(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記偏芯筒体は、第1クランク軸に同芯状に嵌め込まれる第1筒体と、該第1筒体の軸芯に対して偏芯した第2仮想クランク軸を軸芯として軸方向に連続して形成された第2筒体を備え、当該第2筒体に複数のピストンが交差して相対的に回転可能に嵌め込まれている請求項1記載の酸素濃縮装置。
前記ピストン複合体は、前記偏芯筒体に対して第1,第2のピストンが交差部で互いに近接して重なり合うように組み付けられている請求項1又は2記載の酸素濃縮装置。
前記シャフトと第1クランク軸との軸芯間距離rを前記第1仮想クランクアーム及び第2仮想クランクアームのアーム長とし、前記シャフトの軸芯周りの第1仮想クランクアーム長rを半径とする回転軌道上を前記第1クランク軸が回転する際に、当該第1クランク軸を中心とする前記第2仮想クランクアーム長rを半径とする仮想円上を前記第2仮想クランク軸が見かけ上滑らずに回転することにより、当該仮想円の直径R(2r)を半径とする転がり円の径方向に前記複数のピストンが各々往復動する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための一実施形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
以下では酸素濃縮装置の一例として総重量が10〜15kg程度の可搬型酸素濃縮装置について述べる。ここで、本発明は総重量が2〜3kg程度の携帯型酸素濃縮装置や総重量が15kgを越える酸素濃縮装置など様々な修正と変更が可能であり、その内の特定の事例が図面に図示されており、以下に詳細に記述されることになるが、これらに限定されず請求の範囲に規定された範囲で種々の構成が可能である。
【0020】
<酸素濃縮装置1の全体構成の説明>
先ず、
図1は一実施形態に係る可搬型の圧力スイング吸着方式の可搬型酸素濃縮装置1を前方左斜め上から見た外観斜視図である。また、
図2は
図1に示した可搬型酸素濃縮装置1の背面図である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、この可搬型酸素濃縮装置1は、設置場所を最少にするために上下方向に細長いスマートな一見して小型旅行カバン風の外観形状を備えている。このため一瞥しただけでは他人に可搬型酸素濃縮装置1であることが知られないように配慮している。
【0022】
また、後述するように、密閉カバーを構成するための図示の表面カバー2と裏面カバー3を射出成形樹脂部品とし、さらに吸着剤を充填した並列に複数配列した吸着筒(本実施例では、2本)を含む他の構成部品についても極力軽量化することで総重量が約10kg程度の軽量化(AC電源使用でキャリア10を設けない場合)とした。この結果、大人が片手で持ち運べる、所謂可搬型にするための取手部分となる可搬型酸素濃縮装置1を持ち上げる力に十分に耐え得る強度を備えるハンドル4を図示のように上方に設けており、デザイン的な特徴を演出している。
【0023】
また、この可搬型酸素濃縮装置1の外形寸法は、全体が丸みを帯びており、具体的には幅Wが350mm×奥行きDが250mm×高さHが550mmである。このため、床面上の占有面積を極力小できることから上記の軽量化とともに小型化を図っている。また、可搬型酸素濃縮装置1のデザイン上の特徴点としては、設置床面から可搬型酸素濃縮装置1の前面を3次元的に覆うようにした前面カバー2を、
図1に示すようにハンドル4の底面に連続するアクセントラインを左右に上下方向に凹状に一体形成し、さらにこれらのアクセントラインで挟まれる部分を淡い暖色系とし、この上方に同色系の操作パネル5を配置する一方で、裏面カバー3を含む残りの部分をベージュないしクリーム系の色としている。
【0024】
以上のようなデザインおよび配色を施した所謂ツートンカラーの近代的なデザインとすることで、可搬型酸素濃縮装置1を室内に設置したときに家具などの他の調度品との調和を図れるように配慮している。また、表面カバー2と裏面カバー3は、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂である例えばABS樹脂製とすることでデザイン的な自由度を確保している。
【0025】
図1において、操作パネル5は、ハンドル4の下方の開口部において裏面カバー3との接合面まで、例えば約10度の角度で斜め上に延設されており、その上に左から順に、樹脂製の大型ダイヤル式の電源スイッチ6と、樹脂製部品の酸素出口7と、樹脂製カバー付きの酸素流用設定ボタン8と、7セグメントの数字でLEDまたは液晶表示を行う酸素流量表示部9が配置されている。また酸素出口7の上方には、酸素出口7に形成された段差部に対して気密状態に係合されるとともに、着脱自在に設けられる樹脂製のカプラ13が示されている。このカプラ13には鼻カニューラ14等のチューブ15の開口部が連通するようにセットされる。
【0026】
この操作パネル5は、日本人の標準身長(160〜170cm)の患者が起立状態で両手を下げた腰部分に略該当する高さ付近に設けられているので、立ったままの姿勢で可搬型酸素濃縮装置1の運転操作を行なうことができる。このため従来の酸素濃縮装置のように逐一座ったり覗き込んだりする必要がなくなる。また、場合によっては後述する遠隔操作で使用することもできる。したがって、特に患者の腹部への負担は大きく軽減される。さらには、左利きの人であっても酸素出口7を中央にして左右対称位置に各ダイヤルが配置されているので、何ら違和感なく操作できることになる。
【0027】
なお、鼻カニューラ14等に接続されたチューブ15を引っかけるための不図示のフックを設けて、鼻カニューラ14等に接続されたチューブ15を患者が生活する同じ部屋内で移動する範囲に略相当する全長としてフックから外して使用し、未使用時はチューブ15を数回巻き付けた後に、鼻カニューラ14等を接続した状態のチューブ15をフックに引っかけるようにしてもよい。
【0028】
また、図中の二点鎖線で示した底蓋41も軽量化のために耐衝撃性の熱可塑性樹脂、例えばABS樹脂製である。この底蓋41には4つのゴム足22が四隅に固定されており、床面上に設置して使用するときに横滑りを防止している。一方、外出時等の移動時に使用するキャリア10を2本の固定ネジ12で底蓋41に対して固定するように構成されている。このキャリア10には、上記の各ゴム足22より大きな孔部10bが対応位置に穿設されるとともに、図示のように四隅に樹脂製の自在キャスタ11を設けている。また、このキャリア10のベースは軽量化のために軽金属の強化アルミ板製であり、4辺の縁部を全て曲げ加工して強度を確保している。また、後述する外部バッテリを裏側から挿入し所定位置に収容し不動状態にするための収容部10cと、2本の固定ネジ12を通過させて上記の底蓋41の雌ネジ部に螺合固定させることでキャリア10を装置1に対して一体化するための孔部10aがそれぞれ設けられている。
【0029】
次に、
図2を参照して説明する。裏面カバー3は、合計で8本の複数の固定用のネジ16により上記の表面カバー2に対して固定されることで密閉カバーを構成している。この裏面カバー3も上記の前面カバー2と同様に、耐衝撃性の熱可塑性樹脂の例えばABS樹脂製である。この裏面カバー3に一体形成される前後方向半分のハンドル4の下方に手が入るようにした開口部の下方には、内部に外気導入フィルタ20を交換自在に収容したフィルタ交換用蓋17が着脱自在に設けられている。
【0030】
また、キャリア10には、収容部10cをはさんでコードフック21、21が固定されており、上記のACアダプタケーブル19aを巻き付けるようにして移動時に邪魔にならないようにしている。ACアダプタケーブル19aは、ACアダプタ19に接続され、ACアダプタ19はコード19bを介して室内に設けられるコンセントと接続される。
【0031】
