【実施例】
【0046】
実施例1‐
材料
試薬
結合バッファー:5mM Tris-HCl(pH 7.5)、0.5mM EDTA、1M NaCl
破壊バッファー:10mM Tris-HCl(pH 7.5)、1% Triton-X100、1% SDS、100mM NaCl、1mM EDTA
48ウェル細胞培養プレート(Corning, 3548)
デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)混合物(各10mM;USB, 77212)
FACSシース液(BD Biosciences, 342003)
5×ハイブリダイゼーションバッファー:75mM Tris-HCl(pH 9.5)、33.5mM MgCl
2、25%ホルムアミド 注意
Microamp透明接着フィルム(Applied Biosystems, 4306311)
1.5ml微量遠心管(ねじ蓋、Corning, 430909)
鉱油(Sigma, M3516)
MyOneストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ、親水性、直系1μm(10mg/ml;7〜12×10
9個のビーズ/ml;Invitrogen, 650-01)
0.1M NaOH 注意
10×PCRバッファー:670mM Tris-HCl(pH 8.8)、166mM (NH
4)
2SO
4、100mM β-メルカプトエタノール、11.7mM MgCl
2 注意
油/乳化剤混合物:7%(w/v)ABIL WE09、Tegosoft DEC(Degussa Goldschmidt Chemical;実験目的に必要なよりもはるかに多い量でしか販売されていないため、本発明者らから入手可能)中。混合物は室温で2日間以上保存しない。
96ウェルPCRプレート(Denville Scientific, C18096X)
Phusion/iProof高忠実度DNAポリメラーゼ(2 U/μl;NEB/Biorad, F-530L/172-5302)
Platinum Taq DNAポリメラーゼ(5 U/μl;Invitrogen, 10966-034)
Quant-iT PicoGreen dsDNAアッセイキット(Invitrogen, P-7589)
ステンレス鋼ビーズ(5mm;Qiagen, 69982)
96ウェル貯蔵プレート(1.2ml;丸ウェル;丸底;Abgene, AB-0564)
TEバッファー:10mM Tris-HCl(pH 7.5)、1mM EDTA
TKバッファー:20mM Tris-HCl(pH 8.4)、50mM KCl
【0047】
オリゴヌクレオチド
図1に図示されているように、単一のBEAMing実験のためには6つのオリゴヌクレオチドプライマーが必要である。プライマー1〜3は遺伝子特異的であり、一方、プライマー4〜6は汎用的である。本発明者らは一般に、オリゴヌクレオチドをIDTから入手している。
プライマー3(ドメイン名:frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3、文書:primer3_www.cgi)が、プライマーの遺伝子特異的部分を設計するために用いられる。これらの配列はT
mがほぼ60℃であるべきであり、18〜27ヌクレオチド長であるべきである。
プライマー1および2は、DNA鋳型の前増幅のために用いられる。プライマー1は汎用的な配列
をその5'末端に含み、関心対象の遺伝子と相同な配列をその3'末端に含む。プライマー2は第2の汎用的な配列
をその5'末端に含み、関心対象の遺伝子と相同な配列をその3'末端に含む。
プライマー3は、ビーズ上の増幅産物の検出のために用いられ、蛍光基(例えば、FAM)によってその5'末端が標識されている。
プライマー4はビーズに結合している。これはその5'末端で二重ビオチン化されており、PEG 18スペーサー、およびビオチンとタグ1配列との間のチミジン塩基を含み、例えば、
である。
プライマー5および6は、それぞれタグ1配列およびタグ2配列を有する非修飾オリゴヌクレオチドである。
二重ビオチン基は、熱サイクリングの間に、オリゴヌクレオチドを、ストレプトアビジンがコーティングされたビーズに結びついた状態に保つために必須である
1。
【0048】
装置
マイクロタイタープレート用のスイングバケット付きの遠心機
(4K15;Qiagen/Sigma)
