【文献】
Handbook of Immunohistochemistry and In Situ Hybridization of Human Carcinomas (2005), Volume 2, 431-437
【文献】
Cancer biology & therapy, (2007 Feb) Vol. 6, No. 2, pp. 192-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的実施形態の詳細な説明
本発明を説明する前に、本発明は記載されている特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら異なっていてもよいことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定的であることを意図しないこともまた理解されるべきである。
【0016】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限および下限の間にある各値もまた、文脈により別途明確に規定されない限り下限の単位の10分の1まで、明確に開示されることが理解される。記載されている範囲における任意の記載されている値または間にある値の間のより小さい各範囲およびその記載されている範囲における任意の別の記載されている値または間にある値は、本発明の範囲内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、それぞれ独立に、その範囲に包含されてもよく、または除外されてもよく、そのより小さい範囲中にいずれかの限界が含まれる、いずれの限界も含まれない、またはいずれの限界も含まれる各範囲もまた、記載されている範囲における任意の明確に除外されている限界を条件として、本発明の範囲内に包含される。記載されている範囲が、限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれている限界のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0017】
別途規定されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様のまたは等価の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、いくつかの潜在的なおよび例示的な方法および材料を、以下に記載する。本明細書において言及されたすべての刊行物は、刊行物が関連して引用された方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾が存在する程度まで、組み込まれている刊行物のすべての開示に優先することが理解される。
【0018】
本明細書で使用される場合および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により別途明確に規定されない限り、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって、例えば、「1つの試料(a sample)」への言及は、複数のそのような試料を包含し、「その試料(the sample)」への言及は、1つまたは複数の試料および当業者に知られているその等価物への言及を包含するなどである。
【0019】
特許請求の範囲は、任意選択であってもよい任意の要素を除外するように起草されてもよいことにさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の要素の詳述、または「消極的」限定の使用に関連して、「のみ(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語の使用のための先行詞として機能することを意図されている。
【0020】
本明細書において論じられている刊行物は、本出願の出願日の前のそれらの開示についてのみ示されている。本明細書において、本発明が、先行発明のために、そのような刊行物に先行するという権利を有さないことの承認として解釈されるものはない。さらに、示されている刊行日は、それぞれ独立に確認する必要があるであろう実際の刊行日と異なる場合がある。
【0021】
定義
本明細書において使用される「予後」なる用語は、例えば不良な心臓健康状態を有する被検体、例えばCHF患者などの心臓疾患患者における生存の可能性などの、患者における疾患の特定の転帰の可能性の予測を指す。
「評価する」および「査定する」なる用語は交換可能に用いられ、対象の症状の診断および/または予後を容易にすることを指し、症状の重症度を評価することを含みうる。したがって、本開示内容においては「評価する」および「査定する」は、例えば、被検体の心臓健康状態を評価する、不良な臨床転帰(例えば、特定期間内での心臓健康状態の低下)の可能性を決定する、そしてある一定期間にわたる心臓症状のモニタリングを容易にするためにのBIN1タンパク質レベルの使用を包含しうる。例えば、BIN1タンパク質レベルを、心臓健康状態を改善する特定の治療投薬計画の有効性を評価するために用いることもできるし、一定期間にわたる患者の心臓症状の進行をモニタリング、予測または追跡する(すなわち、注目または観察する)ために用いることもできる。
【0022】
「体液」および「生体液」なる用語は本明細書において交換可能に用いられ、被検体、例えば哺乳動物、例えばヒトからの液体の生体試料を指す。このような体液には、血液(例えば、全血またはその分画(例えば血清、血漿)、このとき血液は身体の動脈または静脈から採取されてよい)および心膜液などの水性の液体が含まれる。本開示内容の文脈において対象とする特定の体液には、全血、血清、血漿および他の血液由来の試料が含まれ、このとき「血液試料」なる用語は全血またはその分画(例えば血清、血漿)を包含することを意味する。試料の種類は、アッセイの様式に合うように選択されうる。
【0023】
本明細書で用いられる「不良な心臓(heart、cardiac)健康状態」は、心臓が、正常な健康状態にある心臓機能の最適レベルと比較して、最適レベル以下で機能していて、被検体が将来深刻な心臓事象を有するなどの急性心臓症状を生じる危険にある被検体の心臓の健康状態を指す。不良健康状態の心臓と分類される心臓は、医療処置や他の予防措置が無い場合に、機能を悪化させる、例えば心不全増悪などの急性心臓症状を生じる可能性がある。
【0024】
被検体(例えば心不全患者)と関連して本明細書で用いられる「転帰不良」または「心臓転帰不良」は、急性の心臓症状、例えば心臓死を引き起こしうる深刻な心臓事象などの心臓の健康状態の不良または低下に関連した転帰を指す。「転帰不良」には、例えば、ある期間における、左室駆出率(LVEF)が改善しないこと、または機械的デバイスサポート(例えば、左室補助機器(LVAD)埋込み)の必要性、または心臓移植の必要性、深刻な心臓事象、または心臓死が含まれる。
【0025】
本明細書で用いられる「心臓機能分類」なる表現は、心不全患者の心臓の機能状態に基づいて心不全患者を分類することを指す。心臓機能分類は、例えばNYHA機能分類、米国心臓病学会財団/米国心臓協会(ACC/AHA)機能分類などの、当分野で認知された基準であり得る。
【0026】
本明細書で用いられるように、「相関する」なる用語は、2つの変数間の統計学的な関連を指すために用いられ、その関連は、線形的でも非線形的でもよく、変数の特定範囲を超えていてもよい。「正の相関」(または「直接相関」)は、第一変数と第二変数との間の直接的統計学的相関を指す(例えば、正常BIN1タンパク質レベルと比較したときのBIN1タンパク質レベルの低減は心臓健康状態の低減と統計学的に関連しており、正常BIN1タンパク質レベルと比較したときのBIN1タンパク質レベルの増加は心臓健康状態の増加と統計学的に関連している)。「負の相関」(または「逆相関」)は、第一変数と第二変数との間の逆の統計学的相関を指す(例えば、正常なBIN1タンパク質レベルと比較したときのBIN1タンパク質レベルの低減は転帰不良のリスクの増加と統計学的に関連している)。
【0027】
「心不全(HF)」または「うっ血性心不全(congestive heart failure)」(CHF)および「うっ血性心不全(congestive cardiac failure)」(CCF)なる用語は、本明細書において互いに交換可能に使用され、心臓の、全身に十分な量の血液を満たす、または送り出す能力、体の組織における適当な血液循環を維持する能力、または静脈循環によって戻ってきた静脈血を拍出する能力を損なう、任意の構造的または機能的な心臓障害の結果として生じ得る臨床症状を指す。
【0028】
「末期心不全」なる用語は、従来の医学療法に抵抗性のCHFを指す。末期心不全の患者は高い死亡率を有する。これらの患者は、多数回の頻繁な入院、静脈内薬物療法を頻繁に経験し、大動脈内バルーンポンプ、心室補助機器、および心臓移植などの外科的療法を必要とする。
【0029】
「末期拡張型心筋症」および「末期CHF」なる用語は、本明細書において互いに交換可能に使用される。
【0030】
「心筋症」または「心筋疾患」なる用語は、任意の理由による、心筋(すなわち、心臓の筋肉)の機能低下を指す。本明細書において使用される場合、「心筋症」なる用語は、「外因性心筋症」および「内因性心筋症」を包含する。外因性心筋症において、例えば、虚血性心筋症など、主な病理は心筋自体の外側にある。内因性心筋症において、例えば、拡張型心筋症(DCM)など、心筋の衰弱は特定できる外部の原因によるものではない。DCMでは、心臓(特に、左心室)が拡張し、ポンプ機能が低下する。
【0031】
「虚血性心筋症」なる用語は、アテローム性動脈硬化症および冠動脈閉塞などの、冠動脈疾患の結果として生じる心筋症を指す。
【0032】
「非虚血性心筋症」なる用語は、冠動脈疾患によるものではない心筋症を指す。
【0033】
「心臓症状」なる用語は、被検体の心臓の任意の機能低下を指す。例えば、心不全、虚血性心筋症、非虚血性心筋症、拡張型心筋症などと診断された被検体は、心臓症状を有すると診断される。
【0034】
症状または疾患を「治療すること」またはその「治療」なる用語は、被検体に臨床上の利益をもたらすことを包含し、以下を包含する:(1)疾患を阻害すること、すなわち、疾患またはその症状の発症を停止もしくは低減させること、または(2)疾患を軽減すること、すなわち、疾患またはその臨床症状の退行をもたらすこと。
【0035】
「個体」、「被検体」、「宿主」および「患者」なる用語は、本明細書で交換可能に用いられ、診断、治療または療法が望ましいとされる任意の哺乳動物被検体、特にヒトを指す。哺乳動物被検体は、イヌ、ウマ、ウシまたはヒトであってよい。
【0036】
概要
本開示内容の方法は、被検体の体液中のBIN1タンパク質レベルが被検体の心臓の健康状態を評価するのに有用であり、急性心臓症状の診断だけでなく被検体の転帰不良のリスクの予測を容易にするという発見に基づいている。
【0037】
一般に、急性の心臓症状がない被検体では、体液中のBIN1タンパク質レベルの低減は、心臓組織の健康状態の衰退と正に相関しており、ゆえに心不全患者では転帰不良の可能性が増す。例えば、被検体の心臓健康状態が低減するにつれて、被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルが、正常BIN1タンパク質レベルと比較して低減する。例えば、患者の心臓死亡率のリスクが増すにつれて、被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルが正常BIN1タンパク質レベルと比較して低減する。「心臓死亡率」なる用語は、本明細書において使用される場合、心臓疾患による患者死亡率を指す。したがって、体液中のBIN1タンパク質レベルは、心臓組織の健康状態が低下するにつれて低下するBIN1タンパク質レベルの値を提供するためにアッセイされる、予後診断マーカー並びに心臓健康状態のマーカーとして使用することができる。
【0038】
体液試料中のBIN1タンパク質レベルは、急性の心臓症状、例えば深刻な心臓事象、急性心不全増悪または急性冠動脈症候群の生化学的診断を提供するのに有用である。正常なBIN1タンパク質レベルと比較したときの被検体の体液中のBIN1レベルの有意な増加は、急性の心臓症状を示す。
【0039】
