(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内側保護カバーは、前記第1内側ガス孔を経て該内側保護カバー内に流入する被測定ガスの流れを規制するガイド部を有しており、前記内側保護カバーと同心且つ前記センサ素子に接する外接円の半径R1と、該内側保護カバーと同心且つ前記被測定ガスの流れを規制する前記ガイド部の規制面を含む平面に接する内接円の半径R2と、の比R2/R1が1以上2.38以下である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
前記内側保護カバーは、前記第1内側ガス孔が形成された円筒状の第1胴部と、円筒状の第2胴部と、前記第2内側ガス孔が形成された有底筒状の先端部と、該第1胴部と該第2胴部とを接続する第1段差部と、該第2胴部と該先端部とを接続する第2段差部と、を有しており、
前記センサ素子の先端は、前記第1胴部で囲まれる空間に位置している、
請求項1〜12のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような二重構造の保護カバーを採用しても、水が保護カバー内に進入してセンサ素子に付着してセンサ素子が冷却されてしまうことがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、センサ素子への水の付着を十分抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、2重構造の保護カバーを有するガスセンサにおいて、内側保護カバーのうちセンサ素子の後端側に形成された第1内側ガス孔1つあたりの開口面積A1と、センサ素子の先端側に形成された第2内側ガス孔1つあたりの開口面積A2との比A2/A1を所定の範囲に調整することで、センサ素子への水の付着を十分抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明のガスセンサは、
センサ素子と、
前記センサ素子の先端を覆うと共に、1以上の第1内側ガス孔及び1以上の第2内側ガス孔が形成された有底筒状の内側保護カバーと、
前記内側保護カバーを覆うと共に、複数の外側ガス孔が形成された有底筒状の外側保護カバーと、
を備え、
前記第1内側ガス孔は、前記第2内側ガス孔よりも前記センサ素子の後端側に位置し、
前記第1内側ガス孔1つあたりの開口面積A1と前記第2内側ガス孔1つあたりの開口面積A2との比A2/A1が0.9以上3.8以下である、
ものである。
【0008】
こうした二重構造の保護カバーを有するガスセンサでは、比A2/A1が0.9以上3.8以下であるときには、センサ素子への水の付着を十分抑制できる。この比A2/A1は、1.5以上1.9以下であることが好ましい。この範囲であれば、センサ素子への水の付着を一層抑制することができる。なお、第1内側ガス孔の個数は6個としてもよい。また、第2内側ガス孔の個数は3〜6個としてもよい。また、前記第1内側ガス孔が前記内側保護カバーへの前記被測定ガスの流入孔であり、前記第2内側ガス孔が前記内側保護カバーからの前記被測定ガスの流出孔であるものとしてもよい。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記第1内側ガス孔の総開口面積B1と前記第2内側ガス孔の総開口面積B2との比B2/B1が0.85以上であることが好ましい。この範囲であれば、センサ素子への水の付着を十分抑制する効果がより確実に得られる。また、比B2/B1が大きくなるほど、センサ素子への水の付着をより一層抑制することができる。比B2/B1は、1.5以上であることがより好ましい。なお、総開口面積B2は、1.55mm
2以上としてもよく、2.8mm
2以上としてもよい。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記第2内側ガス孔は、該第2内側ガス孔の中心と前記内側保護カバーの底面との距離Lが3mm以下であることが好ましい。この範囲であれば、センサ素子への水の付着を十分抑制する効果がより確実に得られる。また、距離Lが小さいほど、センサ素子への水の付着をより一層抑制することができる。距離Lは、2.2mm以下であることがより好ましく、1.1mm以下であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明のガスセンサにおいて、前記外側保護カバーは、側面と底面とを有するカバーであり、前記外側ガス孔は、前記外側保護カバーの側面と底面との境界部分に開けられ、該外側ガス孔の外部開口面と該外側保護カバーの底面とのなす角θ1が10°〜80°であるものとすることが好ましい。こうすることで、孔が側面に位置する場合や外側ガス孔の外部開口面と外側保護カバーの底面とのなす角が10〜80°以外の場合と比べて、被測定ガスの流速が変化した場合のセンサ素子の応答性の変化がより抑制される。すなわち、センサ素子の応答性の流速依存性を低くすることができる。また、こうすることで、孔が側面に位置する場合や外側ガス孔の外部開口面と外側保護カバーの底面とのなす角が10〜80°以外の場合と比べて、外側保護カバー内に入った水が外側ガス孔から外部に逃げやすい。これにより、水が外側保護カバー内に入ってセンサ素子に付着するのをより抑制できる。
【0012】
本発明のガスセンサにおいて、前記内側保護カバーは、前記第1内側ガス孔を経て該内側保護カバー内に流入する被測定ガスの流れを規制するガイド部を有しており、前記内側保護カバーと同心且つ前記センサ素子に接する外接円の半径R1と、該内側保護カバーと同心且つ前記被測定ガスの流れを規制する前記ガイド部の規制面を含む平面に接する内接円の半径R2と、の比R2/R1が1以上2.38以下であることが好ましい。比R2/R1を1以上とすることで、第1内側ガス孔を通過した被測定ガスの流れが直接センサ素子に向かうことをガイド部により抑制できる。これにより、センサ素子への水の付着や、被測定ガスの流れによるセンサ素子の冷えをより抑制することができる。また、比R2/R1を2.38以下とすることで、第1内側ガス孔の開口面積を十分確保することができる。なお、半径R2は、センサ素子の幅に対し0.55倍以上1.30倍以下の値としてもよい。
【0013】
本発明のガスセンサにおいて、前記ガスセンサは、前記内側保護カバーの中心軸が鉛直方向に対して角度θ2(0°<θ2<90°)だけ傾いた状態で配管内に固定されており、前記第2内側ガス孔は、前記内側保護カバーの中心軸に垂直な平面に該第2内側ガス孔を投影したときに、前記第2内側ガス孔の中心と前記内側保護カバーの中心とを結ぶ線と、該内側保護カバーの中心から鉛直下方向への線を該平面に投影した鉛直線と、のなす角の最小値θ3が0°以上45°未満であることが好ましい。最小値θ3が0°に近いほど、内側保護カバーにおいてより鉛直下方向に第2内側ガス孔が存在することになるため、第2内側ガス孔から水が抜けやすくなる。これにより、センサ素子への水の付着をより抑制することができる。最小値θ3は、0°以上15°以下とすることがより好ましい。なお、このガスセンサは、内側保護カバーの中心軸が配管内の被測定ガスの流れに垂直且つ鉛直方向に対して角度θ2だけ傾いた状態で配管内に固定されているものとしてもよい。
【0014】
