特許第5890853号(P5890853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890853
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160308BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   B60C11/03 100C
   B60C5/00 H
   B60C11/03 B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-26859(P2014-26859)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-151023(P2015-151023A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】永原 直哉
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−151236(JP,A)
【文献】 特開2013−112061(JP,A)
【文献】 特開2010−228467(JP,A)
【文献】 特開2003−146018(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/068225(WO,A1)
【文献】 特開2009−056822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、それらの間を複数の陸部に区分するようにタイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝と、前記主溝と交わる向きにのびる複数本の横溝とを有し、
前記主溝は、最も内側トレッド端側に配された内側ショルダー主溝と、最も外側トレッド端側に配された外側ショルダー主溝と、前記内側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間に配された内側センター主溝と、前記外側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間に配された外側センター主溝とを含み、
前記横溝は、前記内側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのびる複数本の内側ショルダー横溝と、前記外側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのびる複数本の外側ショルダー横溝とを含み、
前記外側ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内端が前記外側ショルダー主溝と前記外側センター主溝との間に位置する第1外側ショルダー横溝と、タイヤ軸方向の内端が前記外側ショルダー主溝と前記外側トレッド端との間に位置する第2外側ショルダー横溝とを含んでおり、
前記内側ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内端が前記内側ショルダー主溝と前記内側センター主溝との間に位置する第1内側ショルダー横溝からなり、
前記第1内側ショルダー横溝の本数は、前記第1外側ショルダー横溝の本数よりも大であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1内側ショルダー横溝の本数は、前記第1外側ショルダー横溝の本数の2倍である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1外側ショルダー溝と、前記第2外側ショルダー溝とは、タイヤ周方向に交互に設けられている請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1外側ショルダー溝と、前記第2外側ショルダー溝とは、平行にのびている請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記主溝のうち、前記外側ショルダー主溝の溝幅が最も小さい請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記内側センター主溝と前記外側センター主溝との間を連通する複数本のセンター横溝が設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記センター横溝の溝深さは、前記内側センター主溝の溝深さの50%以下である請求項6記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記センター横溝の本数は、前記第1外側ショルダー横溝の本数と同じである請求項6又は7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第1内側ショルダー横溝の間に、前記内側センター主溝から、タイヤ軸方向外側にのびかつ前記内側ショルダー主溝に達することなく終端する内側ミドルラグ溝が設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第1外側ショルダー横溝の間に、前記外側センター主溝から、タイヤ軸方向外側にのびかつ前記外側ショルダー主溝に達することなく終端する外側ミドルラグ溝が設けられている請求項1乃至9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な操縦安定性を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車(以下、単に「車両」ということがある。)への装着の向きが指定された空気入りタイヤが、下記特許文献1乃至2で提案されている。
