(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5890942
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】探索レスキューシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/02 20090101AFI20160308BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20160308BHJP
G01S 1/68 20060101ALI20160308BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20160308BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
H04W4/02 150
G01S5/14
G01S1/68
G08B25/04 K
G08B25/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-528478(P2015-528478)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2015001345
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】515027772
【氏名又は名称】株式会社 スカイロボット
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】貝應 大介
【審査官】
石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−229449(JP,A)
【文献】
特開昭64−66581(JP,A)
【文献】
D. Kai, et al.,,"AirShield: A system-of-systems MUAV remote sensingarchitecture for disaster response.",In Systems Conference, 2009 3rdAnnual IEEE,IEEE,2009年 3月26日,pp.196-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/02
G01S 1/68
G01S 5/14
G08B 25/04
G08B 25/10
H04B 1/034
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探索対象を探索してその位置を計測するための探索レスキューシステムが、
探索対象が携行する電気信号を発信する信号発生装置と、
前記電気信号を受信する電気信号受信手段と、前記電気信号を解析して前記信号発生装置から発信された信号であることを判断する解析手段と、前記判断結果に基づいて解析信号を生成する解析信号生成手段と、前記解析信号をネットワーク網を介して送受信する通信手段と、からなる一又は複数の探索対象発見ユニットと、
前記探索対象発見ユニットから送信された解析信号を受信して探索対象の位置を計測する位置計測手段と、
前記信号発生装置と前記一又は複数の探索対象発見ユニットと前記位置計測手段とによって構成されるネットワーク網と、からなり、
探索対象発見ユニットが、探索対象の携行する前記信号発生装置から継続的または断続的に発信される電気信号を電気信号受信手段により受信する事により探索対象の存在を把握し、前記電気信号受信手段が受信した電気信号を解析手段が分析して前記信号発生装置から発信された電気信号であるかどうかを解析して判断するとともに、前記信号発生装置から発信された信号であると判断した場合に前記通信手段が解析信号生成手段によって生成された前記解析信号をネットワーク網を介して他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段に送信し、
他の探索対象発見ユニットは、前記探索対象発見ユニットから送信された解析信号を受信して他の探索対象発見ユニットまたは前記位置計測手段に送信し、
前記位置計測手段は、前記探索対象発見ユニットから送信される解析信号を受信して探索対象の存在を確認するとともに、解析信号の受信状態の分断を検知して解析信号の取得を継続するための解析信号の通信ルートを制御するとともに、
前記探索対象発見ユニットはGPS受信装置を搭載しており、前記信号発生装置からの電気信号を受信した際に前記GPS受信装置によって取得した探索対象発見ユニットの位置情報をネットワーク網を介して他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段に送信し、前記位置計測手段は、前記探索対象発見ユニットから送信される複数の位置情報を受信して探索対象の存在位置を三点計測を行う事により分析することを特徴とする探索レスキューシステム。