サーマルサイクラー用の加圧パッド(Thermo Hybaid)
フローサイトメーター(LSRII, BD Biosciences)
MPC-SおよびMPC-9600磁気分離機(Invitrogen, 120-20Dおよび12006D)
ND-1000分光光度計(NanoDrop Technologies)
2×24アダプターセットによるアダプタープレート付きのTissueLyser粉砕混合機(Qiagen、85210および69982)
単一ビーズディスペンサー(Qiagen, 69965)
【0049】
実施例2‐手順
他の指定を行った箇所を除き、全ての段階が室温で行われることに留意されたい。
【0050】
DNA試料の前増幅
1.以下のように、標的領域の初期増幅のための50μlのPCR反応を設定する。
成分を列記した順に添加する。温度サイクリング中の蒸発を避けるために、PCR反応物に15μlの鉱油を重ねて載せる。特定の用途に対して必要とされる忠実度に応じて、この前増幅のために他のDNAポリメラーゼを用いることもできる
2。
鋳型DNAが哺乳動物細胞DNAのように複合体であるならば、本発明者らは一般に、PCR 1回当たり3〜30ngを用いる(1000〜10,000個の半数体ゲノム等価物)。
2.反応物をサーマルサイクラーに入れ、DNA断片を以下のタッチダウンプログラムに従って増幅する。
ポリメラーゼにより誘導される配列エラーを最小化するために、PCRサイクルの数を減らすことが可能である。タッチダウンPCR条件は非特異的な増幅産物の形成を最小化するが、必要とはされない。
3.PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分析し、DNA収量をPicoGreen dsDNAキットを用いて定量する。
120bpのアンプリコンに関する典型的な収量は、ほぼ15ng/μlほぼ(ほぼ200nM)の程度である。前増幅による過剰なプライマーは、エマルジョンPCR工程において、ビーズ上のプライマーと競合し、ビーズと結合したPCR産物の量を減少させる。アンプリコンの濃度が4nM未満であれば、PCRプライマーを除去するためにPCR産物をQIAquick PCR精製キットで精製する。
トラブルシューティング
休止点 DNAは-20℃で貯蔵することができる。
重要段階
【0051】
プライマーとビーズとの結合
4.1.5ml微量遠心管の中で、100μl(7〜12×10
8個)のストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズを、100μlのTKバッファーで2回洗浄する。各洗浄の後に、ビーズを濃縮するために管を磁石の上に1分間置き、上清をピペットで除去する。これにより、18回のエマルジョンPCRを行うために十分なビーズがもたらされると考えられる。
5.ビーズを100μlの結合バッファー中に再懸濁させて、10μlのプライマー4(100μM、TEバッファー中)を添加する。ボルテックス処理を直ちに行う。
6.ビーズ懸濁液を15〜25℃で30分間インキュベートする。10分程度毎に、管を短時間ボルテックス処理することによってビーズを混合する。
7.プライマーでコーティングされたビーズを、磁石を用いて分離する。上清を除去し、上記の通りにビーズをTKバッファーで3回洗浄する。
8.ビーズを100μlのTKバッファー中に再懸濁させる。
休止点 ビーズは4℃で少なくとも3カ月間貯蔵することができる。
重要段階
【0052】
エマルジョンPCR
9.乳化剤/油混合物は、使用の1日〜2日以内に調製する。
Tegosoft DEC油では瓶の底に時に沈殿物が観察される;混合物を調製する時にこの沈殿物は含めないこと。
10.使用の直前に、鋳型DNAをTEで希釈してほぼ20pMにする。
低濃度のDNAは貯蔵中に管に付着する恐れがある。
11.以下を混合することにより、150μlの増幅反応を設定する。
重要段階
12.1つのスチール製ビーズ、600μlの油/乳化剤混合物および150μlのPCR反応混合物を96ウェル貯蔵プレートの1つのウェルに、この順に添加する。プレートを接着フィルムで密封する。
油がウェルの縁に存在するならば、接着フィルムでうまく密封がなされないと考えられる。スチール製ビーズがウェル内を自由に動けることを確実にするためにプレート上下反対にする。
重要段階
