特許第5890940号(P5890940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890940光チャネルの反射プロファイルを推定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890940
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】光チャネルの反射プロファイルを推定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   G01M11/00 R
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-516521(P2015-516521)
(86)(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公表番号】特表2015-521729(P2015-521729A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2013058956
(87)【国際公開番号】WO2013185975
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】12305674.9
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メールスマン,ステイン
(72)【発明者】
【氏名】ファンカイルスビルク,ルディ
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウブ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘーマン,ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】クリバウ,ヤニック
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−069541(JP,A)
【文献】 米国特許第05129721(US,A)
【文献】 特開平04−132931(JP,A)
【文献】 特開平02−223840(JP,A)
【文献】 特開平11−281525(JP,A)
【文献】 特開昭63−277950(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0020672(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 −11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光チャネルの反射プロファイルを推定するための方法であって、
前記光チャネルの測定された反射プロファイル(RP)を提供するステップと、
1つまたは複数の推定された反射ピーク(P1、P2、P3)を前記測定された反射プロファイル(RP)内で推定するステップと、
推定された反射ピーク(P1、P2、P3)を、前記測定された反射プロファイル(RP)から除外することによって、残留反射プロファイル(RRP)を決定するステップと、クロストークノイズの、1つまたは複数の推定されたクロストーク周波数成分(CT)を前記残留反射プロファイル(RRP)内で修正することによって、修正された残留反射プロファイル(MRRP)を決定するステップと、
前記推定された反射ピーク(P1、P2、P3)と前記修正された残留反射プロファイル(MRRP)を重ね合わせることによって、推定された反射プロファイル(ERP)を決定するステップと
を含
前記クロストークノイズは、前記測定された反射プロファイル(RP)を提供するデバイス以外のデバイスによって、前記測定された反射プロファイル(RP)を提供するデバイスにもたらされる、方法。
【請求項2】
前記測定された反射プロファイル(RP)が、時間領域において提供され、
前記反射ピーク(P1、P2、P3)を時間領域において推定するステップと、
前記推定された反射ピーク(P1、P2、P3)を時間領域において除外するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反射ピーク(P1、P2、P3)を時間領域において推定するステップが、
前記測定された反射プロファイル(RP)の2次導関数(SD)を決定するステップと、
前記2次導関数(SD)がそれに対する閾値(T1)を超える、前記2次導関数(SD)の指標を決定するステップと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反射ピーク(P1、P2、P3)を時間領域において推定する前記ステップが、
決定された指標に指標が対応する、前記測定された反射プロファイル(RP)の値を使用するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反射ピーク(P1、P2、P3)を時間領域において推定する前記ステップが、
