特許第5890932号(P5890932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5890932
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】圧延機のプレストレス装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/04 20060101AFI20160308BHJP
   B21B 31/02 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   B21B31/04
   B21B31/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-176900(P2015-176900)
(22)【出願日】2015年9月8日
【審査請求日】2015年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新保 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 量
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−141309(JP,A)
【文献】 特許第3535006(JP,B2)
【文献】 特許第3809090(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 31/02,31/04,13/00−13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング間隔を変更可能な圧延機のプレストレス装置において、
一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、
前記可動スペーサーは、前記固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっており、
前記固定スペーサーは円筒状であり、その外周部の少なくとも1箇所に複数の溝を有する櫛歯状係合部が形成され、
前記可動スペーサーは中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に前記固定スペーサーに形成された前記複数の溝に収まる大きさの複数の突条が形成されている
ことを特徴とするプレストレス装置。
【請求項2】
前記可動スペーサーは、駆動機器により中心軸の周りに回動させられることによって前記固定位置と前記固定解除位置とに移動可能である
ことを特徴とする請求項に記載のプレストレス装置。
【請求項3】
ハウジング間隔を変更可能な圧延機のプレストレス装置において、
一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、
前記可動スペーサーは、前記固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているとともに、
前記一方のハウジングの外側に外側可動スペーサーが設けられており、
該外側可動スペーサーは、前記プレストレスロッドとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっている
ことを特徴とするプレストレス装置。
【請求項4】
前記外側可動スペーサーは中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に中心軸と平行な複数の突条が形成され、
前記プレストレスロッドには、外周部の一部に前記外側可動スペーサーに形成された前記複数の突条が収まる大きさの複数の溝が形成されている
ことを特徴とする請求項に記載のプレストレス装置。
【請求項5】
前記可動スペーサー及び前記外側可動スペーサーを回動させる外側駆動装置を備え、該外側駆動装置は同期軸を介して連結してある動力伝達部と、前記可動スペーサー及び前記外側可動スペーサーを同期して回動させるための1つの駆動部を有している
ことを特徴とする請求項に記載のプレストレス装置。
【請求項6】
ハウジング間隔を変更可能な圧延機のプレストレス装置において、
一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、
前記可動スペーサーは、前記固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているとともに、
前記一方のハウジングの外側に外側固定スペーサーが設けられており、
該外側固定スペーサーはリング状であり、その内面側に中心軸と平行な複数の突条が形成され、
前記プレストレスロッドには、外周部の一部に前記外側固定スペーサーに形成された前記複数の突条が収まる大きさの複数の溝が形成されている
ことを特徴とするプレストレス装置。
【請求項7】
前記プレストレスロッドを中心軸の周りに回動させる回動装置を備えている
ことを特徴とする請求項に記載のプレストレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機のプレストレス装置に関するものであり、特に、ハウジングの間隔を変更可能なプレストレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、圧延ロール101で発生する横荷重Fや上下方向の圧延反力等に伴って、ハウジング102と103の間をつなぐタイロッド104にはモーメントMがかかる。