13.エマルジョンPCR混合物を含む96ウェル貯蔵プレートを、96ウェル貯蔵プレートに面して加圧パッドがそれぞれ取り付けられた上面および底面のアダプタープレートの間に挟むことにより、TissueLyserアダプターセットを組み立てる。組み立て品をTissueLyserホルダに入れ、ハンドルをしっかりと閉める。15Hzで10秒間および17Hzで7秒間混合する。
同じ重量の第2のアダプターセットでTissueLyserのバランスを取ること。
重要段階
14.アダプターセットを解体して、プレートを10秒間、ほぼ3gで遠心分離して液体を底面に集める。
15.エマルジョンの質を、倒立顕微鏡で400倍に拡大して評価する。
ピペットを取ってその先端をエマルジョンの中に浸し、それを48ウェル細胞培養プレートの底に沿って線状に動かす。カバーガラスは用いてはならないが、それはこれらがエマルジョンの質を改変する恐れがあるためである。水性区画は急速に蒸発するため、試料は直ちに検査すること。
図2は、この工程によって調製されたエマルジョンの写真を示している。
トラブルシューティング
16.エマルジョンの80μlのアリコートを、96ウェルPCRプレートの8つのウェルに入れる。剪断力を避けるためにエマルジョンのピペッティングをゆっくりと行う。プレートをほぼ3gで10秒間遠心分離して液体を底面に集める。
17.エマルジョンの温度サイクリングを以下のプログラムで行う。
休止点 エマルジョンは4℃で貯蔵することができる。
【0053】
エマルジョンの破壊
18.各80μlのエマルジョンに対して、150μlの破壊バッファーを添加し、上下に3回ピペッティングを行って混合する。
19.PCRプレートを密封し、それを空の96ウェル貯蔵プレートに入れた上で、上記の通りに2つのTissueLyserアダプタープレートの間に置いて組み立てる(段階13)。TissueLyserに入れて、20Hzで30秒混合する。
20.PCRプレートをTissueLyserから取り出して、3200gで2分間遠心分離する。
21.一番上の油層を、減圧マニホールドと接続した20μlピペット端を用いて除去する。
22.150μlの破壊バッファーを添加し、プレートを密封して、再び3200gで2分間遠心分離する。
23.プレートを96ウェル磁気分離機に1分間入れて、液体をピペットで完全に除去する。
24.プレートを磁石から取り出し、ビーズを100μlのTKバッファー中に再懸濁させて、8つのウェルからのビーズを1.5ml管にプールする。
25.ビーズを濃縮するために管を磁石の上に1分間置き、上清をピペットで注意深く除去する。
トラブルシューティング
26.ビーズを500μlの0.1M NaOH中に再懸濁させて2分間インキュベートする。管を磁気分離機に1分間入れて、上清を注意深く除去する。
これにより、ビオチン化されていないDNA鎖がビーズから除去される。
27.ビーズを100μlのTKバッファー中に再懸濁させる。
ビーズの回収率は、600nmでの吸光度を測定することによって評価することができる。2μlのビーズ懸濁液しか必要でないため、ナノドロップ分光光度計がこの目的には便利である。プライマー5をコーティングしたビーズのアリコートを基準として用いることができる。上記の手順を用いた場合の典型的な回収率は50〜70%である。
トラブルシューティング
休止点 ビーズは4℃で貯蔵することができる。
【0054】
ビーズ上のDNAの検出
28.以下を混合することにより、96ウェルPCRプレート内でのオリゴハイブリダイゼーションを設定する。
用いるべきビーズの数は、実験の性質に依存する。1000万個のビーズは、磁気収集の間に認められ、回収を容易にする程度の十分な量を与える。回収率は、上記のように600nmでの吸光度を測定することによって評価することができる。
29.サーマルサイクラーにて50℃で15分間インキュベートする。
30.ビーズを濃縮するためにプレートを96ウェル磁気分離機に1分間置き、80μlの上清をピペットで除去する。
31.ビーズを80μlのTKバッファーで2回洗浄する。
休止点 ビーズは4℃で貯蔵することができる。
【0055】
ビーズ集団の分析
32.フローサイトメトリーを用いて、ビーズ上のDNAとハイブリダイズしたプライマーの相対蛍光強度を決定する。本発明者らは、BD Bioscience FACScan、LSR I & II、FACScaliburおよびFACSAriaを首尾良く用いている。または、蛍光顕微鏡検査も、生成されたビーズの迅速な定量分析を提供することができる。
重要段階
