(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源の添加量が、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物100質量部に対し、2〜25質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、下記式(A):
LiFe
aMn
bM
cPO
4・・・(A)
(式中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0<a<0.5、0.5<b<1、及び0≦c≦0.2を満たし、かつ2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数を示す。)
で表されるオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物に、ポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素が担持されたものである。
【0012】
上記式(A)で表されるオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物は、少なくとも遷移金属であるマンガン(Mn)及び鉄(Fe)を含む。式(A)中、Mは、Mg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示し、好ましくはMg、又はZrである。aは、0<a<0.5であって、好ましくは0.1≦a≦0.3である。bは、0.5<b<1であって、好ましくは0.7≦b≦0.9である。cは、0≦c≦0.2を満たし、好ましくは0≦c≦0.1である。そして、これらa、b及びcは、2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数である。上記式(A)で表されるオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物としては、具体的には、例えばLiMn
0.8Fe
0.2PO
4、LiMn
0.75Fe
0.15Mg
0.1PO
4、LiMn
0.75Fe
0.19Zr
0.03PO
4等が挙げられ、なかでもLiMn
0.8Fe
0.2PO
4が好ましい。
【0013】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、上記オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物に、ポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素が担持されたものである。すなわち、炭素源に含まれるポリビニルピロリドンは炭化されて炭素となり、これがオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物に堅固に担持されてなる。かかるポリビニルピロリドンは水等の溶剤への溶解性が高く、適度な粘性を示すことから、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物の表面を効率的に包囲することができると考えられる。そのため、炭素源に含まれるポリビニルピロリドンが炭化することによって、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物表面の露出を有効に抑制しながら、かかる表面をポリビニルピロリドンに由来する炭素で均一に被覆することが可能となり、得られる電池における性能を有効に高めることができる有用な正極活物質を得ることができると推察される。
【0014】
ポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素の量は、リチウム二次電池用正極活物質中に、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは1.5〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜7質量%である。オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物に担持された炭素の量は、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により、求めることができる。
【0015】
上記リチウム二次電池用正極活物質は、ポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加した後、還元雰囲気下又は不活性雰囲気下で焼成することにより得られるものであるのが好ましい。
すなわち、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウム化合物、リン酸化合物、鉄化合物、及びマンガン化合物を水熱反応に付してオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物を得る工程(I)、
得られたオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物にポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加して複合混合物を得る工程(II)、及び
工程(II)で得られた複合混合物を還元雰囲気下又は不活性雰囲気下で焼成する工程(III)
を備える。
【0016】
工程(I)は、リチウム化合物、リン酸化合物、鉄化合物、及びマンガン化合物を水熱反応に付してオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物を得る工程である。
用い得るリチウム化合物としては、リチウム酸化物又はリチウム水酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酸化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、水酸化リチウムが好ましく、具体的には、例えば、LiOH・H
2O等の水和物を用いることができる。
【0017】
用い得るリン酸化合物としては、リン酸、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、リン酸が好ましく、例えば70〜90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
【0018】
用い得る鉄化合物としては、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、及びこれらの水和物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸鉄及びその水和物が好ましい。
【0019】
用い得るマンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、及びこれらの水和物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸マンガン及びその水和物が好ましい。
【0020】
これらマンガン化合物及び鉄化合物の使用モル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、好ましくは99:1〜51:49であり、より好ましくは95:5〜70:30であり、さらに好ましくは90:10〜75:25である。
【0021】
さらに、必要に応じて、マンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M)化合物を用いてもよい。金属(M)化合物におけるMは、Mg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdであり、上記式(A)中のMと同義である。かかる金属(M)化合物として、ハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩、及びこれらの水和物等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、MがMg、又はZrである金属(M)化合物を用いるのが好ましい。
これら金属(M)化合物を用いる場合、鉄化合物、マンガン化合物、及び金属(M)化合物の合計添加量は、リチウム化合物1モルに対し、好ましくは0.99〜1.01モルであり、より好ましくは0.995〜1.005モルである。
【0022】
これらリチウム化合物、リン酸化合物、鉄化合物及びマンガン化合物、さらに必要に応じて金属(M)化合物を混合し、水熱反応させてリン酸鉄マンガンリチウム化合物の一次粒子を得る方法としては、例えばJournal of Power Source 196‘(2011),p6498−6501)に記載の方法を用いることができる。
