(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流入口から内部に流入したガスをスクリュロータによって圧縮して吐出口から吐出させるスクリュ圧縮機と、流量調整弁を有し且つ前記吐出口から吐出されたガスを前記流入口に戻すバイパス流路部とを備えた圧縮装置を制御する方法であって、
前記スクリュ圧縮機からのガスの吐出圧力が、当該圧縮装置の下流側に接続された利用プロセスが要求する圧力である目標圧力となるように前記流量調整弁の開度を調整する圧力調整工程と、
前記スクリュ圧縮機の内部でスライドしてその位置を変えることによりその開度を変更すると共に当該圧縮機の圧縮容量を変更するスライド弁を、所定の目標位置を目指してスライドさせるスライド工程と、
前記目標位置と前記スライド工程におけるスライド後のスライド弁の位置との差分を求める差分検出工程と、
前記差分に応じて前記流量調整弁の開度を調整する変動抑制工程と、を備え、
前記圧力調整工程において前記流量調整弁の開度が予め定められた所定の範囲から外れたときに、前記スライド工程、前記差分検出工程、及び前記変動抑制工程、が行われ、
前記変動抑制工程では、前記スライド弁が前記目標位置よりも手前の位置に到達したときに前記吐出圧力が前記目標圧力未満で且つ前記吐出圧力が低下したか否かの判断を開始し、前記スライド工程及び前記差分検出工程後において前記吐出圧力が前記目標圧力未満で且つ前記吐出圧力が低下したと判断したときに前記差分に応じて前記流量調整弁の開度を小さくする圧縮装置の制御方法。
前記圧力調整工程において前記流量調整弁の開度が予め定められた所定の範囲から外れ且つ前記スライド弁の開度が80%以上且つ100%未満のときに、前記スライド工程、前記差分工程、及び前記変動抑制工程が行われる請求項1又は2に記載の圧縮装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記圧縮装置において、スライド弁の開度が調整されると、スクリュ圧縮機からのガスの吐出流量が目標としていた流量よりも大きく減少(又は増加)する場合がある。この場合、前記圧縮装置のように、前記吐出流量の大きな減少(又は増加)を圧力計により吐出圧力の大きな低下(又は上昇)として検出した後に、流量調整弁の開度を小さくし若しくは閉じる(又は、大きくし若しくは全開にする)ことにより、スクリュ圧縮機の吐出圧力を目標圧力まで戻す方法では、圧縮装置から利用プロセスに供給されるガスの圧力が一時的に大きく変動する。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、スクリュ圧縮機を備えた圧縮装置であって、下流側の利用プロセスに供給されるガスの圧力変動を抑えることができる圧縮装置の制御方法及び圧縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消すべく、本発明は、流入口から内部に流入したガスをスクリュロータによって圧縮して吐出口から吐出させるスクリュ圧縮機と、流量調整弁を有し且つ前記吐出口から吐出されたガスを前記流入口に戻すバイパス流路部とを備えた圧縮装置を制御する方法であって、前記スクリュ圧縮機からのガスの吐出圧力が、当該圧縮装置の下流側に接続された利用プロセスが要求する圧力である目標圧力となるように前記流量調整弁の開度を調整する圧力調整工程と、前記スクリュ圧縮機の内部でスライドしてその位置を変えることによりその開度を変更すると共に当該圧縮機の圧縮容量を変更するスライド弁を、所定の目標位置を目指してスライドさせるスライド工程と、前記目標位置と前記スライド工程におけるスライド後のスライド弁の位置との差分を求める差分検出工程と、前記差分に応じて前記流量調整弁の開度を調整する変動抑制工程と、を備える。そして、前記圧力調整工程において前記流量調整弁の開度が予め定められた所定の範囲から外れたときに、前記スライド工程、前記差分検出工程、及び前記変動抑制工程、が行われる。
【0010】
