離れるに従って、平面コイルの渦巻きの間隔が広くなっているためと考えられる。そのため、平面コイルの中心から離れた位置、つまりエンプティ付近と満杯付近では感度が弱くなる傾向があり、硬貨収納筒の全域で硬貨の収納枚数を均一な精度で検出することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明者らは、渦巻きパターンの間隔が均一になるように平面コイルを小型化するとともに、小型化した平面コイルを、硬貨収納筒の硬貨積層方向に並ぶように複数配設することを思いつき、その実験を試みた。
【0007】
しかしながら、このようにしても、隣接する平面コイルの境界部分で感度が弱くなることが判明した。例えば、図7に示す参考例では、平面コイルC1と平面コイルC2の境界部分である9〜13枚の範囲で平面コイルC1および平面コイルC2の両方の検出波形がなだらかになり、また、平面コイルC2と平面コイルC3の境界部分である24〜25枚の範囲での平面コイルC2および平面コイルC3の両方の検出波形がなだらかになっているため、硬貨収納筒の全域で硬貨の収納枚数を均一な精度で検出することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルで硬貨を検出するものでありながら、硬貨の検出感度が弱くなる領域(隣接する平面コイルの境界部分)を並列する別の平面コイルで補うことにより、硬貨積層方向の全域で硬貨をほぼ均一な精度で検出することができる硬貨検知センサおよび硬貨検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1の発明は、平面コイルを配設した基板からなる硬貨検知センサであって、前記基板は、硬貨収納筒内の硬貨の積層方向に沿う第一の面および第二の面を有し、前記平面コイルは、前記基板の第一の面および第二の面に、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設され、その配設は、前記基板の第一の面に配設された複数の平面コイルのうち、隣接する平面コイル間の中間位置付近に、前記基板の第二の面に配設された平面コイルの中心が位置するようにしたものであり、複数の前記平面コイルは、それぞれによる発振周波数の変化を検出するために、それぞれ独立して通電可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、平面コイルを配設した基板からなる硬貨検知センサであって、前記基板は、硬貨積層方向に沿う第一の面および第二の面を有し、前記基板の第一の面と第二の面にそれぞれ半分ずつ形成されたコイル状導体パターンを電気的に接続して1個の平面コイルを構成するものであり、前記平面コイルは、前記基板の第一の面および第二の面に、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設され、その配設は、前記基板の第一の面において平面コイルの半分が形成される領域と、前記基板の第二の面において別の平面コイルの半分が形成される領域とが基板の板厚方向に重なるようにしたものであり、複数の前記平面コイルは、それぞれによる発振周波数の変化を検出するために、それぞれ独立して通電可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の硬貨検知センサにおいて、前記平面コイルを形成するコイル状導体パターンは、第一の直線方向に沿う第一の直線導体パターンと、第二の直線方向に沿う第二の直線導体パターンとの組み合せにより構成され、前記基板の第一の面に配設されたコイル状導体パターンと前記基板の第二の面に配設されたコイル状導体パターンを形成する第一の直線導体パターン同士および第二の直線導体パターン同士は、基板の板厚方向に重ならないように配設されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3の硬貨検知センサにおいて、前記基板の第一の面に形成されたコイル状導体パターンの導体幅と、前記基板の第二の面に形成されたコイル状導体パターンの導体幅とが異なることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、硬貨積層方向に沿うように平面コイルが配設された基板と、高周波の発振信号を供給して前記平面コイルに交流磁界を発生させ、該平面コイルの近傍に存在する硬貨の枚数に応じて発振周波数が変化するように構成される発振回路と、前記発振回路の発振周波数を検出し、該発振周波数にもとづいて硬貨の枚数を算出する計数手段とを備える硬貨検出装置であって、硬貨積層方向に沿う第一の面および第二の面を有する前記基板と、前記基板の第一の面および第二の面に、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように並列状に配設される複数の平面コイルと、複数の前記平面コイルのうち、選択された一つの平面コイルに発振回路の発振信号を供給する発振切替手段とを備え、前記計数手段は、選択された平面コイルによる発振周波数の変化を検出する周波数検出手段と、該発振周波数にもとづいて、選択された平面コイルの硬貨検知領域に存在する硬貨の枚数を算出する硬貨枚数算出手段とを備え、前記硬貨枚数算出手段は、前記発振切替手段による平面コイルの切り替え毎に、選択された平面コイルの硬貨検知領域に存在する硬貨の枚数