(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気流入口、空気流出口、空気に含まれる水滴と異物を遠心力によって除去するため空気を旋回流にするルーバ、前記旋回流で除去できなかった異物を除去する中空状のフィルタエレメントを有し、
前記フィルタエレメントの内周に、油分を除去する中空状のマントルが配置されていること、
前記フィルタエレメントの下方に貯蔵した水滴と異物が吹き上がることを防止するバッフルと、
前記バッフルの下方に前記旋回流によって除去した水滴と異物を貯蔵するボウルと、
前記ボウルの下面に貯蔵した水滴と異物を排出する排出機構とを有すること、
前記マントルの中空部の底位置に、開閉弁が設けられていること、
前記開閉弁は、空気が供給されているときは閉弁し、空気が供給されていないときは開弁すること、
を特徴とするエアフィルタ。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場においてコンプレッサから供給される圧縮空気の供給源には、エアフィルタとオイルミストフィルタが隣接して配置されている。エアフィルタとオイルミストフィルタは、同じ外観形状を有している。
【0003】
ここで、エアフィルタとは、機器に水滴や異物等が入ることにより発生するトラブルを防止するため、圧縮空気から水滴や異物等を除去する装置である。
図9に示すように、従来のエアフィルタ101は、空気が図中左上の空気流入口111から流入し(矢印Hで示す)、下方(矢印Iで示す)に流れる。下方とは、重力により移動する方向である。次に、ルーバ112により旋回流が発生し、遠心分離により比重の大きい水滴・異物が外周部へ分離される。水滴・異物が分離された空気は、外側から内側(矢印Jで示す)に流れ、フィルタエレメント113でさらに微細な異物を濾過する。濾過された空気は、上方(矢印Kで示す)に流れ、図中右上の空気流出口115から流れ出る(矢印Lで示す)。一方、遠心分離により分離された水滴・異物はボウル114の内壁を伝って底に溜まる。
【0004】
また、オイルミストフィルタとは、油分を除いた清浄な空気の供給が必要な機器に対して、圧縮空気から油分を除去する装置である。
図10に示すように、従来のオイルミストフィルタ201は、空気が図中左上の空気流入口211から流入する(矢印Mで示す)。次に、下方(矢印Nで示す)に流れ、内側から外側(矢印Oで示す)に流れる。このときマントル212に油分が付着し除去される。マントル212では、圧縮空気に含まれる油分粒子が、マントル212の内側に配置された濾材215に直接衝突、捕集、凝縮される。さらに、マントル212の外側に配置された油分凝集部材216により凝集され、大きな液滴となる。これにより、空気流によって再び飛散することを防ぐ。油分が除去された空気は、上方(矢印Pで示す)に流れ、図中右上の空気流出口214から流れ出る(矢印Qで示す)。一方、油分凝集部材216により凝集された油分は、ある程度の大きさになると、自重によって落下し、ボウル213の底に溜まる。
【0005】
一方、エアフィルタとオイルミストフィルタとを1台の装置としたものとして、
図11に示すように、特許文献1に記載される調理用排気フィルタ301がある。特許文献1の技術は、エアフィルタ311と、オイルミストフィルタに相当するグリスフィルタ312とを一体的に配置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエアフィルタ101は、遠心力を利用するため、空気は外側から内側に流れる(矢印Jに示す)。一方、従来のオイルミストフィルタ201は、空気は内側から外側に流れる(矢印Oに示す)。すなわち、エアフィルタ101とオイルミストフィルタ201における空気の流れは逆である。
ここで、従来のオイルミストフィルタ201では、空気は内側から外側に流れる必要があった。その理由は、マントル212の内部には油分を蓄える機能を備えていなかったためである。したがって、空気を内側から外側に流すことにより、油分をマントル212の外側で油滴化し、ボウル213内に落下させて蓄えていた。
そのため、従来のエアフィルタ101とオイルミストフィルタ201とを、単に一体的に配置することは技術的に困難であった。そのため、別々の装置として存在しており、2台の装置を設置するには、広い設置面積を必要とし、余分な配管作業を要した。
