特許第5890911号(P5890911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890911出力歯車と入力歯車の係合制御のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890911
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】出力歯車と入力歯車の係合制御のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/04 20060101AFI20160308BHJP
   F16H 59/40 20060101ALI20160308BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   F16H61/04
   F16H59/40
   F16H59/42
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-542838(P2014-542838)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公表番号】特表2014-533816(P2014-533816A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012073408
(87)【国際公開番号】WO2013076218
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】1120113.4
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ダレン・ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・サットン
(72)【発明者】
【氏名】ロブ・ジャーガー
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−090603(JP,A)
【文献】 特開2002−098215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/04
F16H 59/40
F16H 59/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクロメッシュを用いないドライブトレーンにおける出力歯車と入力歯車の係合の方法であって、前記入力歯車が、トランスミッションに結合した入力シャフトに結合し、前記出力歯車が、出力シャフトに結合する、該方法が、
(i)前記出力歯車の回転速度に対して前記入力歯車の回転速度を整合させるべく前記入力シャフトのためのターゲット入力速度を計算し;
(ii)オフセットを含むように、計算された前記ターゲット入力速度を修正し;
(iii)修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正し;及び
(iv)前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時に前記入力歯車及び前記出力歯車を係合させ、
前記トランスミッションにて歯車変更が為されて前記入力シャフトの入力速度が修正される、及び/又は前記トランスミッションへ供給されるトルクが変化されて前記入力シャフトの入力速度が修正される、方法。
【請求項2】
前記入力歯車が、第1入力歯車比を有する入力歯車列に設けられ、前記ターゲット入力速度が、前記出力歯車の前記回転速度に前記第1入力歯車比を掛けることにより計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップが、前記トランスミッションにて低速歯車を係合することにより、及び/又は前記トランスミッションへ供給されるトルクを減じることにより、前記入力速度を減じるステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップが、前記トランスミッションにて高速歯車を係合することにより、及び/又は前記トランスミッションへ供給されるトルクを増加することにより、前記入力速度を増加するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法であって、
前記ドライブトレーンが、ハイレンジの提供のための第1入力歯車列と、ローレンジの提供のための第2入力歯車列を備えるトランスファーケースである;及び前記方法が実施され、前記ハイレンジから前記ローレンジへ及び/又は前記ローレンジから前記ハイレンジへ変更する、方法。
【請求項6】
事前設定のオフセットの加算又は減算により、若しくは計算された前記ターゲット入力速度をターゲット速度修正子で乗算することにより、前記計算されたターゲット入力速度が修正される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記入力歯車及び出力歯車が係合に失敗する時に前記ドライブトレーン内の歯上への歯の係合を検出するステップ、また、オプションとして、前記入力及び出力歯車を係合させるステップを繰り返すステップを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シンクロメッシュを具備しないドライブトレーンにおける出力歯車と入力歯車の係合を制御する装置であって、前記入力歯車が、トランスミッションに結合した入力シャフトに結合し、前記出力歯車が、出力シャフトに結合する、該装置が、
前記出力歯車の回転速度に対して前記入力歯車の回転速度を整合させるべく前記入力シャフトのためのターゲット入力速度を計算し;
オフセットを含むように、計算された前記ターゲット入力速度を修正し;
修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正し;及び
前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時に前記入力歯車及び前記出力歯車を係合させるように構成された制御手段を備え、
該装置は、前記トランスミッションを制御して歯車変更して前記入力シャフトの入力速度を修正する、及び/又は前記入力シャフトの入力速度を修正するために前記トランスミッションへ供給されるトルクを変化させるように構成される、装置。
