特許第5890930号(P5890930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890930超音波尿量測定器及び超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5890930
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】超音波尿量測定器及び超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-166662(P2015-166662)
(22)【出願日】2015年8月26日
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/072247
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】WO
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/072250
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】WO
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/072251
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】WO
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512046383
【氏名又は名称】大塚メディカルデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 康生
(72)【発明者】
【氏名】角 耀
(72)【発明者】
【氏名】白▲崎▼ 功
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−512532(JP,A)
【文献】 特開2014−023813(JP,A)
【文献】 特開2000−210286(JP,A)
【文献】 特開平04−117946(JP,A)
【文献】 特開平07−136167(JP,A)
【文献】 特開平07−171149(JP,A)
【文献】 特開2011−183142(JP,A)
【文献】 特表2007−508857(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/099582(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0178742(US,A1)
【文献】 米国特許第04926871(US,A)
【文献】 米国特許第05592941(US,A)
【文献】 米国特許第06406431(US,B1)
【文献】 米国特許第06565512(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の腹部に装着され、該被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部と、
前記演算部で算出された尿量を時系列的にグラフ表示する表示部と、
を備える超音波尿量測定器であって、
前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択可能とするモード選択部と、
前記位置決めモードが選択されている間に、前記演算部により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部とを有し、
前記最大値及び/又は前記許容値が、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として前記表示部のグラフ上に表示され
前記位置決めモードが選択されている間に測定された尿量が前記位置決め指標値以上に到達したときに報知する報知部を有する、
ことを特徴とする超音波尿量測定器。
【請求項2】
前記超音波制御部は、前記測定モードでの測定周期が一の測定周期、前記位置決めモードでの測定周期が前記一の測定周期より短い他の測定周期となるように、前記超音波素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の超音波尿量測定器。
【請求項3】
前記表示部は、前記最大値に応じて前記グラフの表示スケールを変更することができることを特徴とする請求項1に記載の超音波尿量測定器。
【請求項4】
前記表示部は、測定された尿量を棒の長さで表すことにより、所定時間範囲内で測定された複数の尿量を時間軸方向に並べた棒グラフで表示し、前記位置決め指標値を該棒グラフ上に時間軸方向に伸びる直線で表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波尿量測定器。
【請求項5】
前記表示部は、トイレトレーニングまたは膀胱訓練の少なくとも一方に用いられる膀胱内の尿量を表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波尿量測定器。
【請求項6】
被測定者の腹部に装着され、該被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部と、
前記演算部で算出された尿量を時系列的にグラフ表示する表示部と、
を備えた超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法であって、
前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択する第1ステップと、
前記第1ステップで前記位置決めモードが選択されている間に、前記演算部により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値を示す最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する第2ステップと、
前記最大値及び/又は前記許容値を、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として前記表示部のグラフ上に表示する第3ステップと
前記位置決めモードが選択されている間に測定された尿量と前記位置決め指標値とを比較する第4ステップと、
その測定された尿量が位置決め指標値以上に到達したときに報知する第5ステップを有する、
ことを特徴とする超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法。
【請求項7】
被測定者の腹部の測定位置に装着され、該被測定者の膀胱に向けて超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を算出する演算部と、
を備える超音波尿量測定器であって、
前記演算部は、前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定する位置決めモードにおいて、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブが配置された状態で膀胱内の尿量を算出し、
前記超音波尿量測定器は、
前記位置決めモードの間に前記演算部により算出された尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部と、
前記位置決めモードにおいて、前記演算部により算出された尿量と、前記指標値記憶部に記憶された最大値及び/又は前記許容値との差を検出する比較部と、を有することを特徴とする超音波尿量測定器。
【請求項8】
前記比較部の比較結果に基づき、アラームを報知する報知部を有することを特徴とする請求項に記載の超音波尿量測定器。
【請求項9】
前記位置決めモードにおいて前記演算部にて算出された尿量と、前記指標値記憶部に記憶された前記最大値及び/又は前記許容値とを、グラフ表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項又はに記載の超音波尿量測定器。
【請求項10】
前記演算部にて複数の時刻にそれぞれ算出された尿量をグラフ表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記位置決めモードと、前記測定位置に装着された状態で膀胱内の尿量を測定する測定モードとで、前記グラフ表示の時間スケールを変更することができることを特徴とする請求項又はに記載の超音波尿量測定器。
【請求項11】
前記超音波尿量測定器は、トイレトレーニングまたは膀胱訓練の少なくとも一方に用いられる膀胱内の尿量を表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項に記載の超音波尿量測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して膀胱内の尿量を測定する超音波尿量測定器、及び該超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、膀胱内の尿量を超音波を用いて測定する測定器としては、例えば特許文献1(特許第4677615号公報)に記載されているように、超音波Aモードにより、膀胱の前壁からの反射波と後壁からの反射波の振幅および時間に基づいて時系列的に膀胱内の尿量を測定するものが知られている。
【0003】
このような超音波を用いて膀胱内の尿量を測定する測定器において、その測定器を被測定者の腹部に配置する方法としては、例えば特許文献2(特表2009−512532号公報)に記載されているように、多数の超音波素子を使用する超音波Bモードにより膀胱の画像を作成し、作成された画像を見ることにより、超音波素子の最適位置を調整することが開示されている。しかし、この方法では、超音波Bモード測定による膀胱画像を見ながらの位置調整であり、調整に時間がかかる。また多数の超音波素子を有する大型の超音波尿量測定器でしか実現できない。
【0004】
また、特許文献3(特開2000−210286号公報)では、行列状に配置された多くの超音波素子を固定しておき、その中において最も感度の高い超音波素子列を使用して指標値を求めることが開示されている。しかし、この超音波尿量測定器では、超音波素子の位置や角度を調整することはできない。また、実際に計測した尿量ではなく、受信感度のみに基づき超音波素子の選択を行っているため、最も適切な位置や角度に超音波素子を配置することはできない。
【0005】
また、超音波尿量測定器において、その測定周波数を変えるものとして、例えば、特許文献4(US6565512号)に、2次元的に配置した多数の超音波素子を用いて、膀胱内の尿量をモニターし、その尿量が所定値を超えた場合にアラームを発すること、及び、尿量が前記所定値の75%を超えたときにモニター周波数をあげることが開示されている。
さらに、特許文献5(特表2007−508857号公報)では、周波数掃引法を用いて膀胱内の尿量を測定している。ここでは、膀胱が充満しているときに、より高いサンプリングレートが使用されることが開示されている。
しかし、これら特許文献4,5では、測定周波数を変化させる具体的な構成については記載されていない。
【0006】
また、超音波尿量測定器を用いて排尿日誌を作成するものとして、特許文献6(特開2011−183142号公報)では、12個の超音波素子を用い膀胱体積を求め、さらにデータ処理装置により排尿日誌を自動記録することが記載されている。しかし、この特許文献6では排尿日誌を記録するための具体的な構成については記載されていない。