【0008】
さらに、従来のエアフィルタ101とオイルミストフィルタ201は、同じ外観形状を有しているため、装置を設置、または交換する際に、未熟な作業者においてはエアフィルタ101を配置すべきところにオイルミストフィルタ201を、オイルミストフィルタ201を配置すべきところにエアフィルタ101を間違えて配置してしまう恐れがあった。
ここで、空気の通過する順番(エアフィルタ101が先)は重要な要素である。すなわち、エアフィルタ101とオイルミストフィルタ201を逆に配置した場合、空気が先にオイルミストフィルタ201を通過すると、マントル212のフィルタ部の孔径は小さいため、空気中の水滴・異物がマントル212に詰まり、使用できなくなってしまう。その結果、オイルミストフィルタ201の交換周期が非常に短くなるという問題が生じる。そのため、必ず、エアフィルタ101を先に通過させ、水滴・異物を除去した後、オイルミストフィルタ201を通過させることが必要なのである。
【0009】
上記の問題より、従来のエアフィルタ101とオイルミストフィルタ201は、一体的に配置されることが望まれていた。一方、一体的に配置された装置として、特許文献1の技術がある。しかし、特許文献1の技術には次のような問題がある。
すなわち、特許文献1の技術には、
図11に示すように、中空状のエアフィルタ311の外周側にオイルミストフィルタに相当するグリスフィルタ312が配置されている。特許文献1の技術は、空気は矢印R方向に流れるため、先にグリスフィルタ312を通過する。そのため、水滴・異物がグリスフィルタ312で詰まり、使用できなくなる問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、1台の装置で、オイルミストフィルタとエアフィルタの2台の装置の役割を果たすと同時に、オイルミストフィルタにおける目詰まりの発生を低減することができるエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の態様におけるエアフィルタは、次の構成を有する。
(1)空気流入口、空気流出口、空気に含まれる水滴と異物を遠心力によって除去するため空気を旋回流にするルーバ、前記旋回流で除去できなかった異物を除去する中空状のフィルタエレメントを有し、前記フィルタエレメントの内周に、油分を除去する中空状のマントルが配置されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載するエアフィルタにおいて、前記フィルタエレメントの下方に貯蔵した水滴と異物が吹き上がることを防止するバッフルと、前記バッフルの下方に前記旋回流によって除去した水滴と異物を貯蔵するボウルと、前記ボウルの下面に貯蔵した水滴と異物を排出する排出機構とを有すること、を特徴とすることが好ましい。
(3)(1)又は(2)に記載するエアフィルタにおいて、前記マントルの中空部の底位置に、開閉弁が設けられていること、前記開閉弁は、空気が供給されているときは閉弁し、空気が供給されていないときは開弁すること、を特徴とすることが好ましい。
(4)(1)又は(2)に記載するエアフィルタにおいて、前記フィルタエレメントの下方に水貯蔵部と油貯蔵部が設けられていること、を特徴とすることが好ましい。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載するエアフィルタにおいて、前記フィルタエレメントの外周下方に前記異物を捕集するメッシュが設けられていること、を特徴とすることが好ましい。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載するエアフィルタにおいて、前記マントルは、円筒部材が二重構造であり、前記円筒部材の間に濾材が挟まれ、前記円筒部材の内周に油分凝集部材が配置されていること、を特徴とすることが好ましい。
(7)(6)に記載するエアフィルタにおいて、前記円筒部材は樹脂製であること、を特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記構成を有することにより、次のような作用、効果を奏する。
