(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
パラキシレン、メタキシレン、およびオルソキシレンのキシレンは、化学合成において広範で様々な用途が見出される重要な中間体である。パラキシレンは、酸化によってテレフタル酸を生成し、これは、合成紡織繊維および樹脂の製造に用いられる。メタキシレンは、可塑剤、アゾ染料、木材保存剤などの製造に用いられる。オルソキシレンは、無水フタル酸生産のためのフィードストックである。
【0004】
接触改質またはその他の供給源からのキシレンは、化学中間体としての需要と釣り合っておらず、さらに、分離または変換が困難であるエチルベンゼンを含んでいる。特に、パラキシレンは、需要が急速に伸びている主たる化学中間体であるが、典型的なC
8芳香族流の20〜25%を占めるに過ぎない。異性体比を需要に合わせる調整は、パラキシレン回収のための吸着などのキシレン異性体回収を異性体化と組み合わせて、追加量の所望される異性体を得ることによって行うことができる。異性体化は、所望されるキシレン異性体が少ないキシレン異性体の非平衡混合物を、平衡濃度に近づく混合物へ変換するものである。
【0005】
キシレン異性体化を行うための様々な触媒およびプロセスが開発されてきた。適切な技術を選択する際、パラキシレンの収率を最大化するために、出来る限り平衡に近い異性体化プロセスを行うことが望ましいが;しかし、これに伴って、副反応に起因する環状C
8ロスが大きくなってしまう。用いられる平衡への手法は、高い変換率での高いC
8環状物ロス(すなわち、平衡に非常に近づく)と、未変換C
8芳香族の再循環率が高いことに起因する高い光熱費との間の最適な妥協である。従って、触媒は、活性、選択性、および安定性の好都合なバランスに基づいて評価される。
【0006】
最近の数十年間に、モレキュラーシーブを含有する触媒が、キシレン異性体化用として良く知られるようになってきた。例えば、米国特許第3,856,872号には、ZSM−5、−12、または−21ゼオライトを含有する触媒によるキシレンの異性体化およびエチルベンゼンの変換が教示されている。米国特許第4,899,011号には、各々が強い水素化金属と会合している2つのゼオライトを用いたC
8芳香族の異性体化が教示されている。米国特許第6,142,941号;米国特許第7,297,830B2号;および米国特許第7,525,008B2号は、C
8芳香族の異性体化に有用であるゼオライト系触媒を開示しており、参照により本明細書に組み込まれる。これらの参考文献は、本発明の個々の要素を教示してはいるが、いずれの先行技術においても、本発明の触媒系の決定的な特徴を得るための要素の組み合わせを示唆するものはない。
【0007】
C
8芳香族の異性体化のための触媒は、通常、キシレン異性体に付随するエチルベンゼンを処理する方式によって分類される。エチルベンゼンは、キシレンへ容易に異性体化されないが、超精留または吸着によるキシレンからの分離が非常に高コストであることから、通常は、異性体化ユニット中にて変換される。広く用いられている手法は、キシレンを近平衡混合物へ異性体化しながら、エチルベンゼンを脱アルキル化して、主としてベンゼンを形成するものである。別の選択肢としての手法は、水素化−脱水素化機能を有する固体酸触媒の存在下にてエチルベンゼンを反応させて、ナフテンへの変換およびナフテンからの再変換を介してキシレン混合物を形成するものである。前者の手法では、一般的に、より高いエチルベンゼン変換率およびより効果的なキシレン異性体化が得られ、従って、異性体化/パラキシレン回収のループにおける再循環量が減少し、それに伴う処理コストが低減される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の主たる目的は、アルキル芳香族炭化水素の異性体化のための新規な触媒および方法を提供することである。より詳細には、本発明は、実質的濃度の非芳香族化合物を含有するC
8芳香族炭化水素を異性体化して高純度の生成物を得るための触媒系に関する。
【0009】
従って、本発明の広い実施形態は、濃度がより高い非平衡C