【0007】
また、特許文献7(特開2014−23813号公報)では、測定対象者が少なくとも尿意に対する切迫感及び/又は残尿感がある場合に、それらの愁訴情報が測定対象者により入力され、排尿記憶手段に記憶されることが開示されている。しかし、この特許文献7では、愁訴情報が記録されるが、その記録は後に確認できるだけであり、過活動膀胱などで苦しむ測定対象者の排尿活動を直接に手助けすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4677615号公報
【特許文献2】特表2009−512532号公報
【特許文献3】特開2000−210286号公報
【特許文献4】米国特許第6565512号
【特許文献5】特表2007−508857号公報
【特許文献6】特開2011−183142号公報
【特許文献7】特開2014−23813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高精度に被測定者の尿量を測定することができ、被測定者にとって利便性がよい超音波尿量測定器及び超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の超音波尿量測定器は、被測定者の腹部に装着され、該被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部と、前記演算部で算出された尿量を時系列的にグラフ表示する表示部と、を備える超音波尿量測定器であって、前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択可能とするモード選択部と、前記位置決めモードが選択されている間に、前記演算部により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部とを有し、前記最大値及び/又は前記許容値が、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として前記表示部のグラフ上に表示され、前記位置決めモードが選択されている間に測定された尿量が前記位置決め指標値以上に到達したときに報知する報知部を有する、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記超音波制御部は、前記測定モードでの測定周期が一の測定周期、前記位置決めモードでの測定周期が前記一の測定周期より短い他の測定周期となるように、前記超音波素子を制御することが好ましい。
【0013】
また、前記表示部は、前記最大値に応じて前記グラフの表示スケールを変更することができることが好ましい。
【0014】
そして、前記表示部は、測定された尿量を棒の長さで表すことにより、所定時間範囲内で測定された複数の尿量を時間軸方向に並べた棒グラフで表示し、前記位置決め指標値を該棒グラフ上に時間軸方向に伸びる直線で表示するようにしても良い。
【0015】
さらに、前記表示部は、トイレトレーニングまたは膀胱訓練の少なくとも一方に用いられる膀胱内の尿量を表示するものであってもよい。
【0016】
また、本発明の超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法は、被測定者の腹部に装着され、該被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部と、前記演算部で算出された尿量を時系列的にグラフ表示する表示部と、を備えた超音波尿量測定器における超音波プローブの位置決め方法であって、前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択する第1ステップと、前記第1ステップで前記位置決めモードが選択されている間に、前記演算部により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値を示す最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する第2ステップと、前記最大値及び/又は前記許容値を、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として前記表示部のグラフ上に表示する第3ステップと、前記位置決めモードが選択されている間に測定された尿量と前記位置決め指標値とを比較する第4ステップと、その測定された尿量が位置決め指標値以上に到達したときに報知する第5ステップを有する、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の超音波尿量測定器は、被測定者の腹部の測定位置に装着され、該被測定者の膀胱に向けて超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を算出する演算部と、備える超音波尿量測定器であって、前記演算部は、前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定する位置決めモードにおいて、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブが配置された状態で膀胱内の尿量を算出し、前記超音波尿量測定器は、前記位置決めモードの間に前記演算部により算出された尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部と、前記位置決めモードにおいて、前記演算部により算出された尿量と、前記指標値記憶部に記憶された最大値及び/又は前記許容値との差を検出する比較部と、を有することを特徴とする。
【0023】
また、前記超音波尿量測定器は、前記比較部の比較結果に基づき、アラームを報知する報知部を有することが好ましい。
【0024】
また、前記超音波尿量測定器は、前記位置決めモードにおいて前記演算部にて算出された尿量と、前記指標値記憶部に記憶された前記最大値及び/又は前記許容値とを、グラフ表示する表示部を更に備えることが好ましい。
【0025】
そして、前記超音波尿量測定器は、前記演算部にて複数の時刻にそれぞれ算出された尿量をグラフ表示する表示部を備え、前記表示部は、前記位置決めモードと、前記測定位置に装着された状態で膀胱内の尿量を測定する測定モードとで、前記グラフ表示の時間スケールを変更することができるようにしてもよい。
【0029】
そして、前記超音波尿量測定器は、トイレトレーニングまたは膀胱訓練の少なくとも一方に用いられる膀胱内の尿量を表示する表示部をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、前記位置決めモードが選択されている間に、前記演算部により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値が、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として前記表示部のグラフに表示される。そのため、この位置決め指標値に基づいて、高精度に被測定者の尿量を測定することのできる超音波プローブの位置を容易に決めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態における概略ブロック図である。
図2】超音波素子を被測定者に取り付けた状態を示す概略図である。
図3】超音波尿量測定器の画面とモード選択ボタンを示す概略図である。
図4】超音波素子で受信する反射波の波形の概略図である。
図5】超音波素子の発信周期と測定周期を説明するためのタイムチャートである。
図6図1を位置決めモードを説明するために具体的に記した概略ブロック図である。
図7】位置決めモードにおける表示部の表示例とモード選択ボタンを示す概略図である。
図8】5個の超音波反射波に基づく蓄尿量値を説明するためのタイムチャートである。
図9】位置決めモードを説明するフローチャートである。
図10】10個の超音波反射波に基づく蓄尿量値を説明するためのタイムチャートである。
図11】アラームモードにおける表示部の表示例を示す概略図である。
図12図1を低消費電力モードを説明するために具体的に記した概略ブロック図である。
図13】低消費電力モードを説明するフローチャートである。
図14図1を演算部のスリープ状態を可能にするタイマー部を具体的に示した概略ブロック図である。
図15】尿量管理データを作成する尿量測定システムの一例を示す概略ブロック図である。
図16図15のシステムで測定された蓄尿量等の各種データを画面に表示した測定器本体の正面図である。
図17】測定データ記憶部に記憶された各時刻における蓄尿量の一例を表形式で表したものである。
図18】測定データ記憶部に記憶された尿意時刻の一例を表形式で表したものである。
図19】(a)及び(b)は、尿意入力部に尿意信号が入力された際に、尿意時蓄尿量値を表示部に表示した表示例である。
図20】尿量管理データの一例を表形式で表した第1表示例である。
図21】尿量管理データの一例を表形式で表した第2表示例である。
図22】尿量管理データの一例をグラフとして表したものである。
図23】尿量管理データの一例を表形式で表した第3表示例である。
図24】尿量管理データの一例を表形式で表した第4表示例である。
図25図15の尿量測定システムの他の例を示す概略ブロック図である。
図26】尿量管理データの一例を表形式で表した第5表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<基本構成の実施形態>
以下に、図1図2図3に基づいて本発明の実施形態における超音波尿量測定器の構成について説明する。図1に示すように、超音波尿量測定器1は、超音波プローブ10と制御部20とから主に構成されている。
【0033】
図2に示すように、前記超音波プローブ10には、膀胱に対して上下に開く扇状に超音波を発信して膀胱からのその反射波を受信することができるように、複数(図中4個)の超音波素子11が直線状に一列に並べて設けられている。具体的には、その下端部が恥骨上端部に対応する腹部表面上に位置して、前記複数の超音波素子11が膀胱の上下方向に沿って並ぶように、超音波ゼリー等の超音波伝達媒体を介して固定される。
【0034】
図1に示すように、前記制御部20は、大きく分けて、超音波素子11による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部21と、被測定者や医師等の医療従事者が入力データを入力する入力部22と、尿量に関する種々のデータを記憶する記憶部23と、前記超音波制御部21からの反射波データ等に基づいて尿量に関する種々の演算を行う演算部24と、該演算部24で演算された演算データや入力データ等を出力するための出力部25と、前記演算データや入力データに基づいてアラームを発信するための報知部としてのアラーム部26と、前記演算データや入力データ等を表示するための表示部27とを備えている。演算部24は制御部20内の他の要素をコントロールする役目も担っており、CPUなどから構成される。
【0035】
前記超音波制御部21は、超音波素子11における超音波の発信制御を行う他に、該超音波素子11で受信した反射波を増幅すると共にデジタル信号に変換して反射波データとする受信制御をも行うものである。この反射波データは前記記憶部23で記憶される。
前記入力部22は、後述するモード選択に関する信号やその他のデータを入力データとして入力するものである。これらの入力データは前記記憶部23に記憶される。
【0036】