上記(1)又は(2)の態様によれば、空気は装置内を外側から内側へ流れ、フィルタエレメントを先に通過し、その後にマントルを通過する。これにより、1台の装置で、オイルミストフィルタとエアフィルタの2台の装置の役割を果たすことができる。同時に、空気はフィルタエレメントを先に通過するため、異物がマントルに到達することがなく、マントルにおける目詰まりの発生を低減することができる。また、設置面積の低減を実現し、配管の作業効率を向上することができる。
【0013】
上記(3)の態様によれば、空気が供給されている時、開閉弁は閉弁状態にあるため、空気の流れを止めることができる。一方、空気の供給が停止されると、蓄えられた油分の重みで開閉弁が開き、油分は自重により下方に移動する。そのため、装置が稼動を停止している間、自動的に油分を蓄えることができ、作業効率を向上することができる。
【0014】
上記(4)の態様によれば、水貯蔵部には水滴のみが貯蔵され、油貯蔵部には油分のみが貯蔵される。これにより、油分と水滴とを別々に蓄えることができ、別々に処理することができる。そのため、コストダウンを実現することができる。
【0015】
上記(5)の態様によれば、メッシュにより異物は捕集されるため、排出機構において異物が詰まる恐れがない。よって異物が詰まることによって排出機構におけるシール性能が悪化することはなく、水滴等が排出機構から漏れることを防止できる。
【0016】
上記(6)の態様によれば、マントルの強度が確保される。
上記(7)の態様によれば、マントルとフィルタエレメントが一体化することにより、全体として、強度が確保されているため、ステンレス板と比較して、コストダウンを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
<第1実施形態>
(エアフィルタの構成)
図1に、本発明の第1実施形態におけるエアフィルタ1の断面図を示す。
図2は、
図1の一点鎖線で囲った部分(S部)の拡大図であり、フィルタエレメント12とマントル13の構造を示す。
図3は、マントル13の円筒部材21の斜視図を示し、
図4は、マントルの構造を示し、
図5は、ルーバ11の斜視図を示す。
【0019】
図1に示すように、エアフィルタ1の上部に配置されるボディ25の一側面には、空気が流入する空気流入口16が設けられ、他側面には、空気が流出する空気流出口17が設けられている。
また、ボディ25の下部には、上面が開口されている円筒状のボウル18が嵌入され、ボウル18を覆うようにボウルガード19が配設されている。ボウル18は水滴等を貯蔵する機能を有し、十分な空間を有している。ボウル18の上端部外側には、ボディ25とボウル18との間から外部へ漏れることを防止するためのOリング26が装着されている。ボウル18の上端部内側には、ボディ25に設置されたルーバ11が配置されている。ルーバ11は、空気に旋回流を発生させる機能を有する。
図5に示すように、ルーバ11の外周端には多数の羽根11a、11a、…、11aが形成され、これらの羽根11a、11a、…、11aの間のスリット11b、11b、…、11bを空気が通過することにより、旋回流を発生させる。
【0020】
また、ルーバ11の下方には、中空状のフィルタエレメント12と中空状のマントル13が設置されている。
図2に示すように、フィルタエレメント12の内周には、マントル13が配置されている。フィルタエレメント12の材質はポリプロピレン繊維で、その直径は約20〜70μmである。また、フィルタエレメント12の厚みは約2〜3mmである。一方、マントル13の構造は、円筒部材21が2枚設けられ、二重構造となっている。2枚の円筒部材21の間に濾材22が挟まれ、さらに円筒部材21の内周には、油分凝集部材23が配置されている。一例として、濾材22の厚みは約0.4mm、油分凝集部材23の厚みは約2〜3mm、円筒部材21の厚みは約1mmである。濾材22は、ランダムな無数の微細な繊維であり、その直径は約0.5〜4μmである。円筒部材21は、
図3に示すように、空気を通すための複数の孔21a、21a、…、21aが形成されている。孔21aにより濾材22と油分凝集部材23は連通している。円筒部材21は補強材としての機能を有し、その材質は樹脂でもよい。かかる場合、円筒部材21は、マントル13とフィルタエレメント12が一体化することにより、全体として、強度が確保される。そのため、ステンレス板と比較して、樹脂の方が安価であるため、コストダウンを実現することができる。
【0021】
さらに、