【請求項2】
前記一又は複数の探索対象発見ユニットは、移動自在な移動体に設置され、移動しながら探索対象発見ユニットが他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段との間で通信を行う事を特徴とする請求項1記載の探索レスキューシステム。
【請求項3】
前記移動体は、飛行移動自在な複数の飛行体であることを特徴とする請求項2記載の探索レスキューシステム。
【請求項4】
前記信号発生装置と前記探索対象発見ユニットと前記位置計測手段とからなるネットワーク網は、無線ネットワークで構成されるとともに、該ネットワーク網の構成がメッシュ型ネットワークからなり、前記信号発生装置から前記位置計測手段への電気信号および解析信号の伝送路を任意に選択可能としたことを特徴とする請求項1記載の探索レスキューシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遭難者等の探索対象を探索してその存在位置を特定するためのシステムに関し、特に、逸失物や遭難者に携行させた信号発生装置から発せられる電気信号を頼りに逸失物や遭難者の存在位置を把握可能にするとともに、逸失物や遭難者の発見時には、その逸失物や遭難者の存在位置をネットワークを経由して容易かつ迅速に認識可能とするための探索レスキューシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、逸失物や遭難者を発見し、その存在箇所を特定するための各種の措置が開発されており、逸失物や遭難者の存在箇所の特定の効率性、迅速性、正確性、信頼性を考慮したシステムが開発され、使用されている。特に、山岳救助などにおける遭難者の発見に関しては、探索する範囲が極めて広範囲であり、かつ迅速かつ確実に発見することが要求されるため、柔軟性および効率性に長けたシステムであることが要求されている。
【0003】
例えば、遭難者の位置を特定するためのシステムに関する技術として、特開2005−229449号が存在する。ここでは、複数の電波を発振する機能を有する小型発信器を登山者が携行し、遭難時に先ず、発信された遠距離まで届くVHF〜UHF帯の電波を頼りに、上空からヘリコプター等による第一次探索を行ない、次に、遭難救援センターを通して遭難エリアの情報を伝えられた地上探索隊が、遭難現場に近づき、MF帯またはMF帯およびVHF〜UHF帯の電波で第二次探索を行なうことにより遭難者を発見する技術が開示されている。この技術により、雪崩などで雪中に埋もれた遭難者の位置を早期に特定して救出に役立てることが可能となる旨が示唆されている。
【0004】
この技術によると、確かに遭難者の存在を把握する事は可能となる。しかしながら、この構成では、遭難者の存在位置を高い精度で特定する事は極めて困難であり、極めてあいまいな位置情報を基に捜索を行う事となり、探索隊等の二次災害の発生が懸念されるという大きな問題点があった。また、電波が届かないような地形である場合には、遭難者の存在の把握すらままならない可能性があるという致命的な問題が内在していた。更に、第一次探索をヘリコプター等が単独で行うこととなり、効率が良いとは言えないという問題点も存在していた。
【0005】
また、特開2002−342858号では、被捜索者に携帯される発見支援装置が現在の位置情報を送信し、情報管理装置が、行動計画に基づき遭難可能性を検出するとともに、発見支援装置から被捜索者の現在位置情報を取得して捜索者に提供することで捜索活動を支援し、発見支援装置から位置情報を取得できないときには、移動無線中継機を誘導して発見支援装置から位置情報を取得して捜索活動を支援するシステムに関する技術が開示されている。これにより、遭難の可能性がある場合に迅速かつ的確に警告し、効率的な捜索行なうことができる旨が示唆されている。
【0006】
この技術によると、発見支援装置から被捜索者の現在位置情報を取得できない場合であっても、被捜索者の発見が可能になると考えられるが、被捜索者の行動計画が存在しない場合には、移動無線中継機を的確に誘導することが極めて困難であり、迅速に被捜索者を発見することが必ずしも可能となるとは言えなかった。
【0007】
そこで、逸失物や遭難者の存在を容易かつ確実に把握可能とするとともに、逸失物や遭難者の発見時には、その逸失物や遭難者の存在箇所を高精度で算出し、その場所を迅速に特定して伝達可能とするための探索レスキューシステムの開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2005−229449号公報