そこで、ハウジング102と103の間隔を狭める方向にプレストレスロッド105を常時引っ張り、タイロッド104にプレストレスを付与することによってハウジング102、103及びタイロッド104等で構成される構造体の剛性を高めるプレストレス装置が知られている。
また、ハウジング103を移動させてハウジング102と103の間隔を変更可能な圧延機も知られているが、特許文献1(特許第3535006号公報)記載の発明においては、ハウジング間隔が狭い時にはプレストレスを付与できるものの、ハウジング間隔を広げたときに適正なプレストレスを付与できる構造となっていない。
【0003】
これに対して特許文献2(特許第3809090号公報)記載の発明においては、スペーサーの長さを変えハウジング間隔を広げたときにもプレストレスを付与できる構造になっている。
しかし、熱や水・スケール等の影響が激しい左右のハウジング間に大きな回転スペーサーとその回転装置を設ける必要があり信頼性に問題があった。
また、メンテナンス等でスペーサーの分解・組立を行う場合、スペーサー上部には圧下装置やデッキ等の障害物があるため、クレーン等でのハンドリングが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3535006号公報
【特許文献2】特許第3809090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は上記の問題点を解決し、ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、信頼性が高く、かつ分解・組立も容易なプレストレス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、ハウジング間隔を変更可能な圧延機のプレストレス装置において、一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、前記可動スペーサーは、前記固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっており、前記固定スペーサーは円筒状であり、その外周部の少なくとも1箇所に複数の溝を有する櫛歯状係合部が形成され、前記可動スペーサーは中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に前記固定スペーサーに形成された前記複数の溝に収まる大きさの複数の突条が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、請求項に記載のプレストレス装置において、前記可動スペーサーは、駆動機器により中心軸の周りに回動させられることによって前記固定位置と前記固定解除位置とに移動可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、ハウジング間隔を変更可能な圧延機のプレストレス装置において、一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、前記可動スペーサーは、前記固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているとともに、前記一方のハウジングの外側に外側可動スペーサーが設けられており、該外側可動スペーサーは、前記プレストレスロッドとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、請求項に記載のプレストレス装置において、前記外側可動スペーサーは中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に中心軸と平行な複数の突条が形成され、前記プレストレスロッドには、外周部の一部に前記外側可動スペーサーに形成された前記複数の突条が収まる大きさの複数の溝が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、請求項に記載のプレストレス装置において、前記可動スペーサー及び前記外側可動スペーサーを回動させる外側駆動装置を備え、該外側駆動装置は同期軸を介して連結してある動力伝達部と、前記可動スペーサー及び前記外側可動スペーサーを同期して回動させるための1つの駆動部を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、ハウジング間隔を変更可能な圧延機のプレストレス装置において、一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、前記可動スペーサーは、前記固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているとともに、前記一方のハウジングの外側に外側固定スペーサーが設けられており、該外側固定スペーサーはリング状であり、その内面側に中心軸と平行な複数の突条が形成され、前記プレストレスロッドには、外周部の一部に前記外側固定スペーサーに形成された前記複数の突条が収まる大きさの複数の溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項に係る発明のプレストレス装置は、請求項に記載のプレストレス装置において、前記プレストレスロッドは、回動装置により中心軸の周りに回動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、可動スペーサーは、固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているので、可動スペーサーを固定解除位置に移動させた状態では、一方のハウジングを固定スペーサーの軸方向に動かすことができる。