前記決定された指標を中心に展開されている1つまたは複数の事前定義された時間窓内に指標が位置する、前記測定された反射プロファイル(RP)の値をさらに使用するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値(T1)が、前記2次導関数の中央絶対値を使用して決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記測定された反射プロファイル(RP)が、時間領域において提供され、
前記クロストーク周波数成分(CT)を周波数領域において推定するステップと、
前記クロストーク周波数成分(CT)を周波数領域において修正するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クロストーク周波数成分(CT)を周波数領域において推定するステップが、
前記残留反射プロファイル(RRP)を時間領域から周波数領域に変換することによって、前記残留反射プロファイル(RRP)のスペクトル(S)を決定するステップと、
前記スペクトル(S)の振幅の1次導関数(FD)を決定するステップと、
前記1次導関数(FD)がそれに対するスペクトル閾値(T2)を超える、前記1次導関数(FD)のスペクトル指標を決定するステップと
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クロストーク周波数成分(CT)を周波数領域において修正するステップが、
決定されたスペクトル指標にスペクトル指標が対応する、前記スペクトル(S)の値を修正するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記クロストーク周波数成分(CT)を周波数領域において修正するステップが、
前記決定されたスペクトル指標を中心に展開されている1つまたは複数の事前定義されたスペクトル窓内にスペクトル指標が位置する、前記スペクトル(S)の値もまた修正するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記クロストーク周波数成分(CT)を周波数領域において修正するステップが、
スペクトル値をそれぞれのスペクトル窓内でそれぞれの平均値に設定するステップであって、前記平均値が、指標が前記それぞれのスペクトル窓に隣接するスペクトル値の平均として決定される、設定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記修正された残留反射プロファイル(MRRP)を決定するステップが、
修正されたスペクトルを時間領域に逆に変換することによって、前記修正された残留反射プロファイル(MRRP)を決定するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
光チャネルの反射プロファイルを推定するためのデバイスであって、
少なくとも1つのデータインタフェース(DI)と、
少なくとも1つのメモリデバイス(M)と、
少なくとも1つの処理デバイス(P)と
を備え、
前記データインタフェース(DI)が、前記光チャネルの測定された反射プロファイル(RP)を受信することができ、
前記メモリデバイス(M)および前記処理デバイス(P)が、協同で、
1つまたは複数の推定された反射ピーク(P1、P2、P3)を前記測定された反射プロファイル(RP)内で推定し、
推定された反射ピーク(P1、P2、P3)を、前記測定された反射プロファイル(RP)から除外することによって、残留反射プロファイル(RRP)を決定し、
クロストークノイズの、1つまたは複数の推定されたクロストーク周波数成分(CT)を、前記残留反射プロファイル(RRP)内で修正することによって、修正された残留反射プロファイル(MRRP)を決定し、
前記推定された反射ピーク(P1、P2、P3)と前記修正された残留反射プロファイル(MRRP)を重ね合わせることによって、推定された反射プロファイル(ERP)を決定する
ことができ、
前記クロストークノイズは、前記測定された反射プロファイル(RP)を提供するデバイス以外のデバイスによって、前記測定された反射プロファイル(RP)を提供するデバイスにもたらされる、推定するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光チャネルの反射プロファイルを推定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、受動光ネットワーク(PON)とも呼ばれるアクセスネットワークは、複数の顧客をデータ伝送のコアネットワークに接続するために使用される。
【0003】
このようなアクセスネットワークでは、コアネットワークとアクセスネットワークとの相互接続は、光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)を備える、いわゆる中央局で行われる。
【0004】