を算出し、複数の平面コイルに係る算出結果にもとづいて硬貨の積層枚数を算出することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5の硬貨検出装置において、前記発振切替手段は、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルのうち、最下部の平面コイルから上部に配設された平面コイル側へ順に切替えることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項5の硬貨検出装置において、前記発振切替手段は、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルのうち、最上部の平面コイルから下部に配設された平面コイル側へ順に切替えることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項5の硬貨検出装置において、前記計数手段は、前回算出した硬貨積層枚数を記憶する記憶部を備えるとともに、該記憶部に記憶された硬貨積層枚数を検知する位置に配設された平面コイルから発振信号の供給を開始させ、該平面コイルに係る算出結果にもとづいて、次に発振信号を供給する平面コイルの順序を判定することを特徴する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1または請求項2の本発明によれば、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルで硬貨を検出するものでありながら、硬貨の検出感度が弱くなる領域(隣接する平面コイルの境界部分)を並列する別の平面コイルで補うことにより、硬貨積層方向の全域で硬貨をほぼ均一な精度で検出することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、基板の第一の面に配設されたコイル状導体パターンと基板の第二の面に配設されたコイル状導体パターンを、可及的に基板の板厚方向に重ならないように配設することができるので、平面コイルから交流磁界を発生させて近傍の硬貨を検出する際、基板の他方の面に形成されるコイル状導体パターンの磁気的な影響を可及的に排除することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、基板の第一の面に形成されたコイル状導体パターンの導体幅と、基板の第二の面に形成されたコイル状導体パターンの導体幅とを異なる幅に設定することができるので、硬貨の積層枚数を検出する際に平面コイルから発振した磁場が隣接する平面コイルの導体パターンから受ける磁気的な影響を軽減することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルで硬貨の積層枚数を検出するものでありながら、硬貨の検出感度が弱くなる領域(隣接する平面コイルの境界部分)を並列する別の平面コイルで補うことにより、硬貨積層方向の全域で硬貨の枚数をほぼ均一な精度で検出することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルのうち、最下部の平面コイルから上位に配設された平面コイル側へ順に切替えるので、硬貨の積層数が少ない状況では、積層硬貨の上端位置を検出した時点で以降の硬貨検出を省略することにより、硬貨検出処理の所要時間を短縮することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルのうち、最上部の平面コイルから下位に配設された平面コイル側へ順に切替えるので、硬貨の積層数が多い状況では、積層硬貨の上端位置を検出した時点で以降の硬貨検出を省略することにより、硬貨検出処理の所要時間を短縮することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、前回算出した硬貨積層枚数を記憶し、該記憶された硬貨積層枚数を検知する位置に配設された平面コイルから発振信号の供給を開始させ、該平面コイルに係る算出結果にもとづいて、次に発振信号を供給する平面コイルの順序を判定するので、積層硬貨の上端位置を効率良く検出できるだけでなく、以降の硬貨検出を省略することにより、硬貨検出処理の所要時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサと硬貨収納筒との配置関係を示す図であり、(a)は硬貨収納筒側から見た概略斜視図、(b)は硬貨検知センサ側から見た概略斜視図、(c)は側方から見た断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は部分拡大正面図、(b)は部分拡大背面図、(c)は表側のパターンと裏側のパターンとの位置関係を示す説明図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサと硬貨収納筒との配置関係を示す図であり、(a)は硬貨収納筒側から見た概略斜視図、(b)は硬貨検知センサ側から見た概略斜視図、(c)は側方から見た断面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は部分拡大正面図、(b)は部分拡大背面図、(c)は表側のパターンと裏側のパターンとの位置関係を示す説明図である。