そして、一方のハウジングを適宜の位置に動かした後に可動スペーサーを固定位置に移動させれば、所望のハウジング間隔においてプレストレスロッドにより適正なプレストレスを付与することができる。
また、固定スペーサーは円筒状であり、その外周部の少なくとも1箇所に複数の溝を有する櫛歯状係合部が形成され、可動スペーサーは中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に前記固定スペーサーに形成された前記複数の溝に収まる大きさの複数の突条が形成されているので、可動スペーサーの突条と固定スペーサーの溝とが一致する位置は固定解除位置となって、一方のハウジングを固定スペーサーの軸方向に動かすことができ、可動スペーサーの突条と固定スペーサーの溝とが一致しない位置は固定位置となって、一方のハウジングを固定スペーサーの軸方向に動かすことができない。
そのため、可動スペーサーを固定スペーサーに形成されている溝のピッチの半分だけ回動させることで、固定位置から固定解除位置へ又は固定解除位置から固定位置へ移動させることができる。
【0018】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、請求項に係る発明による効果に加えて、可動スペーサーが、駆動機器により中心軸の周りに回動させられることによって固定位置と固定解除位置とに移動可能であるので、可動スペーサーを容易に回動させることができる。
【0019】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、可動スペーサーは、固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているので、可動スペーサーを固定解除位置に移動させた状態では、一方のハウジングを固定スペーサーの軸方向に動かすことができる。
そして、一方のハウジングを適宜の位置に動かした後に可動スペーサーを固定位置に移動させれば、所望のハウジング間隔においてプレストレスロッドにより適正なプレストレスを付与することができる。
また、一方のハウジングの外側に外側可動スペーサーが設けられており、外側可動スペーサーには、プレストレスロッドとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているので、プレストレスロッド自体を動かすことなく一方のハウジングを固定スペーサーの軸方向に動かすことができる。
さらに、メンテナンス等で固定スペーサー等の分解・組立を行う場合、外側可動スペーサー及び可動スペーサーを固定解除位置に移動させれば、プレストレスロッド及び固定スペーサーをその軸方向へ引き抜くことができるので、固定スペーサー上部にある圧下装置やデッキ等の障害物を気にすることなく、プレストレス装置の分解・組立を行うことができる。
【0020】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、請求項に係る発明による効果に加えて、外側可動スペーサーは中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に中心軸と平行な複数の突条が形成され、プレストレスロッドには、外周部の一部に外側可動スペーサーに形成された複数の突条が収まる大きさの複数の溝が形成されているので、外側可動スペーサーの突条とプレストレスロッドの溝とが一致する位置は固定解除位置となって、一方のハウジング及び外側可動スペーサーをプレストレスロッドの軸方向に動かすことができ、外側可動スペーサーの突条とプレストレスロッドの突条とが一致しない位置は固定位置となって、一方のハウジング及び外側可動スペーサーをプレストレスロッドの軸方向に動かすことができない。
そのため、外側可動スペーサーをプレストレスロッドに形成されている溝のピッチの半分だけ回動させることで、固定位置から固定解除位置へ又は固定解除位置から固定位置へ移動させることができる。
【0021】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、請求項に係る発明による効果に加えて、可動スペーサー及び外側可動スペーサーを回動させる外側駆動装置を備え、外側駆動装置は同期軸を介して連結してある動力伝達部と、可動スペーサー及び外側可動スペーサーを同期して回動させるための1つの駆動部を有しているので、1つの駆動部のみによって、可動スペーサー及び外側可動スペーサーを同時に固定位置から固定解除位置へ又は固定解除位置から固定位置へ移動させることができる。
【0022】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、一方のハウジングの内側に可動スペーサーを設けるとともにプレストレスロッド及び固定スペーサーを設け、可動スペーサーは、固定スペーサーとの固定位置と固定解除位置とに移動可能となっているので、可動スペーサーを固定解除位置に移動させた状態では、一方のハウジングを固定スペーサーの軸方向に動かすことができる。