図3は鼻カニューラ14等の延長チューブセットの外観斜視図である。本図において、鼻カニューラ14等のチューブ15にはカプラ13を介して延長チューブ31を接続するために樹脂製の中継カプラ30が接続されている。このように延長チューブ31を接続することで最長約15mの長さまで延長できる結果、患者の移動範囲を大きくでき、さらなるQOLの改善ができることとなる。
【0032】
図4は可搬型酸素濃縮装置1の操作パネル5の実体図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛する。電源スイッチ6は図示のオフ位置と約90度分時計周りに回転したオン位置との間で操作される。また、この電源スイッチ6は殆どの部分が操作パネル5の操作面から奥側(図面の裏面側)に引っ込むように設けられているので、例えば患者が躓くなどして操作パネル5に対して激しくぶつかった場合でも、怪我などをしないように安全上の配慮がされている。この電源スイッチ6のオン位置に相当する位置には緑と赤に点灯する例えば発光LEDを内蔵した運転状態ランプ128aが設けられている。また、この運転状態ランプ128aの上にはバッテリ残量モニタ128dが設けられている。
【0033】
また、中央の酸素出口7についても図示のように全ての囲い部分が操作パネル5の操作面から奥側(図面の裏面側)に引っ込むように設けられている。この酸素出口7の上には「点検」の文字またはこれに相当するキャラクター表示を横に印刷した警報表示部128cが設けられている。この警報表示部128cの下方には緑と赤と黄色とに点灯する例えば発光LEDを内蔵した酸素ランプ128bが設けられている。
【0034】
そして、酸素流量設定ボタン8は、上下矢印を印刷したフラットスイッチ8a,8bとして設けられており操作パネル5の操作面と略同一面となるように設けられている。この酸素流用設定ボタン8は、90%程度以上に濃縮された酸素を毎分当たり0.25L(リットル)から最大で5Lまで0.25L段階または0.01L段階で押圧操作する度に酸素流量が設定できるように構成されており、上方の酸素流量表示部9で表示するようにしている。以上のようにして酸素生成能力を変えることが可能である。また、同調ランプ25aは、濃縮酸素を呼吸同調により断続供給状態で運転中であることを点灯または点滅表示により患者に知らせるために設けられている。また、動作インジケータ25bは、呼吸に同期して点滅表示することにより患者に知らせるために設けられている。
【0035】
以上のように操作パネル5に配置された各操作部は使用上の安全性および高齢者の使用を前提として必要最小限度の操作を行うようにしている。
【0036】
図5(a)は、
図4の操作パネル5の警報表示部128cの動作説明図、また
図5(b)は、酸素濃度ランプ128bの動作説明図である。
図5(a)において、警報表示部128cは「点検」の文字が印刷されており、酸素濃度が低下したときに内蔵のランプが点灯して知らせるようにしている。また装置側の異常発生時にはブザーも鳴り音声ガイドとともに知らせるようにしている。また、停電で装置が停止したときには、点滅して知らせる一方で、ブザーおよび音声ガイドで特に視覚障害者に対して確実に知らせることができるようにしている。そして、
図5(c)において、酸素ランプ128bは、酸素が正常に酸素吸入されているときには内蔵のLEDが緑色に点灯する。また、酸素が出ていないときあるいは酸素濃度が低下したときには消灯する。そして、同調モード(呼吸同調モード)で、一定時間、例えば30秒程度呼吸状態を検出できなかった時に警報色である赤色に点灯し、ブザーを鳴らすとともに音声ガイドで知らせるようにしている。また、吸気に同期して濃縮酸素供給を行う同調モードで運転中の場合にはその旨を患者に視認させるために呼吸パターン(酸素出力)に実質的に同期して緑色に点灯または点滅して知らせるようにしている。こうすることで、患者は正常に濃縮酸素が供給されていることを確認できる。
【0037】
一方、
図3において、電源スイッチ6をオンすると、ブザーが鳴り音声ガイドとともに、全てのランプが2秒間緑色に点灯する(初期セルフチェック)。そして、バッテリ駆動モードで使用するときには、その後に5段階の表示部において残量に応じて点灯表示される。患者は医師の処方にしたがって酸素流量設定ボタン8の増減スイッチ8a,8bを操作し所定流量に設定すると酸素供給が開始されることとなる(増減スイッチ8aを押すことで酸素流量が増加し、増減スイッチ8bを押すことで酸素流量が減少)。なお、通常に酸素濃縮装置1を停止させた場合、一時記憶装置206(
図7参照)に前回の動作条件(酸素流量,同調モードの有無)が記憶される。このため、初期セルフチェックの後、酸素流量設定ボタン8を押さない場合、自動的に前回の動作条件で濃縮酸素の供給を行なうようになっている。尚、その旨(前回と同一動作条件等)を音声ガイドで合わせて知らせるようにしてもよい。
【0038】
停止時には、電源スイッチ6をオフすると、酸素ランプ128bが消灯し、しばらくの間、運転ランプ128aが点滅した後に自動的に終了する。患者が毎日行う作業として、裏面カバー3に設けられた外気導入フィルタ20(
図2参照)に付着したゴミや埃などを掃除機で取り除くことがある。この作業を簡単にできるようにするために外気導入フィルタ20を容易に着脱できるように構成されている。
【0039】
図6(a)は、酸素濃縮装置1の裏面カバー3から外気導入フィルタ20を着脱自在にするための様子を示した外観斜視図、
図6(b)は、外気導入フィルタ20がさらに交換用蓋17から取り外される様子を示した外観斜視図、また
図6(c)は、
図6(a)のX‐X線矢視断面図である。先ず、
図6(a)において、裏面カバー3には外気導入用の縦方向の開口3K1を穿設した開口部3kが設けられており、この開口部3kに対して交換用蓋17が図示のように着脱可能に設けられている。また、この開口部3kは交換用蓋17の全体を埋没する容積を有しており、上方において指先が入る凹部3cを形成している。
【0040】
次に、
図6(b)において、交換用蓋17は図示のように横方向の開口部17bと4隅の起立部17aが設けられており、起立部17aで囲まれる部分の中に連続気泡のスポンジ製の外気導入フィルタ20を、それ自体の有する弾性力により不動状態で収めるようにしている。この起立部17aは、開口部3kへの取付壁部を兼ねている。このため、図示の状態で外気導入フィルタ20を取り出し、水洗により洗浄するか、新品に交換することで、交換用蓋17にセットするようにして元に戻せることとなる。
【0041】
図6(c)において、交換用蓋17が図示のように開口部3kにセットされると、本体の遮蔽板32の端面32aが外気導入用の縦方向の開口3K1の殆どの部分を覆い隠し、わずかに上方部分を残す状態になる。この結果、外気は矢印F方向に内部に導入されることになる。このように遮蔽板32で内部から裏面カバー3を覆うことで騒音が外部に漏れることを効果的に防止している。すなわち、酸素濃縮装置1の外部に対する開口部分としては、この開口3K1と上記の排気口3a、3bのみとするとともに、開口面積は後述する原料空気の流量を確保するために必要最小限度とすることで、内部から発生する音が外部に極力漏洩しないようにして運転時の騒音レベルの38デシベル以下を実現可能にしている。さらに、密閉カバー構造により周囲を完全に覆い且つ出口部分を少なくして防音に加えて防水対策も可能にしている。
【0042】
遮蔽板32は黒色樹脂の成形部品として準備され、スピーカ23と、外部通信コネクタ133が図示のように固定される。また、酸素濃縮装置1は通常、部屋の壁面から狭い間隙を経て設置されるので、外気導入と排気を裏面カバー3側から行うことで、外気導入と排気音が最も低くなる個所からの排気を可能にしている。一方、上記の裏面カバー3の凹部3cは図示のように指先が入るようにして交換用蓋17を外側に取り出せるようにしている。以上は患者が直に使用する構成部分である。
【0043】
<酸素濃縮装置1の配管およびブロック図の説明>
次に酸素濃縮装置1の具体的な内部構成について
図7から
図13を参照して説明する。