図7】参考例に係る硬貨検知センサのコイル配置とその検出波形を示す図であり、(a)は参考例に係る硬貨検知センサの部分側面図、(b)はその検出波形を示すグラフである。
図8】本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサのコイル配置とその検出波形を示す図であり、(a)は本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサの部分側面図、(b)はその検出波形を示すグラフである。
図9】本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサのコイル配置とその検出波形を示す図であり、(a)は本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサの部分側面図、(b)はその検出波形を示すグラフである。
図10】本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の発振回路を示す図であり、一つの平面コイルを例にした基本原理を示すブロック図である。
図12】本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の発振回路及び発振切替手段を示すブロック図である。
図13】本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の硬貨枚数測定処理を示す図であり、その初期動作を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の硬貨枚数測定処理を示す図であり、その第一の例を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の硬貨枚数測定処理を示す図であり、その第二の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0026】
図1は、本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサと硬貨収納筒との配置関係を示す図であり、(a)は硬貨収納筒側から見た概略斜視図、(b)は硬貨検知センサ側から見た概略斜視図、(c)は側方から見た断面図である。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサ10Aは、平面コイル11を配設した基板12からなり、該基板12の一方の面が、硬貨1を積層状に整列収納する硬貨収納筒2の外周面と対向し、硬貨積層方向に沿うように配置して使用されるものである。
【0027】
例えば、高周波の発振信号を供給して平面コイル11に交流磁界を発生させ、該平面コイル11の近傍に存在する硬貨1の枚数に応じて発振周波数が変化する発振回路を構成するとともに、発振回路の発振周波数を検出し、該発振周波数にもとづいて硬貨1の枚数を算出することにより、硬貨収納筒2に収納された硬貨1の枚数を検出することが可能となる。
【0028】
図2は、本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図2に示すように、硬貨検知センサ10Aの基板12は、硬貨積層方向に沿う第一の面12aおよび第二の面12bを有する。硬貨検知センサ10Aを一枚の基板12で構成する本実施形態では、その一方の面(例えば、硬貨収納筒2と対向する面)を第一の面12aとし、その裏側である他方の面を第二の面12bとしている。
【0029】
平面コイル11は、基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに、複数並列状に配設されている。このとき、基板12の第一の面12aに配設される複数の平面コイル11aと、第二の面12bに配設される複数の平面コイル11bは、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように配設される。また、基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに配設された複数の平面コイル11a、11bは、それぞれによる発振周波数の変化を検出するために、それぞれ独立して通電可能となっている。
【0030】
図3は、本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は部分拡大正面図、(b)は部分拡大背面図、(c)は表側のパターンと裏側のパターンとの位置関係を示す説明図である。
図3に示すように、第一実施形態では、平面コイル11a、11bを、基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設するにあたり、基板12の第一の面12aに配設された複数の平面コイル11aのうち、隣接する平面コイル11a間の中間位置付近に、基板12の第二の面12bに配設された平面コイル11bの中心が位置するようにしている。このようにすると、基板12の第一の面12aに配設された平面コイル11aの硬貨検知領域と、基板12の第二の面12bに配設された平面コイル11bの硬貨検知領域との重複域を可及的に大きくでき、また、複数の平面コイル11a、11b間に生じる複数の重複域を均等な大きさにすることができる。
【0031】