最小値θ3が0°以上45°未満である態様の本発明のガスセンサにおいて、固定用部材により前記配管内に固定されると共に前記内側保護カバーを固定するハウジング、を備え、前記ハウジングは、該ハウジングと前記固定用部材とに形成された一対の位置合わせ部により前記固定用部材に対する固定位置が規定され、前記内側保護カバーは、該内側保護カバーと前記ハウジングとに形成された一対の位置合わせ部により前記ハウジングに対する固定位置が規定されることで、前記最小値θ3が所定の値になるように前記固定用部材に対する該内側保護カバーの周方向の位相が規定されているものとすることが好ましい。こうすれば、ハウジングと前記固定用部材とに形成された一対の位置合わせ部と、内側保護カバーと前記ハウジングとに形成された一対の位置合わせ部とによって、最小値θ3を容易に所定の値にすることができる。なお、一対の位置合わせ部とは、例えば凸部と凹部とからなり、凹部に凸部が挿入されることで位置合わせを行うものとしてもよい。
【0015】
本発明のガスセンサにおいて、前記ガスセンサは、前記内側保護カバーの中心軸が鉛直方向に対して角度θ2(0°<θ2<90°)だけ傾いた状態で配管内に固定されており、前記外側ガス孔は、前記外側保護カバーの中心軸に垂直な平面に該外側ガス孔を投影したときに、前記外側ガス孔の中心と前記外側保護カバーの中心とを結ぶ線と、該外側保護カバーの中心から鉛直下方向への線を該平面に投影した鉛直線と、のなす角の最小値θ4が0°以上30°以下であることが好ましい。最小値θ4が0°に近いほど、外側保護カバーにおいてより鉛直下方向に外側ガス孔が存在することになるため、外側ガス孔から水が抜けやすくなる。これにより、センサ素子への水の付着をより抑制することができる。なお、このガスセンサは、内側保護カバーの中心軸が配管内の被測定ガスの流れに垂直且つ鉛直方向に対して角度θ2だけ傾いた状態で配管内に固定されているものとしてもよい。
【0016】
最小値θ4が0°以上30°以下である態様の本発明のガスセンサにおいて、固定用部材により前記配管内に固定されると共に前記外側保護カバーを固定するハウジング、を備え、前記ハウジングは、該ハウジングと前記固定用部材とに形成された一対の位置合わせ部により前記固定用部材に対する固定位置が規定され、前記外側保護カバーは、該外側保護カバーと前記ハウジングとに形成された一対の位置合わせ部により前記ハウジングに対する固定位置が規定されることで、前記最小値θ4が所定の値になるように前記固定用部材に対する該外側保護カバーの周方向の位相が規定されているものとすることが好ましい。こうすれば、ハウジングと前記固定用部材とに形成された一対の位置合わせ部と、外側保護カバーと前記ハウジングとに形成された一対の位置合わせ部とによって、最小値θ4を容易に所定の値にすることができる。なお、一対の位置合わせ部とは、例えば凸部と凹部とからなり、凹部に凸部が挿入されることで位置合わせを行うものとしてもよい。
【0017】
本発明のガスセンサにおいて、前記外側保護カバーは、複数のガス通過孔が設けられた円筒状の胴部と、該胴部よりも径の小さい有底筒状の先端部と、該胴部と該先端部とを接続する段差部と、を有しており、前記外側ガス孔は、前記外側保護カバーの先端部に開けられた孔であり、前記外側保護カバーの胴部及び段差部と前記内側保護カバーとで囲まれ、前記第1内側ガス孔により前記内側保護カバーの内部と連通する第1ガス室と、前記外側保護カバーの先端部と前記内側保護カバーとで囲まれ、前記第1ガス室と直接には連通しておらず、前記第2内側ガス孔により前記内側保護カバーの内部と連通する第2ガス室と、を備えたものとしてもよい。
【0018】
本発明のガスセンサにおいて、前記内側保護カバーは、前記第1内側ガス孔が形成された円筒状の第1胴部と、円筒状の第2胴部と、前記第2内側ガス孔が形成された有底筒状の先端部と、該第1胴部と該第2胴部とを接続する第1段差部と、該第2胴部と該先端部とを接続する第2段差部と、を有しており、前記センサ素子の先端は、前記第1胴部で囲まれる空間に位置しているものとしてもよい。こうすれば、例えばセンサ素子の先端が内側保護カバーの第2胴部又は内側保護カバーの先端部で囲まれる空間に位置する場合と比べて、センサ素子の先端が第1内側ガス孔により近くに位置するため、センサ素子の応答性が向上する。なお、内側保護カバーの第1胴部,第2胴部,先端部は中心軸が同一であるものとしてもよい。また、第2胴部は第1胴部よりも小径としてもよく、先端部は第2胴部よりも小径としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】配管200へのガスセンサ100の取り付け状態の概略説明図である。
【
図4】ガイド部134bとセンサ素子110との位置関係を示す説明図である。
【
図5】比R2/R1が値1の場合のガイド部134bとセンサ素子110との位置関係を示す説明図である。
【
図6】比R2/R1が値2.38の場合のガイド部134bとセンサ素子110との位置関係を示す説明図である。
【
図7】
図2のガス通過孔144a周辺を拡大した部分断面図である。
【
図8】
図2の外側ガス孔146a及び第2内側ガス孔138a周辺を拡大した部分断面図である。
【
図9】
図1(b)におけるガスセンサ100の先端周辺を拡大した部分断面図である。
【
図11】最小値θ3=30°,最小値θ4=0°の場合の断面図である。
【
図12】最小値θ3=30°,最小値θ4=30°の場合の断面図である。
【
図13】最小値θ3=0°,最小値θ4=0°の場合の断面図である。
【
図14】ハウジング102から内側保護カバー130及び外側保護カバー140を取り外した状態を示す分解図である。
【
図15】ハウジング102に内側保護カバー130及び外側保護カバー140を取り付けた状態を示す破断面図である。
【
図16】説明の便宜上、ハウジング102のみを示した説明図である。
【
図17】説明の便宜上、固定用部材202のみを示した説明図である。
【
図18】固定用部材202にハウジング102を取り付ける様子を示す説明図である。
【
図19】変形例の第2内側ガス孔238a周辺を拡大した部分断面図である。
【
図20】変形例の第2内側ガス孔239a周辺を拡大した部分断面図である。
【
図21】変形例の第2内側ガス孔240a周辺を拡大した部分断面図である。
【
図22】変形例の第2内側ガス孔241aの位置を示す説明図である。
【
図23】変形例のガスセンサ100の断面図を示す説明図である。
【
図24】最小値θ3=15°,最小値θ4=0°の場合の断面図である。
【
図25】最小値θ3=45°,最小値θ4=0°の場合の断面図である。
【
図26】最小値θ3=30°,最小値θ4=30°の場合の断面図である。
【
図27】面積比A2/A1と水残り量との関係を示すグラフである。
【
図28】面積比A2/A1とヒーターパワー制御値との関係を示すグラフである。
【
図30】最小値θ3=45°,最小値θ4=30°の場合の断面図である。
【
図31】内側保護カバーの回転角度と水残り量との関係を示すグラフである。
【
図32】配管径が28mmの場合における内側保護カバーの回転角度と応答時間との関係を示すグラフである。
【
図33】配管径が55mmの場合における内側保護カバーの回転角度と応答時間との関係を示すグラフである。
【
図34】比較例1のガスセンサ700の構成を示す縦断面図である。
【
図35】流速が90m/sの場合のガス置換率の時間変化を示すグラフである。
【
図36】流速が10m/sの場合のガス置換率の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
図1は配管200へのガスセンサ100の取り付け状態の概略説明図である。
図1(a)は配管200の側面から見た状態の説明図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA−A断面図である。
図2は
図1(b)のB−B断面図であり、
図3は
図2のC−C断面図である。なお、
図2は、説明の便宜上、
図1(b)のB−B断面の一部を拡大して示している。
【0021】
図1(a)に示すように、ガスセンサ100は車両のエンジンからの排気経路である配管200内に取り付けられており、エンジンから排出された被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO
2等のガス成分のうち少なくともいずれか1つの濃度を検出するようになっている。このガスセンサ100は、
図1(b)に示すように、ガスセンサ100の中心軸が配管200内の被測定ガスの流れに垂直且つ鉛直方向に対して角度θ2だけ傾いた状態で配管200内に固定されている。角度θ2は、0°<θ2<90°であり、本実施形態では45°とした。
【0022】
ガスセンサ100は、
図2に示すように、被測定ガス中のガス成分の濃度を検出する機能を有するセンサ素子110と、このセンサ素子110を保護する保護カバー120とを備えている。また、ガスセンサ100は、金属製のハウジング102及び外周面におねじが設けられた金属製のナット103を備えている。ハウジング102は配管200に溶接され内周面にめねじが設けられた固定用部材202内に挿入されており、さらにナット103が固定用部材202内に挿入されることでハウジング102が固定用部材202内に固定されている。これにより、ガスセンサ100が配管200内に固定されている。
【0023】
センサ素子110は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる。センサ素子110は、センサ素子110を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒーターを内部に備えている。このようなセンサ素子110の構造やガス成分の濃度を検出する原理は公知であり、例えば特開2008−164411号公報に記載されている。
【0024】
保護カバー120は、センサ素子110の周囲を取り囲むように配置されている。この保護カバー120は、センサ素子110の先端を覆う有底筒状の内側保護カバー130と、内側保護カバー130を覆う有底筒状の外側保護カバー140とを有している。また、内側保護カバー130と外側保護カバー140とに囲まれた空間として第1ガス室122,第2ガス室126が形成され、内側保護カバー130に囲まれた空間としてセンサ素子室124が形成されている。なお、ガスセンサ100,内側保護カバー130,外側保護カバー140の中心軸は同軸になっている。
【0025】
内側保護カバー130は、金属(例えばステンレス鋼)製の部材であり、円筒状の大径部132と、円筒状で大径部132よりも径の小さい第1胴部134と、円筒状で第1胴部134よりも径の小さい第2胴部136と、有底筒状で第2胴部136よりも径の小さい先端部138とを有している。また、内側保護カバー130は、大径部132と第1胴部134とを接続する段差部133と、第1胴部134と第2胴部136とを接続する段差部135と、第2胴部136と先端部138とを接続する段差部137とを有している。なお、大径部132,第1胴部134,第2胴部136,先端部138は中心軸が同一である。大径部132は、ハウジング102に内周面が当接しており、これにより内側保護カバー130がハウジング102に固定されている。第1胴部134,第2胴部136は、センサ素子110の側面を覆うように位置している。第1胴部134には、第1ガス室122とセンサ素子室124とに通じる第1内側ガス孔134aと、第1内側ガス孔134aを経てセンサ素子室124に流入する被測定ガスの流れを規制する板状のガイド部134bとがそれぞれ等間隔に6箇所形成されている(
図3参照)。先端部138の側面には、センサ素子室124と第2ガス室126とに通じる第2内側ガス孔138aが等間隔に4箇所形成されている。
【0026】
第1内側ガス孔134aは、
図3に示すように、ガイド部134bと1対1に対応しており、ガイド部134bは対応する第1内側ガス孔134aとセンサ素子110との間に位置するように形成されている。また、複数のガイド部134bは、回転対称(6回対称)となるように形成されている。
図4は、ガイド部134bとセンサ素子110との位置関係を示す説明図である。図示するように、内側保護カバー130と同心且つセンサ素子110に接する外接円の半径を半径R1とし、内側保護カバー130と同心且つ被測定ガスの流れを規制するガイド部134bの規制面を含む平面に接する内接円の半径を半径R2とする。このとき、本実施形態では比R2/R1が1以上2.38以下となるようにガイド部134bが形成されている。比R2/R1を値1以上とすることで、第1内側ガス孔134aを通過した被測定ガスの流れが直接センサ素子110に向かうことをガイド部134bにより抑制できる。これにより、センサ素子110への水の付着や、被測定ガスの流れによるセンサ素子110の冷えをより抑制することができる。また、比R2/R1を値2.38以下とすることで、第1内側ガス孔134aの開口面積を十分確保することができる。なお、第1内側ガス孔134aの開口面積とは、第1内側ガス孔134aを通過する被測定ガスの流れに沿って第1内側ガス孔134aを見たときの開口面積をいう。そのため、ガイド部134bがある場合の第1内側ガス孔134aの開口面積は、ガイド部134bの規制面に平行に第1内側ガス孔134aを見たときの開口面積となる。
図5に、比R2/R1が値1の場合のガイド部134bとセンサ素子110との位置関係を示し、
図6に比R2/R1が値2.38の場合のガイド部134bとセンサ素子110との位置関係を示す。なお、
図5,6に示すように、ガイド部134bの規制面と第1内側ガス孔134aの外部開口面とのなす角θ5は、25°以上67.5°以下としてもよい。また、半径R2は、センサ素子の幅(
図4における左右方向の長さ)に対し0.55倍以上1.30倍以下の値としてもよい。
【0027】
第2内側ガス孔138aは、第2内側ガス孔138aの中心軸に垂直な断面が真円となるように形成されている。この第2内側ガス孔138aは、第2内側ガス孔138aの中心と内側保護カバー130の底面との距離L(
図2参照)が3mm以下となるように形成されている。この範囲であれば、センサ素子110への水の付着を一層抑制する効果がより確実に得られる。また、距離Lが小さいほど、センサ素子110への水の付着をより一層抑制することができる。距離Lは、2.2mm以下であることがより好ましく、1.1mm以下であることがさらに好ましい。また、本実施形態では、第1内側ガス孔134aの孔1つあたりの開口面積A1と第2内側ガス孔138aの孔1つあたりの開口面積A2との比A2/A1が、0.9以上3.8以下となっている。こうすることで、センサ素子110への水の付着を十分抑制できる。この比A2/A1は、1.5以上1.9以下であることが好ましい。この範囲であれば、センサ素子110への水の付着を一層抑制することができる。なお、第2内側ガス孔138aの開口面積とは、第2内側ガス孔138aを通過する被測定ガスの流れに沿って第2内側ガス孔138aを見たときの開口面積をいう。また、特に限定するものではないが、本実施形態では、第2内側ガス孔138aの直径は例えば0.6〜1.2mmの範囲の値である。本実施形態では、第1内側ガス孔134aの総開口面積B1(孔1つあたりの開口面積×孔数6)と第2内側ガス孔138aの総開口面積B2(孔1つあたりの開口面積×孔数4)との比B2/B1が0.85以上となっている。この範囲であれば、センサ素子への水の付着を一層抑制する効果がより確実に得られる。比B2/B1が大きくなるほど、センサ素子への水の付着をより一層抑制することができる。比B2/B1は、1.5以上であることがより好ましい。なお、総開口面積B2は、1.55mm
2以上としてもよく、2.8mm
2以上としてもよい。
【0028】