8芳香族および濃度がより低い非芳香族化合物を含む炭化水素フィード混合物の変換を、タングステン成分および少なくとも1つのゼオライトアルミノシリケートのうちの一方もしくは両方を含有する第一の触媒、ならびに少なくとも1つの白金族金属成分を元素ベースで0.01から0.2質量%含有する第二の触媒を含むデュアル触媒系とその混合物とを、300℃から550℃の温度、100kPaから5MPaの圧力、およびデュアル触媒系に対して0.5から50時間
−1の時間あたり液空間速度を含む炭化水素変換条件にて接触させることによって行うための方法に関し、フィード混合物中よりも低下されたエチルベンゼンの濃度、および低下された非芳香族化合物の濃度を有する変換生成物が得られる。
【0010】
1つの実施形態では、本発明は、濃度がより高い非平衡C
8芳香族および濃度がより低い非芳香族を含む炭化水素フィード混合物の変換を、少なくとも1つのゼオライト系アルミノシリケートを10から99質量%含有する第一の触媒、および少なくとも1つの白金族金属成分を元素ベースで0.01から0.2質量%含有する第二の触媒を含むデュアル触媒系とその混合物とを、300℃から550℃の温度、100kPaから5MPaの圧力、およびデュアル触媒系に対して0.5から50時間
−1の時間あたり液空間速度を含む炭化水素変換条件にて接触させることによって行うための方法を含み、フィード混合物中よりも増加された少なくとも1つのキシレン異性体の割合、低下されたエチルベンゼンの濃度、および低下された非芳香族の濃度を有する変換生成物が得られる。
【0011】
別の選択肢としての実施形態では、本発明は、濃度がより高い非平衡C
8芳香族および濃度がより低い非芳香族を含む炭化水素フィード混合物の変換を、タングステン成分を含有する第一の触媒、および少なくとも1つの白金族金属成分を元素ベースで0.01から0.2質量%含有する第二の触媒を含むデュアル触媒系とその混合物とを、300℃から550℃の温度、100kPaから5MPaの圧力、およびデュアル触媒系に対して0.5から50時間
−1の時間あたり液空間速度を含む炭化水素変換条件にて接触させることによって行うための方法を含み、フィード混合物中よりも低下されたエチルベンゼンの濃度、および低下された非芳香族の濃度を有する変換生成物が得られる。
【0012】
これらの、さらにはその他の目的および実施形態は、以下の本発明の詳細な記述から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
芳香族異性体化へのフィードストックは、いかなる組み合わせであってもよい一般式C
6H
(6−n)R
nの異性体化可能アルキル芳香族炭化水素を含み、式中、nは、2から5の整数であり、Rは、CH
3、C
2H
5、C
3H
7、またはC
4H
9であり、アルキル芳香族のより高価値の異性体を得るためのそのすべての異性体を含む。適切なアルキル芳香族炭化水素としては、例えば、本発明をそのように限定するものではないが、オルソキシレン、メタキシレン、パラキシレン、エチルベンゼン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
エチルベンゼンおよびキシレンを含有するC
8芳香族混合物の異性体化は、本発明の触媒系の適用が特に好ましい。一般的に、そのような混合物は、1から50質量%の範囲のエチルベンゼン含有量、0から35質量%の範囲のオルソキシレン含有量、20から95質量%の範囲のメタキシレン含有量、および0から30質量%の範囲のパラキシレン含有量を有する。前述のC
8芳香族は、非平衡混合物を含むこと、すなわち、少なくとも1つのC
8芳香族異性体が、異性体化条件における平衡濃度とは実質的に異なる濃度で存在することが好ましい。通常、非平衡混合物は、芳香族生産プロセスから得られた新しいC
8芳香族混合物から、パラ、オルソ、および/またはメタキシレンを除去することによって作製される。
【0015】
