【実施例】
【0028】
本実施例に係るトンネル掘削機1は、一般的なシールド掘削機と同様のものであり、本実施例では、主として本発明に直接関係する構成について説明する。
図1〜
図4に示すように、このトンネル掘削機1は、カッターヘッド2、カッターヘッド2の背面側のチャンバー3、このチャンバー3を仕切る隔壁3a、この隔壁3aを含む掘削機本体(図示略)、胴部材(前胴5のみ図示、後胴は図示略)、カッターヘッド2を回転駆動するためのカッターヘッド駆動装置4、複数のシールドジャッキ(図示略)、複数の中折れジャッキ(図示略)、掘削した土砂等を排出するスクリューコンベア式の排出装置6など有する。尚、スクリューコンベア式の排出装置6の代わりに泥水式の排出装置を設けてもよい。
【0029】
前記カッターヘッド2は、複数のカッタースポーク2aと、これらカッタースポーク2aに装備された複数のローラーカッター(図示略)とを有する。但し、複数のローラーカッターに代えて複数のカッタービットを設けてもよい。複数のカッタースポーク2aは、ヘッド駆動装置4のリングギヤ30に固定されたリング部材33に連結部材22を介して連結され、カッターヘッド2はカッターヘッド駆動装置4により回転駆動される。
【0030】
掘削機本体は、前胴5を含む胴部材、カッターヘッド駆動装置4、排出装置6、複数のシールドジャッキ、複数の中折れジャッキなどが取り付けられた構造体であり、後述する内周側フレーム8と外周側フレーム9とを備えている。内周側フレーム8は、リングギヤ30と複数のピニオン35等の内周側に配設されている。外周側フレーム9は、リングギヤ30と複数のピニオン35等の外周側に配設されている。
【0031】
前記カッターヘッド駆動装置4は、大径のリングギヤ30と、複数(本実施例では、6組)の回転駆動装置31とを備えている。リングギヤ30は、その軸心をトンネル掘削機1の軸心と一致するように隔壁3aの後方に配設され、リングギヤ30は内周部に内歯を有し、リングギヤ30は外周側フレーム9の内面に固定されたベアリング受け部材32に3組のローラベアリング30a,30b,30cを介して回転自在に支持されている。リングギヤ30の前端にはカッターヘッド2に連結されてカッターヘッド2に回転駆動力を伝達するリング部材33が複数のボルトにより固定されている。
【0032】
前記各回転駆動装置31は、リングギヤ30の内歯に噛合したピニオン35と、出力軸部材36を含む回転駆動機37とを有する。前記ピニオン35は1対の自動調心軸受38a,38bにより内周側フレーム8に両端支持されている。即ち、ピニオン35の前端軸部35aを支持する自動調心軸受38a(前端軸受部材)は、軸受支持板8aで支持されている。ピニオン35の後端軸部35bを支持する自動調心軸受38b(後端軸受部材)は、軸受支持板8bに貫通状に装着された軸受保持部材39で支持されている。この軸受保持部材39の外径はピニオン35の外径よりも大径であり、その後端部のフランジ部39aが複数のボルト40で軸受支持板8bに固定されている。
【0033】
前記回転駆動機37は、電動モータ41(駆動モータ)と、この電動モータ41からの回転駆動力を減速する減速機42と、この減速機42の出力部42aにスプライン結合機構を介して連結された出力軸部材36とを有する。この出力軸部材36は、電動モータ41及び減速機42からなる駆動部の回転駆動力をピニオン35へ伝達するものである。
出力軸部材36は、減速機42の出力部42aから分断された単独の軸部材に構成され、この出力軸部材36の前端部分と後端部分にスプライン軸部36a,36bが夫々形成され、前端側のスプライン軸部36aがピニオン35の後部のスプライン穴35cにスプライン結合にて連結され、後端側のスプライン軸部36bが減速機42の出力部42aに形成されたスプライン穴42bにスプライン結合にて連結されている。
つまり、出力軸部材36の前端部分が、スプライン穴35cとスプライン軸部36aとからなるスプライン結合機構を介してピニオン35に分離可能に連結され、出力軸部材36の後端部分が、スプライン穴42bとスプライン軸部36bとからなるスプライン結合機構を介して出力部42aに分離可能に連結されている。
【0034】
前記出力軸部材36を含む回転駆動機37を取り外した状態において、軸受保持部材39を後方へ取り外すことにより、ピニオン35が後方へ取り外し可能に構成されている。 回転駆動機37の取り付け構造に関して、前記減速機42のケース部材42cに挿通させた複数(例えば、12本)の通しボルト43(連結部材に相当する)であって減速機42の軸心と平行な複数の通しボルト43により、回転駆動機37を内周側フレーム8の後端部と外周側フレーム9の後端部に固定している。
【0035】
図4に示すように、前記リング部材33とリングギヤ30と複数のピニオン35と内周側フレーム8と外周側フレーム9とを含む駆動力伝達ユニット45がユニット状に構成されている。この駆動力伝達ユニット45には、リングギヤ30と複数のピニオン35と複数の回転軸部材36を潤滑するオイルを収容するオイルバス46が形成されている。
【0036】
リング部材33の内周側と外周側にはグリースにて潤滑される軸受けシールが設けられ、内周側の軸受けシールの前端を塞ぐ環状閉鎖板53と外周側の軸受けシール52の前端を塞ぐ環状閉鎖板54とがリング部材33に固定されている。
【0037】
以上説明したトンネル掘削機1のカッターヘッド駆動装置4の作用、効果について説明する。トンネル掘削機1を工場において製作する際、駆動力伝達ユニット45を独立に製作するのと並行して、トンネル掘削機1のその他の部分を製作し、駆動力伝達ユニット45をユニットとして掘削機本体に組み付け、その駆動力伝達ユニット45に複数の回転駆動機37を組み付ける。このとき、まず複数の出力軸部材36を組み付け、その後減速機42及び電動モータ41を組み付ける。
【0038】
駆動力伝達ユニット45を組み付けるとき、内周側フレーム8の環状フランジ10を隔壁3aに複数のボルト55で締結すると共に外周側フレーム9の筒状体9aの前端部を隔壁3aの開口穴に嵌めて溶接することにより、容易に組み付けることができる。尚、駆動力伝達ユニット45の外周側の筒状体9aを予め隔壁3aに溶接しておき、そこに筒状体9aを除いた駆動力伝達ユニット45を組み付けるようにしてもよい。
【0039】
出力軸部材36をピニオン35に連結する際には、スプライン軸36aをピニオン35のスプライン穴35aに挿入することにより、容易に組み付けることができる。一体的な減速機42及び電動モータ41(駆動部)を組み付ける際には、減速機42のケース部材42cに挿通させた複数の通しボルト43を内周側フレーム8及び外周側フレーム9のボルト穴16a,21aに螺合することにより容易に組み付けることができる。
【0040】
しかも、減速機42のケース部材42cを固定するために取付け用フランジを形成せずに、ケース部材42cに挿通させた複数の通しボルト43により固定する構造であるから、減速機42の外形を極力小さくして、所定のサイズのリングギヤ30に対応付けて設置可能な回転駆動装置31(ピニオン35と回転駆動機37)の設置数を増すことができ、カッターヘッド駆動装置4の駆動力を強化することができる。
【0041】
ピニオン35を内周側フレーム8で直接両端支持する構造にしたため、出力軸部材36に曲げモーメントが作用しない。そのため、出力軸部材36を小径化することができるうえ、ピニオン35にクラウニングを形成する必要がない。それ故、ピニオン35や出力軸部材36の製作費を低減し、回転駆動装置31をコンパクト化できると共にその耐久性を高めることができる。回転駆動機37の出力軸部材36の前端部分をピニオン35にスプライン結合するため、駆動力伝達ユニット45から回転駆動機37を分離した状態で、複数のピニオン35を組み込んだ駆動力伝達ユニット45を組み付け、その駆動力伝達ユニット45に複数の回転駆動機37を組み付けることができるため、駆動力伝達ユニット45と回転駆動機37の組み付け作業が容易になる。
【0042】
しかも、出力軸部材36を回転駆動機37の出力部42a(減速機42の出力部)から分断された単独の軸部材に構成し、出力軸部材36の後端部分を減速機42の出力部42aにスプライン結合機構を介して連結するため、駆動力伝達ユニット45に対する減速機42及び電動モータ41の組み付け作業が簡単になる。
【0043】
しかも、回転駆動装置31の何れかの構成部品が故障した場合に、ピニオン35、出力軸部材36、減速機42及び電動モータ41を夫々単独に交換したり、修理したりすることが可能になる。しかも、使用済みのトンネル掘削機1から駆動力伝達ユニット45を取り出して別のトンネル掘削機に再利用したり、複数の回転駆動装置31のみを取り出して別のトンネル掘削機に再利用したりすることもできる。
【0044】
ピニオン35を掘削機本体側の内周側フレーム8で直接両端支持する構造にしたため、回転駆動機37のケース部材の構造が複雑化することがなく、内周側フレーム8を有効活用してピニオン35を支持できる。
しかも、内周側フレーム8と外周側フレーム9等でオイルバス46を形成し、リングギヤ30と複数のピニオン35と複数の回転軸部材36をオイルで潤滑し冷却することが可能になった。これにより、カッターヘッド駆動装置4の耐久性を高めることができる。また、軸受保持部材39を後方へ取り外し可能に構成したため、ピニオン35の交換やピニオン35の周辺のメンテナンスが容易になる。
【0045】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)カッターヘッド駆動装置4において、電動モータ41及び減速機42の代わりに、油圧モータを適用してもよい。
2)回転駆動装置31の数は6組に限定されるものではなく、リングギヤ30の径や必要な回転駆動力に応じて適宜設置数を増減してもよい。
【0046】
3)リングギヤ30に内歯を形成した例について説明したが、リングギヤ30に外歯を形成し、その外歯に複数のピニオン35を噛合させる構成にしてもよい。
4)前記実施例では、回転駆動機37を組み付けない状態で駆動力伝達ユニット45を掘削機本体に組み付ける場合を例にして説明したが、機外において駆動力伝達ユニット45に複数の回転駆動機37を予め組み付けた状態にしてから、それらを掘削機本体に組み付けることも可能である。
5)その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記実施例に種々の変更を加えて実施可能であることは勿論である。