外側保護カバー140は、金属(例えばステンレス鋼)製の部材であり、円筒状の大径部142と、大径部142に接続しており大径部142よりも径の小さい円筒状の胴部144と、有底筒状で胴部144よりも径の小さい先端部146とを有している。また、外側保護カバー140は、胴部144と先端部146とを接続する段差部145を有している。なお、大径部142,胴部144,先端部146の中心軸はいずれも内側保護カバー130の中心軸と同一である。大径部142は、ハウジング102及び大径部132に内周面が当接しており、これにより外側保護カバー140がハウジング102に固定されている。胴部144は、第1胴部134,第2胴部136の外周面を覆うように位置しており、外側保護カバー140の外側と第1ガス室122とに通じるガス通過孔144aが等間隔に6箇所形成されている。このガス通過孔144aは、円形に開けられた孔であり、胴部144の側面と段差部145の底面との境界部分である第1角部144bに位置している。また、ガス通過孔144aは、ガス通過孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°となり、且つ、ガス通過孔144aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。こうすることで、水が外側保護カバー140内に入ってセンサ素子110に付着するのをより抑制できると共に、センサ素子110の応答性の流速依存性を低くすることができる。
図2のガス通過孔144a周辺を拡大した部分断面図を
図7に示す。
図7に示すように、ガス通過孔144aの外部開口面(破線a)と段差部145の底面(破線b)とのなす角が45°となっている。また、ガス通過孔144aの内周面144cとガス通過孔144aの外部開口面(破線a)とのなす角が90°となっている。先端部146は、先端部138を覆うように位置していると共に、内周面が第2胴部136の外周面と当接している。また、先端部146の側面と底面との境界部分である第2角部146bには、外側保護カバー140の外側と第2ガス室126とに通じる外側ガス孔146aが等間隔に6箇所形成されている。この外側ガス孔146aは、円形に開けられた孔であり、ガス通過孔144aと同様に、外側ガス孔146aの外部開口面と先端部146の底面とのなす角θ1が45°となり、且つ、外側ガス孔146aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。こうすることで、水が外側保護カバー140内に入ってセンサ素子110に付着するのをより抑制できると共に、センサ素子110の応答性の流速依存性を低くすることができる。また、外側ガス孔146aの延長上の領域以外の位置に第2内側ガス孔138aが位置するように、外側ガス孔146aと第2内側ガス孔138aとの位置関係が定められている。
図2の外側ガス孔146a及び第2内側ガス孔138a周辺を拡大した部分断面図を
図8に示す。
図8に示すように、外側ガス孔146aの中心軸に沿った方向(外側保護カバー140の中心軸方向とのなす角が45°の方向)から仮想的に指向性をもつ光を照射すると、内側保護カバー130の先端部138の底面にその光が当たる領域146cが現れるが、この領域146cを外側ガス孔146aの延長上の領域という。第2内側ガス孔138aはこの領域146c以外に位置している。なお、6箇所のガス通過孔144aの開口部の面積はいずれも同じであり、6箇所の外側ガス孔146aの開口部の面積はいずれも同じである。また、外側ガス孔146aの1つあたりの開口部の面積は、ガス通過孔144aの1つあたりの開口部の面積よりも大きい。したがって、ガス通過孔144a及び外側ガス孔146aはいずれも同じ個数(6箇所)であるため、外側ガス孔146aの総面積(1つの孔の面積×孔の個数)がガス通過孔144aの総面積より大きい。なお、ガス通過孔144aおよび外側ガス孔146aは、自身の中心軸に垂直な断面が真円となるように形成されている。また、特に限定するものではないが、本実施形態では、ガス通過孔144aの直径は例えば0.8〜1.2mmの範囲の値であり、外側ガス孔146aの直径は例えば0.8〜1.2mmの範囲の値である。
【0029】
第1ガス室122は、段差部133,135,第1胴部134,第2胴部136,大径部142,胴部144、段差部145により囲まれた空間である。センサ素子室124は、内側保護カバー130に囲まれた空間である。第2ガス室126は、段差部137,先端部138,146に囲まれた空間である。なお、先端部146の内周面が第2胴部136の外周面と当接しているため、第1ガス室122と第2ガス室126とは直接には連通していない。
【0030】
こうして構成されたガスセンサ100が所定のガス濃度を検出する際の被測定ガスの流れについて説明する。配管200内を流れる被測定ガスは、複数のガス通過孔144aのいずれかを通って第1ガス室122内に流入し、そこから複数の第1内側ガス孔134aのいずれかを通ってセンサ素子室124に流入する。そして、被測定ガスは、センサ素子室124から複数の第2内側ガス孔138aのいずれかを通って第2ガス室126に流入し、そこから複数の外側ガス孔146aのいずれかを通って外部に流出する。
【0031】
次に、ガスセンサ100が配管200に取付けられた状態における、第2内側ガス孔138a及び外側ガス孔146aと鉛直下方向との関係について説明する。
図9は、
図1(b)におけるガスセンサ100の先端周辺を拡大した部分断面図であり、
図10は、
図9のD−D断面図である。
図10は、内側保護カバー130の中心軸に垂直な平面で先端部138,146を断面視した図であり、内側保護カバー130及び外側保護カバー140の中心から鉛直下方向への線(
図9参照)を投影した鉛直線を併せて示している。本実施形態では、この
図10のように内側保護カバー130の中心軸に垂直な平面に第2内側ガス孔138aを投影したときに、第2内側ガス孔138aの中心と内側保護カバー130の中心とを結ぶ線と、内側保護カバー130の中心から鉛直下方向への線をこの平面に投影した鉛直線と、のなす角の最小値θ3が0°以上45°未満となっている。例えば
図10において、第2内側ガス孔138aの中心と内側保護カバー130の中心とを結ぶ線と、鉛直線と、のなす角を4つの第2内側ガス孔138aについてそれぞれ求めると、なす角が0°の孔が1つ,90°の孔が2つ,180°の孔が1つ存在する。そのため、このなす角の最小値θ3は0°である。この最小値θ3が0°に近いほど、内側保護カバー130のうちより鉛直下方向(
図9における下方向)に第2内側ガス孔138aが存在することになるため、第2内側ガス孔138aから水が抜けやすくなる。これにより、センサ素子110への水の付着をより抑制することができる。なお、最小値θ3は、0°以上15°以下とすることがより好ましい。同様に、本実施形態では、外側保護カバー140の中心軸に垂直な平面に外側ガス孔146aを投影したときに、外側ガス孔146aの中心と外側保護カバー140の中心とを結ぶ線と、外側保護カバー140の中心から鉛直下方向への線をこの平面に投影した鉛直線と、のなす角の最小値θ4が0°以上30°以下となっている。例えば
図10において、外側ガス孔146aの中心と外側保護カバー140の中心とを結ぶ線と、鉛直線と、のなす角を6つの外側ガス孔146aについてそれぞれ求めると、なす角が30°の孔が2つ,90°の孔が2つ,150°の孔が2つ存在する。そのため、このなす角の最小値θ4は30°である。この最小値θ4が0°に近いほど、外側保護カバー140のうちより鉛直下方向(
図9における下方向)に外側ガス孔146aが存在することになるため、外側ガス孔146aから水が抜けやすくなる。これにより、センサ素子110への水の付着をより抑制することができる。
図11は、最小値θ3=30°,最小値θ4=0°の場合の断面図である。
図12は、最小値θ3=30°,最小値θ4=30°の場合の断面図である。