OLTは、少なくとも1つの、好ましくは光フィーダーファイバー(optical feeder fiber)と呼ばれる光ファイバを介して、いわゆるリモートノードに接続される。このリモートノードでは、OLTによって伝送された光ダウンリンク信号が、様々な光分岐器に分配され、光分岐器には1つまたは複数の顧客が光ネットワークユニット(ONU)によって接続されている。
【0005】
顧客は光分岐器を介して光アップリンク信号をリモートノードに向けて送信し、リモートノードはこれらの光アップリンク信号を、集約されたアップリンク信号へと連結し、集約された信号を光フィーダーファイバーを介して、OLTを備えた中央局に伝送する。
【0006】
デバイスが光信号を伝送する先の伝送チャネルの伝送プロパティを決定するために、光時間領域リフレクトメトリ法(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)の測定技法を適用することができる。このようなOTDR測定では、伝送チャネルの反射プロファイルが推定される。好ましくは、OTDRの技法がOLTで実行される。
【0007】
OTDRのために、光パルスの形式の光測定信号が、1つまたは複数の光ファイバを含む光チャネル内に伝送され得る。そのような光ファイバは通常、不均質な材料で形成され、それにより、光測定信号の後方散乱が生じる。好ましくは受信応答信号と呼ばれる、後方散乱した光信号は、次いで、時間と共に反射プロファイルとして記録することができる。受信応答信号は、光ファイバ内の光信号の伝搬速度が分かっていれば、時間領域から距離に変換することができる。
【0008】
例えば、オープンコネクタやファイバコネクタの汚れなどの、光チャネルの様々な欠陥は、測定信号の後方散乱の特徴的な増加または減少を生じさせる場合があり、それは、反射プロファイル内で反射ピークとして観察され得る。反射プロファイルおよびそのプロファイルに含まれる反射ピークを検査することによって、光チャネル内のどの距離に欠陥が存在するかを導き出すことができる。
【0009】
単一光パルスを測定信号として使用するのではなく、OTDRのより高度な技法を利用することができる。この高度な技法は、相関シーケンスに依存して光信号の振幅が変調される光信号を活用する。受信応答信号は、最初に記録され、次いで反射プロファイルを決定するために使用される。これは、時間離散型の受信応答信号と初期の相関シーケンス自体を相互に関連付けることによって実現される。相関シーケンスの自己相関関数が、ディラックのデルタ関数に等しいか、デルタ関数によって近似的に特定される場合、相関関係の結果から、時間領域における、光チャネルのインパルス応答の推定が生じ、その推定は反射プロファイルの近似である。
【0010】
伝送データを搬送する光伝送信号を伝送デバイスを使用して光チャネルに伝送するときに、さらに別個のデバイスを使用することでOTDRの技法を実行してもよい。伝送デバイスおよび別個のOTDRデバイスは、この場合、両方が同じ光チャネルに、好ましくは光結合器を介して結合される。
【0011】
より高度な技法は、組込みOTDR(eOTDR:embedded OTDR)の技法であり、そこでは、伝送デバイス自体が、光伝送信号を生成するためのハードウェアおよびOTDR測定を実行するために必要なハードウェアを備えている。好ましくは、光伝送信号は、相関シーケンスに依存して直接変調され、そこでは、この直接変調の周波数は、受信側でのデータ受信を乱さないように選択される。直接変調された測定信号を搬送する光伝送信号を光チャネルに伝送した後、光伝送信号が変調されたその周波数を除去することによって、光チャネルの受信応答信号を得ることができる。先に説明してきたように、この受信応答信号は、次いで、信号相関の技法を介して、反射プロファイルを決定するために使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
光チャネルの反射プロファイルを推定する方法が提案される。この方法は、様々なステップを含む。
【0013】
光チャネルの測定された反射プロファイルが提供される。1つまたは複数の反射ピークが、測定された反射プロファイル内で推定される。
【0014】
推定された反射ピークを、測定された反射プロファイルから除外することによって、残留反射プロファイルが決定される。さらに、1つまたは複数の推定されたクロストーク周波数成分を残留反射プロファイル内で修正することによって、修正された残留反射プロファイルが決定される。
【0015】
最後に、推定された反射ピークと修正された残留反射プロファイルを重ね合わせることによって、推定された反射プロファイルが決定される。
【0016】
提案されている方法の利点を把握するために、以下の側面を考慮することができる。
【0017】
