(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱安定剤(C)がヒンダードフェノール化合物およびトリアジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱安定剤である請求項6記載のポリアセタール樹脂組成物。
前記離型剤(D)がポリエチレン、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステルおよび脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の離型剤である請求項8記載のポリアセタール樹脂組成物。
前記耐侯安定剤(E)がヒンダードアミン系光安定剤および紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐侯安定剤である請求項10記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポリアセタール樹脂組成物を成形加工する際には金型が使用される。このとき、金型は、成形加工時の熱分解反応によって生成される化合物の付着により汚染されることがある。この汚染された金型を用いて繰り返し成形品を製造すると、金型に付着した付着物が、後に成形される成形品に異物として転写され、最悪の場合、成形品を廃棄することが必要となる。成形品の廃棄は成形品の歩留まり低下につながるため、金型の汚染が十分に抑制されたポリアセタール樹脂組成物が望ましい。
【0007】
しかし、特許文献1記載のポリアセタール樹脂組成物は、成形加工時の金型汚染の抑制の点で未だ改善の余地があった。このため、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制でき、且つ成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物が望まれていた。
【0008】
本発明は、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制でき、且つ成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特許文献1に記載のポリアセタール樹脂組成物による成形加工時の金型の汚染を抑制するためにポリアセタール樹脂組成物における改善点について検討した。その結果、本発明者らは、ヒドラジド化合物の末端にあるアミノ基中の窒素原子に結合している基を、水素原子から水素原子以外の基に変更することで、ヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応生成物がポリアセタール樹脂組成物からブリードアウトしにくいか、ブリードアウトしても、金型に付着しにくくなり、成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるのではないかと考えた。そこで、本発明者らは、ホルムアルデヒドとの反応生成物がブリードアウトしにくいか、あるいはブリードアウトしても金型に付着しにくいようなヒドラジド化合物を実現するべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドラジド化合物の末端にあるアミノ基中の窒素原子に結合している基を特定の基とすることでヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応生成物がポリアセタール樹脂組成物からブリードアウトしにくいか、ブリードアウトしても、金型に付着しにくくなり、成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できることを見出した。さらに、本発明者らは、ヒドラジド化合物をポリアセタール樹脂に対して特定の量配合することで、成形加工時の金型汚染をも十分に抑制しつつ、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して下記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物(B)が0.05〜5質量部配合されているポリアセタール樹脂組成物である。
【化1】
(上記式中、mは正の整数を示し、nは0又は1を示す。R
1は(m+n)価の基であって、炭素数1〜40の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜40の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数2〜5の複素環基、又は、−CZ
1Z
2−CZ
3Z
4−を構成単位として含むポリマーの主鎖を示す。m=1、n=1である場合、R
1は単結合であってもよい。m=1、n=0である場合、R
1は水素原子であってもよい。R
2は、一価の基であって、炭素数1〜40の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜40の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数2〜5の複素環基を示す。Z
1〜Z
4はそれぞれ独立に、単結合、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Z
1〜Z
4のうち少なくとも1つは単結合を示す。)
【0011】
本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できる。
【0012】
上記効果が得られる理由については定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
【0013】
ポリアセタール樹脂組成物を成形加工するために加熱溶融させると、ポリアセタール樹脂において一部熱分解反応が起こり、ホルムアルデヒドが発生する。このとき発生したホルムアルデヒドは、ポリアセタール樹脂組成物中のヒドラジド化合物と反応することにより十分に消費される。このとき、ヒドラジド化合物が適度な量で配合されていることで、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒドの発生が十分に抑制されるのではないかと本発明者らは推測している。
【0014】
また上述した特許文献1では、ヒドラジド化合物がRCONHNH
2(Rは有機基)で表される化合物であり、このようなヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応は、付加反応とこれに続く脱水反応であり、結果としてイミノ基を有する化合物RCOCH
2NHN=CH
2を生成させる。
【0015】
これに対し、本発明に用いられるヒドラジド化合物(B)のように、ヒドラジド化合物が−CONHNHR
2で表される基を有していると、ヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応は付加反応であり、結果としてメチロール基を有する化合物RCONHN(R’)CH
2OHを生成させる。
【0016】
そして、上記メチロール基を有する化合物は、上記イミノ基を有する化合物と比べ、ポリアセタール樹脂組成物からブリードアウトしにくい、あるいはブリードアウトしたとしても金型に付着しにくいと本発明者らは推測している。