そして、一方のハウジングを適宜の位置に動かした後に可動スペーサーを固定位置に移動させれば、所望のハウジング間隔においてプレストレスロッドにより適正なプレストレスを付与することができる。
また、一方のハウジングの外側に外側固定スペーサーが設けられており、外側固定スペーサーはリング状であり、その内面側に中心軸と平行な複数の突条が形成され、プレストレスロッドには、外周部の一部に外側固定スペーサーに形成された複数の突条が収まる大きさの複数の溝が形成されているので、外側固定スペーサーの突条とプレストレスロッドの溝とが一致する位置は固定解除位置となって、一方のハウジング及び外側固定スペーサーをプレストレスロッドの軸方向に動かすことができ、外側固定スペーサーの突条とプレストレスロッドの溝とが一致しない位置は固定位置となって、一方のハウジング及び外側固定スペーサーをプレストレスロッドの軸方向に動かすことができない。
そのため、外側固定スペーサーをプレストレスロッドに形成されている溝のピッチの半分だけ回動させることで、固定位置から固定解除位置へ又は固定解除位置から固定位置へ移動させることができる。
【0023】
請求項に係る発明のプレストレス装置によれば、請求項に係る発明による効果に加えて、プレストレスロッドを中心軸の周りに回動させる回動装置を備えているので、プレストレスロッドを容易に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1におけるプレストレス装置の構造図。
図2図1におけるA−A線断面図。
図3】実施例1におけるプレストレス装置の動作説明図。
図4】実施例2におけるプレストレス装置の構造図。
図5図4におけるB−B線断面図。
図6図4におけるC−C線断面図。
図7図4におけるD−D線断面図。
図8図4におけるE−E線断面図。
図9図4におけるF−F線断面図。
図10】実施例2のプレストレス装置の組立方法説明図。
図11】プレストレス装置を備える圧延機の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
なお、説明の都合上、図面左側を一端側、図面右側を他端側と表記する。
【実施例1】
【0026】
実施例1のプレストレス装置は、図1の構造図に示すように、プレストレスロッド1、固定スペーサー2、4つの可動スペーサー3、4つの外側可動スペーサー4、操作側ハウジング5、駆動側ハウジング6、4つの可動スペーサー駆動装置7、4つの外側可動スペーサー駆動装置8、プレストレスシリンダー9、駆動シリンダー10及びナット11等からなっている。
【0027】
プレストレスロッド1は、一端部に設けてある大径部12と、大径部12に4箇所設けてある外側凹部13と、他端部に設けてあるネジ溝14を有しており、外側凹部13には外側可動スペーサー4が嵌脱可能となっている。
また、プレストレスロッド1は駆動側ハウジング6、プレストレスシリンダー9及び駆動シリンダー10を貫通し、ネジ溝14にナット11をねじ込んで組み付けることができるようになっている。
【0028】
固定スペーサー2は、円筒状で一端側に設けてある肉厚部15と、肉厚部15の一端に設けてある4箇所の切欠部16と、肉厚部15の他端側に設けてある4箇所の内側凹部17を有しており、その内部をプレストレスロッド1が貫通可能、かつ、切欠部16及び内側凹部17に可動スペーサー7が嵌脱可能となっている。
また、固定スペーサー2の他端部は、駆動側ハウジング6の一端側の面に設けてある円筒状の装着部材19に着脱可能に固定することができるようになっている。
そして、可動スペーサー3が切欠部16に嵌合した状態(図1の状態)又は内側凹部17に嵌合した状態、かつ、外側可動スペーサー4が外側凹部13に嵌合した状態(図1の状態)又は大径部12の他端側に係合した状態において、プレストレスシリンダー9と駆動シリンダー10の間にある空気室18にポンプ(図示せず)から適量の空気を送り込むと、ナット11が駆動シリンダー10で押されて、固定スペーサー2に適正なプレストレスを付与することができる。
なお、図1の状態はハウジング間隔が広い状態であり、外側可動スペーサー4が大径部12の他端側に係合した状態、かつ、可動スペーサー3が内側凹部17に嵌合した状態(図3(D)の状態)はハウジング間隔が狭い状態である。
【0029】
4つの可動スペーサー3及び可動スペーサー駆動装置7は、図1におけるA−A線断面図である図2に示すように、操作側ハウジング5に設けられている穴20の他端側の周囲に均等に配置されており、可動スペーサー駆動装置7の作動によって可動スペーサー3が矢印方向に動き、4箇所の切欠部16(ハウジング間隔が狭い状態においては4箇所の内側凹部17)に対して嵌合したり、肉厚部15の外側に移動したりできるようになっている。
また、4つの外側可動スペーサー4及び外側可動スペーサー駆動装置8も、図示はしないが可動スペーサー3及び可動スペーサー駆動装置7と同様の構造であり、操作側ハウジング5に設けられている穴20の一端側の周囲に均等に配置されている。
【0030】
操作側ハウジング5及び駆動側ハウジング6は適宜の形状の柱状体であり、圧延機の設置面に対して垂直に設置されている。
そして、操作側ハウジング5は、上下の適宜の箇所にプレストレスロッド1及び固定スペーサー2が通過できる大きさの穴20を有するとともに、駆動側ハウジング6との間隔を広げたり狭めたりするために移動できるようになっている。