図3に示すように、平面コイル11a、11bは、プリント基板からなる基板12に、コイル状導体パターン11c、11dとして形成されており、その形状は、矩形の渦巻きが好ましい。その理由は、硬貨積層方向において平面コイル11a、11bの幅を均等にできるからである。また、より好ましくは正方形である。その理由は、導体パターンの間隔Pを均等にできるからである。
【0032】
矩形の渦巻き形状からなるコイル状導体パターン11c、11dは、第一の直線方向(例えば、硬貨積層方向)に沿う第一の直線導体パターン11eと、第二の直線方向(例えば、硬貨幅方向)に沿う第二の直線導体パターン11fとの組み合せにより構成される。本実施形態では、硬貨検知領域が部分的に重複するように基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに複数の平面コイル11a、11bを配設するにあたり、図3の(c)に示すように、基板12の第一の面12aに配設されたコイル状導体パターン11cと基板12の第二の面12bに配設されたコイル状導体パターン11dを形成する第一の直線導体パターン11e同士および第二の直線導体パターン11f同士は、基板の板厚方向に重ならないように配設される。このようにすると、平面コイル11a、11bから交流磁界を発生させて近傍の硬貨1を検出する際、基板12の他方の面に形成されるコイル状導体パターン11c、11dの磁気的な影響を可及的に排除することができる。
【0033】
図3に示すように、一つの平面コイル11a、11bにおけるコイル状導体パターン11c、11dの導体幅Wは均等であるが、基板12の第一の面12aに形成されたコイル状導体パターン11cの導体幅W1と、基板12の第二の面12bに形成されたコイル状導体パターン11dの導体幅W2は、磁場の影響などを考慮して異なる幅に設定することができる。例えば、硬貨1に近い側の面に形成されたコイル状導体パターン11cの導体幅W1を太くし、硬貨1から遠い側の面に形成されたコイル状導体パターン11dの導体幅W2を細くした場合には、硬貨1に近い側の面に形成されたコイル状導体パターン11cで硬貨を検出する際に、硬貨1から遠い側の面に形成されたコイル状導体パターン11dによる磁気的な影響を小さくすることができる。
【0034】
つぎに、本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサ10Bについて、図4図6を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通する構成については、第一実施形態と同じ符号を用いることにより、第一実施形態の説明を援用する。
【0035】
図4は、本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサと硬貨収納筒との配置関係を示す図であり、(a)は硬貨収納筒側から見た概略斜視図、(b)は硬貨検知センサ側から見た概略斜視図、(c)は側方から見た断面図である。
図4に示すように、本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサ10Bは、平面コイル11を配設した基板12からなるものであること、該基板12の一方の面が、硬貨1を積層状に整列収納する硬貨収納筒2の外周面と対向し、硬貨積層方向に沿うように配置して使用されるものであること、発振回路と組み合せて硬貨1の枚数を検出ものであることなどは前記第一実施形態と同様である。
【0036】
図5は、本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図5に示すように、第二実施形態の硬貨検知センサ10Bは、平面コイル11gを、基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設する点は前記第一実施形態と同様であるが、基板12の第一の面12aと第二の面12bにそれぞれ半分ずつ形成されたコイル状導体パターン11h、11iを電気的に接続して1個の平面コイル11gを構成する点が前記第一実施形態と相違している。
【0037】
図6は、本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサを示す図であり、(a)は部分拡大正面図、(b)は部分拡大背面図、(c)は表側のパターンと裏側のパターンとの位置関係を示す説明図である。
図6に示すように、第二実施形態では、平面コイル11gは、基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数並列状に配設するにあたり、基板12の第一の面12aにおいて平面コイル11gの半分(コイル状導体パターン11h)が形成される領域と、基板12の第二の面12bにおいて別の平面コイル11gの半分(コイル状導体パターン11i)が形成される領域とが基板の板厚方向に重なるようにしている。このようにすると、平面コイル11gの硬貨検知領域の重複域を可及的に大きくでき、また、複数の平面コイル11g間に生じる複数の重複域を均等な大きさにすることができる。
【0038】