図7は、酸素濃縮装置1のブロック図を兼ねて図示した配管図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛するとともに、図中の二重線は空気、酸素、窒素ガスの流路であり概ね配管24a〜24gで示されている。また、細い実線は電源供給または電気信号の配線を示している。
【0044】
ここで、以下の説明ではコンプレッサ105として圧縮空気発生部105a(圧縮手段)と負圧空気発生部105b(減圧手段)を一体化構成したものを用いる場合について述べる。しかしながら、この構成に限定されず圧縮空気発生部と負圧発生部を個別に構成しても良いことは言うまでもない。また、吸気口を介して外気を内部に導入し、排気口を介して外部に排出する表面カバー2と裏面カバー3については密閉容器として図中破線で図示されている。
【0045】
図7において、導入空気の流れに沿って順次述べると、上記フィルタ交換用蓋体17(
図6(c)参照)に内蔵された外気導入用フィルタ20を通過して酸素濃縮装置1内部に空気(外気)が矢印F方向に導入される。この空気は、一対の送風ファン104,104による送風により二段式防音室34内に入る。すなわち、後述するように上段部材上に送風ファン104,104を配設し下段部材にコンプレッサ105を防振状態で配設した二段式防音室34(破線参照)側面に穿設された開口部を介して二段式防音室34内に空気が入る。この空気の一部をコンプレッサ105の圧縮空気発生部105aに対して原料空気として供給するために、配管24aの開口部が二段式防音室34内に開口して設けられており、配管24aの途中に二次濾過を行う吸気フィルタ101と大容量の吸気用バッファタンク102とが設けられている。
【0046】
このように構成することで原料空気の吸気音が二段式防音室34内に留まるようにして吸気音を低減している。一方、この二段式防音室34は軽量化のために厚さ約0.5mm〜2.0mmの強化軽合金、アルミ合金、チタン合金板または他の好適な材料から構成される。このように薄板から構成するとネジ孔部の強度が確保されない。そこでネジ孔部としてインサートナットを適所に固定している。この二段式防音室34の内部には原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮空気発生部105aと、負圧空気発生部105bとを好ましくは一体構成したコンプレッサ105が防振状態で固定されている。
【0047】
次に、濾過された原料空気は、コンプレッサ105の圧縮手段105aで加圧されて圧縮空気となるがこのとき温度上昇した状態で配管24cに送り出されるので、この配管24cを放熱効果に優れた軽量の金属パイプ(例えば、外径6mm内径4mmのアルミ管)とし、送風ファン104からの送風で冷却すると良い。このように圧縮空気を冷却することで高温では機能低下する吸着剤であるゼオライトが窒素の吸着により酸素を生成するための吸着剤として、十分に酸素を90%程度以上に濃縮できることとなる。
【0048】
圧縮空気は配管24cを介して吸着手段(本実施例では、並列に少なくも2つ配置された、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b)に対して交互に供給される。このため切換弁(3方向切換弁)109a、109bが図示のように接続されている。これらの切換弁109a、109bと、さらに第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの不要ガスを脱離させるため(パージ(浄化)を行うため)に負圧空気発生部105bに連通する配管24fに負圧破壊第1弁120と負圧破壊第2弁(圧調整弁)121が直列に複数(少なくとも2つ)配置されている。これらを開くことで後述するように、配管24f内の圧力を均圧工程時には大気圧付近まで、所定流量以下では圧力コントロールすることでコンプレッサの振動抑制と低電量化を図っている。
【0049】
第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内に夫々貯蔵されている触媒吸着剤であるゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3比が2.0〜3.0であるX型ゼオライトであり、かつこのAl
2O
3の四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと結合させたものを用いることで、単位重量当たりの窒素の吸着量を増やしている。特に、1mm未満の顆粒測定値を有し、四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと融合させたものが好ましい。
【0050】
このようなゼオライトを使用することで、同じ酸素を生成するために必要となる原料空気の使用量を削減できるようになる結果、圧縮空気を発生するためのコンプレッサ105を小型のタイプとすることができ、低騒音化を一層図ることができた。一方、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの上方の出口側には逆止弁と、絞り弁と開閉弁とからなる均等圧弁107が分岐接続されている。また、均等圧弁107の下流側は合流するように配管24dが成されており、分離生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵するための容器となる製品タンク111が図示のように配管されている。また、各吸着筒体内の圧力を検出する圧力センサ208が図示のように配管される。
【0051】
製品タンク111の下流側には、出口側の酸素の圧力を一定に自動調整する圧力調整器112が配管されている。この圧力調整器112の下流側には、ジルコニア式あるいは超音波式の酸素濃度センサ114が接続されており、酸素濃度の検出を間欠(10〜30分毎)または連続で行うようにしている。この下流側には上記の酸素流量設定ボタン8に連動して開閉する比例開度弁115が接続されており、その下流側には酸素流量センサ116が接続されている。またこの酸素流量センサ116の下流には呼吸同調制御のための負圧回路基板202を介してデマンド弁117が接続されており、滅菌フィルタ119を経て、装置1の酸素出口7に対して接続されている。以上の構成により、鼻カニューレ14等を経て患者に対する最大流量5L/分で約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能になることとなる。
【0052】
再度、
図7において、上記の3電源系統のうちの一つから電力供給を受けて作動する中央制御部(CPU)200には上記の電源スイッチ6と上記の表示用のLED素子を
図5で説明したように点灯、点滅駆動するとともに、7セグメントLEDで設定流量、積算時間を表示するように作動する表示作動部204とが図示のように接続されている。また、中央制御部200にはコンプレッサ105の電動モータM(AC若しくはDCモータ)および送風ファン104のモータの駆動制御を夫々行うモータ制御部201および上記のスピーカ23に接続されることで音声内容を発生する音声制御部203が接続されている。この中央制御部200には所定動作プログラムを記憶したROMが内蔵されるとともに、外部記憶装置210と揮発メモリ(例えばEEPROM)205と一時記憶装置(例えばRAM)206とリアルタイムクロック207とがさらに接続されており、外部コネクタ133を介して通信回線などと接続することで記憶内容へのアクセスが可能となるように構成されている。また、上記の3方向切換弁109a、109bと均等圧弁107と、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内の不要ガスを脱離させるための負圧空気発生部105bと配管24f内の圧力を制御するための第1負圧破壊弁120と負圧破壊第2弁121と酸素濃度センサ114と比例開度弁115と、流量センサ116とデマンド弁117を駆動制御する弁及び負圧回路基板(流量制御部)202が中央制御部200に接続されている。
