【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面においては、ドライブトレーンにおける出力歯車と入力歯車の係合の方法が提供され、前記入力歯車が入力シャフトに結合し、前記出力歯車が出力シャフトに結合され、該方法が、
(i)前記出力歯車の回転速度に対して前記入力歯車の回転速度を整合させるべく前記入力シャフトのためのターゲット入力速度を計算し;
(ii)オフセットを含むように、計算された前記ターゲット入力速度を修正し;
(iii)修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正し;及び
(iv)前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時に前記入力歯車及び前記出力歯車を係合させるステップを含む。
【0009】
入力歯車及び出力歯車の回転速度が少なくとも実質的に一致するように入力シャフトの入力速度を修正することにより、入力及び出力歯車の速度を機械的に整合するためにシンクロメッシュを設ける必要がない。もし入力及び出力歯車の速度が係合時点にて同一ならば、歯上への歯の係合(それにより、入力及び出力歯車の歯が整列され、歯車の係合が阻止される)が生じ得る。従って、計算されたターゲット入力速度を修正するステップにより、入力及び出力歯車の回転速度の間にオフセットが導入され、これが、有利にも、歯上への歯の接触を回避するのに役立つ。従って、入力歯車の回転速度が、シンクロメッシュの必要無くして係合される出力歯車のものに十分に近くなるが、十分にオフセット(例えば、50rpm)して歯上への歯の係合の可能性が減じられる。
【0010】
(入力シャフトの入力速度を設定することに加えて、若しくは代替としてのいずれかにおいて)出力シャフトの出力速度を修正して入力及び出力歯車の回転速度を実質的に一致させることができる。しかしながら、出力速度を変えると車両の移動速度が変更され、これはドライバーにとって許容し難いと分かるであろう。入力シャフトの速度を修正することにより、車両速度を変えること無く入力及び出力歯車の回転速度が実質的に整合させられる。
【0011】
方法は、パワートレーンの出力歯車に第1入力歯車若しくは第2入力歯車のいずれかを選択的に係合させるように実施することができる。異なる歯車比を有する第1及び第2入力歯車列の各々に第1及び第2入力歯車を設けることができる。方法は、第1入力歯車列又は第2入力歯車列のいずれかに出力歯車が係合されることを可能にできる。第1及び第2入力歯車列は、例えば、トランスファーケースにおけるハイ及びローレンジに対応し得る。方法は、ハイレンズからローレンジへ及び/又はローレンジからハイレンジへ変更するために用いられることができる。
【0012】
修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップ(ステップ(iii))が、前記出力シャフトから前記入力シャフトが非結合の際に実行され得る。例えば、第1入力歯車が非係合にされた後及び第2入力歯車が係合する前、入力速度が変更され得る。入力及び出力シャフトが非結合の状態で、出力速度に影響せずに入力速度の変更が実行可能である。
【0013】
第1入力歯車から第2入力歯車に変更する時、入力シャフトの入力速度の要求の変更が、第1及び第2歯車列の比に基づいて計算することができる。ターゲット入力速度は、第1歯車に対する第2歯車の比を現在の入力速度に乗算することにより計算することができる。しかしながら、このアプローチは、出力歯車が非係合になった後に生じ得る出力速度の変更を許容しない。代替として、係合される入力歯車の歯車比を出力歯車の回転速度に乗算することによりターゲット入力速度を計算することができる。もし入力歯車が第1入力歯車列に設けられるならば、出力歯車の回転速度に、第1入力歯車列の歯車比が乗算される。(例えば、出力シャフトにより駆動される車両の速度を計測することにより)出力歯車の回転速度が連続的に計測できるため、このアプローチは、出力シャフトの回転速度における変化を説明することができる。出力歯車の回転速度を車両速度から決定することができる。端的には、全駆動ラインディファレンシャル比をホイール速度に乗算することにより出力歯車の回転速度を計算することができる。
【0014】
入力シャフトは、トランスミッションの出力に結合され得る。トランスミッションは、オートマチック、セミオートマチック、若しくはマニュアルトランスミッションであり得る。トランスミッションは、モーター又はエンジンに結合され得る。方法が、ステップ(iii)及び(iv)の開始前、歯車セレクターがニュートラルにあることを要求するかもしれない。
【0015】