前記演算部24は、前記反射波データに基づいて膀胱内の尿量を測定周期毎に算出する蓄尿量算出部24aを有している。前記蓄尿量算出部24aで算出された尿量は前記記憶部23に記憶される。
【0037】
前記表示部27は、前記蓄尿量算出部24aで算出された尿量を時系列的にグラフ表示したり、尿量測定に関する種々のデータを表示したりするものであり、具体的には図3に示すような超音波尿量測定器1の画面が該当する。この画面に表示されるグラフ表示の具体例として、横軸を時間、縦軸を尿量とし、所定時間範囲内で測定された複数の尿量を時間軸方向に並べた棒グラフの表示が挙げられる。また、前記画面中の186という数値は最新の測定尿量を示している。なお、膀胱内の尿量の表示は、例えば折れ線グラフによる表示であってもよい。
【0038】
前記出力部25は、前記蓄尿量算出部24aで算出された膀胱内の尿量等の演算データや前記入力部22で入力された入力データ等の種々のデータを超音波尿量測定器1と接続する外部機器に出力するものである。このとき、超音波尿量測定器1と外部機器との接続は、有線、無線を問わない。
【0039】
次に、図4図5に基づいて、本実施形態で用いられている膀胱内の尿量の算出方法について説明する。
まず、超音波素子11から発信された超音波は組織間の境界において反射される。そのため、超音波素子11から膀胱に向けて発信された超音波は膀胱の前壁と後壁とで反射し、この反射波が超音波素子11で受信される。
【0040】
図4は、各超音波素子11にて受信される反射波の波形の概略図である。該概略図は、縦軸を反射強度、横軸を発信からの時間(または距離)とした図で表される。ここで、i番目の超音波素子11にて受信した波形のうち後壁からの反射波のピーク強度をPi、前壁及び後壁からの反射波強度のピーク間距離をDiとすると、膀胱内の蓄尿量EUは、以下の式(1)、(2)に基づいて算出することができる。
PDj=ΣPi×Di ・・(1)
EU=PD×R ・・(2)
ここで、PDjは測定指標値、EUは算出される膀胱内の尿量、PDは後に詳述する平均指標値、Rは解剖構造に基づく個人差や測定中の姿勢に対応して定められる係数を示す。また、PDjのjは後述する所定の発信周期で発信される超音波の順番を意味しており、ここでは1から10までの整数となっている。また、Pi,Diのiは前記超音波プローブ10に設けられた複数の超音波素子11に付された番号を意味しており、ここでは1から4までの整数となっている。
【0041】
本実施の形態の超音波尿量測定器では超音波Aモードにより測定のため、測定結果がノイズの影響を受け易い。このため、膀胱内尿量の測定においては、複数の時刻に得られた超音波反射波を使用し、統計処理によりノイズを除去することが望ましい。具体的には、前記超音波素子11は、超音波を一定の発信周期毎、例えば0.1秒毎に1回、計10回(一秒間)発信する。各発信周期における各測定指標値PDjは、各超音波素子11で受信される反射波の反射強度Piとピーク間の距離Diとの積をi=1〜4につき加算することにより得ることができ、その結果、1回の測定において10個の測定指標値PDjを得ることができる。そして、これら測定指標値PDj(j=1〜10)に対して、ノイズとなる最高値・最低値を除去するなどし、さらに適宜の平均化処理を行うことで、平均指標値PDを得ることができる。そして、該平均指標値PDに係数Rを乗ずることで、各測定周期における膀胱内の尿量EUを算出することができる。なお、このようにして算出された尿量EUは、測定時刻と共に時系列的に前記記憶部23に記憶される。
【0042】
このような本実施の形態の超音波尿量測定器は、外部からの入力部22への入力に基づき、次の動作を行う。
(A)超音波素子の位置決め(位置決めモード)
(B)残尿測定(残尿モード)
(C)定時測定(定時モード)
(D)尿量報知測定(アラームモード)
(E)低消費電力尿量報知測定(低消費電力モード)
(F)尿量管理データの作成/記録
以下に、これらの動作を説明する。なお、以下では前記の(B)〜(E)を総称して測定モードと記す。
【0043】
(A)超音波素子の位置決め(位置決めモード)
超音波尿量測定器1においては、前述したように測定時に超音波プローブ10を図2に示すようにその下端部が恥骨上端部に対応する腹部表面上に位置するように装着する必要性があるが、その測定値は超音波プローブ10の装着位置・角度に対して敏感に反応してしまう。したがって、前記尿量をより正確に測定するためには、超音波プローブ10を測定に適した装着位置・角度に高精度に位置決めする必要性があるが、その位置決めは必ずしも容易ではなく、ある程度の経験を要していた。そこで、本実施形態に係る超音波尿量測定器1においては、超音波プローブ10を被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で、膀胱内に蓄積された尿量を所定の測定周期毎に測定するための前述のような測定モード(後述する(B)(C)(D)(E)の動作)と、該測定モードにおいて超音波プローブ10を装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に超音波プローブ10を移動させながら前記尿量を測定する位置決めモードとを選択的に切り替えることができるようになっている。ここで、仮測定位置とは、膀胱内の尿量を高い精度で測定することのできる位置を見つけることを目的として、超音波プローブ10を一時的に装着する位置をいう。
【0044】
以下に、前記位置決めモードについて具体的に説明する。
図6は、図1の構成図を位置決めモードを説明するために具体的に記した図である。図6に示すように、前記制御部20は、大きく分けて、超音波制御部21と、入力部22と、記憶部23と、演算部24と、出力部25と、アラーム部26と、表示部27とを有しており、これらの概略的な構成は前記の<基本構成の実施形態>の項に示したとおりであるので、必要な場合以外は重複した説明を省略する。
【0045】
前記表示部27は、前記蓄尿量算出部24aで算出された尿量を時系列的にグラフ表示したり、尿量測定に関する種々のデータを表示したりするものであり、具体的には図7に示すような超音波尿量測定器1の画面が該当する。この画面に表示されるグラフ表示の具体例として、横軸を時間、縦軸を尿量とし、所定時間範囲内で測定された複数の尿量を時間軸方向に並べた棒グラフの表示が挙げられる。また、前記画面中の186という数値は最新の測定尿量、243という数値は後述する位置決め指標値としての最大感度値(位置決め時における最大尿量値、以下「最大値」と記す)を示している。なお、膀胱内の尿量の表示は、例えば折れ線グラフによる表示であってもよい。
【0046】
前記入力部22は、モード選択ボタン群43のいずれかを押すことで前記各種測定モードと位置決めモードを切り替えるモード選択部22aを有している。具体的には、測定モードの選択中にモード選択ボタン群43の中の予め定められたボタンを押すことでモード選択部22aはモードを位置決めモードに切り替え、位置決めモードの選択中にモード選択ボタン群43のいずれかを押すことでモード選択部22aはモードを各種測定モードのいずれかに切り替える。
また、位置決めは測定開始毎に実施することが望ましいため、位置決めモードの切り替えを電源投入ボタン(図示せず)により行っても良い。この場合、電源投入時に必ず位置決めモードとなり、位置決めが実施されることになる。
【0047】
ここで、前記超音波制御部21は、前記各種測定モードでの測定周期が一の測定周期、例えば1分間となり、前記位置決めモードでの測定周期が前記一の測定周期よりも短い他の測定周期、すなわち1秒間となるように、前記超音波素子11を制御してもよい(図5参照)。もちろん、一の測定周期と他の測定周期は同じでも良い。また、1回の測定時における超音波の発信回数は図5に示すように例えば10回であるが、これに限られない。また、測定時の被測定者の体動などに応じて、測定毎に発信回数を変えてもよい。
前記したように膀胱内尿量の算出は、過去及び現在の複数の時刻における超音波反射波(第1個数の反射波)に基づくデータを統計処理することで行われる。本実施の形態の例では前記各種測定モードでは10個の連続する時刻における超音波反射波に基づき膀胱内尿量が算出される。つまり、10個の反射波を得てから初めて膀胱内尿量値を算出することができる。このため膀胱内尿量値が算出されるまでには若干のタイムラグが生じる。また、多くの超音波反射波を用いるため、超音波素子11の位置の変更に対して、算出される膀胱内尿量の反応性に劣る。そこで、位置決めモード時には、尿量測定に用いる反射波の数を第1個数から第2個数に減らす、例えば通常測定モードにおける10個の超音波反射波ではなく、5個の超音波反射波に基づき膀胱内尿量を算出するように、統計処理の方法を変更しても良い。この場合、位置決めモードに入ってから最初に膀胱内尿量が出力されるまでの時間は、通常の測定モードに入ってから最初に膀胱内尿量が出力されるまでの時間よりも短くなり、且つ、超音波プローブ10の位置変化に対する反応性も高くなる。
さらに、図8に示すように、複数の膀胱内尿量値の算出において同じ超音波反射波を重複利用しても良い。つまり、5個の超音波反射波に基づき膀胱内尿量を算出する場合、超音波反射波U1〜U5に基づき時刻T5に尿量M1を算出し、超音波反射波U2〜U6に基づき時刻T6に尿量M2を算出するようにしても良い。この場合、尿量の算出間隔を超音波の発信間隔まで狭めることができる。例えば、超音波の発信間隔が0.1秒の例では、0.1秒間隔で膀胱内尿量値を連続して得ることができる。
【0048】
図6に示すように、前記記憶部23は、前記位置決めモードが選択されている間に測定された複数の仮測定位置における尿量のうち最大値を記憶する指標値記憶部23aを有している。また、前記演算部24は、位置決めモードが選択されている間に測定された尿量と超音波プローブ10を位置決めするための適正値を示す位置決め指標値とを比較する第1比較部24cを有している。算出された尿量値が最大値以上である場合には、指標値記憶部23aに記憶されている最大値がその算出された尿量値に更新される。また、算出された尿量値が最大値より小さい場合には、指標値記憶部23aに記憶されている最大値が維持される。なお、指標値記憶部23aに記憶されている前記最大値は、算出された尿量値が該最大値より大きい場合に更新するとしてもよい。
【0049】
また、前記指標値記憶部23aには、最大値に対して許容できる感度であることを意味する許容値も記憶される構成としてもよい。この許容値は、最大値を超えない範囲で設定することができ、最大値に所定の割合を乗じることで自動的に設定されるものであっても、入力部22から手動で入力されるものであってもよい。この場合において、前記許容値の自動的な設定は、演算部24に備えられている許容値算出部24bによって行われる。
【0050】
図7に示すように、前記表示部27を構成する画面に表示される棒グラフ上には、前記最大値が時間軸方向に伸びる直線により第1の位置決め指標値41として表示される。また、前記許容値を使用する場合にはその許容値が時間軸方向に伸びる直線により第2の位置決め指標値42として表示される。また、前記表示部27は、前記最大値に応じて前記グラフの表示スケールを変更することができる。例えば、前記最大値が更新されて大きくなると、それに伴って棒グラフの尿量軸の最大値が大きくなる。また、前記棒グラフ上には、前記第1の位置決め指標値41又は第2の位置決め指標値42の少なくとも一方が表示されていればよく、必ずしも第1の位置決め指標値41及び第2の位置決め指標値42を表示する必要はない。
【0051】