【請求項9】
前記制御手段が、
前記入力シャフトの入力速度及び前記出力シャフトの出力速度を決定するためのシャフト速度プロセッサー;
前記入力シャフトの前記ターゲット入力速度を計算するためのプロセッサー;
前記オフセットを含むように、前記計算されたターゲット入力速度を修正するために修正子;
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するための速度コントローラー;及び
前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時、歯車変更制御信号を生成して前記入力歯車及び出力歯車の係合を開始させる制御信号生成器を備える、請求項に記載の装置。
【請求項10】
記速度コントローラーが、前記トランスミッションを制御して低速歯車への変更により前記入力シャフトの入力速度を減じるように動作可能である、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記速度コントローラーが、前記トランスミッションへ供給されるトルクの減少を要求することにより前記入力シャフトの入力速度を減じるように動作可能である、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
記速度コントローラーが、前記トランスミッションを制御して高速歯車に変更して前記入力シャフトの入力速度を増加させるように動作可能である、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
記速度コントローラーが、前記入力シャフトの入力速度を増加させるべく、前記トランスミッションに供給されるトルクの増加を要求するように動作可能である、請求項乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ドライブトレーンが、ハイレンジの提供のための第1入力歯車列と、ローレンジの提供のための第2入力歯車列を備えるトランスファーケースである;及び前記制御ユニットが、前記ハイレンジから前記ローレンジへ及び/又は前記ローレンジから前記ハイレンジへ変更するように適合される、請求項乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記修正子が、前記計算されたターゲット入力速度に事前設定のオフセットを加算又は減算する、若しくは前記計算されたターゲット入力速度にターゲット速度修正子を乗算する、請求項乃至14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記入力歯車及び出力歯車が係合する際に歯上への歯の係合を検出するための検出器を備え、また、オプションとして、前記制御信号生成器が、歯上への歯の係合に際して前記歯車変更制御信号を繰り返し生成することができる、請求項乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法の使用に適合した、若しくは請求項乃至16のいずれか一項に記載の装置を有するトランスミッションシステム若しくは車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力歯車と出力歯車の係合を制御するための方法及び装置に関する。入力歯車及び出力歯車は、自動車用のトランスファーケースの一部を構成する。本発明の側面は、方法、装置、トランスミッションシステム、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ローギヤレンジ及びハイギヤレンジを有するトランスファーケースが、四輪駆動車において一般的に提供されている。トランスミッションからのトルク入力が、トランスファーボックス入力シャフトに伝達される。Torsen(登録商標)ディファレンシャルといった、ディファレンシャル(差動装置)をトランスファーケースに設けることができ、車両のフロント及びリアホイールの間でトルクを分割する。ハイレンジが、通常の道路運転のために用いられ、また乾燥した平坦な地形を通過するオフロード運転のためにも用いられる。ローレンジが、トレーラーを後進させ、若しくは急峻な滑りやすい表面又は石が散乱した地形を通過するといった低速操縦のために採用され得る。ハイレンジでの進行が維持できないような極限のオフロード状態のためにローレンジを用いることもできる。
【0003】
ハイレンジにおいては、トランスファーケース内の同期スリーブが、ディファレンシャルハウジングに対してトランスファーボックス入力シャフトを直接的に結合させる。ディファレンシャルは、両方の歯車の間でトルクを分割する。一方側の歯車がスプラインによりリア出力フランジに結合されてトルクを伝達してリアホイールを駆動する。他方の歯車がチェーン駆動スプロケットに結合され、チェーンを介してフロント出力フランジへトルクを伝達してフロントホイールを駆動する。
【0004】
ローレンジにおいては、同期スリーブが動かされ、また同期スリーブがディファレンシャルハウジングに遊星キャリアを接続する。ここで、トランスミッションからのトルクが、遊星歯車セットの太陽歯車を介して、またピニオン歯車及びピニオン歯車シャフトを介して、遊星キャリアに向けられる。エピサイクリック歯車セットの環状歯車がケーシング内に固定され、例えば、2.69:1のローレンジ比を生成する。次に、トルクが同期スリーブを介してディファレンシャルハウジングに伝達され、ここで両側の歯車の間で分割される。
【0005】
同期スリーブが電気モーターにより作動され、直線路に沿って移動フォークを駆動する。車両が移動している際にハイレンジからローレンジへの変更を容易にするため、内側及び外側ブロッカーリング及びコーンが設けられる。フォークがスリーブを第1方向に動かす時、内側及び外側ブロッカーリング及びコーンが一緒に押され、ある角度で噛み合い、これにより、シンクロメッシュ(ギア同期噛み合い装置)として作動して円滑な係合を提供する。
【0006】