BIN1タンパク質レベルはBIN1タンパク質の検出により測定することができる。BIN1タンパク質レベルをアッセイするための例示的な方法を以下に提供する。
【0040】
本開示内容の方法は以降でさらに詳細に説明する。
【0041】
BIN1
ブリッジングインテグレーター1(BIN1)遺伝子は、腫瘍抑制因子の特徴を有するMyc相互作用タンパク質としてもともと同定された、核内サイトゾルタンパク質をコードする。BIN1はまた、アンフィフィシンII、アンフィフィシン様、およびボックス依存性MYC相互作用タンパク質1としても知られている。BIN1遺伝子の選択的スプライシングは、10個の異なるアイソフォームをコードする転写変異体をもたらす。BIN1のアイソフォームは、いたるところで発現されるものもあれば、組織特異的な発現を示すものもある。BIN1アイソフォーム1〜7はニューロンにおいて発現される。アイソフォーム8は筋肉特異的であるが、アイソフォーム9および10はいたるところに存在する。中枢神経系において発現されるアイソフォームは、シナプス小胞エンドサイトーシスに関与している可能性があり、ダイナニム、シナプトジャニン、エンドフィリンおよびクラスリンと相互作用する可能性がある。腫瘍細胞系において発現される異常型スプライス変異体もまた記載されている。
【0042】
BIN1発現は、BIN1アイソフォームの1つまたは複数の検出によってアッセイすることができる。BIN1アイソフォーム1タンパク質(NP_647593.1)、BIN1アイソフォーム2タンパク質(NP_647594.1)、BIN1アイソフォーム3タンパク質(NP_647595.1)、BIN1アイソフォーム4タンパク質(NP_647596.1)、BIN1アイソフォーム5タンパク質(NP_647597.1)、BIN1アイソフォーム6タンパク質(NP_647598.1)、BIN1アイソフォーム7タンパク質(NP_647599.1)、BIN1アイソフォーム8タンパク質(NP_004296.1)、BIN1アイソフォーム9タンパク質(NP_647600.1)、ならびにBIN1アイソフォーム10タンパク質(NP_647601.1)配列が、当技術分野において利用可能である。
【0043】
ある特定の実施形態では、BIN1タンパク質レベルは、BIN1アイソフォーム8タンパク質の検出によってアッセイされてもよい。別の実施形態では、BIN1タンパク質レベルは、BIN1アイソフォーム9タンパク質の検出によってアッセイされてもよい。別の実施形態では、BIN1タンパク質レベルは、BIN1アイソフォーム8タンパク質およびBIN1アイソフォーム9タンパク質の両方の検出によってアッセイされる。例示的な実施形態において、BIN1タンパク質レベルは、BIN1アイソフォーム8タンパク質およびBIN1アイソフォーム9タンパク質により共有されているアミノ酸配列または構造的特徴の検出によって、アッセイされてもよい。
【0044】
一般に、BIN1タンパク質レベルは、様々なBIN1アイソフォームにより共有されているアミノ酸配列および/または構造の特徴の検出を提供する試薬を使用することによって、例えば、2以上のBIN1アイソフォームにより共有されているエピトープ(一または複数)に結合する抗体を使用することによって、アッセイされてもよい。
【0045】
BIN1タンパク質レベルをアッセイするための方法
BIN1タンパク質レベルはBIN1ポリペプチドを検出することによってアッセイすることができる。BIN1ポリペプチドのレベルは、定量的なウェスタンブロット、免疫沈降、免疫吸着アッセイ等のような免疫アッセイによって検出することができる。
【0046】
一般に、BIN1タンパク質レベルは、患者由来の体液の試料でアッセイすることができる。体液は、血液試料、例えば全血、血清または血漿であってよい。体液は、BIN1タンパク質レベルをアッセイする前に新たに取得してもよいし、アッセイの前に保存されていてもよいし、および/または他の方法で処理されていてもよい。患者試料は、直接または適度に希釈、通常およそ1:10、およそ1:100、およそ1:500、およそ1:1000、およそ1:10000でかつ最高およそ1:50000までに希釈して用いられてよい。免疫アッセイは、任意の生理学的な緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水等で行われてよい。
【0047】
免疫検出
免疫検出方法が、BIN1タンパク質のレベルを検出するために適し得る。したがって、BIN1タンパク質に特異的な、ポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体などの抗体または抗血清を、BIN1タンパク質レベルを評定するために使用することができる。抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識または西洋わさびペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素による抗体自体の直接的な標識化によって検出することができる。あるいは、一次抗体に特異的な、抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体と共役させて、標識されていない一次抗体が用いられてよい。ある特定の例において、患者の体液試料におけるBIN1タンパク質レベルは、正常な心臓を有する被検体の体液におけるBIN1タンパク質レベルと比較され得る。免疫検出プロトコールおよびキットは、当技術分野においてよく知られており、市販されている。
【0048】
特定の場合において、体液試料中に存在するBIN1タンパク質の量は、ウェスタンブロットによって決定することができる。例えば、血清などの体液試料に存在するタンパク質を、SDS−PAGEによって分離し、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移し、BIN1に特異的な抗体または抗血清を使用することによってBIN1を検出することができる。少なくとも1つの正規化タンパク質、例えばβ−アクチンなどのハウスキーピングタンパク質もまた、同時にまたは並行して検出して、BINタンパク質レベルを正規化するために使用することができる。
【0049】
代替の実施形態において、BIN1ポリペプチドレベルを、過剰の抗BIN1抗体を使用してBIN1免疫沈降を実施し、その後、SDS−PAGEによる免疫沈降物の分離、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移し、ゲルの染色、例えば、クマシーブルーまたは銀染色により検出することによって測定してもよい。ユビキチンなどのコントロールタンパク質の免疫沈降はまた、同時にまたは並行して行われてもよい。場合によって、対応する正常な被検体由来の体液に対して同じ手順が行われてもよい。
【0050】
特定の場合において、免疫吸着アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))を用いてBIN1タンパク質レベルが検出されうる。一般に、固体支持体はまず、成分が十分に支持体に固定されるような適切な結合条件下で固相の成分(例えば、BIN1タンパク質または抗BIN1抗体)と反応する。必要に応じて、支持体への固相成分の固定化は、まず良好な結合特性を有するタンパク質へ固相成分を共役させることによって促すことができる。好適な共役タンパク質には、限定されるものではないが、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む血清アルブミン等の高分子、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、および当業者によく知られた他のタンパク質が含まれる。支持体に抗原を結合するために使用することができる他の分子には、多糖類、ポリ乳酸類、ポリグリコール酸類、重合アミノ酸類、アミノ酸コポリマー、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン等が含まれる。このような分子と固相成分にこれらの分子を結合する方法は当業者によく知られている。例として、Brinkley, M. A. Bioconjugate Chem. (1992) 3:2-13、Hashida et al., J. Appl. Biochem. (1984) 6:56-63、およびAnjaneyulu and Staros, International J. of Peptide and Protein Res. (1987) 30: 1 17-124を参照のこと。
【0051】
固相成分と固体支持体とを接触させた後、任意の非固定化固相成分は、洗浄によって支持体から除去される。生物学的試料またはその画分を添加する前に、不溶性支持体上の非特異的結合部位、すなわち、標的ペプチドによって占有されていない部位は、一般的にブロックされる。好適なブロッキング剤には、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン等のような非干渉性タンパク質が含まれる。例えばトゥイーン、NP40、TX100等の、非干渉濃度のいくつかの界面活性剤が用いられてよい。
【0052】
支持体に結合した固相成分がBIN1結合部分、例えば抗BIN1抗体である実施形態において、結合した固相成分は次いで、アッセイされる生体試料と好適な結合条件下で接触される。洗浄後、二次的結合部分を含有する溶液が好適な結合条件下で添加され、このとき二次的結合体はBIN1結合部分に結合したBIN1と選択的に会合することができるものである。BIN1結合部分は、例えば抗BIN1抗体、BIN1結合タンパク質(例えばCavl.2)から選択されてよい。
【0053】
支持体に結合した固相成分が体液試料中に存在するBIN1ポリペプチドである実施形態において、結合した固相成分は次いで、BIN1結合部分、例えば抗BIN1抗体と好適な結合条件下で接触される。洗浄後、二次的結合部分を含有する溶液が好適な結合条件下で添加され、このとき二次的結合体はBIN1結合部分と選択的に会合することができるものである。
【0054】
次いで、当分野でよく知られる技術を用いて二次的結合体の存在を検出することができる。ある実施形態において、二次結合体部分を含む溶液は、抗BIN1抗体に結合する二次抗体を含む溶液である。二次抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルの血清、例えばマウス抗ヒト抗体、ヤギ抗ヒト抗体、ウサギ抗ヒト抗体などの形態であってよい。
【0055】
二次抗体は、結合の直接または間接的な検出および/または定量を容易にするために標識されてよい。二次的結合体部分の結合を直接測定するための標識の例には、
3Hまたは
125I等の放射性標識、蛍光部分、染料、ビーズ、化学発光部分、電気的化学発光部分、コロイド粒子などが含まれる。有用な標識には、蛍光色素、例えばCy2、Cy3で、Cy5、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2 ’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)またはN,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)が含まれる。結合を間接的に測定するための標識の例には、基質が発色または発光産物を提供する場合の酵素が含まれる。ある実施形態では、二次抗体は、好適な基質を添加した後に検出可能な産物のシグナルを提供することができる共役結合した酵素にて標識される。共役に用いるために好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが含まれる。市販されていなくても、このような抗体−酵素共役体は当業者に知られる技術によって容易に製造される。あるいは、二次抗体は標識されていなくてもよく、標識された三次抗体が用いられてよい。結果として生じたシグナルは増幅されるので、この技術はBIN1が少量しか存在しない場合に有用であろう。
【0056】
二次抗体が結合した後、不溶性支持体は通常、再度非特異的結合分子が洗い流され、結合した共役体によって産生されるシグナルが従来法によって検出される。酵素共役体が用いられる場合、好適な酵素基質が与えられ、検出可能な産物が生成される。より具体的には、ペルオキシダーゼが選択された酵素共役体である場合、基質の組み合わせはH