また、前記アラーム部26は、位置決めモードで算出された尿量が前記第1の位置決め指標値41又は第2の位置決め指標値42以上に到達した場合に、アラームを発信することで被測定者等に報知するものである。アラームとしては、音、画面、又は振動による発信があるが、これに限られない。また、第1の位置決め指標値41と第2の位置決め指標値42に用いられるアラームは異なるものであってもよい。さらには、アラーム部26は、算出された尿量と第1の位置決め指標値41又は第2の位置決め指標値42の差の逆数に応じた間隔で、音響信号または振動を発してもよい。例えば、算出された尿量が第1の位置決め指標値41または第2の位置決め指標値42に近い場合にはアラーム部26は発信間隔の狭い振動または音響を発し、一方、算出された尿量と第1の位置決め指標値41第または第2の位置決め指標値42との差が大きい場合には発信間隔の長い音響信号または振動を発してもよい。これは、演算部24にて、算出された尿量と第1の指標値41又は第2の位置決め指標値42の差を求め、それに係数を掛けることでアラーム間隔を決定したり、前記の差と複数の閾値と比較し、その比較結果に基づきアラーム間隔を段階的に決定することにより実現できる。
【0052】
次に、図9に基づいて、超音波尿量測定器1を用いた超音波プローブ10の位置決め方法について説明する。以下に説明する位置決め方法では、前記許容値(第2の位置決め指標値42)を設定しない例として説明する。
【0053】
まず、超音波尿量測定器1に取り付けられている前記モード選択ボタン43を押すことにより、測定モードから位置決めモードに変更される(ステップS10)。このステップS10が本発明の第1ステップに該当する。次に、前記指標値記憶部23aに記憶されている最大値がリセットされる(ステップS11)。次に、前記蓄尿量算出部24aは、前記他の測定周期で膀胱内の尿量を測定する(ステップS12)。測定された尿量は表示部27に数値及び棒グラフとして表示される(ステップS13)。
【0054】
次に、測定された尿量と最大値とが前記第1比較部24cで比較される(ステップS14)。このステップS14が本発明の第4ステップに該当する。測定された尿量が最大値以上である場合には、測定された尿量が最大値として第1比較部24cで更新される(ステップS15)。このステップS15が本発明の第2ステップに該当する。一方、測定された尿量が最大値未満である場合には、前述したステップS15及び後述するステップS16〜S18を行わずに、位置決めモード解除の可否が判断される(ステップS19)。
【0055】
ステップS15の次に、更新された最大値に従って、画面上の棒グラフに表示されている位置決め指標値41が更新されると共に(ステップS16)、その更新された位置決め指標値41に従って棒グラフのスケールが変更される(ステップS17)。そして、アラームを発信することで、位置決め指標値41が更新されたことを被測定者等に報知する(ステップS18)。また、このステップS17が本発明の第3ステップに該当し、ステップS18が本発明の第5ステップに該当する。
【0056】
次に、前述したステップS19において、位置決めモード解除が実行されているか否かを判断する。位置決めモード解除が実行されない場合は、ステップS12に戻る。従って、位置決めモードが終了するまで、前述したステップS12〜S19が繰り返し実行される。このステップS19が本発明の第1ステップに該当する。そして、前記ステップS12〜S19を繰り返し実行する中で、前記最大値に基づいて測定モードでの尿量測定に適した装着位置・角度を確認した後に、位置決めモードが解除される。位置決めモードの解除は前記モード選択ボタン群43のいずれかを押すことで行われ、これにより測定モードに切り替わる(ステップS20)。そして、各種測定モードに切り替わることで、超音波プローブ10の位置決め方法が終了する。超音波素子11の装着位置・角度が決定されると、その状態で超音波素子11を腹部に固定する。固定は接着テープやゲル/ジェルなどにより行うことができる。
本実施の形態の位置決めモードによれば、位置決めモードが選択されている間に各仮測定位置で測定された尿量値のうちの最大尿量値すなわち最大値、及び/又は許容値が、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として、表示部における前記位置決めモードで測定された尿量値のグラフ上に表示される、またアラームにより位置決めがサポートされる。そのため、該指標値に基づいて、超音波プローブを各種測定モードでの尿量測定に適した装着位置・角度に対し容易に位置決めすることが可能となる。
【0057】
(B)残尿測定(残尿測定モード)
次に、残尿測定について説明する。残尿測定では、測定時点において膀胱内に蓄えられている尿量を測定する。
残尿測定は、上述した位置決めモードにより超音波素子11の位置が決定された状態で実施されることが好ましい。この場合、例えば位置決めモードにて超音波素子11の位置が決定された際に、モード選択ボタン群43中の残尿測定用のボタンが押圧されることで、位置決めモードが終了するとともに、残尿測定モードが開始される。
残尿測定時には、超音波プローブ10内の各超音波素子11から超音波が発信される。各超音波素子11はその反射波を受け、演算部24が前記の<基本構成の実施形態>で示した(1)(2)式を使用して、膀胱内尿量を算出する。具体的には、各超音波素子11は例えば0.1秒間隔にて10回超音波を発信し、10個の反射波データを得る。そして演算部24がその10個の反射波データを用い、統計処理の手法によりノイズが除去された膀胱内尿量を算出する。
表示部27は演算部24から算出された膀胱内尿量を受け取り、その数値を表示する。
【0058】
(C)定時測定(定時測定モード)
定時測定は、上述した位置決めモードにより超音波素子11の位置が固定された状態で実施されることが好ましい。この場合、例えば、位置決めモードにて超音波素子11の位置が決定された際に、モード選択ボタン群43中の定時測定用のボタンが押圧されることで、位置決めモードが終了するとともに、定時測定モードが開始される。
定時測定モードでは、残尿測定のように膀胱内尿量を一回だけ測定するのではなく、所定期間連続的に尿量を算出し、算出結果を数値及び/またはグラフにより表示する。例えば、1分に一度の一定間隔で膀胱内尿量を測定し続け、その結果をグラフ表示するとともに、測定時刻と関連付けて記憶する。すなわち、蓄尿量算出部24aが、所定の測定周期毎、例えば1分毎に1回、膀胱内の尿量を算出する。このとき、前記超音波素子11は、この1回の測定周期における尿量を算出するために、超音波を一定の発信周期毎、例えば0.1秒毎に1回、計10回(一秒間)発信する。従って、各発信周期における各測定指標値PDjは、各超音波素子11で受信される反射波の反射強度Piとピーク間の距離Diとの積をi=1〜4につき加算することにより得ることができ、その結果、1回の測定周期において10個の測定指標値PDj(前記(1)(2)式参照)を得ることができる。そして、これら測定指標値PDj(j=1〜10)に対して適宜の平均化処理を行うことで、平均指標値PDを得ることができ、該平均指標値PDに係数Rを乗ずることで、各測定周期における膀胱内の尿量EUを算出することができる。なお、このようにして算出された尿量EUは、測定時刻と共に時系列的に前記記憶部23に記憶される。また表示部27により図3に示すようにグラフ表示および数値表示される。
【0059】
なお、ここでは測定周期を1分として説明したが、超音波を0.1秒毎に発信する場合には測定周期は最短で0.1秒に設定することができる。図10はこの場合の測定間隔を説明する図である。図10に示すように、定時測定モード開始から時刻T10に最初に算出される膀胱内尿量値N1はU1〜U10の超音波発信に基づく超音波反射波から求められ、次に時刻T11に算出される膀胱内尿量値N2はU2〜U11の超音波発信に基づく超音波反射波から求められる。このように、膀胱内尿量値の検出を同じ超音波反射波を重複して用いて算出することにより、超音波の発信間隔まで、膀胱内尿量値の測定間隔を縮小することができる。
【0060】
(D)尿量報知測定(アラームモード)
アラームモードは、上述した位置決めモードにより超音波素子11の位置が固定された状態で実施されることが好ましい。この場合、例えば、位置決めモードにて超音波素子11の位置が決定された際に、モード選択ボタン群43中のアラームモード用のボタンが押圧されることで、位置決めモードが終了するとともに、アラームモードが開始される。
アラームモードでは、定時測定と同様に、膀胱内尿量を連続的に算出する。例えば、1分に一度の一定間隔で算出する。そして、算出された膀胱内尿量が第2閾値(アラーム尿量)以上となった場合にアラームを発し、被測定者に通知する。
すなわち、図1を参照して、超音波制御部21からの信号に基づき、超音波素子11から例えば所定の間隔で超音波を発信する。そして、その反射波を超音波素子11が受信し、演算部24が反射波に基づき膀胱内尿量を算出する。算出方法は前記の定時測定モードと同じであるが、アラームモードでは、演算部24が算出された膀胱内尿量と第2閾値(アラーム尿量)とを比較して、膀胱内尿量がアラーム尿量以上になった場合にアラームを発する。アラームとしては音、画面、又は振動による発信があるが、これに限られず、被測定者等にアラームを伝達することのできるものであればよい。
【0061】
このアラームモードにおいて、前記表示部27は、アラーム尿量、膀胱内の尿量等の尿量測定に関する種々のデータを表示したり、前記尿量を時系列的にグラフ表示したりするものであり、具体的には図11に示すような超音波尿量測定器1の画面が該当する。この画面に表示されるデータの具体例として、アラーム尿量を示すA:350、後述する第1の時間間隔を示すN:60、最新の膀胱内の尿量を示す数値46、後述する第2の時間間隔を示すPA:10の表示が挙げられる。また、この画面に表示されるグラフ表示の具体例として、横軸を時間、縦軸を尿量とし、複数の尿量を時間軸方向に並べた棒グラフの表示が挙げられる。なお、棒グラフは、例えば折れ線グラフによるものであってもよい。
アラーム尿量は、通常、測定者が排尿すべき尿量に決められる尿量であり、被測定者毎の膀胱の大きさや生活習慣に基づき、あらかじめ設定される。具体的には、前記の定時モードでの測定を何日か実行して、膀胱内尿量の変化を観察することで、排尿すべき尿量を決めることができる。また、他の実施例では、定時モードでの測定の履歴データから膀胱内最大尿量を求め、その膀胱内最大尿量に基づき、例えば膀胱内最大尿量の95%などにアラーム尿量を自動的に設定しても良い。
このアラームモードによれば、過活動膀胱の患者など尿意の感じ方に問題のある患者に適切なタイミングで膀胱内に尿が充満していることを報知することが可能になる。
【0062】
(E)低消費電力尿量報知測定(低消費電力モード)
本実施の形態の超音波尿量測定器は、図1における制御部20及び/または超音波素子11がバッテリーにより駆動される。上述した定時モードやアラームモードでは長時間連続して測定することになるため、消費電力を抑えることが望まれる。低消費電力モードでは前記のアラームモードを消費電力を抑えて実行する。
低消費電力モードは、上述した位置決めモードを経て超音波素子11の位置が固定された状態で実施される。例えば、ボタン群43の中の位置決めモードを開始するボタンが押されることにより、または電源投入により上述のように位置決めモードが開始され、位置決めが完了した後に、低消費電力モードが選択されることで、位置決めモードが終了するとともに、低消費電力モードが開始される。本実施の形態ではボタン群43の中の一つが二度押圧されることで、低消費電力モードが選択される。
【0063】
以下に、低消費電力モードについて具体的に説明する。