図13は、最小値θ3=0°,最小値θ4=0°の場合の断面図である。
図11,12,13は、
図10の状態から内側保護カバー130及び外側保護カバー140を周方向に時計回りにそれぞれ30°,60°,90°回転させた状態に相当する。
【0032】
続いて、ハウジング102に対する内側保護カバー130及び外側保護カバー140の取り付けについて説明する。
図14は、ハウジング102から内側保護カバー130及び外側保護カバー140を取り外した状態を示す分解図であり、
図15は、ハウジング102に内側保護カバー130及び外側保護カバー140を取り付けた状態を示す破断面図である。なお、説明の便宜上、
図14,15では、ハウジング102,ナット103,内側保護カバー130及び外側保護カバー140以外の構成要素の図示を省略している。図視するように、ハウジング102は、外周面に凸部102a,102b,102cが形成されている。また、内側保護カバー130は、大径部132の内周面に凹部130aが形成され、外側保護カバー140は、大径部142の内周面に凹部140aが形成されている。凸部102aと凹部130aとは、一対の位置合わせ部をなしており、ハウジング102に内側保護カバー130を取り付ける際に凹部130aに凸部102aが挿入されることで、ハウジング102に対する固定位置が規定されるようになっている。すなわち、ハウジング102に対して内側保護カバー130を周方向に回転させた(凹部130aと凸部102aとをずらした)状態では凸部102aが邪魔になって取り付けができない。そのため、取り付け状態でのハウジング102に対する内側保護カバー130の周方向の位相は常に同じになるよう規定される。同様に、凸部102bと凹部140aとは、一対の位置合わせ部をなしており、ハウジング102に外側保護カバー140を取り付ける際に凹部140aに凸部102bが挿入されることで、ハウジング102に対する固定位置が規定されるようになっている。そのため、取り付け状態でのハウジング102に対する外側保護カバー140の周方向の位相は常に同じになるよう規定される。
【0033】
次に、固定用部材202とハウジング102との取り付けについて説明する。
図16は、説明の便宜上、ハウジング102のみを示した説明図である。
図16(a)はハウジング102の側面図であり、
図16(b)は
図16(a)のE視図、
図16(c)は
図16(b)のF−F断面図である。
図17は、説明の便宜上、固定用部材202のみを示した説明図である。
図17(a)は、固定用部材202の上面図であり、
図17(b)は、
図17(a)のG−G断面図である。
図18は、固定用部材202にハウジング102を取り付ける様子を示す説明図である。説明の便宜上、
図18ではハウジング102,ナット103及び固定用部材202以外の構成要素の図示を省略している。図視するように、ハウジング102は、外周面に凸部102cが形成されている。また、固定用部材202は、内周面に凹部202aが形成されている。凸部102cと凹部202aとは、一対の位置合わせ部をなしており、固定用部材202にハウジング102を取り付ける際に凹部202aに凸部102cが挿入されることで、固定用部材202に対するハウジング102の固定位置が規定されるようになっている。そのため、
図18に示すように凹部202aと凸部102cとが対向するように固定用部材202内にハウジング102を挿入し、さらにナット103を固定用部材202内に挿入してハウジング102を取り付けると、取り付け状態での固定用部材202に対するハウジング102の周方向の位相は常に同じになるよう規定される。
【0034】
以上のように、本実施形態では、固定用部材202に対するハウジング102の固定位置が規定され、ハウジング102に対する内側保護カバー130及び外側保護カバー140の固定位置が規定されている。そのため、ガスセンサ100を固定用部材202を介して配管200に取り付けると、固定用部材202に対する内側保護カバー130及び外側保護カバー140の固定位置も常に同じになる。そして、本実施形態では、このように位置を固定するための凸部102a,102b,102c、凹部130a,凹部140a,202aの位置は、ガスセンサ100を配管200に取り付けた状態で上述した最小値θ3,最小値θ4が所定の値(例えば、最小値θ3=0°,最小値θ4=30°)となるように予め定められている。このため、ガスセンサ100を配管200に取り付ける際には、最小値θ3,θ4の測定や第2内側ガス孔138aと外側ガス孔146aとの位置合わせを行うことなく、凹部130aに凸部102aが挿入され、凹部140aに凸部102bが挿入され、凹部202aに凸部102cが挿入されるように取付を行うだけで、容易に最小値θ3,最小値θ4を所定の値にすることができる。
【0035】
以上詳述した本実施形態によれば、ガスセンサ100において比A2/A1が0.9以上3.8以下、好ましくは1.5以上1.9以下となるようにしているため、センサ素子110への水の付着を十分抑制できる。また、比B2/B1が0.85以上、好ましくは1.5以上となるようにしているため、センサ素子110への水の付着を十分抑制する効果がより確実に得られる。さらに、距離Lが3mm以下,好ましくは2.2mm以下、より好ましくは1.1mm以下としているため、センサ素子110への水の付着を十分抑制する効果がより確実に得られる。さらにまた、外側ガス孔146aが先端部146の側面と底面との境界部分に形成されると共になす角θ1が45°であるため、水が内側保護カバー130内に入ってセンサ素子110に付着するのをより抑制できると共に、センサ素子110の応答性の流速依存性を低くすることができる。そして、比R2/R1が1以上2.38以下であるため、センサ素子110への水の付着や、被測定ガスの流れによるセンサ素子110の冷えをより抑制することができる。そしてまた、最小値θ3が0°以上45°未満であるため、第2内側ガス孔138aから水が抜けやすくなり、センサ素子110への水の付着をより抑制することができる。そしてまた、最小値θ4が0°以上30°以下であるため、外側ガス孔146aから水が抜けやすくなり、センサ素子110への水の付着をより抑制することができる。そしてまた、凸部102a,102b,102c、凹部130a,凹部140a,202aを形成することによって、容易に最小値θ3,最小値θ4を所定の値にすることができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実現し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、第1内側ガス孔134aは6つの孔とし、第2内側ガス孔138aは4つの孔であるとしたが、これに限らず1以上の孔であればよい。また、第1内側ガス孔134a及び第2内側ガス孔138aは等間隔に位置しないものとしたり、複数の第1内側ガス孔134aが互いに開口面積が異なるものとしたり、複数の第2内側ガス孔138aが互いに開口面積が異なるものとしたりしてもよい。また、第1内側ガス孔134a及び第2内側ガス孔138aの孔の形状も、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0038】
