特許第5891032号(P5891032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891032
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】カッターヘッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   E21D9/087 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-285505(P2011-285505)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133663(P2013-133663A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 保徳
(72)【発明者】
【氏名】小田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山中 和典
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−102885(JP,A)
【文献】 米国特許第05437500(US,A)
【文献】 特開平09−032475(JP,A)
【文献】 特開平06−213114(JP,A)
【文献】 特開2008−297797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機の前端部に装備されるカッターヘッドを回転駆動するカッターヘッド駆動装置において、
前記カッターヘッドに回転力を伝達するリングギヤと、
前記リングギヤに噛合した複数のピニオンと、これらピニオンを夫々回転駆動する複数の回転駆動機とを有する複数の回転駆動装置とを備え、
前記各ピニオンを掘削機本体に含まれるフレーム部材で両端支持するように構成し
前記各回転駆動機からピニオンへ回転駆動力を伝達する出力軸部材の前端部分が、前記ピニオンに分離可能に連結され、
前記各ピニオンの前端軸部を回転自在に支持する前端軸受部材と、後端軸部を回転自在に支持する後端軸受部材とを、前記フレーム部材で直接支持するように構成し、
前記各ピニオンにおける後端軸受部材を保持する軸受保持部材であって、外径がピニオンの外径よりも大径の軸受保持部材を前記フレーム部材に設け、
前記回転駆動機と出力軸部材とを取り外した状態において、前記軸受保持部材を後方へ取り外すことにより、前記ピニオンを後方へ取り外し可能に構成したことを特徴とするカッターヘッド駆動装置。
【請求項2】
前記回転軸部材が回転駆動機の出力部から分断された軸部材に構成され、この回転軸部材の後端部分が前記出力部に分離可能に連結されたことを特徴とする請求項1に記載のカッターヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記回転駆動機は、駆動モータと駆動モータの回転駆動力を減速する減速機とを備え、
前記フレーム部材は、前記リングギヤ及び複数のピニオンの内周側と外周側に配設された内周側フレームと外周側フレームとを有し、
前記減速機のケース部材に挿通させた複数の連結部材であって前記減速機の軸心と平行な複数の連結部材により、前記回転駆動機を前記内周側フレーム及び外周側フレームの後端部に固定したことを特徴とする請求項に記載のカッターヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記リングギヤと複数のピニオンと内周側フレームと外周側フレームとを含む駆動力伝達ユニットが構成されたことを特徴とする請求項に記載のカッターヘッド駆動装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機のカッターヘッド駆動装置に関し、特にカッターヘッド駆動装置の複数の回転駆動装置の各ピニオンの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削機は、通常、カッターヘッドと、カッターヘッドの背面側のチャンバーと、チャンバーを仕切る隔壁と、掘削機本体と、胴部材(前部胴、後部胴)と、カッターヘッドを回転駆動するカッターヘッド駆動装置と、掘削物をチャンバー内から排出する排出装置と、複数のシールドジャッキと、複数の中折れジャッキと、トンネル内面をセグメンドなどの覆工部材で覆工するエレクタ等を備えている。