図12は、図1の構成図を低消費電力モードを説明するための具体的に記した構成図である。図12に示すように、前記制御部20は、大きく分けて、超音波制御部21と、入力部22と、記憶部23と、演算部24と、出力部25と、アラーム部26と、表示部27とを有しており、これらの概略的な構成は前記の<基本構成の実施形態>の項に示したとおりであるので、必要な場合以外は重複した説明を省略する。
【0064】
前記演算部24は、膀胱内の尿量と後述する所定の第1閾値及び第2閾値とを比較する第2比較部24dと、前記反射波データに基づいて膀胱内の尿量を算出する蓄尿量算出部24aとを有している。該蓄尿量算出部24aで算出された膀胱内の尿量は前記記憶部23に記憶される。
【0065】
前記アラーム部26は、前記蓄尿量算出部24aで演算された膀胱内の尿量と、被測定者に排尿を促す尿量を意味するアラーム尿量とを第2比較部24dで比較し、前記膀胱内の尿量が前記アラーム尿量以上である場合に、アラームを発信するものである。また、このアラーム尿量が前記第2閾値に相当する。アラームとしては、音、画面、又は振動による発信があるが、これに限られず、被測定者等にアラームを伝達することのできるものであればよい。
【0066】
前記表示部27は、アラーム尿量、膀胱内の尿量等の尿量測定に関する種々のデータを表示したり、前記尿量を時系列的にグラフ表示したりするものであり、具体的には図11に示すような超音波尿量測定器1の画面が該当する。この画面に表示されるデータの具体例として、アラーム尿量を示すA:350、後述する第1の時間間隔を示すN:60、最新の膀胱内の尿量を示す数値46、後述する第2の時間間隔を示すPA:10の表示が挙げられる。また、この画面に表示されるグラフ表示の具体例として、横軸を時間、縦軸を尿量とし、複数の尿量を時間軸方向に並べた棒グラフの表示が挙げられる。なお、棒グラフは、例えば折れ線グラフによるものであってもよい。
【0067】
膀胱内の蓄尿量の算出方法については、前記の<基本構成の実施形態>の項に示した(1)及び(2)の算出方法が用いられ、当該算出方法により測定周期毎の膀胱内の尿量EUが算出される。算出された尿量EUは、時系列的に前記記憶部23に記憶される。
【0068】
以上の算出方法に基づいて、前記超音波尿量測定器1においてより精度の高い膀胱内の尿量及びその時間的変化のデータを取得するためには、超音波の測定周期をできるだけ短くして測定することが望ましいが、消費電力が増大するという問題がある。一方で、尿量を測定する期間の必ずしも全期間において均一なデータを必要としない場合もある。以下に、そのような場合の一例として、膀胱内の尿量が、排尿を促すべき所定の第2閾値(アラーム尿量)に近づいたとき、すなわち測定された尿量が前記アラーム尿量よりも小さい所定の第1閾値(プレアラーム尿量)に達したときに、アラーム尿量に至るまでの期間においてより正確な尿量を取得するため、尿量の測定周期を短縮する場合、逆に言うと測定モードにおいて膀胱内尿量がプレアラーム尿量に到達するまでは測定周期を長くして消費電力を抑制する例に挙げて説明する。
【0069】
まず、前記測定周期の変更の基準となる所定の第1閾値について説明する。前述したように、前記第1閾値は、膀胱の尿量がアラーム尿量に到達する直前であるか否かを判断するための値である。本実施形態では、該プレアラーム尿量は前記データ入力部22で入力され、又は前記アラーム尿量に基づいて算出される。このようにして設定されたプレアラーム尿量が記憶部23に記憶される。
【0070】
前記第2比較部24dでは、前記蓄尿量算出部24aで算出された膀胱内の尿量とプレアラーム尿量が比較される。前記膀胱内の尿量が前記プレアラーム尿量未満である場合には、膀胱の尿量はアラーム尿量に到達する直前ではないと判断され、測定周期を短くすることなく所定の第1の時間間隔で膀胱内の尿量を測定する。本実施形態では、このときの第1の時間間隔は図5に示すように1分である。一方で、前記膀胱内の尿量が前記プレアラーム尿量以上である場合には、膀胱の尿量はアラーム尿量に到達する直前であると判断され、前記測定周期を短くして所定の第2の時間間隔で膀胱内の尿量を測定する。本実施形態では、このときの第2の時間間隔は10秒である。
前記したように測定モードの開始の前には通常位置決めモードが実施される。本実施の形態では、膀胱内の尿量がプレアラーム尿量未満である場合の測定周期(第3周期)は、位置決めモードでの測定周期(第1周期)および膀胱内尿量がプレアラーム尿量以上の場合の測定周期(第2周期)よりも長い。これにより、位置決めを正確にするとともにアラーム尿量付近での測定間隔が短くなるため、精度の高い測定を実現できる。なお、位置決め時の測定周期(第1周期)は、膀胱内尿量がプレアラーム尿量以上の場合の測定周期(第2周期)と同じでも良い。
また、1回の測定において利用する超音波反射波の数は、膀胱内尿量がプレアラーム尿量未満である場合(第3個数)に、プレアラーム尿量以上である(第2個数)場合よりも少なくしても良いが、データ精度を確保するため、同じ数であることが望ましい。なお、位置決めモードでは、1回の測定において利用する超音波反射波の数(第1個数)は、プレアラーム尿量以上の場合に利用する超音波反射波の数(第2個数)よりも少ない回数とすることが望ましい。
【0071】
前記超音波制御部21は、前記測定周期毎に膀胱内の尿量を測定することができるように、超音波素子11から発信される超音波を制御する。すなわち、膀胱内の尿量がプレアラーム尿量未満であるときは、所定の第1の時間間隔で超音波素子11から超音波が発信される。また、膀胱内の尿量がプレアラーム尿量以上であるときは、少なくとも前記アラーム尿量に到達するまでの間、前記第1の時間間隔よりも短い所定の第2の時間間隔で超音波素子11から超音波が発信される。
【0072】
前記表示部27は、前記記憶部23に記憶されたプレアラーム尿量を前記棒グラフ上に表示する。このとき、前記測定周期は、該膀胱内の尿量がプレアラーム尿量未満である場合とプレアラーム尿量以上である場合とで異なるが、前記棒グラフの表示間隔は、前記第1の時間間隔に合わせた間隔であっても、前記第2の時間間隔であっても良いし、またそれらとは異なる時間間隔であっても良い。表示間隔が第1の時間間隔の場合、測定周期が第1の時間間隔である時間帯では、測定された全ての膀胱内の尿量を棒グラフとして表示することが可能であるが、測定周期が第2の時間間隔である時間帯では、プレアラーム尿量以上となる全ての膀胱内の尿量を棒グラフとして表示することはできない。このときは、記憶部23に記憶されている膀胱内の尿量の中から前記表示間隔毎のデータが抽出されて、棒グラフ上に表示される。このデータの抽出方法としては、前記表示間隔の中で算出された膀胱内の尿量の最大値を抽出する方法や、平均値を算出する方法等がある。
一方、表示間隔が第2の時間間隔の場合、測定周期が第2の時間間隔である時間帯では、プレアラーム尿量以上となる全ての膀胱内の尿量が棒グラフとして表示されるが、測定周期が第1の時間間隔である時間帯では、測定されていない時刻における測定値が抜けた棒グラフとなる。このとき、第2の時間間隔が第1の時間間隔の整数倍であれば、実際の測定値をより多くグラフ上に表示できる。
【0073】
次に、図13に基づいて、低消費電力モードにおける超音波尿量測定器1を用いた尿量の測定方法について説明する。まず、アラーム尿量が被測定者等によってデータ入力部22に入力される(ステップS30)。次に、プレアラーム尿量が設定される(ステップS31)。このとき、プレアラーム尿量は、前記データ入力部22によって入力されるものであっても、アラーム尿量に所定の定数を乗ずることで算出されるものであってもよい。
【0074】
次に、前記超音波素子11が被測定者の膀胱に向けて超音波を発信すると共にその反射波を受信し、受信した反射波が前記超音波制御部21で反射波データに変換され、前記蓄尿量算出部24aがこの反射波データに基づいて膀胱内の尿量を算出することで、膀胱内の尿量が測定される(ステップS32)。このときの前記膀胱内の尿量の測定周期は第1の時間間隔(1分間隔)である。そして、測定された膀胱内の尿量は、前記表示部27に表示され、前記出力部25に出力され、又は前記記憶部23に記憶される。
【0075】
次に、前記第2比較部24dで、算出された膀胱内の尿量とプレアラーム尿量とが比較される(ステップS33)。測定された膀胱内の尿量がプレアラーム尿量未満である場合には、ステップS32に戻り、継続して第1の時間間隔で超音波を膀胱に発信する制御を行う。従って、超音波素子11は、膀胱内の尿量がプレアラーム尿量以上となるまで、第1の時間間隔で超音波を膀胱に発信し、膀胱内の尿量を測定する。
【0076】
また、ステップS33において、測定された膀胱内の尿量がプレアラーム尿量以上である場合には、膀胱内の尿量がアラーム尿量に到達する直前であるため、前記超音波制御部21が測定周期を第2の時間間隔(測定周期10秒)に変更することで、前記超音波素子11は第2の時間間隔にて超音波を膀胱に発信し、膀胱からの反射波を受信する。また、超音波制御部21における反射波データへの変換、蓄尿量算出部24aにおける膀胱内の尿量の算出は、ステップS32と同様にして行われる(ステップS34)。
【0077】
次に、前記第2比較部24dで、測定された膀胱内の尿量とアラーム尿量とが比較される(ステップS35)。膀胱内の尿量がアラーム尿量未満である場合には、ステップS34に戻り、継続して第2の時間間隔で超音波を膀胱に発信し、膀胱内の尿量を測定する制御を行う。また、膀胱内の尿量がアラーム尿量以上である場合には、アラーム部26でアラームが発信される(ステップS36)。
【0078】
以上のように、低消費電力モードでは、算出された膀胱内の尿量に応じて前記測定周期が変更される。具体的には、膀胱内の尿量が所定の第1閾値以上となることで、前記アラーム尿量に到達する直前であると判断するときには、前記測定周期を短くすることで、膀胱内の尿量をより正確に算出することができる。一方で、膀胱内の尿量が所定の第1閾値未満であるため、前記アラーム尿量に到達する直前ではないと判断するときには、前記測定周期を長くすることで、超音波尿量測定器1の消費電力を抑えることができる。
【0079】
また、前記のように測定周期を短くすることに加えて、演算部24を構成するCPUをスリープ状態とすることにより、更に消費電力を抑えることが可能となる。
図14はバッテリー100、及び、CPUをスリープ状態とし又はCPUを復帰させるタイマー部28をも含めた本実施の形態の超音波尿量測定器の構成図である。前記タイマー部28は、電源制御回路101とタイマー・クロック回路102とを有しており、算出された膀胱内尿量がプレアラーム尿量以上である場合には、バッテリー100からの電力が電源制御回路101を介して演算部24を構成するCPUに供給され、CPUは通常動作する。そしてタイマー・クロック回路102のカウントに基づき、短い測定間隔での超音波発信・膀胱内尿量算出が実施される。
一方、算出された膀胱内尿量がプレアラーム尿量未満である場合には、CPUをスリープ状態とする。このとき、バッテリー100からCPUへは、電源制御回路101を介してCPUをスリープ状態に維持するだけの電力が供給される。そして、タイマー・クロック回路102のカウントにより次の超音波発信及び膀胱内尿量測定が指示されると、電源制御回路101から供給されるCPUへの電力供給が測定用の大きな電力となり、CPUが復帰して通常動作状態とされる。
なお、CPUがスリープ状態のときに入力部22から何らかの入力があった場合にはCPUをスリープ状態から回復させることが望ましい。このため、CPUのスリープ時においても入力部22には電源制御回路101より一定の電力を供給しておくことが望ましい。