【特許文献2】特開2002−342858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、逸失物や遭難者等の探索対象を探索してその存在位置を特定するためのシステムであって、特に、逸失物や遭難者が携行する信号発生装置から発せられる電気信号を頼りに逸失物や遭難者の存在を容易に把握することを可能とするとともに、逸失物や遭難者の発見時には、その逸失物や遭難者の存在箇所をネットワークを経由して伝達し、容易かつ迅速に把握することを可能とするための探索レスキューシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る探索対象を探索してその位置を計測するための探索レスキューシステムは、探索対象が携行する電気信号を発信する信号発生装置と、前記電気信号を受信する電気信号受信手段と、前記電気信号を解析して前記信号発生装置から発信された信号であることを判断する解析手段と、前記判断結果に基づいて解析信号を生成する解析信号生成手段と、前記解析信号をネットワーク網を介して送受信する通信手段と、からなる一又は複数の探索対象発見ユニットと、前記探索対象発見ユニットから送信された解析信号を受信して探索対象の位置を計測する位置計測手段と、前記信号発生装置と前記一又は複数の探索対象発見ユニットと前記位置計測手段とによって構成されるネットワーク網と、からなり、探索対象発見ユニットが、探索対象の携行する前記信号発生装置から継続的または断続的に発信される電気信号を電気信号受信手段により受信する事により探索対象の存在を把握し、前記電気信号受信手段が受信した電気信号を解析手段が分析して前記信号発生装置から発信された電気信号であるかどうかを解析して判断するとともに、前記信号発生装置から発信された信号であると判断した場合に前記通信手段が解析信号生成手段によって生成された前記解析信号をネットワーク網を介して他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段に送信し、他の探索対象発見ユニットは、前記探索対象発見ユニットから送信された解析信号を受信して他の探索対象発見ユニットまたは前記位置計測手段に送信し、前記位置計測手段は、前記探索対象発見ユニットから送信される解析信号を受信して探索対象の存在を確認するとともに、解析信号の受信状態の分断を検知して解析信号の取得を継続するための解析信号の通信ルートを制御する
とともに、前記探索対象発見ユニットはGPS受信装置を搭載しており、前記信号発生装置からの電気信号を受信した際に前記GPS受信装置によって取得した探索対象発見ユニットの位置情報をネットワーク網を介して他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段に送信し、前記位置計測手段は、前記探索対象発見ユニットから送信される複数の位置情報を受信して探索対象の存在位置を三点計測を行う事により分析する構成である。
【0010】
また、前記一又は複数の探索対象発見ユニットは、移動自在な移動体に設置され、移動しながら探索対象発見ユニットが他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段との間で通信を行う構成である。
また、前記移動体は、飛行移動自在な複数の飛行体である構成である。
【0011】
また、前記信号発生装置と前記探索対象発見ユニットと前記位置計測手段とからなるネットワーク網は、無線ネットワークで構成されるとともに、該ネットワーク網の構成がメッシュ型ネットワークからなり、前記信号発生装置から前記位置計測手段への電気信号および解析信号の伝送路を任意に選択可能としたこと構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.探索対象発見ユニットが解析手段を用いて電気信号を解析する構成としたため、探索対象が携行する信号発生装置から発せられた電気信号であるかどうかを確実に判断することが可能となる。また、信号発生装置と探索対象発見ユニットと位置計測手段とによってネットワーク網を構成したため、迅速に解析信号を位置計測手段に伝達することが可能となる。また、探索対象発見ユニットが、他の探索対象発見ユニットから送信された解析信号を受信して更に他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段に送信する構成としたため、途切れることなく解析信号を位置計測手段に伝達することが可能となる。また、位置計測手段が、解析信号の受信状態の分断を検知して解析信号の通信ルートを制御する構成としたため、解析信号の取得を途切れることなく継続することが可能となり、探索対象により早く安全にたどり着く事が出来る。
【0014】
2.探索対象発見ユニットを移動自在な移動体に設置したため、探索対象発見ユニットが移動しながら他の探索対象発見ユニットや位置計測手段との間で通信しながら探索を行う事が可能となり、通信経路に流動性が生じ効果的な探索をすることが可能となる。