上述した実施形態では、ガス通過孔144a及び外側ガス孔146aはいずれも6つの孔であるものとしたが、これに限られない。例えば、ガス通過孔144aが互いに等間隔に位置する3つ以上の孔であり、外側ガス孔146aが互いに等間隔に位置する3つ以上の孔であるものとしてもよい。また、ガス通過孔144a及び外側ガス孔146aがいずれも2つの孔であってもよい。なお、ガス通過孔144a及び外側ガス孔146aは、等間隔に位置しないものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、ガス通過孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°であるものとしたが、これに限られない。例えば、なす角は10°〜80°の範囲の値としてもよい。この場合でも、ガス通過孔144aが第1角部144bに位置していれば、水がガス通過孔144aから外部に逃げやすくなり、センサ素子110への水の付着を抑制する効果や、センサ素子110の応答性の流速依存性を低くする効果が得られる。ガス通過孔144aと同様に、外側ガス孔146aの外部開口面と先端部146の底面とのなす角θ1が本実施形態では45°であるものとしたが、10°〜80°の範囲の値としてもよい。この場合でも、外側ガス孔146aが第2角部146bに位置していれば、水が外側ガス孔146aから外部に逃げやすくなり、センサー素子110への水の付着を抑制する効果が得られる。また、センサ素子110の応答性の流速依存性を低くする効果が得られる。
【0040】
上述した実施形態では、
図2に示したように、第2内側ガス孔138aは内側保護カバー130の先端部138の側面に位置しているものとしたが、これに限らず、内側保護カバーの側面と底面との境界部分に位置してもよい。第2内側ガス孔が内側保護カバーの側面と底面との境界部分に位置する場合の第2内側ガス孔周辺を拡大した部分断面図を
図19に示す。なお、
図19では、
図8と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図示するように、変形例の第2内側ガス孔238aは、
図8の第2内側ガス孔138aとは異なり、第2内側ガス孔238aの外部開口面と内側保護カバー130の先端部138の底面とのなす角が45°となり、且つ、第2内側ガス孔238aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。なお、第2内側ガス孔238aの外部開口面と内側保護カバー130の先端部138の底面とのなす角は45°に限らず、10〜80°の範囲の値としてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、
図2に示したように、第2内側ガス孔138aは内側保護カバー130の先端部138の側面の中ほどに位置しているものとしたが、これに限らず、第2内側ガス孔を先端部138の側面のうち底面に近い位置に設けてもよいし、段差部137に近い位置に設けてもよい。第2内側ガス孔を先端部138の側面のうち底面に近い位置に設けた場合の第2内側ガス孔周辺を拡大した部分断面図を
図20に示す。なお、
図20では、
図8と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図示するように、変形例の第2内側ガス孔239aは、先端部138の角部138bに極力近い位置に設けられている。また、第2内側ガス孔239aの最下面239bと先端部138の内側の底面138cとは同一平面上に位置している。
【0042】
上述した実施形態では、
図2に示したように、第2内側ガス孔138aは内側保護カバー130の先端部138の側面に位置しているものとしたが、これに限らず、底面に位置していてもよい。第2内側ガス孔が先端部138の底面に位置する場合の第2内側ガス孔周辺を拡大した部分断面図を
図21に示す。なお、
図21では、
図8と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図示するように、変形例の第2内側ガス孔240aは、先端部138の底面の中心に位置する円形の孔である。なお、第2内側ガス孔を先端部138の底面の中心以外に設けてもよい。例えば、先端部138の底面のうち、先端部138の角部に極力近い位置に第2内側ガス孔を設けてもよい。この場合、先端部138を中心軸方向(
図2の上下方向)から見たときに、先端部138の中心軸を中心点とした第2内側ガス孔の位置と外側ガス孔146aの延長上の領域146cの位置との位相がずれるように配置することで、第2内側ガス孔が領域146c以外に位置するようにしてもよい。この場合の第2内側ガス孔の位置を示す説明図を
図22に示す。
図22(a)は先端部138周辺の部分断面図であり、
図22(b)は、
図22(a)のH−H断面図である。なお、
図22では、
図8と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図22(b)に示すように、変形例の第2内側ガス孔241aは、等間隔に6箇所形成され、先端部138の底面の角部138bに極力近い位置に形成されている。そのため、
図22(b)のように中心軸方向から見たときに、第2内側ガス孔241aが先端部138の側部の内周面と接するように位置している。そして、第2内側ガス孔241aは、先端部138の中心軸を中心点として見たときに第2内側ガス孔241aの位置と領域146cの位置との位相がずれるように配置されている。これにより、第2内側ガス孔241aは領域146cと重ならないように位置している。このようにして第2内側ガス孔241aを形成した場合でも、第2内側ガス孔241aが領域146c以外の位置に開けられているため、本実施形態と同様に水がセンサ素子室124内に到達しにくくなる効果が得られる。
【0043】
上述した実施形態では、第2内側ガス孔138a,ガス通過孔144aおよび外側ガス孔146aは、自身の中心軸に垂直な断面が真円となるように形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、中心軸に垂直な断面が楕円であったり多角形(例えば長方形)であったりしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、一対の位置合わせ部として凸部102a及び凹部130a、凸部102b及び凹部140a、凸部102c及び凹部202aが形成されているものとしたが、凸部102b及び凹部140aを形成しないものとしてもよい。こうしても、固定用部材202,ハウジング102,内側保護カバー130の位置関係を規定でき、容易に最小値θ3を所定の値にすることができる。同様に、凸部102a及び凹部130aを形成しないものとしてもよい。また、凹部と凸部とは逆であってもよい。さらに、凹部と凸部とに限らず、固定用部材202,ハウジング102,内側保護カバー130,外側保護カバー140の位置関係を規定できるものであれば、どのような形状の位置合わせ部を用いてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、
図2に示したように、第1胴部134,第2胴部136は、センサ素子110の側面を覆うように位置しており、センサ素子110の先端は第2胴部で囲まれる空間に位置しているものとしたが、これに限られない。例えば、
図23に示すように、センサ素子110が内側保護カバー130の第1胴部134で囲まれる空間までしか到達していないものとしてもよい。換言すると、センサ素子110の先端が第1胴部134で囲まれる空間に位置しているものとしてもよい。こうすることで、例えば
図2と比べてセンサ素子110の先端が第1内側ガス孔134aにより近くに位置するため、センサ素子110の応答性が向上する。この場合、センサ素子110の先端は第1内側ガス孔134aよりも第2内側ガス孔138a側(内側保護カバー130の先端側)に位置することが好ましい。なお、センサ素子110が内側保護カバー130の先端部138で囲まれる空間まで到達しているものとしてもよい。換言すると、センサ素子110の先端が先端部138で囲まれる空間に位置しているものとしてもよい。
【実施例】
【0046】
[実験例1]