2O
2とO−フェニレンジアミンであり、好適な反応条件下で発色産物が生じる。上記のような他の酵素共役体に好適な基質は当業者に知られている。様々な有用な共役体またはその産物を検出するために好適な反応条件および方法も当業者に知られている。例えば、O−フェニレンジアミン基質の産物の場合、分光光度計にて通常490−495nmの吸光度が測定される。
【0057】
一般的に、検出されたBIN1タンパク質の量は、正常な被検体由来のコントロール試料、または健康な心臓を有する被検体の体液中に存在するBIN1の公知の正常な範囲ないしはレベル、または転帰不良の心不全患者に存在する公知のBIN1タンパク質レベル範囲、または転帰が不良でない心不全患者に存在する公知のBIN1タンパク質レベルの範囲と比較される。
【0058】
サンドイッチELISAアッセイ様式などの免疫吸着アッセイを用いることもでき、このときの固体支持体(例えばマイクロタイタープレートの壁面)は抗BIN1抗体などのBIN1結合部分にてコートされる。次いで、アッセイする生体試料がコートされたウェルに添加される。場合によって、公知の濃度のBIN1タンパク質を含む一連の標準物質が試料ないしはその一定分量と平行してアッセイされ、コントロールとされてよい。
【0059】
希釈していようがいまいが、通常およそ0.001から1mlの試料で十分である。必要であれば、試料の希釈は緩衝液(トリス、PBSなど)で行い、pHを5〜10に安定化し、場合によって、トゥイーン20などの界面活性剤、非特異的バックグラウンド遮断タンパク質、またはウシ血清アルブミンまたはウサギ血清などの血清成分も含んでいてよい。さらに、ある実施形態では、用いる場合には各試料および標準物質は複数のウェルに添加し、それぞれについて平均値が得られるようにする。試験およびコントロール試料はそれぞれ固体支持体と共に、抗体が抗原と結合するのに十分な時間インキュベートされる。一般に、およそ0.1〜3時間で十分であり、通常1時間で十分である。
【0060】
標的抗原への抗体の結合を可能にするのに十分な期間インキュベートした後、支持体(一または複数)を洗浄して結合していない抗原を除去することができる。一般に、適切なpH、通常7〜8の希釈した非イオン性界面活性剤の培地が洗浄培地として使用される。リン酸緩衝生理食塩水などの等張性緩衝液が洗浄工程で用いられてよい。試料中に存在する非特異的結合タンパク質を完全に洗い流すために十分な量で、1から6回の洗浄を行ってよい。好ましくは、洗浄工程は、コートされたBIN1−結合部分に結合したBIN1ポリペプチドの解離を引き起こさない。洗浄の後、検出可能に標識された二次結合分子が添加される。二次結合分子はBEN1結合部分、例えば抗−BIN1抗体であってよい。二次結合分子は、任意の捕獲されたBIN1と反応し、支持体が洗浄され、二次結合分子の存在は当分野で周知の方法を用いて検出される。
【0061】
このようなアッセイでは、二次抗体の濃度は一般におよそ0.1〜50μg/ml、好ましくはおよそ1μg/mlであろう。二次抗体を含有する溶液は一般に、およそpH6.5〜9.5の範囲に緩衝化される。インキュベートの時間は、二次抗体が結合できる分子を結合するために十分な時間である。一般に、およそ0.1〜3時間が十分であり、通常1時間が十分であろう。二次抗体が結合した後、基本的には先の洗浄の項で記載したように、通常、不溶性支持体は非特異的結合物質がないように再度洗浄される。非特異的結合物質が洗い流された後、結合コンジュゲートによって生成されるシグナルを定法によって検出される。
【0062】
対象の方法で用いられる固体支持体には、ニトロセルロース(例えば膜状またはマイクロタイターウェル様式);ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート);フッ化ポリビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロンメンブレン;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどの基質が含まれる。
【0063】
固体支持体はウシ血清アルブミンなどのタンパク質にてブロックするか、体液試料をブロッキングタンパク質の存在下で固体支持体とインキュベートしてよい。
【0064】
メソスケールディスカバリー(登録商標)アッセイ
体液試料中のBIN1タンパク質のレベルを測定するための方法は、メソスケールディスカバリー(登録商標)(MSD)プラットフォームを用いるアッセイ様式で行ってよい。一般的に、電気化学発光標識にコンジュゲートする二次結合体部分を用い、MSDプラットフォームで二次結合体部分からの電気化学発光を検出する。
【0065】
MSD技術は、プレートの下部に一体化された電極を持つマルチスポット(登録商標)とマルチアレイ(登録商標)の使用を伴う。電気化学発光の検出は、電気化学的に刺激を受けたときに光を発光する標識を用いる。刺激のメカニズム(電気)がシグナル(光)と分離されているのでバックグラウンドシグナルは最小限である。標識は安定であり、様々な共役化学を介して二次結合体部分にカップリングしうる。これらはおよそ620nmで光を励起し、消色問題を取り除く。各標識の反復励起サイクルを用いてシグナルを増幅し、光ラベルを強め、感度を改善してもよい。MSDのマイクロプレートの下部に位置する電極で検出工程が開始する。電極に十分近い標識が刺激され、検出され、非洗浄アッセイを可能にする。MSDリードバッファは、電気化学発光シグナルを強める反応体を含有する。
【0066】
第1の分子は、受動的吸収によるマイクロプレートへの直接結合によってMSDマイクロプレートに結合してもよい。第一分子に結合した第二分子は、第三分子を介して直接または間接的に第二分子に結合している電気化学発光タグを電気的に刺激することによって検出されうる。ゆえに、第一のBIN1結合部分は、受動的吸収によってプレートに結合してよく、BIN1結合部分に結合した試料中の目的の試料とBIN1とが共にインキュベートされてよい。結合したBIN1は第二BIN1結合部分によって検出され、この検出は、第二BIN1結合部分に特異的な電気化学発光タグ付加抗体を用いて行われてよい。
【0067】
あるいは、第一分子は予めコーティングしたMSDマイクロプレート上に固定化されてよい。MSDマイクロプレートは、例えばアビジンまたはストレプトアビジンで予めコーティングされ、第一分子がビオチンにコンジュゲートする。固定化された第一分子への第二分子の結合は上記のように検出してよい。
【0068】
あるいは、第一および第二の分子を含む複合体はマイクロプレート上に固定され、上記のように検出されてよい。
【0069】
電気化学発光タグの電気刺激のため、またタグの刺激から生じるシグナルの測定のために、SECTOR機器が用いられてよい。
【0070】
電気化学発光タグには、スルホタグなどのMSD−TAG(商標)、並びにMSDアッセイプラットフォームと互換性がある他の電気化学発光タグが含まれる。
【0071】
試料
生物学的流体試料は、BIN1タンパク質が存在しうる任意の試料とすることができる。上記のように、哺乳動物、例えばヒトからの液体の生物学的試料は、BIN1タンパク質レベルを検出するためにアッセイすることができる。このような流体には、血液(例えば、全血またはその画分(例えば、血清、血漿))、心嚢液などの水性流体が含まれる。
【0072】
特に、対象とする体液流体には、全血、血清、血漿および他の血液由来の試料が含まれる。「血液試料」なる用語は、全血またはその分画(例えば血清、血漿)を包含することを意図する。試料の種類は、アッセイ形式と適合するように選択することができる。
【0073】
サンプル量は、特定のアッセイ形式と適合する任意の量であってよい。ある実施形態では、試料は、BIN1ポリペプチドのレベルについてアッセイする前に適切な溶液で希釈されるであろう。一般に、生体試料を希釈するのに適する溶液には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝液が含まれ、他の項目、例えば非特異的ブロック試薬、ウシ血清アルブミン(BSA)、トリトンX-100、トゥイーン20などの界面活性剤などが含まれてよい。
【0074】
アッセイのための適切なコントロール試料には、体液試料、例えば心不全でない(つまり正常な心臓)と診断されている被検体から採取した血液試料、または、既知の所定量のBIN1を含む試料(つまりポジティブコントロール)が含まれる。ポジティブコントロールの例としては、BIN1タンパク質を発現する細胞株の細胞溶解物であってもよい。この場合、コントロール試料は、コントロールから期待される結果が得られる場合にアッセイが正しく実行され、試薬が安定であることを保証するものである。
【0075】
多くの実施形態では、体液試料に適した初期供給源は血液試料である。よって、被検体のアッセイに用いた試料は、一般に、血液由来試料である。血液試料は全血でもその分画、例えば血清、血漿などから得てもよく、いくつかの実施形態では、試料は血液由来であり、血液を凝固させ、血清を分離し、回収してBIN1検出アッセイに使用される。
【0076】
試料が血清または血清由来の試料である実施形態において、試料は、一般に、流体試料である。流体血清試料を製造するための任意の便利な方法を使用してよい。多くの実施形態において、本方法は、穿刺(例えば、指穿刺、静脈穿刺)によって静脈血を凝固又は血清分離管に入れ、血液を凝固させ、凝固した血液から血清を遠心分離することを用いる。次いで、血清を回収し、分析するまで保存する。場合によって、血液は、静脈穿刺によって被検体から採取されてよい。0.1〜0.5mlを用いて血清または血漿を調製してよい。血清は採血直後に調製してもよい。チューブは、血清が除去された後、遠心分離後4時間室温に放置してもよい。血清を分注し、−20℃で保存してよい。血漿は、血液試料にEDTA(終濃度5mM)を添加することにより調製することができる。血液試料を遠心分離し、上清を除去し、−20℃で保存することができる。患者由来の試料が得られたら、試料をアッセイしてBIN1のレベルを測定する。
【0077】
試料はBIN1のレベルの検出を高めるために様々な方法で処理してよい。例えば、試料が血液である場合、赤血球はアッセイの前に(例えば、遠心分離により)試料から除去してもよい。また、BIN1の存在の検出は、当技術分野でよく知られる手順(例えば酸沈殿、アルコール沈殿、塩析、疎水性沈殿、濾過(30kDより大きい分子を保持することができるフィルタ、例えばCentrim30(商標)を用いたもの)、アフィニティー精製)を用いて試料を濃縮することによって向上してもよい。場合によって、ある種のタンパク質はアッセイを行う前に試料から除いてもよい。
【0078】
心臓健康状態および心臓死亡率のリスクの予後を評価する際のBIN1タンパク質レベルの使用
被検体の体液中のBIN1タンパク質レベルを用いて、被検体の心臓健康状態の評価および/又は臨床転帰不良のリスクを決定することができる。BIN1タンパク質レベルはまた、急性心臓症状(例えば、心筋梗塞)の診断を容易にするために使用することができる。心臓の健康状態を評価することは、被検体、例えば臨床上心不全を有すると診断された被検体の、転帰不良のリスクを予測することを含み得る。
【0079】
一般に、正常BIN1タンパク質レベルよりも、体液(例えば、血液)中のBIN1タンパク質レベルが低いことは、被検体の心臓健康状態の衰退を示しており、被検体の心臓の健康状態の評価および/または転帰不良の可能性の予測に役立つ。正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの体液中のBIN1タンパク質レベルの減少は、心臓の健康状態の低下または心臓の健康不良と正の相関がある。正常BIN1タンパク質レベルと比較したときのBIN1タンパク質レベルの減少は、例えば、将来の急性心臓症状、心臓死亡率、心室性不整脈など、転帰不良のリスクの増加と相関している。
【0080】
しかしながら、体液中のBIN1タンパク質レベルが正常BIN1タンパク質レベルよりも有意に高い場合には、急性心臓症状または心筋梗塞などの深刻な心臓事象の診断を容易にする。
【0081】
ゆえに、BIN1タンパク質レベルは、心臓健康状態の評価、転帰の予測、深刻な心臓事象などの急性心臓症状の診断の容易化に使用できるだけでなく、深刻な心臓事象を有していない被検体と深刻な心臓事象を有している被検体とを区別するためのマーカーともなる。