また、本発明は、圧縮したガスを下流側に接続された利用プロセスに供給可能な圧縮装置であって、流入口から内部に流入した前記ガスをスクリュロータによって圧縮して吐出口から吐出させるスクリュ圧縮機と、流量調整弁を有し、且つ前記吐出口から吐出されたガスを前記流入口に戻すバイパス流路部と、前記吐出口から吐出されたガスの圧力である吐出圧力を測定する圧力測定部と、前記利用プロセスに供給されるガスの圧力を制御する制御部と、を備える。そして、前記スクリュ圧縮機は、当該スクリュ圧縮機の内部でスライドしてその位置を変えることによりその開度を変更すると共に当該圧縮機の圧縮容量を変更するスライド弁を有し、前記制御部は、前記吐出圧力が前記利用プロセスが要求する圧力である目標圧力となるように、前記圧力測定部による測定結果に基づいて前記流量調整弁の開度を調整する圧力調整部と、前記スライド弁を、所定の目標位置を目指してスライドさせるスライド弁制御部と、前記スライド弁制御部によるスライド後のスライド弁の位置と前記目標位置との差分を求める差分検出部と、前記差分検出部によって求められた差分に応じて前記流量調整弁の開度を調整する変動抑制制御部と、を有し、前記圧力調整部による調整によって前記流量調整弁の開度が予め定められた所定の範囲から外れたときに、前記スライド弁制御部、前記差分検出部、及び前記変動抑制部、を作動させる。
【0011】
これらの発明によれば、流量調整弁によって吐出圧力が所定の範囲内から外れたときにスライド弁を用いた吐出圧力の制御が行われることにより、ハンチング(流量調整弁の開度動作の遅れに起因して吐出圧力が上下に波打つ現象)を防止することができる。
【0012】
しかも、スライド弁をスライドさせたときに目標位置からずれても、目標位置と実際のスライド弁の位置との差分を求めてこの差分に応じた流量調整弁の開度調整が行われるため、前記スライド弁の目標位置からのずれに起因するスクリュ圧縮機の吐出圧力(吐出流量)の変動幅を効果的に抑えることができる。即ち、スライド弁の目標位置からのずれを検出してこのずれに起因するスクリュ圧縮機の吐出圧力(又は吐出流量)の変動を抑制するように流量調整弁の開度が調整されることによって前記吐出圧力(吐出流量)が大きく変動する前に目標とする吐出圧力(利用プロセスが要求する圧力等)まで戻され、これにより、従来のような吐出圧力(吐出流量)の大きな変動が生じた後にこの圧力(流量)変動を検出して当該圧力(流量)変動を抑制するように流量調整弁の開度が調整される場合に比べ、吐出圧力(吐出流量)の変動幅を効果的に抑えることができる。
【0013】
尚、前記圧縮装置の下流側に接続された利用プロセスは、例えば、ガスタービンであってもよい。
【0014】
また、前記圧縮装置の制御方法において、前記圧力調整工程において前記流量調整弁の開度が予め定められた所定の範囲から外れ且つ前記スライド弁の開度が80%以上且つ100%未満のときに、前記スライド工程、前記差分工程、及び前記変動抑制工程が行われてもよい。
【0015】
スライド弁の開度が80%以上且つ100%未満のときに当該スライド弁の開度の変更に伴うスクリュ圧縮機の吐出流量(吐出圧力)の変動が大きいため、スライド弁の開度が前記80%以上且つ100%未満のときに、スライド工程、差分工程、及び変動抑制工程が行われることにより、スクリュ圧縮機の吐出圧力(吐出流量)の変動がより効果的に抑えられる。
【0016】
具体的には、前記スライド工程において、前記スライド弁を閉じる方向にスライドさせた後、前記吐出圧力が前記目標圧力未満で且つ前記吐出圧力の低下時に、時間の経過に伴って吐出圧力が低下し続けて目標圧力からより離れる(
図3(A)参照)ため、このような場合に、前記差分検出工程及び前記変動抑制工程を行い、これにより、前記差分に起因する吐出圧力(吐出流量)の大きな低下を抑えて吐出圧力(吐出流量)の低下の幅を抑える。
【0017】
一方、前記スライド工程において、前記スライド弁を開く方向にスライドさせた後、前記吐出圧力が前記目標圧力より大きく且つ前記吐出圧力の上昇時に、時間の経過に伴って吐出圧力が上昇し続けて目標圧力からより離れる(
図3(B)参照)ため、このような場合に、前記差分検出工程及び前記変動抑制工程を行い、これにより、前記差分に起因する吐出圧力(吐出流量)の大きな上昇を抑えて吐出圧力(吐出流量)の上昇の幅を抑える。
【0018】
以上より、スクリュ圧縮機の吐出圧力(吐出流量)における変動の幅が効果的に抑えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、下流側の利用プロセスに供給されるガスの圧力変動を抑えることができる圧縮装置の制御方法及び圧縮装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、利用プロセスに接続された状態の本実施形態に係る圧縮装置の全体構成を示す図であり、
図2は、圧縮装置の制御部の機能ブロック図である。
【0022】