図1に示すように、フィルタエレメント12とマントル13の下方にはバッフル15が配置されている。バッフル15は上向き凸状の傘形状を有し、その先端は斜め下方へ指向されている。バッフル15の外周面とボウル18の内周面との間には僅かな隙間15aが形成されている。バッフル15は、隙間15aから下方に落下した異物が上方へ吹き上げられるのを防止する機能を有する。
【0022】
バッフル15の内部には、マントル13の中空部の底位置に底位置通路38が形成され、底位置通路38に対向して、弁体46が設けられている。バッフル15の下面にはバネ24を収納するバネ支持部材44が配置されている。バネ24の一端はバネ支持部材44の上面に当接し、バネ24の他端は弁体46に当接している。これによりバネ24は弁体46を上向きに付勢している。弁体46とバネ24により、開閉弁14が構成される。マントル13の中空部とボウル18内の空気の圧力の差により、開閉弁14は開弁または閉弁する。バネ支持部材44には油分通路45が形成されており、底位置通路38と油分通路45は、開閉弁14が閉弁する際には遮断され、開弁する際には連通する。
【0023】
また、ボウル18及びボウルガード19の底面には、ボウル18の内側下端部に溜まった水滴、異物、油分を排出するための手動排出機構20が設けられている。手動排出機構20は、ボウルガード19の底面に配置されている、内周に一部雌ねじを有する排出流路支持部40と、外周に一部雄ねじを有する排出流路部材41により構成される。さらに、ボウル18内には弁座部材42と弁体43が配置されている。排出流路部材41内の流路によりボウル18内と外部が連通される。
【0024】
空気流入口16は、入口通路27を介して、ルーバ11の入口側である円環状通路28に連通している。さらにルーバ11を介して、ルーバ11の出口側である旋回流通路29に連通している。旋回流通路29は、フィルタエレメント12とマントル13を介して、マントル13の中空部の中央下通路30に連通し、上方にある中央上通路31と、出口通路32を介して、空気流出口17に連通している。
【0025】
図示しないが、このようなエアフィルタでは、フィルタの目詰まりを検出するインジケータまたは差圧計を備える。例えば、フィルタを通過する前の空気の圧力と通過した後の空気の圧力との圧力差に基づいてエアフィルタの目詰まりを検出するものがある。
【0026】
(エアフィルタの作用)
次に、エアフィルタ1の作用について説明する。
第1工程として、空気流入口16より供給された空気が、フィルタエレメント12を通過して水滴・異物が除去される工程を説明する。
図1に示すように、図中左上の空気流入口16から供給された空気(矢印Aで示す)は、入口通路27から下方(矢印Bで示す)へ流れ、ルーバ11の入口側の円環状通路28に流入する。次に、ルーバ11によって、
図5に示すように、羽根11aの間のスリット11bを通り抜けることにより、空気の流れは矢印Bから点線矢印B’へ方向を変え、旋回流となり、旋回流通路29へ流入する。ここでは、遠心分離により、空気に含まれる比重の大きい水滴・異物が外周部へ移動する。
【0027】
一方、水滴・異物が分離された空気は、後から流れ込んでくる空気に押圧されて、旋回流通路29から中央下通路30へ、すなわち、外側から内側(矢印Cで示す)へ移動する。このとき、遠心分離では比重が小さくて分離されなかった微細な異物等をフィルタエレメント12によりさらに濾過する。微細な異物は、フィルタエレメント12の繊維内で絡みつくように繊維の表面に溜まる。
【0028】
次に、第2工程として、フィルタエレメント12を通過した空気が、マントル13を通過して油分が除去され、空気流出口17より流出される工程を説明する。
第1工程において微細な異物が濾過された空気は、外側から内側(矢印Cで示す)へ移動しつつ、マントル13により、空気に含まれる油分を除去する。
図4に示すように、矢印C方向に空気がマントル13を通過する際、空気に含まれる約0.01〜0.8μmの油分粒子50は、ランダムな無数の微細な濾材22に直接衝突、捕集、凝縮され、油滴化する。さらに、油分凝集部材23により、濾材22で捕獲された油分が凝集され、大きな液滴となる。油分凝集部材23に油分が凝集されることにより、空気流によって再び飛散することを防ぐとともに、油分が油滴化し、ある程度の大きさになると自重によってマントル13の中空部の底位置通路38に落下する。なお、
図4では、円筒部材21は、補強材としての機能を有し、油分を除去する機能はないため、省略している。