【0003】
特許文献1及び2は、トレッド部に設けられた複数本の縦溝の溝幅が相互に関連付けられた空気入りタイヤを提案している。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2は、内側トレッド端側のショルダー横溝の本数と、外側トレッド端側のショルダー横溝の本数との関係についての配慮が欠けており、操縦安定性についてはさらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−218650号公報
【特許文献2】特開2013−151236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、良好な操縦安定性を有する空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、それらの間を複数の陸部に区分するようにタイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝と、前記主溝と交わる向きにのびる複数本の横溝とを有し、前記主溝は、最も内側トレッド端側に配された内側ショルダー主溝と、最も外側トレッド端側に配された外側ショルダー主溝と、前記内側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間に配された内側センター主溝と、前記外側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間に配された外側センター主溝とを含み、前記横溝は、前記内側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのびる複数本の内側ショルダー横溝と、前記外側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのびる複数本の外側ショルダー横溝とを含み、前記外側ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内端が前記外側ショルダー主溝と前記外側センター主溝との間に位置する第1外側ショルダー横溝と、タイヤ軸方向の内端が前記外側ショルダー主溝と前記外側トレッド端との間に位置する第2外側ショルダー横溝とを含んでおり、前記内側ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内端が前記内側ショルダー主溝と前記内側センター主溝との間に位置する第1内側ショルダー横溝からなり、前記第1内側ショルダー横溝の本数は、前記第1外側ショルダー横溝の本数よりも大であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1内側ショルダー横溝の本数は、前記第1外側ショルダー横溝の本数の2倍であるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1外側ショルダー溝と、前記第2外側ショルダー溝とは、タイヤ周方向に交互に設けられても良い。
【0010】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1外側ショルダー溝と、前記第2外側ショルダー溝とは、平行にのびることが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記主溝のうち、前記外側ショルダー主溝の溝幅が最も小さいことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記内側センター主溝と前記外側センター主溝との間を連通する複数本のセンター横溝が設けられているのが望ましい。
【0013】

本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記センター横溝の溝深さは、前記内側センター主溝の溝深さの50%以下であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記センター横溝の本数は、前記第1外側ショルダー横溝の本数と同じであるのが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1内側ショルダー横溝の間に、前記内側センター主溝から、タイヤ軸方向外側にのびかつ前記内側ショルダー主溝に達することなく終端する内側ミドルラグ溝が設けられているのが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1外側ショルダー横溝の間に、前記外側センター主溝から、タイヤ軸方向外側にのびかつ前記外側ショルダー主溝に達することなく終端する外側ミドルラグ溝が設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部は、排水性能を損ねることなく、車両外側に大きなパターン剛性を提供する。従って、本発明の空気入りタイヤは、旋回走行時、トレッド部の変形を小さくし、大きなコーナリングフォースを発生させ、ひいては、良好な操縦安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図2】本発明の一実施形態の空気入りタイヤの断面図であり、図1のA−A線の位置に相当している。
図3図1の外側トレッド端側の部分拡大図である。
図4図1の内側トレッド端側の部分拡大図である。
図5】比較例の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図6】実施例2の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部2の展開図を示し、図2は、空気入りタイヤの断面図で、図1のA−A線の位置に相当している。