本実施形態の圧縮装置10は、供給されたガスを圧縮し、当該圧縮装置10の下流側に接続された利用プロセス100に所定の圧力(目標圧力)のガスを供給する。本実施形態の圧縮装置10には、利用プロセス100として、例えば、ガスタービンが接続されている。そして、圧縮装置10は、ガスタービン100が要求する圧力(目標圧力)のガスを供給する。
【0023】
圧縮装置10は、スクリュ圧縮機20と、バイパス流路部11と、圧力センサ(圧力測定部)14と、制御部30と、を備える。
【0024】
スクリュ圧縮機20は、ロータ室21と、スクリュロータ(図示省略)と、ロータ駆動部(図示省略)と、スライド弁22と、スライド弁駆動部23と、を有する。本実施形態のスクリュ圧縮機20は、流入管15を通じてガスが供給され、所定の圧力まで圧縮したガスを、排出管16を通じてガスタービン100に供給する。
【0025】
ロータ室21は、その内部にガスが流入する流入口21aと、内部のガスを吐出させる吐出口21bとを有し、内部にスクリュロータが配置される。流入口21aには流入管15が接続され、吐出口21bには排出管16が接続されている。
【0026】
図略のスクリュロータは、ロータ室21内に配置された状態で図略のロータ駆動部によって回転駆動されることにより、ロータ室21内に流入口21aから流入したガスを圧縮して吐出口21bから吐出させる。
【0027】
スライド弁22は、ロータ室21に設けられ、スライドしてその位置を変えることにより吐出口21bの開度を変更すると共にスクリュ圧縮機20の圧縮容量を変更する。
【0028】
スライド弁駆動部23は、スライド弁22をスライドさせる駆動部24と、スライド弁22の位置を検出する位置検出器25と、を有する。駆動部24は、制御部30に接続され、制御部30からの指示信号に従ってスライド弁22をスライド(移動)させる。この駆動部24は、例えば、油圧シリンダを有し、この油圧シリンダによってスライド弁22をスライドさせる。また、位置検出器25は、制御部30に接続され、検出したスライド弁22の位置に応じた位置信号を制御部30に出力する。この位置検出器25は、油圧シリンダに取り付けられている。
【0029】
バイパス流路部11は、バイパス管12と、スピルバック弁(流量調整弁)13と、を有し、吐出口21bから吐出されたガスを流入口21aに戻す。
【0030】
バイパス管12は、一方の端部12aが流入管15に接続されると共に他方の端部12bが排出管16に接続され、排出管16を流れるガス(スクリュ圧縮機20によって圧縮された後のガス)の一部を流入管15に戻すバイパス流路を形成する。
【0031】
スピルバック弁13は、バイパス管12に設けられ、その開度を変更することによりバイパス管12を流れるガスの流量を調整する。このスピルバック弁13は、制御部30に接続され、制御部30からの開度信号に応じてその開度を変更する。
【0032】
圧力センサ14は、スクリュ圧縮機20から吐出されるガスの圧力(吐出圧力)を測定して測定結果に応じた圧力信号を制御部30に出力する。本実施形態の圧力センサ14は、吐出口21bより下流側で且つ排出管16におけるバイパス管12の他方の端部12bが接続された部位よりも上流側の部位に設けられている。尚、本実施形態の吐出圧力は、例えば、吐出口21bの位置のガスの圧力でもよい。
【0033】
制御部30は、圧縮装置10の全体制御を行い、例えば、マイクロプロセッサやメモリ等を備えるマイクロコンピュータを有する。そして、制御部30は、メモリ等に格納されている、例えば、圧縮装置10の下流側に接続された利用プロセス(本実施形態ではガスタービン)100に供給されるガスの圧力変動を抑えるための圧力変動抑制プログラムを実行することにより、機能的に、圧力調整部32と、スライド弁制御部34と、差分検出部36と、変動抑制制御部38と、を備える。
【0034】
圧力調整部32は、スクリュ圧縮機20の吐出圧力が設定された目標圧力となるようにスピルバック弁13の開度調整を行なう。本実施形態の目標圧力は、ガスタービン(圧縮装置10の下流側に接続された利用プロセス)100で必要な圧力である。
【0035】
詳しくは、圧力調整部32は、圧力センサ14からの圧力信号に基づいてスピルバック弁13に開度信号を出力することにより吐出圧力を調整する。具体的に、圧力調整部32は、圧力センサ14によって測定された吐出圧力が目標圧力よりも低いときに、スピルバック弁13の開度を小さくする。これにより、スクリュ圧縮機20の排出管16(吐出口21b側)からバイパス管12を通じて流入管15(流入口21a側)に戻されるガスの流量が減少して排出管16を流れるガスの流量が増加し、その結果、圧力が上昇する。一方、圧力調整部32は、圧力センサ14によって測定された吐出圧力が目標圧力よりも高いときに、スピルバック弁13の開度を大きくする。これにより、スクリュ圧縮機20の排出管16(吐出口21b側)からバイパス管12を通じて流入管15(流入口21a側)に戻されるガスの流量が増加して排出管16を流れるガスの流量が減少し、その結果、圧力が低下する。