3.移動体を飛行移動可能な飛行体としたため、ネットワーク網の構成の自由度を高めることが可能となる。
【0015】
4.信号発生装置と探索対象発見ユニットと位置計測手段とで構成されるネットワーク網をメッシュ型の無線ネットワークとしたため、あらゆる規模・範囲に対応したネットワーク網を構成することが可能となり、通信経路の任意の選択が可能となる。
5.探索対象発見ユニットがGPS受信装置を搭載しているため、位置計測手段が複数の位置情報を受信して三点計測を行う事で探索対象の存在位置を分析することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る探索レスキューシステムを、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る探索レスキューシステムの概略図であり、
図2は、遭難者を探索する場合の探索レスキューシステムの概略図である。
【0017】
本発明に係る探索レスキューシステム1は、
図1または
図2に示すように、信号発生装置10と、探索対象発見ユニット20と、位置計測手段30と、ネットワーク網40とからなり、信号発生装置10から発信される電気信号100を探索対象発見ユニット20が受信して解析し、位置計測手段30に伝送する事により、探索対象を探索してその存在箇所を計測・特定するための探索レスキューシステムである。本発明に係る探索レスキューシステム1は、探索を要する物や人の存在箇所を解析して特定する事を目的としており、特に、山岳や海上における遭難者を早期に発見することにも供されるシステムである。
【0018】
信号発生装置10は、逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象が携行する装置であり、
図1に示すように、電気信号100を発信する機能を有する電気通信器具である。信号発生装置10は、継続的または断続的に電気信号100を発信する装置であり、本実施例では、Bluetooth(登録商標)規格に基づいた通信を行う機器であり、電気信号100は、2.4GHzの周波数帯における電波に該当するものであり、逸失信号または遭難信号を継続的または断続的に発信する(Bluetooth(登録商標)のペアリングにおける、所謂「探索可能状態」とする)ことにより受信機器の接続を待つ構成である。電波強度は、Class1に分類される仕様となっているため、探索対象の存在位置から約100mの範囲で機器との通信が可能な構成となっているが、これらに限定される事なく、他の仕様や他の通信規格に基づいた通信を行う構成とすることが可能である。
【0019】
信号発生装置10は、本実施例では、逸失物300aや遭難者300bが携行して使用されるものである。物品(逸失物300a)の場合には、物品の内部または外部に小型発信装置からなる信号発生装置10を直接設置し、信号発生装置から電波(電気信号100)を発信してBluetooth(登録商標)のペアリングにおける探索可能状態にする構成である。また、人(遭難者300b)の場合には、遭難者300bが専用の小型発信装置からなる信号発生装置10を保有装備し、或は、携帯電話機等に設置して携行して、信号発生装置10から電波(電気信号100)を発信してBluetooth(登録商標)のペアリングにおける探索可能状態にする構成であるが、これに限定される事なく、他の装備方法によって携行する構成とすることが可能である。
【0020】
探索対象発見ユニット20は、
図1および
図2に示すように、信号発生装置10から発信される電気信号100を受信する事により、逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象の存在を把握するための装置であり、本発明に係る探索レスキューシステム1では、一または複数個の探索対象発見ユニット20が設置される構成となっている。
【0021】
探索対象発見ユニット20は、本実施例では、電気信号受信手段22と、解析手段24と、解析信号生成手段25と、通信手段26とからなる構成である。電気信号受信手段22は、信号発生装置10から発信される電気信号100を受信するための手段であり、本実施例では、信号発生装置10から発信される電気信号100を受信するための探索操作を移動しながら行う。
【0022】
電気信号受信手段22が移動しながら探索操作を行い電気信号100の到達範囲内に進入した場合に探索対象の信号発生装置10から発せられる探索可能状態を示す電気信号100が受信されると、その電気信号100が探索対象(300a、300b)から発せられたものであるかどうかを解析することが可能となる。解析手段24は、電気信号受信手段22が受信した電気信号100を解析して探索対象(300a、300b)から発せられた信号であるかどうかを解析する。
【0023】