【0017】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記一般式(1)において、R
2が炭素数1〜18の直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0018】
この場合、上記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。
【0019】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記一般式(1)において、R
2がメチル基であることが好ましい。
【0020】
この場合、R
2による立体障害が小さくなるため、上記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応性が、R
2がメチル基以外のアルキル基である場合に比べてより高くなり、ホルムアルデヒドの発生がさらに効果的に抑制される。
【0021】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記一般式(1)において、n=0であることが好ましい。
【0022】
この場合、R
1に結合する基は、末端がR
2のm個の基のみとなり、末端が水素原子の基は含まれないことになる。すなわちR
1に結合している基は、ホルムアルデヒドとの反応性がより高いもののみとなる。このため、一般式(1)においてn≠0であるヒドラジド化合物と比べて、ヒドラジド化合物(B)とホルムアルデヒドとの反応性をより高くすることができ、ホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制できる。
【0023】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記一般式(1)において、m=2、n=0であることが好ましい。
【0024】
この場合、R
1に結合している基が、ホルムアルデヒドとの反応性がより高いもののみとなるため、一般式(1)においてm=1、n=0であるヒドラジド化合物と比べて、ヒドラジド化合物(B)とホルムアルデヒドとの反応性をより高くすることができ、ホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制できる。また一般式(1)においてmが3以上、n=0であるヒドラジド化合物と比べて、立体障害が小さくなり、ホルムアルデヒドと反応しやすくなるため、ホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制できる。
【0025】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂100質量部に対して熱安定剤(C)が0.01〜3質量部配合されることが好ましい。
【0026】
この場合、熱安定剤(C)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、ポリアセタール樹脂の熱分解がより効果的に抑制され、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。また熱安定剤(C)の配合量が3質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物の機械特性をより向上させることができる。
【0027】
前記熱安定剤(C)は、ヒンダードフェノール化合物およびトリアジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱安定剤であることが好ましい。
【0028】
この場合、ホルムアルデヒドの発生がさらに効果的に抑制される。
【0029】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂100質量に対して離型剤(D)が0.01〜3質量部配合されることが好ましい。
【0030】
この場合、離型剤(D)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、成形加工時の金型の汚染がより効果的に抑制される。また離型剤(D)の配合量が3質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物の機械特性をより向上させることができる。
【0031】
前記離型剤(D)は、ポリエチレン、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステルおよび脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の離型剤であることが好ましい。
【0032】
この場合、成形加工時の金型の汚染がさらに効果的に抑制される。
【0033】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂100質量に対して耐侯安定剤(E)が0.01〜3質量部配合されることが好ましい。
【0034】
この場合、耐侯安定剤(E)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物の劣化が十分に抑制される。また耐侯安定剤(E)の配合量が3質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物の機械特性をより向上させることができる。
【0035】
前記耐侯安定剤(E)は、ヒンダードアミン系光安定剤および紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐侯安定剤であることが好ましい。
【0036】
この場合、ポリアセタール樹脂組成物の劣化が効果的に抑制される
【0037】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(2)で表されるヒンダードアミン系光安定剤であることが好ましい。
【化2】
(上記式中、R
3は窒素原子との結合部が炭素原子である有機基、Xは酸素原子若しくは窒素原子を介してピペリジル基の4−位と結合する有機基または水素原子を示す。)
【0038】
この場合、ポリアセタール樹脂組成物の劣化がさらに効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制でき、且つ成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0041】
本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して下記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物(B)が0.05〜5質量部配合されているポリアセタール樹脂組成物である。
【化3】
【0042】
上記式中、mは正の整数を示し、nは0又は1を示す。R
1は(m+n)価の基であって、炭素数1〜40の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜40の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数2〜5の複素環基、又は、−CZ
1Z
2−CZ
3Z
4−を構成単位として含むポリマーの主鎖を示す。m=1、n=1である場合、R