【0023】
具体的には、例えば、まずリチウム化合物、リン酸化合物、及び水を混合した後、鉄化合物及びマンガン化合物、並びに必要に応じて金属(M)化合物を添加してさらに混合して水分散液を調製する。この際、予めリチウム化合物、及び水を混合して得たスラリー水にリン酸化合物を添加してリン酸三リチウム水溶液を調製した後、鉄化合物及びマンガン化合物、並びに必要に応じて金属(M)化合物を添加して水分散液を調製するのが好ましい。
【0024】
予めリン酸三リチウム水溶液を調製する場合、リチウム化合物と水とを混合して得られるスラリー水は、水100質量部に対し、20〜50質量部のリチウム化合物を含有するのが好ましく、25〜45質量部のリチウム化合物を含有するのがより好ましい。次いで、得られたスラリー水からリン酸三リチウム水溶液を得るにあたり、リン酸化合物を用い、これを滴下しながら撹拌するのが好ましい。このときの撹拌速度は、好ましくは200〜700rpmであり、より好ましくは250〜600rpmである。また、スラリー水の撹拌時間は、好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは5〜15時間であり、スラリー水の温度は、好ましくは20〜90℃であり、より好ましくは20〜70℃である。また、リン酸化合物を混合した後のリン酸三リチウム水溶液に対し、窒素をパージするのが好ましく、溶存酸素濃度を0.5mg/L以下にするのが好ましい。かかるリン酸三リチウム水溶液に鉄化合物及びマンガン化合物、並びに必要に応じて金属(M)化合物を添加して水分散液を調製すればよい。
【0025】
マンガン化合物、鉄化合物、及び金属(M)化合物の添加順序は特に制限されない。また、これらの化合物を添加するとともに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。かかる酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム(Na
2SO
3)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na
2S
2O
4)、アンモニア水等を使用することができる。酸化防止剤の添加量は、過剰に添加されることでリン酸マンガン鉄リチウム化合物の生成が抑制されるのを防止する観点から、マンガン化合物、鉄化合物、及び金属(M)化合物合計1モルに対し、好ましくは0.01〜1モルであり、より好ましくは0.03〜0.5モルである。
【0026】
次いで、上記得られた水分散液を水熱反応に付す。水熱反応に付する際に用いる水の使用量は、マンガン化合物、鉄化合物、及び金属(M)化合物の溶解性、撹拌の容易性、及び合成の効率等の観点から、水分散液中におけるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは10〜30モルであり、より好ましくは12.5〜25モルである。
【0027】
水熱反応は、100℃以上であればよく、130〜250℃が好ましく、さらに140〜230℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜200℃で反応を行う場合この時の圧力は0.3〜1.5MPaとなり、140〜180℃で反応を行う場合の圧力は0.4〜1.0MPaとなる。水熱反応時間は10分〜3時間が好ましく、さらに10分〜1時間が好ましい。
その後、洗浄、ろ過、乾燥することによりリン酸鉄マンガンリチウム化合物を一次粒子として単離できる。なお、洗浄する際における水の使用量は、リン酸鉄マンガンリチウム化合物1質量部に対し、好ましくは5〜100質量部であり、より好ましくは5〜50質量部である。また、乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられるが、凍結乾燥が好ましい。
【0028】
工程(II)は、上記得られたオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物にポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加して複合混合物を得る工程である。かかる工程を経た複合混合物を用い、さらに後述する工程(III)を介することによって、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物に、ポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素を担持させることができる。
【0029】
用いる炭素源としては、ポリビニルピロリドンを単独で含むものであってもよく、さらにグルコースを併用し、ポリビニルピロリドン及びグルコースの双方を含むものであってもよく、ポリビニルピロリドンとグルコースとを含む炭素源を用いるのがより好ましい。具体的には、かかる炭素源中におけるポリビニルピロリドンとグルコースの質量比(ポリビニルピロリドン:グルコース)は、より効率的にオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物の表面に炭素を被覆させる観点から、炭素換算量で好ましくは100:0〜10:90であり、より好ましくは85:15〜15:85であり、さらに好ましくは75:25〜25:75である。
【0030】
また、炭素源の添加量は、効率的にオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物の表面に炭素を被覆させる観点から、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物100質量部に対し、好ましくは2〜25質量部であり、より好ましくは5〜20質量部であり、さらに好ましくは7〜18質量部である。
【0031】
得られたオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物にポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加することにより、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物、並びにポリビニルピロリドン或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む複合混合物が得られる。かかる複合混合物は、余分な水分を除去しつつ、続く工程(III)において、効率的にオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物の表面に均一かつ堅固に炭素を被覆させる観点から、温風乾燥に付すのが好ましく、具体的には、温度40〜120℃で1〜24時間の温風乾燥に付するのが好ましい。
【0032】
工程(III)は、工程(II)で得られた複合混合物を還元雰囲気下又は不活性雰囲気下で焼成する工程である。これにより、複合混合物中に存在するポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化させ、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物にかかる炭素を堅固に担持させてなるリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中で、好ましくは400℃以上、より好ましくは400〜800℃で好ましくは10分〜3時間、より好ましくは0.5〜1.5時間とするのがよい。
【0033】
リチウム二次電池用正極活物質は、本発明者らにより、特定の測定条件下でカールフィッシャー水分計を用いれば、炭素による活物質表面の被覆の程度を的確に推し量ることが可能であると判明した。かかる方法により、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の表面に効率的に炭素が被覆されてなることが確認できる。
【0034】
カールフィッシャー水分計を用いた測定方法は、具体的には、正極活物質0.5gを測定試料として用い、気温20℃、相対湿度50%の大気下に2時間暴露して吸湿させ、窒素流量250mL/分、温度250℃の条件で、測定開始から20分経過時までの水分量を測定する。次いで、これらの測定結果を元に、例えば
図1に示すような、縦軸を水分量、横軸を測定時間とするプロファイルを作製する。かかるプロファイルに基づいて読みだされる、測定開始から水分量の最大ピークαが出現するまでの時間Tが、炭素による活物質表面の被覆の程度を推し量る指標となる。かかる時間Tの値が小さいほど、表面におけるオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物の露出が効果的に低減され、ポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素が効率的に被覆されつつ、オリビン型リン酸マンガン鉄リチウム化合物に堅固に担持されたものであることを意味する。