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップが、前記入力速度を減じるステップを含むことができる。もし方法が実施されて第1入力歯車から低速の第2入力歯車に変更するならば、入力速度が減じられなければならないかもしれない。ブレーキングトルクが入力シャフトに与えられてその速度が減じられる。入力シャフトがトランスミッションに結合される構成においては、この入力速度の減速が、トランスミッションを低速の歯車に変更することにより、及び/又はトランスミッション内の内部ブレーキング力に依存して達成することができる。レンジ変更の過程でトランスミッションは多くの場合にはニュートラルであり、エンジン速度がアイドリングにある。選択されたトランスミッション比及び抗力トルクがトランスミッションの出力シャフト速度を増加することができる。トランスミッションにおける追加の歯車(例えば、2以上の歯車)の選択が、トランスミッション・抗力・トルクを増加するが、トルク・コンバーター・スリップ(slip)が、エンジン失速(engine stalling)を阻止することができる。
【0016】
前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するステップが、前記入力速度を増加するステップを含むことができる。方法が実施されて第1入力歯車から高速の第2入力歯車へ変更されるならば、入力速度が増加しなければならないだろう。入力シャフトがトランスミッションに結合される構成においては、トランスミッションにおける高速歯車が係合してトランスミッションの出力速度を増加する;及び/又は増加したトルクがトランスミッションに供給されて入力シャフトの入力速度が増加する。トランスミッション制御モジュールが、エンジントルクの増加を要求することができ、これが、エンジンの出力速度の増加に帰結する。従って、トランスミッションの入力速度が増加し、トランスミッション(及び入力歯車に結合した入力シャフト)の出力速度の増加に帰結する。
【0017】
ドライブトレーンが、ハイレンジ及びローレンジを備えるトランスファーケースの形態にあり得る。第1入力歯車が第1歯車列に設けられてハイレンジを提供する;及び第2入力歯車が第2入力歯車列に設けられてローレンジを提供する。第1及び第2入力歯車が出力歯車に係合され、ハイローレンジが選択される。方法が実施されてハイレンジからローレンジへ及び/又はローレンジからハイレンジへ変換する。
【0018】
事前設定されたオフセットの加算又は減算により計算されたターゲット入力速度が修正され得る。事前設定されたオフセットは、5〜20rpm、20〜40rpm、40〜60rpm、60〜80rpm、又は80〜100rpmの範囲にあり得る。例えば、50rpmのオフセットが、計算されたターゲット入力速度から減算される。代替として、計算されたターゲット入力速度に、ターゲット速度修正子(modifier)が乗算され得る。修正子が、1未満又はそれを超える値であり得る。修正子が、例えば、事前設定された比に基づく、固定された整数若しくは変数であり得る。
【0019】
方法が、入力歯車及び出力歯車が係合する時にドライブトレーン内の歯上への歯の係合を検出するステップを更に含むことができる。歯上への歯の係合は、例えば、センサー及び/又はレンジ変更アクチュエーターにより流される電流の増加により検出することができる。歯上への歯の係合を検出する際、方法が、オプションとして規定の時間期間の経過の後、入力及び出力歯車を係合するステップを繰り返すことを含み得る。入力歯車及び出力歯車が係合に失敗する時に歯上への歯の係合が決定され得る。
【0020】
ディファレンシャル、例えば、Torsen(登録商標)ディファレンシャルが、出力シャフトに結合され得る。ディファレンシャルが、四輪駆動車のフロント及びリアホイールへの供給のために出力トルクを分割することができる。
【0021】
本発明の別の側面においては、ドライブトレーンにおける出力歯車と入力歯車の係合を制御する装置が提供され、前記入力歯車が入力シャフトに結合し、前記出力歯車が出力シャフトに結合され、該装置が、
前記出力歯車の回転速度に対して前記入力歯車の回転速度を整合させるべく前記入力シャフトのためのターゲット入力速度を計算し;
オフセットを含むように、計算された前記ターゲット入力速度を修正し;
修正された前記ターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正し;及び
前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時に前記入力歯車及び前記出力歯車を係合させるように構成された制御手段を備える。
【0022】
前記制御手段が、前記入力シャフトの入力速度及び前記出力シャフトの出力速度を決定するためのシャフト速度プロセッサー;前記入力シャフトの前記ターゲット入力速度を計算するためのプロセッサー;前記オフセットを含むように、前記計算されたターゲット入力速度を修正するための修正子;前記修正されたターゲット入力速度に基づいて前記入力シャフトの入力速度を修正するための速度コントローラー;及び前記入力シャフトの入力速度が前記修正されたターゲット入力速度に少なくとも実質的に整合する時、歯車変更制御信号を生成して前記入力歯車及び出力歯車の係合を開始させる制御信号生成器を備え得る。
【0023】
入力シャフトの入力速度を測定するための第1速度センサー、及び出力シャフトの出力速度を計測するための第2速度センサーにシャフト速度プロセッサーを結合することができる。自動推進用途においては、トランスミッション制御モジュールに第1速度センサーを設けることができ、アンチロックブレーキングシステムに第2速度センサーを設けることができる。