【0053】
均圧工程と同期をとって、第1負圧破壊弁120を開状態に動作させることで、流路内に外気が入り込むようにして、流路内を大気圧により近い状態とする。この作用によりコンプレッサ105は無負荷状態に近い状態となるため、振動の発生を防止できまた、騒音の低減や低電力化にも寄与するようにできるようになる。第2負圧破壊弁121は、後述するように、設定酸素流量に応じてオンされて開状態にされる。一方、このコンプレッサ105の冷却と、酸素濃縮装置1内部の冷却を行うための上記の送風ファン104,104は、消費電力約2.7W程度である。このブロアに代えて軸流ファンでもよい。ここで、装置1の最大騒音圧力レベルは、最大の回転数のときに35dBA以下であり、濃縮酸素流量1L/分以下の場合には33dBAである。3方向切換弁109a,109bには、一般的に直動式と呼ばれる弁の動作を通電時の磁力で行う電磁弁が使用可能である。この種の電磁弁は電気の力だけで主弁を動作させるため消費電力が高いという問題点がある。そこで、3方向切換弁109a,109bとしてパイロット式3方向切換弁を使用することもできる。このパイロット式3方向切換弁によれば、僅かな消費電力とコンプレッサ105からの空気圧を有効利用して動作させることが出来るために従来の8Wから0.5Wにまで低減される結果、大幅な電力低減が期待されることになる。
【0054】
以上の各構成部品は、低騒音化された小型の酸素濃縮装置1の組立作業性および点検整備性の向上を配慮して主に二段式防音室34を取り付け部として固定されている。即ち、騒音発生を伴うコンプレッサ105と、送風でコンプレッサ105の冷却を行うために送風音が発生する送風ファン104と、吸気用バッファタンク102の空気導入口と3方向切換弁109a,109bと、排気時に排気音が発生する消音器110と他の各種弁を内周面全面に防音材を敷設した二段式防音室34の内部に配置し、この二段式防音室34の外壁部分を有効利用して上記の遮蔽板32と、吸着筒体108a,108bと、製品タンク111と、吸気用バッファタンク102と、各種制御基板200,201と、上記のように酸素の圧力を一定に自動調整する圧力調整器112と、圧力調整器112の下流側の酸素濃度センサ114と比例開度弁115と、酸素流量センサ116と呼吸同調制御のための負圧回路基板202に接続されるデマンド弁117とが固定されている。このように振動または騒音発生の伴う構成部品は二段式防音室34内部において防音状態でそれぞれ設けることで、圧縮空気の供給音と、外部空気の導入音と、原料空気を作るための濾過空気の導入音と、例えば3方向切換弁の作動音と消音器110から周期的に発生する排気音が外部に漏れないようにして騒音低減を図っている。また、上記のように前面カバー2と裏面カバー3は吸気口を介して外気を内部に導入し、排気口3a,3bを介して外部に排出するための必要最小限の開口を備えた密閉カバーとして構成することで同様に騒音低減を図っている。
【0055】
次に、
図8は、酸素濃縮装置1の内部構成を示すために背面側から見た立体分解図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、下方より、上記のゴム足22を四隅に固定した
図1に二点鎖線で示した樹脂製の底蓋41が、同じく樹脂製のベース体40の底面に対して複数の固定ネジ16を用いて固定されている。このベース体40は、4面から下方に向けて連続形成された壁面を一体成形した箱状に成形されており、図示のように裏面の壁面上には、上記の各コネクタ131,130が固定されている。また裏面カバー3の各排気口3a,3bに対向するとともに内部の電源室に連通する排気口40c,40cが図示のように穿設されており、これらの排気口40cを介して最終的な外部排気が行われる。このベース体40の上面は図示のように平らに形成されるとともに、図示のように形成される二段式防音室34の左右面と裏面の3方側から固定ネジ16で固定するための孔部を穿設した起立部40fが3方から一体成形されている。また、上記の電源室に連通した排気用開口部40bがさらに穿設されている。
【0056】
次に、二段式防音室34は、軽量金属板から構成された密閉箱35内に形成される。
図8の手前側の側方から出し入れ可能な上段部材36上に2個の送風ファン104が固定され、同じく側方から出し入れ可能な下段部材37上にコンプレッサ105が防振状態で配設される。この二段式防音室34は、
図8の手前側に示した防音室蓋39と奥側に示した防音室蓋38を複数の固定ネジ16で固定することで密閉される。このため、二段式防音室34は、図示のように曲げ加工されるとともにインサートナットを植設した取付部が一体的に設けられている。この防音室内部には防音材51が敷設される。防音材51の材質としては、繊維径1〜4μmのポリオレフィン系繊維と繊維径20〜30μmのポリオレフィン系短繊維とからなる不織布を用いる。また、ポリオレフィン系繊維が好ましくはポリプロピレン系繊維である。また好ましくは、エンボス加工処理がなされたポリプロピレン系繊維である。必要に応じて、防音室外部に防音材51を貼りつけてもよい。また外周面には制振部材であって、合成ゴムと特殊樹脂材料を混合した素材をシート状のものが敷設されており、アルミの薄板製である二段式防音室34自体が共鳴などで振動防止している。この二段式防音室34の上段部材36の上方の左右の側壁面には実線図示の第1開口部35a,35a(破線図示)が各々穿設されており、外気を内部に導入するように構成されている。この上段部材36には、複数の固定孔36hが穿設されており、配管24bがラバーブッシュを介して固定孔36hに固定されることにより振動防振機能を持たせている。
【0057】
また、各送風ファン104は、それぞれの送風口が下方に向くようにしてブラケットを用いて上段部材36に固定されている。この各送風ファン104の間には上記の3方向切換弁109他が配置されている。この二段式防音室34の左側の側壁面には筒状の吸着筒体108a、108bが、吸気用バッファタンク102と並べて配置されており側壁面に固定された固定具49kにバンド49を通過後にバンド49を締め上げることで図示のように固定されている。このとき、吸着筒体108はベース体40の上面に載るが、全長の長いバッファタンクは開口部40d中に一部が挿入されて固定される。
【0058】
製品タンク111は真空成形されるポリエチレン樹脂製であって図示のように長手方向に横たえて上方に配置される。上記の遮蔽板32も軽量化のために樹脂製であり、図示のようにスピーカ23と外部コネクタ133を設けており、二段式防音室34の上方の外壁面に対して固定ネジ16を用いて固定される補強を兼ねた取り付け部を一体成形している。また、二段式防音室34の上方の壁面には放熱部材52、53が固定ネジ16で固定されるとともに上記の各制御基板200、201他が起立状態で固定されており放熱効果を高めている。なお、この遮蔽板32は上記のように一部が外部に出るので黒色顔料を用いて黒色に着色されている。
【0059】
この二段式防音室34の右側の側壁面には酸素濃度センサ114と比例開度弁115と圧力調整器112と酸素流量センサ116とデマンド弁117と負圧回路基板202とが固定されている。
【0060】
以上のように略全ての構成部品をベース体40上に固定された二段式防音室34の外壁を取り付け面として固定する構造とすることで、小型化が実現でき、しかも4方向からアクセス可能となるので組立作業性が大幅に向上されるので自動組立ライン化も可能となった。また、上記の表面カバー2と裏面カバー3はベース体40から放射状に張り出さないようにすることで省スペース化にも大きく寄与できた。
【0061】