【0003】
前記カッターヘッド駆動装置は、リングギヤと、このリングギヤを回転駆動する複数の回転駆動装置とで構成されている。各回転駆動装置は、リングギヤの内歯又は外歯に噛合したピニオンと、このピニオンを回転駆動する電動式又は油圧式の回転駆動機とを有する。一般に、回転駆動機の出力部から延びた出力軸部材の先端部にピニオンが固定され、回転駆動機のケース部材を掘削機本体に含まれるフレーム部材に固定することにより、ピニオンは回転駆動機の出力部に片持ち状に支持された状態で、リングギヤに噛合している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のトンネル掘削機のカッターヘッド駆動装置においては、リングギヤの外歯に噛合するピニオンをカッター旋回モータで回転駆動するように構成し、カッター旋回モータのケース部材を掘削機本体に含まれるフレーム部材に固定し、ピニオンが片持ち状に支持されている。
【0005】
特許文献2に記載のシールドマシン100においては、図5に示すように、そのシールドフレーム102の前端側にカッタ104が装備され、カッタ104の背面側に隔壁103で仕切ったチャンバー108が設けられている。カッタ駆動装置105のリングギヤ110は、中間ビーム122を介してカッタ104に連結され、このリングギヤ110は旋回環106により回転自在に支持されている。この例でもカッタ駆動装置105の駆動モータ109の出力軸にピニオン129が片持ち状に支持され、リングギヤ110に噛合している。
【0006】
一方、特許文献を見つけることはできなかったが、ピニオン203を両端支持するように構成したカッターヘッド駆動装置200も実用化されている。図6に示すように、カッターヘッド駆動装置のリングギヤを回転駆動する複数のモータユニット200の各々において、モータユニット200は、駆動モータ200aと減速機200bとピニオン203とを有している。そして、減速機200bのケース部材201にピニオン203の外周側の約半分と先端側半分とを覆う延長ケース部材202を設け、ピニオン203の前端軸部を支持する前端軸受部材を延長ケース部材202の前端壁部202aに支持させている。
【0007】
このカッターヘッド駆動装置200においても、ケース部材201については掘削機本体に含まれるフレーム部材に固定される。モータユニット200のケース部材201を掘削機本体側のフレーム部材に固定する構造としては、ケース部材201にフランジ部201aを形成し、このフランジ部201aを介して掘削機本体側のフレーム部材にボルトで固定するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−327246号公報
【特許文献2】特開2010−77650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カッターヘッド駆動装置において、ピニオンを片持ち支持する従来の構造では、リングギヤに駆動力を伝達する際に、軸受内部の隙間やピニオン軸の撓みを考慮し、歯当たりが全体に及ぶようにピニオンに対してクラウニングを考慮しなければならなかった。また、ピニオン軸の撓みを極力小さくするためにピニオンの軸の剛性を高める必要があり、ピニオンの軸の径を大きくする必要があった。そのため、回転駆動装置、ピニオンをコンパクトにできず、小径で強力な駆動力を有するカッターヘッド駆動装置を設計する上で問題となっていた。また、それらの製作費が高価になる上、ピニオン歯面や減速機の耐久性も低くなる等の問題もある。
【0010】
一方、上述のとおり、前記モータユニットのケース部材の延長ケース部材を介してピニオンを両端支持する構造も実用化されている。この場合はピニオン軸の径を大きくする必要はないが、延長ケース部材やフランジ部の形成が別に必要になる。そのため、回転駆動機の出力部の構造は複雑となり、回転駆動装置をコンパクトに設計することはできない。
【0011】