組込みOTDRの方法を実行すると、反射プロファイルの測定を実行するハードウェアコンポーネントは、同じ1つのデバイス内に存在する他のハードウェアコンポーネントによってもたらされるクロストークノイズの影響を受ける場合がある。このようなクロストークノイズは、測定された応答信号、ひいては測定された反射プロファイルをも劣化させる恐れがある。クロストークノイズは、特に、OTDRデバイスの伝送デバイスへの統合がスモールフォームファクタプラガブル(SFP)として行われる場合に現れ得る。
【0018】
信頼性のある、推定された反射プロファイルを取得するために、クロストークノイズの影響は、削減される必要がある。1つの対策は、ハードウェアデバイスによって生成される電磁場がもたらすクロストークノイズの量を減らすために、ハードウェアデバイスを遮蔽することであろう。このような対策は、eOTDRを実行するデバイスに割かれる空間の制約に起因して、一方では困難なものであり、他方では高額になり得るものでもある。
【0019】
クロストークノイズを、測定された反射プロファイルから除外するために、フィルタリング技法を適用することができる。このようなフィルタリング技法は、クロストークノイズに影響を与えるだけでなく、測定された反射プロファイル内に存在する反射ピークにも影響を与える場合がある。先に説明してきたように、そのような反射ピークは、光チャネルの欠陥を検出できるように、フィルタリングされた反射プロファイル内に存在し続けなければならない。
【0020】
提案されている方法は、最初に反射ピークを推定し、次いで、残留反射プロファイルを導出するためにこれらのピークを除外する。次に、推定されたクロストーク周波数成分が修正されるように、残留反射プロファイルがフィルタリングされる。通常、クロストークが、1つまたは複数のスペクトルピークを反射プロファイルのスペクトル内に生じさせるという事実に起因して、クロストークノイズは、推定されたクロストーク周波数成分を修正することによって、削減可能である。クロストーク周波数成分を修正した後、導出された、修正された残留反射プロファイルは、先に推定された反射ピークと重ね合わせられる。
【0021】
このように、提案されている、反射を推定する方法は、フィルタリング技法を適用し、その技法では、推定された反射ピークが最初に、測定された反射プロファイルから分離され、その後、別個に、クロストークノイズを周波数領域においてフィルタリングし、そして最後に、再びフィルタリング結果を、維持された反射ピークと重ね合わせる。したがって、クロストークの影響を削減するためのこのフィルタリング技法は、最終的に推定される反射プロファイル内に存在する反射ピークの大幅な劣化を回避する。したがって、推定された反射プロファイルは、十分に維持された反射ピークを含む。したがって、推定された反射プロファイルは、光チャネルの欠陥を反射ピークによって検出するとともに、クロストークノイズの削減に起因して、光チャネルの減衰特性を確実に推定するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による提案されている方法の流れ図である。
図2a】線形領域における測定された反射プロファイルを示す図である。
図2b】対数領域における測定された反射プロファイルを示す図である。
図3】線形領域における、測定された反射プロファイルの2次導関数を示す図である。
図4a】推定された反射ピークを示す図である。
図4b】残留反射プロファイルを示す図である。
図5】残留反射プロファイルのスペクトルの振幅を示す図である。
図6】1次導関数の振幅を示す図である。
図7】修正された残留反射プロファイルを示す図である。
図8a】線形領域において、推定された反射プロファイルが、横座標において時間スケール上にプロットされている図である。
図8b】対数領域において、推定された反射プロファイルが、横座標において時間スケール上に示されている図である。
図9a】線形領域において、推定された反射プロファイルが、横座標において距離スケール上にプロットされている図である。
図9b】対数領域において、推定された反射プロファイルが、横座標において距離スケール上に示されている図である。
図10】一実施形態による、提案されているデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、好ましい実施形態による提案されている方法の流れ図を示す。ステップS1では、光チャネルの測定された反射プロファイルとしてOTDRトレースが提供される。このOTDRトレースは、提案されている方法も実行するデバイスによって測定することができる。別の解決策によれば、OTDRトレースは、第1のデバイスによって、第2のデバイスに、第2のデバイスのデータインタフェースを介して提供されてもよく、第2のデバイスは、OTDRトレースのデータを受信し、次いでOTDRトレースを、提案されている方法の別のステップを実行する、第2のデバイスの別のサブデバイスに提供する。
【0024】
OTDRトレースは、好ましくは、サンプリングされた時間離散信号の形の測定された反射プロファイルである。好ましくは、サンプリングされた、測定された反射プロファイルのサンプリング周波数は、数メガヘルツの範囲内に、好ましくは、40MHzに位置する。そうした40MHzのサンプリング周波数は、25nsのサンプリング間隔に対応する。光ファイバ内の光信号の代表的な伝搬速度を考慮に入れると、25nsのサンプリング間隔は、2.5mの距離の分解能に対応する。