図9は、可搬型酸素濃縮装置1の底蓋41とベース体40を示すために底面側から見た立体分解図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、図示のようにベース体40には上方の排気用開口部40bに連通する電源室401と、内蔵バッテリ228を内蔵したバッテリ室402と、均等圧弁107と吸気バッファタンク102の一部を収容した収容室403とが隔壁を介して形成されており底蓋41を固定後にそれぞれが密閉された部屋を構成するようにしている。以上の構成により、上記のように二段式防音室34に内蔵された消音器110(
図7参照)を介して排気される過程で排気が破線矢印方向Fに分岐して開口部40cから外部に流れるようにして排気音が減衰されるとともに、電源装置226の発熱分を排気で冷却できるようにしている。
【0062】
図10は、
図9で示した各構成部品をベース体40上に組み付け後の可搬型酸素濃縮装置1の内部構成を示すために反対側から見た外観斜視図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、図示のようにベース体40上において、隙間なく全ての部品が固定されている。この可搬型酸素濃縮装置1の組立後の内部構成に対して表裏カバー2、3を固定するために、ベース体40の外周面には一方の鍔部48が形成されている。また、表面カバー2の裏面には吸音材51が敷設(貼付け)されている。防音材51の材質としては、繊維径1〜4μmのポリオレフィン系繊維と繊維径20〜30μmのポリオレフィン系短繊維とからなる不織布を用いる。また、ポリオレフィン系繊維が好ましくはポリプロピレン系繊維である。また好ましくは、エンボス加工処理がなされたポリプロピレン系繊維である。また、上記の操作パネル5に配置される各ランプ類と表示部の表示作動部204を実装した実装基板128が図示のように固定されている。また、この表面カバー2の下方にはベース体40の外周面に形成された一方の鍔部48を上下方向から挟むようにした他方の鍔部50,50が上下に夫々一体成形されている。さらに、この表面カバー2の突合せ面2pは略平面に沿うように成形されるとともに、固定ネジ16の雌ネジ部となるインサートナットをインサート成形した形状部2hが複数箇所に成形されている。また、裏面カバー3の突合せ面3pは略平面に沿うように成形されるとともに、固定ネジ16の挿通孔となる形状部3hが複数箇所に成形されている。
【0063】
図11は、表裏面カバー2,3を固定する様子を示す断面図である。本図に示すように表裏面カバー2,3をベース体40に固定するために各カバー2,3を突合せ面2p,3pで当接させると、ベース体40の一方の鍔部48が他方の鍔部50,50の間に入る状態になる。この後に固定ネジ16で固定することで密閉カバーが完成する。以上のように構成することで省スペース化を実現できることとなる。このため表面カバー2、裏面カバー3と上記の底蓋41、ベース40は、ABS樹脂材料を用いて射出成形される軽量部品として準備され、樹脂部品の総重量は2.6kgであり、可搬型酸素濃縮装置1の全重量10kgの約26%となった。ここで、表面カバー2と裏面カバー3とから形成される同じ表面積を有するカバーを、従来からの木製筐体であって加工が容易であり、かつ寸法に狂いが生じにくく軽量で防音性能が優れているMDF(Medium Density Fiberboard)木製とした場合には重量が約4.6kgとなる。また、木製筐体は板厚が1cm前後の平らな板状であるので図示のような曲面状にするためには、これらの板部材を重ねるとともに、曲面状に加工することになるので約8kgとなってしまう。このために、目標重量の約10kgは到底達成できなくなる。しかしながら、例えば室内常設タイプであって軽量にする必要の無い場合には上記のMDFで密閉カバーを作ることもできることは言うまでもない。
【0064】
<二段式防音室34の説明>
次に、
図12はコンプレッサ105を防振・防音状態で収納する二段式防音室34の下段部材37の要部を破断して示した外観斜視図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、二段式防音室34の内周面には制振材と独立気泡スポンジとを多層構成した防音材が敷設されている。コンプレッサ105は電動モータMの駆動軸を中心に回転する偏芯筒体に連繋する直動ピストンがシリンダ内を往復動することで圧縮空気発生部と負圧空気発生部とを交互に形成するロータリ式シリンダ装置300を備えている。電動モータMの出力軸331に連繋して組み付けられた偏芯筒体303に第1,第2ピストン301,302が交差して組み付けられる。偏芯筒体303の回転運動にともなって第1,第2ピストン301,302が密閉されたシリンダ内で往復移動することで圧縮空気発生部105aと負圧空気発生部105bとが交互に形成されるようになっている。このために各ピストンの圧縮面には不図示の一方向弁が夫々搭載されている。
【0065】
また、互いに交差する1対のピストンの往復移動方向は二段式防音室34の底面に対して平行な水平方向であるが、負荷が大きくなると矢印V、V方向への振動することが想定される。このためにコンプレッサを二段式防音室34内で略垂直方向の防振状態にするコンプレッサ固定台61でコンプレッサ105を上下から挟むように固定して振動を効率的に吸収できるように構成されている。すなわち、前後2つのコイルバネ62(手前側のみ図示されている)を固定し、不図示のラバーブッシュをさらに内蔵して図示のように下段部材37上に固定している。また、コンプレッサ固定台61は軽量化のためにアルミ板製が良い。
【0066】
以上の構成によりコンプレッサ105が起動されると、コイルバネ62が適度に圧縮と伸張を繰り返し行う一方で、上記のように上段部材36に対してラバーブッシュを介して固定された配管24も適度に圧縮と伸張を繰り返し行うことで、実質的に6点支持状態で防振されて支持することができるようになる。また、コンプレッサ固定台61は電動モータM部分のみを保持するために送風ファン104によるコンプレッサ105の冷却のための送風が邪魔されず円滑に行えることとなる。なお、二段式防音室34の、特にコンプレッサを収納する防音室内部にも防音材51aを設けて防音効果をもたらすことができる。この場合、防音材の材質としては、繊維径1〜4μmのポリオレフィン系繊維と繊維径20〜30μmのポリオレフィン系短繊維とからなる不織布を用いる。また、ポリオレフィン系繊維が好ましくはポリプロピレン系繊維である。また好ましくは、エンボス加工処理がなされたポリプロピレン系繊維である。
【0067】
次に、コンプレッサに用いられるロータリ式シリンダ装置について
図13〜
図29を参照して説明する。ロータリ式シリンダ装置は、シャフト(駆動軸)304の回転運動が第1,第2ピストン301,302の往復運動に変換されて出力される。
【0068】
図13において、第1本体ケース305と第2本体ケース306とで構成される本体ケース307にシャフト304(駆動軸)が回転可能に軸支されている。シャフト304は、電動モータMの出力軸507に連繋して組み付けられる。
第1本体ケース305と第2本体ケース306とは、ボルト307aにより四隅をねじ嵌合させて一体に組み付けられている。この本体ケース307内には、
図15に示すように、第1クランク軸308を中心に回転可能な偏芯筒体303と該偏芯筒体303に組み付けられた第1ピストン301及び第2ピストン302(以下、これらを「ピストン複合体P」という;
図14参照)が回転可能に収容されている。以下、具体的に説明する。
【0069】
図15において、第1クランク軸308は、シャフト304の軸芯に対して偏芯して連結される。本実施形態では、シャフト304は、バランスウェイト309と一体に形成されている。尚、バランスウェイト310側にもシャフトが形成されていてもよい。バランスウェイト309,310は第1クランク軸308の両軸端部に各々嵌め込まれる。
図19において、第1クランク軸308の両軸端部には軸方向にスリット308aが各々形成されている。各スリット308aには、第1クランク軸308と直交する向きにピン孔308bが設けられている。ピン孔308bの孔径は、スリット308aの幅より大きく、スリット308aとピン孔308bは交差(直交)するように形成されている。また、第1クランク軸308の両端外周部には、バランスウェイト309,310のピン孔309b,310b(