*
33.前方散乱(FCS)、側方散乱(SSC)および蛍光シグナルの検出のための増幅器のゲイン(電圧)を経験的に確定する。
図3は、得られた典型的な結果を示している。
トラブルシューティング
**
重要段階
*
【0056】
重要段階
重要段階3
エマルジョンPCRに用いられるDNAの量は、比較的広範囲にわたり変わり得る。ビーズの20%+/-15%がPCR産物を含むことが最適である。過度に鋳型が乏しいと陽性バンドが過度に少なくなり、分析の感度を損なわせる。過度に鋳型が多いと、複数の鋳型を含む区画が過度に多くなり、関心対象の配列を含む初期鋳型の画分を正確に定量することが困難になる。
【0057】
重要段階8
1.05ミクロンのMyOneビーズの他に、多くのビーズをこの手順のために用いることができる。MyOneビーズは均一であり、これはフローサイトメトリーのために特に有利である。他の磁気ビーズ(Seradyn社のSera-Mag粒子など)は、MyOneよりも多くの表面ストレプトアビジン分子を有し、表面密度の方が均一性よりも重要な場合に用いることができる。より大きい均一なビーズ(DynaビーズM-280など)は、さらにより多くの表面ストレプトアビジン分子を有するが、はるかに高額であり(1ビーズ当たり)、エマルジョン配合物はそれらを効率的な支持体にするために改変しなければならない。さらに、非磁気ビーズを用いることもできるが、これらは、それらを操作するために磁石ではなく遠心分離を用いなくてはならないため、取り扱いがより困難である。
【0058】
重要段階11
エマルジョン中の固体支持体上での増幅の効率は、アンプリコンの長さが増すほど低下する
3。好ましいアンプリコンの長さ(プライマーを含む)は70〜110bpである。ビーズ上での、200bpのアンプリコンの収率は、100bpを含むものの産物のほぼ30%である。本発明者らは一般に、汎用性プライマー(
図1中のプライマー5)をリバースプライマーとして用いている。しかし、ミクロスフェア上での非特異的な増幅を低下させ、またはビーズに結合したPCR産物のサイズを低下させて、それによって収率を高めるために、前増幅段階の産物よりも短いアンプリコンを生じさせるネステッドリバースプライマーを用いることもできる。さらに、ポリメラーゼの濃度および種類も、本明細書に記載したプロトコールでは広範囲にわたって最適化されている。一般に、より高いポリメラーゼ濃度は、ビーズに結合したPCR産物のより高い収率をもたらす。ビーズに結合したPCR産物の量を増加させるためのもう1つのやり方は、ローリングサークル重合による
2。
【0059】
重要段階12
TissueLyserが利用できない場合には、エマルジョンを撹拌バーまたはホモジナイザーを用いて生成させることもできる
1,4。TissueLyserを用いて作られるものよりもエマルジョンは均一でなく、容易に制御されることもないが、それらはBEAMingの多くの用途に対して、特にごく少数の試料しか必要でない場合には十分である。そのようなエマルジョンを調製するための1つの簡単なやり方は、2mlの低温用バイアル(Corning, 430661)内で、240μlのPCR反応物を、鉱油中の960μlの7%Abil EM90(Sigma)と、ボルテックス混合器を用いて10秒間混合し、使い捨て式ホモジナイザーチップ(Omni Intl., 30750)を装着したホモジナイザー(IKA, T25 basic, 2953000)で50秒間混合することによる
4。
【0060】
重要段階13
96ウェル貯蔵プレートをTissueLyserアダプタープレートとともに用いる場合には、装置の本体に近い試料(列GおよびH)は、列AおよびBの試料よりも振盪が遅い。エマルジョンの質のばらつきを避けるために、本明者らは、24件未満の試料を調製するのであれば、列AおよびBを用いることを推奨する。96ウェルプレート全体を用いる場合には、96ウェルプレートを混合工程の中間で回転させること。
【0061】
重要段階32
FACSCalibur装置およびLSR I & II装置の単一管での動作モードでは、1ミクロンの磁気ビーズがスリーブ間に捕捉されるのを防ぐために、試料注入管(SIT)の上にある液滴収容モジュール(DCM)スリーブを取り外すべきである。スリーブは、より短い改変型の金属製スリーブ保護具に置き換えることができる。本発明者らはまた、高品質のシース液も推奨する。
【0062】
重要段階33
