(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890902
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】通気度、気孔度の調節によるガラス繊維系吸音シート
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
G10K11/16 D
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-522760(P2014-522760)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公表番号】特表2014-521995(P2014-521995A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】KR2012006425
(87)【国際公開番号】WO2013022323
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2014年1月22日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0080338
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】カン・ギルホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・スンムン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジュファン
【審査官】
大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−164690(JP,A)
【文献】
特表2008−534812(JP,A)
【文献】
特開2007−308583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維30重量%ないし60重量%、セルロース繊維40重量%ないし70重量%を含む、0.1mmないし0.7mmの厚さであり、かつ50g/m2ないし150g/m2の坪量を有す基材を含み、200Hzないし2000Hzの周波数範囲で平均吸音率測定値が0.4以上である吸音性能を有することを特徴とする吸音シート。
【請求項2】
前記基材は、有機合成繊維をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の吸音シート。
【請求項3】
前記基材は、有機合成繊維を2重量%ないし10重量%含むことを特徴とする請求項2に記載の吸音シート。
【請求項4】
前記有機合成繊維は、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−スチレン共重合体(ES)、シクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニル−アセテート(EVA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリイミド(PI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリウレタン(PU)から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の吸音シート。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール(PVA)は、4以上の炭素数を有するα−オレフィン単位およびC1ないし4アルキルビニルエーテル単位の群から選ばれた一つ以上の単位を含有することを特徴とする請求項4に記載の吸音シート。
【請求項6】
前記吸音シートは、200Pa圧力で100L/m2/sないし1000L/m2/sの通気度を有することを特徴とする請求項1に記載の吸音シート。
【請求項7】
前記吸音シートは、10μmないし50μmの平均気孔度(Pore size)を有することを特徴とする請求項1に記載の吸音シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維とセルロース繊維を主原料としたガラス繊維吸音シートに関するものであり、より詳しくは、基材の通気度と気孔度を調節することにより最大の吸音性能を有する吸音シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、通気性ポリマーのポリエステルやガラスウール等により様々な種類の吸音シートが生産されていた。また、特許文献1では、セルロースとポリエステル、PVAを主体に韓国の合成床材含浸用レイヤー紙を製造する技術は開示されているが、これら全ては材質自体が有する物性および通気性による吸音性能の優秀性に関するものであり、作業が煩わしいだけでなく吸音シートとしての機能が制限的だという問題があった。さらに、これを解決するために厚い吸音シートを使用すると空間が縮小され、且つ費用が多くかかるという不都合があり問題になっている。
【0003】
よって、物理的な要素の調節により優れた吸音性能を同時に表すことができる新たな技術が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10−2002−0044600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス繊維とセルロース繊維で構成された最大の吸音性能を有する吸音シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、基材を含み、200Hzないし2000Hzの周波数範囲で平均吸音率が0.4以上の吸音性能を有することを特徴とする吸音シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる吸音シートは、吸音性能に卓越した効果を提供する。また、本発明による吸音シートは、吸遮音資材およびシステム構成時に構成資材として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【
図2】実施例2の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【
図3】実施例3の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【
図4】比較例1の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【
図5】比較例2の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【
図6】比較例3の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【
図7】比較例4の条件で吸音シートを製作して管内法による垂直入射吸音率試験をした結果に対するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、併せて詳しく後述している実施例を参照すると明確になると考える。しかし、本発明は以下で開示する実施例に限定されるものではなく、相違する多様な形態で具現され、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘って同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0011】