【0025】
測定された反射プロファイルRPは、提案されている方法の次のステップS2に提供される。図2aは、線形領域における測定された反射プロファイルRPの例を示し、そこでは、マイクロ秒の時間分解能に対応する時間スケールが横座標に示されている。反射プロファイルRPは、この例で、少なくとも3つの反射ピーク、P1、P2、P3と、クロストークノイズを含み、クロストークノイズは、明確に、反射プロファイルRP上に重なるノイズ信号として見える。
【0026】
図2aの反射プロファイルRPは、繰り返し、図2bにおいて、対数領域における反射プロファイルRPLとして示されている。図2aの反射プロファイルRPおよび図2bの反射プロファイルRPLの両方は、ここでは、マイクロ秒の時間スケールで、時間連続信号としてプロットされており、当業者であれば、こうした時間連続プロットが時間離散のサンプリングされた反射プロファイルを表示できることを理解するであろう。したがって、反射プロファイルRPおよびRPLのプロットされた値は、図2aおよび図2bに示されている時間スケールに対応する離散指標(indices)上にプロットされた時間離散値として見なされ得る。
【0027】
図1に戻ると、反射プロファイルRP内に存在する反射ピークEPが、ステップS2内で推定される。こうした推定された反射ピークEPは、次いで、分かれたステップS21で格納することができる。測定された反射プロファイルRPは、時間領域において提供され、一方、推定された反射ピークEPもまた、好ましくは、時間領域において推定される。反射ピークを推定するために、測定された反射プロファイルの2次導関数が決定される。これは、時間離散の測定された反射プロファイルに対して、時間領域における2階微分の信号を決定することによって得ることができる。この2次導関数を導出すると、反射ピークは、2次導関数が、それに対して定義された閾値を超える時間離散指標に対して存在すると推定される。
【0028】
図3は、2次導関数SDを閾値T1と共に示す。閾値T1は、2次導関数SDの中央絶対値(median absolute value)を決めることによって決定することができる。閾値T1は、この中央絶対値に固定ファクタを乗じたものに選ばれることが好ましい。固定ファクタは、好ましくは、値1と値10の範囲内で選ばれる。好ましい実施形態では、固定ファクタは、値6に選ばれる。
【0029】
先に概説されたように、1つまたは複数の反射ピークの存在を推定するために、2次導関数がそれに対する閾値を超える、2次導関数の時間離散指標が決定される。推定された反射ピークは次いで、時間離散指標が、決定された時間離散指標に対応するか、それに等しい、測定された反射プロファイルRPの値として決定される。
【0030】
好ましくは、測定された反射プロファイルRPのこれらの決定された値が、推定された反射ピークとして使用されて次に除外されるのみでなく、測定された反射プロファイルRPの別の値もまた推定された反射ピークとして使用される。これらの別の値は、先に決定された時間離散指標を中心に展開されている事前定義された時間窓内に、対応する別の時間離散指標が位置する値である。したがって、好ましくは、時間離散指標の組合せセットに対応する値の組合せセットが、反射ピークを推定するために使用され、そこでは、時間離散指標の組合せセットが、時間離散指標の、先に決定されたセットと別の時間離散指標との組合せである。
【0031】
測定された反射プロファイルRPに対する40MHzのサンプリング周波数の場合、時間窓は、好ましくは、8時間離散指標の幅を有し、それは、200ns、すなわち20mの距離分解能に対応する。さらに、相関シーケンスの代わりにOTDR測定に対して単一光パルスのみを使用すると、時間窓の適当な時間幅は、光パルスの半値全幅に対応する。さらにまた、時間窓の適当な時間幅は、相関シーケンスを使用したOTDR測定から生じる、ディラックのデルタ関数の適当な時間幅に対応する。
【0032】
時間窓は、好ましくは、時間窓の範囲に入る測定された反射プロファイルの値に対して重み係数を定義する重み付け窓である。第1の解決策によれば、重み付け窓は、定数係数1を、時間窓の範囲に入る、測定された反射プロファイルの値に適用する単純な矩形窓である。別の解決策によれば、重み付け窓は、0から1の範囲の様々な値を、時間窓の範囲に入る、測定された反射プロファイルの値に適用する2乗余弦窓である。こうした2乗余弦窓を使用することによって、反射ピークを表す値と非反射ピークを表す値のよりスムーズな変換が実現される。
【0033】
図4aは、線形領域におけるいくつかの推定された反射ピークEPを示す。
【0034】