【0036】
また、圧力調整部32は、変更後のスピルバック弁13の開度が予め定められた所定の範囲(GAP幅)から外れると、スライド弁制御部34に信号を出力する。本実施形態において、GAP幅(所定の範囲)は、スピルバック弁13の開度が85%以上且つ95%以下の範囲である。尚、このGAP幅は、スピルバック弁13の開度が85%以上且つ95%以下の範囲に限定されず、圧縮装置10の仕様等によって適宜変更される。
【0037】
スライド弁制御部34は、スピルバック弁13の開度がGAP幅から外れたとき(即ち、圧力調整部32からの信号を受信したとき)、スライド弁22をスライドさせてスクリュ圧縮機20からのガスの吐出流量を調整する。
【0038】
具体的に、スライド弁制御部34は、スピルバック弁13の開度がGAP幅の上限(本実施形態では95%)を上回ると、スライド弁駆動部23(詳しくは、駆動部24)に指示信号を出力し、スライド弁22をアンロード側(吐出口21bを閉じる方向、又は開度を小さくする方向)にスライド(移動)させてスクリュ圧縮機20の圧縮容量を小さくし、これにより、スクリュ圧縮機20の吐出流量を減少させる。このとき、スライド弁制御部34は、アンロード側に目標位置を設定し、スライド弁22を目標位置を目指してスライドさせる。尚、このときのスライド弁22をスライドさせる幅(距離)を、以下では、アンロード幅と称することもある。
【0039】
スライド弁22をアンロード側にスライドさせるときの目標位置は、スピルバック弁13の開度がGAP幅の上限を上回った時点でのスライド弁22の開度から所定の開度(本実施形態では1%以上且つ3%以下の範囲内における予め定められた所定の開度)だけ小さくなる位置である。尚、移動(スライド)前の位置から目標位置までの距離(アンロード幅)は、前記1%以上且つ3%以下に限定されず、圧縮装置10の仕様等によって適宜設定される。
【0040】
一方、スライド弁制御部34は、スピルバック弁13の開度がGAP幅の下限(本実施形態では85%)を下回ると、スライド弁駆動部23(詳しくは、駆動部24)に指示信号を出力し、スライド弁22をロード側(吐出口21bを開く方向、又は開度を大きくする方向)にスライド(移動)させてスクリュ圧縮機20の圧縮容量を大きくし、これにより、スクリュ圧縮機20の吐出流量を増加させる。このとき、スライド弁制御部34は、スライド弁22をロード側の目標位置を目指してスライドさせる。尚、このときのスライド弁22をスライドさせる幅(距離)を、以下では、ロード幅と称することもある。
【0041】
スライド弁22をロード側にスライドさせるときの目標位置は、スピルバック弁13の開度がGAP幅の上限を下回った時点でのスライド弁22の開度から所定の開度(本実施形態では1%以上且つ3%以下の範囲内の所定の開度)だけ大きくなる位置である。尚、移動(スライド)前の位置から目標位置までの距離(ロード幅)は、前記1%以上且つ3%以下に限定されず、圧縮装置10の仕様等によって適宜設定される。
【0042】
スライド弁制御部34は、上記のようにスライド弁22をスライドさせるときに、位置検出器25からの位置信号によってスライド弁22の位置を適宜確認しつつスライド弁22をスライドさせる。詳しくは、スライド弁制御部34は、スライド弁22をスライドさせるときに、スライドさせた後のスライド弁22が目標位置に達していない場合には、さらに、スライド弁駆動部23に指示信号を出力し、スライド弁22を目標位置側にスライドさせる。これを繰り返すことにより、スライド弁制御部34は、スライド弁22が目標位置に到達、又は目標位置を越える(アンロード側にスライドさせる場合には目標位置を下回る/ロード側にスライドさせる場合には目標位置を上回る)までスライド弁22をスライドさせる。尚、このスライド弁22が目標位置を越える原因は、スライド弁駆動部23の機械誤差による。
【0043】
差分検出部36は、位置検出器25からの位置信号とスライド弁制御部34が設定した目標位置とに基づいて、スライド後のスライド弁22の位置と目標位置との差分を求める。具体的には、スライド弁22がアンロード側にスライドする場合は、差分検出部36は、スライド弁22が目標位置を下回った(目標位置より開度が小さくなった)ときに、スライド弁22の位置と目標位置との差分を求める。また、スライド弁22がロード側にスライドする場合は、差分検出部36は、スライド弁22が目標位置を上回った(目標位置より開度が大きくなった)ときに、スライド弁22の位置と目標位置との差分を求める。