1は単結合であってもよい。m=1、n=0である場合、R
1は水素原子であってもよい。R
2は、一価の基であって、炭素数1〜40の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜40の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数2〜5の複素環基を示す。Z
1〜Z
4はそれぞれ独立に、単結合、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Z
1〜Z
4のうち少なくとも1つは単結合を示す。
【0043】
このポリアセタール樹脂組成物によれば、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制でき、且つ成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できる。
【0044】
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物に用いられるポリアセタール樹脂(A)およびヒドラジド化合物(B)について詳細に説明する。
【0045】
(A)ポリアセタール樹脂
ポリアセタール樹脂は特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、炭素数が2〜6の2価のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0046】
炭素数が2〜6のオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、及び、オキシブチレン基などが挙げられる。
【0047】
ポリアセタール樹脂においては、オキシメチレン基および炭素数2〜6のオキシアルキレン基の総モル数に占める炭素数2〜6のオキシアルキレン基の割合は特に限定されるものではなく、たとえば0.5〜10モル%であればよい。
【0048】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中に炭素数2〜6のオキシアルキレン基を導入するには、例えば環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、例えば1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセパン、1,3−ジオキソカン、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカン等が挙げられ、環状エーテルの具体例としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等が挙げられる。ポリアセタール樹脂(A)中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレン基を導入するには、1,3−ジオキサンを用いればよく、オキシブチレン基を導入するには、1,3−ジオキセパンを導入すればよい。
【0049】
(B)ヒドラジド化合物
本発明のポリアセタール樹脂組成物に配合されるヒドラジド化合物は、上記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物である。
上記式(1)において、mは、正の整数であればよいが、R
1が、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す場合には、mは通常、1〜4の整数である。R
1が、−CZ
1Z
2−CZ
3Z
4−を構成単位として含むポリマーの主鎖を表す場合には、mは通常、ポリマーの主鎖に含まれる−CZ
1Z
2−CZ
3Z
4−の全構成単位数における単結合の数の合計と同一である。
【0050】
一般式(1)において、R
1は、(m+n)価の基であって、炭素数1〜40の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜40の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数2〜5の複素環基又は、−CH
2−CH−を構成単位として含むポリマーの主鎖を示す。
【0051】
上記脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和であってもよく、直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0052】
例えばm+nが1である場合、脂肪族炭化水素基は一価の脂肪族炭化水素基となり、m+nが2である場合、二価の脂肪族炭化水素基となる。
【0053】
一価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−エイコシル基、n−トリアコンチル基、n−テトラコンチル基などの直鎖アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基などの分岐状アルキル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基などのアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基などのアルキニル基が挙げられる。
【0054】
二価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基などのアルキレン基などが挙げられる。
【0055】
上記脂環式炭化水素基は、飽和又は不飽和であってもよい。例えばm+nが1である場合、脂環式炭化水素基は一価の脂環式炭化水素基となり、m+nが2である場合、二価の脂環式炭化水素基となる。
【0056】
一価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜40のシクロアルキル基およびシクロアルケニル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロエイコシル基、シクロトリアコンチル基、シクロテトラコンチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。シクロアルケニル基としては、例えば1−シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0057】
二価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜40のシクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えばシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0058】
上記芳香族炭化水素基は、m+nが1である場合、一価の芳香族炭化水素基となり、m+nが2である場合、二価の芳香族炭化水素基となる。
【0059】
一価の芳香族炭化水素基の具体例としては、例えばフェニル基及びナフチル基などのアリール基が挙げられる。
【0060】
二価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基及びナフチレン基などのアリーレン基が挙げられる。