このように、低消費電力定時測定モードでは、膀胱内尿量がプレアラーム尿量に到達するまで、尿量測定間隔を大きくし、更にCPUをスリープ状態とすることにより、消費電力を抑制することができる。
【0080】
(F)排尿日誌記録
以下に、前記超音波尿量測定器を用いた尿量管理データの作成/記録システムについて説明する。このシステムは、例えば、過活動膀胱等の排尿障害をもつ被測定者(患者)の膀胱訓練を計画するにあたって好適に利用されるものであり、被測定者の各測定時刻における蓄尿量(=膀胱内尿量)、排尿量と排尿時刻等の各種データが時系列的に記録された排尿日誌等の尿量管理データを自動的に作成し、記録するものである。なお、尿量管理データは前記した(B)残尿モード、(C)定時モード、(D)アラームモード、(E)低消費電力モードにおいて算出された膀胱内尿量を用いて作成され得る。
【0081】
図15は、図1の構成図を尿量管理データ作成方法を説明するために具体的に記した図である。図15に示すように、本実施形態において尿量測定システム30は、主に超音波プローブ10と制御部20とから成る測定器本体において構成されている。前記制御部20は、大きく分けて超音波制御部21と、入力部22と、記憶部23と、演算部24と、出力部25と、表示部27とを有しており、これらの概略的な構成については前記のとおりであるので、必要な場合以外は重複した説明は省略する。
【0082】
前記入力部22は、図16に示すように、押圧式の複数の操作子(ボタン)から成るものであって、このボタンを押圧することで適宜入力データが入力される。
【0083】
前記演算部24は、膀胱内尿量と所定の閾値とを比較する第3比較部24eと、前記反射波データに基づいて膀胱内尿量を演算する蓄尿量算出部24aとを有している。該蓄尿量算出部24aで演算された膀胱内尿量とその測定時刻は、前記記憶部23における測定データ記憶部23bに記憶される。なお、前記演算部24は、後に詳述する尿意時刻に対応する膀胱内尿量(尿意時膀胱内尿量)など、特定の時刻における膀胱内尿量を、前記測定データ記憶部23bに記憶された膀胱内尿量とその測定時刻等に基づいて算出することもできる。
【0084】
前記表示部27は、膀胱内の各時刻における膀胱内尿量等の各種データを画面表示するものである。図16に一例として示すように、例えば、表示部27には、横軸を時間、縦軸を膀胱内尿量とした棒グラフが表示されており、該グラフから膀胱内尿量及びその時間的変化を知ることができる。画面上には後述のMAX値等の種々のデータが表示される。
【0085】
膀胱内の蓄尿量の算出方法については、前記の<基本構成の実施形態>の項に示した(1)及び(2)の数式を用いた算出方法によって、測定周期毎の膀胱内の尿量EUが算出される。算出された尿量EUは、時系列的に前記記憶部23に記憶される。
なお、このようにして算出された膀胱内尿量EUは、時系列的に前記測定データ記憶部23bに記憶される。図17は、前記測定データ記憶部23bに記憶されている各時刻(1分毎の測定周期)における膀胱内尿量を表形式にして表したものである。
【0086】
次に、図15図16図24を用いて、本実施形態における尿量測定システム30について、より具体的に説明する。なお、ここでは、前記した定時測定モードでの測定の場合における尿量管理データの作成及び記録について説明する。
前記入力部22は、被測定者が尿意を知覚した際に尿意信号を入力する尿意入力部を有している。図16に示すように、前記尿意入力部は、前記入力部22を構成する複数のボタン43のうち何れか一のボタンから成っており、当該ボタンを押圧することで該尿意入力部に尿意信号が入力され、当該尿意信号の入力時刻(押圧時刻)に対応する尿意時刻が、前記測定データ記憶部23bに記録されるように構成されている。なお、図18は、測定データ記憶部23bに記録される前記尿意時刻を表形式で表したものである。
【0087】
前記尿意入力部に尿意信号が入力された際、上述したように、その尿意時刻が測定データ記憶部23bに記憶されると共に、その尿意時刻に対応する尿意時膀胱内尿量が前記演算部24で算出される。そして、尿意時膀胱内尿量は、演算部24における第3比較部24eで所定のアラーム閾値(アラーム尿量)と比較され、図19(a)、図19(b)に一例として示すように、該尿意時膀胱内尿量が前記表示部27に表示される。前記第3比較部24eで比較されるアラーム尿量は、例えば、予め定められた値であってもよいが、前記入力部22を介して被測定者や医療従事者等が入力したものであってもよく、適宜の値とされる。
【0088】
本実施形態においては、前記尿意時膀胱内尿量は、尿意入力部に尿意信号が入力された入力時の直前の測定周期における膀胱内尿量に基づいて算出されている。具体的には、この尿意時膀胱内尿量は、尿意入力部の尿意信号の入力時に、前記測定データ記憶部23bに記憶された最も直近の膀胱内尿量と成っている。ただし、体位変更などに起因する測定エラーが生じており、尿意信号の入力前の所定時間内(例えば1分)に算出された膀胱内尿量がない場合には尿意時膀胱内尿量は記録しない。
そして、前記第3比較部24eは、その尿意時膀胱内尿量値と前記アラーム尿量とを比較し、尿意時膀胱内尿量がアラーム尿量の所定割合(例えば80%)を超えない場合には、例えば、数値で示すなど、被測定者に対し排尿を行う必要はないことが認知できるように表示される。このように、尿意入力部に尿意信号を入力(ボタンを押圧)すれば、前記表示部27を介して尿意時膀胱内尿量が数値化されると共に、第3比較部24eによる比較結果が数値として表示されるため、例えば、被測定者が、膀胱内尿量が僅かであるにも関わらず尿意を知覚した場合であっても、排尿を行う必要性がないことが分かり、それに伴い、次第に膀胱内に尿を満たすことができる時間を増やし、排尿間隔を広げていくことができる。
【0089】
なお、前記尿意時膀胱内尿量は、測定ばらつきなどを考慮して、尿意信号の入力時の直前の測定周期における複数の膀胱内尿量値に基づいて尿意時膀胱内尿量を求めてもよい。この場合、例えば、前記尿意入力部への尿意信号入力時に、測定データ記憶部23bに記憶された複数の膀胱内尿量値から最大値と最小値とを除いた膀胱内尿量の平均として求めることもできる。また、尿意信号の入力時に、前記測定データ記憶部23bに記憶された複数の膀胱内尿量値から補間して尿意時膀胱内尿量を求めることでもよい。
【0090】
或いは、前記尿意時膀胱内尿量は、尿意入力部に尿意信号が入力された入力時に、前記超音波素子11によって超音波を膀胱に向けて発信し、その反射波に基づいて前記蓄尿量算出部24aで算出された膀胱内尿量値であってもよい。この場合には、前記尿意時膀胱内尿量は、各測定周期単位で推測され記憶された過去の膀胱内尿量に基づくものではなく、尿意入力部に相当する前記ボタンが押圧された時点で測定された膀胱内尿量値となる。
【0091】
被測定者の膀胱内尿量値はモニタリングされており、蓄尿量算出部24aで算出された膀胱内尿量のうち最大膀胱内尿量がMAX値として前記記憶部23に記録される。具体的には、演算部24において、測定周期毎に得られる膀胱内尿量と記憶部23に記録されているMAX値とを比較して、膀胱内尿量がMAX値を超えた場合には、その膀胱内尿量値が新たなMAX値として記憶部23に記録される。また、前記MAX値は、前記記憶部23から読み出され、例えば図16に示すように、前記表示部27(画面右上)に表示される。また、出力部25からの出力時において前記記憶部23からMAX値を読み出し、例えば膀胱内尿量や尿意時刻等と共に出力されてもよい。
このMAX値は数時間〜1日間の測定により、被測定者の膀胱内に貯められる大凡の最大膀胱内尿量となり、以後の膀胱訓練の目安となる。また、MAX値が表示部27等に表われることに伴い、被測定者は自身の膀胱内に、より多くの尿が保持されるようになることを自覚する。
【0092】
また、本実施形態における前記演算部24は、前記記憶部23に記憶されたデータに基づいて、少なくとも所定の測定周期毎の蓄尿データ、尿意時刻を含む尿意データ、及び、蓄尿データに基づいて算出された排尿量とその排尿時刻とを含む排尿データを、時系列的に並べて尿量管理データを作成する管理データ作成部24fを有している。この管理データ作成部24fは、例えば、測定データ記憶部23bに記憶されている各時刻における膀胱内尿量と尿意時刻とが合成されることで、尿量管理データが作成される。この尿量管理データは、前記出力部25から出力され、または表示部27に表示されるように構成されている。
【0093】
前記尿量管理データは、過活動膀胱などの被測定者に対する排尿日誌として使用することができ、例えば、尿量管理データの例として、図20に示すように、各時刻における膀胱内尿量(1分毎の測定周期)と、被測定者が尿意を知覚して尿意入力部に尿意信号が入力された時刻と、排尿量とその時刻とを時系列的に表形式で表したものがある。また、本実施形態では、前記尿量管理データに最大膀胱内尿量としてのMAX値が表れている。
【0094】
排尿量と排尿時刻とについては、前記演算部24によって、前記測定データ記憶部23bに記憶された各時刻毎の膀胱内尿量の時間的変化から、膀胱内尿量が大きく減少する時刻に基づいて算出される。具体的には、前記演算部24における排尿量算出部24gで、前記測定データ記憶部23bに記憶されたある時刻における膀胱内尿量と、その次の時刻における膀胱内尿量との尿量差が比較されると共に、その差が、前記記憶部23に記憶された所定の排尿閾値以上になる時刻を探して、排尿閾値以上のときの尿量差を排尿量として算出されて、該排尿量が前記表示部27に表示され又は出力部25に出力されるようになっている。排尿閾値を設定するのは、測定誤差に基づく若干の尿量減少を「排尿」と判断しないためである。なお、この排尿閾値は予め設定されていてもよく、或いは、前記入力部22を通じて被測定者等が設定することでもよい。なお、排尿閾値としては、例えば50ccが挙げられるが、この値に限られるものではない。
【0095】
また、排尿時刻は被測定者による入力に基づき記録されても良い。すなわち、被測定者が排尿時を記録するために割り当てられたボタン(ボタン43のいずれか)を操作した際の時刻を排尿時刻として記録する。このときの排尿量は、ボタン操作前後の所定時間内の膀胱内尿量の低下量から求めることができる。排尿時刻の入力および記録は、排尿開始と排尿終了の時刻のそれぞれの入力によってなされるようにしてもよい。この場合、排尿開始時またはそれに一番近い膀胱内尿量と、排尿終了時またはそれに一番近い膀胱内尿量との差を演算部24にて算出することによっても、排尿量を求めることができる。
また、膀胱内尿量の低下を引き起こす排尿が自発的な排尿によるものか漏れによるものかを判別する機能を有していても良い。例えば、排尿記録を被測定者によるボタン操作にて行う場合には、そのボタン操作による排尿記録がない状態で膀胱内尿量の低下が見られた際には漏れとして記録できる。具体的には、演算部24によって、前記測定データ記憶部23bに記憶された各時刻毎の膀胱内尿量の時間的変化から、膀胱内尿量が大きく減少する時刻を探索し、その時刻とそれ以前の排尿記録時間との差を演算部24にて算出し、それが所定時間を超えた場合には漏れと判定することができる。また、膀胱内尿量の低下が見られた時刻と、それ以前の尿意の記録時間との差を演算部24にて算出し、それが所定時間を超えた場合にも同様に漏れと判定することも可能である。このとき、図20図21図23図24において、排尿量が漏れによるものか否かを出力/表示することができる。
【0096】