本実施例では、Bluetooth(登録商標)を用いているため、例えば、信号発生装置10が特定のプロファイルに対応しているかどうかを判断する事により、信号発生装置10から発信された信号であることを判断することが可能となる。更に、信号発生装置10側と探索対象発見ユニット20側の固定されたパスキーまたは入力によるパスキーを照合することにより、より正確に信号発生装置10から発信された電気信号100であることを判断することが可能となる。なお、電気信号受信手段22と解析手段24は、個別の装置としてもよいし、両方の機能を有する合体した装置として構成してもよい。
【0024】
解析信号生成手段25は、解析信号200を生成するための手段である。本実施例では、電気信号受信手段22が受信した電気信号100が、信号発生装置10から発信された信号であると解析手段24が判断した場合に、解析信号生成手段25が解析信号200を生成する構成である。なお、これは探索対象(300a、300b)が近辺に存在していることを検出している状態を表している。
【0025】
解析信号200は、探索対象発見ユニット20が信号発生装置10から発せられる電気信号100を受信している状態(探索対象の存在を検出している状態)を示す信号であり、探索対象発見ユニット20が複数存在する場合には、本実施例ではどの探索対象発見ユニット20の解析信号生成手段25によって生成された解析信号200であるかを識別可能とする識別情報が付加された構成とすることが可能である。この構成とする事により、探索対象を検出した探索対象発見ユニット20が何れであるかを識別することが可能となり、ネットワーク網40を伝送される解析信号200が複数存在することとなっても、各々の解析信号200の発信元の探索対象発見ユニット20を特定することが可能となる。更に、探索対象発見ユニット20のGPSによる位置情報500を付加することにより、探索対象を検出したユニットの位置を把握する事が可能となる。なお、上記識別情報や位置情報500は、解析信号200の付加情報とせず、別途それぞれ個別にネットワーク網40に送信する構成とする事も可能である。
【0026】
通信手段26は、解析信号200をネットワーク網40に送信し、またはネットワーク網40を介して受信するための手段である。通信手段26は、本実施例では、解析信号生成手段25によって生成された解析信号200を後述する他の探索対象発見ユニット20や位置計測手段30に送信するため、ネットワーク網40に信号を送出する送信機能を有するとともに、ネットワーク網40を介して他の探索対象発見ユニット20から送信されて来た解析信号200を受信する受信機能や、その解析信号200を更に適正なネットワーク網40へ送出する中継機能やルート選択機能を有する。通信手段26は、解析信号200をパケット分割して送信するパケット通信機能を有する構成とすることが可能である。また、欠損パケット再送機能や誤り訂正機能を有する構成とすることも可能である。この構成とする事により、信号のロスや送信エラーを低減させてより確実に解析信号200を位置計測手段30に伝送することが可能となる。
【0027】
なお、逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象は、移動する可能性が考えられる。また、本実施例では、探索対象発見ユニット20は探索対象を自ら探索するため移動自在とすることが可能となっている。従って、本実施例では、通信手段26は、解析信号200を継続的にネットワーク網40へ送信して探索対象発見ユニット20の位置情報500を伝達し続ける構成となっている。この構成とすることにより、探索対象が移動した場合であっても、探索対象発見ユニット20が電気信号100を受信している間は継続して、常に変化するその位置情報500を送信されることになるとともに、探索対象や探索対象発見ユニット20の移動により、探索対象の信号発生装置10から発信された電気信号100を探索対象発見ユニット20の解析信号生成手段25が受信できなくなった場合には、解析信号200の送信を中止(送信取消、中止信号を送信)することにより、探索対象の不検出状態を把握することが可能となり、探索対象のタイムリーな存在位置の情報を検出し把握することが可能となる。特に、移動する探索対象発見ユニット20の解析信号生成手段25が電気信号100を受信できなくなった場合には、探索対象(特に、遭難者300b)の存在箇所から遠ざかった(電気信号100が届く範囲を超え、Bluetooth(登録商標)では約100m以上の隔離)ことを意味するため、探索すべき箇所の特定のヒントとして活用する事が可能となる。
【0028】
位置計測手段30は、探索対象発見ユニット20から送信された解析信号200を受信し、逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象の位置を計測するための手段であり、本実施例では、