図20(a),
図21(a)参照)とピン孔308bが位置合わせして嵌め込まれるようにDカット部308cが形成されている。
【0070】
図20及び
図21において、バランスウェイト309,310の軸部にはボルト孔309a,310a及びピン孔309b,310bが各々設けられている。このピン孔309b,310bと第1クランク軸308のピン孔308b(
図19参照)を連通するように位置合わせしてバランスウェイト309,310が第1クランク軸308に嵌め込まれ、ピン311aを連通するピン孔309b,308bに、ピン311bを連通するピン孔310b,308bに各々嵌め込む(
図16参照)。そして、ボルト孔309a,310aにボルト312a,312bを各々嵌め込んでスリット308a及びピン孔308bの幅を狭めることで、ピン311a,311bが抜け止めされてバランスウェイト309,310が第1クランク軸308の両端部に一体に組み付けられる(
図16参照)。
【0071】
図15において、バランスウェイト309に一体形成されたシャフト304は第1軸受部313aにより回転可能に軸支されており、バランスウェイト310に形成された軸部310cは第2軸受部313bにより回転可能に軸支されている。バランスウェイト309,310は、例えば扇型形状をしており(
図20(b)(c),
図21(b)(c)参照)、シャフト304周りに組み付けられ、後述するように第1クランク軸308及びピストン複合体Pを含むシャフト304を中心とした回転運動の質量バランスをとるために設けられている。
【0072】
また、
図22(b)に示すように、偏芯筒体303は、第1クランク軸308の軸芯に対して偏芯した複数の第2仮想クランク軸314a,314bを有する。本実施形態では、交差するピストンが2本であるため、第2仮想クランク軸314a,314bは第1クランク軸308を中心として180度位相がずれた位置に形成される。
【0073】
図15に示すように、第1,第2ピストン301,302が互いに交差して第1クランク軸308を中心に回転する偏芯筒体303に組み付けられている。具体的には、
図22(b)において、偏芯筒体303は、回転中心となる第1クランク軸308が挿通する第1筒体303aと、該第1筒体303aに連続して第2筒体303bが軸芯方向両側に各々連続して形成されている。第1筒体303aには第1クランク軸308が同芯状に嵌め込まれており、偏芯筒体303の回転中心となっている。また、第2筒体6bの軸芯は、第1クランク軸5の軸芯に対して偏芯した第2仮想クランク軸314a,314bと一致するようになっている。
図15に示すように、第2筒体303bには、外側軸受部316a,316bを介して第1,第2ピストン301,302が交差部で重ね合わせて回転可能に嵌め込まれている。
【0074】
図22(a)(b)において、第2筒体303bの内外周部には、軸受保持部303c,303dが各々形成されている。
図15に示すように、軸受保持部303cには、内側軸受部315a,315bが保持されており、軸受保持部303dには外側軸受部316a,316bが各々保持されている。内側軸受部315a,315bは第1のクランク軸308を回転可能に支持している。また、外側軸受部316a,316bは、第1,第2ピストン301,302が第2円筒部303bに交差して嵌め込まれたまま回転可能に支持している。
【0075】
このように、第1,第2ピストン301,302が、偏芯円筒303の第2筒体303bにピストンどうしが交差(直交)して重なり合うように組み付けられているので、同一平面上で往復動可能に組み付けられている。よって、ピストン複合体P(
図14参照)を高さ方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができ、省スペースで小型軽量化を図ることができる。
【0076】
また、
図14に示す第1,第2ピストン301,302の長手方向両端部に設けられる第1ピストンヘッド部301c、第2ピストンヘッド部302cには、リング状のシールカップ317a,317b(
図27(a)(b)参照)、シールカップ押さえ部材318a,318b(
図28(a)(b)参照)が各々ボルト319により組み付けられている。シールカップ317a,317bは、オイルフリーのシール材(例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂材等)が用いられる。シールカップ317a,317bの外周縁部にはピストン摺動方向に起立部317cが起立形成されている(
図27(a)(b)参照)。コンプレッサや流体回転機などにおいては、起立部17cは第1,第2ピストンヘッド部7c,8cの摺動方向外側に向けて組み付けられる。
【0077】
また、
図14及び
図15において、本体ケース307(第1本体ケース305及び第2本体ケース306)の側面部(4面)に設けられた開口部320には、シリンダ321がボルト322により組み付けられている。
図14において、第1,第2ピストン301,302は、シールカップ317a,317bによって、シリンダ321の内壁面とのシール性を保ちながら摺動するようになっている。
【0078】
図25(a)〜(e)は、第1,第2ピストン301,302の平面図及びY軸方向断面図、正面図及び右側面図、底面図である。第1,第2ピストン301,302は同形状をしているため、以下では第1ピストン301を用いて説明する。第1ピストン301に存在する構成は図示しないが第2ピストン308にも存在するものとする。
第1ピストン301の中央部には、シャフト304との干渉を防ぐ逃げ孔301aが設けられている。逃げ孔301aの中心は第2仮想クランク軸314aに相当する。逃げ孔301aの周縁部には、外側軸受部316aを保持する軸受保持部301bが設けられている(
図25(b)(c)参照)。
【0079】
また、第1ピストン301の長手方向両端には円板状の第1ピストンヘッド部301cが各々設けられている。この第1ピストンヘッド部301cには、ボルト孔301eを有する台座301dが各々設けられている(
図25(d)参照)。
図16に示すように、第1ピストンヘッド部301cの両端面に台座301dが設けられて外周側に形成される段差部301fにシールカップ317aを重ね合わせ、該シールカップ317aにシールカップ押さえ部材318aを、ボルト孔318cがボルト孔301eと位置合わせして重ね合わせる。そして、ボルト319をボルト孔318c,ボルト孔301eに嵌め込むことでシールカップ317aがシールカップ押さえ部材318aと第1ピストンヘッド部301cに挟み込まれて一体に組み付けられる。第2ピストン302の第2ピストンヘッド部302cについても同様にしてシールカップ317bがシールカップ押さえ部材318bと第2ピストンヘッド部302cに挟み込まれて一体に組み付けられる。
【0080】
図26(a)(b)に示すように、シリンダ321は開口部321aの周囲にフランジ部321bが形成されており、該フランジ部321bより円筒状のシリンダ胴部321cが形成されている。第1ピストン301,第2ピストン302の第1ピストンヘッド部301c,第2ピストンヘッド部302cは、シリンダ胴部321c及びフランジ部321bの内壁面に沿って摺動するように組み付けられる(
図13,
図14参照)。
【0081】
フランジ部321bには、ボルト孔321dが2箇所に設けられている。本体ケース307の開口部320(
図15参照)にシリンダ胴部321cを挿入してフランジ部321bを側面部に重ね合わせる。このとき、ボルト孔321dは、第1本体ケース305のボルト孔305d及び第2本体ケース302のボルト孔302dと各々位置合わせされ、ボルト322を、ボルト孔321d及びボルト孔305d若しくはボルト孔302dと嵌合することにより一体に組み付けられる(
図16参照)。