【0020】
図1及び図2に示される本実施形態の空気入りタイヤは、車両への装着の向きが指定された乗用車用のラジアルタイヤとして実施されている。車両への装着の向きは、例えば、空気入りタイヤ1のサイドウォール部(図示省略)などに文字又は記号等を用いて表示される。
【0021】
トレッド部2は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Teiと、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Teoとで区画されている。内側トレッド端Teiと外側トレッド端Teoとの間には、複数の陸部が区分されるようにタイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝が設けられている。
【0022】
本実施形態の主溝は、最も内側トレッド端側Teiに配された内側ショルダー主溝3と、最も外側トレッド端Teo側に配された外側ショルダー主溝4と、内側ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間に配された内側センター主溝5と、外側ショルダー主溝4とタイヤ赤道Cとの間に配された外側センター主溝6とを含んでいる。
【0023】
各主溝3乃至6は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。これにより、各主溝3乃至6は、路面の水をタイヤ後方へと効率的に排出することができる。ただし、少なくとも1本の主溝は、ジグザグ状に形成されても良い。
【0024】
好ましい態様では、主溝の中で、外側ショルダー主溝4が最も小さい溝幅GW2を有している。これは、トレッド部2の車両外側の陸部比率を高め、ひいては、操縦安定性を向上させるのに役立つ。さらに、最も車両外側に位置する外側ショルダー主溝4の溝幅GW2が最も小さく形成されることにより、走行時のタイヤノイズが、車両外部へ漏れるのを極力抑制することができる。
【0025】
一方、主溝の中で、タイヤ赤道Cの両側にある内側センター主溝5の溝幅GW3又は外側センター主溝の溝幅GW4が最も大きいのが望ましい。これにより、トレッド部2のタイヤ赤道C付近の排水性能が向上する。本実施形態のトレッド部2は、主溝の溝幅が、以下のように構成されているものが示されている。
GW2 < GW1 < GW4 = GW3
【0026】
主溝3乃至6は、良好な排水性能を発揮するために、ある程度の溝幅と溝深さとを有する。好ましい排水性能を得るために、主溝3乃至6は、例えば、トレッド接地幅TWの3%以上、より好ましくは5%以上の溝幅を有する。一方、トレッド部の陸部の比率を維持して良好な操縦安定性を得るために、主溝3乃至6の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの10%以下、より好ましくは8%以下が望ましい。同様に、主溝3乃至6は、例えば、6mm以上、より好ましくは7mm以上の溝深さを有する。
【0027】
ここで、トレッド接地幅TWは、正規状態とされたタイヤの内側トレッド端Tei及び外側トレッド端Teoの間のタイヤ軸方向の距離である。「正規状態」は、タイヤ1が正規リムに装着されかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。特に明記されていない場合、タイヤの各種の寸法は、この正規状態での値が示されている。
【0028】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0029】

「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。ただし、タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、一律に180kPaとされる。
【0030】
「トレッド端」は、正規状態のタイヤに正規荷重を負荷し、キャンバー角0°でトレッド部2を平面に押し当てたときのトレッド接地面のタイヤ軸方向の最外側位置である。
【0031】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。ただし、タイヤが乗用車用である場合、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0032】
上述の主溝3乃至6が設けられることにより、トレッド部2は、5つの陸部に区分されている。陸部は、内側センター主溝5と外側センター主溝6との間のセンター陸部7と、内側センター主溝5と内側ショルダー主溝3との間の内側ミドル陸部8と、外側センター主溝6と外側ショルダー主溝4との間の外側ミドル陸部9と、内側ショルダー主溝3のタイヤ軸方向外側の内側ショルダー陸部10と、外側ショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側の外側ショルダー陸部11とを含んでいる。本実施形態において、各陸部7乃至11は、ほぼ等しいタイヤ軸方向の幅を有し、例えば、各陸部7乃至11の幅の差は、5mm以内であるのが望ましい。
【0033】
トレッド部2には、さらに、主溝3乃至6と交わる向きにのびる複数本の横溝が設けられている。
【0034】
横溝は、内側トレッド端Teiからタイヤ軸方向内側にのびる複数本の内側ショルダー横溝13と、外側トレッド端Teoからタイヤ軸方向内側にのびる複数本の外側ショルダー横溝14とを含んでいる。これらのショルダー横溝13及び14は、トレッド部2と路面との間の水を両側のトレッド端Tei、Teoから排出して十分な排水性能を維持することができる。