【0082】
BIN1タンパク質レベルの使用については以下により詳細に記載する。
【0083】
BIN1タンパク質レベルの使用
この方法は、被検体、例えば深刻な心臓事象などの急性心臓症状を有する個体、急性心臓症状を有さない個体、例えば急性でない心臓症状または明らかでない心臓症状を有する個体からの体液試料中のBIN1タンパク質レベルをアッセイすること含むことができる。
【0084】
BIN1タンパク質レベルの分析は、BIN1タンパク質レベルと正常BIN1タンパク質レベルとの比較を含むことができる。正常BIN1タンパク質レベルは健康な心臓を示すことがわかっているBIN1タンパク質レベルであってよい。正常BIN1タンパク質レベルは一般に、心不全がない被検体からの体液試料中のBIN1タンパク質レベルを指す。正常BIN1タンパク質レベルは、心臓機能が心臓の形態全体、左心室駆出率、心臓カテーテルの試験からおよび/または個々の医療記録に心臓関連症状がないことから正常であると推定された個体などから入手された体液試料中のBIN1タンパク質レベルから測定することができる。正常BIN1タンパク質レベルは、その心臓機能が正常であると推定された複数の個体から入手された体液試料を組み合わせることによって得たプールした体液試料中のBIN1タンパク質レベルから測定することができる。したがって、正常BIN1タンパク質レベルは、その心臓機能が正常であると推定された複数の個体から入手された体液試料を組み合わせることによって得たプールした体液試料中のBIN1タンパク質レベルであってよい。
【0085】
BIN1タンパク質レベルの分析は、健康な個体からの体液試料のプールした試料におけるBIN1タンパク質レベルに対するBIN1タンパク質レベルの正規化を含むことができる。
【0086】
被検体の心臓健康状態を評価する、および/または転帰を予測する、または急性心臓症状の診断を容易にするためのBIN1タンパク質レベルの測定は、さらに、一または複数の心不全の血清学的マーカー、例えばB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、および/またはクレアチンキナーゼ(CK)、および/またはCK−MB;および/またはトロポニン(特に、心臓トロポニンTおよび心臓トロポニンI)の測定を含んでよい。心不全の血清学的マーカーのアッセイは、被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルのアッセイの前、後またはと同時に行ってよい。
【0087】
被検体の心臓健康状態を評価する、および/または転帰を予測する、または急性心臓症状の診断を容易にするためのBIN1タンパク質レベルの測定は、通常心臓健康状態を診断するために行われる他の身体的評価、例えば、足首の腫れ、水貯留による突然の体重増加、運動能力の低下、胸痛、悪心、めまいなどの身体症状のスクリーニングと組み合わせて行われてよい。
【0088】
ある実施形態では、被検体の心臓健康状態を評価する、および/または転帰を予測する、または急性心臓症状の診断を容易にするためのBIN1タンパク質レベルの測定は、さらに、一または複数の心不全の血清学的マーカーのレベルの測定、および/または被検体の身体的評価の実施を含んでよい。
【0089】
心臓健康状態の診断の容易化および/または転帰予測の容易化のための被検体のBIN1タンパク質レベルの使用
体液(例えば血液)中のBIN1タンパク質レベルは、心臓健康状態の診断の容易化および/または転帰の予測の容易化に有用である。正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの被検体の体液(例えば血液)中のBIN1タンパク質レベルの低減は、被検体の心臓健康状態の衰退を示す。正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの被検体の体液(例えば血液)中のBIN1タンパク質レベルの低減は、被検体の心臓健康状態の評価および/または転帰不良の可能性の予測を容易にすることができる。被検体は、明らかでない心臓症状または急性でない心臓症状を有する被検体、例えば深刻な心臓事象を有さない被検体であってよい。
【0090】
正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルの顕著な低減は、患者は不良な心臓健康状態を有することを示す。正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルの顕著な低減は、転帰不良の可能性の増加と相関する。一方、正常値に近いBIN1タンパク質レベルは、被検体が良好な心臓健康状態を有することを示すか、または心不全患者の場合には転帰不良、例えば急性心臓症状または心臓死亡率の可能性の低減を示す。
【0091】
正常BIN1タンパク質レベルと比較してBIN1タンパク質レベルが低い場合、被検体が不良な心臓健康状態を有し、転帰不良、例えば急性の心臓症状、心臓死亡率、心室性不整脈の可能性の増加が予測されることを示す。一般に、正常BINレベルと比較してBIN1タンパク質レベルの少なくとも20%の減少は有意な低減であり、被検体が不良な心臓健康状態を有することを示す。例えば、正常BINレベルと比較してBIN1タンパク質レベルの20%以上の減少、または30%以上の減少、または40%以上の減少、または45%以上の減少、または50%以上の減少、または55%以上の減少、または60%以上の減少、または65%以上の減少、または70%以上の減少、または75%以上の減少、または80%以上の減少、または85%以上の減少、または90%の減少またはそれ以上は、被検体が不良な心臓健康状態を有することを示す。CHF患者では、正常BINレベルと比較してBIN1タンパク質レベルの少なくとも25%の減少は、心臓死亡率の可能性の増加を示す。
【0092】
一般に、正常BINレベル(または正常範囲)と比較してBIN1タンパク質レベルの少なくとも25%の減少、例えば30%の減少、40%の減少、50%の減少、75%の減少またはそれ以上を有する患者は転帰不良のリスクが増加する。
【0093】
BIN1タンパク質レベルを用いて、BIN1タンパク質レベルの評価後一定期間にわたって転帰不良のリスク、例えばその後の3か月〜60か月、例えば6か月〜18か月にわたって、その後の6か月〜12か月、または12か月〜18か月、または18か月〜24か月、24か月〜30か月、または30か月〜36か月、または36か月〜42か月、または36か月〜48か月、または24か月〜54か月、または24か月〜60か月またはそれ以上にわたってCHF患者の転帰不良のリスクを予測してもよい。
【0094】
また、患者のBIN1タンパク質レベルは、閾値と比較して評価されてよい。「閾値」または「リスク閾値」は、相対的な複数の転帰の区別を容易にする、例えば比較的高リスクの転帰不良を比較的低リスクの転帰不良と区別することを容易にするために選択される値である。例えば、ほとんどの場合、閾値は、およそその値以下は転帰不良のリスクが比較的高く、それより上は転帰不良のリスクが比較的低い値である。
【0095】
場合によって、第一の閾値および第二の閾値の2つの閾値があってよい。例えば、第一の閾値以下であるが第二の閾値よりも上であるBIN1タンパク質レベルは、評価を行った時点では被検体は不良な心臓健康状態を有するが、転帰不良のリスクはないことを示しうる。第二の閾値以下のBIN1タンパク質レベルは、被検体が不良な心臓健康状態を有し、急性心臓症状、心臓死亡率などの転帰不良の高リスクにあることを示しうる。
【0096】
例えば、正常BIN1タンパク質レベルよりも約30%未満のBIN1タンパク質レベルが第一の閾値を表し、正常BIN1タンパク質レベルよりも約50%未満のBIN1タンパク質レベルが第二の閾値を表す。第一の閾値よりも低いBIN1タンパク質レベルを有する被検体は、この閾値以上のBIN1タンパク質レベルを有する被検体と比較して不良な心臓健康状態を有する。第一の閾値より低いが第二の閾値よりは高いBIN1タンパク質レベルを有する被検体は、不良な心臓健康状態を有するが、転帰不良のリスクは低い。第二の閾値より低いBIN1タンパク質レベルを有する被検体は、転帰不良のリスクが相対的に増加しており、この閾値以上のBIN1タンパク質レベルを有する心臓病患者は転帰不良のリスクが相対的に減少している。
【0097】
また、BIN1タンパク質レベルは、異なる機能的分類間で心不全患者を分類するために用いることもできる。一般に、第一の範囲(例えば正常BIN1タンパク質レベルのおよそ60%〜45%)内のBIN1タンパク質レベルを有する心不全患者は、高次の機能分類(例えばNYHAクラス1またはクラス2)に分類されうるが、第二の範囲(例えば正常BIN1タンパク質レベルのおよそ40%〜0%)内のBIN1タンパク質レベルを有する心不全患者は、低次の機能分類(例えばNYHAクラス3またはクラス4)に分類されうる、低次の機能分類に分類される第二の範囲(例えば正常BIN1タンパク質レベルのおよそ40%〜0%)内のBIN1タンパク質レベルを有する心不全患者は、さらに、クラス3と4の間で、正常BIN1タンパク質レベルのおよそ20%以下のBIN1タンパク質レベルを有する患者をクラス4に分類し、正常BIN1タンパク質レベルのおよそ20%より上であるが正常BIN1タンパク質レベルのおよそ40%以下のBIN1タンパク質レベルを有する患者をクラス3に分類してよい。
【0098】
BIN1タンパク質レベルは、評価後一定の期間にわたって転帰不良のリスクを、例えばCHF患者の転帰不良のリスクをその後5年にわたって、例えば3か月〜60か月、例えばその後6か月〜12か月にわたって、または12か月〜18か月、または18か月〜24か月、24か月〜30か月、または30か月〜36か月、または36か月〜42か月、または36か月〜48か月、または24か月〜54か月、または24か月〜60か月またはそれ以上にわたって予測するために用いてよい。
【0099】
BIN1タンパク質レベルは、被検体の不整脈原性右室心筋症(ARVC)を診断するために用いてよい。さらに、BIN1タンパク質レベルは、疾患の重症度を診断する、および/またはARVCと診断された被検体の疾患進行を予測するために用いられてよい。一般に、正常BIN1レベルと比較したときの、ARVCと診断された患者の体液中のBIN1タンパク質レベルの減少は、ARVCの重症度の増加と相関しており、例えばARVCのさらなる進行および/または将来の不整脈など転帰不良の高リスクが予測される。さらに、BIN1タンパク質レベルは、ARVCと診断された被検体の心臓健康状態を評価するための方法に用いられうる。この方法には、ARVCと診断された被検体から入手された体液試料中のBIN1タンパク質レベルを測定することと、そのBIN1タンパク質レベルを用いて被検体の心臓健康状態を評価することが含まれ得、このとき正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの体液試料中のBIN1タンパク質レベルの低減が、ARVCの重症度と正の相関がある。
【0100】
BIN1タンパク質レベルは、ARVCと診断された被検体のARVCのさらなる進行および/または将来の不整脈事象といった転帰不良のリスクを予測する方法に用いられてよい。この方法には、ARVCと診断された被検体から入手された体液試料中のBIN1タンパク質レベルを測定することと、そのBIN1タンパク質レベルを用いて被検体の転帰不良のリスクを予測することが含まれ得、このとき正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの体液試料中のBIN1タンパク質レベルの低減が、重度ARVCへのARVCの進行および/または将来の不整脈事象(一または複数)の発症といった転帰不良のリスクの増加と相関している。
【0101】
急性心臓症状の診断を容易にするためのBIN1タンパク質レベルの使用
被検体の体液試料におけるBIN1タンパク質レベルの測定は、深刻な心臓事象などの急性心臓症状の診断を容易にする際に有益である。一般に、正常BIN1タンパク質レベルと比較して体液中のBIN1タンパク質レベルの有意な増加は被検体での深刻な心臓事象を示す。ゆえに、体液のBIN1タンパク質レベルは、急性心臓症状を持たない被検体と、深刻な心臓事象などの急性心臓症状を有する被検体を区別するためのマーカーとして有益である。このようなアッセイは、深刻な心臓事象の症状を違ったふうに表す被検体における鑑別診断を容易にすることができる。したがって、深刻な心臓事象の症状を示す被検体において、深刻な心臓事象の発症は、被検体の体液中のBIN1タンパク質レベルが正常BIN1タンパク質レベルと比較して有意に増加しているか否かで診断することができる。一方、正常BIN1タンパク質レベルと比較してBIN1タンパク質レベルが有意に増加していなければ、被検体は深刻な心臓事象を持っていないことを示す。