【0082】
また、
図26(a)(b)において、フランジ部321bには、複数箇所にボルト孔321eが設けられている。これは、後述するように、シリンダ321に重ね合わせてシリンダヘッドを組み付ける際に、ボルト嵌合用のボルト孔が必要になるためである。
【0083】
図23(a)(b)において、筐体上の第1本体ケース305の側面部(4面)には、第1開口部320aが各々設けられている。第1本体ケース305の軸方向端面部には、軸受保持部305aが設けられている。軸受保持部305aには第1軸受部313aが嵌め込まれる(
図15参照)。軸受保持部305aの中央部には、開口部305bが形成されている。バランスウェイト309に一体形成されたシャフト304は、軸受保持部305aに保持される第1軸受部313aを挿通し、開口部305bより本体ケース307の外側へ延出して組み付けられる(
図15参照)。また、第1本体ケース305の四隅にはボルト307aが各々嵌め込まれるボルト孔305cが設けられている。また、第1本体ケース305の側面部(4面)には、シリンダ321を固定するボルト322(
図13参照)のボルト孔305dが設けられている。
【0084】
図24(a)(b)において、第2本体ケース306の側面部(4面)には、第2開口部320bが設けられており、第2本体ケース306の軸方向端面部には、軸受保持部306aが設けられている。軸受保持部306aには、第2軸受部313bが嵌め込まれる(
図15参照)。軸受保持部306aには、開口部306bが形成されている。バランスウェイト310に一体形成された軸部310cは、軸受保持部306aに保持される第2軸受部313bに嵌め込まれる(
図15参照)。また、第2本体ケース306の四隅には、第1本体ケース305のボルト孔305cと位置合わせしてボルト307aが嵌め込まれるボルト孔306cが各々設けられている。また、第2本体ケース306の側面部(4面)には、シリンダ321を組み付けるボルト322(
図13参照)のボルト孔306dが設けられている。
【0085】
図16において、ロータリ式シリンダ装置の組立構成の一例を示す。
偏芯筒体303の軸受保持部303c(
図22(a)(b)参照)に内側軸受部315a,315bを組み付ける。また、偏芯筒体303の内側軸受部315a,315b、第1円筒体303a(
図22(a)(b)参照)の中心孔に第1クランク軸308を嵌め込む(
図15参照)。また、第1,第2ピストン301,302の第1、第2ピストンヘッド部301c,302cに、シールカップ317a,317b及びシールカップ押さえ部材318a,318bをボルト319にて一体に組み付ける。更に、第1,第2ピストン301,302の軸受保持部301b(
図25(c)参照),軸受保持部302b(図示せず)に外側軸受部316a,316bが嵌まり込むように組み付ける。そして、上記第1,第2ピストン301,302を第2円筒部303bに外側軸受部316a,316bを介して交差するように嵌め込む。
【0086】
また、第1クランク軸308の両端部にバランスウェイト309,310を嵌め込んで、ピン311a,311bをピン孔308bに嵌め込み、ボルト312a,312bを締付けてバランスウェイト309,310を第1クランク軸308に一体に組み付ける。また、第1本体ケース305の軸受保持部305aに第1軸受部313a、第2本体ケース302の軸受保持部302aに第2軸受部313bを嵌め込む。そして、第1軸受部313aにシャフト304を嵌め込み、第2軸受部313bにバランスウェイト310の軸部310cを嵌め込むようにして、第1本体ケース305と第2本体ケース306を組み合わせる。これにより、偏芯筒体303とこれに交差して組み付けられた第1,第2ピストン301,302(ピストントン複合体P;
図14参照)を本体ケース307(
図13参照)内に収容する。そして、ボルト孔305cとボルト孔302cを位置合わせして重ね合わせた状態で、ボルト307aを嵌め込んで本体ケース307(
図13参照)が組み立てられる。最後に、本体ケース307の側面(4面)に形成される開口部320(
図14,
図15参照)にシリンダ321を嵌め込んで、第1ピストンヘッド部301c,第2ピストンヘッド部302cがシリンダ321の開口部321a(
図26(a)(b)参照)内に各々摺動可能に嵌め込まれて(
図14参照)、ロータリ式シリンダ装置が組み立てられる。
【0087】
上述のように組み立てられたロータリ式シリンダ装置は、第1,第2ピストン301,302の外側軸受部316a,316b(第2仮想クランク軸314a,314b)周りの回転バランス(第1のバランス)、ピストン複合体Pの第1クランク軸308周りの回転バランス(第2のバランス)、シャフト304周りの構成部品の回転バランス(第3のバランス)が、バランスウェイト309,310により調整されて組み立てられている。
これにより、シャフト304を中心として第1クランク軸308、第1クランク軸308を中心として偏芯筒体303及び第1,第2ピストン301,302を含むピストン複合体Pが回転しても、回転振動を抑えて静音化を図ることができ、しかも複数ピストンの振動による損失を低減してエネルギー変換効率を高めることができる。
【0088】
ここで、シャフト304を中心とする第1クランク軸308、第2仮想クランク軸314a,314bの回転運動と複数のピストンの往復運動の関係を
図17(a)〜(l)に示す模式構造原理図を参照して説明する。
図17(a)〜(l)において、転がり円323の中心Oはシャフト304の軸芯と一致する。また、中心Oより偏芯した位置に第1クランク軸308が存在し、第1クランク軸308の回転に伴い第2仮想クランク軸314a,314bが滑らずに回転するものとする。第2仮想クランク軸14a,14bの数は、ピストンの数に対応している。
【0089】
シャフト304(中心O)と第1クランク軸308との軸芯間距離rを第1仮想クランクアーム及び第2仮想クランクアームのアーム長(回転半径)とする。また、シャフト304の軸芯(中心O)周りに第1仮想クランクアームのアーム長rを回転半径とする回転軌道330上を第1クランク軸308が回転する。更には、第1クランク軸308を中心とする第2仮想クランクアームのアーム長rを回転半径とする回転軌道(仮想円324)上を第2仮想クランク軸314a,314bが見かけ上滑らずに回転する。これにより、中心Oの周りに仮想円324の直径R(2r)を半径とする転がり円323の径方向(内サイクロイド)に沿って第1,第2ピストン301,302が各々往復動するようになっている。
【0090】
本実施例では、互いに直交する第1、第2ピストン301,302が連繋する第2筒体303bの第2仮想クランク軸を314a,314bとして例示するものとする。
図17(a)において、第2仮想クランク軸314aは転がり円323と直径R1の交点(下端位置)にあり、第2仮想クランク軸314bは、転がり円323の中心O(シャフト4の軸芯位置)にある。第1クランク軸308は転がり円323の中心Oから半径rの位置にあるものとする。
【0091】
第1クランク軸308が転がり円323の中心Oの周りに反時計回り方向に1回転する場合について説明する。仮想円324は時計回り方向に転がり円323の内周に沿って滑らずに回転するものとする。
図17(a)〜(l)は第1クランク軸308が30度ずつ変位した状態を示している。
【0092】
第1クランク軸308が
図17(a)の位置から反時計回り方向に90度回転すると
図17(d)の位置となる。このとき、第2仮想クランク軸314aは転がり円323の直径R1上を中心Oへ移動し、第2仮想クランク軸314bは直径R1と直交する直径R2と転がり円323との交点(右端位置)まで移動する。
【0093】
第1クランク軸308が
図17(d)の位置から反時計回り方向にさらに90度回転すると
図17(g)の位置となる。このとき、第2仮想クランク軸314aは転がり円323と直径R1との交点(上端位置)へ移動し、第2仮想クランク軸314bは転がり円323の中心Oへ移動する。