【0035】
外側ショルダー横溝14は、第1外側ショルダー横溝14aと、第2外側ショルダー横溝14bとを含んでいる。
【0036】
第1外側ショルダー横溝14aは、そのタイヤ軸方向の内端16が、外側ショルダー主溝4と外側センター主溝6との間に位置している。従って、第1外側ショルダー横溝14aは、外側トレッド端Teoから外側ショルダー主溝4を横切って(外側ショルダー主溝4と交差して)タイヤ軸方向内側にのび、外側センター主溝6の手前で終端している。
【0037】
第2外側ショルダー横溝14bは、そのタイヤ軸方向の内端17が、外側ショルダー主溝4と外側トレッド端Teoとの間に位置している。従って、第2外側ショルダー横溝14bは、外側トレッド端Teoからタイヤ軸方向内側にのび、外側ショルダー主溝4を越えることなく、その手前で終端している。
【0038】
好ましい態様では、第1外側ショルダー横溝14aと第2外側ショルダー横溝14bとは、タイヤ周方向に交互に配置されている。これにより、外側ショルダー陸部11は、第1外側ショルダー横溝14a、14aで区分されたタイヤ周方向に比較的長い複数個の外側ショルダーブロック19に区分されている。
【0039】
一方、内側ショルダー横溝13は、第1内側ショルダー横溝13aからなる。第1内側ショルダー横溝13aは、そのタイヤ軸方向の内端18が、内側ショルダー主溝3と内側センター主溝5との間に位置する。従って、第1内側ショルダー横溝13aは、内側トレッド端Teiから内側ショルダー主溝を横切って(内側ショルダー主溝と交差して)タイヤ軸方向内側にのび、内側センター主溝5の手前で終端している。内側ショルダー横溝13には、タイヤ軸方向の内端が、内側ショルダー主溝3と内側トレッド端Teiとの間に位置しているようなショルダー横溝(第2外側ショルダー横溝14bに相当)は含まれていない。
【0040】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、第1内側ショルダー横溝13aの本数が、第1外側ショルダー横溝14aの本数よりも大とされている。本実施形態では、第1内側ショルダー横溝13aは、第1外側ショルダー横溝14aの2倍の数で設けられている。これにより、内側ショルダー陸部10は、外側ショルダーブロック19の約1/2のタイヤ周方向長さを持つ複数個の内側ショルダーブロック20に区分されている。
【0041】
本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部2は、排水性能を損ねることなく、外側トレッド端Teo側に大きなパターン剛性を提供しうる。従って、本実施形態の空気入りタイヤ1は、旋回走行時、接地中心が外側トレッド端Teo側に移行しても、トレッド部2の変形が抑えられる。これにより、大きなコーナリングフォースが発生し、良好な操縦安定性を発揮することができる。
【0042】
図3には、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部9の拡大図が示されている。図3に示されるように、第1外側ショルダー横溝14a及び第2外側ショルダー横溝14bは、それぞれ、タイヤ軸方向に対して角度α1及びα2で傾斜している。外側ショルダーブロック19の横剛性を十分に確保しつつ、ノイズ性能を高めるために、前記角度α1及びα2は、例えば、3〜30°、好ましくは5〜25°程度である。
【0043】
第1外側ショルダー横溝14aの外側ミドル陸部9上でのタイヤ軸方向の長さL1は、外側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の幅Wmoの100%未満とされる。外側ミドル陸部9上で十分な排水性能及び大きなパターン剛性を提供するために、第1外側ショルダー横溝14aの前記長さL1は、外側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の幅Wmoの40%〜60%の範囲で定められるのが望ましい。
【0044】
同様に、第2外側ショルダー横溝14bのタイヤ軸方向の長さL2は、外側ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の幅Wsoの100%未満とされる。外側トレッド端Teoを利用した十分な排水性能を確保しながら、外側トレッド端Teo側に大きなパターン剛性を提供するために、第2外側ショルダー横溝14bのタイヤ軸方向の長さL2は、外側ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の幅Wsoの40%〜60%の範囲で定められるのが望ましい。
【0045】
さらに好ましい態様として、図3に示されるように、外側ミドル陸部9に、複数本の外側ミドルラグ溝22が設けられている。
【0046】
各外側ミドルラグ溝22は、タイヤ周方向で隣り合う第1外側ショルダー横溝14aの間に各一つ設けられている。これにより、外側ミドル陸部9では、外側ミドルラグ溝22と、第1外側ショルダー横溝14aとが、タイヤ周方向に交互に配列されている。好ましい態様では、各外側ミドルラグ溝22は、第2外側ショルダー横溝14bをタイヤ軸方向内側に延長させた仮想線V1上に配される。このように、横溝の流れる方向が陸部間で連続するように揃えられることによって、さらに操縦安定性が向上され得る。
【0047】
各外側ミドルラグ溝22は、外側センター主溝6から、タイヤ軸方向外側にのびかつ外側ショルダー主溝4に達することなく終端している。これにより、外側ミドル陸部9は、タイヤ周方向に連続してのびるリブとして形成される。
【0048】
好ましい態様では、各外側ミドルラグ溝22は、外側ショルダー横溝14と同じ向きに傾斜している。さらに好ましい態様では、各外側ミドルラグ溝22のタイヤ軸方向に対する角度α3は、外側ショルダー横溝14の角度α1又はα2と同じ範囲に設定され得る。