【0044】
変動抑制制御部38は、スライド弁制御部34によるスライド弁22のスライド後に吐出圧力が目標圧力から離れていくと判断した場合に、圧力調整部32に優先してスピルバック弁13の開度を調整する一方、スライド弁制御部34によるスライド弁22のスライド後に吐出圧力が目標圧力から離れていかないと判断した場合は、スピルバック弁13の開度調整を行なわない。この変動抑制制御部38は、差分検出部36によって求められた差分に応じてスピルバック弁13の開度を調整する。本実施形態の変動抑制制御部38は、スライド弁22をロード側にスライドさせたときに差分が検出される(求められる)と、スピルバック弁13の開度を3%小さくし、スライド弁22をアンロード側にスライドさせたときに差分が検出される(求められる)と、スピルバック弁13の開度を3%大きくする。尚、変動抑制制御部38によって変更されるスピルバック弁13の開度の幅は、3%(一定値)に限定されない。変動抑制制御部38は、差分に起因するスクリュ圧縮機20の吐出流量(吐出圧力)の変化と対応するようにスピルバック弁13の開度を調整してもよい。
【0045】
具体的には、スライド弁22をアンロード側にスライドさせたときに、変動抑制制御部38は、スライド弁22のスライド後において、圧力センサ14によって測定した吐出圧力が目標圧力を下回り且つ吐出圧力の低下時に、スピルバック弁13に開度信号を出力しその開度を小さくする。
【0046】
このように、スライド弁22をアンロード側にスライドさせた後に、吐出圧力が目標圧力未満で且つ吐出圧力が低下している場合に、
図3(A)に示すように時間の経過に伴って吐出圧力が低下し続けて目標圧力から離れていくことが予測できる。このため、本実施形態の圧縮装置10(変動抑制制御部38)は、このような場合(吐出圧力が目標圧力未満で且つ吐出圧力の低下時)に、吐出圧力が大きく低下する前にスピルバック弁13の開度を小さくして排出管16を流れるガスの流量を増加させることによって前記差分に起因する吐出圧力(吐出流量)の大きな低下を抑制して吐出圧力の低下の幅を抑え、吐出圧力を目標圧力まで上昇させる。尚、変動抑制制御部38における吐出圧力が低下しているか否かの判断は、例えば、時間の経過に伴う吐出圧力の変化又は変化率がマイナスか否かによって行なわれている。即ち、変動抑制制御部38は、吐出圧力の変化又は変化率がマイナスのときに、吐出圧力が低下していると判断する。
【0047】
本実施形態の変動抑制制御部38は、スライド弁22のスライド後、圧力センサ14によって測定した吐出圧力が目標圧力を下回り且つ吐出圧力の低下時に、スピルバック弁13の開度を3%小さくする。尚、この開度の変更幅は、限定されない。この開度の変更幅は、吐出圧力とスライド弁22の位置とに基づいて適宜設定される。
【0048】
一方、スライド弁22をロード側にスライドさせたときに、変動抑制制御部38は、スライド弁22のスライド後に、圧力センサ14によって測定した吐出圧力が目標圧力を上回り且つ吐出圧力の上昇時に、スピルバック弁13に開度信号を出力してその開度を大きくする。
【0049】
このように、スライド弁22をロード側にスライドさせた後に、吐出圧力が目標圧力より大きく且つ吐出圧力が上昇している場合に、
図3(B)に示すように時間の経過に伴って吐出圧力が上昇し続けて目標圧力から離れていくことが予測できる。このため、本実施形態の圧縮装置10(変動抑制制御部38)は、このような場合(吐出圧力が目標圧力より大きく且つ吐出圧力の上昇時)に、吐出圧力が大きく上昇する前にスピルバック弁13の開度を大きくして排出管16を流れるガスの流量を低下させることによって前記差分に起因する吐出圧力の大きな上昇を抑制して吐出圧力の上昇の幅を抑え、吐出圧力を目標圧力まで低下させる。尚、変動抑制制御部38における吐出圧力が上昇しているか否かの判断は、例えば、時間の経過に伴う吐出圧力の変化又は変化率がプラスか否かによって行なわれている。即ち、変動抑制制御部38は、吐出圧力の変化又は変化率がプラスのときに、吐出圧力が上昇していると判断する。
【0050】
本実施形態の変動抑制制御部38は、スライド弁22のスライド後、圧力センサ14によって測定した吐出圧力が目標圧力を上回り且つ吐出圧力の上昇時に、スピルバック弁13の開度を3%大きくする。尚、この開度の変更幅は、限定されない。この開度の変更幅は、吐出圧力とスライド弁22の位置とに基づいて適宜設定される。
【0051】
上記のスライド弁制御部34におけるスライド弁22が目標位置を越えたか否かの判断、及び、変動抑制制御部38における吐出圧力が目標圧力を下回り且つ吐出圧力の変化率がマイナスか否かの判断(又は、吐出圧力が目標圧力を上回り且つ吐出圧力の変化率がプラスか否かの判断)は、スライド弁22が目標位置に到達してから開始されると判断が間に合わない。このため、スライド弁制御部34及び変動抑制制御部38は、スライド弁22が目標位置よりも手前の位置(本実施例では開度で0.6%手前の位置:
図4(A)及び
図4(B)の判断開始位置を参照)に到達したときに、上記の判断(上記の判断に必要な吐出圧力の測定やスライド弁の位置の検出等を含む)をそれぞれ開始する。この判断が開始される位置(判断開始位置)は、スライド方向において目標位置よりも開度で0.6%手前の位置に限定されない。本実施形態では、スライド弁22のロード幅又はアンロード幅が1%以上且つ3%以下であるため、目標位置から前記判断開始位置までの距離がスライド弁22の開度で0.5%以上且つ1.5%以下が好ましいが、これに限定されず、圧縮装置10の仕様等によって適宜変更されてもよい。
【0052】
以下では、上記の圧縮装置10がその下流側に接続されたガスタービン100に圧縮したガスを供給する際のガスの圧力制御を説明するが、先ず、スクリュ圧縮機20の吐出圧力が目標圧力よりも大きくなった場合について、
図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
圧力調整部32が、スピルバック弁13の開度を大きくして排出管16から流入管15に戻るガスの流量を大きくする。このとき、圧力調整部32は、スピルバック弁13の開度がGAP幅の上限を上回ったと判断すると(ステップS1:Yes)、スライド弁制御部34に信号を出力する。尚、スピルバック弁13の開度がGPA幅内であれば(ステップS1:No)、圧力調整部32は、圧力センサ14の測定結果に基づいてスピルバック弁13の開度を調整しつつこの開度がGAP幅の上限を上回るか否かの判断を繰り返す。
【0054】
続いて、スライド弁制御部34は、アンロード側に目標位置を設定し、この目標位置を目指してスライド弁22をスライドさせる(即ち、スライド弁22をアンロード側にスライドさせる)。スライド弁制御部34は、スライド弁22が目標位置に到達し又は目標位置を下回ったと判断すると(ステップS2:Yes)、差分検出部36が目標位置とスライド弁22の位置との差分を求める。変動抑制制御部38は、前記差分が検出されると(ステップS3:Yes)、吐出圧力と目標圧力とを比較し、吐出圧力が目標圧力を下回ったと判断すると(ステップS4:Yes)、吐出圧力の変化率を求める。そして、吐出圧力の変化率がマイナス(0未満)であれば(ステップS5:Yes)、変動抑制制御部38は、スピルバック弁13の開度を3%小さくする(ステップS6)。これにより、当該圧縮装置10では、スライド弁22が目標位置を下回ることに起因するスクリュ圧縮機20の吐出圧力(吐出流量)の大きな低下(目標とした圧力の低下よりも大きな低下)が生じる前にスピルバック弁13の開度を小さくして排出管16を流れるガスの流量を増加させることによって前記大きな吐出圧力の低下を抑制して吐出圧力の低下の幅を抑えることができる。
【0055】
尚、スライド弁制御部34は、ステップS2において、スライド弁22が目標位置に到達していないと判断すると(ステップS2:No)、所定の時間をおいて、再度、ステップS2の判断を行ない、スライド弁22が目標位置に到達し又は目標位置を下回るまでこの判断を繰り返す。また、ステップS4において吐出圧力が目標値以上であると判断した場合(ステップS4:No)、及び、ステップS5において吐出圧力の変化率が0以上であると判断した場合(ステップS5:No)は、ステップS1に戻る。また、ステップS4とステップS5とは、順序が逆に行なわれてもよく、また、並行して行なわれてもよい。
【0056】
次に、スクリュ圧縮機20の吐出圧力が目標圧力よりも小さくなった場合について、
図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0057】