【0024】
制御信号生成器は、アクチュエーターを制御し、入力及び出力歯車の係合を開始することができる。
【0025】
トランスミッションの出力シャフトに入力シャフトを結合することができる。トランスミッションは、オートマチック、セミオートマチック、若しくはマニュアルトランスミッションであり得る。
【0026】
速度コントローラーは、(直接的又はトランスミッション制御ユニットを介して間接的に)トランスミッションを制御することができる;及び/又は速度コントローラーは、(直接的又はエンジン制御ユニットを介して間接的に)トランスミッションに接続したエンジン又はモーターを制御する。
【0027】
速度コントローラーは、トランスミッションを制御して入力シャフトの入力速度を減じるように動作することができる。速度コントローラーは、トランスミッションに与えられるブレーキングトルクを生じさせるかもしれない。ブレーキングトルクは、トランスミッション内の内部摩擦/抗力(drag)の結果であり得る。代替的に、若しくは加えて、速度コントローラーは、トランスミッション内の低速歯車への変更を開始してトランスミッションの出力速度を減じることができる。
【0028】
速度コントローラーは、トランスミッションを制御して入力シャフトの入力速度を増加するように動作可能である。速度コントローラーは、トランスミッション内の高速歯車への変更を開始して入力シャフトの入力速度を増加することができる。代替して、若しくは加えて、速度コントローラーは、トランスミッションに接続したエンジン又はモーターからのトルクの増加を要求することができる。結果として生じるエンジンの出力速度の増加が、トランスミッションの入力速度、また従って入力シャフトが接続したトランスミッションの出力速度を増加させる。制御信号が、例えば、トランスミッション制御モジュールに供給されて歯車変更が開始され、及び/又はエンジン制御モジュールに供給されてトランスミッションへ供給されるトルクが増加される。
【0029】
ドライブトレーンは、ハイレンジ及びローレンジを備えるトランスファーケースであり得る。制御ユニットは、ハイレンジからローレンジ及び/又はローレンジからハイレンジへ変換することに適合されることができる。
【0030】
修正子は、計算されたターゲット入力速度に事前設定のオフセットを加算若しくは減算することができる。例えば、事前設定のオフセットは、5〜20rpm、20〜40rpm、40〜60rpm、60〜80rpm、又は80〜100rpmの範囲にあり得る。50rpmのオフセットが、計算されたターゲット入力速度に加算され若しくは減算され得る。代替として、計算されたターゲット入力速度が修正子で乗算され得る。
【0031】
制御手段が、入力歯車及び出力歯車が係合する際に歯上への歯の係合を検出するための検出器を備え得る。制御信号生成器が、歯上への歯の係合に際して歯車変更制御信号を繰り返し生成し得る。歯車変更制御信号の繰り返しの前に時間遅延が導入され得る。
【0032】
速度コントローラー及び/又は制御信号生成器は、トランスミッション用の歯車セレクターがニュートラル位置にある時に限り動作可能であり得る。
【0033】
本明細書に記述の方法が機械実施可能である。更なる側面においては、本発明が、プログラム可能回路;及び本明細書に記述の前記方法を実施するべく前記プログラム可能回路をプログラムするソフトウェア符号化された少なくとも一つのコンピューター読み取り可能媒体を備えるコンピューターシステムに関する。
【0034】
本明細書に記述の装置が、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェアに記憶された一連の指令を実行する計算プロセッサーを含むことができる。同じく、本明細書に記述の方法が、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェアに記憶された一連の指令を実行する計算プロセッサーにより実行されることができる。計算処理装置は、本明細書に記述の動作ステップを制御するために活用されることができる。計算プロセッサーは、メモリー若しくは記憶装置に記憶された計算指令を実行するように構成されることができる。本発明は、計算プロセッサーを制御するためのコンピュータープログラムにも関し、コンピュータープログラムは、本明細書に記述の方法(群)に従って計算プロセッサーに動作させるべく実行可能である。
【0035】
本発明に係る装置は、特には自動車に良く適する。
【0036】
更なる側面においては、本発明が、先行の段落のいずれかに説明したような装置を有するトランスミッションシステム又は車両を提供する。
【0037】
本出願の範囲内においては、先行の段落、請求項、及び/又は次の記述に述べられた様々な側面、実施形態、実施例、特徴、及び代替が想定され、図面が独立若しくはそれらとの任意の組み合わせにおいて理解され得る。例えば、一つの実施形態との関係において記述した特徴は、特徴の不整合がなければ、全実施形態に適用可能である。
添付図面を参照して例示のために此処で本発明の実施形態が記述される。