そのため、4つの可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4が、それぞれ肉厚部15及び大径部12の外側に移動した状態において、ナット11をプレストレスロッド1から外し操作側ハウジング5の外側へ移動させることにより、プレストレスロッド1及び固定スペーサー2を引き抜くことができる。
また、駆動側ハウジング6は、操作側ハウジング5の穴20と同じ高さの箇所にプレストレスロッド1の他端部が通過できる大きさの穴を有している。
【0031】
実施例1のプレストレス装置は、図3に示すように、以下の手順によりハウジング間隔の変更に対応することができる。
(A)ハウジング間隔が広い時におけるプレストレス装置の状態を示す。可動スペーサー3は切欠部16に嵌合しており、外側可動スペーサー4は外側凹部13に嵌合している。
(B)可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4を矢印の方向に移動させて、肉厚部15及び大径部12の外側に位置させる。
(C)操作側ハウジング5を駆動側ハウジング6との間隔が狭くなる方向に移動させて、可動スペーサー3を内側凹部17の外側に位置させ、外側可動スペーサー4を大径部12の他端側に位置させる。
(D)可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4を矢印の方向に移動させて、可動スペーサー3を内側凹部17に嵌合させるとともに、外側可動スペーサー4を大径部12と係合可能な箇所に位置させる。
そして、空気室18に適量の空気を送り込むと、大径部12の他端側の面で外側可動スペーサー4が他端側へ押され、可動スペーサー3の他端側の面で固定スペーサー2が他端側へ押されて、固定スペーサー2に適正なプレストレスが付与される。
【実施例2】
【0032】
実施例2のプレストレス装置は、図4の構造図に示すように、プレストレスロッド21、固定スペーサー22、可動スペーサー23、外側可動スペーサー24、操作側ハウジング25、駆動側ハウジング26、可動スペーサー駆動用歯車27、外側可動スペーサー駆動用歯車28、プレストレスシリンダー29、駆動シリンダー30及びナット31等からなっている。
【0033】
プレストレスロッド21は、一端部に設けてある大径部32と、大径部32に設けてある外側凹部33と、他端部に設けてあるネジ溝34を有している。
そして、図4におけるB−B線断面図である図5に示すように、大径部32は8つの溝41を有し断面が櫛歯状になっている。
また、プレストレスロッド21は駆動側ハウジング26、プレストレスシリンダー29及び駆動シリンダー30を貫通し、ネジ溝34にナット31をねじ込んで組み付けることができるようになっている。
【0034】
固定スペーサー22は、円筒状で一端側に設けてある肉厚部35と、肉厚部35の一端に設けてある切欠部36と、肉厚部35の他端側に設けてある内側凹部37を有しており、その内部をプレストレスロッド21が貫通可能となっている。
そして、図4におけるC−C線断面図である図6に示すように、肉厚部35は8つの溝を有し断面が櫛歯状になっている。
また、固定スペーサー22の他端部は、駆動側ハウジング6の一端側の面に設けてある円筒状の装着部材39に着脱可能に固定することができるようになっている。
なお、図4の状態はハウジング間隔が広い状態であり、外側可動スペーサー24が大径部32の他端側に係合した状態、かつ、可動スペーサー23が内側凹部37に嵌合した状態はハウジング間隔が狭い状態である。
【0035】
可動スペーサー23及び可動スペーサー駆動用歯車27は、操作側ハウジング25に設けられている穴40の他端側の周囲に配置されており、図4におけるD−D線断面図である図7に示すように、可動スペーサー23は中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側に固定スペーサー22の肉厚部35に形成された8つの溝42に収まる大きさの8つの突条43が形成されている。
また、可動スペーサー23の外周面には可動スペーサー駆動用歯車27と噛み合う歯車部(図示せず)が設けられている。
そして、可動スペーサー駆動用歯車27の回動によって可動スペーサー23を回動させて突条43が溝42に入り込める位置とすれば、操作側ハウジング25及び可動スペーサー23を固定スペーサー22の軸方向に動かすことができるようになり、逆に突条43が溝42に入り込めない位置とすれば、突条43が肉厚部35の溝42の間の部分にぶつかるので、操作側ハウジング25及び可動スペーサー23を固定スペーサー22の軸方向に動かすことができなくなる。
【0036】
外側可動スペーサー24及び外側可動スペーサー駆動用歯車28は、操作側ハウジング25に設けられている穴40の一端側の周囲に配置されており、図4におけるE−E線断面図である図8に示すように、外側可動スペーサー24は中心軸の周りに回転可能なリング状であり、その内面側にプレストレスロッド21の大径部32に形成された8つの溝41に収まる大きさの8つの突条44が形成されている。
また、外側可動スペーサー24の外周面には外側可動スペーサー駆動用歯車28と噛み合う噛合部(図示せず)が設けられている。