アルキル芳香族炭化水素は、様々な石油精製流からの適切な留分中に見出される状態で本発明において用いられてよく、例えば、個々の成分として、または接触分解もしくは改質炭化水素の選択的精留および蒸留によって得られる特定の沸点範囲の留分としてである。異性体化可能芳香族炭化水素は、濃縮される必要はなく;本発明のプロセスは、接触改質物などのアルキル芳香族含有流の異性体化を、これに続いての芳香族抽出有り、または無しにて行って、指定されたキシレン異性体の作製を、特にはパラキシレンの作製を可能とするものである。本発明のプロセスへのC8芳香族フィードは、最大30質量%までの量にて、非芳香族炭化水素、すなわち、ナフテンおよびパラフィンを含有してよい。本発明は、他のプロセスでは問題となる濃度の非芳香族を含有するフィードストックの処理に特に有用である。
【0016】
本発明のプロセスによると、アルキル芳香族炭化水素フィード混合物、好ましくは水素との混合物が、アルキル芳香族炭化水素異性体化ゾーン中にて、以降で述べる種類の2つ以上の触媒と接触される。接触は、固定床系、移動床系、流動床系、スラリー系、もしくは沸騰床系、またはバッチタイプ操作の触媒系を用いて行われてよい。高価値触媒の摩耗ロスの危険性およびより単純な操作という観点から、固定床系を用いることが好ましい。この系では、水素リッチガスおよびフィード混合物が、適切な加熱手段によって所望される反応温度まで予備加熱され、次に、2つ以上の触媒の1もしくは複数の固定床を含有する異性体化ゾーン中へ送られる。変換ゾーンは、各ゾーンへの入り口部において所望される異性体化温度が確実に維持されるための適切な手段をそれらの間に有する、1つ以上の別々の反応器であってよい。反応体は、上向流、下向流、または半径流様式のいずれかで触媒床と接触されてよく、触媒との接触時、反応体は、液相、混合液−気相、または気相であってよい。
【0017】
第一および第二の触媒は、別々の反応器に含有されてよく、同じ反応器中にて順に配列されてよく、物理的に混合されてよく、または単一触媒として複合体化されてもよい。好ましくは、触媒は、順に配列され、フィードは第一の触媒と接触され、非芳香族が変換されて中間体流が得られ、これが第二の触媒によって処理され、エチルベンゼンの変換および芳香族の異性体化が行われ、異性体化生成物が得られる。
【0018】
触媒を別々の反応器へ配置することにより、操作条件、特に温度および空間速度の独立した制御が可能となる。しかし、単一の反応器を用いることにより、配管、装置、およびその他の備品の節約が実現される。触媒を物理的に混合すると、触媒の相乗効果的反応が促進されるが、触媒成分の分離および回収がより困難となる。触媒の系は、所望に応じて、1つ以上の追加の段階にて繰り返されてよく、すなわち、フィードの接触からの反応体が、別の連続するこれら2つの触媒で処理される。
【0019】
従って、本発明の別の選択肢としての実施形態では、反応器は、第一および第二の触媒の物理的混合物を含有する。この実施形態では、粒子が機械的に混合されて、本発明の触媒系が提供される。粒子は、ムーリング(mulling)などの公知の技術を用いて十分に混合することで、この物理的混合物を密接にブレンドすることができる。第一および第二の粒子は、類似のサイズおよび形状であってよいが、好ましくは、それらを炭化水素処理に用いた後に再生または回復する目的での分離が容易であるように、異なるサイズおよび/または密度である。
【0020】
本発明のなお別の選択肢としての実施形態として、第一および第二の触媒の物理的混合物が、同一の触媒粒子内に含有される。この実施形態では、シーブが、一緒にもしくは別々に粉砕またはミリングされて、適切なサイズ、好ましくは100ミクロン未満の粒子が形成されてよく、この粒子は、適切なマトリックスで支持される。最適には、マトリックスは、上記で述べる無機酸化物から選択される。
【0021】
アルキル芳香族フィード混合物、好ましくは、C
8芳香族の非平衡混合物は、適切なアルキル芳香族変換条件にて触媒系と接触される。そのような条件は、100℃から600℃、もしくはそれを超える範囲、好ましくは、300℃から550℃の範囲の温度を含む。圧力は、一般的には、100kPaから5MPaの絶対圧力、好ましくは、3MPa未満である。炭化水素フィード混合物に対して0.5から50時間
−1、および好ましくは、触媒系を成す触媒の各々に対して0.5から25時間
−1の時間あたり液空間速度を提供するのに充分な体積にて、触媒系を成す両触媒が異性体化ゾーンに含有され、空間速度は、1から100時間