【0029】
ここで、従来のエアフィルタ101は、遠心力を利用するため、空気は外側から内側に流れる。一方、従来のオイルミストフィルタ201では、空気は内側から外側に流れる。すなわち、エアフィルタ101とオイルミストフィルタ201における空気の流れは逆である。その理由は、オイルミストフィルタ201において、マントル212の内部に油分を蓄える機能を備えていなかったため、空気を内側から外側に流すことにより、油分をマントル212の外側で油滴化させ、ボウル213内に落下させて蓄える必要があったからである。したがって、従来のエアフィルタ101とオイルミストフィルタ201とを、単に一体的に配置することは技術的に困難であった。
【0030】
一方、本発明のエアフィルタ1では、
図1に示すように、空気は外側から内側(矢印Cで示す)へ流れる。エアフィルタ1は、油分がマントル13の内側で油滴化したあと、油分を蓄える手段(開閉弁14、油分貯蔵部33等)を備えているため、フィルタエレメント12とマントル13の一体化を実現することができた。これにより、1台の装置で、オイルミストフィルタとエアフィルタの2台の装置の役割を果たすことができる。また、設置面積の低減を実現し、配管の作業効率を向上することができる。同時に、圧縮空気は、水滴・異物を除去するフィルタエレメント12を先に通過するため、水滴・異物がマントル13に到達することがなく、マントル13における水滴・異物による目詰まりの発生を低減することができる。
【0031】
最後に、マントル13により油分が除去された後、清浄な空気は、中央下通路30から上方(矢印Dで示す)の中央上通路31に流れ、出口通路32を介して、図中右上の空気流出口32から流れ出る(矢印Eで示す)。
第1工程と第2工程により、圧縮空気中の水滴・異物・油分は取り除かれて清浄な空気となり、清浄な空気を必要としている機器に対して供給される。
【0032】
(空気から除去された水滴、異物、油分の排出方法)
第1工程により、外周部に移動した水滴・異物は、ボウル18の内壁を伝って落下し、バッフル15の隙間15aを介してボウル18内の底に溜まる。ボウル18内の底に溜まった水滴・異物は、バッフル15によりそれより上方へ舞い上がることが防止され、旋回流通路29に逆流することはない。
【0033】
次に、第2工程により、マントル13において油滴化され落下した油分は、空気の供給が行われているとき、圧力差で開閉弁14は閉じているため、マントル13の中空部の底位置通路38に蓄えられる。すなわち、空気の供給が行われているとき、旋回流通路29に流入した空気は、外側から内側(矢印Cで示す)に流れるのみでなく、下方のバッフル15の隙間15aを通過してボウル18内全体に流れる。これにより、弁体46を下方から押し上げる空気の圧力が生じる。一方、フィルタエレメント12とマントル13を通過した空気は、圧力が低減した状態で中央下通路30へ流入する。このとき、弁体46を下から押し上げる空気の圧力により生じる力にバネ24の付勢力を加えたものの方が、中央下通路30内の空気の圧力により生じる力より大きいため、バネ24は伸長した状態で、開閉弁14は閉弁している。これにより、空気の流れが遮断される。
【0034】
次に、空気の供給が停止されると、弁体46を下方から押し上げる空気の圧力により生じる力と、中央下通路30内の空気の圧力の差はなくなる。そのため、底位置通路38に蓄えられた油分は、自重によりバネ24が収縮し、開閉弁14が開弁状態になることにより、開閉弁14と油分通路45を介してボウル18内の底部に溜まる。すなわち、装置の稼働を停止する毎に、油分は自動的にボウル18に溜められるため、作業者の作業効率を向上できる。
【0035】
第1工程と第2工程を経て、ボウル18内には水滴、異物、油分が混じりあった状態で溜まる。作業者はボウル18内の水滴等の溜まり具合を確認し、十分に溜まっている場合には手動排出機構20によりそれらを排出する。手動排出機構20は、排出流路支持部材40をねじ込むことにより、排出流路部材41が上方へ移動して弁体43が弁座部材42より離間する。これにより弁体43と弁座部材42の間に流路が形成され、水滴等は排出流路支持部材41内の流路を通って外部へ排出される。
【0036】
(設置・交換方法)
続いて、エアフィルタ1の設置・交換をする方法について説明する。