図2に示すガスセンサ100を作製した。具体的には、内側保護カバー130として、板厚が0.3mm、軸方向長さが17.7mm、大径部132の軸方向長さが1.8mm、第1胴部134の軸方向長さが5.4mm、第2胴部136の軸方向長さが5.6mm、先端部138の軸方向長さが4.9mm、大径部132の外径が14.1mm、第1胴部134の外径が11.8mm、第2胴部136の外径が8.2mm、先端部138の外径が5.9mm、第1内側ガス孔134aの1つあたりの開口面積A1が0.3053mm
2、第1内側ガス孔134aの孔数が6、比R2/R1が値4.35、第1内側ガス孔134aの中心から内側保護カバー130の上端までの距離が3.65mm、第2内側ガス孔138aの内径が1.0mm、第2内側ガス孔138aの孔数が4、距離Lが1.1mmのものを用いた。更に、外側保護カバー140として、板厚が0.4mm、軸方向長さが24.2mm、大径部142の軸方向長さが6.1mm、胴部144の軸方向長さが8.5mm、先端部146の軸方向長さが9.6mm、大径部142の外径が15.2mm、胴部144の外径が14.6mm、先端部146の外径が8.7mm、ガス通過孔144aの内径が1.0mm、ガス通過孔144aの孔数が6、ガス通過孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°、外側ガス孔146aの内径が1.2mm、外側ガス孔146aの孔数が6、外側ガス孔146aのなす角θ1が45°のものを用いた。また、配管に取り付けた時に最小値θ3が0°,最小値θ4が30°(
図10の状態)となるように内側保護カバー130及び外側保護カバー140をハウジング102に取り付けた。こうして作製したガスセンサ100を実験例1とした。なお、第1内側ガス孔134a,第2内側ガス孔138a,ガス通過孔144a及び外側ガス孔146aは、いずれもそれぞれ等間隔に形成した。また、ここで作製したガスセンサ100のセンサ素子110は、酸素濃度を検出するものとした。
【0047】
[実験例2〜16]
第2内側ガス孔の内径及び孔数,距離L,最小値θ3,最小値θ4を表1の実験例2〜16に示すように種々変更したものを作製した。なお、実験例3,6,7の第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係は
図13の状態である。実験例4,5の第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係をそれぞれ
図24,25に示す。実験例2,13,14の第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係を
図26に示す。実験例2〜15では、複数の第2内側ガス孔138aは等間隔に形成されている。
【0048】
[評価試験1]
各ガスセンサ100につき、以下の保護カバー内の水残り量とヒーターパワー制御値とを調べた。その結果を表1及び
図27,28に示す。保護カバー内の水残り量とヒーターパワー制御値の試験方法は以下の通り。
【0049】
実験例1〜16のガスセンサ100につき、予め内側保護カバー内に水が入った状態から水が抜けるまでの様子を確認する水抜き試験を行った。水抜き試験の様子を
図29に示す。なお、
図29の上段には水抜き試験時の全体の様子を示し、下段には配管920に対するガスセンサ100の傾きを説明する部分断面図を示した。この試験は、以下のように行った。まず、加振機900が取り付けられた配管920にガスセンサを鉛直方向から45°傾けて取り付けた。また、ガスセンサ100には、ヒーターの出力を制御するコントローラー940と、ヒーターのパワー制御値を測定するためのセンサ出力モニター960を接続した。次に、内側保護カバー130内に0.1g(0.1cc)の水を入れ、加振機900により10〜200Hzの間で周波数を変化させながら正弦波で配管920をガスセンサ100の中心軸方向に振動させた。その状態で、送風機980を所定の駆動条件で運転し、送風機980から配管920へ送風した。送風中は、センサ素子110内のヒーターが100℃になるように制御を行い、このときのヒーターのパワー制御値をセンサ出力モニター960にて測定した。センサ素子110に付着する水が多いほどセンサ素子110の温度が低下して、ヒーターの出力を大きくすべくヒーターパワー制御値が大きい値となる。また、送風機980の駆動終了と共に振動を停止し、外側保護カバー140内及び内側保護カバー130内に残っていた水の合計量を水残り量として測定した。なお、送風機980の所定の駆動条件とは、送風機により風速約75m/sの大気の流れを作り、3秒間配管920に送風することをいう。また、実験例3〜7については、水残り量のみを測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
図27は面積比A2/A1と水残り量との関係を示すグラフ、
図28は面積比A2/A1とヒーターパワー制御値との関係を示すグラフである。表1及び
図27から明らかなように、面積比A2/A1が0.9以上3.8以下である実験例1〜10,12〜15は、いずれも面積比A2/A1が0.9未満である実験例11と比べて、水残り量が少なかった。また、実験例1〜10,12,13,15は、面積比A2/A1が3.8を超えている実験例16と比べて、水残り量が少なかった。また、距離Lなど他の条件が比較的近い実験例1,2,9,10を比較すると、面積比A2/A1が1.5以上1.9以下である実験例9が特に水残り量が少なかった。さらに、比B2/B1が0.85以上である実験例1〜10,12,15は、いずれも総面積比B2/B1が0.85未満である実験例11,16と比べて、水残り量が少なくなっていた。そして、総面積比B2/B1が1.7前後(1.5以上)である実験例1〜10は、総面積比B2/B1が0.8前後である実験例11〜16と比べて全体的に水残り量が少ない傾向が見られた。さらにまた、距離Lのみが異なる実験例3,6,7を比較すると、距離Lが3mm以下である実験例3,6は距離Lが3mmを超えている実験例7と比べて水残り量が少なく、距離Lが1.1mm以下である実験例3は特に水残り量が少なかった。また、実験例6と距離L以外の条件が比較的近い実験例8とを比較すると、距離Lが2.2mm以下である実験例8の方が水残り量が少なかった。距離L以外の条件が同じである実験例13,14を比較すると、距離Lが1.1mm以下である実験例13の方が水残り量が少なかった。さらに、最小値θ3のみが異なる実験例3〜5を比較すると、最小値θ3が45°未満である実験例3,4は、最小値θ3が45°である実験例5と比べて水残り量が少なかった。また、最小値θ3が0°である実験例3では特に水残り量が少なかった。表1及び
図28から明らかなように、実験例1〜10,12,13,15は、実験例11,16と比べていずれも水残り量が少なく、且つ実験例16と比べてヒーターパワー制御値も小さかった。また、実験例1〜10,12〜15の実験例11に対する水残り量の減少割合と比べると、実験例11に対するヒーターパワー制御値の増加割合は比較的少なかった。
【0052】
[実験例17〜20]
実験例1のガスセンサを基準として、内側保護カバーのみを表2に示す回転角度だけ回転させて位相を変更し、最小値θ3を表2に示すように種々変更して実験例17〜20のガスセンサを作製した。なお、実験例17,19の第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係は
図12の状態である。実験例18の第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係を