−1の範囲内である。炭化水素フィード混合物は、最適には、0.5:1から25:1の水素/炭化水素モル比にて水素と混合された状態で、反応される。窒素、アルゴン、および軽質炭化水素などのその他の不活性希釈剤が存在してよい。2つ以上の触媒が別々の床に含有される場合、全体として最適な結果を達成するために、上記の制約内での異なる操作条件が、各床内で用いられてよい。
【0022】
異性体化生成物を異性体化ゾーンの反応器の排出流から回収するために用いられる特定のスキームは、本発明にとって決定的なものであるとは見なされず、本技術分野にて公知の効果的ないかなる回収スキームが用いられてもよい。通常は、反応器排出流は、凝縮され、水素および軽質炭化水素成分が、フラッシュ分離によってそこから除去される。次に、凝縮液体生成物は、精留されて軽質および/または重質副生物が除去され、異性体化生成物が得られる。いくつかの例では、オルソキシレンなどの特定の生成物種が、選択的精留によって異性体化生成物から回収されてよい。C
8芳香族の異性体化からの生成物は、通常、パラキシレン異性体を選択的に回収するために処理され、所望に応じて結晶化されてよい。米国特許第3,201,491号による結晶性アルミノシリケートを用いた選択的吸着が好ましい。好ましい吸着回収プロセスの改善および代替法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,626,020号;米国特許第3,696,107号;米国特許第4,039,599号;米国特許第4,184,943号;米国特許第4,381,419号、および米国特許第4,402,832号に記載されている。
【0023】
エチルベンゼン/キシレン混合物の処理に関する分離/異性体化プロセスの組み合わせにおいて、新しいC
8芳香族フィードは、異性体化反応ゾーンからのC
8芳香族およびナフテンを含む異性体化生成物と組み合わされ、パラキシレン分離ゾーンへとフィードされ;C
8芳香族の非平衡混合物を含むパラキシレン除去流は、異性体化反応ゾーンへフィードされ、ここで、C
8芳香族異性体は、近平衡レベルまで異性体化されて、異性体化生成物が得られる。このプロセススキームにおいて、非回収C
8芳香族異性体は、それらがパラキシレンへの変換または副反応による喪失によって消滅するまで、再循環されることが好ましい。精留によることが好ましいオルソキシレン分離も、パラキシレン分離の前に、新しいC
8芳香族フィード、もしくは異性体化生成物、またはそれらの両方の組み合わせに対して行われてよい。
【0024】
第二の触媒は、エチルベンゼンの変換およびキシレンの異性体化に適する本技術分野にて公知の触媒であってよい。好ましい触媒は、米国特許第6,143,941号に開示されるように、ゼオライト系アルミノシリケート、白金族金属成分、およびアモルファスリン酸アルミニウムバインダーを含む球状触媒である。フィードストック中に含有される非芳香族を第一の触媒で変換することで、そのような触媒の使用が可能となる。
【0025】
第一の触媒の第二の触媒に対する質量比は、主として、フィードストック組成および所望される生成物分布に依存し、1:20から50:1の第一:第二の触媒質量比が好ましく、1:10から20:1が特に好ましい。本発明の触媒系は、シーブ系またはアモルファスのいずれであってもよいその他の触媒を含んでよい。
【0026】
第一および第二の触媒中に存在する場合、ゼオライトの相対比率は、10から99質量%の範囲であってよく、20から90質量%が好ましい。
バインダーは、表面積が25から500m