図20では、前記尿意時刻を、尿意入力部に尿意信号が入力された時点の時刻としているが、当該尿意時刻を、尿意信号の入力時刻付近で前記蓄尿量算出部24aにより膀胱内尿量が算出された時刻として表示されていてもよい(図21参照)。或いは、図22に示すように、縦軸を膀胱内尿量、横軸を時刻とする棒グラフで表現すると共に、前記尿意時刻を矢印などの記号を用いて示すこともできる。なお、図22では、5分間隔毎の膀胱内尿量値が棒グラフとして表示されており、11時20分と11時30分との間で膀胱内尿量値が急激に下がっていることから、この間で排尿があったことが視認できる。
【0097】
また、この例では、前記尿量管理データが、前記定時測定モードでの測定結果に基づいて作成及び記録されているが、例えば、尿意入力部に尿意信号が入力された時刻から排尿時刻までの間(例えば、図21における時刻11:17:00〜時刻11:24:00)は測定周期を短くして、尿意を知覚した後の膀胱内の蓄尿量を正確に把握し、それ以外の所定の期間については尿量の測定周期を長くすることで、消費電力を抑制することもできる。
【0098】
また、本実施形態においては、尿量管理データを、前記測定データ記憶部23bに記憶された各時刻における膀胱内尿量と尿意時刻とを対比して、当該尿意時刻に対応する膀胱内尿量を抽出すると共に、上述した排尿量を算出する方法から排尿時刻を算出し、排尿時刻における膀胱内尿量を抽出することで、図23に示す表形式のように表示することもできる。なお、図23では、排尿時刻における膀胱内尿量が抽出されているが、それに加えて、排尿時刻直前に算出された膀胱内尿量も抽出して図24のように出力されていてもよい。このような尿量管理データによれば、尿意時刻、及び、排尿量と排尿時刻における膀胱内尿量のみが表わされ、これらは排尿日誌においてポイントとなる活動のみが表れているため、例えば、病院の受診の際に有効に利用される。
【0099】
また、管理データ作成部24fで作成された尿量管理データは、例えば、前記記憶部23における管理データ記憶部23cに記憶させることもでき、当該尿量管理データを必要なときに該管理データ記憶部23cから読み出すことも可能である。
なお、ここでは尿意の有無のみを記録しているが、尿意の強さ(切迫感)を例えば1〜5の5段階で記録できるようにしても良い。これは、例えば、被測定者に、尿意の強さが5(非常に強い)ときには尿意入力部を5回押し、尿意の強さが1(尿意あり)のときには尿意入力部を1回押してもらうようにすれば超音波尿量測定器にて判別できる。この場合、図23図24の尿意の欄には尿意の強さを示す数字または記号などを出力/表示することができる。 以上説明した本発明に係る実施形態では、超音波プローブ10及び制御部20の全ての要素が一体に形成されている必要はない。例えば、制御部20における出力部25、アラーム部26、表示部27、入力部22などは、別体の情報端末で構成することもできる。この場合には、記憶部23を情報端末にも設けておき、超音波測定を行う部分との間でWifiやブルーツースなどにより測定データを送受信するように構成すればよい。
【0100】
また、前記超音波尿量測定システムでは、排尿日誌等のような尿量管理データを作成するにあたり、当該被測定者が膀胱内尿量(排尿量)や尿意時刻等をその都度計測する必要がなく、当該尿量管理データが自動的に作成されるため、被測定者に対する負担が小さく、簡単且つ正確に作成することができる。また、本実施形態で作成される尿量管理データは、膀胱内の各時刻における膀胱内尿量、尿意時刻、及び、排尿量とその時刻とが時系列的に関連付けられていることから、被測定者自身が尿意と各時刻における膀胱内尿量(排尿量)との関係を視覚的に理解できる形で作成され、医療従事者においても、該尿量管理データによって被測定者の自覚症状と実際の膀胱機能とを把握することができ、被測定者に合った適切な膀胱訓練を計画することができる。
【0101】
次に、図25に基づき、尿量管理データを外部通信端末にて作成する実施形態について説明する。以下にその構成と共に、本発明に係る尿量管理データの作成方法について説明する。ただし、ここでは説明の重複を避けるため、前記と同じ構成部分及びそれに基づく作用効果については、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
前記外部通信端末を使用した尿量測定システム30では、前記超音波素子11を有する測定器本体31(尿量測定デバイス)と、該測定器本体31に接続される外部通信端末32(尿量管理データ作成端末)とから構成されている点で、前記第1実施形態と異なっている。
外部通信端末32としては、特に機器を限定するものではなく、例えばスマートフォンであってもよく、携帯電話、タブレット型端末、パーソナルコンピュータなどであってもよい。
【0102】
図25に示すように、前記測定器本体31は、前記演算部のうち本体側の演算部24と、該本体側の演算部24で算出された膀胱内尿量とその測定時刻を前記外部通信端末32に送信する第1通信部33とを少なくとも有している。また、測定器本体31は、前記超音波制御部21と、膀胱内尿量及び測定時刻等を記憶する第1記憶部34とを有している。本実施形態においては、前記本体側演算部24が、反射波データに基づいて膀胱内尿量を演算する前記蓄尿量算出部24aを有しているものとする。
一方、外部通信端末32は、前記演算部のうち端末側の演算部37と、前記第1通信部33との間で送受信する第2通信部35(受信部)と、前記尿意入力部と、前記管理データ作成部37bと、前記第2通信部35を介して受信された膀胱内尿量とその測定時刻、及び、前記尿意時刻を記憶する測定データ記憶部36aを含む第2記憶部36とを有している。さらに、被測定者による排尿時刻の入力を受ける場合には、排尿時刻データ(排尿開始時刻や排尿終了時刻であってもよい)も図示しない記憶部により記憶できる。また、この外部通信端末32は、前記入力部22と、前記表示部27と、前記出力部25とを有している。なお、本実施形態においては、前記端末側演算部37が、尿意時膀胱内尿量とアラーム尿量とを比較する第3比較部37aと、尿量管理データを作成する管理データ作成部37bと、排尿量と排尿時刻を算出する排尿量算出部37cとを有しているものとする。
【0103】
前記測定器本体31における第1記憶部34に記憶された前記膀胱内尿量等のデータは、外部通信端末32の指示(例えば、前記入力部22の入力操作)に基づいて、第1通信部33から第2通信部35を介して該外部通信端末32に送信される。測定器本体31と外部通信端末32との間の通信は、例えば、Wi−Fi(Wireless Fidelity)、ブルーツース、NFC(Neer Field Communication)等の無線通信方式が用いられる。また、測定器本体31と外部通信端末32とのデータ送受信のタイミングについては、常時であってもよいし、一定時間毎であってもよい。或いは、外部通信端末32における入力部22への入力時であってもよく、適宜のタイミングで送受信されているものとする。
【0104】
図25に示すように、外部通信端末32は、測定器本体31から送信された膀胱内尿量とその測定時刻に関するデータを、第2通信部35を介して受け取り、第2記憶部36内の測定データ記憶部36aに記憶する。また、尿意入力部に尿意信号の入力があったとき、測定データ記憶部36aに尿意時刻が記憶されると共に、尿意時刻に対応する尿意時尿量値が該測定データ記憶部36aから読み出される。
【0105】
また、外部通信端末32においては、第2記憶部36に記憶されたデータに基づいて、端末側演算部37における管理データ作成部37bで排尿日誌等の尿量管理データが作成されるように成っており、例えば、上述した図20図22のような形式で前記表示部27に表示したり、出力部25から出力する。また、例えば図26のように、指定された3日間当たりの前記MAX値や、指定された1日当たりの排尿回数、尿意の回数を前記データに基づいて、本体側演算部24が算出して表示することもできる。さらに、前記したように排尿時刻を前記尿量管理データに含めることもできる。また、膀胱内尿量が低下する時刻を本体側演算部24にて検出して排尿量として記憶するとともに、尿量が低下する時刻と、被測定者による排尿時刻(排尿開始時刻または排尿終了時刻)や尿意時刻との時間差を算出して、それを尿量管理データに含めても良い。さらには、前記時間差に基づき、膀胱内尿量の低下が意識されたものであるか否か、つまり漏れであるか否かを判別して、その判別結果を示すデータを尿量管理データに含めることもできる。
なお、外部通信端末での演算や表示データは、医療関係者など利用者が任意に選択できるように構成できる。
作成された尿量管理データは、クラウド上に前記管理データ記憶部38を設け、例えば、第2通信部35からWi−Fiなどを経由して当該データを保存したり、読みだしたりすることができる。或いは、測定器本体31または外部通信端末32の記憶部等の記憶領域に管理データ記憶部を設けていてもよい。
【0106】
なお、図25に示す例では、前記外部通信端末32側に、入力部22及び尿意入力部と、表示部27と、出力部25と、第3比較部37aと、管理データ作成部37bと、排尿量算出部37cとを設けているが、これに限らず、これらを測定器本体31側にも設けることでもよい。
【0107】
本実施の形態の超音波尿量測定器は、トイレトレーニングや、膀胱訓練用のデバイスとしても使用できる。トイレトレーニングは、主に1歳を経過した子供にトイレの習慣をつけるためになされるものであり、一般的には、排尿のタイミングを予想して、そのタイミングに被測定者をトイレへと導くことでなされる。しかし、膀胱内の尿量は飲食物や気温などによって左右されるため、排尿のタイミングの予想が困難であり、その結果、適切なタイミングでトイレへと誘導できないことがあった。本超音波尿量測定器では、被測定者の膀胱内の尿量をモニターするため、適切なタイミングで被測定者をトイレへと誘導することが可能となる。特にアラームモードや低消費電力モードでは、実際に測定された膀胱内尿量に基づき膀胱内への尿の充満タイミングがアラームとして報知されるため、被測定者は的確に排尿タイミングを知ることができ、効果的にトイレトレーニングを実施できる。
【0108】
また、膀胱訓練は、過活動膀胱など頻尿を主訴とする患者や夜尿症の子供などが、できるだけ排尿を我慢して、膀胱に溜めることができる尿の量を増やすというトレーニングである。このトレーニングでは、尿意を感じたときに、それが本当に尿が膀胱に溜まって感じる合図なのか、単に膀胱の緊張による尿意なのかの感覚の違いを知ることが重要である。本実施の形態の超音波尿量測定器によれば、膀胱内の尿量を実測するため、被測定者は排尿を我慢すべきタイミングなのか否かを理解することができる。特に、尿意のある時点の尿量と膀胱内最大尿量を表示することにより、より正確に排尿を我慢すべきか否かを判断でき、効率的に膀胱訓練を実施することができる。具体的には、以下のステップにより実施される。
<ステップ300> 被測定者が尿意を感じた際に、前記の通り、超音波尿量測定器に尿意を入力する。
<ステップ301> 超音波尿量測定器が前記尿意時膀胱内尿量と前記膀胱内最大尿量を表示する。
<ステップ302> 表示された前記尿意時膀胱内尿量と前記膀胱内最大尿量に基づき、排尿を我慢するか否かを判断する。
【0109】
本実施の形態は以下の特徴を有する。
(1)被測定者の腹部に装着され、該被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部と、
前記演算部で算出された尿量を時系列的にグラフ表示する表示部と、
を備える超音波尿量測定器であって、
前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択可能とするモード選択部と、