【0049】
外側ミドル陸部9上で十分な排水性能及び大きなパターン剛性を提供するために、外側ミドルラグ溝22のタイヤ軸方向の長さL3は、外側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の幅Wsmの40%〜60%の範囲で定められるのが望ましい。本実施形態では、外側ミドルラグ溝22の長さL3と、第1外側ショルダー横溝14aの前記長さL1との和(L1+L3)は、外側ミドル陸部9の幅Wmoに等しくなるように定められている。
【0050】
図4には、内側ショルダー陸部10及び内側ミドル陸部8の拡大図が示されている。図4に示されるように、各第1内側ショルダー横溝13aは、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態の各第1内側ショルダー横溝13aは、外側ショルダー横溝14と同じ向きに傾斜している。
【0051】
各第1内側ショルダー横溝13aは、例えば、内側トレッド端Teiからその内端18まで、全体として、滑らかに湾曲する略円弧状にのびている。さらに、各第1内側ショルダー横溝13aは、内側ショルダー陸部10でのタイヤ軸方向に対する角度α4が、内側ミドル陸部8でのタイヤ軸方向に対する角度α5よりも小さく形成されている。これにより、内側ショルダーブロック20に高い横剛性が与えられる一方、内側ミドル陸部8は良好な排水性能を示すことができる。このような作用を効果的に発揮させるために、前記角度α4及びα5は、例えば、3〜30°、好ましくは5〜25°の範囲で定められる。
【0052】
第1内側ショルダー横溝13aの内側ミドル陸部8上でのタイヤ軸方向の長さL4は、内側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の幅Wmiの100%未満とされる。内側ミドル陸部8上で十分な排水性能及び大きなパターン剛性を提供するために、第1内側ショルダー横溝13aの前記長さL4は、内側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の幅Wmiの40%〜60%の範囲で定められるのが望ましい。特に好ましい態様では、第1内側ショルダー横溝13aの前記長さL4は、第1外側ショルダー横溝14aの前記長さL1よりも大きく定められる。このような空気入りタイヤ1は、より優れた排水性能と操縦安定性とを発揮することができる。
【0053】
第1内側ショルダー横溝13aは、内側ショルダー陸部10上において、溝幅が局部的に狭められたくびれ部24が設けられている。内側ショルダーブロック20に大きなタイヤ周方向のせん断力が作用した場合、くびれ部24は、タイヤ周方向に隣り合う内側ショルダーブロック20、20同士を接触させ、それらの変形を一定範囲に制限し、ひいては、内側ショルダーブロック20でのヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制するのに役立つ。このような作用を効果的に発揮させながら、排水性能を維持するために、くびれ部24の溝幅は、好ましくは2〜4mmの範囲で定められるのが望ましい。
【0054】
くびれ部24は、例えば、内側ショルダー陸部10の中でも、相対的に大きな接地圧が作用する部分に設けられるのが望ましい。本実施形態のくびれ部24は、内側ショルダー主溝3からタイヤ軸方向外側に、タイヤ軸方向の長さL5で設けられている。排水性能を維持しながら内側ショルダーブロック20の偏摩耗を抑制するために、くびれ部24の長さL5は、例えば、内側ショルダー陸部10のタイヤ軸方向の幅Wsiの5〜30%の範囲が望ましい。
【0055】
各内側ショルダーブロック20には、内側ショルダーサイプ26が設けられているのが望ましい。内側ショルダーサイプ26は、内側ショルダーブロック20のタイヤ周方向のほぼ中間位置に設けられている。好ましくは、内側ショルダーサイプ26の両端は、内側ショルダーブロック20のタイヤ軸方向の両側で開口している。本明細書において、「サイプ」は、溝幅が1.5mm以下とされており、それよりも大きい溝幅を有する「溝」とは区別される。このような内側ショルダーサイプ26は、内側ショルダーブロック20の剛性を緩和し、耐偏摩耗性能を向上させるのに役立つ。
【0056】
さらに好ましい態様として、図1及び図3に示されるように、内側ミドル陸部8には、複数本の内側ミドルラグ溝28が設けられている。
【0057】
内側ミドルラグ溝28は、第1内側ショルダー横溝13a、13aの間に各一つ設けられている。これにより、内側ミドル陸部8では、内側ミドルラグ溝28と、第1内側ショルダー横溝13aとが、タイヤ周方向に交互に配列されている。
【0058】
各内側ミドルラグ溝28は、内側センター主溝5から、タイヤ軸方向外側にのびかつ内側ショルダー主溝3に達することなく終端している。好ましい態様では、各内側ミドルラグ溝28は、外側ショルダー横溝14及び内側ショルダー横溝13と同じ向きに傾斜している。各内側ミドルラグ溝28のタイヤ軸方向に対する角度α5は、例えば、5〜30°の範囲で定められるが、好ましくは、外側ミドルラグ溝22の角度α3よりも大きく形成される。これにより、内側ミドル陸部8での排水性能が、さらに向上する。
【0059】
内側ミドル陸部8上で十分な排水性能及び大きなパターン剛性を提供するために、内側ミドルラグ溝28のタイヤ軸方向の長さL6は、外側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の幅Wsmの5%〜30%の範囲で定められるのが望ましい。本実施形態では、内側ミドルラグ溝28の長さL5と、第1内側ショルダー横溝13aの前記長さL4との和(L5+L4)は、内側ミドル陸部の幅Wmiに等しくなるように定められている。