圧力調整部32が、スピルバック弁13の開度を小さくして排出管16から流入管15に戻るガスの流量を小さくする。このとき、圧力調整部32は、スピルバック弁13の開度がGAP幅の下限を下回ったと判断すると(ステップS11:Yes)、スライド弁制御部34に信号を出力する。尚、スピルバック弁13の開度がGPA幅内であれば(ステップS11:No)、圧力調整部32は、圧力センサ14の測定結果に基づいてスピルバック弁13の開度を調整しつつこの開度がGAP幅の下限を下回るか否かの判断を繰り返す。
【0058】
続いて、スライド弁制御部34は、ロード側に目標位置を設定し、この目標位置を目指してスライド弁22をスライドさせる(即ち、スライド弁22をロード側にスライドさせる)。スライド弁制御部34は、スライド弁22が目標位置に到達し又は目標位置を上回ったと判断すると(ステップS12:Yes)、差分検出部が目標位置とスライド弁22の位置との差分を求める。変動抑制制御部38は、前記差分が検出されると(ステップS13:Yes)、吐出圧力と目標圧力とを比較し、吐出圧力が目標圧力を上回ったと判断すると(ステップS14:Yes)、吐出圧力の変化率を求める。そして、吐出圧力の変化率がプラス(0より大きい)であれば(ステップS15:Yes)、変動抑制制御部38は、スピルバック弁13の開度を3%大きくする(ステップS16)。これにより、当該圧縮装置10では、スライド弁22が目標位置を上回ることに起因するスクリュ圧縮機20の吐出圧力(吐出流量)の大きな上昇(目標とした圧力の上昇よりも大きな上昇)が生じる前にスピルバック弁13の開度を大きくして排出管16を流れるガスの流量を減少させることによって前記大きな吐出圧力の上昇を抑制して吐出圧力の上昇の幅を抑えることができる。
【0059】
尚、スライド弁制御部34は、ステップS12において、スライド弁22が目標位置に到達していないと判断すると(ステップS12:No)、所定の時間をおいて、再度、ステップS12の判断を行ない、スライド弁22が目標位置に到達し又は目標位置を上回るまでこの判断を繰り返す。また、ステップS14において吐出圧力が目標値以下であると判断した場合(ステップS14:No)、及び、ステップS15において吐出圧力の変化率が0以下であると判断した場合(ステップS15:No)は、ステップS11に戻る。また、ステップS14とステップS15とは、順序が逆に行なわれてもよく、また、並行して行なわれてもよい。
【0060】
以上の圧縮装置10によれば、スライド弁22をスライドさせたときに目標位置からずれても、目標位置と実際のスライド弁22の位置との差分を求めてこの差分に応じたスピルバック弁13の開度調整が行われるため、スライド弁22の目標位置からのずれに起因するスクリュ圧縮機20の吐出圧力の圧力変動幅を効果的に抑えることができる。
【0061】
即ち、スライド弁22の目標位置からのずれを検出してこのずれに起因するスクリュ圧縮機20の吐出圧力(吐出流量)の変動を抑制するようにスピルバック弁13の開度が調整されることによって前記吐出圧力が大きく変動する前に元の吐出圧力(目標圧力)まで戻され、これにより、従来のような吐出圧力の大きな変動が検出された後に、当該圧力変動を抑えるように流量調整弁の開度が調整される場合に比べ、吐出圧力の変動幅を効果的に抑えることができる。
【0062】
このため、ガスタービン100等の負荷装置の圧縮ガスの供給源として本実施形態の圧縮装置10を用いることにより、負荷装置(利用プロセス)の安定且つ最大効率での運転が可能になる。
【0063】
また、本実施形態の圧縮装置10では、通常(スピルバック弁13の開度がGAP幅内の場合)、スピルバック弁13によるスクリュ圧縮機20の吐出圧力の制御が行われ、この制御においてスピルバック弁13の開度がGAP幅から外れたときにスライド弁22も用いた吐出圧力の制御が行われるように構成される。このため、当該圧縮装置10では、スライド弁22の開度調整の頻度を抑えることができる。これにより、圧縮容量を変更可能にスクリュ圧縮機20に設けられているため、一般に、バイパス管12に設けられたスピルバック弁13に比べて交換等のメンテナンスが困難なスライド弁22の磨耗等を抑え、スライド弁22のメンテナンスの頻度を抑えることができる。
【0064】
尚、本発明の圧縮装置の制御方法及び圧縮装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0065】
上記実施形態の圧縮装置10では、吐出圧力と排出管16を流れるガスの流量とが比例関係にあるため、圧力センサ14によってスクリュ圧縮機20の吐出流量の変動を圧力変動として測定し、この圧力に基づくスライド弁22及びスピルバック弁13の制御が行われているが、この構成に限定されない。圧縮装置は、圧力センサ14の代わりに流量センサが設けられ、スクリュ圧縮機20から吐出されるガスの流量が直接測定され、この流量に基づいてスライド弁22及びスピルバック弁13の制御が行われてもよい。