前記位置決めモードが選択されている間に、前記演算部により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部とを有し、
前記最大値及び/又は前記許容値が、前記超音波プローブを位置決めするための位置決め指標値として前記表示部のグラフ上に表示される。
【0110】
(2)被測定者の腹部の測定位置に装着され、該被測定者の膀胱に向けて超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を算出する演算部と、
を備える超音波尿量測定器であって、
前記演算部は、前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定する位置決めモードにおいて、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブが配置された状態で膀胱内の尿量を算出し、
前記超音波尿量測定器は、
前記位置決めモードの間に前記演算部により算出された尿量のうちの最大値及び/又は前記最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部と、
前記位置決めモードにおいて、前記演算部により算出された尿量と、前記指標値記憶部に記憶された最大値及び/又は前記許容値との差を検出する比較部と、を有する。
【0111】
(3)前記(2)の超音波尿量測定器において、比較部の比較結果に基づき、アラームを報知する報知部を有する。
【0112】
(4)前記(2)または(3)の超音波尿量測定器において、前記演算部にて複数の時刻にそれぞれ算出された尿量値をグラフ表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記位置決めモードと、前記測定位置に装着された状態で膀胱内の尿量を測定する測定モードとで、前記グラフ表示の時間スケールを変更することができる。
【0113】
(5)被測定者の腹部の測定位置に装着され、該被測定者の膀胱に向けて超音波を発信すると共に、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
前記超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて、前記膀胱内の尿量を算出する演算部と、
を備える超音波尿量測定器であって、
前記演算部は、超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定する位置決めモードにおいて、前記測定位置において尿量を算出する測定モードとは異なる算出方法にて、尿量を算出し、
前記位置決めモードにおける尿量の算出方法は、前記測定モードにおける尿量の算出方法よりも、前記超音波プローブの位置変化に対する反応性が高い。
【0114】
(6)前記(5)において、前記演算部は、連続して受信した複数の前記反射波に基づき尿量を算出し、前記位置決めモードでは前記尿量の算出に用いられる反射波の個数が前記測定モードよりも少ない。
【0115】
(7)被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信するとともに、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
該超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部とを備える超音波尿量測定器において、
前記演算部は、算出される膀胱内の尿量と所定の第1閾値とを比較する比較部を有し、
前記超音波素子から発信される超音波の測定周期は、前記比較部において算出された膀胱内尿量が前記第1閾値未満のときに、前記第1閾値以上である場合よりも長い周期となり、
前記比較部において算出された膀胱内尿量が前記第1閾値未満である場合に、各測定周期の間において前記演算部を消費電力を抑えるためのスリープ状態とし、測定周期毎に前記演算部を復帰させることのできるタイマー部を有する。
【0116】
(8)被測定者の膀胱に向けて所定の周期で超音波を発信するとともに、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
該超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部とを備える超音波尿量測定器において、
該超音波尿量測定器は、前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択可能とするモード選択部を有し、
前記演算部は、算出される膀胱内の尿量と所定の第1閾値とを比較する比較部を有し、
前記超音波制御部は、
前記位置決めモードにおいて、所定の第1周期にて前記超音波素子から超音波を発信させ、
前記測定モードにおいて、前記比較部にて比較された膀胱内尿量が前記第1閾値以上のときに、所定の第2周期にて前記超音波素子から超音波を発信させ、
前記測定モードにおいて、前記比較部にて比較された膀胱内尿量が前記第1閾値未満のときに、前記第1周期、第2周期よりも長い第3周期で前記超音波素子から超音波を発信させることができる。
【0117】
(9)被測定者の膀胱に向けて所定の測定周期で超音波を発信するとともに、前記膀胱の壁面からの反射波を受信する超音波素子を備えた超音波プローブと、
該超音波素子による超音波及びその反射波の送受信を制御する超音波制御部と、
前記反射波に基づいて前記膀胱内の尿量を前記測定周期毎に算出する演算部とを備える超音波尿量測定器において、
該超音波尿量測定器は、前記超音波プローブを前記被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて前記超音波プローブを装着するのに適した前記測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に前記超音波プローブを移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択可能とするモード選択部を有し、
前記演算部は、算出される膀胱内尿量と所定の第1閾値とを比較する比較部を有し、
前記演算部は、前記位置決めモードにおいて、所定の第1周期にて時系列的に受信する第1個数の前記反射波に基づき、膀胱内尿量を算出し、
前記測定モードにおいて、前記比較部にて算出された膀胱内尿量が前記第1閾値以上のときに、所定の第2周期にて時系列的に受信する前記第1個数よりも多い所定の第2個数の前記反射波に基づき、膀胱内尿量を測定し、
前記測定モードにおいて、前記比較部にて算出された膀胱内尿量が前記第1閾値未満のときに、前記第1周期、第2周期よりも長い所定の第3周期で時系列的に受信する複数の前記反射波に基づき膀胱内尿量を測定できる。
【0118】
(10)前記(7)〜(9)のいずれかにおいて、
前記比較部は、算出される膀胱内尿量と前記第1閾値より大きい所定の第2閾値とをさらに比較するものであり、
前記超音波尿量測定器は、前記比較部において算出された膀胱内尿量が前記第2閾値以上である場合に報知する報知部を有する。
【0119】
(11)被測定者が尿意を知覚した際に尿意信号を入力する尿意入力部と、
前記演算部で算出された膀胱内の尿量とその測定時刻、及び、前記尿意信号の入力時刻に対応した尿意時刻を記憶する測定データ記憶部と、
所定の期間内において前記演算部で算出された膀胱内の尿量のうちの最大値である膀胱内最大尿量を記憶する最大尿量記憶部と、
前記尿意信号の入力時に、前記尿意時刻に対応した蓄尿量である尿意時蓄尿量と、前記膀胱内最大尿量を表示する表示部と、
を有する。
【0120】
(12)前記(11)において、前記尿意時蓄尿量は、前記尿意信号の入力時以前の所定時間内に前記演算部にて算出された膀胱内の尿量である。
【0121】
(13)前記(11)または(12)において、被測定者が排尿を開始する前に排尿開始信号を入力する排尿開始入力部と、
被測定者が排尿した後に排尿終了信号を入力する排尿終了入力部と、を有し、
前記測定データ記憶部は、前記排尿開始信号及び排尿終了信号のそれぞれの入力時刻に対応した排尿開始時刻、排尿終了時刻を記憶する。
【0122】
(14)前記(11)〜(13)のいずれかに記載の超音波尿量測定器に記憶された膀胱内尿量及びその測定時刻、前記尿意時刻に基づき、少なくとも前記膀胱内尿量とその測定時刻とを含む膀胱内尿量データ、及び、前記尿意時刻を含む尿意データを時系列的に並べて尿量管理データを作成するステップと、
該尿量管理データの少なくとも一部を表形式またはグラフ形式にて表示するステップと、を有する。
【0123】
(15)前記(14)において、前記尿量管理データは、排尿開始時刻及び排尿終了時刻の少なくとも一方からなる排尿時刻データを更に含む。
【0124】
(16)前記(15)において、前記尿意データに基づき、所定期間における前記尿意信号の個数である尿意回数を算出するとともに、前記排尿時刻データに基づき、所定期間における前記排尿開始信号または前記排尿終了信号の個数である排尿回数を算出するステップと、
前記膀胱内最大尿量、前記尿意回数、及び、前記排尿回数を表示するステップと、を有する。
【0125】
(17)前記(14)〜(16)のいずれかにおいて、前記膀胱内尿量データの中から膀胱内尿量が時間とともに低下する尿量低下時刻を探知し、その低下量を排尿量として記憶するステップをさらに有し、
前記尿量管理データは前記排尿量を含む。
【0126】
(18)前記(17)において、各前記尿量低下時刻と、前記排尿時刻または前記尿意時刻との時間差を算出するステップを更に有し、
前記尿量管理データは前記時間差または前記時間差から算出されたデータを含む。
【0127】
(19)前記(1)〜(18)のいずれかにおいて、表示部で表示される膀胱内の尿量は、トイレトレーニングまたは膀胱訓練の少なくとも一方に用いられる尿量である。
【0128】
(20)被測定者の腹部に装着され、該被測定者の膀胱に向けて超音波を発信して、前記膀胱内の尿量を算出する超音波尿量測定器を用いた膀胱訓練方法であって、
(a)前記超音波尿量測定器により所定期間中に測定された尿量値の最大値である膀胱内最大尿量を記憶するステップと、
(b)尿意を感じたときに前記超音波尿量測定器に尿意を入力するステップと、
(c)尿意の入力時刻における膀胱内の尿量と、前記膀胱内最大尿量を前記超音波尿量測定器に表示するステップと、
(d)表示された前記膀胱内の尿量と前記膀胱内最大尿量に基づき、排尿の要否を判断するステップと、を含む。
【符号の説明】
【0129】
1 超音波尿量測定器
10 超音波プローブ
11 超音波素子
21 超音波制御部
22a モード選択部
24 演算部
27 表示部
【要約】
【課題】高精度に被測定者の尿量を測定することができ、被測定者にとって利便性がよい超音波尿量測定器を提供する。
【解決手段】超音波プローブ10を被測定者の腹部における所定の測定位置に装着した状態で尿量を測定する測定モード、及び、該測定モードにおいて超音波プローブ10を装着するのに適した測定位置を決定するために、腹部の複数の仮測定位置に超音波プローブ10を移動させながら尿量を測定する位置決めモードの何れかを選択可能とするモード選択部22aと、位置決めモードが選択されている間に、演算部24により算出された複数の仮測定位置における尿量のうちの最大値及び/又は最大値に基づき決められる許容値を記憶する指標値記憶部とを有し、最大値及び/又は許容値が、超音波プローブ10を位置決めするための位置決め指標値として表示部27のグラフ上に表示される。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26