作業者は、エアフィルタ1に設置されているインジケータまたは差圧計により、エアフィルタ1の目詰まり状態を判断する。フィルタ通過前と通過後との圧力差が大きいほど、フィルタは空気を通過させず目詰まり状態であると判断される。
フィルタが目詰まり状態であると判断された場合、作業者は、一体化したフィルタエレメント12とマントル13を交換する。また、新たに設置する場合には、1台のエアフィルタ1を交換するだけでよい。これにより、従来は同じ外観形状の装置が別々に存在していたため、本来の配置とは逆に配置される恐れがあったが、一体化したフィルタエレメント12及びマントル13、又は1台のエアフィルタ1を交換するだけでよいため、正確かつ容易に交換することができ、配管の作業効率性を向上することができる。
【0037】
以上、説明したように、エアフィルタ1によれば、空気流入口16、空気流出口17、空気に含まれる水滴と異物を遠心力によって除去するため空気を旋回流にするルーバ11、旋回流で除去できなかった異物を除去する中空状のフィルタエレメント12を有し、フィルタエレメント12の内周に、油分を除去する中空状のマントル13が配置されていること、を特徴とするため、空気は装置内を外側から内側へ流れ、フィルタエレメント12を先に通過し、その後にマントル13を通過する。これにより、1台の装置で、オイルミストフィルタとエアフィルタの2台の装置の役割を果たすことができる。同時に、空気がフィルタエレメント12を先に通過するため、異物がマントル13に到達することがなく、マントル13における目詰まりの発生を低減することができる。また、設置面積の低減を実現し、配管の作業効率を向上することができる。
【0038】
さらに、マントル13の中空部の底位置に、開閉弁14が設けられていること、開閉弁14は、空気が供給されているときは閉弁し、空気が供給されていないときは開弁すること、を特徴とするため、空気の供給が行われている時、開閉弁14は閉弁状態にあるため、空気の流れを止めることができる。一方、空気の供給が停止されると、蓄えられた油分の重みで開閉弁14が開き、油分は自重により下方に移動する。そのため、装置が稼動を停止している間、自動的に油分を蓄えることができる。
また、円筒部材21が二重構造であり、円筒部材21の間に濾材22が挟まれ、円筒部材21の内周に油分凝集部材23が配置されていること、を特徴とするため、マントル13の強度が確保される。さらに、円筒部材21は樹脂製であること、を特徴とするため、マントル13とフィルタエレメント12が一体化することにより、全体として、強度が確保され、ステンレス板と比較して、コストダウンを実現することができる。
【0039】
次に、本発明の他の実施の形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
<第2実施形態>
(エアフィルタの構成)
図6に、第2実施形態に係るエアフィルタ2の断面図を示す。
本発明の第2実施形態に係るエアフィルタ2は、エアフィルタ1と主な構成は同じである。よって、異なる構成のみ説明する。なお、エアフィルタ2の構成物のうち、エアフィルタ1と同じ構成物であるものは、同じ番号で記載することで、説明を割愛する。また、エアフィルタ2の主な構成の作用は、エアフィルタ1と同じであるため、説明を割愛する。また、装置の設置、交換方法はエアフィルタ1と同じであるため、説明を割愛する。
エアフィルタ2がエアフィルタ1と相違する点は、フィルタエレメント12の外周下方、すなわち、バッフル15の外周にメッシュ36が設けられている点である。メッシュ36は、線材としての樹脂細線からなり、上下方向に直線状に延びる多数本の樹脂細線と、その樹脂細線に交差する方向に延びる多数本の樹脂細線とを網目状に編み込むことにより構成される。これにより、メッシュ36は水滴を通しつつ、異物を捕集することができる。
【0040】
(空気から除去された水滴、異物、油分の排出方法)
第1工程により、外周部に移動した水滴・異物は、ボウル18の内壁を伝って落下しつつ、メッシュ36により異物は取り除かれ、水滴のみボウル18に蓄えられる。続いて第2工程により油分がボウル18に蓄えられる。第1工程・第2工程によりボウル18に溜まった水滴・油分を排出機構20から排出するとき、異物はメッシュ36によりすでに除去されているため、弁体43と弁座部材42の間に挟まる恐れがない。
【0041】