またトランスファーケース入力シャフトが外側ブロッカーリング及びコーンを有し、これらはフォークがスリーブを第2方向に動かす時に一緒に押される。外側ブロッカーリング及びコーンもある角度で一緒に噛み合い、そしてシンクロメッシュとして作動してハイレンジへの円滑な移行を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シンクロメッシュを設けることによりトランスファーケースの複雑さやコストが増加してしまう。更には、トランスファーケース内の構成部品の摩耗により追加のメンテナンスが必要になってしまい得る。本発明は、これらの問題の1以上を解決することを探求する。本発明の実施形態が、ローレンジからハイレンジ、及び/又はハイレンジからローレンジへの移行を円滑化する機械的なシンクロメッシュの必要性を除去する方法又はシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面においては、ドライブトレーンにおける出力歯車と入力歯車の係合の方法が提供され、前記入力歯車が入力シャフトに結合し、前記出力歯車が出力シャフトに結合され、該方法が、
(i)前記出力歯車の回転速度に対して前記入力歯車の回転速度を整合させるべく前記入力シャフトのためのターゲット入力速度を計算し;
(ii)オフセットを含むように、計算された前記ターゲット入力速度を修正し;
(iii)修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正し;及び
(iv)前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時に前記入力歯車及び前記出力歯車を係合させるステップを含む。
【0009】
入力歯車及び出力歯車の回転速度が少なくとも実質的に一致するように入力シャフトの入力速度を修正することにより、入力及び出力歯車の速度を機械的に整合するためにシンクロメッシュを設ける必要がない。もし入力及び出力歯車の速度が係合時点にて同一ならば、歯上への歯の係合(それにより、入力及び出力歯車の歯が整列され、歯車の係合が阻止される)が生じ得る。従って、計算されたターゲット入力速度を修正するステップにより、入力及び出力歯車の回転速度の間にオフセットが導入され、これが、有利にも、歯上への歯の接触を回避するのに役立つ。従って、入力歯車の回転速度が、シンクロメッシュの必要無くして係合される出力歯車のものに十分に近くなるが、十分にオフセット(例えば、50rpm)して歯上への歯の係合の可能性が減じられる。
【0010】
(入力シャフトの入力速度を設定することに加えて、若しくは代替としてのいずれかにおいて)出力シャフトの出力速度を修正して入力及び出力歯車の回転速度を実質的に一致させることができる。しかしながら、出力速度を変えると車両の移動速度が変更され、これはドライバーにとって許容し難いと分かるであろう。入力シャフトの速度を修正することにより、車両速度を変えること無く入力及び出力歯車の回転速度が実質的に整合させられる。
【0011】
方法は、パワートレーンの出力歯車に第1入力歯車若しくは第2入力歯車のいずれかを選択的に係合させるように実施することができる。異なる歯車比を有する第1及び第2入力歯車列の各々に第1及び第2入力歯車を設けることができる。方法は、第1入力歯車列又は第2入力歯車列のいずれかに出力歯車が係合されることを可能にできる。第1及び第2入力歯車列は、例えば、トランスファーケースにおけるハイ及びローレンジに対応し得る。方法は、ハイレンズからローレンジへ及び/又はローレンジからハイレンジへ変更するために用いられることができる。
【0012】
修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップ(ステップ(iii))が、前記出力シャフトから前記入力シャフトが非結合の際に実行され得る。例えば、第1入力歯車が非係合にされた後及び第2入力歯車が係合する前、入力速度が変更され得る。入力及び出力シャフトが非結合の状態で、出力速度に影響せずに入力速度の変更が実行可能である。
【0013】
第1入力歯車から第2入力歯車に変更する時、入力シャフトの入力速度の要求の変更が、第1及び第2歯車列の比に基づいて計算することができる。ターゲット入力速度は、第1歯車に対する第2歯車の比を現在の入力速度に乗算することにより計算することができる。しかしながら、このアプローチは、出力歯車が非係合になった後に生じ得る出力速度の変更を許容しない。代替として、係合される入力歯車の歯車比を出力歯車の回転速度に乗算することによりターゲット入力速度を計算することができる。もし入力歯車が第1入力歯車列に設けられるならば、出力歯車の回転速度に、第1入力歯車列の歯車比が乗算される。(例えば、出力シャフトにより駆動される車両の速度を計測することにより)出力歯車の回転速度が連続的に計測できるため、このアプローチは、出力シャフトの回転速度における変化を説明することができる。出力歯車の回転速度を車両速度から決定することができる。端的には、全駆動ラインディファレンシャル比をホイール速度に乗算することにより出力歯車の回転速度を計算することができる。
【0014】
入力シャフトは、トランスミッションの出力に結合され得る。トランスミッションは、オートマチック、セミオートマチック、若しくはマニュアルトランスミッションであり得る。トランスミッションは、モーター又はエンジンに結合され得る。方法が、ステップ(iii)及び(iv)の開始前、歯車セレクターがニュートラルにあることを要求するかもしれない。
【0015】
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップが、前記入力速度を減じるステップを含むことができる。もし方法が実施されて第1入力歯車から低速の第2入力歯車に変更するならば、入力速度が減じられなければならないかもしれない。ブレーキングトルクが入力シャフトに与えられてその速度が減じられる。入力シャフトがトランスミッションに結合される構成においては、この入力速度の減速が、トランスミッションを低速の歯車に変更することにより、及び/又はトランスミッション内の内部ブレーキング力に依存して達成することができる。レンジ変更の過程でトランスミッションは多くの場合にはニュートラルであり、エンジン速度がアイドリングにある。選択されたトランスミッション比及び抗力トルクがトランスミッションの出力シャフト速度を増加することができる。トランスミッションにおける追加の歯車(例えば、2以上の歯車)の選択が、トランスミッション・抗力・トルクを増加するが、トルク・コンバーター・スリップ(slip)が、エンジン失速(engine stalling)を阻止することができる。