図30に示す。実験例17と実験例19とは実験例1からの回転角度が30°であるか60°であるかが異なるものの、第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係は実質的に同じである。同様に、実験例1と実験例20とは実質的に同じである。
【0053】
[実験例21〜26]
実験例3のガスセンサを基準として、内側保護カバーのみを表2に示す回転角度だけ回転させて位相を変更し、最小値θ3を表2に示すように種々変更して実験例21〜26のガスセンサを作製した。実験例22,24の第2内側ガス孔138a,外側ガス孔146aの位置関係は
図11の状態である。なお、実験例21,25は実験例4と実質的に同じである。実験例22と実験例24とは実質的に同じである。実験例23は実験例5と実質的に同じである。実験例26は実験例3と実質的に同じである。
【0054】
実験例18,20,21,23,25,26についても評価試験1の水抜き試験を行った。実験例1,3の結果と併せて表1及び
図31に示す。
【0055】
[評価試験2]
また、実験例1,17〜20,3,22〜24,26について、センサ素子の応答時間の測定を行った。その結果を表1及び
図32,33に示す。センサ出力の応答性の試験方法は以下の通り。
【0056】
まず、
図1のようにガスセンサを配管200に取り付けた。この状態で、エンジンの排ガスの代わりに、被測定ガスとしてバーナー燃焼によりNO濃度70ppm、ラムダ1.05に制御した基準ガスを流してセンサ出力が安定するのを待った。その後、ガス導入口を通じて酸素を基準ガス中に導入し、NO濃度70ppm、ラムダ1.35の混合ガスを流してセンサ出力が安定するのを待った。すると、センサ素子110が酸素濃淡電池として機能して起電力が発生し、センサ出力が立ち上がった。ここで、基準ガス中に酸素を導入した時点から、センサ出力がその立ち上がりの最大値の10%になるまでに要する時間t10とセンサ出力がその立ち上がりの最大値の90%になるまでに要する時間t90とを求め、その差Δt(=t90−t10)を応答時間(単位:sec)とした。この応答時間が短いほどガスセンサの応答性が高い。なお、試験は配管径が28mmの配管200を用いて実験例1,17〜20,3,22〜24,26のガスセンサについて行い、配管径が55mmの配管200を用いて実験例1,18,20,3,23,26のガスセンサについて行った。
【0057】
【表2】
【0058】
図31は内側保護カバーの回転角度と水残り量との関係を示すグラフ、
図32は配管径が28mmの場合における内側保護カバーの回転角度と応答時間との関係を示すグラフ、
図33は配管径が55mmの場合における内側保護カバーの回転角度と応答時間との関係を示すグラフである。表2及び
図31から明らかなように、内側保護カバーの回転角度が45°のとき(最小値θ3が45°のとき)に、水残り量の値が最大(ピーク値)となり、内側保護カバーの回転角度が45°から離れるほど(最小値θ3が45°から小さくなるほど)水残り量が小さくなった。また、最小値θ4が30°である実験例1,18,20よりも、最小値θ4が0°である実験例3,21,23,25,26の方が水残り量が小さくなる傾向がみられた。最小値θ3が同じ実験例で比較すると、最小値θ4が0°に近い実験例の方が水残り量が小さくなった。
【0059】
表2及び
図32から明らかなように、最小値θ4が30°である実験例1,17,18,19,20の方が、最小値θ4が0°である実験例3,22,23,24,26と比べて、応答時間が短かった。しかし、実験例3,22,23,24,26の実験例1,17,18,19に対する水残り量の減少割合と比べると、実験例3,22,23,24,26の実験例1,17,18,19に対する応答時間の増加割合は比較的少なかった。また、表2及び
図33から明らかなように、配管径が55mmの場合は、実験例18を除いて、最小値θ4が0°である実験例3,23,26の方が、最小値θ4が30°である実験例1,20と比べて応答時間も短かった。これらのことから、最小値θ4が0°に近い場合は、一般的な水残り量の減少(センサ素子への水の付着の抑制)と応答時間の増加(センサ応答性の向上)とのトレードオフの関係から脱して、センサ応答性の低下を抑制しつつ又はセンサ応答性を向上させつつ、センサ素子への水の付着をより抑制できることがわかった。
【0060】
なお、実験例1〜10,12〜15,17〜26が本発明の実施例に相当し、実験例11,16が本発明の比較例に相当する。
【0061】
[比較例1]
図34に示すガスセンサ700を複数作製した。ガスセンサ700は、保護カバー720として、内側保護カバー730と外側保護カバー740とを備えている。内側保護カバー730は、先端部738及び第2内側ガス孔738aの形状が先端部138,第2内側ガス孔138aと異なる点,及び段差部137を備えない点以外は
図2の内側保護カバー130と同じ構造であるため、先端部738,第2内側ガス孔738a以外の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。先端部738は、先端部138と異なり三角錐台を逆さにした形状をしており、第2胴部136と接続する部分の内径が7.4mm、底面の直径が2.4mmである。また、第2内側ガス孔738aは、先端部738の底面の中心点に位置する円形の孔であり、内径は1mmである。外側保護カバー740は、ガス通過孔744a及び外側ガス孔746a以外は
図2の外側保護カバー140と同じ構造であるため、ガス通過孔744a及び外側ガス孔746a以外の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。ガス通過孔744aは、胴部144の側面に位置し、外側ガス孔746aは、先端部146の側面に位置している。なお、ガス通過孔744a及び外側ガス孔746aは、実験例1と同様に等間隔に6箇所開けた。
【0062】
[評価試験3]
実験例1及び比較例1のガスセンサについて、被測定ガスの流速とセンサ素子の応答性との関係を調べる流速依存性試験を行った。その結果を
図35,36に示す。流速依存性試験の試験方法は以下の通り。
【0063】
実施例1,比較例1のガスセンサをそれぞれ
図1と同様に配管に取り付けた。なお、配管の中は空気で満たした。そして、配管内を無風状態として310秒間放置し、その後、配管内に被測定ガスを所定の流速で流した。この場合におけるセンサ素子の出力の時間変化を測定した。センサ素子の出力が最大値になったときに保護カバー内の空気が被測定ガスに全て置換されたとみなし、センサ素子の出力の最大値に対する割合を保護カバー内のガス置換率として求め、ガス置換率の時間変化とした。被測定ガスの所定の流速を、90m/sとした場合と10m/sとした場合とで、それぞれガス置換率の時間変化を求めた。流速が90m/sの場合と10m/sの場合とでこのガス置換率の時間変化の違いが少ないほど、流速依存性が少なく、流速が低下しても応答性が低下しにくいことになる。
【0064】
図35は、被測定ガスの流速が90m/sの場合のガス置換率の時間変化を示すグラフである。
図36は、被測定ガスの流速が10m/sの場合のガス置換率の時間変化を示すグラフである。
図34,35から明らかなように、実験例1の方が、流速がいずれの場合であっても比較例1と比べてガス置換率が急激に上昇している。また、比較例1では、流速が90m/sの場合と比べて流速が10m/sの場合に時間経過に伴うガス置換率の上昇が鈍化した。一方、実験例1では、流速が90m/sの場合と10m/sの場合とで、ガス置換率の時間変化は比較例1ほど変化しなかった。このことから、実験例1は、ガス通過孔が第1角部144bに設けられ外側ガス孔が第2角部146bに設けられていることで、ガス通過孔及び外側ガス孔が側面に設けられている比較例1と比べて流速依存性を抑制できていると考えられる。