従って、本発明の目的は、小径で強力な駆動力を有するカッターヘッド駆動装置の設計を可能とすべく、回転駆動装置全体のコンパクト化を図り、回転駆動機出力部の構造のコンパクト化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のカッターヘッド駆動装置は、トンネル掘削機の前端部に装備されるカッターヘッドを回転駆動するカッターヘッド駆動装置において、前記カッターヘッドに回転力を伝達するリングギヤと、前記リングギヤに噛合した複数のピニオンと、これらピニオンを夫々回転駆動する複数の回転駆動機とを有する複数の回転駆動装置とを備え、前記各ピニオンを掘削機本体に含まれるフレーム部材で両端支持するように構成し、前記各回転駆動機からピニオンへ回転駆動力を伝達する出力軸部材の前端部分が、前記ピニオンに分離可能に連結され、前記各ピニオンの前端軸部を回転自在に支持する前端軸受部材と、後端軸部を回転自在に支持する後端軸受部材とを、前記フレーム部材で直接支持するように構成し、前記各ピニオンにおける後端軸受部材を保持する軸受保持部材であって、外径がピニオンの外径よりも大径の軸受保持部材を前記フレーム部材に設け、前記回転駆動機と出力軸部材とを取り外した状態において、前記軸受保持部材を後方へ取り外すことにより、前記ピニオンを後方へ取り外し可能に構成したことを特徴としている。
【0013】
このカッターヘッド駆動装置においては、複数の回転駆動装置を回転駆動すると、複数のピニオンが回転駆動され、その回転駆動力がリングギヤに伝達されてカッターヘッドが回転駆動され、カッターヘッドにより切羽が掘削される。各ピニオンを掘削機本体に含まれるフレーム部材で両端支持するように構成したため、前記フレーム部材を有効活用してピニオンを両端支持することができる。そのため、回転駆動装置の回転駆動機からピニオンに駆動力を伝達する出力軸部材に曲げモーメントが作用しなくなり、ピニオンにクラウニングを形成する必要もなくなる。
【0014】
【0015】
請求項のカッターヘッド駆動装置は、請求項の発明において、前記出力軸部材が回転駆動機の出力部から分断された軸部材に構成され、この出力軸部材の後端部分が前記出力部に分離可能に連結されたことを特徴としている。
【0016】
請求項のカッターヘッド駆動装置は、請求項の発明において、前記回転駆動機は、駆動モータと駆動モータの回転駆動力を減速する減速機とを備え、前記フレーム部材は、前記リングギヤ及び複数のピニオンの内周側と外周側に配設された内周側フレームと外周側フレームとを有し、前記減速機のケース部材に挿通させた複数の連結部材であって前記減速機の軸心と平行な複数の連結部材により、前記回転駆動機を前記内周側フレーム及び外周側フレームの後端部に固定したことを特徴としている。
【0017】
【0018】
請求項のカッターヘッド駆動装置は、請求項の発明において、前記リングギヤと複数のピニオンと内周側フレームと外周側フレームとを含む駆動力伝達ユニットが構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、各ピニオンをフレーム部材で直接両端支持するため、ピニオンに回転駆動力を伝達する出力軸部材に曲げモーメントが作用しなくなる。よって、出力軸部材を小径化することができる上、ピニオンにクラウニングを形成する必要がなくなるから、ピニオンと回転駆動機からなる回転駆動装置を小型化することができ、その製作費を低減でき、耐久性を高めることができる。
【0020】
しかも、ピニオンを掘削機本体に含まれるフレーム部材で両端支持する構造にしたため、回転駆動機のケース部材の構造が複雑化することがなく、前記フレーム部材を有効活用してピニオンを両端支持することができる上、回転駆動機のカバー部材の構造が複雑化せず、回転駆動機の出力部周辺のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
そして、各回転駆動機からピニオンへ回転駆動力を伝達する出力軸部材の前端部分が、ピニオンに分離可能に連結されたため、回転駆動機を取り外すことで、ピニオンだけを交換・修理したり、回転駆動機だけを交換・修理したりすることが可能になった。しかも、トンネル掘削機の組み立て時、回転駆動装置のうちのピニオンだけを、予め掘削機本体側に組み込んでおくことで、カッターヘッド駆動装置の組み立て作業の作業能率を高めることができる。
更に、軸受保持部材を後方へ取り外すことにより、前記ピニオンを後方へ取り外し可能に構成したため、ピニオンの交換やピニオンの周辺のメンテナンスが容易になる。