【0060】
図1及び図2に示されるように、センター陸部7には、複数本のセンター横溝29が設けられている。
【0061】
各センター横溝29は、内側センター主溝5と外側センター主溝6との間を連通している。本実施形態において、センター横溝29の本数は、第1外側ショルダー横溝14aの本数と同じである。これにより、センター陸部7は、タイヤ周方向に比較的長い複数個のセンターブロック30に区分されている。
【0062】
本実施形態のセンター横溝29は、外側ショルダー横溝14及び内側ショルダー横溝13と同じ向きに傾斜している。好ましい実施形態では、センター横溝29のタイヤ軸方向に対する角度α7は、5〜30°であり、さらに好ましくは、第1外側ショルダー横溝14aの角度α2と等しく設定される。さらに好ましい態様では、図1に示されるように、センター横溝29は、第1外側ショルダー横溝14aをタイヤ軸方向内側に延長させた延長線V2上に設けられる。このように、横溝の流れる方向が陸部間で連続するように揃えられることによって、さらに操縦安定性が向上され得る。
【0063】
センター横溝29の溝幅は、第1外側ショルダー横溝14aの溝幅よりも小さいのが望ましい。これにより、センター陸部7に大きな周方向のせん断力が作用した場合、タイヤ周方向に隣り合うセンターブロック30、30は、互いに接触して支え合い、センターブロック30の変形量が一定範囲に抑制される。従って、本実施形態の空気入りタイヤ1は、優れた駆動乃至制動性能と、良好な耐偏摩耗性能を発揮することができる。このような作用を効果的に発現させるために、センター横溝29は、2〜5mmの溝幅を有しているのが望ましい。
【0064】
図2に示されるように、センター横溝29の溝深さは、外側ショルダー横溝14の溝深さよりも小さいのが望ましい。本実施形態では、各ショルダー横溝13、14は、いずれも主溝3乃至6と同じ溝深さを有する。一方、センター横溝29は、好ましくは、主溝3乃至6の深さの50%以下、さらに好ましくは30〜50%とされる。これにより、上述の作用が、さらに効果的に発揮される。
【0065】
本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部2は、センター陸部7、内側ミドル陸部8及び外側ミドル陸部9の幅がほぼ等しく形成されることに加え、上述のように外側ミドルラグ溝22、内側ミドルラグ溝28の長さが定められることによって、各陸部7乃至9の剛性が近似する。従って、直進走行時から旋回走行時に移行する際、タイヤ1の挙動が滑らかに変化し、優れた過渡特性を示す。
【0066】
以上本発明の実施形態が、詳細に説明されたが、本発明は、図示された実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0067】
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいたサイズ225/55R18の乗用車用ラジアルタイヤが試作され、各種の性能がテストされた。
【0068】
実施例1のタイヤは、上述した図1のトレッドパターンを有している。実施例2は、図6に示されるトレッドパターンを有している。実施例2は、図2に示されるように、センター横溝が、実施例1に比べて、タイヤ周方向に半ピッチずれて設けられている。比較例のタイヤは、実施例1の第2外側ショルダー横溝が、外側ショルダー主溝をタイヤ軸方向内側に越えてのびているものである。これにより、第1内側ショルダー横溝の本数は、第1外側ショルダー横溝の本数と等しく設定されている。テストの方法は、次の通りである。
【0069】
<操縦安定性テスト>
プロのテストドライバーが、テストタイヤが装着されたテスト車両を、テストコースで運転し、各タイヤのハンドル応答性、剛性感、グリップ等を含む操縦安定性を官能により評価した。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きいほど良好である。詳細な条件は次の通りである。
テスト車両:排気量2500ccの国産乗用車
内圧:230kPa
路面:ドライアスファルト路
【0070】
<車外騒音テスト>
上記テスト車両を使用し、JASO/C/606に規定する実車惰行試験に準拠して、直線状のアスファルト路面を通過速度60km/hで50mの距離を惰行走行させるとともに、コースの中間点において走行中心線から側方に7.5m、かつ路面から1.2mの位置に設置した定置マイクロフォンにより通過騒音の最大レベルdB(A)が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きいほど通過騒音が小さく良好であることを示している。
テストの結果等は表1に示される。
【0071】
【表1】
【0072】
テストの結果より、実施例のタイヤは、比較例に比べて有意に車外騒音性能と操縦安定性能とを向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0073】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 内側ショルダー主溝
4 外側ショルダー主溝
5 内側センター主溝
6 外側センター主溝
7 センター陸部
8 内側ミドル陸部
9 外側ミドル陸部
10 内側ショルダー陸部
11 外側ショルダー陸部
13 内側ショルダー横溝
13a 第1内側ショルダー横溝
14 外側ショルダー横溝
14a 第1外側ショルダー横溝
14b 第2外側ショルダー横溝
Tei 内側トレッド端
Teo 外側トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6