【0016】
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップが、前記入力速度を増加するステップを含むことができる。方法が実施されて第1入力歯車から高速の第2入力歯車へ変更されるならば、入力速度が増加しなければならないだろう。入力シャフトがトランスミッションに結合される構成においては、トランスミッションにおける高速歯車が係合してトランスミッションの出力速度を増加する;及び/又は増加したトルクがトランスミッションに供給されて入力シャフトの入力速度が増加する。トランスミッション制御モジュールが、エンジントルクの増加を要求することができ、これが、エンジンの出力速度の増加に帰結する。従って、トランスミッションの入力速度が増加し、トランスミッション(及び入力歯車に結合した入力シャフト)の出力速度の増加に帰結する。
【0017】
ドライブトレーンが、ハイレンジ及びローレンジを備えるトランスファーケースの形態にあり得る。第1入力歯車が第1歯車列に設けられてハイレンジを提供する;及び第2入力歯車が第2入力歯車列に設けられてローレンジを提供する。第1及び第2入力歯車が出力歯車に係合され、ハイローレンジが選択される。方法が実施されてハイレンジからローレンジへ及び/又はローレンジからハイレンジへ変換する。
【0018】
事前設定されたオフセットの加算又は減算により計算されたターゲット入力速度が修正され得る。事前設定されたオフセットは、5〜20rpm、20〜40rpm、40〜60rpm、60〜80rpm、又は80〜100rpmの範囲にあり得る。例えば、50rpmのオフセットが、計算されたターゲット入力速度から減算される。代替として、計算されたターゲット入力速度に、ターゲット速度修正子(modifier)が乗算され得る。修正子が、1未満又はそれを超える値であり得る。修正子が、例えば、事前設定された比に基づく、固定された整数若しくは変数であり得る。
【0019】
方法が、入力歯車及び出力歯車が係合する時にドライブトレーン内の歯上への歯の係合を検出するステップを更に含むことができる。歯上への歯の係合は、例えば、センサー及び/又はレンジ変更アクチュエーターにより流される電流の増加により検出することができる。歯上への歯の係合を検出する際、方法が、オプションとして規定の時間期間の経過の後、入力及び出力歯車を係合するステップを繰り返すことを含み得る。入力歯車及び出力歯車が係合に失敗する時に歯上への歯の係合が決定され得る。
【0020】
ディファレンシャル、例えば、Torsen(登録商標)ディファレンシャルが、出力シャフトに結合され得る。ディファレンシャルが、四輪駆動車のフロント及びリアホイールへの供給のために出力トルクを分割することができる。
【0021】
本発明の別の側面においては、ドライブトレーンにおける出力歯車と入力歯車の係合を制御する装置が提供され、前記入力歯車が入力シャフトに結合し、前記出力歯車が出力シャフトに結合され、該装置が、
前記出力歯車の回転速度に対して前記入力歯車の回転速度を整合させるべく前記入力シャフトのためのターゲット入力速度を計算し;
オフセットを含むように、計算された前記ターゲット入力速度を修正し;
修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正し;及び
前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時に前記入力歯車及び前記出力歯車を係合させるように構成された制御手段を備える。
【0022】
前記制御手段が、前記入力シャフトの入力速度及び前記出力シャフトの出力速度を決定するためのシャフト速度プロセッサー;前記入力シャフトの前記ターゲット入力速度を計算するためのプロセッサー;前記オフセットを含むように、前記計算されたターゲット入力速度を修正するための修正子;前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するための速度コントローラー;及び前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時、歯車変更制御信号を生成して前記入力歯車及び出力歯車の係合を開始させる制御信号生成器を備え得る。
【0023】
入力シャフトの入力速度を測定するための第1速度センサー、及び出力シャフトの出力速度を計測するための第2速度センサーにシャフト速度プロセッサーを結合することができる。自動推進用途においては、トランスミッション制御モジュールに第1速度センサーを設けることができ、アンチロックブレーキングシステムに第2速度センサーを設けることができる。
【0024】
制御信号生成器は、アクチュエーターを制御し、入力及び出力歯車の係合を開始することができる。
【0025】
トランスミッションの出力シャフトに入力シャフトを結合することができる。トランスミッションは、オートマチック、セミオートマチック、若しくはマニュアルトランスミッションであり得る。
【0026】
速度コントローラーは、(直接的又はトランスミッション制御ユニットを介して間接的に)トランスミッションを制御することができる;及び/又は速度コントローラーは、(直接的又はエンジン制御ユニットを介して間接的に)トランスミッションに接続したエンジン又はモーターを制御する。
【0027】
速度コントローラーは、トランスミッションを制御して入力シャフトの入力速度を減じるように動作することができる。速度コントローラーは、トランスミッションに与えられるブレーキングトルクを生じさせるかもしれない。ブレーキングトルクは、トランスミッション内の内部摩擦/抗力(drag)の結果であり得る。代替的に、若しくは加えて、速度コントローラーは、トランスミッション内の低速歯車への変更を開始してトランスミッションの出力速度を減じることができる。
【0028】