なお、第一実施形態の硬貨検知センサ10Bは、図6に示すように、コイル状導体パターン11h、11iが、第一の直線方向に沿う第一の直線導体パターン11jと、第二の直線方向に沿う第二の直線導体パターン11kとの組み合せにより構成される点、基板12の第一の面12aに配設されたコイル状導体パターン11hと基板12の第二の面12bに配設されたコイル状導体パターン11iを形成する第一の直線導体パターン11j同士および第二の直線導体パターン11k同士は、基板の板厚方向に重ならないように配設される点、基板12の第一の面12aに形成されたコイル状導体パターン11hの導体幅W1と、基板12の第二の面12bに形成されたコイル状導体パターン11iの導体幅W2が異なる点は、前記第一実施形態と同様である。
【0039】
つぎに、参考例に係る硬貨検知センサ及び本発明の実施形態に係る硬貨検知センサ10A、10Bによる硬貨の波形について、図7図9を参照して説明する。なお、図7図9の説明においては、その理解を容易にするために、基板12に配設される平面コイルを下側から順番にC1、C2、C3・・・と称する。また、図7図9に示す検出波形は、硬貨の枚数に応じた発振周波数の変化をパルスカウンタ(周波数カウンタ)の出力値であるが、図7図9においては、出力値に含まれるバイアス部分を省略し、硬貨の枚数に応じた変化部分のみを示す。
【0040】
図7は、参考例に係る硬貨検知センサのコイル配置とその検出波形を示す図であり、(a)は参考例に係る硬貨検知センサの部分側面図、(b)はその検出波形を示すグラフである。
図7の(a)に示すように、参考例に係る硬貨検知センサでは、基板12の片面に、硬貨積層方向に並ぶように複数の平面コイルが配設されており、図7の(b)は、3つの平面コイルC1〜C3による発振周波数の変化を示している。この図から解るように、平面コイルC1の波形は、9枚以上でなだらかになって検出精度が低下し、平面コイルC2の波形は、13枚以下や24枚以上でなだらかになって検出精度が低下し、平面コイルC3の波形は、25枚以下でなだらかになって検出精度が低下する。したがって、9〜13枚の辺りや、24〜25枚の辺りでは、信頼性の高い検出が困難である。
【0041】
図8は、本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサのコイル配置とその検出波形を示す図であり、(a)は本発明の第一実施形態に係る硬貨検知センサの部分側面図、(b)はその検出波形を示すグラフである。
図8の(a)に示すように、第一実施形態に係る硬貨検知センサ10Aでは、基板12の表裏両面に、硬貨検知領域が重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数の平面コイルが配設されており、図8の(b)は、3つの平面コイルC1〜C3による発振周波数の変化を示している。この図から解るように、平面コイルC1の波形は、1枚から変化し、12枚以上で飽和しており、平面コイルC3(図7のC2に相当)の波形は、14枚以上で変化が始まる。この点は、図7に示す参考例と類似するが、第一実施形態に係る硬貨検知センサ10Aでは、基板12の裏面側に、基板12の表面側に配設される平面コイルC1、C3と硬貨検知領域が重複するように平面コイルC2が配設され、この平面コイルC2の波形が、2〜6枚ではほとんど変化しないものの、7〜14枚では変化が顕著であるから、例えば、0〜10枚を平面コイルC1、11〜14枚を平面コイルC2、それ以上を平面コイルC3で検出するようにすれば、図8の(b)に示す変化域の全域で高精度な検出を行うことが可能になる。
【0042】
図9は、本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサのコイル配置とその検出波形を示す図であり、(a)は本発明の第二実施形態に係る硬貨検知センサの部分側面図、(b)はその検出波形を示すグラフである。
図9の(a)に示すように、第二実施形態に係る硬貨検知センサ10Bでは、基板12の表裏両面に平面コイルを半分ずつ配設し、それを電気的に接続して1つの平面コイルを構成しているものの、硬貨検知領域が重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように複数の平面コイルが配設されていることは第一実施形態と同様であり、図9の(b)は、3つの平面コイルC1〜C3による発振周波数の変化を示している。この図から解るように、平面コイルC1の波形は、1枚から変化し、12枚以上で飽和しており、平面コイルC3(図7のC2に相当)の波形は、15枚以上(図示せず)で変化が始まる。この点は、図7に示す参考例と類似するが、第二実施形態に係る硬貨検知センサ10Bでは、基板12の表裏にわたり、平面コイルC1、C3と硬貨検知領域が重複するように平面コイルC2が配設され、この平面コイルC2の波形が、2〜6枚ではほとんど変化しないものの、7〜15枚(15枚は図示せず)では変化が顕著であるから、例えば、0〜10枚を平面コイルC1、11〜14枚を平面コイルC2、それ以上を平面コイルC3で検出するようにすれば、図9の(b)に示す変化域の全域で高精度な検出を行うことが可能になる。
【0043】
つぎに、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置100について、図10図12を参照して説明する。
【0044】