【0035】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を適用できるリチウム二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0036】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
【0037】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0038】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4及びLiAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO
3CF
3、LiC(SO
3CF
3)
2及びLiN(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例1】
【0040】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
LiOH・H
2O 12.72gと水 90mLを混合してスラリー水を得た。次いで、得られたスラリー水を、25℃の温度に保持しながら2〜3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液 11.53gを35mL/分で滴下し、続いて12時間、速度400rpmで撹拌することによりリン酸三リチウム水溶液を得た。かかる水溶液は、リン1モルに対し、2.97モルのリチウムを含有していた。なお、得られた水溶液は、窒素パージし、溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした。
【0042】
次に、得られたリン酸三リチウムを含有する水溶液全量に対し、MnSO
4・5H
2O 19.29g、FeSO
4・7H
2O 4.17gを添加して、混合液を得た。このとき、添加したMnSO
4とFeSO
4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、80:20であった。
次いで、得られた混合液をオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は、0.8MPaであった。生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し、12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を−50℃で12時間凍結乾燥してリン酸マンガン鉄リチウム(LiFe
0.2Mn
0.8PO
4)を得た。
得られたリン酸マンガン鉄リチウムは、粉末X線回折測定により単一相であることを確認した。
【0043】
そして、炭素源としてポリビニルピロリドン単独で0.32g(リン酸マンガン鉄リチウム100質量部に対して約10.7質量部)を用い、これを得られたリン酸マンガン鉄リチウム3gに添加し、80℃で3時間温風乾燥に付して複合混合物を得た後、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
【0044】
[実施例2]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.24g、及びグルコース 0.14g(リン酸マンガン鉄リチウム100質量部に対して約12.7質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=75:25(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
【0045】
[実施例3]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.16g、及びグルコース 0.28g(リン酸マンガン鉄リチウム100質量部に対して約14.7質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=50:50(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
【0046】
[実施例4]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.08g、及びグルコース 0.28g(リン酸マンガン鉄リチウム100質量部に対して約12.0質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=25:75(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
【0047】
[実施例5]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.03g、及びグルコース 0.34g(リン酸マンガン鉄リチウム100質量部に対して約12.3質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=10:90(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
【0048】
[比較例1]
炭素源として、グルコース単独で 0.56g(リン酸マンガン鉄リチウム100質量部に対して約18.6質量部)を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
【0049】
[比較例2]
炭素源を一切用いなかった以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=0質量%)を得た。
【0050】
[試験例1:正極活物質の表面における炭素の被覆状態の評価]
カールフィッシャー水分計(MKC−610、京都電子工業(株)製)を用いて測定及び評価を行った。具体的には、実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた正極活物質0.5gを測定試料とし、気温20℃、相対湿度50%の大気下に2時間暴露して吸湿させ、窒素流量250mL/分、温度250℃の条件で、測定開始から20分経過時までの水分量を測定した。次いで、これら各々の測定結果を元に、
図1に示すようなプロファイルを作製し、測定開始から水分量の最大ピークαが出現するまでの時間Tを読みだし、比較例1を100とする相対値を求めた。
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[試験例2:充放電特性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた正極活物質を用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた正極活物質、ケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデンを重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF
6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
【0053】
製造したリチウム二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ−1001SD8、北斗電工製)にて0.1C放電容量(17mAh/g)と3C放電容量(510mAh/g)を測定し、0.1C放電容量に対する3C放電容量の割合({3C放電容量/0.1C放電容量}×100)(%)を求めた。
結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
上記結果によれば、実施例のリチウム二次電池用正極活物質は、比較例のリチウム二次電池用正極活物質に比して、時間Tの値が小さいことから、活物質の表面に効率的にポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素が被覆されなることがわかる上、得られるリチウム二次電池のレート特性も0.1C放電容量に対する3C放電容量の割合が高く、非常に良好であることがわかる。
(式中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0<a<0.5、0.5<b<1、及び0≦c≦0.2を満たし、かつ2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数を示す。)