2/gであり、組成が均一であり、炭化水素変換プロセスで用いられる条件に対して比較的耐熱性を有する、多孔性吸着性支持体であるべきである。「組成が均一」の用語は、支持体が層形成しておらず、その組成に固有の種に濃度勾配がなく、組成が完全に均質であることを意味している。従って、支持体が2つ以上の耐熱性物質の混合物である場合、これらの物質の相対量は、支持体全体にわたって一定であり、均一である。本発明の範囲内には、炭化水素変換触媒に従来から用いられてきたキャリア物質を含むことを意図しており:(1)アルミナ、チタニア、ジルコニア、クロミア、酸化亜鉛、マグネシア、トリア、ボリア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、クロミア−アルミナ、アルミナ−ボリア、シリカ−ジルコニアなどの耐熱性無機酸化物;(2)セラミック、磁器、ボーキサイト;(3)合成によって作製されたもの、および天然のものを含み、酸処理されていても、またはされていなくてもよい、シリカまたはシリカゲル、炭化ケイ素、クレイ、およびシリケート、例えば、アタパルジャイトクレイ、珪藻土、フラー土、カオリン、キーゼルグールなど;(4)FAU、MEL、MFI、MOR、MTW(ゼオライト命名法に関するIUPAC委員会(IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature))などの、天然であるかまたは合成によって作製され、水素型または金属カチオンで交換された形態である結晶性ゼオライト系アルミノシリケート、(5)式MO−Al
2O
3を有し、式中、Mは価数2を持つ金属であるMgAl
2O
4、FeAl
2O
4、ZnAl
2O
4、CaAl
2O
4、およびその他の類似の化合物などのスピネル;ならびに(6)これらの群の1つ以上からの物質の組み合わせ、などである。
【0027】
本発明で用いられる好ましい耐熱性無機酸化物は、アルミナである。適切なアルミナ物質は、ガンマ−、イータ−、およびシータ−アルミナとして知られる結晶性アルミナであり、ガンマ−またはイータ−アルミナが最良の結果をもたらす。望ましくは、無機酸化物は、ガンマ−アルミナなどのアルミナである。そのようなガンマ−アルミナは、ベーマイトまたは擬ベーマイトアルミナ(以降まとめて「ベーマイトアルミナ」と称する場合がある)由来であってよい。ベーマイトアルミナは、ゼオライトと共に混合され、押出されてよい。酸化(または焼成)の過程にて、ベーマイトアルミナは、ガンマ‐アルミナに変換され得る。出発物質として用いられる1つの所望されるベーマイトアルミナは、UOP社,デスプレーンズ,イリノイ州、から販売されているVERSAL−251である。別のベーマイトアルミナとしては、サソルノースアメリカ(Sasol North America),ヒューストン,テキサス州、によってCATAPAL Cの商品名で販売されているものであってよい。一般的には、アルミナ結合スフェアの作製は、モレキュラーシーブ、アルミナゾル、およびゲル化剤の混合物を、高い温度に維持された油浴中へ滴下することを含む。このプロセスで用いられてよいゲル化剤の例としては、ヘキサメチレンテトラミン、ウレア、およびこれらの混合物が挙げられる。ゲル化剤は、高い温度にてアンモニアを放出することができ、これが、ヒドロゾルスフェアをヒドロゲルスフェアへ固化または変換する。次に、このスフェアは、油浴から引き抜かれ、通常は、さらにその物理的特性を改善するために、油およびアンモニア溶液中での特定の熟成処理が施され得る。代表的な油滴法は、米国特許第2,620,314号に開示されている。
【0028】
別の選択肢としてのバインダーは、アモルファスシリカの形態である。好ましいアモルファスシリカは、湿式水和シリカとして分類される合成白色アモルファスシリカ(二酸化ケイ素)粉末である。このタイプのシリカは、水溶液中での化学反応によって作製され、その溶液から超微細球状粒子として析出される。このシリカのBET表面積は、120から160m
2/gの範囲内であることが好ましい。硫酸塩の低含有量が所望され、好ましくは0.3重量%未満である。このアモルファスシリカバインダーは、非酸性であることが特に好ましく、例えば、5%の水懸濁液のpHは、中性または塩基性(pH7またはそれ以上)である。
【0029】