図10は、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置100は、硬貨検知センサ10A、10Bと、高周波の発振信号を供給して平面コイルC(1〜N)に交流磁界を発生させ、該平面コイルCの近傍に存在する硬貨の枚数に応じて発振周波数が変化するように構成される発振回路20と、複数の平面コイルCのうち、選択された一つの平面コイルCに発振回路20の発振信号を供給する発振切替手段30と、発振回路20の発振周波数を検出し、該発振周波数にもとづいて硬貨の枚数を算出する計数手段40とを備えて構成されている。
【0045】
硬貨検知センサ10A、10Bは、前述したように、硬貨積層方向に沿う第一の面12aおよび第二の面12bを有する基板12と、基板12の第一の面12aおよび第二の面12bに、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように並列状に配設される複数の平面コイルCとを備えて構成されるものである。
【0046】
図11は、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の発振回路を示す図であり、一つの平面コイルを例にした基本原理を示すブロック図である。
発振回路20は、高周波の発振信号を供給して平面コイルCに交流磁界を発生させ、該平面コイルCの近傍に存在する硬貨の枚数に応じて発振周波数が変化するものであれば、発振方式は任意に選択することができる。例えば、図11に示す発振回路20は、オペアンプからなるインバータとコンデンサを組み合せた発振器の帰還回路に平面コイルCを接続して構成されており、その発振周波数は、硬貨の枚数に応じて変化する平面コイルCのインダクタンスに依存している。
【0047】
図12は、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の発振回路及び発振切替手段を示すブロック図である。
図10及び図12に示すように、発振切替手段30は、平面コイルCの入口側で回路を切り替えるアナログスイッチ31と、平面コイルCの出口側で回路を切り替えるアナログスイッチ32とを備えており、発振切替手段30または計数手段40から出力されるコイルの選択出力に応じて、アナログスイッチ31、32を切り替え、選択された一つの平面コイルCに発振信号を供給するようになっている。
【0048】
なお、平面コイルCの入口側と出口側にそれぞれアナログスイッチ31、32を設けている理由は、平面コイルCの切り替えに際して、前回励磁していた平面コイルCの磁界が残らないようにするためである。これにより、残留磁界の影響を排除し、平面コイルCの高速な切り替えによる硬貨検出が可能になる。
【0049】
発振切替手段30による平面コイルCの切り替え順序は、任意に設定することが可能であるが、その設定に際しては硬貨検出処理の所要時間を考慮することが好ましい。例えば、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルCのうち、硬貨積層数が少ない側に配設された平面コイルCから順に切替えるようにすれば、硬貨の積層数が少ない状況では、積層硬貨の上端位置を検出した時点で以降の硬貨検出を省略することにより、硬貨検出処理の所要時間を短縮することができる。
【0050】
また、硬貨積層方向に並ぶ複数の平面コイルCのうち、硬貨積層数が多い側に配設された平面コイルCから順に切替えるようにすれば、硬貨の積層数が多い状況では、積層硬貨の上端位置を検出した時点で以降の硬貨検出を省略することにより、硬貨検出処理の所要時間を短縮することができる。
【0051】
また、前回算出した硬貨積層枚数を記憶し、該記憶された硬貨積層枚数を検知する位置に配設された平面コイルCから発振信号の供給を開始させ、該平面コイルに係る算出結果にもとづいて、次に発振信号を供給する平面コイルCの順序を判定するようにしてもよい。このようにすると、積層硬貨の上端位置を効率良く検出できるだけでなく、以降の硬貨検出を省略することにより、硬貨検出処理の所要時間を大幅に短縮することができる。
【0052】
計数手段40は、選択された平面コイルCによる発振周波数の変化を検出する周波数検出手段41(例えば、周波数カウンタ)と、該発振周波数にもとづいて、選択された平面コイルCの硬貨検知領域に存在する硬貨の枚数を算出する硬貨枚数算出手段42(例えば、マイコン)と、前回の周波数検出値や前回算出した硬貨積層枚数を記憶する記憶部43とを備えている。
【0053】
硬貨枚数算出手段42は、発振切替手段30による平面コイルCの切り替え毎に、周波数検出手段41から周波数カウンタ値を読み込むとともに、該周波数カウンタ値にもとづいて、選択された平面コイルCの硬貨検知領域に存在する硬貨の枚数を算出するものであり、最終的には、複数の平面コイルCに係る算出結果にもとづいて、硬貨収納筒2に収納されている硬貨の積層枚数を算出するようになっている。
【0054】
つぎに、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置100の硬貨枚数測定処理、つまり計数手段40(マイコン)の処理手順について、図13図15を参照して説明する。ただし、図中で使用する記号のEは硬貨なしフラグ、Rはエラー検出フラグ、Mは硬貨合計枚数(硬貨積層枚数)、Kは平面コイル発振番号、Nは最上部の平面コイル番号(最下部の平面コイル番号は1)、Xは1つの平面コイルに割り当てられた最大の硬貨検出枚数、nは1つの平面コイルが検出した硬貨枚数とする。
【0055】