以上、説明したように、エアフィルタ2によれば、フィルタエレメント12の外周下方に異物を捕集するメッシュ36が設けられていること、を特徴とするため、メッシュ36により異物は捕集されるため、排出機構20において異物が詰まる恐れがない。よって異物が詰まることによって排出機構20におけるシール性能が悪化することはなく、水滴等が排出機構20から漏れることを防止できる。
【0042】
<第3実施形態>
(エアフィルタの構成)
図7に、第3実施形態に係るエアフィルタ3の断面図を示す。
本発明の第3実施形態に係るエアフィルタ3は、エアフィルタ1と主な構成は同じである。よって、異なる構成のみ説明する。なお、エアフィルタ3の構成物のうち、エアフィルタ1と同じ構成物であるものは、同じ番号で記載することで、説明を割愛する。また、エアフィルタ3の主な構成の作用は、エアフィルタ1と同じであるため、説明を割愛する。また、装置の設置、交換方法はエアフィルタ1と同じであるため、説明を割愛する。
エアフィルタ3がエアフィルタ1と相違する主な点は、除去された水滴、異物、油分を貯蔵する構成である。
まず、水滴、異物を貯蔵する構造として、フィルタエレメント12の下方にバッフル15が配置され、バッフル15の外周には隙間15aが設けられている。バッフル15の下方には、水滴を貯蔵する円環状の水貯蔵部37が設けられている。旋回流通路29と水貯蔵部37は、隙間15aを介して連通している。水貯蔵部37の下面には水を排出するための水排出機構35が設けられている。
【0043】
次に、油分を貯蔵する構造として、バッフル15の内部にマントル13により除去された油分が通過する油分通路39が形成されている。フィルタエレメント12の下方には油分を貯蔵する油貯蔵部33が設けられている。中央下通路30と油貯蔵部33は油分通路39を介して連通している。油貯蔵部33の上端部外側とバッフル15の間には、空気が漏れることを防止するためのOリング47が装着されている。油貯蔵部33の下面には、油分を排出するための油排出機構34が設けられている。
【0044】
(空気から除去された水滴、異物、油分の排出方法)
第1工程により、外周部に移動した水滴・異物は、ボウル18の内壁を伝って落下し、バッフル15の隙間15aを介して水貯蔵部37に溜まる。次に、第2工程により、マントル13において油滴化され落下する油分は、油分通路39を通って油貯蔵部33に蓄えられる。第1工程、第2工程を経て、除去された水滴、異物、油分のうち、水滴・異物は水貯蔵部37に、油分は油貯蔵部33に蓄えられ、それぞれ水排出機構35と油排出機構34から別々に排出することができる。このとき、油のみ産業廃棄物として効率よく処理することができるため、水滴、異物、油分が混じりあった状態で廃棄するよりもコストを低減することができる。
【0045】
<第4実施形態>
(エアフィルタの構成)
図8に、第4実施形態に係るエアフィルタ4の断面図を示す。
本発明の第4実施形態に係るエアフィルタ4は、エアフィルタ3と主な構成は同じである。よって、異なる構成のみ説明する。なお、エアフィルタ4の構成物のうち、エアフィルタ3と同じ構成物であるものは、同じ番号で記載することで、説明を割愛する。また、エアフィルタ4の主な構成の作用は、エアフィルタ3と同じであるため、説明を割愛する。また、装置の設置、交換方法はエアフィルタ1と同じであるため、説明を割愛する。
エアフィルタ4がエアフィルタ3と相違する点は、フィルタエレメント12の外周下方、すなわち、バッフル15の外周にメッシュ36が設けられている点である。すなわち、フィルタエレメント12の下方にバッフル15が配置され、バッフル15の外周にはメッシュ36が設けられている。
【0046】
以上、説明したように、エアフィルタ3及びエアフィルタ4によれば、フィルタエレメント12の下方に水貯蔵部37と油貯蔵部33が設けられていること、を特徴とするため、油と水とを別々に蓄えることができる。そのため、油と水とを別々に処理をすることができるため、コストダウンを実現することができる。
【0047】
なお、本形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、エアフィルタ1では、手動排出機構20を用いているが、水滴等が一定量貯まったときに、ボウルに内蔵されている自動排出弁が開く自動排出機構を用いても良いし、空気圧を消費するときの圧力変化を利用して、排出弁を断続的に開閉する差圧排出機構を用いても良い。