図1または
図2に示すように、逸失物探索センターや遭難者探索拠点などに設置されるPC等のコンピュータ機器からなる。本実施例では、位置計測手段30はPC等にインストールされたソフトウェアがネットワーク網40を介して受信した解析信号200を解析し、探索対象の位置を分析して計測する構成となっている。
【0029】
解析信号200は、前述のように、どの探索対象発見ユニット20の解析信号生成手段25によって生成された解析信号200であるかを識別可能とするための探索対象発見ユニットの識別情報が付加された構成であり、更に探索対象発見ユニット20のGPSによる位置情報500が送信される構成となっているため、位置計測手段30が解析信号200を受信することで、探索対象の存在箇所を容易に把握することが可能となる。また、探索対象から発せられる電気信号100の捕捉状況をタイムリーに把握できるため、探索対象の移動状況を迅速に把握できるとともに、探索対象発見ユニット20が移動可能な構成の場合、探索対象発見ユニット20を電気信号100を捕捉できそうな位置に移動させることで探索対象を正確に探索することが可能となる。
【0030】
ネットワーク網40は、電気信号100と解析信号200の伝送ルートであり、本実施例では、
図1または
図2に示すように、信号発生装置10と一又は複数の探索対象発見ユニット20と位置計測手段30とによって構成されている。ネットワーク網40は、電気信号100と解析信号200以外に、探索対象発見ユニット20のGPSによる位置情報500や、探索対象発見ユニット20のステータス情報など、探索対象の探索に付随する各種情報を流す構成とすることが可能である。
【0031】
以下、本発明に係る探索レスキューシステム1による探索対象の探索方法について説明する。探索対象(300a、300b)が携行する信号発生装置10が、電気信号100を常時発信し、または操作により発信を開始する。探索対象発見ユニット20は、電気信号100を電気信号受信手段22により受信する。電気信号受信手段22が受信した電気信号100は、解析手段24が分析を行う。電気信号100が信号発生装置10から発信された信号であると判断した場合、解析信号生成手段25が解析信号200を生成し、通信手段26が解析信号200をネットワーク網40に送出して、受信機能を有する他の探索対象発見ユニット20または位置計測手段30に送信する。
【0032】
探索対象発見ユニット20は、他の探索対象発見ユニット20から送信された解析信号200を受信した場合、直ちにその解析信号200をネットワーク網40に再送出して、他の探索対象発見ユニット20または位置計測手段30に向けて送信する。これにより、複数の探索対象発見ユニット20が順次解析信号200を伝送し続け、最終的に位置計測手段30に送信されることとなり、伝送距離が長い場合や、伝送経路に障害が存在する場合や、探索対象発見ユニット20が移動して伝送経路の変更が必要となった場合であっても、最適な伝送ルートを選択することが可能となる。
【0033】
位置計測手段30は、解析信号200を受信することにより探索対象の存在を確認し、探索対象発見ユニット20の位置情報500を用いて探索対象の存在位置を分析する。複数の探索対象発見ユニット20が存在する場合は、複数送信されてくる解析信号200の送信元の探索対象発見ユニット20の位置情報500を分析することで、探索対象の存在箇所をより詳細に特定できる。
【0034】
また、位置計測手段30は、探索対象発見ユニット20による解析信号200の受信状態の分断を検知して、解析信号200の通信ルートを制御する制御機能を有する構成である。この構成とすることにより、解析信号200の伝送・取得が分断されることなく、送受信を継続することが可能となり、途切れることのない安定した解析信号200の送信が可能となる。
【0035】
一又は複数からなる探索対象発見ユニット20は、
図1または
図2に示すように、それぞれ移動自在な移動体400に設置する構成とすることが可能である。この構成とすることにより、例えば移動体400を自動車などで構成した場合、探索対象発見ユニット20を移動させながら他の探索対象発見ユニット20または位置計測手段30との間で通信を行う事が可能となり、通信経路が流動的な構成となるとともに、逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象を積極的に探索しに行くことが可能となり、探索範囲を流動的な構成とすることが可能となる。
【0036】
移動体400は、