【0022】
請求項の発明によれば、前記出力軸部材が回転駆動機の出力部から分断された軸部材に構成され、この出力軸部材の後端部分が前記出力部に分離可能に連結されたため、出力軸部材だけを交換・修理することも可能になった。
【0023】
請求項の発明によれば、前記減速機のケース部材に挿通させた複数の連結部材であって前記減速機の軸心と平行な複数の連結部材により、前記回転駆動機を前記内周側フレームの後端部と外周側フレームの後端部とに固定するため、駆動ユニットの取付け用フランジが不要となり、外形の小型化(コンパクト化)を図ることができる。
【0024】
【0025】
請求項の発明によれば、前記リングギヤと複数のピニオンと内周側フレームと外周側フレームとを含む駆動力伝達ユニットが構成されているため、掘削機本体とは別個に駆動力伝達ユニットを製作し、その駆動力伝達ユニットを掘削機本体に組み付けることも可能になるうえ、その駆動力伝達ユニットを使用済みのトンネル掘削機から取り外して別のトンネル掘削機に再利用することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例に係るトンネル掘削機の概略縦断面図である。
図2図1の矢印Aから視たトンネル掘削機の背面図である。
図3】カッターヘッド駆動装置の拡大断面図である。
図4】カッターヘッド駆動装置の駆動力伝達ユニットの拡大断面図である。
図5】特許文献2のシールドマシンのカッタ駆動装置等の側断面図である。
図6】先行技術に係る駆動ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0028】
本実施例に係るトンネル掘削機1は、一般的なシールド掘削機と同様のものであり、本実施例では、主として本発明に直接関係する構成について説明する。
図1図4に示すように、このトンネル掘削機1は、カッターヘッド2、カッターヘッド2の背面側のチャンバー3、このチャンバー3を仕切る隔壁3a、この隔壁3aを含む掘削機本体(図示略)、胴部材(前胴5のみ図示、後胴は図示略)、カッターヘッド2を回転駆動するためのカッターヘッド駆動装置4、複数のシールドジャッキ(図示略)、複数の中折れジャッキ(図示略)、掘削した土砂等を排出するスクリューコンベア式の排出装置6など有する。尚、スクリューコンベア式の排出装置6の代わりに泥水式の排出装置を設けてもよい。
【0029】
前記カッターヘッド2は、複数のカッタースポーク2aと、これらカッタースポーク2aに装備された複数のローラーカッター(図示略)とを有する。但し、複数のローラーカッターに代えて複数のカッタービットを設けてもよい。複数のカッタースポーク2aは、ヘッド駆動装置4のリングギヤ30に固定されたリング部材33に連結部材22を介して連結され、カッターヘッド2はカッターヘッド駆動装置4により回転駆動される。
【0030】
掘削機本体は、前胴5を含む胴部材、カッターヘッド駆動装置4、排出装置6、複数のシールドジャッキ、複数の中折れジャッキなどが取り付けられた構造体であり、後述する内周側フレーム8と外周側フレーム9とを備えている。内周側フレーム8は、リングギヤ30と複数のピニオン35等の内周側に配設されている。外周側フレーム9は、リングギヤ30と複数のピニオン35等の外周側に配設されている。
【0031】
前記カッターヘッド駆動装置4は、大径のリングギヤ30と、複数(本実施例では、6組)の回転駆動装置31とを備えている。リングギヤ30は、その軸心をトンネル掘削機1の軸心と一致するように隔壁3aの後方に配設され、リングギヤ30は内周部に内歯を有し、リングギヤ30は外周側フレーム9の内面に固定されたベアリング受け部材32に3組のローラベアリング30a,30b,30cを介して回転自在に支持されている。リングギヤ30の前端にはカッターヘッド2に連結されてカッターヘッド2に回転駆動力を伝達するリング部材33が複数のボルトにより固定されている。
【0032】
前記各回転駆動装置31は、リングギヤ30の内歯に噛合したピニオン35と、出力軸部材36を含む回転駆動機37とを有する。前記ピニオン35は1対の自動調心軸受38a,38bにより内周側フレーム8に両端支持されている。即ち、ピニオン35の前端軸部35aを支持する自動調心軸受38a(前端軸受部材)は、軸受支持板8aで支持されている。ピニオン35の後端軸部35bを支持する自動調心軸受38b(後端軸受部材)は、軸受支持板8bに貫通状に装着された軸受保持部材39で支持されている。この軸受保持部材39の外径はピニオン35の外径よりも大径であり、その後端部のフランジ部39aが複数のボルト40で軸受支持板8bに固定されている。
【0033】
前記回転駆動機37は、電動モータ41(駆動モータ)と、この電動モータ41からの回転駆動力を減速する減速機42と、この減速機42の出力部42aにスプライン結合機構を介して連結された出力軸部材36とを有する。この出力軸部材36は、電動モータ41及び減速機42からなる駆動部の回転駆動力をピニオン35へ伝達するものである。
出力軸部材36は、減速機42の出力部42aから分断された単独の軸部材に構成され、この出力軸部材36の前端部分と後端部分にスプライン軸部36a,36bが夫々形成され、前端側のスプライン軸部36aがピニオン35の後部のスプライン穴35cにスプライン結合にて連結され、後端側のスプライン軸部36bが減速機42の出力部42aに形成されたスプライン穴42bにスプライン結合にて連結されている。
つまり、出力軸部材36の前端部分が、スプライン穴35cとスプライン軸部36aとからなるスプライン結合機構を介してピニオン35に分離可能に連結され、出力軸部材36の後端部分が、スプライン穴42bとスプライン軸部36bとからなるスプライン結合機構を介して出力部42aに分離可能に連結されている。
【0034】
前記出力軸部材36を含む回転駆動機37を取り外した状態において、軸受保持部材39を後方へ取り外すことにより、ピニオン35が後方へ取り外し可能に構成されている。 回転駆動機37の取り付け構造に関して、前記減速機42のケース部材42cに挿通させた複数(例えば、12本)の通しボルト43(連結部材に相当する)であって減速機42の軸心と平行な複数の通しボルト43により、回転駆動機37を内周側フレーム8の後端部と外周側フレーム9の後端部に固定している。
【0035】
図4に示すように、前記リング部材33とリングギヤ30と複数のピニオン35と内周側フレーム8と外周側フレーム9とを含む駆動力伝達ユニット45がユニット状に構成されている。この駆動力伝達ユニット45には、リングギヤ30と複数のピニオン35と複数の回転軸部材36を潤滑するオイルを収容するオイルバス46が形成されている。
【0036】
リング部材33の内周側と外周側にはグリースにて潤滑される軸受けシールが設けられ、内周側の軸受けシールの前端を塞ぐ環状閉鎖板53と外周側の軸受けシール52の前端を塞ぐ環状閉鎖板54とがリング部材33に固定されている。
【0037】
以上説明したトンネル掘削機1のカッターヘッド駆動装置4の作用、効果について説明する。トンネル掘削機1を工場において製作する際、駆動力伝達ユニット45を独立に製作するのと並行して、トンネル掘削機1のその他の部分を製作し、駆動力伝達ユニット45をユニットとして掘削機本体に組み付け、その駆動力伝達ユニット45に複数の回転駆動機37を組み付ける。このとき、まず複数の出力軸部材36を組み付け、その後減速機42及び電動モータ41を組み付ける。
【0038】
駆動力伝達ユニット45を組み付けるとき、内周側フレーム8の環状フランジ10を隔壁3aに複数のボルト55で締結すると共に外周側フレーム9の筒状体9aの前端部を隔壁3aの開口穴に嵌めて溶接することにより、容易に組み付けることができる。尚、駆動力伝達ユニット45の外周側の筒状体9aを予め隔壁3aに溶接しておき、そこに筒状体9aを除いた駆動力伝達ユニット45を組み付けるようにしてもよい。
【0039】
出力軸部材36をピニオン35に連結する際には、スプライン軸36aをピニオン35のスプライン穴35aに挿入することにより、容易に組み付けることができる。一体的な減速機42及び電動モータ41(駆動部)を組み付ける際には、減速機42のケース部材42cに挿通させた複数の通しボルト43を内周側フレーム8及び外周側フレーム9のボルト穴16a,21aに螺合することにより容易に組み付けることができる。
【0040】
しかも、減速機42のケース部材42cを固定するために取付け用フランジを形成せずに、ケース部材42cに挿通させた複数の通しボルト43により固定する構造であるから、減速機42の外形を極力小さくして、所定のサイズのリングギヤ30に対応付けて設置可能な回転駆動装置31(ピニオン35と回転駆動機37)の設置数を増すことができ、カッターヘッド駆動装置4の駆動力を強化することができる。
【0041】
ピニオン35を内周側フレーム8で直接両端支持する構造にしたため、出力軸部材36に曲げモーメントが作用しない。そのため、出力軸部材36を小径化することができるうえ、ピニオン35にクラウニングを形成する必要がない。それ故、ピニオン35や出力軸部材36の製作費を低減し、回転駆動装置31をコンパクト化できると共にその耐久性を高めることができる。回転駆動機37の出力軸部材36の前端部分をピニオン35にスプライン結合するため、駆動力伝達ユニット45から回転駆動機37を分離した状態で、複数のピニオン35を組み込んだ駆動力伝達ユニット45を組み付け、その駆動力伝達ユニット45に複数の回転駆動機37を組み付けることができるため、駆動力伝達ユニット45と回転駆動機37の組み付け作業が容易になる。
【0042】
しかも、出力軸部材36を回転駆動機37の出力部42a(減速機42の出力部)から分断された単独の軸部材に構成し、出力軸部材36の後端部分を減速機42の出力部42aにスプライン結合機構を介して連結するため、駆動力伝達ユニット45に対する減速機42及び電動モータ41の組み付け作業が簡単になる。
【0043】
しかも、回転駆動装置31の何れかの構成部品が故障した場合に、ピニオン35、出力軸部材36、減速機42及び電動モータ41を夫々単独に交換したり、修理したりすることが可能になる。しかも、使用済みのトンネル掘削機1から駆動力伝達ユニット45を取り出して別のトンネル掘削機に再利用したり、複数の回転駆動装置31のみを取り出して別のトンネル掘削機に再利用したりすることもできる。
【0044】
ピニオン35を掘削機本体側の内周側フレーム8で直接両端支持する構造にしたため、回転駆動機37のケース部材の構造が複雑化することがなく、内周側フレーム8を有効活用してピニオン35を支持できる。
しかも、内周側フレーム8と外周側フレーム9等でオイルバス46を形成し、リングギヤ30と複数のピニオン35と複数の回転軸部材36をオイルで潤滑し冷却することが可能になった。これにより、カッターヘッド駆動装置4の耐久性を高めることができる。また、軸受保持部材39を後方へ取り外し可能に構成したため、ピニオン35の交換やピニオン35の周辺のメンテナンスが容易になる。
【0045】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)カッターヘッド駆動装置4において、電動モータ41及び減速機42の代わりに、油圧モータを適用してもよい。
2)回転駆動装置31の数は6組に限定されるものではなく、リングギヤ30の径や必要な回転駆動力に応じて適宜設置数を増減してもよい。
【0046】
3)リングギヤ30に内歯を形成した例について説明したが、リングギヤ30に外歯を形成し、その外歯に複数のピニオン35を噛合させる構成にしてもよい。
4)前記実施例では、回転駆動機37を組み付けない状態で駆動力伝達ユニット45を掘削機本体に組み付ける場合を例にして説明したが、機外において駆動力伝達ユニット45に複数の回転駆動機37を予め組み付けた状態にしてから、それらを掘削機本体に組み付けることも可能である。
5)その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記実施例に種々の変更を加えて実施可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、種々のトンネル掘削機のカッターヘッド駆動装置に利用することできる。
【符号の説明】
【0048】
1 トンネル掘削機
2 カッターヘッド
3 チャンバー
3a 隔壁
4 カッターヘッド駆動装置
8 内周側フレーム
9 外周側フレーム
30 リングギヤ
30a 前端軸部
30b 後端軸部
31 回転駆動装置
36 出力軸部材
37 回転駆動機
38a 自動調心軸受(前端軸受部材)
38b 自動調心軸受(後端軸受部材)
39 軸受保持部材
41 電動モータ(駆動モータ)
42 減速機
42a 出力部
42c ケース部材
43 通しボルト
45 駆動力伝達ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6