速度コントローラーは、トランスミッションを制御して入力シャフトの入力速度を増加するように動作可能である。速度コントローラーは、トランスミッション内の高速歯車への変更を開始して入力シャフトの入力速度を増加することができる。代替して、若しくは加えて、速度コントローラーは、トランスミッションに接続したエンジン又はモーターからのトルクの増加を要求することができる。結果として生じるエンジンの出力速度の増加が、トランスミッションの入力速度、また従って入力シャフトが接続したトランスミッションの出力速度を増加させる。制御信号が、例えば、トランスミッション制御モジュールに供給されて歯車変更が開始され、及び/又はエンジン制御モジュールに供給されてトランスミッションへ供給されるトルクが増加される。
【0029】
ドライブトレーンは、ハイレンジ及びローレンジを備えるトランスファーケースであり得る。制御ユニットは、ハイレンジからローレンジ及び/又はローレンジからハイレンジへ変換することに適合されることができる。
【0030】
修正子は、計算されたターゲット入力速度に事前設定のオフセットを加算若しくは減算することができる。例えば、事前設定のオフセットは、5〜20rpm、20〜40rpm、40〜60rpm、60〜80rpm、又は80〜100rpmの範囲にあり得る。50rpmのオフセットが、計算されたターゲット入力速度に加算され若しくは減算され得る。代替として、計算されたターゲット入力速度が修正子で乗算され得る。
【0031】
制御手段が、入力歯車及び出力歯車が係合する際に歯上への歯の係合を検出するための検出器を備え得る。制御信号生成器が、歯上への歯の係合に際して歯車変更制御信号を繰り返し生成し得る。歯車変更制御信号の繰り返しの前に時間遅延が導入され得る。
【0032】
速度コントローラー及び/又は制御信号生成器は、トランスミッション用の歯車セレクターがニュートラル位置にある時に限り動作可能であり得る。
【0033】
本明細書に記述の方法が機械実施可能である。更なる側面においては、本発明が、プログラム可能回路;及び本明細書に記述の前記方法を実施するべく前記プログラム可能回路をプログラムするソフトウェア符号化された少なくとも一つのコンピューター読み取り可能媒体を備えるコンピューターシステムに関する。
【0034】
本明細書に記述の装置が、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェアに記憶された一連の指令を実行する計算プロセッサーを含むことができる。同じく、本明細書に記述の方法が、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェアに記憶された一連の指令を実行する計算プロセッサーにより実行されることができる。計算処理装置は、本明細書に記述の動作ステップを制御するために活用されることができる。計算プロセッサーは、メモリー若しくは記憶装置に記憶された計算指令を実行するように構成されることができる。本発明は、計算プロセッサーを制御するためのコンピュータープログラムにも関し、コンピュータープログラムは、本明細書に記述の方法(群)に従って計算プロセッサーに動作させるべく実行可能である。
【0035】
本発明に係る装置は、特には自動車に良く適する。
【0036】
更なる側面においては、本発明が、先行の段落のいずれかに説明したような装置を有するトランスミッションシステム又は車両を提供する。
【0037】
本出願の範囲内においては、先行の段落、請求項、及び/又は次の記述に述べられた様々な側面、実施形態、実施例、特徴、及び代替が想定され、図面が独立若しくはそれらとの任意の組み合わせにおいて理解され得る。例えば、一つの実施形態との関係において記述した特徴は、特徴の不整合がなければ、全実施形態に適用可能である。
添付図面を参照して例示のために此処で本発明の実施形態が記述される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明のある形態を具現化するトランスファーケース制御システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで自動車用のトランスファーケース制御システム1が図1を参照して説明される。トランスファーケース制御システム1は、トランスファーケース3(トランスファーボックスとしても呼ばれる)及びオートマチックトランスミッション5を制御する。トランスファーケース3が、各ハイ及びローレンジのため高速入力歯車列(high input transfer box)及び低速入力歯車列(low input gear train)を備える。本発明に係るトランスファーケース制御システム1により、トランスファーケース3内のシンクロメッシュ歯車の必要を無くしてハイ及びローレンジ間の移動時の変更が許容される。
【0040】
トランスファーケース3が、トランスミッション5の出力シャフトに接続されたトランスファーケース入力シャフト7により駆動される。トランスファーケース3は、主車輪11のセットを駆動するトランスファーケース出力シャフト9を有する。トランスファーケース入力シャフト7が第1速度S1で回動し、トランスファーケース出力シャフト9が第2速度S2で回動する。ローレンジにおいて動作する際、トランスファーケース3が、3:1の歯車比を提供し、自動車にローレンジクロール速度を与える。ハイレンジにおいて動作する際、トランスファーケース3が、トランスミッション出力シャフト7からの直接駆動を提供し、1:1の歯車比を与える。他の歯車比がハイ及びローレンジのために実施できるものと理解される。
【0041】
トランスファーケース3は、次の事前設定条件が満たされる時に限り、ハイ及びローレンジ間を変更できる:(a)車両イグニッションがオンである;(b)車両速度が所定限度内である;及び(c)トランスミッションセレクターがニュートラル位置にある。更なる事前設定条件は、エンジンが稼働していることであるが、これは非本質的である。なぜなら、ハイブリッド車両が、エンジンが停止した状態で電気モーターのみにより動作できるためである。トランスファーケース制御モジュール(TCCM)13が、これらの条件が満たされていることを保証し、トランスファーケース3内のアクチュエーター(不図示)に制御信号(モーター_サプライ)を送信する。アクチュエーターが変換メカニズムを駆動してローからハイレンジ及びハイからローレンジへシフトさせる。トランスファーケース3は、またTCCM13にレンジ位置信号(レンジ_位置)を供給し、現在従事しているのがハイレンジ又はローレンジであるかを示す。
【0042】