【0094】
第1クランク軸308が
図17(g)の位置から反時計回り方向にさらに90度回転すると
図17(j)の位置となる。このとき、第2仮想クランク軸314aは転がり円323の中心Oへ移動し、第2仮想クランク軸314bは転がり円323と直径R2との交点(左端位置)へ移動する。
【0095】
第1クランク軸308が
図17(j)の位置から反時計回り方向にさらに90度回転すると
図17(a)の位置となる。このとき、第2仮想クランク軸314aは転がり円323と直径R1との交点(下端位置)へ移動し、第2仮想クランク軸314bは転がり円323の中心Oへ移動する。
【0096】
以上のように、第1クランク軸308が中心O(シャフト304)の周りに回転すると、第2仮想クランク軸314aは仮想円324の転がり軌跡(内サイクロイド)である転がり円323の直径R1上を往復移動し、第2仮想クランク軸314bは転がり円323の直径R2上を往復移動する。
【0097】
即ち、シャフト304の軸芯(中心O)を中心とした半径rの回転軌道330に沿った第1クランク軸308及びピストン複合体P(
図14参照)の回転移動に伴い、第2仮想クランク軸314a,314bを軸芯に有する第2円筒部303bにおいて偏芯筒体303と連繋する第1ピストン301が半径2rの転がり円323(シャフト304の軸芯を中心とする同心円)の直径R1上で往復動を繰り返し、第2ピストン302が半径2rの転がり円323(シャフト304の軸芯を中心とする同心円)の直径R2上で往復動を繰り返すことになる。
【0098】
図18(a)〜(c)に示すように、第1、第2ピストンヘッド部301c,302cを収納するシリンダ321に、第1,第2シリンダヘッド325,326をボルト孔321e(
図26(a)(b)参照)を用いて第1、第2ピストンヘッド部301c,302cに対向して組み付けることで、シリンダ室327a,327b,327c,327dが形成され、各シリンダ室327a〜327dに各々連通する流体の吸込み口328と送出口329が各々形成される。
【0099】
よって、電動モータMによってシャフト304を回転駆動すると、シャフト304を中心に第1クランク軸308が回転し、該第1クランク軸308を中心に偏芯円筒303が回転し、第1ピストン301と第2ピストン302はシャフト304を中心とする同心円の径方向に各々往復動する。このとき、各シリンダ室327a,327b,327c,327dにおいて吸込み口328より空気を吸込み、送出口329より圧縮空気を送り出す動作が行なわれる。
【0100】
図29乃至
図32は、シャフト304の回転位置と第1,第2ピストンヘッド部301c,302cの往復動位置との関係を例示するものである。
図29は原点位置、
図30は原点位置より90度回転した位置、
図31は原点位置より180度回転した位置、
図32は原点位置より270度回転した位置を示す。
図29から
図30において、第1ピストン301は平面視で上方向に移動しており、第2ピストン302は平面視で右方向に移動している。シリンダ室327a,327c(負圧空気発生部105b)では流体の吸込みが行なわれ、シリンダ室327b,327d(圧縮空気発生部105a)では流体の送り出しが行なわれる。
図30から
図31において、第1ピストン301が平面視で上方向に移動しており、第2ピストン302が平面視で左方向に移動し始めているため、シリンダ室327b,327c(圧縮空気発生部105a)では流体の送り出し行なわれ、シリンダ室327a,327d(負圧空気発生部105b)では流体の吸込みが行なわれる。
図31から
図32において、第1ピストン301が平面視で下方向に移動し始め、第2ピストン302が平面視で左方向に移動しているため、シリンダ室327a,327c(圧縮空気発生部105a)では流体の送り出し行なわれ、シリンダ室327b,327d(負圧空気発生部105b)では流体の吸込みが行なわれる。
【0101】
尚、第1ピストンヘッド部301c,第2ピストンヘッド部302cの形状は真円である必要はなく、例えば角型であってもよい。
【0102】
また、2ピストンを備えたロータリーシリンダ装置について説明したが、3以上のピストンを備えていてもよい。例えば3ピストン設ける場合には、
図17(a)の仮想円324において、第1クランク軸308を回転中心として120度ずつ位相を異ならせて第2仮想クランク軸が配置されるように組み付けることも可能である。
【0103】
また、本実施形態では、第1,第2ピストン301,308が同一平面上(X−Y平面上)で往復動可能に偏芯筒体303に組み付けられていたが、偏芯筒体303を複数に分割する必要はあるが、複数のピストンを高さ方向(Z軸方向)に異なる位置に交差するように配置することも可能である。
また、第1,第2ピストン301,302は直交するように配置したが、これに限定されるものではなく、第1クランク軸308を中心として例えば位相差が60度等に配置することも可能である。
【0104】
以上説明したように、シャフト304を回転駆動すると、第1クランク軸308が回転し当該第1クランク軸308を中心に偏芯円筒303が回転することで、第2仮想クランクアームで規定される回転軌道(内サイクロイド)を第2仮想クランク軸314a,314bが見かけ上滑らずに回転し、当該第2仮想クランク軸314a,314bを中心として偏芯筒体303に交差して組み付けられた第1,第2ピストン301,302がシャフト304を中心とする同心円の径方向に各々往復運動する。
よって、シャフト304を中心としてコンプレッサ構成部品が等速回転運動可能に組み付けられているので、損失が少なくエネルギー変換効率を高めて消費電力を低減することができる。
【0105】
また、第1,第2ピストン301,302の外側軸受部316a,316b(第2仮想クランク軸314a,314b)周りの回転バランス(第1のバランス)、ピストン複合体Pの第1クランク軸308周りの回転バランス(第2のバランス)、シャフト304周りの構成部品の回転バランス(第3のバランス)が、バランスウェイト309,310により調整されているので、シャフト304を中心として第1クランク軸308、第1クランク軸308を中心としてピストン複合体Pが複数のピストン301,302の往復動を伴いながら回転しても、回転振動を抑えて静音化を図ることができる。したがって、コンプレッサ105を防振状態で配設した密閉箱35(
図8参照)の構造も簡略化することが可能になり、かつ二段式防音室34内部に設けられる防音材51も必要最小限で足りるため、酸素濃縮装置1の構造を簡略化して小型化軽量化に寄与することができる。
【0106】
また、クランク軸やクランクアームなどの機構部品を省略し、上述した回転振動を減らすことにより、コンプレッサ105のマウント構造も簡略化することができる。例えば、
図12において、コンプレッサ105は二段式防音室34内においてコンプレッサ固定台61で上下から挟むように固定されてコイルバネ62により振動を効率的に吸収できるようになっているが、この防振作用をするコイルバネ62をバネ定数の小さい簡略化した構造にすることが可能となる。
【0107】
また、シャフト304を中心として第1クランク軸308が同心円状の回転軌道を描いて回転し、第1クランク軸308を中心に第2仮想クランク軸314a,314bが回転する回転軌跡(内サイクロイド)に沿って複数のピストン301,302が往復動するので、回転バランスがよく低振動で騒音が少ない、効率のよい酸素濃縮装置1を提供することができる。
【0108】
尚、コンプレッサ105の駆動源として用いた電動モータMは、直流モータでも交流モータであってもいずれでもよい。また、誘導モータであっても、同期モータであってもいずれでもよい。
例えば、本実施形態で開示された2ピストンタイプのコンプレッサにおいては、単相4極交流同期モータを用いると、モータ出力のピークとコンプレッサの負荷(圧縮と吸引)のピークを合わせることで、コンプレッサの効率のよい駆動を実現できる。