【0061】
芳香族炭化水素基の炭素原子の少なくとも一部に置換基が結合していてもよい。この置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜40のアルキル基などが挙げられる。
【0062】
上記複素環基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいる(m+n)価の基であり、複素環化合物の任意の炭素原子から(m+n)個の水素原子を除去してなるものである。このような複素環化合物としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ピロール、カルバゾール、ピロリジン、ルミノール、ウラシル、クレアチン、尿素環、ラクタム、イソニアジド等の窒素原子を含む複素環化合物、エチフラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のヘテロ原子として酸素原子のみを含む複素環化合物、チオフェン等の硫黄原子を含む複素環化合物などが挙げられる。中でも、窒素原子を含む複素環基が特に好ましい。この場合、ヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生をさらに効果的に抑制できる。
【0063】
ポリマーの主鎖は、−CZ
1Z
2−CZ
3Z
4−を構成単位として含む主鎖であればよい。
ここで、Z
1〜Z
4はそれぞれ独立に、単結合、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Z
1〜Z
4のうち少なくとも1つは単結合を示す。この単結合に一般式(1)の−C(O)NHNH
2R
2及び−C(O)NHNH
3が結合される。このようなポリマーの主鎖をR
1として含むヒドラジド化合物の具体例としては、例えばポリ(メタクリル酸−2−メチルヒドラジド)、ポリ(アクリル酸−2−メチルヒドラジド)及びポリ(エチレンエチルアクリル酸ヒドラジド)等が挙げられる。
【0064】
上述したように、mは正の整数を示し、nは0又は1を示す。
【0065】
ここで、nは0であることが好ましい。この場合、R
1に結合する基は、末端がR
2のm個の基のみとなり、末端が水素原子の基は含まれないことになる。すなわちR
1に結合している基は、ホルムアルデヒドとの反応性がより高いもののみとなる。このため、このため、一般式(1)においてm=2、n≠0であるヒドラジド化合物と比べて、ヒドラジド化合物(B)とホルムアルデヒドとの反応性をより高くすることができ、ホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制できる。
【0066】
一般式(1)において、nが0である場合、m=2であることが好ましい。
【0067】
この場合、R
1に結合している基が、ホルムアルデヒドとの反応性がより高いもののみとなるため、一般式(1)においてm=1、n=0であるヒドラジド化合物と比べて、ヒドラジド化合物(B)とホルムアルデヒドとの反応性をより高くすることができ、ホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制できる。また一般式(1)においてmが3以上、n=0であるヒドラジド化合物と比べて、立体障害が小さくなり、ホルムアルデヒドと反応しやすくなるため、ホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制できる。
【0068】
R
2は、一価の基であって、炭素数1〜40の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜40の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数2〜5の複素環基を示す。
【0069】
上記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又は複素環基としては、R
1の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又は複素環基のうち一価の基と同様のものを用いることができる。
【0070】
R
2は、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基であることが好ましい。この場合、上記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。
【0071】
炭素数1〜18の直鎖状アルキル基の中でも、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基がさらに好ましい。この場合、R
2による立体障害が小さくなるため、ヒドラジド化合物(B)とホルムアルデヒドとの反応性がより高くなり、ホルムアルデヒドの発生をさらに効果的に抑制できる。特に、メチル基が好ましい。この場合、R
2による立体障害が特に小さくなるため、ヒドラジド化合物(B)とホルムアルデヒドとの反応性が特に高くなり、ホルムアルデヒドの発生を特に効果的に抑制できる。
【0072】
上記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物(B)の具体例としては、例えばシュウ酸ビス(2−メチルヒドラジド)、マロン酸ビス(2−メチルヒドラジド)、アジピン酸ビス(2−メチルヒドラジド)、セバシン酸ビス(2−メチルヒドラジド)、1,10−ドデカン二酸ビス(2−メチルヒドラジド)、1,4−シクロヘキサン二酸ビス(2−メチルヒドラジド)、テレフタル酸ビス(2−メチルヒドラジド)、2,6−ナフタレン二酸ビス(2−メチルヒドラジド)、7,11−オクタデカンー1,18−二酸ビス(2−メチルヒドラジド)などが挙げられる。
【0073】
上記一般式(1)で表されるヒドラジド化合物(B)は単独でも、2種類以上を組み合わせて配合されてもよい。ヒドラジド化合物(B)の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部である。ヒドラジド化合物(B)の配合量が0.05質量部未満である場合、ホルムアルデヒドの発生を十分に抑制できない。また、ヒドラジド化合物(B)の配合量が5質量部以上である場合、成形加工時にブリードアウトが発生し、金型が汚染される。ヒドラジド化合物(B)の配合量は0.1〜3質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。
【0074】
なお、一般式(1)で表されるヒドラジド化合物(B)は、カルボン酸やカルボン酸エステルとヒドラジン化合物とを反応させることによって得ることができる。このとき、カルボン酸としては、R
1(COOH)
m+nを、カルボン酸エステルとしてはR
1(COOY)
m+nを用い、ヒドラジン化合物としては、NH
2NHR
2を用いる。ここで、カルボン酸エステルR
1(COOY)
m+nにおいて、Yは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を表す。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。中でも、メチル基が最も好ましい。シクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。R