図1に戻ると、ステップS3内で、推定された反射ピークが、測定された反射プロファイルRPから除外される。これにより、残留反射プロファイルRRPが生じる。図4bは、線形領域における残留反射プロファイルRRPを示す。反射ピークが検出された指標における測定された反射プロファイルの初期値を、反射ピークが検出された指標に隣接する指標の反射プロファイルの平均値によって置き換えることによって、反射ピークが残留反射プロファイルRRPから除外される。
【0035】
図1に戻ると、取得された残留反射プロファイルRRPが、次いで、クロストークノイズを除去するために使用される。
【0036】
図5は、残留反射プロファイルのスペクトルの振幅Sを示す。クロストークノイズの周波数成分CTもまた、図5で示されている。残留反射プロファイルのスペクトル内で、推定されたクロストーク周波数成分を修正することによって、修正された残留反射プロファイルが決定される。
【0037】
そうした修正は、図1のステップS4で実行される。図5に示されるクロストーク周波数成分CTが、周波数領域で推定され、また周波数領域で修正もされる。そのようなクロストーク周波数成分CTは、残留反射プロファイルのスペクトル内のより低い周波数領域内ではスペクトルピークとして予想される場合があり、一方、通常、より高い周波数に関しては、不連続性がないことが予想される。
【0038】
クロストーク周波数成分CTを推定する場合、反射プロファイルのスペクトルが、残留反射プロファイルを時間領域から周波数領域に変換することによって決定される。これは、好ましくは、周波数変換によって実行され、周波数変換は、時間領域において離散的であり、また周波数領域において離散的である。好ましくは、高速フーリエ変換(FFT)が使用される。これにより、複素離散周波数スペクトルが生じる。そのような離散周波数スペクトルの振幅Sが、図5に示されているものであり、そこでは周波数スケールが、連続スケールとして横座標にプロットされる。この例では、プロットされる離散値の数は、4096である。
【0039】
最後に、クロストーク周波数成分CTを検出する場合、複素離散周波数スペクトルが、好ましくは、1階微分信号を決定することによって一度微分される。これにより、複素1次導関数が生じる。次いで、この1次導関数の振幅が決定され、それにより、実数値が生じる。
【0040】
図6は、残留反射プロファイルのスペクトルの1次導関数の振幅FDを示す。1次導関数の振幅FDがそれに対するスペクトル閾値T2を超える、1次導関数の振幅FDのスペクトル指標が決定される。複素スペクトルが、次いで、決定されたスペクトル指標に対応する指標のその複素数値において、修正される。
【0041】
閾値T2は、1次導関数の振幅FDの中央値を決めることによって決定することができる。閾値T2は、この中央値に固定ファクタを乗じたものに選ばれることが好ましい。固定ファクタは、好ましくは、値1と値10の範囲内で選ばれる。好ましい実施形態では、固定ファクタは、値6に選ばれる。
【0042】
好ましくは、閾値T2は、事前定義されたスペクトル領域FR内で、1次導関数の振幅FDの中央値を決めることによって決定される。このスペクトル領域FRは、下限周波数限界LLおよび上限周波数限界ULを有する。この中央値に、次いで固定ファクタを乗じることができる。固定ファクタは、好ましくは、値1と値10の範囲内で選ばれる。好ましい実施形態では、固定ファクタは、値6に選ばれる。
【0043】
好ましくは、スペクトルの複素スペクトル値の修正は、1次導関数の振幅FDがそれに対するスペクトル閾値T2を超えるスペクトル指標におけるスペクトル値に対して実行されるのみでなく、先に決定されたスペクトル指標を中心に展開されている1つまたは複数の事前定義されたスペクトル窓内に別のスペクトル指標が位置する別のスペクトル値に対しても実行される。
【0044】
したがって、離散スペクトル指標の組合せセットに対応する値の組合せセットが、クロストーク周波数成分の推定とその後のそれらの成分の修正のために使用され、そこでは、離散スペクトル指標の組合せセットが、離散スペクトル指標の、先に決定されたセットと、別の離散スペクトル指標との組合せであることが好ましい。
【0045】
好ましくは、スペクトル窓は、事前定義された幅を有し、幅は、好ましくは、8スペクトル指標の幅である。好ましくは、このスペクトル窓は、別の一解決策では、1または0の重み係数を適用する矩形窓であり得る重み付け窓である。別の解決策によれば、スペクトル窓は、0と1の範囲内で変わる重み係数を適用する2乗余弦窓である。
【0046】
クロストーク周波数成分を推定するために使用されるスペクトル指標に相当する、対応する複素スペクトル値は、それぞれの平均値に修正される。これらの対応する複素スペクトル値のうちの1つに対して、それぞれの複素平均値は、修正される対応する値に隣接する隣接スペクトル値の平均として決定される。
【0047】
好ましくは、クロストーク周波数成分およびこれらの成分の修正の推定は、事前定義された周波数領域FRに限定される。
【0048】
修正された複素スペクトルは、次いで、好ましくは時間離散変換および離散周波数変換を逆変換として使用して、周波数領域から時間領域に逆に変換される。この逆変換は、好ましくは、逆高速フーリエ変換(IFFT)である。