コンポジットの好ましい形状は、公知の油滴法によって連続的に製造されるスフェアである。アルミナ結合スフェアの作製は、一般的に、モレキュラーシーブ、アルミナゾル、およびゲル化剤の混合物を、高い温度に維持された油浴中へ滴下することを含む。別の選択肢として、シリカヒドロゾルのゲル化が、油滴法を用いて行われてもよい。この混合物をゲル化する1つの方法は、ゲル化剤をこの混合物と組み合わせ、次に、得られた組み合わされた混合物を、球形状粒子の形成を伴うゲル化が起こるように高い温度に加熱された油浴または塔へ分散することを含む。このプロセスで用いられてよいゲル化剤は、ヘキサメチレンテトラミン、ウレア、またはこれらの混合物である。ゲル化剤は、高い温度にてアンモニアを放出し、これが、ヒドロゾルスフェアをヒドロゲルスフェアへ固化または変換する。次に、このスフェアは、油浴から連続的に引き抜かれ、通常は、さらにその物理的特性を改善するために、油およびアンモニア性溶液中での特定の熟成処理が施される。
【0030】
触媒コンポジットの別の選択肢としての形状は、押出し物である。公知の押出し法はまず、金属成分添加の前または後に、非ゼオライト系モレキュラーシーブをバインダーおよび適切なペプタイザーと混合して、直接焼成に耐えるための許容される完全性を有する押出し物の形成を可能とする適正な水分含有量を持つ均質なドウまたは濃厚ペーストを形成することを含む。押出し性は、ドウの水分含有量の分析から決定され、30から50重量%の範囲内の水分含有量が好ましい。次に、ドウは、複数の孔部が開けられた金型を通して押出され、本技術分野にて公知の技術に従ってスパゲッティ形状の押出し物が切断されて、粒子が形成される。様々な数多くの押出し物形状が可能であり、これらに限定されないが、円柱状、クローバーの葉状、ダンベル状、ならびに対称および非対称の多葉状(polylobates)が挙げられる。また、押出し物が、球形化(marumerization)または本技術分野にて公知のその他のいずれかの手段によって、スフェアなどの所望されるいずれかの形状にさらに成形されてよいことも、本発明の範囲内である。
【0031】
次に、得られたコンポジットは、好ましくは、洗浄され、50℃から200℃の比較的低温で乾燥され、450℃から700℃の温度にて、1から20時間にわたって焼成手順に掛けられる。
【0032】
触媒の各々は、酸活性を調整するために、スチーム処理が施されてよい。スチーム処理は、処理のいずれの段階で行われてもよいが、通常は、白金族金属が組み込まれる前に、ゼオライトおよびバインダーのコンポジットに対して行われる。スチーム処理の条件は、5から100体積%の水濃度、100kPaから2MPaの圧力、および600℃から1200℃の温度を含み;スチーム処理温度は、好ましくは、650℃から1000℃、より好ましくは、少なくとも750℃であり、所望に応じて775℃以上であってもよい。いくつかの場合では、800℃から850℃、またはそれを超える温度が用いられる場合もある。スチーム処理は、少なくとも1時間にわたって行われるべきであり、6から48時間が好ましい。別の選択肢として、またはスチーム処理に加えて、コンポジットは、硝酸アンモニウムの溶液、鉱酸、および/または水の1つ以上で洗浄されてよい。洗浄は、作製のいずれの段階で行われてもよく、2つ以上の洗浄段階が用いられてもよい。
【0033】
第一の触媒の好ましい成分はタングステンである。タングステン酸イオンは、例えば、通常は0.1から20質量%タングステン、好ましくは1から15質量%タングステンの濃度のメタタングステン酸アンモニウムでの処理によって、触媒コンポジット中に組み込まれる。焼成の際にタングステン酸イオンを形成する能力を有するメタタングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムなどの化合物が、代替源として用いられてよい。好ましくは、メタタングステン酸アンモニウムが、タングステン酸イオンを提供し、固体強酸触媒を形成するために用いられる。最終触媒のタングステン酸塩含有量は、一般的に、元素ベースで、0.5から30質量%の範囲内であり、好ましくは、1から25質量%である。タングステン酸塩コンポジットは、乾燥され、特に、タングステン処理(tungstanation)に続いて白金族金属の組み込みが行われることになっている場合は、次に、450℃から1000℃の温度で焼成される。
【0034】