図2に示すように、飛行移動自在な複数の飛行体とすることが可能である。この構成とすることにより、特に探索対象が遭難者300bである場合に、飛行体に搭載された各探索対象発見ユニット20が流動的なネットワークを組んで相互に通信しながら遭難者300bを探索する構成とすることが可能となり、機動的かつ効率的な探索対象の探索を行うことが可能となるとともに、雪山や海上など、容易に人が近づけない場所であっても、ネットワークが繋がる範囲内において、安全かつ確実に遭難者300bの探索を行うことが可能となる。なお、本実施例では、飛行体として小型の航空機やドローンとしている。これにより、航空機を用いた場合には、素早く大ざっぱな遭難者300bの存在位置を把握することが可能となり、ドローンを用いた場合には、より詳細な遭難者300bの存在位置を把握することが可能となる。
【0037】
信号発生装置10と探索対象発見ユニット20と位置計測手段30とからなるネットワーク網40は、無線ネットワークとする構成とすることが可能である。更に、ネットワーク網40の構成をメッシュ型ネットワークとすることが可能である。この構成とすることにより、信号発生装置10から位置計測手段30への電気信号100および解析信号200の伝送路を任意に選択することが可能となる。すなわち、あらゆる規模・範囲に対応したネットワーク網を構成することが可能となるため、逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象を探索するための柔軟なシステムを構築することが可能となり、特に、遭難者300bを空から探索するためのドローン等を利用したレスキューがより効率的となる。
【0038】
位置計測手段30は、前述の通り、ネットワーク管理機能を有しており、ネットワーク網40の切断等の不具合を検出して適切な伝送ルートを確保する構成となっているが、探索対象発見ユニット20がそれぞれ、ルーティング機能を有する構成とすることが可能である。これにより、きめ細かなルーティング制御が可能となり、特にメッシュ状の無線ネットワークにおける最適な伝送ルートの確保を容易とすることが可能となる。
【0039】
探索対象発見ユニット20は、
図1および
図2に示すように、GPS受信装置28を搭載した構成とすることが可能である。本実施例では、信号発生装置10から送信された電気信号100を電気信号受信手段22が受信した際に、GPS受信装置28が探索対象発見ユニット20の位置情報500(GPS情報)を取得する。その後、通信手段26がネットワーク網40を介して他の探索対象発見ユニット20または位置計測手段30に位置情報500を送信する構成である。なお、位置情報500は、解析情報200のデータ中に含めて送信する構成としても良いし、解析情報200と別に送信する構成としても良い。解析情報200と別に送信する場合には、位置情報500は解析情報200と対応付けられてネットワーク網40に送出される構成とすることが望ましい。
【0040】
位置計測手段30は、電気信号100を受信している探索対象発見ユニット20から送信される複数の位置情報500を受信することにより、探索対象の存在位置を三点計測を行って分析する構成である。すなわち、例えば、3つ以上の位置情報500を受信している場合には、それぞれの位置から半径100mの範囲が重なる箇所に逸失物300aや遭難者300bなどの探索対象が存在する事となる。特に、本実施例では、各位置情報500が100m以上離れている場合には、高精度で探索対象の位置情報を特定することが可能となり、特に山岳など起伏が激しい場所であっても、遭難者300bを迅速に発見することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明に係る探索レスキューシステムの概略図
【
図2】遭難者を探索する場合の探索レスキューシステムの概略図
【符号の説明】
【0042】
1 探索レスキューシステム
10 信号発生装置
20 探索対象発見ユニット
22 電気信号受信手段
24 解析手段
25 解析信号生成手段
26 通信手段
28 GPS受信装置
30 位置計測手段
40 ネットワーク網
100 電気信号
200 解析信号
300a 逸失物
300b 遭難者
400 移動体
500 位置情報
【要約】
【課題】
逸失物や遭難者が携行する信号発生装置から発せられる電気信号を頼りに逸失物や遭難者の存在を容易に把握するとともに、逸失物や遭難者の発見時に、その存在箇所をネットワークを経由して伝達し、容易かつ迅速に把握することを可能とする探索レスキューシステムを提供する。
【解決手段】
信号発生装置と、一又は複数の探索対象発見ユニットと、位置計測手段と、ネットワーク網と、からなり、探索対象発見ユニットが、電気信号を受信する事により探索対象の存在を把握し、受信した電気信号を解析手段が解析して信号発生装置から発信された信号と判断した場合に通信手段が生成された解析信号をネットワーク網を介して他の探索対象発見ユニットまたは位置計測手段に送信し、位置計測手段は、解析信号を受信して探索対象の存在を確認するとともに、解析信号の受信状態の分断を検知して解析信号の取得を継続するための通信ルートを制御する構成である。
【選択図】
図2