【0102】
急性心臓症状または深刻な心臓事象には、急性冠症候群、心筋梗塞、または急性劇症性心筋炎が含まれうる。
【0103】
正常BIN1タンパク質レベルと比較したときの有意に高い体液試料中のBIN1タンパク質レベルは、被検体が急性心臓症状を有することを示す。一般に、正常BIN1レベルと比較してBIN1タンパク質レベルの少なくとも20%の増加を有意とし、被検体が深刻な心臓事象などの急性心臓症状を有することを示す。例えば、正常BIN1レベル(または正常な範囲)と比較してBIN1タンパク質レベルの20%の増加、30%の増加、40%の増加、50%の増加、75%の増加またはそれ以上を有する患者は、急性心臓症状を有する。
【0104】
被検体
一般に、本明細書中に記載される方法に適する被検体は、哺乳動物被検体、例えばイヌ、ウシ、ウマ、またはヒト被検体である。
【0105】
急性心臓症状を持たない被検体
本明細書中の方法を用いた評価に適する被検体には、急性心臓症状を持たない被検体、例えば心臓症状を明確には持たない被検体、急性ではなく慢性の心臓症状を持つ被検体などが含まれる。
【0106】
ここで用いられる「明確でない心臓(heartまたはcardiac)症状」なる用語は、被検体においてまだ臨床症状となっていない心臓機能の低下を有する被検体を指す。「明確でない心臓症状」を有する被検体には、例えば、明らかな臨床症状をまだ表していない心臓不全の初期段階にある患者が含まれる。このような被検体には、心臓関連の健康問題に罹りやすい個体、例えば、心臓関連の問題の家族歴がある個体、例えば心臓症状を患ったことがある近親者;肥満症および/または高血圧症および/または高コレステロールなどに罹患している個体;過去に心臓症状を患ったことがある個体が含まれうる。
【0107】
被検体の心臓健康状態を評価するためにBIN1の体液レベルが測定される被検体には、個体が心臓症状を有することを示しうる症状を示す個体、例えば、胸の痛み、めまい、息切れ、吐き気、発汗などを示す個体が含まれうる。
【0108】
被検体の心臓健康状態を評価するためにBIN1の体液レベルが測定されうる被検体には、急性でない心臓症状を有すると診断される個体が含まれうる。ここで用いられる「急性でない心臓(heartまたはcardiac)症状」なる用語は、心臓状態と関連する臨床症状を表すが、その心臓症状が急性でなく、例えば、不整脈源性右室心筋症(ARVC)、慢性心不全、慢性進行性非虚血性心筋症、または慢性進行性虚血性心筋症である被検体を指す。急性でない心臓症状を有する被検体は一般に、心臓症状の治療で入院しておらず、循環器外来で管理されうる。
【0109】
急性心臓症状を有する被検体
本明細書中の方法を用いた評価に適する被検体には、急性心臓症状を有する被検体が含まれる。ここで用いられる「急性心臓(heartまたはcardiac)症状」なる用語は、心臓状態と関連する臨床症状を表し、その症状が急性でない心臓症状を有する被検体によって表される臨床症状よりも重症である被検体を指す。急性心臓症状を有する被検体は通常、心臓症状および定期的なモニタリングのために入院しているか、または時に頻回な外来臨床管理で管理されうる。「急性心臓症状」には、深刻な心臓事象、例えば、急性冠症候群、心筋梗塞、または急性劇症性心筋炎が含まれる。急性心臓症状を有する被検体は、急性心臓症状の他の血清学的な証拠を有し得、例えば、正常レベルより高いB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を有する、正常レベルより高いクレアチンキナーゼ(CK)を有する、正常レベルより高いCK−MBを有する、または正常レベルより高いトロポニン(特に、心臓トロポニンTおよび心臓トロポニンI)を有する。場合によって、急性心臓症状を有する被検体は上記の徴候の2以上を有しうる。
【0110】
臨床応用
被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルは、心臓健康状態の評価を容易にする際に、転帰不良のリスクを予測する際に、また、深刻な心臓事象などの急性心臓症状を診断するために有益である。ある実施態様では、BIN1タンパク質レベルは、心臓健康状態の評価を容易にする際に、転帰不良のリスクを予測する際に、急性心臓症状を診断するために、心臓疾患の他の徴候と併せて用いられる。
【0111】
急性でない心臓症状を有する被検体
急性でない心臓症状患者の体液試料中のBIN1タンパク質レベルの測定は、先に述べたように、患者に機能的分類、例えばニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス1−4に割り当てるために用いられうる。この機能的分類は、心臓移植を受けるための患者への優先順位を決定するために用いられうる。急性でない心臓症状患者の体液試料中のBIN1タンパク質レベルの測定は、CHF治療への応答評価を容易にするため、および/または治療計画の変更を導くために用いられうる。
【0112】
一般に、急性でない心臓症状を有する患者の場合、正常BIN1タンパク質レベルと比較してBIN1タンパク質レベルが低ければ低いほど、心臓の回復が不良である可能性が高くなるので、患者は、心臓移植を受けることについて高い優先順位が割り当てられる。あるいは、急性でない心臓症状の患者が正常近くのBINレベルを有する場合、心臓は回復する機会があることが予測でき、この患者は、心臓移植を受けることについて低い優先順位が割り当てられうる。一般に、正常BIN1タンパク質レベルと比較してBIN1タンパク質レベルが低ければ低いほど、心臓移植を受けることについての患者の優先順位が高くなる。
【0113】
同様に、正常BIN1タンパク質レベルと比較してやや減少したBIN1を有する患者では、患者の回復を促すために患者を左心補助循環機器に置く優先が増すであろう。左心補助循環機器の除去は、BINレベルの正常または正常近くのレベルへの回復と合わされうる。
【0114】
BIN1タンパク質レベルは、心臓死亡率のリスクを決定するために用いてよい。一般に、BIN1タンパク質レベルが低ければ低いほど、心臓死亡率のリスクは高くなる。例えば、場合によって、正常BIN1タンパク質レベルの40%以下のBIN1タンパク質レベル、例えば正常BIN1タンパク質レベルの30%以下、または20%以下は、適当な医学的介入が無い場合には5年以内の心臓死亡率が予測される。適当な医学的介入には、心臓移植、LVADなどが含まれうる。
【0115】
転帰不良、例えば急性心臓症状、心臓死亡率のリスクの決定は、CHF治療の有効性を評価する、および治療方策への変更を決定するために用いられうる。CHF患者は、例えば手術、機械的補助機器、両心室ペースメーカー、心臓移植、および薬物療法による処置を受けているかもしれない。CHF治療の有効性は、BIN1レベルのアッセイにより評価してもよい。一般に、正常BIN1タンパク質レベルと比較して低いBIN1は、心不全の可能性が高く、治療が有効でないことを示す。このような治療有効性の決定は、治療を変更するために用いてよい。例えば、それは心臓移植について高い優先順位にある患者を分類することによる。
【0116】
一方、CHF治療はBINレベルを安定化し、結果として正常または正常に近いレベル、例えば閾値レベルよりも上にしうる。衰えた心臓が回復するにつれ、BIN1タンパク質レベルは正常または正常近くのBIN1タンパク質レベルとなる。正常BIN1タンパク質レベルは、心不全の可能性が低く、治療が有効であることを示す。この情報は、心臓移植を受けることについて低い優先順位の患者を分類するために用いてよく、大動脈内バルーンポンプ、心室補助機器、静脈心臓治療などの他の治療を示しうる。
【0117】
BIN1タンパク質レベルは治療の選択肢を決定するために用いられてよい。例えば、正常BIN1タンパク質レベルのおよそ40%未満のBIN1タンパク質レベルは、転帰不良のリスクの増加と相関しうる。正常BIN1タンパク質レベルのおよそ40%以下、30%以下、20%以下のBIN1タンパク質レベルは、将来、例えば、次の3か月〜60か月、例えば3か月〜6か月、6か月〜8か月、8か月〜12か月、12か月〜18か月、18か月〜24か月、18か月〜30か月、18か月〜46か月、18か月〜60か月の患者の転帰不良と正の相関がありうる。転帰不良は、死、LVAD移植、またはLVEFの改善なしまたはLVEFのさらなる悪化であってよい。この情報は、心臓移植を受けることについて高い優先順位の患者を分類するために用いてよく、大動脈内バルーンポンプ、心室補助機器、静脈心臓治療などの他の治療を示しうる。
【0118】
急性心臓症状を有する被検体
急性心臓症状を有することが疑われる被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルを評価することは、深刻な心臓事象などの急性心臓症状の診断を容易にするのに有用である。急性心臓症状の診断には、急性心臓症状の既知のマーカー、例えばBNP、CK、CK−MB、および/またはトロポニンのタンパク質レベルの評価と併せて、上記のように、被検体の体液中のBIN1タンパク質レベルの評価が含まれうる。「〜と併せて」という表現には、BIN1タンパク質レベルと急性心臓症状の他のマーカーの連続的または同時の評価が含まれる。急性心臓症状を有することが疑われる被検体において急性心臓症状を診断すると、被検体の治療プロとコール(一または複数)の決定を容易にすることができる。
【0119】
キット
本開示の方法において使用するための材料は、よく知られている手順に従って製造されるキットの調製に適している。本開示はしたがって、臨床転帰の予測、治療の選択肢の決定、または治療に対する反応の予測などのためにBIN1のレベルを定量するためのBIN1結合部分(一または複数)でありうる作用物質を具備するキットを提供する。加えて、キットは、場合によって、識別のための記述もしくはラベルまたは本開示の方法におけるそれらの使用に関する使用説明書とともに試薬(一または複数)を具備してよい。キットは、例えば、作製済み(pre−fabricated)マイクロアレイ、緩衝液、抗体、酵素基質、本開示のものを含む、方法において利用される様々な試薬(典型的には、濃縮された形態で)の1つまたは複数をそれぞれ含む、容器(方法の自動化された実行において使用するのに適したマイクロタイタープレートを含む)を具備してよい。予後のおよび/または予測的な情報を推定または定量するために使用される数学アルゴリズムもまた、当然、キットの潜在的な構成要素である。
【0120】
本開示により提供される方法はまた、全体または一部分において自動化されていてもよい。
【0121】
報告
本開示の方法は、BIN1のレベルをアッセイした結果を要約した報告の作成に適している。ある実施形態では、報告は被検体の心臓健康状態の決定を含みうる。ある特定の実施形態では、報告は、CHF患者における心臓死亡リスクの決定を包含していてもよい。本明細書において記載される「報告」は、被検体の体液試料中のBIN1タンパク質レベルおよび/または心臓死亡リスクに関する対象とする情報を提供する報告要素を包含する電子文書または有形の文書である。報告は、完全にまたは部分的に電子的に作成されてもよく、例えば、電子ディスプレイ(例えば、コンピュータのモニター)上に提示される。報告はさらに、1)試験設備に関する情報;2)サービス提供者情報;3)患者データ;4)試料データ;5)a)適応;b)試験データを含む様々な情報を包含し得る解釈レポート、および6)別の特徴、のうち1つまたは複数を包含することができる。
【0122】
本開示は、したがって、報告およびそれに起因する報告を作成する方法を提供する。報告は、患者から得られる体液試料におけるBIN1のレベルの要約を包含していてもよい。報告は、心臓死亡リスクの評価を包含していてもよい。報告は、手術単独または療法と組み合わせた手術などの治療モダリティに関する推奨を包含していてもよい。報告は、電子的フォーマットでまたは紙上で提示されてもよい。本明細書において開示されている方法はさらに、報告を作成または出力するステップを包含することができ、この報告は、電子的媒体(例えば、コンピュータのモニター上の電子ディスプレイ)の形態で、または有形媒体(例えば、紙または別の有形媒体上に印刷された報告)の形態で提供することができる。