TCCM13が、トランスミッション5を制御するトランスミッション制御モジュール(TCM)15に接続される。TCM15は、トランスミッション出力シャフト7の運転速度(トランス運転速度HS);オートマチックトランスミッション5により選択された現在の歯車(歯車位置現行HS);及びオートマチックトランスミッション5により選択されるべきターゲット歯車(歯車位置ターゲットHS)を含むデータをTCCM13に送信する。TCCM13は、トランスミッション5をニュートラルにするために歯車セレクターをロックするようにTCM15に指示できる(CDiffシフトロック要求HS)。TCCM13は、またTCM15と通信し、トランスファーケース3で現在従事しているハイ又はローレンジを示す(CDiffレンジ現行HS)。
【0043】
本体制御モジュール(BCM)17がTCCM13にイグニッション信号(KL15−イグニッションオン)を提供し、車両イグニッションがオンであることを保証する。エンジン制御モジュール(ECM)19がTCCM13にエンジン速度データ(エンジン速度HS)を提供する。トランスミッションの運転出力速度が、TCM15からTCCM13へ、トランスファーケース入力シャフト7の入力速度に対応する運転速度信号(トランス運転速度HS)として送信される。
【0044】
ローレンジスイッチ21がユーザーにより作動され、トランスファーケース3のレンジ変更が開始する。レンジ制御信号がローレンジスイッチ21からTCCM13へ供給される。アンチロックブレーキングシステム(ABS)23が、ホイール速度データ(ホイール速度XXXHS及びホイール速度XXXQFHS)をTCCM13及びTCM15の両方に送信し、車両速度及びトランスファーケース出力シャフト9の出力速度が決定されることを可能にする。
【0045】
トランスファーケース3の高速及び低速入力歯車列が同期スリーブにより選択され、各々のレンジを提供する。同期スリーブが直線路に沿って移動可能であり、高速入力歯車列を介してトランスファーケース入力シャフト7に結合した第1(高速)入力歯車に係合し、若しくは低速入力歯車列を介してトランスファーケース入力シャフト7に結合して第2(高速)入力歯車に係合する。TCCM13からの制御信号(モーター_サプライ)に応じて動作する変換機構が、フォーク及びレールアセンブリを備え、同期スリーブを変位させる。同期スリーブが第1位置(例えば、後方位置)にある際、第1(高速)入力歯車が係合され、同期スリーブが第2位置(例えば、前方位置)にある際、第2(低速)入力歯車列が係合される。同期スリーブが中間位置にあり、第1(高速)入力歯車若しくは第2(低速)入力歯車のいずれも係合していない時、トランスファーケース3がニュートラル状態にある。同期スリーブが、通常動作に亘ってトランスファーケース出力シャフト9に結合した状態を維持する。
【0046】
本発明によれば、第1(高速)入力歯車若しくは第2(低速)入力歯車が出力歯車に係合する際にトランスファーケース3内のシンクロメッシュ歯車の必要無しで移動時の変更が可能になる。これを達成するために、TCM15が、ターゲット入力歯車の回転速度を出力歯車の回転速度プラス若しくはマイナスオフセットに実質的に適合させて歯上への歯の係合を阻止することを補助する。
【0047】
トランスミッション5の速度を調整することにより入力歯車の速度を制御することができ、トランスファーケース入力シャフト7の第1速度S1を変更する。トランスミッション5内で下位歯車に変更することにより、及び/又はトランスミッション5内の内部摩擦ロスを許容して出力速度を減じることにより、第1速度S1を低下させることができる。トランスミッション5内の高速歯車に変更することにより、及び/又はエンジン又は電気モーターによりトランスミッション5に与えられるトルクを増加することにより、第1速度S1を上昇させることができる。エンジンから供給されるトルクの増加によりトランスミッションの入力速度が増加し、従って、トランスファーケース入力シャフト7の第1速度S1も増加する。トランスファーケース3がニュートラル状態にあり、ホイール11の回転速度に影響しない時、トランスミッション5の速度が調整される。
【0048】
ローからハイ若しくはハイからローへのレンジ変更のいずれかが行われるのかに依存して、係合される入力歯車(すなわち、ターゲット歯車)が、第1(高速)入力歯車若しくは第2(低速)入力歯車のいずれかである。トランスファーケース入力シャフト7の第1速度S1が、トランスミッション5の出力速度に対応し、動作速度信号(トランス運転速度HS)としてTCCM13に供給される。
【0049】
出力歯車が、トランスファーケース出力シャフト9に結合した同期スリーブである。トランスファーケース出力シャフト9が車両ホイール11に接続され、従って、出力歯車の第2速度S2が、ABS23から供給されるホイール速度データ(ホイール速度XXXHS及びホイール速度XXXQFHS)から計算することができる。
【0050】
ターゲット入力速度S1’を計算するべく、出力歯車の第2速度S2が、係合されるべき入力歯車列の歯車比で掛けられる。もし第1(高速)歯車列が係合されるならば、第2速度S2が1で掛けられる(ハイ歯車列が1:1の歯車比を有するため)。もし第2(低速)入力歯車列が係合されるならば、第2速度S2が3で掛けられる(ロー歯車列が3:1の歯車比を有するため)
【0051】
次に事前設定のオフセットが適用され、計算されたターゲット入力速度S1’が変更され、変更されたターゲット入力速度S1’’が生成される。オフセットは、例えば、規定速度の加算又は減算により与えることができる。本実施形態においては、計算されたターゲット入力速度S1’が50rpmにより減じられ、オフセットが提供される。
【0052】
変更されたターゲット入力速度S1’’に基づいて入力シャフト7の入力速度S1が変更され、選択された入力歯車が出力歯車に係合することが可能になる。(計算されたターゲット入力速度S1’ではなく)変更されたターゲット入力速度S1’’に入力シャフト速度S1を設定することにより、入力歯車及び出力歯車間に生じる歯上への歯の係合の可能性が減じられる。当業者により理解されるように、入力シャフト速度S1が、変更されたターゲット入力速度S1’’に「セット」されるものと言え、各々に回転する入力及び出力歯車の係合が動的プロセスになる。従って、入力シャフトの回転速度は、入力歯車が出力歯車に係合する正確な時点において、変更されたターゲット入力速度S1’’に正確に適合する必要はない。むしろ、変更されたターゲット入力速度S1’’に入力シャフト速度が実質的に適合する際に係合が生じれば十分であり、すなわち、入力歯車の回転速度が、出力歯車の回転速度に十分に近く、シンクロメッシュの必要なくして係合できるが、十分に(例えば、50rpmだけ)オフセットして歯上への歯の係合の可能性が減じられる。