白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびイリジウムのうちの1つ以上を含む白金族金属は、本発明の触媒コンポジットの各々の非常に好ましい成分である。好ましい白金族金属は、白金である。第一および第二の触媒の各々の相対的白金族金属含有量は、本発明の特徴である。白金族金属は、存在する場合、一般的に、元素ベースでの算出で、最終第一の触媒の0.01から0.5質量%、好ましくは、0.5から0.3質量%を成し;第二の触媒は、好ましくは、0.01から0.5質量%、好ましくは、0.2質量%未満、特には、0.02から0.08質量%の白金族金属を元素ベースにて含む。
【0035】
白金族金属成分は、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、オキシ硫化物などの化合物として、または元素金属として、または触媒コンポジットの1つ以上のその他の成分と組み合わせて、最終触媒コンポジット内に存在してよい。実質的にすべての白金族金属成分が還元状態で存在する場合に、最良の結果が得られるものと考えられる。白金族金属成分は、適切ないかなる方法で触媒コンポジット中へ組み込まれてもよい。触媒を作製する1つの方法は、白金族金属の水溶性、分解性化合物を用いて、焼成済みのシーブ/バインダーコンポジットへ含浸させることを含む。別の選択肢として、白金族金属化合物は、シーブ成分およびバインダーのコンポジット形成時に添加されてもよい。溶液の含浸に用いられてよく、シーブおよびバインダーと共押出しされてよく、またはその他の公知の方法によって添加されてもよい白金族金属の複合体としては、クロロ白金酸、クロロパラジウム酸、クロロ白金酸アンモニウム、ブロモ白金酸、三塩化白金、四塩化白金水和物、白金ジクロロカルボニルジクロリド、テトラミン塩化白金酸(tetramine platinic chloride)、ジニトロジアミノ白金、テトラニトロ白金酸(II)ナトリウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、水酸化ジアミンパラジウム(II)、塩化テトラミンパラジウム(II)などが挙げられる。好ましくは、白金族金属成分は、本技術分野にて公知のいずれかの方法によって、触媒のバインダー成分上に濃縮される。この好ましい金属分布を行う1つの方法は、シーブおよびバインダーを共押出しする前に、金属成分をバインダーとコンポジット形成することによる。
【0036】
本触媒コンポジットが、白金族金属成分の効果を改質することが知られているその他の金属成分を含有してよいことは、本発明の範囲内である。そのような金属改質剤としては、レニウム、スズ、ゲルマニウム、鉛、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラニウム、ジスプロシウム、タリウム、およびこれらの混合物が挙げられ得る。そのような金属改質剤の触媒効果量が、均質分布または層化分布を起こすための本技術分野にて公知のいかなる手段で触媒に組み込まれてもよい。
【0037】
本発明の触媒は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、またはこれらの混合物を含むハロゲン成分を含有してよく、塩素が好ましい。しかし、触媒は、他の触媒成分に付随するもの以外の追加のハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0038】
各触媒コンポジットは、100℃から320℃の温度にて、2から24時間、もしくはそれを超える時間にわたって乾燥され、通常は、空気雰囲気中、400℃から650℃の温度にて、0.1から10時間にわたって焼成される。所望される場合、空気雰囲気中にハロゲン、またはハロゲン含有化合物を含ませることによって、所望に応じて存在してよいハロゲン成分の調節が行われてよい。
【0039】
得られた焼成コンポジットは、最適には、実質的に水を含まない還元工程に掛けられて、指定された金属成分の均一で微細な間隔での分散が確実に行われる。この還元は、所望される場合、本発明のプロセス設備で行われてよい。実質的に純粋であり、乾燥された水素(すなわち、20体積ppm未満のH