1(COOY)
m+nで表されるカルボン酸エステルとしては、例えばシュウ酸ジメチル、マロン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、1,10−ドデカン二酸ジメチル、1,4−シクロヘキサン二酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレン二酸ジメチル、7,11−オクタデカン−1,18−二酸ジメチルなどが挙げられる。NH
2NHR
2で表されるヒドラジン化合物としては、2−メチルヒドラジン、2−エチルヒドラジン、2−プロピルヒドラジンといった2−アルキルヒドラジンなどが挙げられる。なお、一般式(1)においてnを1とする場合、上記カルボン酸又はカルボン酸エステルと上記ヒドラジン化合物とを反応させる際、NH
2NH
2を添加すればよい。
【0075】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、必要に応じ、熱安定剤(C)、離型剤(D)および耐候安定剤(E)のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。以下、熱安定剤(C)、離型剤(D)および耐候安定剤(E)について詳細に説明する。
【0076】
(C)熱安定剤
熱安定剤は特に限定されるものではないが、熱安定剤としては、ヒンダードフェノール化合物又はトリアジン化合物が好ましく用いられる。これらは1種類単独で配合しても、2種類以上を組み合わせて配合してもよい。この場合、ホルムアルデヒドの発生がさらに効果的に抑制される。
【0077】
ヒンダードフェノール(立体障害性フェノール)化合物とは、下記一般式(3)で示されるフェノール性水酸基に対するオルト位に置換基を有する構造を分子内に少なくとも一個有する化合物をいう。
【化4】
【0078】
一般式(3)において、R
4及びR
5は、各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示す。
【0079】
R
4、R
5が示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基等炭素数1〜6のものが挙げられる。なかでもt−ブチル基のような嵩高い分岐アルキル基が好ましく、R
4、R
5のうちの少なくとも一つはこのような分岐アルキル基であることが好ましい。置換アルキル基としては、非置換アルキル基の水素原子を塩素等のハロゲン原子で置換したものを用いることができる。
【0080】
本発明に用いるヒンダードフェノール化合物としては、例えば2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミン、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファ−ビシクロ〔2,2,2〕−オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2'−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0081】
これらのなかでも好ましいのは,N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)のような下記一般式(4)で示される構造を有する化合物である。
【化5】
【0082】
一般式(4)において、R
4及びR
5は、それぞれ、一般式(3)のR
4及びR
5と同義である。
【0083】
また、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2'−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のような、3−位に3,5−ジアルキルー4−ヒドロキシフェニル基を有するプロピオン酸と多価アルコールのエステルも好ましい。
【0084】
上記トリアジン化合物とは、基本的には、下記一般式(5)で示される構造を有する置換トリアジン類、または該置換トリアジン類とホルムアルデヒドとの初期重縮合物である。
【化6】
(上記一般式(5)において、R
6、R
7、R
8はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミノ基または置換アミノ基を示し、その少なくとも一つは、アミノ基、または置換アミノ基を表す。)
【0085】
アミノ置換トリアジン化合物、または、アミン置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの初期重縮合物の具体例としては、例えばグアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)、または、それらとホルムアルデヒドとの初期重縮合物等が挙げられる。中でも、メラミン、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
【0086】
熱安定剤の配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜2質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらに好ましい。熱安定剤の配合量が0.01〜3質量部である場合、熱安定剤(C)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、ポリアセタール樹脂の熱分解がより効果的に抑制され、ホルムアルデヒドの発生がより効果的に抑制される。また熱安定剤(C)の配合量が3質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物の機械特性をより向上させることができる。
【0087】
(D)離型剤
離型剤は特に限定されるものではないが、離型剤としては、ポリエチレン、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩が好ましく用いられる。これらは1種類単独で配合しても、2種類以上を組み合わせて配合してもよい。この場合、成形加工時の金型の汚染がさらに効果的に抑制される。
【0088】
ポリエチレンとしては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリエチレン共重合体、これらを酸化変性又は酸変性することによって極性基を導入した変性ポリエチレンワックスなどが挙げられる。ポリエチレンの数平均分子量は、好ましくは500〜15000であり、より好ましくは1000〜10000である。
【0089】
低分子量ポリエチレン及び低分子量ポリエチレン共重合体等のポリエチレンワックスは、エチレン又はエチレンとα−オレフィンとをチーグラー触媒などで直接重合する方法、高分子量ポリエチレンあるいは共重合体製造時の副成物として得る方法、高分子量ポリエチレンあるいは共重合体を熱分解する方法等により製造することができる。こうしたポリエチレンワックスとしては、エチレン50〜99モル%とα−オレフィン1〜50モル%との共重合体型ポリエチレンワックスが好ましく、特に好ましいポリエチレンワックスは、α−オレフィンがポリプロピレンであるポリエチレンワックスである。
【0090】