【0049】
取得された、修正された残留反射プロファイルは、次いで、図1に示されるように、ステップS4からステップS5に提供される。修正された残留反射プロファイルMRRPのそのような例は、図7において線形領域に示されている。図1に示されるように、導出された、修正された残留反射プロファイルMRRPは、次いで、ステップS5において、先に推定された反射ピークEPと重ね合わせられる。これにより、推定された反射プロファイルERPが生じる。
【0050】
図8aおよび図8bは、線形領域ERPにおいて、また対数領域ERPLにおいて、推定された反射プロファイルを示し、そこでは、これらのプロファイルは、横座標において時間スケール上にプロットされる。図2aの最初に測定された反射プロファイルRPと図8aの推定された反射プロファイルERPを線形領域において比較することによって、クロストークノイズの量が減少した一方、クロストークノイズを減少させたステップによる反射ピークに対する影響は最小限の量に保たれたことに留意されたい。図8aを見ると、最初に見てとれた反射ピークP1、P2、およびP3を確認できるだけでなく、図2aの反射プロファイルRP内で以前は容易に見てとれなかった反射ピークP4も確認することができることが明白に分かる。
【0051】
提案されている方法は、クロストークノイズの量を減少させるのに、最初に、推定された反射ピークを、測定された反射プロファイルから分離し、次いで残留反射プロファイルをフィルタリングするので有利である。さらに、後で、推定された反射ピークを修正された残留反射プロファイルと重ね合わせると、推定された反射プロファイルが得られ、そこでは、クロストークノイズの減少および反射ピークの維持という両方の目標が達成される。
【0052】
図9aおよび図9bは、線形領域ERPDにおける、また対数領域ERPDLにおける推定された反射プロファイルをそれぞれ示し、そこでは、これらのプロファイルは、横座標において距離スケール上にプロットされる。
【0053】
図10は、好ましい実施形態による、光チャネルの反射プロファイルを推定するための提案されているデバイスを示す。
【0054】
デバイスDは、測定された反射プロファイルを表すデータをそこで受信することができるデータインタフェースDIを備える。
【0055】
好ましくは、データインタフェースDIは、データバスDBを介して、処理デバイスPおよびメモリデバイスMに接続される。
【0056】
メモリデバイスMおよび処理デバイスPは、以上で詳述された提案されている方法の様々なステップを協同で実行するように機能することができる。
【0057】
したがって、メモリデバイスMおよび処理デバイスPは、協同で、測定された反射プロファイル内で反射ピークを推定し、さらに、推定された反射ピークを、測定された反射プロファイルから除外することによって、残留反射プロファイルを決定することができる。
【0058】
さらに、デバイスPおよびMは、修正された残留反射プロファイルを決定するために、推定されたクロストーク周波数成分を残留反射プロファイル内で協同で修正することができる。最後に、デバイスPおよびMは、推定された反射プロファイルを決定するために、推定された反射ピークと修正された残留反射プロファイルを協同で重ね合わせることができる。
【0059】
「プロセッサ」として分類された任意の機能ブロックを含む、図10に示される様々な要素の機能は、専用のハードウェア、ならびに適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアを使用することによって、提供されてもよい。プロセッサによって提供されるとき、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、またはその一部を共有することができる複数の個々のプロセッサによって、提供されてもよい。さらに、「プロセッサ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアを排他的に指すものと解釈されるべきではなく、暗黙的に、デジタル信号プロセッサ(DSP)のハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶するための読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性記憶装置を非限定的に含んでもよい。また、従来の、および/または特注の、他のハードウェアも含まれてもよい。
【0060】
当業者であれば、本明細書における任意のブロック図は、本発明の原理を具体化する例示的な回路の概念図を表すことが理解されよう。同様に、任意の流れ図は、実質的に、コンピュータ可読媒体において表現することができ、したがって、そのようなコンピュータまたはプロセッサが明示的に示されるかどうかを問わず、コンピュータまたはプロセッサによって実行できることが理解されよう。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10