2O)が、この工程において還元剤として用いられることが好ましい。還元剤は、0.5から10時間にわたる200℃から650℃の温度を含む、第VIII族金属成分の実質的にすべてを金属状態へ還元するのに効果的である条件にて、触媒と接触する。いくつかの場合では、得られる還元された触媒コンポジットはまた、有利には、本技術分野にて公知の方法によって予備硫化に掛けられて、元素ベースで算出される0.05から1.0質量%の硫黄が触媒コンポジット中に組み込まれてもよい。
【0040】
実施例
以下の実施例は、単に本発明の特定の具体的な実施形態を例証するために提示されるだけであって、請求項に示される本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。当業者であれば認識されるように、本発明の趣旨の範囲内にて、他の多くの変形が可能である。
【0041】
C
8芳香族混合物中の非芳香族の変換に関する第一の触媒のサンプルを作製し、パイロットプラント中にて比較試験を行った。
実施例I
アルミナとコンポジット形成されたMTWゼオライトの押出し粒子を含む触媒を、米国特許第7,525,008B2号に従って作製した。粒子を、クロロ白金酸の溶液で含浸し、乾燥し、酸化し、還元し、硫化して、0.05質量%の白金を含有する触媒を得た。この触媒を、触媒Aと称した。
【0042】
実施例II
米国特許第6,143,941号の教示事項を用いて触媒を作製した。実施例Iに従って作製した、ゼオライトおよびアモルファスリン酸アルミニウムバインダーを含む参考文献の油滴法球状触媒を、硫酸アンモニウムを用いて(支持体1グラムあたり、0.82グラムの硫酸アンモニウム+10グラムの脱イオン水)60℃にてイオン交換し;デカントした後、イオン交換を繰り返し、得られたスフェアを、支持体1グラムあたり10グラムの脱イオン水で4回洗浄した。スフェアを120℃にて1時間乾燥し、乾燥空気中、350℃および550℃にて2時間焼成した。0.7質量%の硫黄含有量を有するこのスフェアを、テトラミン塩化白金(tetraamine platinum chloride)で含浸して0.04質量%の白金含有量とし、3%のスチームを含む空気中、525℃にて2時間焼成し、水素中、425℃にて4時間還元した。得られた触媒を、触媒Bと称した。
【0043】
実施例III
米国特許第2,620,314号に従って球状アルミナ粒子を作製し、これに、NH
4OHを添加したpH9〜10のメタタングステン酸アンモニウムにより金属含浸を施して、10質量%のタングステンを含む固体強酸触媒を形成した。このコンポジットを乾燥し、乾燥空気中、350℃および550℃にて3時間焼成した。コンポジットを、クロロ白金酸および塩酸のpH9から10の水溶液で含浸し、350℃で乾燥し、50℃/時間にて550℃まで昇温し、窒素でパージし、水素中、565℃にて1時間還元し、これを触媒Cと称した。
【0044】
実施例IV
米国特許第7,297,830号に従って、1/16インチのガンマ−アルミナコア上にMTWゼオライトの活性層を含む粒子を作製し、10%のMTW(Si/Al
2比 40)の150ミクロンの層を得た。この粒子を、さらに、NH
4OHを添加してpHを10としたメタタングステン酸アンモニウムで含浸して、10質量%のタングステンを含む固体強酸触媒を形成し、これをスチーム処理し、乾燥空気中、350℃および550℃にて3時間焼成した。このコンポジットを、米国特許第7,297,830号の実施例IIIに従ってクロロ白金酸および塩酸のpH9から10の水溶液で含浸し、白金の90%以上が外側ゼオライト層中に濃縮された触媒を得た。このコンポジットを乾燥し、焼成し、続いて、米国特許第7,297,830号の実施例IIIに従ってクロロ白金酸および塩酸の水溶液で含浸し、白金の90%以上が外側ゼオライト層中に濃縮された、0.28質量%の白金を含む触媒を得た。この粒子を焼成し、還元して、触媒Dを得た。
【0045】
実施例V
これら4つの触媒A〜Dを、C
8芳香族中の非芳香族の変換について、質量%での以下の組成を有する非平衡C
8芳香族フィードを処理するパイロットプラントフロー反応器を用いて評価した。
【0047】
実施例VI
これら4つの触媒を、以下の条件で試験した:
時間あたり重量空間速度 12
水素/炭化水素モル比 4
385℃/395℃/405℃の各々にて1〜2時間
%での変換率は以下の通りであった: