(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記固体電解質層の上記光硬化性樹脂を含まない層は上記直方体形状の頂点部分において、他の部分よりも厚みが薄く、上記光硬化性樹脂を含む層は、上記直方体形状の頂点部分において、他の部分よりも厚みが厚く形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される電解コンデンサとしては、特に大容量が要求される電子機器には、弁作用金属としてタンタル、ニオブ等を用いた固体電解コンデンサが用いられている。固体電解コンデンサは弁作用金属からなる多孔質焼結体に固体電解質層を形成させて作製するが、使用する固体電解質層のタイプによって、二酸化マンガンタイプと導電性高分子又は機能性高分子タイプと呼ばれるものに大別される。
【0003】
近年、電子機器の高性能化に伴い、固体電解コンデンサには優れた高周波特性が求められており、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質層には、等価直列抵抗(ESR)を目的として導電性高分子が広く用いられるようになってきている。
【0004】
一般に、固体電解コンデンサに使用される導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン又はそれらの誘導体があり、中でもポリチオフェンは、ポリピロールやポリアニリンと比較して導電率が高く、かつ熱安定性に優れていることから固体電解質として使用されることが多い。
【0005】
固体電解質層である導電性高分子を多孔質焼結体に形成させる工程においては、主にモノマー、ドーパント、酸化剤等を適当に含む溶液に素子を含浸させ、化学重合すなわち酸化重合や電解酸化重合によって導電性高分子膜を素子上に成長させる方法と、導電性高分子分散液に素子を含浸させた後、該分散溶液の分散媒を乾燥させる方法と、がある。
【0006】
たとえば、特許文献1には、酸化重合によって導電性高分子をコンデンサ素子部すなわち多孔質焼結体に形成して固体電解質層を形成させる固体電解コンデンサ及びその製造方法が開示されている。
【0007】
たとえば、特許文献2には、水中に分散した導電性高分子溶液に、コンデンサ素子部の多孔質焼結体を含浸させ、続く溶媒の乾燥によって導電性高分子を多孔質焼結体に固着させ、固体電解質層を形成させる固体電解コンデンサが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3、特許文献4には、水中に分散した導電性高分子溶液に、コンデンサ素子部の多孔質焼結体を含浸させ、続く溶媒の乾燥によって導電性高分子を多孔質焼結体に固着させ、さらにモノマーを含む溶液中で酸化重合をすることで固体電解質層を形成させる固体電解コンデンサの及びその製造方法が開示されている。
【0009】
なお、特許文献5には、基材との密着性に優れ、該基材の透明性及び機械強度を損なうことなく、基材に対して導電性を付与するために、導電性高分子と光硬化性モノマー及び添加物の混合物からなるように構成した導電性樹脂形成性組成物についての技術が開示されている。
【0010】
化学重合を用いる方法においては、均一に導電性高分子膜が形成させることが難しく、それを改善するためにさらに重合反応を進めて導電性高分子膜を厚く成長させようとすると、多孔質焼結体と導電性高分子からなる固体電解質層の密着性が悪化しがちである。この結果、固体電解質層から導電性高分子膜が剥離しやすくなり、素子不良や性能劣化の原因となることがある。さらに、高く安定な導電性を有する導電性高分子膜を形成するのは困難なことが多い。
【0011】
水中に分散した導電性高分子溶液に、コンデンサ素子部の多孔質焼結体を含浸させ、続く溶媒の乾燥によって導電性高分子を多孔質焼結体に固着させ、固体電解質層を形成させるにおいては、導電性高分子はあらかじめ合成されたものであるため導電率は安定して高いものを選んで使うことができるため、化学重合を用いた場合に比べてコンデンサ素子の性能にばらつきがない。しかし、導電性高分子分散液の乾燥によって固体電解質層を形成させることになるため、
図6で後述するような問題が起こりやすい傾向にある。
【0012】
図6(a)は、従来のコンデンサ素子、特に導電性高分子分散液にコンデンサ素子を含浸し、続く溶媒乾燥によって固体電解質層を形成させたコンデンサ素子110の断面図である。この方法では、直方体状の外形を有するコンデンサ素子において、頂点部分の溶媒乾燥が速くなるため、又は分散液の表面張力等の原因から、該素子頂点部における導電性高分子膜の膜厚が不足する傾向が見られる。
【0013】
図6(b)は、
図6(a)の要部Zの拡大図である。
図7(b)に示すように、前記理由によって固体電解質層1130を形成させた状態で、かつコンデンサ素子の頂点部分において固体電解質層1130が不足している部位、すなわち欠陥部Xが形成されてしまう。
【0014】
図7(a)は従来の固体電解コンデンサの製造方法で、上記問題を改善するために、含浸工程の回数を複数回設けることで、固体電解質層1130を積層する形にした図である。リーク電流値(LC)を下げるためには、積層を多くし膜厚を確保することが望ましい。
【0015】
図7(b)、
図7(c)には、
図7(a)における要部Z2及び要部Z3の拡大図をそれぞれ示す。
図7(b)に示すように、固体電解質層113は積層され、さらに
図7(c)に示すように欠陥部Xは順次積層された追加の固体電解質層113によって覆われている。
【0016】
図7(d)には、
図7(a)で示したコンデンサ素子を作製する際の、含浸工程すなわち積層膜数と、LC(Leak Current)値及びESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)値との関係を示すグラフである。
図7(d)に示すように、含浸回数を重ねていくことによって、LC値は低減するが、逆にESR値が増大する結果となってしまい、この2つの値は両立しない。これは、たとえば積層膜間に界面抵抗発生してしまうことが、主な原因として推測される。さらに、固体電解質層の積層工程の際に、溶媒による導電性高分子膜の乾燥・膨潤に伴って、該膜の体積変化が躍起されるため、その際の応力によってコンデンサ素子の多孔質焼結体と該膜との密着性が悪くなる傾向にある。これはESRの増大や素子不良の原因となることが考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<固体電解コンデンサ>
図1A及び
図1Bを用いて、本発明の固体電解コンデンサを説明する。
【0031】
図1Aは、本実施形態に係る固体電解コンデンサ100を示す。本実施形態に示す固体電解コンデンサ100は、コンデンサ素子110、金属条材120及び電極基板130を組み合わせた構造であり、コンデンサ素子110は、多孔質焼結体111、誘電体層112、固体電解質層113及び陰極引出層114を順次形成したもので、陽極導出リード115を有する。さらに、たとえばフッ素樹脂からなるしみ上がり防止手段116が取り付けられている。しみ上がり防止手段116は、多孔質焼結体111において、陽極導出リード115の根元周辺の領域を覆っており、陰極が金属条材120と短絡するのを防ぐ機能を有する。
【0032】
電極基板130は、陽極端子130aと、陰極端子130bに分けられる。また、コンデンサ素子110と陰極端子130bとの接点には、導電性接着剤140が用いられる。さらに、コンデンサ素子110、金属条材120、導電性接着剤140の全体及び電極基板130の少なくとも一部は封止樹脂150に覆われている。
【0033】
図1Bは、コンデンサ素子110の詳部を拡大した概念図である。多孔質焼結体111はタンタルやニオブ等の弁作用金属からなる。多孔質焼結体111は、陽極導出リード115と共に前記弁作用金属微粉末を加圧成形し、続いて焼結処理を施したものであって、多数の細孔160を有する構造となっている。
【0034】
誘電体層112は、たとえばリン酸水溶液に上記多孔質焼結体111を浸漬させた状態で陽極酸化処理を施すことによって得られる。誘電体層112は、多孔質焼結体111の表面に形成されており、たとえば五酸化ニオブ又は五酸化タンタル等の弁作用金属酸化物からなる。
【0035】
固体電解質層113は、多孔質焼結体111の持つ細孔160を埋めるような形で形成され、さらには
図1Bに示すように、
図1Aに示すコンデンサ素子110の表面の、少なくとも一部を覆うような形で形成されている。本発明の固体電解質層113は導電性高分子と光硬化性重合体の混合物を主成分とした導電性を持った層であり、後述する処理液200が光硬化してなる層である。
【0036】
陰極引出層114は、たとえばグラファイト層114a及び銀層114bが積層されたものであり、固体電解質層113を覆っている。つまり、
図1Bに示すように、コンデンサ素子110の表面の、少なくとも一部を覆うような形で形成されている。
【0037】
図1Aに示す陰極引出層114は、たとえば銀ペーストからなる導電性接着剤140を介して陰極端子130bの一主面に対して接合されており、これによって固体電解質層113と陰極端子130bとが導通している。
【0038】
図1Aに示す陽極導出リード115は、たとえばタンタルやニオブ等の弁作用金属からなり、多孔質焼結体111を形成する弁作用金属微粉末と同種の金属からなる。また、
図1Aに示すようにその一部が多孔質焼結体111内に進入している。
【0039】
電極基板130は、たとえば42アロイのようなNi合金からなる母材に、たとえばCuをメッキしてなる板状部材であり、陽極端子130aと陰極端子130bを含む。陽極端子130aの一主面は、金属条材120を介して陽極導出リード115と導通している。また、陽極端子130aの他主面は封止樹脂150から露出しており、固体電解コンデンサ100の実装面として機能する。陰極端子130bの一主面は、上述のように導電性接着剤140を介して陰極引出層114に対して接合されている。また、陰極端子130bの他主面は封止樹脂150から露出しており、固体電解コンデンサ100の実装面として機能する。
【0040】
封止樹脂150は、たとえばエポキシ樹脂からなり、コンデンサ素子110、金属条材120、陽極導出リード115、電極基板130の少なくとも一主面を覆っており、これらを保護している。なお、電極基板130の封止樹脂150に覆われていない他主面は、固体電解コンデンサ100を面実装するために用いられる。
【0041】
次に、固体電解コンデンサ100の製造方法の一例について、
図2、
図3を用いて以下に説明する。
【0042】
まず、タンタル又はニオブ等の弁作用金属の微粉末を陽極導出リード115と共に加圧成形し、得られた成型品に焼結処理を施すことによって、多孔質焼結体111を得る。次いで、多孔質焼結体111を、たとえばリン酸水溶液に浸漬させた状態で陽極酸化処理を施すことによって、誘電体層112を形成させる。
【0043】
図2は、本発明にかかる固体電解コンデンサの製造方法のうち、含浸工程を示す。本項邸では、処理液200を用意する。本発明における処理液200は、導電性高分子、光硬化性重合性液体、添加剤等からなる。
【0044】
次に、
図2に示すように、誘電体層112を形成させたコンデンサ素子110の多孔質焼結体111を処理液200に含浸させる。この含浸によって、多孔質焼結体111の持つ、上記細孔160に、処理液200が浸透する。浸透をすることによって、後述する光硬化工程の結果として生じる
図2は図示しない固体電解質層113が、
図2には図示しない誘電体層112を隙間なく覆うことができる。続いて、多孔質焼結体111を処理液200から引き上げる。この際に、多孔質焼結体111に対して余分に付着した処理液200は、たとえば遠心力を用いる場合や、拭き取り工程を行うことができる。
【0045】
なお、処理液200を多孔質焼結体の持つ細孔160に浸透させる工程に替えて、従来法における固体電解質層113の形成手法を併用することもできる。具体的には、前述した酸化重合によって固体電解質層を形成させる方法や、前述した導電性高分子分散体の分散溶液にコンデンサ素子110の多孔質焼結体111を含浸し、続く溶媒の乾燥によって固体電解質層を形成させる方法である。従来技術との組み合わせにおいても、本発明に開示される方法を最外層すなわち多孔質焼結体111の表面に形成させる固体電解質層に適応させることによって、最外層に均一な固体電解質膜を追加形成できることから、ESRの低減や素子不良の防止といった本発明の効果を十分に期待できる。
【0046】
図3は、
図2に示した含浸工程に続く、光硬化工程を示している。光硬化工程は、たとえば多孔質焼結体111に浸透し付着した処理液200を硬化させ、固体電解質層113を形成させるための工程である。処理液200が付着した多孔質焼結体111に対して、UV光αを照射し、処理液200を光硬化させる。UV光αの光源としては、たとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンアーク、カーボンアークなどを用いることができる。本工程を経ることによって、多孔質焼結体111の持つ細孔160及びその表面に、固体電解質層113が形成される。
【0047】
膜厚その他の条件によっては、上記含浸工程と、それに続く光硬化工程は、所望する回数を繰り返すこともできる。しかし、各繰り返し工程において形成される固体電解質膜同士は完全には合一せず、界面を生じることから、これに由来する界面抵抗が生じることがあるため、できうるだけ繰り返しは避けることが望ましい。また、本発明の特徴として、固体電解質層113の形成には硬化速度の速い光硬化反応を用いるため、処理液200は厚塗りして希望の膜厚に成型できる。これによって重ね塗りの必要がなく、十分な厚さの固体電解質層113を用意できる。
【0048】
本発明で用いられる光硬化反応は硬化速度が速く、成型性に優れたものであるので、形成される固体電解質層113はコンデンサ素子110の多孔質焼結体111へ均一に形成される。固体電解質層113を均一に形成させることによって、固体電解質領域の欠陥部、たとえば
図6に示した欠陥部Xが生じないため、それを原因とした不良が生じない。この不良とは、たとえばESRの増大であり、他には、欠陥部位への電流集中による断線等が考えられる。
【0049】
固体電解質層113の光硬化による形成工程の後、所望によって加熱、減圧等によって、高分子膜すなわち固体電解質層113の硬化反応を助ける工程が存在してもよい。
【0050】
この後、
図1Bに示した、固体電解質層113に対してグラファイト層114a及び銀層114bを積層させることにより、陰極引出層114を形成する。続いて、たとえばレーザー溶接法を用いて陽極導出リード115を、金属条材120に溶接する。また、金属条材120はたとえば抵抗溶接によって陽極端子130aに接合されており、陰極引出層114は導電性接着剤150を用いて陰極端子130bに接合される。
【0051】
続いて、たとえばエポキシ樹脂材料を用いて、封止樹脂150をモールド成形する。以上の工程によって、固体電解コンデンサ100が完成する。
【0052】
<処理液200の組成>
本発明における処理液200は、導電性高分子、ドーパント、光硬化性重合性液体、光重合開始剤、その他の添加剤等からなる。以下に、本発明における処理液200の組成の詳細を述べる。
【0053】
<導電性高分子>
導電性高分子のモノマーとしては、ピロール、チオフェン、又はアニリン及びこれらの誘導体を挙げることができる。モノマーの重合により、モノマーの繰り返し単位を有するπ共役系導電性高分子を得ることができる。従って、上記モノマーを用いることにより、たとえば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、及びこれらの共重合体等からなる導電性高分子を得ることができる。π共役系導電性高分子は、無置換のままでも十分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0054】
このようなπ共役系導電性高分子のモノマーの具体例としてはたとえば、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3,4−エチレンジオキシピロール等のピロール系、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブデンジオキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン等のチオフェン系、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等のポリアニリン系等が挙げられる。これらからなるπ共役系導電性高分子の中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる重合体又は共重合体が導電率の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高くなる上に耐熱性が向上する点から、より好ましい。
【0055】
<ドーパント>
導電性高分子が導電性を有するためには、ドーパントを添加することが望ましい。添加されるドーパントとしては、たとえば電子受容性の化合物であり、より具体的にはたとえばルイス酸化合物であり、たとえばCl
―、Br
―、I
―等のハロゲンイオンや、HSO
4―、R―SO
4―(Rはアルキル基、アリール基、又はアルケニル基)等の硫酸化合物アニオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸イオン、及びドデシルベンゼンスルホン酸イオン等の芳香族スルホン酸アニオン、硝酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン等があげられる。
【0056】
ドーパントとしてはたとえば耐酸化性の理由からパラトルエンスルホン酸イオンを持ったもの、たとえばパラトルエンスルホン酸ピリジニウムが望ましい。なお、このドーパントは原理的に、後述する光硬化性成分の硬化を助けるための光重合開始剤としての役割を同時に担うことができる。
【0057】
<光硬化性重合性液体>
本発明に用いられる光硬化性重合性液体としては、光硬化性の官能基を持つモノマー、オリゴマー、ポリマーの、単独又はそれらの混合物として用意され、また化合物種においても、単独又は複数の成分を含む、液状の単一化合物又は組成物として用意される。これらはその反応性、導電性高分子その他成分との相溶性、液状のモノマー又は組成物の粘度、結果的に生成される固体電解質層の導電性、等から好適に選ばれ配合される。さらにポリマーにおいては、そのモノマー単位が2以上の種類からなるいわゆるコポリマーであってもよい。
【0058】
光硬化性の官能基を持つ液状ポリマーとしては、たとえば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマー又はプレポリマー又はポリマーが挙げられる。光硬化性を有する液状ポリマーを構成するモノマーとしては、たとえば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート系、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−(4−ブロモブトキシメチル)−3−メチルオキセタン、(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルベンゾエート、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ビフェニル、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)、ポリ(3−(4−ブロモブトキシメチル)−3−メチルオキセタン)、N−オキセタン−2−イルメトキシメチルアクリルアミド、3,5−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)安息香酸、3,5−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)安息香酸メチルエステル、5−(3−エチル−3−オキセタニル)イソフタル酸、1,1,1−トリス[4(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)フェニル]エタン等のオキセタン系、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル系、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
【0059】
光エネルギーによる硬化反応は、硬化メカニズムの違いによって、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられる。よって、光硬化性重合性液体も、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられる。
【0060】
上記に列挙した主成分すなわち光硬化性を有する液状ポリマーを構成するモノマーのうち、特にアクリレート系、メタクリレート系はラジカル重合型であり、グリシジルエーテル系すなわちエポキシ系、オキタセン系、ビニルエーテル系はカチオン重合型である。
【0061】
<光重合開始剤>
光重合開始剤、光硬化性重合性液体を重合架橋し、硬化させる。光重合開始剤は、紫外線等の光エネルギー線を受けることによって、光ラジカル重合または光カチオン重合を開始するための化学種を生成する添加剤である。よって、本発明に係る光硬化性重合性液体には、必要に応じて光重合開始剤を添加することができる。その光重合開始剤には、ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。また、カチオン重合開始剤としては、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、等のオニウム塩類が好ましく、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等も挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。上記の光重合開始剤は、本発明の光硬化性重合性液体の組成中、0.1〜15質量%含むことが好ましく、0.2〜12質量%がより好ましく、0.3〜10質量%含むことがさらに好ましい。特に、導電性高分子は、実質的に光を吸収する性質を有しているため、光硬化性に影響を及ぼす。この点に留意して光重合開始剤の分量を調整する必要がある。
【0062】
本発明にかかる光重合開始剤として特に望ましいのは、いわゆる硬化収縮の少ないタイプの光硬化性重合性液体であり、それにはカチオン重合型が望ましい。さらにカチオン重合型の光硬化性液状重合体は、酸素による表面硬化阻害が生じず、薄膜硬化が可能なこと等からも、本発明に適応する上では望ましい。
【0063】
よって、本発明に係る光硬化性重合性液体としてはたとえば、エポキシ系、オキセタン系、ビニルエーテル系からなる群から選ばれる、一種又は二種以上のモノマー、オリゴマー又はポリマーからなる光硬化性重合性液体を用いることが好ましく、さらに、エポキシ系、オキセタン系がより好ましく、特にオキセタン系が好ましい。エポキシ系やオキセタン系の環状構造を有する化合物を用いることにより、素子表面に形成させた固体電解質層113の密着性、光硬化性が特に優れる。これは、エポキシ環やオキセタン環を有する化合物は、重合反応の前後で体積変化が小さく反応性が高いという特徴による。ラジカル重合型の重合の場合、重合反応に際して分子間に新しい炭素―炭素結合が形成され、分子間距離が縮まることになり、生成される高分子硬化体分子全体の嵩高さが減少することに起因する。一方、カチオン重合型の重合、特に開環重合の場合、開環反応による結合の解裂すなわち分子が鎖状に広がることと、結合の生成が同時に起こるために重合反応前後での分子全体の嵩高さはほとんど変化しない。結果、体積変化に伴うひずみを生じないために、固体電解質層113の素子表面に対する密着性の悪化を防ぐことができる。なお、エポキシ系、オキセタン系液状重合体に加えて、同様にカチオン重合型であるビニルエーテル系液状重合体を好ましく配合することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ラジカル重合型の化合物を併用することができる。
【0064】
本発明の光硬化性重合性液体において、上記に挙げた光重合性化合物のうち、特にモノマーは、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の光硬化性組成物の粘度を下げるのに有効であり、光硬化性重合性液体の、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下の範囲で添加される。モノマーの割合を95質量%以下とすることにより、硬化膜の機械的な強度、耐熱性をより良好に保つことができる。一方で、モノマーは、反応性希釈剤として用いるため、通常は、本発明の光硬化性重合性液体に必須であり、好ましくは、全光硬化性重合性液体の1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上の割合で配合される。
【0065】
<有機溶剤>
本発明の処理液200に含まれる有機溶剤は、処理液200において2質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。特に、本発明の光硬化性を有する液状重合体の組成においては、モノマー又はオリゴマーが、反応性液体としての役割と同時に、希釈液体としての役割も備えるため、本発明のたとえば導電性高分子のような処理液200に含まれる他要素を溶解するための有機溶剤は、必ずしも含む必要はない。さらに詳しくは、同じ光反応性の官能基を持つ物質群として、モノマー、オリゴマー、ポリマーが考えられるが、一般的に重合度が低いほど、物質の粘度は低い傾向にある。重合度とは、上記オリゴマー、ポリマーを構成する繰り返し構造が繰り返される回数である。よって、溶媒を用いなくても、たとえばモノマーの分量を増やすことによって、処理液200全体の粘度を低下させることが十分に可能である。
【0066】
有機溶剤を使用しないことによる利点として、固体電解質層113の形成工程において、有機溶剤の揮発を目的としたベーキング処理が不要なため、生産性の向上、省スペース化、省エネルギー化等が見込める。さらには有機溶剤を用いないプロセスとすることが可能なことから、化学物質排出移動量届出制度(PRTR、Pollutant Release and Transfer
Registen)対応や揮発性有機化合物(VOC、Volatile Organic Compound)規制等の対応も容易となる点が挙げられる。一方、有機溶剤を多く用いるプロセスでは、上述したように有機溶剤の揮発・乾燥による導電性高分子からなる固体電解質膜の体積の変化が、素子に対する該膜の密着性を低下させる傾向がある。
【0067】
しかしながら、塗工性、光硬化反応の際の反応性、導電性高分子の溶解性等の観点から、有機溶剤を任意に添加してもよい。本発明の処理液200に好適に用いることができる有機溶剤としては、導電性高分子の溶解やフォトレジスト、光硬化性樹脂等の希釈等で一般的に用いられているものであり、処理液200に含まれる成分を溶解し、該液中に均一にそれを分散させる効果を有し、かつ処理液200の成分とは反応性を有さないものであればよい。
【0068】
その他、本発明の処理液200には、添加剤として導電性高分子の劣化を防ぐ酸化防止剤、固体電解質膜の塗布ムラなど塗布不良防止のための界面活性剤、等を好適に配合することができる。
【0069】
<処理液200の配合>
以上に挙げた処理液200の構成要素を好適に配合し混合することにより、処理液200は構成される。本発明における固体電解質層113の原料たる処理液200は少なくとも導電性高分子と光硬化性重合性液体とからなる。
【0070】
さらに、本発明の処理液200における、導電性高分子、光硬化性重合性液体、添加剤等の好ましいブレンド形態について述べるが、重合性モノマーのブレンドの範囲は特にこれらに限定されるものではない。本発明の処理液200は、ESRの低減、導電率、機械的強度の観点から、各成分の配合比率が選ばれる。特に、ESRの低減又は導電率は導電性高分子の配合量ならびにドープ量によって左右され、機械的強度、硬化速度、密着性等は主に光硬化性重合性液体の配合によって左右される。本発明に係る効果を得るためには、処理液200には導電性高分子は20質量%〜90質量%の範囲で含まれるのが好ましく、さらに30質量%〜70質量%が好ましい。また、光硬化性重合性液体は10質量%〜70質量%の範囲で含まれるのが好ましく、さらに20質量%〜50質量%が好ましい。
【0071】
上記構成成分は混合物としなくても、順次積層体としても形成させることが可能であるが、好ましくは、少なくとも導電性高分子と光硬化性重合性液体は混合物とすることであり、さらに好ましくはすべてが混合物となっている場合である。これは、積層工程とすると工程数が増え、操作が煩雑になってしまう点や、積層層間に形成される界面の影響、さらに溶媒による乾燥、膨潤が繰り返される結果、膜の均一性や密着性が損なわれる、等の問題が生じることが考えられるからである。しかしながら、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成成分を積層構造とする方法を併用することができる。
【0072】
<熱硬化性重合性液体について>
本発明に係る光硬化性の液状成分は光という刺激によって硬化、成型が可能な成分としているが、このような刺激応答性の硬化成分という意味では熱によって硬化するタイプいわゆる熱硬化性樹脂といった成分が広く用いられている。本発明に係る光硬化性重合性液体の代替として、上記熱硬化性重合性液体を用いることも考えられるが、本発明に係る硬化成分として、熱硬化性重合性液体のみを用いる場合は、以下の理由により必ずしも好ましくない。たとえば硬化に高温を要するタイプの熱硬化性成分は耐熱性に優れかつ反応の制御が容易な反面、コンデンサ素子部に熱ストレスを与える恐れがある。一方、硬化が室温乃至はそれより低温で可能なものに関しては室温下で硬化しやすいためにたとえば温度管理といったことに留意する必要があり、ハンドリングを悪化させ工程を煩雑にする恐れがある。
【0073】
また、任意の位置に導電性高分子からなる導電膜を形成する手法すなわち部位選択的な固体電解質層の形成といったことは、熱硬化性の成分のみでは達成困難である。しかしながら、本発明の効果を損なわない範囲で、熱硬化性の液状成分又は熱重合開始剤を必要に応じて混合することができる。
【0074】
<固体電解コンデンサの製造工程の変形例>
本発明を用いることによって特に有効と考えられる固体電解コンデンサの、変形例を以下に示す。
【0075】
図5は、変形例として、固体電解質層をコンデンサ素子の任意の場所に形成することを可能にする、光硬化工程の変形例を示している。
【0076】
さらに具体的には、
図5では、主部が直方体状である多孔質焼結体111頂点部に、選択的に固体電解質膜を形成した様子を示している。
【0077】
図5で示した光硬化工程に先立って、
図2に示した含浸工程を施し、誘電体層112を形成させたコンデンサ素子110の多孔質焼結体111を、処理液200に含浸させる。このときに用いるコンデンサ素子110には、多孔質焼結体111に誘電体層112を形成させた状態のものでもよく、さらに固体電解質層113を形成させたものでもよく、その方法としては上記で述べた、本発明の方法を用いてもよく、また従来発明で例示したような方法で固体電解質層113を形成させてもよい。
【0078】
続いて、多孔質焼結体111を処理液200から引き上げる。この際に、多孔質焼結体111に対して余分に付着した処理液200は、たとえば遠心力を用いる場合や、拭き取り工程を行うことができる。
【0079】
続いて光硬化工程として、
図5に示すようにスポット光源310を用意するとよい。スポット光源310は、処理液200の光硬化反応に十分な光強度を発生できるものであり、かつ、光を照射する領域を任意に絞ることができる機構を有した光源装置であり、たとえばレーザー光源や、半導体の製造に用いられるフォトレジストの露光手段等である。
【0080】
今、多孔質焼結体111表面には、たとえば均一に処理液200が塗布されている状態である。ここに対して、任意の場所にスポット光源310を照射する。
【0081】
スポット光源310によって光硬化反応を行った後に、コンデンサ素子110は適切な溶媒によって、洗浄操作を受けるとよい。このとき、スポット光源310によって露光された部分のみが硬化しているため、その部分のみがコンデンサ素子110に残留し、未硬化の部分すなわち余剰の処理液200は、この洗浄操作により脱落する。
【0082】
このようにして形成されたのが部位選択的固体電解質層226である。部位選択的固体電解質層226はたとえば、固体電荷脂質113が、多孔質焼結体111の頂点部分で不足している部位すなわち欠陥部位Xに対して、それを覆うような形で形成させるとよい。これによって、欠陥部位Xを原因として生じる不良、たとえばESRの増大や、過電流による欠陥部Xでの断線等を防止することができる。
【0083】
本発明の有効な点を、
図5と
図7を比較して述べる。
【0084】
部位選択的固体電解質層226は、たとえば上記のように欠陥部Xの周囲にのみ選択的に形成させるようにすることで、コンデンサ素子110全体に形成させた場合に比べて余分な固体電解質膜が形成されないため、重ね塗りによるESRの増大といった問題が起こらない。なお、本項で言う余分に形成される固体電解質層とは、
図7に示されている、固体電解質層1130が多層となっている部分である。
【0085】
さらに詳しくは、
図1Aに示したように、コンデンサ素子110の一主面は導電性高分子140を介して陰極端子130bと接合しているが、
図7に示すように固体電解質層が多層構造となることにより界面が生じ、それが界面抵抗となってしまうことが考えられる。従って、該主面には固体電解質層を積層しないことが望ましい。本発明の方法を用いることによって、
図5に示したように、該主面に余分な積層膜を設けることなく、容易な操作で位置精度の高い固体電解質層の形成、すなわちコンデンサ素子110の頂点部分への選択的形成を行えるため、上記の問題点は解決される。
【0086】
さらに、上記工程の洗浄操作によって除かれた余分の処理液200に関しては、洗浄に用いた溶媒を留去することによって再利用可能であり、使用する材料の低減につながり、コスト削減が可能となる。
【0087】
上記選択的な固体電解質層の形成を助ける手法として、又は均一塗布を目的とした場合でも、含浸工程以外の一般的に知られた塗布工程、たとえばインクジェット法、ドロップキャスト法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージャンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を好適に用いる又は含浸工程と併用することができる。これらの方法は製膜部位の選択性向上という効果以外にも、処理液200の使用量を制限できるため原材料費の抑制にも有効である。
【0088】
なお、上記および
図5では、固体電解質層113を形成させたコンデンサ素子110に対して、部位選択的固体電解質層226を順次形成させた例を示したが、部位選択的固体電解質層226を先に形成させ、その後に固体電解質層113を、本発明の方法を用いて形成させてもよく、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、従来発明において用いられている方法、たとえば前述した酸化重合によって固体電解質層を形成させる方法や、前述した導電性高分子分散体の分散溶液にコンデンサ素子110の多孔質焼結体111を含浸し、続く溶媒の乾燥によって固体電解質層を形成させる方法である。