【0123】
明確にするために、「クライアント」と互いに交換可能に使用される「ユーザー」という用語は、報告が送信される人または実体を指すことを意味し、例えば以下の、a)試料を採取する;b)試料を処理する;c)試料または処理された試料を提供する;およびd)心臓死亡リスク評価において使用するためのデータを作成する、のうち1つまたは複数を行う同じ人または実体とすることができることに留意するべきである。場合によっては、試料採取および/または試料処理および/またはデータ作成を提供する人(一または複数)または実体(一または複数)、および結果および/または報告を受け取る人は異なる人であってもよいが、混乱を回避するために、本明細書において両者とも「ユーザー」または「クライアント」と称される。ある特定の実施形態では、例えば、この方法が単一のコンピュータにおいて完全に実行される場合、ユーザーまたはクライアントは、データ入力およびデータ出力の検証を提供する。「ユーザー」は、医療専門家(例えば、臨床医、検査技師、医師(例えば、心臓専門医、外科医、かかりつけ医)など)とすることができる。
【0124】
ユーザーが方法の一部分を実行するのみの実施形態において、本発明の方法によるコンピュータ化されたデータ処理の後、データ出力を検証する(例えば、完全な報告を提供するための発信前の結果、完全な報告、または「不完全な」報告を検証し、手作業による介入および解釈的報告の完了を提供するなど)個体は、本明細書において「レビュアー」と称される。レビュアーは、ユーザーとは遠隔にある位置に(例えば、ユーザーが位置し得る医療施設とは別々に提供されるサービスに)位置していてもよい。
【0125】
政府の規制または別の制限(例えば、健康状態、医療過誤、または責任保険による要件)が適用される場合、すべての結果は、全面的にまたは部分的に電子的に作成されているかどうかにかかわらず、ユーザーへの発信の前に品質管理ルーチンにかけられる。
【0126】
コンピュータによるシステムおよび方法
本明細書に記載の方法およびシステムは、非常に多くの方法で実行することができる。特に興味深い一実施形態において、この方法は、通信インフラストラクチャー、例えば、インターネットの使用を伴う。いくつかの本発明の実施形態が、下記に論じられている。本発明は、様々な形態のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、プロセッサ、またはそれらの組み合わせで実行されてもよいこともまた理解されるべきである。本明細書に記載の方法およびシステムは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実行することができる。ソフトウェアは、プログラム記憶デバイスにおいてタンジブルに組み入れられているアプリケーションプログラム、またはユーザーのコンピュータ使用環境において(例えば、アプレットとして)およびレビュアーが関連付けられたリモートサイトに(例えば、サービス提供者の施設に)位置していてもよいレビュアーのコンピュータ使用環境において実行されるソフトウェアの異なる部分として実行することができる。いくつかの実施形態において、BIN1タンパク質レベルを使用してCHF患者における心臓死亡リスクを決定するステップは、リスクを計算するためのアルゴリズムを実行するようにプログラムされたコンピュータによって実施される。別の例において、対象方法は、コンピュータに、BIN1のレベルに基づいてCHF患者における心臓死亡リスクを計算するためのアルゴリズムを実行させるステップを包含する。
【0127】
本明細書に記載のアルゴリズムを実行するためのアプリケーションプログラムは、任意の適したアーキテクチャを備えたマシンによって、アップロードおよび実行することができる。一般に、このマシンは、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および入力/出力(I/O)インターフェース(複数可)などのハードウェアを有するコンピュータプラットホームを伴う。このコンピュータプラットホームはまた、オペレーティングシステムおよびマイクロ命令コードを包含する。本明細書に記載の様々な処理および機能は、オペレーティングシステムを介して実行されるマイクロ命令コードの一部またはアプリケーションプログラムの一部(またはそれらの組み合わせ)のいずれかであってもよい。加えて、様々な別の周辺デバイスが、さらなるデータ記憶デバイスおよび印刷デバイスなどのコンピュータプラットホームと接続されていてもよい。
【0128】
コンピュータシステムとして、システムは、一般に、プロセッサユニットを包含する。プロセッサユニットは、動作して、試験データ(例えば、BIN1タンパク質のレベル、およびBNPタンパク質レベル)を包含し得る;また、患者データなどの別のデータも包含していてもよい情報を受信する。受信したこの情報を、データベースにおいて少なくとも一時的に保管することができ、データを分析して上記の報告を作成する。
【0129】
入力および出力データの一部またはすべてはまた、電子的に送信することができ、特定の出力データ(例えば、報告)は、電子的にまたは電話によって(例えば、ファクシミリによって、例えば、ファックスバックなどのデバイスを使用して)送ることができる。例示的な出力受信デバイスは、表示要素、プリンタ、ファクシミリデバイスなどを包含することができる。送信および/または表示の電子的形態は、電子メール、対話式テレビなどを包含することができる。特に興味深い一実施形態において、入力データのすべてまたは一部および/または出力データのすべてまたは一部(例えば、通常、少なくとも最終の報告)が典型的なブラウザとのアクセス、好ましくは機密アクセスのためにウェブサーバー上に維持される。データは、必要に応じて、アクセスする、または医療専門家に送ることができる。最終報告のすべてまたは一部を包含する入力および出力データを使用して、医療施設の機密データベース中に存在し得る患者のカルテを追加することができる。
【0130】
本明細書に記載の方法において使用するためのシステムは、一般に、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ(例えば、方法が全体として単一の場所で行われる場合)または少なくとも2つのネットワーク化されたコンピュータプロセッサ(例えば、データがユーザー(本明細書において「クライアント」とも称される)によって入力され、解析のためにリモートサイトの第2のコンピュータプロセッサに送信される場合、このとき、第1および第2のコンピュータプロセッサは、ネットワークによって、例えば、イントラネットまたはインターネットを介して接続されている)を包含する。システムはまた、入力のためのユーザーコンポーネント(一または複数);ならびにデータ、作成された報告、および手作業による介入の検証のためのレビュアーコンポーネント(一または複数)を包含することができる。システムのさらなるコンポーネントは、サーバーコンポーネント(一または複数);およびデータを保存するためのデータベース(一または複数)(例えば、報告要素、例えば、解釈的報告要素のデータベース、またはユーザーによるデータ入力およびデータ出力を包含することができるリレーショナルデータベース(RDB)のような)を包含することができる。コンピュータプロセッサは、パーソナルデスクトップコンピュータ(例えば、IBM、Dell、Macintoshなど)、携帯用コンピュータ、メインフレーム、ミニコンピュータ、または別のコンピュータデバイスにおいて典型的に見出されるプロセッサとすることができる。
【0131】
ネットワーク化されたクライアント/サーバーアーキテクチャは、必要に応じて選択することができ、例えば、伝統的な2層または3層クライアントサーバーモデルとすることができる。リレーショナルデータベース管理システム(RDMS)は、アプリケーションサーバーコンポーネントの一部または別個のコンポーネント(RDBマシン)のいずれかとして、データベースにインターフェースを提供する。
【0132】
一例において、このアーキテクチャは、データベース中心のクライアント/サーバーアーキテクチャとして提供され、このアーキテクチャにおいて、クライアントアプリケーションは、一般に、データベース(または、データベースサーバー)への要求を行い、必要に応じて様々な報告要素と、特に解釈的報告要素、特に解釈テキストおよび警告とともに報告を追加するアプリケーションサーバーからのサービスを要求する。サーバー(複数可)(例えば、アプリケーションサーバーマシンの一部または別個のRDB/リレーショナルデータベースマシンのいずれかとして)は、クライアントの要求に応じる。
【0133】
入力クライアントコンポーネントは、最大範囲の能力およびアプリケーションを実行するための特徴を提供する、完全な独立型のパーソナルコンピュータとすることができる。クライアントコンポーネントは、通常、任意の所望のオペレーティングシステムのもとで動作し、通信エレメント(例えば、モデムまたはネットワークに接続するための別のハードウェア)、1つまたは複数の入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、キーパッド、または情報またはコマンドを転送するために使用される別のデバイス)、記憶エレメント(例えば、ハードドライブまたは別のコンピュータで読取り可能な、コンピュータで書き込み可能な記憶媒体)、および表示エレメント(例えば、モニター、テレビ、LCD、LED、または情報をユーザーに伝達する別の表示デバイス)を包含する。ユーザーは、入力デバイスを介してコンピュータプロセッサに入力コマンドを入力する。一般に、ユーザーインターフェースは、ウェブブラウザアプリケーション用のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)である。
【0134】
サーバーコンポーネント(複数可)は、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、またはメインフレームとすることができ、データ管理、クライアント間の情報共有、ネットワーク管理運営およびセキュリティを提供する。アプリケーションおよび使用される任意のデータベースは、同じまたは異なるサーバー上にあってよい。
【0135】
メインフレームなど単一のマシン、マシンの集合体、または別の適当な構成における処理を含む、クライアントおよびサーバー(複数可)のための別のコンピュータの配置が想定される。一般に、クライアントおよびサーバーマシンは、一緒に作動して、本開示の処理を達成する。
【0136】
使用される場合、データベース(複数可)は、通常、データベースサーバーコンポーネントと接続されており、データを保持する任意のデバイスとすることができる。例えば、データベースは、コンピュータ(例えば、CDROM、内蔵ハードドライブ、テープドライブ)用の磁気記憶デバイスまたは光学記憶デバイスであってよい。データベースは、サーバーコンポーネントの遠隔(ネットワーク、モデムなどを介するアクセスによって)に、またはサーバーコンポーネントのローカルに位置することができる。
【0137】
システムおよび方法において使用される場合、データベースは、データ項目間の関係に従って構成およびアクセスされるリレーショナルデータベースとすることができる。リレーショナルデータベースは、一般に、複数のテーブル(実体)で構成される。テーブルの行は、レコード(別個の項目についての情報の集合)を表し、列は、フィールド(レコードの特定の属性)を表す。その最も単純な概念において、リレーショナルデータベースは、少なくとも1つの共通フィールドを介して互いに「関連付けられる」データエントリーの集合である。
【0138】
コンピュータおよびプリンタを備え付けたさらなるワークステションが、データを入力するための、および、いくつかの実施形態において、所望であれば、適切な報告を作成するための、サービスの時点で使用されてもよい。コンピュータ(複数可)は、アプリケーションを起動するためのショートカット(例えば、デスクトップ上の)を有することにより、必要に応じて、データエントリー、送信、解析、報告の受取などの開始を容易にすることができる。
【0139】
コンピュータで読取り可能な記憶媒体