そして、外側可動スペーサー駆動用歯車28の回動によって外側可動スペーサー24を回動させて突条44が溝41に入り込める位置とすれば、操作側ハウジング25及び外側可動スペーサー24をプレストレスロッド21の軸方向に動かすことができるようになり、逆に突条44が溝41に入り込めない位置とすれば、突条43が大径部32の溝41の間の部分にぶつかるので、操作側ハウジング25及び外側可動スペーサー24をプレストレスロッド21の軸方向に動かすことができなくなる。
なお、可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24は、それぞれ突条43及び突条44のピッチの半分(図7及び図8の場合22.5度)回動させることができれば、突条43及び突条44は溝42及び溝41に入り込める位置と入り込めない位置をとり得るが、それ以上回動させることができても良いことは当然である。
【0037】
操作側ハウジング25及び駆動側ハウジング26については、実施例1の操作側ハウジング5及び駆動側ハウジング6と同様の構成であるので説明を省略する。
図4におけるF−F線断面図である図9は、可動スペーサー駆動用歯車27及び外側可動スペーサー駆動用歯車28を同期して回動させるための駆動装置を示す図であり、可動スペーサー駆動用歯車27及び外側可動スペーサー駆動用歯車28の中心軸を貫く軸部45、その中間部に設けてあるピニオン部46、ピニオン部46と噛合するラック部47及びラック部47を上下に移動させる1つの駆動部48からなっている。
【0038】
実施例2のプレストレス装置は、図10に示すように、以下の手順により組み立てる。
(A)操作側ハウジング25の穴40の他端側に可動スペーサー23を取り付ける。
(B)固定スペーサー22を操作側ハウジング25の一端側から挿入し、他端部を駆動側ハウジング26の一端側の面に設けてある装着部材39に挿入する。
その後、操作側ハウジング25の穴40の一端側に外側可動スペーサー24を取り付ける。
(C)プレストレスロッド21を外側可動スペーサー24の一端側から挿入し、他端側を駆動側ハウジング26、プレストレスシリンダー29及び駆動シリンダー30に貫通させ、ナット31をねじ込む。
(D)可動スペーサー駆動用歯車27、外側可動スペーサー駆動用歯車28等を取り付けて、可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24を回動させて、突条43及び突条44を、それぞれ溝42及び溝41に入り込めない位置とする。
その後、空気室38に適量の空気を送り込むと、プレストレスロッド21が他端側へ引っ張られ、外側可動スペーサー24が他端側へ押され、可動スペーサー23の他端側の面で固定スペーサー22が他端側へ押されて、固定スペーサー22に適正なプレストレスが付与される。
【0039】
実施例2のプレストレス装置をハウジング間隔の変更に対応させる手順については詳細には説明しないが、実施例1の手順(B)及び(D)における可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4の移動を可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24の回動に代え、ハウジング間隔を変更する際には突条43及び突条44を溝42及び溝41に入り込める位置とし、プレストレスを付与する際には突条43及び突条44を溝42及び溝41に入り込めない位置とする点が異なるだけである。
【0040】
実施例1及び2の変形例を列記する。
(1)実施例1のプレストレス装置は、外側可動スペーサー4及び外側可動スペーサー駆動装置8を備え、実施例2のプレストレス装置は、外側可動スペーサー24及び外側可動スペーサー駆動用歯車28を備えているが、これらは必ずしも必要ではない。
そうした場合、大径部12、32はプレストレスロッド1、21の他端部に設けるフランジ部に代え、外側凹部13、33を設ける必要はなくなる。
また、操作側ハウジング5、25にはプレストレスロッド1、21が通過でき、フランジ部が通過できない穴を設ければ良く、ハウジング間隔を狭める際にはプレストレスロッド1、21を操作側ハウジング5、25とともに他端側へ移動させ、ナット11、31を一端側へねじ込んで駆動シリンダー10、30に係合させることとなる。
なお、固定スペーサー2、22を軸方向に移動させ、操作側ハウジング5、25を通過させて引き抜くことができるようにするためには、操作側ハウジング5、25に固定スペーサー2、22が通過できる穴を設けるとともに、プレストレスロッド1、21のフランジ部を大きなものとしてその穴を通過できないようにすれば良い。
(2)実施例1のプレストレス装置においては、可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4を、可動スペーサー駆動装置7及び外側可動スペーサー駆動装置8によって移動させ、実施例2のプレストレス装置においては、可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24を可動スペーサー駆動用歯車27や外側可動スペーサー駆動用歯車28等によって回動させるようにしたが、これらの駆動機器は必ずしも必要な構成ではなく、プレストレス装置の組み立てやハウジング間隔変更に際し、適宜の手段で移動又は回動させれば良い。
(3)実施例1及び2のプレストレス装置においては、外側凹部13、33及び内側凹部17、37を、それぞれ1つ設けたが2つ以上設けても良い。
そして、例えば2つ設けた場合にはハウジング間隔を3段階に変更可能となる。