【0053】
ハイ/ローレンジが、ローレンジスイッチ21を用いてドライバーにより選択される。トランスミッション5用のセレクターがニュートラル位置にある時に限りレンジ変更が実行可能である。レンジ変更が進行する時にはアクセルペダル(不図示)が押し下げられていてはならない。もしハイ又はローレンジが要求され、トランスミッションセレクターがニュートラル以外の位置にあるならば、アラートが提供され、ドライバーにニュートラルを選択するように指示する。
【0054】
規定の制限内において、車両の移動時にトランスファーボックス3によりレンジ変更が許容される。端的には、ハイからローへの変更に際しては、車両速度が10mph(16km/h)を超えてはならず;ローからハイへのレンジ変更に際しては、車両速度が30mph(48km/h)を超えてはいけない。もし車両速度が規定されたパラメーターよりも高いならば、アラートが提供されドライバーに速度低下を指示する。レンジ変更は、車両速度が規定範囲内にある時に限り開始される。2mph(3km/h)未満の路上速度が、TCCM13により静止シフト(車両が動いていない)として解釈され得る。
【0055】
ここでローからハイ及びハイからローの移動時レンジ変更を参照して本発明に係るTCCM13の動作を記述する。
【0056】
移動時レンジ変更:ローからハイ
本発明は、車両が速度閾値未満で移動する間に車両がローからハイのレンジ変更を実行することを許容する。本発明は、トランスファーボックス3内のシンクロメッシュの使用無しで円滑なレンジ変更を提供することができる。
【0057】
車両の移動時にドライバーがローレンジスイッチ21を押すと、TCCM13により移動時レンジ変更要求が受信される。TCCM13が、BCM17信号(KL15−イグニッション・オン)を介して車両のイグニッションがオンであり、ECM19速度信号(エンジン速度HS)を介してエンジンが稼働している、と決定する。TCCM13は、次に、トランスミッション5がニュートラルである(TCM位置表示HS、歯車位置ターゲットHS、歯車位置現行HS)と決定するためにTCM15に問い合わせる。TCCM13によってもチェックが行われ、車両速度(ホイール速度XXXHS)が適切な閾値未満、典型的には30mph(48km/h)以下であると決定する。
【0058】
もしTCCM13が1以上の次の事項:車両速度が閾値を超える;トランスミッション5がニュートラルではない;若しくは障害が検出される、を決定するならば、レンジ変更が失敗し、オプションとしてドライバーにアラートが提供される。もしパラメーターが満足されるならば、レンジ変更が進展する。
【0059】
ローからハイへの移動時レンジ変更のためのイベントの主フローは、次のとおりである:
(i)TCCM13が、オートマチックトランスミッション歯車セレクターがニュートラルにロックされることを要求する(CDiffシフトロック要求HS);
(ii)TCM15がオートマチックトランスミッション歯車セレクターをニュートラルにロックする;
(iii)トランスファーケース3が、トランスファーケースモーターに電流を流すことによりレンジ変更を開始する;
(iv)トランスファーケース3の入力速度S1が、ロー歯車比、50rpmオフセット未満により分割された出力速度S2(ABS23により測定される車両速度に対応する)に整合される;
(v)トランスファーケース3がレンジ変更を完了し、これがレンジ位置センサーにより確認される;
(vi)TCCM13が、オートマチックトランスミッション歯車セレクターがニュートラルにロックされる要求(CDiffシフトロック要求HS)を取り下げる;
(vii)TCM15がニュートラル位置からトランスミッション歯車セレクターをロック解除する;及び
(viii)トランスミッション5が、通常動作に復帰する。
【0060】
トランスファーケース3の入力速度S1が、トランスミッション5の出力にブレーキングトルクを与えることによりステップ(iv)で整合される。
【0061】
トランスファーケースモーターが係合される時に歯上に歯がある状態が検出されるならば、イベントの順序が変更される。端的には、イベント(i)〜(iv)が上述のように実施され、次に:
(a)TCCM13が、高いモーター電流及びレンジが未完了であることを示すレンジ位置により歯上に歯がある状態を検出する;
(b)TCCMが、モーター電流を減じ(若しくは僅かに逆流させ)、次に電流を再び流す;50rpmオフセットに起因するゼロを超えるオートマチックトランスミッション出力に起因して圧力が除かれるとトランスファーケースへの入力が回転する。
【0062】
次に、ステップ(v)〜(viii)が上述のように実施される。
【0063】
これらのプロセスステップの上首尾の完了は、ローからハイへのレンジ変更が実施されたことに帰結する。「ハイレンジ選択」の一時的メッセージが、計器パックメッセージセンター(不図示)において表示でき、またローレンジアイコンが計器パックにおいてスイッチオフされる。
【0064】
移動時レンジ変更:ハイからロー
本発明は、速度閾値未満で車両が動く間にハイからローへのレンジ変更を実行することも車両に許容する。本発明は、トランスファーケース3内のシンクロメッシュの使用無しで円滑なレンジ変更を提供することができる。
【0065】
車両が動いている時にドライバーがローレンジスイッチ21を押すと、動作時レンジ変更要求がTCCM13により受信される。TCCM13は、次に、ローからハイへのレンジ変更のために実施された同一のパラメーターチャックを実行する。端的には、TCCM13は、BCM17信号(KL15−イグニッション・オン)を介して車両のイグニッションがオンであり、ECM19速度信号(エンジン速度HS)を介してエンジンが稼働している、と決定する。TCCM13は、次に、トランスミッション5がニュートラルである(TCM位置表示HS、歯車位置ターゲットHS、歯車位置現行HS)と決定するためにTCM15に問い合わせる。TCCM13によってもチェックが行われ、車両速度(ホイール速度XXXHS)が適切な閾値未満、典型的には10mph(16km/h)以下であると決定する。