【0066】
上記実施形態の圧縮装置10では、スライド弁の開度に関係なく、スピルバック弁の開度がGAP幅から外れたときにスライド弁の開度が調整されるが、この構成に限定されない。例えば、圧縮装置は、スピルバック弁13の開度がGAP幅から外れ且つスライド弁22の開度が80%以上且つ100%未満のときに、スライド弁22の開度調整、及びスライド弁の位置と目標位置との差分に応じたスピルバック弁13の開度調整が行われる構成でもよい。
【0067】
これは、
図7に示すように、スライド弁22の開度とスクリュ圧縮機20の吐出流量との関係が比例関係になく、スライド弁22の開度が大きくなるほど吐出流量の変化が大きくなるため、この吐出流量の変化の大きな領域においてスライド弁22の開度調整と、前記差分に応じたスピルバック弁13の開度調整と、が行われることによって、吐出圧力の圧力変動幅を効果的に抑えることができる。
【0068】
詳しくは、吐出流量の変化が小さい領域(スライド弁22の開度が小さい領域(例えば、
図7のグラフにおける左側のΔx周辺))においてスライド弁22の開度調整が行われたときに、上記実施形態の圧縮装置10のように前記差分に応じたスピルバック弁13の開度制御が行われず従来の圧縮装置のように吐出圧力(吐出流量)の変化ΔL1が生じてからこの変化ΔL1が検出されてスピルバック弁13が制御されても、吐出圧力の変化ΔL1が小さいため、利用プロセス100に供給されるガスの圧力変動の幅が小さい。これに対し、吐出流量の変化が大きい領域(スライド弁22の開度が大きい領域(例えば、
図7のグラフにおける右側のΔx周辺))においてスライド弁22の開度調整が行われたときに、上記実施形態の圧縮装置10のように前記差分に応じたスピルバック弁13の開度制御が行われずに従来の圧縮装置のように吐出圧力(吐出流量)の変化ΔL2が生じてからこの変化ΔL2が検出されてスピルバック弁13が制御されると、吐出圧力の変化ΔL2が大きいため、利用プロセス100に供給されるガスの圧力変動の幅が大きくなる。このため、スライド弁22の開度が80%以上且つ100%未満の範囲のときに(即ち、スライド弁22の開度変更に伴う吐出流量の変化の大きい領域において、)スライド弁22の開度調整と共に前記差分に応じたスピルバック弁13の制御が行われることにより、利用プロセス100に供給されるガスの圧力変動の幅を好適に抑えることができる。スライド弁22は、ロータ室21の流入口21aの開度を調整してもよい。
【実施例】
【0069】
ここで、上記実施形態の圧縮装置の効果を確認するために、以下のA1及びA2の圧縮装置を想定したシミュレーションにより、利用プロセスに供給されるガスの圧力変動を調べた。
A1:上記実施形態の圧縮装置
A2:制御部以外の構成が上記実施形態の圧縮装置と同じであり、且つ、スライド弁の開度が調整された後、スクリュ圧縮機の吐出圧力が変動してからこの変動を検出し、この検出された変動に基づいてスピルバック弁の開度を調整する制御が行われる圧縮装置(従来の圧縮装置)。
【0070】
その結果を
図8(A)〜
図9(B)に示す。
図8(A)は、上記の圧縮装置A1における、時間の経過に伴うスライド弁及びスピルバック弁の開度の変化を示す図であり、
図8(B)は、上記の圧縮装置A1における、
図8(A)に示されるスライド弁及びスピルバック弁の開度調整が行われたときの吐出圧力の変化を示す図である。
図9(A)は、上記の圧縮装置A2における、時間の経過に伴うスライド弁及びスピルバック弁の開度の変化を示す図であり、
図9(B)は、上記の圧縮装置A2における、
図9(A)に示されるスライド弁及びスピルバック弁の開度調整が行われたときの吐出圧力の変化を示す図である。
【0071】
この結果から、上記の圧縮装置A1では、スライド弁をアンロード側にスライドさせた後の吐出圧力の圧力変動幅(
図8(B)では、0.019MPaG)が、上記の圧縮装置A2におけるスライド弁をアンロード側にスライドさせた後の吐出圧力の圧力変動幅(
図9(B)では0.042MPaG)よりも、小さくなることが確認できた。
【0072】
また、上記の圧縮装置A1では、スライド弁をアンロード側にスライドさせた後のスピルバック弁の開度の変化幅が、上記の圧縮装置A2におけるスライド弁をアンロード側にスライドさせた後のスピルバック弁の開度の変化幅より小さくなることも確認できた。