図13は、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の硬貨枚数測定処理を示す図であり、その初期動作を示すフローチャートである。
図13に示すように、硬貨枚数測定処理の初期動作では、まず、各種のフラグや変数の初期化を行う(S101、S102)。具体的には、硬貨なしフラグE、エラー検出フラグR及び硬貨合計枚数Mに「0」をセットし、平面コイル発振番号Kに「1」をセットする。
【0056】
つぎに、発振切替手段30にて、K番目の平面コイルCを発振させて硬貨枚数nを測定し(S103)、その領域に硬貨があるか否かを判断する(S104)。この判断結果がYESの場合は、硬貨なしフラグEが未セット状態であることを確認した後(S105)、所定の計算式(M=(K−1)×X+n)を用いて硬貨合計枚数Mの更新を行う(S106)。
【0057】
硬貨合計枚数Mを更新したら、平面コイル発振番号Kをインクリメント(K=K+1)するとともに(S107)、平面コイル発振番号Kが最上部平面コイル番号Nを越えているか否かを判断する(S108)。この判断結果がNOである場合は、ステップS103に戻ってステップS103〜S108の処理を繰り返し、YESである場合は、硬貨合計枚数Mを記憶して初期動作の終了とする(S109)。つまり、初期動作は、下側の平面コイルCから順番に切り替えて各平面コイルCの検知領域に存在する硬貨1を測定し、その合計値である硬貨合計枚数Mを記憶する処理である。
【0058】
なお、ステップS104において、その領域に硬貨がないと判断した場合は、硬貨なしフラグEをセットした後(S110)、ステップS107にジャンプし、また、ステップS105において、硬貨なしフラグEが未セット状態ではないと判断した場合は、なんらかのトラブルが発生しているため、エラー検出フラグRをセットした後(S111)、初期動作の終了とする。
【0059】
図14は、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の硬貨枚数測定処理を示す図であり、その第一の例を示すフローチャートである。
図14に示す硬貨枚数測定処理の第一の例は、記憶している前回の硬貨合計枚数Mが多い場合は、上部の平面コイルCから順番に測定を行い、前回の硬貨合計枚数Mが少ない場合は、下部の平面コイルCから順番に測定を行うというものであり、図14に示す例では、硬貨収納筒2の硬貨総収納枚数を70枚、平面コイル1つあたりで検出可能な硬貨枚数を7枚とし、記憶している前回の硬貨合計枚数Mが36枚以上であれば硬貨合計枚数が多いと判断し、記憶している前回の硬貨合計枚数Mが35枚以下であれば硬貨合計枚数が少ないと判断する。
【0060】
具体的に説明すると、図14に示す硬貨枚数測定方法1では、まず、電源ON後、初回の動作であるか否かを判断する(S201)。この判断結果がYESの場合は、前述した図13の初期動作を実行する(S202)。一方、初回の動作ではないと判断した場合は、記憶されている硬貨合計枚数Mを読み出し(S203)、硬貨合計枚数Mが多い(M>35)か否かを判断する(S204)。
【0061】
硬貨合計枚数Mが多いと判断した場合は、平面コイル発振番号Kに最上部の平面コイル番号Nをセットした後(S205)、発振切替手段30にて、K番目の平面コイルCを発振させて硬貨枚数nを測定し(S206)、その領域に硬貨があるか否かを判断する(S207)。この判断結果がNOの場合は、平面コイル発振番号Kをデクリメント(K=K−1)するとともに(S208)、平面コイル発振番号Kが「0」であるか否かを判断し(S209)、この判断結果がNOの場合は、ステップS206に戻ってステップS206〜S209の処理を繰り返す。また、平面コイル発振番号Kが「0」であると判断した場合は、硬貨合計枚数Mをクリアした後(S210)、硬貨合計枚数Mを記憶して処理を終了する(S211)。
【0062】
ステップS207において、その領域に硬貨があると判断した場合は、所定の計算式(M=(K−1)×X+n)を用いて硬貨合計枚数Mの更新を行う(S212)。硬貨合計枚数Mを更新したら、硬貨合計枚数Mが「0」よりも大きいか否かを判断し(S213)、この判断結果がYESの場合は、硬貨合計枚数Mを記憶して処理を終了し(S211)、判断結果がNOの場合は、硬貨合計枚数Mをクリアした後(S210)、硬貨合計枚数Mを記憶して処理を終了する(S211)。
【0063】
ステップS204において、硬貨合計枚数Mが少ないと判断した場合は、平面コイル発振番号Kに最下部の平面コイル番号である「1」をセットした後(S214)、発振切替手段30にて、K番目の平面コイルCを発振させて硬貨枚数nを測定し(S215)、その領域に硬貨があるか否かを判断する(S216)。この判断結果がYESの場合は、平面コイル発振番号Kをインクリメント(K=K+1)するとともに(S217)、平面コイル発振番号Kが最上部平面コイル番号Nを越えているか否かを判断する(S218)。この判断結果がNOである場合は、ステップS215に戻ってステップS215〜S218の処理を繰り返し、YESである場合は、平面コイル発振番号Kから「1」を引いた後(S219)、所定の計算式(M=(K−1)×X+n)を用いて硬貨合計枚数Mの更新を行う(S212)。以降の処理は、前回の硬貨合計枚数Mが多い場合と同様である。
【0064】
図15は、本発明の実施形態に係る硬貨検出装置の硬貨枚数測定処理を示す図であり、その第二の例を示すフローチャートである。