伝統的な光ダイオード検出器を用いる装置の前方散乱の分解能は、単一の1ミクロン粒子を検出するのに十分な感度を有するはずである。しかし、適切に整列していないビーズは、バックグラウンドから分離するのが困難と考えられる。前方散乱光電子増倍管(PMT)検出システムは感度を高めて0.2μmという分解能にしており、直径1ミクロンのビーズを用いる場合に推奨される。
【0063】
トラブルシューティングの表
問題 段階3 所望のバンドは前増幅の主たる産物ではない。
解決策
より高いアニーリング温度(60〜65℃)を用い、MgCl
2濃度を変化させること(1.5mMから2.5mMに)。GCリッチ鋳型はPhusion GCバッファーおよび3〜6% DMSO中で増幅されるはずである。その配列が鋳型ゲノム中で反復されていないことを確かめること。オリゴ分析装置プログラム(例えば、Oligonucleotide Properties Calculator;http://www.basic.northwesterm.edu/biotools/oligocalc.html)によるホモ二量体およびヘテロ二量体の形成を確かめること。増幅が問題である場合にはいくつかのプライマー対を試してみる価値がある。
【0064】
問題 段階15 水性液滴が小さすぎる、または大きすぎる。
解決策
エマルジョンの水性区画が小さすぎる場合には、増幅がほとんどまたは全く起こらないと考えられる。区画が大きすぎる場合には、単一の鋳型のみを有する区画は、統計学的に有意な結果を与えるには少なすぎると考えられる。液滴サイズは、混合時間または振盪速度をそれぞれ1秒刻みまたは1Hz刻みで変更することによって最適化することができる。
【0065】
問題 段階25 ビーズが視認し得る凝集物を形成する。
解決策
本発明者らは時折、エマルジョンを破壊した後のさまざまな段階で磁気ビーズの凝集物を観察した。これはより大きなアンプリコン(>200bp)の場合により高い頻度で起こった。原因と考えられる要因は、試料を磁場に置いている時間、バッファーの塩濃度および温度である。凝集物形成の可能性を最小化するためには、室温で平衡化させたバッファーのみを用いること。試料を磁石上に2分間を超えて置かないこと(特に液体を除去した後には)。塩濃度は高めることができる。ひとたび凝集物が形成されれば、それらは分散させるのが困難である。場合によっては、それらをピペッティング、ボルテックス処理または超音波処理(Diagenode社のBioruptor)によって分解させることができる。加熱も場合によっては凝集解除に役立つことがある。
【0066】
問題 段階27 エマルジョンPCR後のビーズの回収率の低さ。
解決策
低い回収率は、不完全な抗乳化または非効率的な磁気分離に起因し得る。不完全な抗乳化を防ぐためには、混合時間および速度を増大させること。磁気分離中のビーズの脱離を防ぐためには、上清の決して全てを除去しないこと、ビーズペレットに触れないこと、そして以上に提案したのと同じ商標の管、プレートおよび磁石を用いること。
【0067】
問題 段階33 シグナル-ノイズ比が低い。
解決策
これは通常、オンビーズ増幅の効率が低いためであるが、標準化されたハイブリダイゼーション条件またはプローブ不良(例えば、ハイブリダイゼーションを防ぐ二次構造)によることもある。HPLCまたはゲル電気泳動によるハイブリダイゼーションプローブの精製が推奨される。プライマーを、タグ1に対して相補的なビーズとハイブリダイズさせることにより、ハイブリダイゼーション条件を確かめること。ビーズ上のあらゆるPCR産物がその5'末端にこの配列を有するため、得られたシグナルは、可能な最大限のシグナルに相当する。これらのビーズからのシグナルは、3'末端に同様の蛍光基を有する5'ビオチン化オリゴヌクレオチドの結合によって達成されるものと同等であるはずである。プライマー3からのシグナルはタグ1を用いて得られるシグナル10倍以内であるはずであり、このことはビーズに結合したプライマーの少なくとも10%がPCRの間に伸長したことを意味する。ビーズ上のDNAの量の少なさは、水性区画のサイズの小ささ(問題 段階15を参照)または反応条件の不良に起因する可能性がある。本明細書に記載したプロトコールのあらゆる局面に対しては広範囲にわたる最適化を行っており、これらの条件からの逸脱は慎重に行うべきであることに留意されたい。
【0068】
参考文献
引用した各参考文献の開示内容は、本明細書に明示的に組み入れられる。