本発明は、基材を含み、200Hzないし2000Hzの周波数範囲の平均吸音率測定値が0.4以上の吸音性能を有する吸音シートを提供する。吸音率は0と1の間にあるものであり、1に近いほど吸音能力が良く、通常の吸音材は0.3程度で、0.4以上であれば吸音能力が優れると言える。普通、幾つかの周波数を基準に吸音係数を作り、このときの吸音係数の平均を平均吸音率と言い、前記吸音シートは平均吸音率が0.4以上の値を表すため、吸音性能が相当優れることが分かる。
【0012】
前記基材は、ガラス繊維、セルロース繊維で構成できる。前記ガラス繊維は、SiO
2を主成分とするガラスを、溶融、加工して繊維状に加工したものであり、製法および用途に応じて長繊維と短繊維に分かれる。繊維の直径は細いほど引張強度および熱伝導率の面で優れる。保温・吸音用としては5μmないし20μmのもの、ろ過用としては40μmないし150μmのものが主に使われる。
【0013】
前記セルロース繊維は、通常、天然繊維と、これを原料として作った繊維であり、これらの代表的な例としては、木繊維、綿繊維、麻繊維、レイヨン等がある。セルロース繊維は、通常、紗織物または編物の形態をなす。また、セルロース繊維は他の合成繊維と一緒に混合されて使用したりもする。ポリエステルのような合成繊維と一緒に使用することができる。前記セルロース繊維に合成繊維を混合した、つまり、セルロース繊維を含有する繊維製品としては、これらの混紡糸、混紡織物、交織または交編物の形で存在する。
【0014】
前記基材は、ガラス繊維30重量%ないし60重量%、セルロース繊維40重量%ないし70重量%を含み得る。本発明において前記ガラス繊維とセルロース繊維は、前記のような構成を有することが吸音性能の面で好ましい。前記繊維構成範囲内ではない場合は、吸音性能が低下するおそれがある。
【0015】
具体的に、前記ガラス繊維含有含量が30重量%未満の場合は、不織布の引張強度、破れ強度等の物性が低下し得、前記ガラス繊維含有含量が60重量%を超える場合は、通気性が大きくなり過ぎて吸音性能が低下するおそれがある。また、前記セルロース繊維含有含量が前記範囲内を維持することにより、通気性が適切に維持されて優れた吸音性能を具現することができ、強度等が弱くならないという長所がある。
【0016】
また、前記の基材は有機合成繊維をさらに含み得る。このとき、有機合成繊維は2重量%ないし10重量%含むことができる。有機合成繊維とは、天然の繊維素やタンパク質を用いず、純化学的に石油、石炭、石灰石、塩素等の低分子を用いて自然に存在しない有機合成品を作り、これを細長い高分子化合物に紡糸して繊維化したものであり、前記範囲の有機合成繊維を含むことにより基材に柔軟性を付与することができ、折ったり曲げる等の基材に物理的な力を加えたときに基材の損傷を最小化することができる。
【0017】
前記有機合成繊維の種類は、制限があるのではないが、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−スチレン共重合体(ES)、シクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニル−アセテート(EVA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリイミド(PI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリウレタン(PU)から選ばれる1種以上であることを特徴とし得る。好ましくは、ガラス合成繊維をポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成することができる。
【0018】
また、基材が柔軟性を確保できるという面で、4以上の炭素数を有するα−オレフィン単位およびC1ないし4アルキルビニルエーテル単位の群から選ばれた一つ以上の単位を含有するポリビニルアルコール(PVA)を含有することがより好ましい。
【0019】
また、前記基材は50g/m
2ないし150g/m
2の坪量とすることが好ましい。本発明において、基材層の坪量が50g/m
2未満だと吸音性能が減少するおそれがあり、150g/m
2を超えると製造原価が過度に上昇するおそれがある。
【0020】
また、前記基材は0.1mmないし0.7mmの厚さを有することが好ましい。前記範囲を超えると、不織布の空隙率(Porosity)が少な過ぎたり大き過ぎて吸音性能が減少する恐れがある。
【0021】
また、前記吸音シートは、200Pa圧力で100L/m
2/sないし1000L/m
2/sの通気度を有することが好ましい。本発明において、200Pa圧力で、吸音シートの通気度が前記範囲から外れる場合は空隙率(Porosity)が少な過ぎたり大き過ぎて吸音性能が減少するおそれがある。
【0022】
また、前記吸音シートは、10μmないし50μmの平均気孔度(Pore size)を有することが好ましい。本発明において吸音シートの平均気孔度が前記範囲から外れる場合は、吸音性能が低下する恐れがある。
【0023】
以下、本発明を次の実施例によってより詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明の内容を例示するだけのものであり、発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0025】
本実験では、ガラス繊維とセルロース繊維を下記表1の条件にして不織布を製作した。
【0027】
前記の繊維を用いて製作した不織布を、厚さ、繊維構成比、不織布の坪量を調節して実施例および比較例を構成した。(表2、表3)
【0030】
<評価>通気度および気孔度の調節による吸音性能
【0032】
1.試験法
管内法(KS F 2814)
【0033】
2.測定装備(装備名:モデル名(製造社/製造国))
管内法:HM−02 I/O(Scein/S.KOREA)
【0034】
3.測定温/湿度:(19.4 誤差範囲0.3)℃/(59.4 誤差範囲1.9)% R.H
【0035】
前記管内法は、吸音物質の吸音率を測定する方法であって、一定の方向から平面波が垂直に入射する時の定在波を測定して求めるものである。また、試片を確保し難い時に試すことができる簡易方法であり、試片の大きさを正確に製作した後、反復試験して測定誤差を最小化した結果を得ることができる。
【0036】
<式>
NRC=(a250+a500+a1,000+a2,000)/4
【0038】
ここで、NRC(Noise Reduction Coefficient)とは、吸音材の吸音率は各周波数ごとに異なるためある材料の吸音性能を言う際にその材料を代表する吸音率の単一指数が必要になるが、このようにある材料の吸音率を一つの単一指数で表現したものをNRCと言う。
【0040】
1.管内法による垂直入射吸音率の試験結果(背後空間50mm)
【0041】
前記の試験方法によって、下記表4、5のような実験結果を得た。
【0044】
2.通気度および平均気孔度(Pore size)による平均吸音率
【0045】
下記[表6]および[表7]は、実施例および比較例の通気度ならびに平均気孔度(Pore size)による平均吸音率を測定した結果である。
【0046】
[表6]に表したように、不織布の繊維構成が実施例1ないし3のような場合は、不織布の通気度が200Paの圧力で100L/m
2/sないし1000L/m
2/sの範囲を有し、平均気孔度(Pore size)が10μmないし50μmの範囲を有し、200Hzないし2000Hzの周波数範囲で吸音シートの平均吸音率が0.4以上を有することを確認できた。
【0047】
また、[表7]に示したように、比較例1ないし4の場合、不織布の通気度が200Paの圧力下では測定できない程に通気度が高く、平均気孔度(Pore size)は50μmの範囲から外れ、平均吸音率が0.3未満であることが分かった。