図15に示す硬貨枚数測定処理の第二の例は、記憶している前回の硬貨合計枚数Mを検知する位置に配設された平面コイルCから発振信号の供給を開始させ、該平面コイルCに係る算出結果にもとづいて、次に発振信号を供給する平面コイルCの順序を判定するというものである。
【0065】
具体的に説明すると、図15に示す硬貨枚数測定方法2では、まず、電源ON後、初回の動作であるか否かを判断する(S301)。この判断結果がYESの場合は、前述した図13の初期動作を実行する(S302)。一方、初回の動作ではないと判断した場合は、記憶されている硬貨合計枚数Mを読み出し(S303)、
この硬貨合計枚数Mを検知する位置に配設された平面コイルCの平面コイル番号Kを所定の計算式(K=(M−1)/X+1)を用いて算出するとともに(S304)、前回の測定でK番目の平面コイルCが測定した硬貨枚数nを所定の計算式(n=M−(K−1)×X)を用いて算出する(S305)。
【0066】
つぎに、発振切替手段30にて、K番目の平面コイルCを発振させて硬貨枚数pを測定し(S306)、今回測定した硬貨枚数pが前回測定した硬貨枚数n以上であるか否かを判断する(S307)。この判断結果がYESの場合は、変数nに硬貨枚数pの値をセットした後(S308)、硬貨枚数pが最大検出枚数Xに一致しているか否かを判断する(S309)。そして、この判断結果がNOである場合は、K番目の平面コイルCの検知領域に積層硬貨の上端位置が含まれると判断できるので、所定の計算式(M=(K−1)×X+n)を用いて硬貨合計枚数Mの更新を行うとともに(S310)、硬貨合計枚数Mを記憶して処理を終了する(S311)。
【0067】
また、ステップS309において、硬貨枚数pが最大検出枚数Xに一致していると判断した場合は、K番目の平面コイルCの検知領域よりも多くの硬貨が収納されていると判断できるので、平面コイル発振番号Kをインクリメント(K=K+1)するとともに(S312)、発振切替手段30にて、K番目の平面コイルCを発振させて硬貨枚数nを測定し(S313)、その領域に硬貨があるか否かを判断する(S314)。この判断結果がYESの場合は、ステップS308に戻ってステップS308〜S314の処理を繰り返し、YESである場合は、平面コイル発振番号Kから「1」を引いた後(S315)、所定の計算式(M=(K−1)×X+n)を用いて硬貨合計枚数Mの更新を行うとともに(S310)、硬貨合計枚数Mを記憶して処理を終了する(S311)。
【0068】
一方、ステップS307において、今回測定した硬貨枚数pが前回測定した硬貨枚数n以上ではないと判断した場合は、その領域に硬貨がいるか否かを判断し(S316)、この判断結果がYESの場合は、K番目の平面コイルCの検知領域に積層硬貨の上端位置が含まれると判断できるので、変数nに硬貨枚数pの値をセットした後(S317)、所定の計算式(M=(K−1)×X+n)を用いて硬貨合計枚数Mの更新を行うとともに(S310)、硬貨合計枚数Mを記憶して処理を終了する(S311)。
【0069】
また、ステップS316において、その領域に硬貨がないと判断した場合は、K番目の平面コイルCの検知領域よりも収納硬貨が少ないと判断できるので、平面コイル発振番号Kをデクリメント(K=K−1)するとともに(S318)、発振切替手段30にて、K番目の平面コイルCを発振させて硬貨枚数nを測定し(S319)、ステップS316に戻る。そして、ステップS316に判断結果がYESになるまで、ステップS318とS319は繰り返される。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0071】
例えば、前記実施形態では、一枚の基板の表裏両面のうち、一方の面を第一の面とし、その裏側である他方の面を第二の面としているが、硬貨検知センサを重なり合う複数枚の基板で構成する場合は、第一の面と第二の面が別々の基板に形成されていてもよい。
【0072】
また、前記実施形態では、硬貨検知領域が部分的に重複する状態で硬貨積層方向に並ぶように並列状に配設される複数の平面コイルの検知結果にもとづいて全体の硬貨積層枚数を算出するにあたり、各平面コイルに有効硬貨検知領域を割り当て、各平面コイルがそれぞれの有効硬貨検知領域内で検知した硬貨枚数を合計して全体の硬貨積層枚数を求めているが、硬貨積層枚数の算出方法は、このような算出方法に限定されないことは勿論である。例えば、各平面コイルの検出値(発信周波数)と硬貨積層枚数の関係をあらかじめテーブルデータとして保持し、該テーブルを参照して各平面コイルの検出値から硬貨積層枚数を求めるような算出方法であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…硬貨、2…硬貨収納筒、10A、10B…硬貨検知センサ、11、11a、11b、11g、C…平面コイル、11c、11d、11h、11i…コイル状導体パターン、11e、11f、11j、11k…直線導体パターン、12…基板、12a…第一の面、12b…第二の面、20…発振回路、30…発振切替手段、31…アナログスイッチ、32…アナログスイッチ、40…計数手段、41…周波数検出手段、42…硬貨枚数算出手段、43…記憶部、100…硬貨検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15