(4)実施例1及び2のプレストレス装置においては、プレストレスシリンダー9、29 及び駆動シリンダー10、30を用い、空気室18、38に空気を送り込んでプレストレスロッド1、21を引っ張るものとしたが、空気圧に限らず油圧式としても良く、適宜の機械的手段を用いてプレストレスロッド1、21を引っ張るようにしても良い。
(5)実施例1のプレストレス装置においては、固定スペーサー2を円筒状としたが、角筒状や楕円筒状等、内部をプレストレスロッド1が貫通可能なものであればどのような形状でも良い。
(6)実施例1のプレストレス装置においては、可動スペーサー3、外側可動スペーサー4、可動スペーサー駆動装置7及び外側可動スペーサー駆動装置8を、それぞれ4つ設けたが、4つに限らず1つ以上設ければ良い。
なお、1つだけ設ける場合には可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4はリング状又はC字状とし、その径が変えられるようにするかヒンジ部を設けて開閉できるようにすれば良く、複数設ける場合には可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4を均等に配置した方が良い。
(7)実施例1のプレストレス装置においては、プレストレスロッド1の大径部12に4箇所の外側凹部13を設け、固定スペーサー2の肉厚部15に4箇所の切欠部16及び4箇所の内側凹部17を設けたが、これらは外側可動スペーサー4や可動スペーサー3に1対1に対応させて設ける必要はなく、外側可動スペーサー4や可動スペーサー3を2つ受け入れ可能な外側凹部や切欠部及び内側凹部を2つ設けても良いし、大径部12の周囲全部を外側凹部とし、肉厚部15の周囲全部を切欠部又は内側凹部としても良い。
(8)実施例2のプレストレス装置においては、大径部32及び肉厚部35に8つの溝41及び42を設け、可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24に8つの突条43及び44を設けたが、溝41と突条43及び溝42と突条44は、それぞれ2つ以上の同数設ければ良い。
なお、溝や突条の数を変更した場合でも、溝や突条は均等に配置した方が良い。
(9)実施例2のプレストレス装置においては、大径部32及び肉厚部35に8つの溝41及び42を設け、可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24に8つの突条43及び44を設けたが、大径部32及び肉厚部35に突条を設け、可動スペーサー23及び外側可動スペーサー24に溝を設けても良い。
(10)実施例2のプレストレス装置は、可動スペーサー23と外側可動スペーサー24を同期して回動させるための駆動装置として、可動スペーサー駆動用歯車27、外側可動スペーサー駆動用歯車28、軸部45、ピニオン部46、ラック部47及び1つの駆動部48を備えているが、このような機械的手段によらず電気的に同期して制御するようにしても良い。
また、可動スペーサー23と外側可動スペーサーは、必ずしも同期して回動させる必要はなく、それぞれ別々に駆動機器を設けて回動させても良い。
(11)実施例2のプレストレス装置は、外側可動スペーサー24及び外側可動スペーサー駆動用歯車28を備えているが、外側可動スペーサー24に代えて同様の突条44を有する外側固定スペーサーとしても良い。
そうした場合、外側可動スペーサー駆動用歯車28等の駆動装置は当然不要となるが、代わりにプレストレスロッド21を回動させる回動装置を設けて、ハウジング間隔を変更する際には溝41を突条44が入り込める位置に制御し、プレストレスを付与する際には溝41を突条44が入り込めない位置に制御できるようにした方が良い。
【符号の説明】
【0041】
1、21 プレストレスロッド 2、22 固定スペーサー
3、23 可動スペーサー 4、24 外側可動スペーサー
5、25 操作側ハウジング 6、26 駆動側ハウジング
7 可動スペーサー駆動装置 8 外側可動スペーサー駆動装置
9、29 プレストレスシリンダー 10、30 駆動シリンダー
11、31 ナット 12、32 大径部 13、33 外側凹部
14、34 ネジ溝 15、35 肉厚部 16、36 切欠部
17、37 内側凹部 18、38 空気室
19、39 装着部材 20、40 穴
27 可動スペーサー駆動用歯車 28 外側可動スペーサー駆動用歯車
41、42 溝 43、44 突条 45 軸部
46 ピニオン部 47 ラック部 48 駆動部
101 圧延ロール 102、103 ハウジング
104 タイロッド 105 プレストレスロッド
【要約】      (修正有)
【課題】ハウジングの間隔を変えた場合も適正なプレストレスを付与することができ、信頼性が高く、かつ分解・組立も容易なプレストレス装置の提供。
【解決手段】プレストレスロッド1、固定スペーサー2、可動スペーサー3、外側可動スペーサー4、操作側ハウジング5、駆動側ハウジング6、可動スペーサー駆動装置7、外側可動スペーサー駆動装置8、プレストレスシリンダー9、駆動シリンダー10及びナット11等を備えたプレストレス装置。可動スペーサー3及び外側可動スペーサー4を開いた状態にして操作側ハウジング5を移動させた後に閉じた状態とし、その後空気室18に適量の空気を送り込むと、固定スペーサー2に適正なプレストレスを付与することができるプレストレス装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11