本開示はまた、コンピュータ使用環境において実行されるときに、本明細書において記載されている通りに心臓死亡リスクの計算のすべてまたは一部を行うためのアルゴリズムの実行を提供するプログラムが保存されている、コンピュータで読取り可能な記憶媒体(例えば、CD−ROM、メモリーキー、フラッシュメモリーカード、ディスケットなど)を想定する。コンピュータで読取り可能な媒体が本明細書に記載の方法を行うための完全なプログラムが入っている場合、プログラムは、出力を収集、解析、および作成するためのプログラム使用説明書を包含し、一般に、本明細書に記載の通りユーザーと情報交換するため、解析情報とともにそのデータを処理するため、そのユーザーのための独自の印刷媒体または電子的媒体を作成するための、コンピュータで読取り可能なコードデバイスを包含する。
【0140】
記憶媒体が、本明細書に記載の方法の一部の実行を提供するプログラム(例えば、本方法のユーザー側の態様(例えば、データ入力、報告受取能力など))を提供する場合、プログラムは、遠隔地のコンピュータ使用環境への、ユーザーによるデータ入力の送信(例えば、インターネットを介して、イントラネットを介して、など)を提供する。データの処理または処理の完了を、遠隔地で行い、報告を作成する。報告および完全な報告を提供するための任意の必要とされた手作業による介入の完了の検証後、次いで、完全な報告が、電子文書または印刷文書(例えば、ファックスまたは郵送される紙の報告)としてユーザーに送り返される。本発明に従うプログラムの入っている記憶媒体は、適した基板またはそのような使用説明書を得ることができるウェブアドレス上に記録された使用説明書(例えば、プログラムインストール、使用に関するものなど)とともにパッケージ化することができる。コンピュータで読取り可能な記憶媒体はまた、対象方法のアッセイステップを行うための1つまたは複数の試薬(例えば、プライマー、プローブ、アレイ、または別のそのようなキットコンポーネント)と組み合わせて提供することもできる。
【実施例】
【0141】
以下の実施例は、本発明の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図せず、以下の実験がすべての実施された実験である、または実施された実験が以下の実験だけであることを表すこともまた意図しない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して精度を確実にするための努力がなされたが、いくらかの実験的誤差および偏差が計上されるべきである。別途指示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度である。
【0142】
材料および方法
BIN1 ELISAアッセイ。 市販のELISA試薬セット(BD Bioscience)を用いてBIN1 ELISAアッセイを設定した。簡単に言うと、96ウェルプレートに捕捉抗体マウス抗BIN1(1:1000、Sigma)を塗り広げ、4℃に終夜置いた。室温で1時間かけて希釈緩衝液にて洗浄およびブロッキングを行った後、標準物質と試料の両方を加え、回転させながら室温で1時間インキュベートし、BIN1を捕捉した。一連の洗浄の後、次いで一次ヤギ抗BIN1抗体(1:1000、Abeam)を加え、捕捉されたBIN1タンパク質を検出した。十分に洗浄した後、HRPコンジュゲートロバ抗ヤギIgG二次抗体(1:4000、Abeam)とともにインキュベートすることによって結合した一次ヤギ抗BIN1を検出した。最後に、洗浄した後、基質であるTMBを加えて1時間置き、停止緩衝液にて反応を止めた。マイクロプレート読み取り機(BioRad)を用いて各ウェルの405nm波形の吸光度をすぐに読み取った。
【0143】
BIN1標準物質は外来性BIN1を過剰に発現する293FT細胞の可溶化液から生成した。標準物質中のBIN1濃度は可溶化液中の総タンパク質濃度を示した。標準曲線(R
2>0.98)は0.04ng/μlから20ng/μlの標準範囲から生成した。血清試料の場合、全量100μlの血清試料を各ウェルに添加した。BIN1の量は標準曲線から生成し、ng/μlで表した。
【0144】
心拍出量は、心臓カテーテル検査室で行う侵襲性右心カテーテル処置中に測定した。バルーンが先端に付いた肺動脈カテーテルを静脈系内に挿入し、右心房、次いで右心室、次いで肺動脈へと進ませた。次いで、心拍出量は、温度希釈技術(近位ポートを介して冷生理食塩水を注入することと、拍出量を推定するために遠位ポートでの温度変化を記録することから構成される)またはフィック技術(推定された酸素消費量をヘマトクリットおよび動脈および混合静脈血酸素飽和度から得られた動脈−静脈の酸素勾配によって割ることから構成される)によって得られる。
【0145】
実施例1 健康な被検体および心不全被検体における血清BIN1タンパク質レベル
56人の心不全と診断された患者と28人の年齢が一致する健康個体(コントロール)において血清BIN1タンパク質レベルを測定した。UCSFの高度心不全および移植クリニックの心不全患者から血清試料を入手した。ELISAアッセイによってBIN1タンパク質レベルを測定し、
図1Aおよび1Bに示す。
図1Aは、BIN1タンパク質レベルとして測定したBIN1度数分布と特定のBIN1タンパク質レベルを示す心不全患者およびコントロールの割合を示す。
図1Aを見ると、およそ9μg/ml付近に集中した血清BIN1タンパク質レベルを持つコントロール個体と比較して、より低いレベルの血清BIN1を持つ心不全患者の割合が多かった。
図1Bは、コントロール個体と心不全患者の平均血清BIN1レベルを示す。
【0146】
図1Aおよび1B。心不全クリニックの血清BIN1はコントロールとは異なる。
図1A。UCSFの高度心不全および移植クリニックの心不全患者(黒色バー)と年齢が一致するコントロール(灰色バー)の血清BIN1タンパク質レベルのヒストグラム。心不全患者の度数分布は正常血清BIN1の左に推移しているのがわかる。
図1B。およそ3分の1の心不全患者であるコントロール患者(灰色)の平均血清BIN1タンパク質レベル(
***p<0.005)。
【0147】
データは、欠陥心臓のBIN1は心不全でない患者(コントロール群)のBIN1の半分未満であることを示す。
【0148】
実施例2 BIN1タンパク質レベルは性別、年齢、体重または肥満度指数(BMI)と相関しない
心不全患者において測定された血清BIN1タンパク質を、患者の年齢、性別、体重およびBMIに対してプロットした。年齢、性別、体重またはBMIと血清BIN1タンパク質レベルとの相関は明らかでなかった。
【0149】
図2Aおよび
図2B。血清BIN1は性別および年齢と相関しない。試験中の患者では、男性対女性患者(
図2A)および年齢(
図2B)でのBIN1タンパク質レベルの有意差はない。
【0150】
図3Aおよび3B。血清BIN1は体重およびBMIとは相関しない。試験した患者では、体重(ポンド)または肥満度指数(体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で除したもの)に対して評価した場合、BIN1タンパク質レベルの有意差はない。
【0151】
実施例3 BIN1タンパク質レベルは肺動脈楔入圧と相関しない
試験した心不全患者では、左心室駆出分画率(LVEF)は心エコーによって得、侵襲性心カテーテル法の血行動態を行って肺動脈楔入圧(PCWP)を測定した。BIN1タンパク質レベルとこれら2つのパラメータには有意差はない(
図4Aおよび4B)。PCWPは、血清マーカーBNPに反映される心臓内充填圧力の測定値であることを注記する。
【0152】
実施例4 BIN1タンパク質レベルは心拍出量および心臓指数と相関する
図5Aおよび5Bは、血清BIN1が侵襲的に測定した心拍出量および心臓指数と直接相関することを示す。血清BIN1が低ければ低いほど、心拍出量が小さくなる。血清BIN1は心拍出量を測定する肺動脈カテーテルよりも侵襲性がはるかに低いので、有用なマーカーである。
【0153】
図5Aおよび5B。血清BIN1は心拍出量と相関する。BIN1と(フィック方程式によって)侵襲的に測定された心拍出量(リットル/分)および心臓指数(推定体表面積m2により除した心拍出量)との間におよその直線関係がある。
【0154】
実施例5 BIN1タンパク質レベルはニューヨーク心臓協会(NYHA)機能的分類と相関する
UCSFの高度心不全および移植クリニックの心不全専門心臓専門医によってNYHA機能分類を決定した。NYHAスケールのクラスI、II、IIIおよびIVによって定義されるように患者機能状態によって割り振った後にBIN1をプロットした。NYHAスケールは、BIN1タンパク質レベルを測定するために血液試料を採取した時点の患者の臨床兆候から得た。クラスの増加は症状の悪化を示す。クラス4(またはIV)は安静時に症状を示す患者を包含する。これら患者での予後は極めて不良である。
【0155】
図6に示すように、血清BIN1タンパク質レベルとNYHA機能分類との間には強い相関がある。低いBIN1レベルはNYHAクラス4と相関するのに対して、相対的に高いBINレベルはNYHAクラス1または2と相関する。最初の列(最も左の列)はNYHAクラスIVであり、次の列はクラスIII、その次の列はクラスII、最後の列(最も右の列)はクラスIである。
【0156】
血清BIN1タンパク質レベルとの強い相関は、今では主観的な身体検査とは関係なく、血液試験により機能的分類が試験され、定量化されうることを示す。
【0157】
実施例6 BIN1タンパク質レベルは死亡率と相関している
BIN1タンパク質レベルを評価した心不全患者は5年間にわたって遡及研究にて追跡調査した。
図7Aおよび7Bは、BIN1タンパク質レベルが低い患者において死亡率が高いことを示す。逆に、BIN1が高い患者はその同じ期間生存する可能性があったことを示す。これらデータは、心不全患者の血清に基づく予測にBIN1タンパク質レベルを有益であることを示す。5以上のBIN1を有する患者は、その後5年のうちに移植または左室補助機器などの他の先進治療の必要がないであろう。BIN1が低い患者はこれら治療を必要とするであろう。5のBIN1は正常の50%であることを注記する(
図1Aおよび1B)。ゆえに、BIN1は全心不全集団を階層化しえる。
【0158】
図7A。血清BIN1は死亡率と相関する。血清採取後5年間追跡調査を行った患者では、平均BIN1タンパク質レベルは死亡者(左バー)と生存者(右バー)との間である。低いBIN1からその後5年間の死亡率の有意な増加が予測される。
【0159】
図7B。血清BIN1から死亡率が予測される。2.5以上の血清BIN1タンパク質レベルに対して2.5未満の血清BIN1タンパク質レベルを有する心不全患者のカプラン・マイヤー生存曲線。5年間にわたり、2.5未満のBIN1を有する患者は生存確率が有意に低い。
【0160】
実施例7 BIN1タンパク質レベルは疾患重症度と相関し、ARVC患者における将来の不整脈事象を予測する
ARVCは、心室筋の局所性またはびまん性の線維脂肪性置換に特徴がある疾患であり、結果として再発性心室性不整脈および右および/または左心室機能障害が生じうる(Basso C. et al., Lancet 2009; 373: 1289-300)。この疾患は家族性であり、デスモソーム機能には様々な原因遺伝子が関与することが示されている(Sen-Chowdhry S., et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2005; 16: 927-35)。疾患重症度および進行は、無症候性疾患から重度の心不全および難治性心室性不整脈への範囲となりうる(Hulot JS, et al., Circulation 2004; 1 10: 1879-84)。現在、ARVC患者での将来の不整脈負荷を予測すること、またはどの患者が進行性不整脈を発症するかを予測することは難しい。臨床進行リスクが高い個体を同定するための試験は非常に臨床上の利便性があるであろう。
【0161】
方法