酸化変性ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックスをパーオキシドや酸素などで処理してカルボキシル基や水酸基等の極性基を導入したものである。酸変性ポリエチレンワックスは、必要と有ればパーオキシドや酸素の存在下に、無機酸、有機酸あるいは不飽和カルボン酸等で処理することにより、カルボキシル基やスルホン酸基等の極性基を導入したものである。これらのポリエチレンワックス類は、一般型高密度ポリエチレンワックス、一般型低密度ポリエチレンワックス、低酸化型ポリエチレンワックス、高酸化型ポリエチレンワックス、酸変性型ポリエチレンワックスあるいは特殊モノマー変性型などの名称で市販されており、容易に入手することができる。
【0091】
シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンからなるシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がフェニル基に置換されたシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が水素や炭素数2以上のアルキル基に置換されたシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がハロゲン化フェニル基に置換されたシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がフルオロエステル基に置換されたシリコーンオイル、エポキシ基を有するポリジメチルシロキサンのようなエポキシ変性シリコーンオイル、アミノ基を有するポリジメチルシロキサンのようなアミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシロキサンとフェニルメチルシロキサンのようなアルキルアラルキルシリコーンオイル、ジメチルシロキサン単位のメチル基の一部がポリエーテルに置換された構造を有するポリジメチルシロキサンのようなポリエーテル変性シリコーンオイル、ジメチルシロキサン単位のメチル基の一部がポリエーテルに置換されたジメチルシロキサンとフェニルメチルシロキサンとのポリマーのようなアルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0092】
脂肪酸としては、炭素数12以上の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の例としては、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。脂肪酸は、好ましくは炭素数12〜22の飽和脂肪酸である。
【0093】
脂肪酸エステルとしては、炭素数5〜32の脂肪酸と炭素数2〜30の一価もしくは多価アルコールとの脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プラジシン酸、エルカ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。アルコールとしては、プロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、ベヘニルなどの一価アルコールもしくはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価アルコールが挙げられる。脂肪酸エステルは、好ましくは、炭素数12〜22の脂肪酸と炭素数2〜22の一価もしくは多価アルコールとの脂肪酸エステルである。
【0094】
脂肪酸金属塩は、高級脂肪酸と金属との塩であり、高級脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、オクタン酸、ラウリル酸、べへニン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。金属としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅等が挙げられる。
【0095】
離型剤の配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜2.5質量部であることがより好ましく、0.05〜2質量部であることがさら好ましい。離型剤の配合量がポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜3質量部である場合、離型剤(D)の配合量が0.01質量部未満である場合に比べて、成形加工時の金型の汚染がより効果的に抑制される。また離型剤(D)の配合量が3質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物の機械特性をより向上させることができる。
【0096】
(E)耐侯安定剤
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに耐侯安定剤が配合されることが好ましい。この場合、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる。耐侯安定剤としては、光安定剤又は紫外線吸収剤が好ましく用いられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられ、特に下記一般式(2)で表されるものが好ましく用いられる。
【化7】
【0097】
上記式中、R
3は窒素原子との結合部が炭素原子である有機基、Xは、酸素原子若しくは窒素原子を介してピペリジル基の4−位と結合する有機基、又は水素原子を示す。
【0098】
R
3としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。中でもメチル基が好ましい。
【0099】
好ましいヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、例えばビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル及びトリデシル−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート(ブタンテトラカルボキシレートの4つのエステル部の一部が1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基で他がトリデシル基である化合物の混合物)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウデンカン)−ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、N,N´,N´´,N´´´−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートが挙げられる。
【0100】
上記耐侯安定剤は1種類単独で配合しても、2種類以上を組み合わせて配合してもよい。耐侯安定剤の配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく0.03〜2質量部であることがより好ましく、0.05〜1質量部であることがさら好ましい。耐侯安定剤の配合量が0.01〜3質量部である場合、配合量が上記範囲を外れる場合に比べて、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制できる。