【0066】
もしTCCM13が1以上の次の事項:車両速度が閾値を超える;トランスミッション5がニュートラルではない;若しくは障害が検出される、を決定するならば、レンジ変更が失敗し、オプションとしてドライバーにアラートが提供される。もしパラメーターが満足されるならば、レンジ変更が進展する。
【0067】
ハイからローへの移動時レンジ変更のためのイベントの主フローは、次のとおりである:
(i)TCCM13が、オートマチックトランスミッション歯車セレクターがニュートラルにロックされることを要求する(CDiffシフトロック要求HS);
(ii)TCM15がオートマチックトランスミッション歯車セレクターをニュートラルにロックする;
(iii)トランスファーケース3が、トランスファーケースモーターに電流を流すことによりレンジ変更を開始する;
(iv)トランスファーケース3の入力速度S1が、ロー歯車比、50rpmオフセット未満により分割された出力速度S2(車両速度に対応する)に整合される;
(v)トランスファーケース3がレンジ変更を完了し、これがレンジ位置センサーにより確認される;
(vi)TCCM13が、オートマチックトランスミッション歯車セレクターがニュートラルにロックされる要求(CDiffシフトロック要求HS)を取り下げる;
(vii)TCM15がニュートラル位置からトランスミッション歯車セレクターをロック解除する;及び
(viii)トランスミッション5が、通常動作に復帰する。
【0068】
トランスファーケース3の入力速度S1が、高速歯車を選択することにより、及び/又はエンジン/電気モーターに正のトルク要求を送信することによりステップ(iv)で整合される。
【0069】
トランスファーケースモーターが係合される時に歯上に歯がある状態が検出されるならば、イベントの順序が変更される。端的には、イベント(i)〜(iv)が上述のように実施され、次に:
(a)TCCM13が、高いモーター電流及びレンジが未完了であることを示すレンジ位置により歯上に歯がある状態を検出する;
(b)TCCMが、モーター電流を減じ(若しくは僅かに逆流させ)、次に電流を再び流す;50rpmオフセットに起因するゼロを超えるトランスミッション5の出力に起因して圧力が除かれるとトランスファーケースへの入力シャフト7が回転する。
【0070】
次に、ステップ(v)〜(viii)が上述のように実施される。
【0071】
これらのプロセスステップの上首尾の完了は、ハイからローへのレンジ変更が実施されたことに帰結する。「ローレンジ選択」の一時的メッセージが、計器パックメッセージセンター(不図示)にて表示でき、またローレンジアイコンが計器パックにてスイッチオンされる。
【0072】
上に概説のように、トランスファーケース制御システム1が、トランスファーケース3内のシンクロメッシュ歯車の必要無くして移動時のハイ及びローレンジの間の変更を促進する。トランスファーケース制御システム1は、本出願の冒頭にて記述した種類の従来のトランスファーケース3と使用することができる。トランスファーケース3の複雑さを低減するため、コーン及びブロッカーリングといったシンクロメッシュ歯車を省略若しくはスペーサーにより置換することができる。
【0073】
一度選択されたトランスファーケース入力シャフト7を駆動するべくトランスミッションが始動する際にオフセットが固有に生じるため、本明細書に記述の方法は、静止レンジ変更(すなわち、車両が静止している時の変更)のためにも用いることができる。
【0074】
トランスファーケース3は、単一の出力シャフト9を有するように図示されてきた。しかしながら、2つの出力シャフトが提供でき、四輪駆動を可能にすることができる。例えば、フロント出力シャフトが車両のフロントホイールを駆動することができ、リア出力シャフトが車両のリアホイールを駆動することができる。従って、トランスファーケース3は、パーマネント四輪駆動、トルク分割トランスミッションを車両に提供することができる。Torsen(登録商標)ディファレンシャルといったディファレンシャルアセンブリが提供でき、四輪駆動システムにおけるフロント及びリアホイールの間でトルクを分割する。そのような構成においては、トランスファーケース3内の同期スリーブが、ディファレンシャルアセンブリに永久的に結合されることができる。
【0075】
トランスファーケース3内にシンクロメッシュを提供することの代替として本発明が記述されてきた。しかしながら、本発明は、シンクロメッシュと一緒に実施してシンクロメッシュの構成部品の保護に役立てることもできる。
【0076】
上に記述の方法及び装置は、例えば、オフロード車のトランスファーケースにおけるハイレンジからローレンジ及び/又はローレンジからハイレンジの変更に使用することができる。この場合、ローレンジへのハイレンジの変更及びハイレンジへのローレンジの変更の各々のためのシンクロメッシュ歯車配列の必要性が不要になり得る。ハイレンジからローレンジの変更が行われる時に「オフロード」車両が静止することがよくある場面である(例えば、ドライバーが、横切られる「オフロード」地形を調査するために停止するためである)。対照的に、車両が動いているときドライバーがローレンジからハイレンジに変更することを望むことがよくある場面である(例えば、車両が、「オフロード」地形からタールマック道上に運転されるためである)。従って、本発明の一実施形態においては、ただ、「移動時」のレンジ変更を可能にするべく、ローレンジからハイレンジへの変更が選択される時にトランスファーケースの入力及び出力歯車の係合を制御するために上述の方法及び装置が採用され得る。ハイからローレンジへの変更の場合においては、車両が静止していると判断される時に限りそのような変更が為し得ることが単に要求される。従って、ハイからローレンジの変更及びローからハイレンジの変更の各々のシンクロメッシュ歯車配列の必要性が不要になる。
【0077】
本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に記述した実施形態について様々な変更や修正がなし得るものと理解される。
図1