患者。 試験は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の病院およびジョンズホプキンス大学によって承認された(Western IRB、臨床データはジョンズホプキンスプロトコールにより集めた)。すべての登録患者にはインフォームドコンセントを行った。ARVCと診断された31人の患者からおよそ7年間にわたって静脈血試料を採取した。7人の患者は異なる時点で2回採血した。血液試料を得、4℃で4000rpmで20分間遠心し、後のELISA分析のために血清を−80℃の冷凍庫に保存した。MRI、RV血管造影、右心カテーテル検査、心エコー、病理、ECG、平均加算ECG、ホルターモニター結果、家族歴や遺伝子型を含む各患者の対応する臨床データを、ARVC診断の確認のために記録した。
【0162】
アッセイ結果を非公開にした2つの異なる心臓病専門医によって、改訂版国際専門調査団基準(Marcus F.I., et al. Circulation 2010; 121 : 1533-41)に従って有用なデータによりARVCの診断が確認される場合に、患者を試験に含めた。除外基準には、偽BIN1測定が予測される、不十分なデータを含め、採血時の心室頻拍(VT)急性発作または複数の除細動事象の診断または存在を確認した。
【0163】
ARVCの可能性がある最初の31人の患者のうち、24人を最終分析に含めた。3人の患者はデータが不完全なために除外し、2人は診断基準に満たないために除外した。試験採血時に活動期VT発作および複数の除細動事象を有していた2人の患者も除外した。患者の特徴を表1に示す。
【0164】
コントロール群は、肥満、高血圧または心臓病の既往のない、48人の年齢、性別およびBMIが一致する健康コントロールからなる。これらコントロールは、健康体ボランティアの血漿試料および臨床データを含む大きなUCSFのデータベースから識別した。すべての登録者からこれら標本の将来の使用についての同意を得た。
【0165】
血漿BIN1の測定。 市販のELISA試薬セット(BD Bioscience, San Diego, CA)を用いて、高感度のELISAを設定し、ヒト血漿中のBIN1を定量化した。このアッセイ系はヒトBIN1に対して2つの抗体を使用する。マウスモノクローナル抗BIN1(コーティング緩衝液中1:500、Sigma, St. Louis, MO)を捕捉抗体に用い、一次ヤギ抗BIN1抗体(1%BSA中1 :500、Everest, Clifton, NJ)を検出抗体に用いた。BIN1標準物質は、外来性ヒトBIN1を過剰発現する293FT細胞の可溶化液から生成した。標準曲線(R
2>0.98)を作成し、各試料中のBIN1の相対量を決定した。各個体の決定されたBIN1の血漿濃度を正規化し、3人の25歳健康体成人男性からプールした血漿中のBIN1値の割合として表した。このアッセイは、アッセイ間での可変性が5%未満であり、高い再現性がある。次いで、血漿BIN1レベルをすべてのARVCおよびコントロールの試料から二通り測定した。連続して採血した患者では、はじめに採取した試料を横断的分析に用いた。
【0166】
ARVC患者における基礎特徴と将来の不整脈事象の測定。 すべての臨床データはBIN1アッセイ結果を知らせていない人によって入手された。基礎ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス、RVおよびLV機能、心室性不整脈歴を各患者について記録した。NYHAクラスはカルテ審査から得、RVおよびLV機能は心エコー検査により決定し、心室性不整脈歴はカルテ審査とICD(植え込み型除細動器)照合データから得た。定量的不整脈分析のために、心室性不整脈事象を以下のように分類した:心臓突然死または持続性心室頻拍(VT)の既往を一事象とし、持続性VTまたは心室細動(VF)のための適切なICD治療を(終了までに複数回の治療が必要であったとしても)一事象とし、持続性VTまたはVT発作のための入院を1.5事象と分類した。前向き分析では、基礎血漿採取から最終追跡調査日までのすべての不整脈事象を記録した。連続採血を行った患者についも、第二血液検査時のNYHAクラス、間欠性不整脈歴、LVおよびRV機能を記録した。
【0167】
統計。 すべての統計学的分析にプリズム5ソフトウェア(GraphPad)を用いた。データは平均±SEで表す。コントロール群とARVC群との間のBIN1を比較するために両側性非パラメトリックマンホイットニー検定を用いた。心不全患者と健康コントロールとのBIN1比較のために、両側性スチューデントt検定を、2群の有意差分散のためにウエルチ補正とともに用いた。BIN1と基礎連続変数との相関関係を試験するために、スピアマン分析を行った。重度の基礎疾患を有する患者を診断して将来の不整脈事象の予測のための試験をするために、非パラメトリック受診者動作曲線(ROC)分析を用い、BIN1値の感度と特異度を決定した。同一患者内の連続的BIN1レベルを比較するために、一対両側スチューデントt検定を行った。
【0168】
結果
患者の特徴および基礎BIN1レベル。 年齢、性別またはBMIに関して24人のARVC患者と48人のコントロールとの間に統計学的な有意差はなかった(表1)。
(表1)ARVC患者とコントロールの基礎特徴
【0169】
24人のARVC患者のうち、21人は診断のための少なくとも2つの主要基準を満たし、3人は1つの主要基準と2つの副基準を満たした。8人(33%)はARVCの家族歴が確認された。基礎採血時には、16人(70%)は少なくとも1回の心室性不整脈事象を持ち、7人(30%)はNYHAクラスII以上であり、4人(18%)はNYHAクラスIIIまたはIVであった。4人の患者(18%)は中程度〜重度のRV機能障害を持っていた。24人のうち23人の患者はICDを持っており、ICD装着後の平均追跡調査期間は最初の採血時まで4.4±4.3年であった。ICDを持つ患者のうち、13人(57%)は一次予防のために装着され、10人(43%)は二次予防のために装着されていた。
【0170】
ARVC集団またはコントロール集団において血漿BIN1は年齢、性別またはBMIと有意な相関はなかった。ARVC患者において、BIN1は腎機能と関連がなかった(表2)。平均値60±10、中央値27のコントロールに比べて、ARVC集団での平均血漿BIN1レベルは37±1、中央値17であった(p<0.05)(表1)。
【0171】
BIN1の横断分析。 ARVC集団内で、症候性心不全の有(NYHAクラスII−IV)または無(NYHAクラスI)に対して測定したBIN1を調査した。症候性心不全を有するARVC患者では、平均BIN1レベルが15+7(n=7)であったのに対して、臨床上心不全がないARVC患者では平均BIN1レベルが60±17(n=15)であった(p<0.05)。結果を
図8に示す。
【0172】
図8。血漿BIN1はHFを有するARVCでは低い。心不全を持たないARVC患者(60+17、NYHA I、n=15、左側のプロット)と比較して、症候性心不全を有するARVC患者では、血漿BIN1(平均±SE)が有意に低い(15+7、NYHA II−IV、N=7、右側のプロット)。P<0.05。(血漿BIN1は3人の25歳健康体男性からプールした血漿中のBIN1の割合として表す)。
【0173】
次いで、スピアマン分析を行い、基礎的臨床連続変数と血漿BIN1との相関を判定した(表2)。
(表2)ARVC患者およびコントロールにおける基礎特徴とのBIN1相関
【0174】
はじめの血漿測定の時点までは、血漿BIN1レベルは、心室性不整脈事象の累積回数(Rho −0.60、p<0.01)並びに心室性不整脈事象の割合(Rho −0.46、p<0.05)と逆の相関があった(表2)。複数の試料がある患者では、第一試料をこの分析に用いた。血漿BIN1はICD追跡調査の長さとは有意な相関がなかった。
【0175】
重度および軽度のARVCを有する患者を区別するための血漿BIN1の能力を評価するために、受診者動作曲線分析を行った(
図9)。重度のARVCはNYHAクラスIII/IV心不全または1より大きな心室性不整脈事象と定義した。33未満のカットオフ値では、血漿BIN1は、NYHAクラスIII/IV心不全状態または1より大きな心室性不整脈事象の予測に関して82%の感度と82%の特異度であった(ROC AUC 0.88±0.07)。ゆえに、低い血漿BIN1は重度ARVCの発症と相関している。
【0176】
図9。血漿BIN1は疾患重症度を予測する。受診者動作曲線分析は、低い血漿BIN1は、NYHAクラスIII/IVまたは1より大きな心室性不整脈と定義される重度ARVCを予測することを示す。33より小さい血漿BIN1(矢印で示す)は、NYHAクラスIII/IV心不全または1より大きな心室性不整脈事象を有する患者の予測に関して82%の感度と82%の特異度であった(ROC AUC 0.88、SE±0.07、P<0.01)。
【0177】
将来の不整脈事象の予測因子としての血漿BIN1の分析。 ARVCコホートでの初回採血後の平均追跡調査は3.3±1.7年であった。30未満のBIN1から将来の不整脈の確率が高いことが予測され(0.5/年より多い、
図10)、感度83%、特異度88%および確度85%(ROC AUC 0.89±0.09)であった。BIN1と基礎心不全との相関が観察され、心不全患者での不整脈のリスクがあがることが知られているので、基礎の心不全状態に照らして層別分析を行った。基礎時に軽度の心不全症状を有する患者(NYHAクラスIまたはII、n=20)では、30未満のBIN1は将来の不整脈事象の確率が予測され、感度83%、特異度80%および確度82%であった(ROC AUC 0.82±0.14)。基礎時に無症候性の患者(NYHAクラスI、n=17)では、30未満のBIN1は将来の不整脈事象の確率が高いことが予測され、感度82%、特異度67%および確度79%(ROC AUC 0.76±0.21)であった。基礎時にNYHAクラスII以上の心不全のみは高い将来の不整脈事象に関して3.61の未補正相対リスク(95%CI 1.25−10.37、p<0.05)であった。
【0178】
図10。血漿BIN1から将来の心不全不整脈が予測される。受診者動作曲線分析は、低い血漿BIN1から高い将来の心室性不整脈が予測されることを示す。30未満の血漿BIN1(矢印で示す)から将来の不整脈の確率が高いことが予測され(0.5/年より多い)、感度83%、特異度88%および確度85%であった(ROC AUC 0.89、SE±0.09、P<0.01)。
【0179】
連続採血を行ったARVC患者のBIN1。 連続採血試料は7人のARVC患者と3人のコントロールから得た(
図11)。概して、BIN1値は進行性ARVC患者において低減していた。患者1は新たなRV機能不全を発症し、VFの第一エピソードを有していた。患者2は増悪中のRV機能不全を発症し、複数のVF事象を有していた。患者3は高い持続性不整脈負荷(3.8事象/年)を有し、新たなRV機能不全を発症した。初回採血の時点で、患者4はARVCの基準を満たさなかったが、追跡調査の間、患者は、ホルターモニター上の、ECGリードV1−V3では新たなT波逆転を、V1ではイプシロン波を、高い非持続性のVT負荷による動悸を発症した。患者4は慢性のARVCのためにICDを装着していたが、持続性VTまたはVF、心不全、または心室機能不全は持っていなかった。患者5は、LVの機能が70%から49%へ低下しており、軽度から中程度のRV機能不全を進行していた。患者6は、基礎時に軽度のRV機能不全を有していたが、中程度のRV機能不全と5回の異なる心室性不整脈事象を発症した。患者7は、追跡期間中に軽度のRV機能不全を発症し、高い心室性不整脈確率を有していた(2.1事象/年)。まとめると、臨床的に進行していた患者はその血漿BIN1レベルの低減を示した(63%の低減、p<0.05)。それに対して、3人の健康体コントロールでは(
図11)、2年間にわたってBIN1レベルの有意な変化はなかった。
【0180】
図11。血漿BIN1はARVC進行により低減する。コントロール(○、n=3)およびARVC患者(□、n=7)における連続血漿BIN1値を示す。血漿BIN1は健康体コントロールでは同程度であったのに対して(65±20から72±28の平均+SE、NS)、疾患進行中のARVC患者では有意な低減(63%の低減)が見られた(80±32から30±17、p<0.05)。ARVC患者のBIN1値は以下の通りである(第一矢印、第二矢印):患者1(237、130)、患者2(145、130)、患者3(74、35)、患者4(52、<5)、患者5(33、16)、患者6(10、8)、患者7(8、9)。(血漿BIN1は、3人の25歳健康男性からプールされた血漿におけるBIN1の割合として表す)。