【0101】
ポリアセタール樹脂組成物には、上記(A)〜(E)成分のほか、酸化防止剤、着色剤、核剤、可塑剤、蛍光増白剤、摺動剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩等の添加剤をさらに配合してもよい。
【0102】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、例えばホルムアルデヒドの発生が十分に抑制されていることから、いわゆるシックハウス症候群対策として、自動車内装部品、家屋等の内装部品(熱水混合栓等)、衣料部品(ファスナー、ベルトバックル等)や建材用途(配管、ポンプ部品等)、機械部品(歯車等)などに有用である。
【実施例】
【0103】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0104】
実施例および比較例で使用した材料は下記の通りである。
【0105】
(A)ポリアセタール樹脂(POM)
トリオキサンと1,3−ジオキソランとを、POM中の1,3−ジオキソランの含有率が4.2質量%となるように共重合して得られたアセタールコポリマーであって、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が10.5g/10分であるアセタールコポリマー
【0106】
(B)ヒドラジド化合物
B−1:シュウ酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−2:マロン酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−3:アジピン酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−4:セバシン酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−5:1,10−ドデカン二酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−6:1,4−シクロヘキサン二酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−7:テレフタル酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−8:2,6−ナフタレン二酸ビス(2−メチルヒドラジド)
B−9:セバシン酸ジヒドラジド
B−10:2,6−ナフタレン二酸ジヒドラジド
【0107】
(C)熱安定剤
C−1(ヒンダードフェノール化合物):イルガノックス245、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製
C−2(トリアジン化合物):メラミン、三井化学(株)社製
【0108】
(D)離型剤
商品名「カオーワックスEB−P」、エチレンビスステアリルアミド、花王社製
【0109】
(E)耐侯安定剤
商品名「チヌビン622」、ブタン二酸1−[2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジノ)エチル]、BASF社製
【0110】
[ポリアセタール樹脂組成物の製造]
(実施例1〜15及び比較例1〜7)
ポリアセタール樹脂(A)、ヒドラジド化合物(B)、熱安定剤(C)、離型剤(D)及び耐侯安定剤(E)を表1〜3に示す配合割合で、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、常法に従って2軸押出機(池貝鉄工社製PCM−30、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下で溶融混練したのち、ストランドに押出し、ペレタイザーにてカットすることでポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。なお、表1〜3において、配合量の単位は質量部である。
【0111】
[特性評価]
(1)ホルムアルデヒド発生の抑制効果
ホルムアルデヒド発生の抑制効果については、ホルムアルデヒド発生量を測定し、そのホルムアルデヒド発生量に基づいて評価した。
【0112】
ホルムアルデヒド発生量については以下にようにして求めた。
<平板試験片の作製>
まず日精樹脂工業社製射出成形機PS−40を用い、シリンダー温度215℃、金型温度80℃にて、実施例1〜15及び比較例1〜7で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを射出成形し、100mm×40mm×2mmの平板試験片を作製した。
<ホルムアルデヒド発生量の測定>
この平板試験片を作製した日の翌日に、この平板試験片につき、ドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、下記の方法によりホルムアルデヒド発生量を測定した。
(i)まずポリエチレン容器中に蒸留水50mlを入れ、上記平板試験片を空中に吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃にて3時間加熱した。
(ii)続いて室温で60分間放置した後、平板試験片を取り出した。
(iii)ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド量を、UVスペクトロメーターにより、アセチルアセトン比色法で測定し、このホルムアルデヒド量を平板試験片中のPOMの質量で除した値をホルムアルデヒド発生量とした。結果を表1〜3に示す。
【0113】
なお、表1〜3において、ホルムアルデヒド発生抑制効果に関する合否の基準は下記の通りとした。
ホルムアルデヒド発生量が2.5μg/g−POM以下 :合格
ホルムアルデヒド発生量が2.5μg/g−POM超 :不合格
【0114】
(2)金型汚染抑制効果
金型汚染抑制効果については以下のようにして評価した。まず住友重機械工業社製ミニマットM8/7A成形機を用い、いわゆるしずく型金型を用いて、実施例1〜15及び比較例1〜7で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを、成形温度200℃、金型温度80℃で3000ショット連続成形した。成形終了後、金型の内壁面の状態を肉眼で観察した。ここで、金型汚染抑制効果に関する合否基準は以下の通りとした。
A:金型付着物が殆ど少なく、金型汚染抑制効果は極めて良好
B:金型付着物が少しあるものの、金型汚染抑制効果は良好
C:金型付着物が多く、金型汚染抑制効果は不良
ここで、A及びBについては合格とし、Cについては不合格とした。結果を表1〜3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0115】
表1〜3に示すように、実施例1〜15はすべて、ホルムアルデヒド発生抑制及び金型汚染抑制の点で合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例1〜7はすべて、ホルムアルデヒド発生量又は金型汚染抑制の点で合格基準を満たさないことが分かった。
【0116】
従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できることが確認された。