(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の針安全装置のように、単に前記〈A〉のみでは、針部材を上部方向に引き上げて(引き伸ばし)ても、再度脚部が元の位置(下部方向)に戻る(縮む)ケースがあった。
これに伴い針部材の鋭利な末端が、固定部材(固定プレート)よりも下部に露出してしまうケースがあった。
このため当該針部材の患者の病原体ウイルス等を含む可能性のある血液等で汚染された尖った先端が、下部から偶発的に飛び出して、医療従事者や作業者(医師、看護士等)の針刺し、ウイルス等の感染事故を起こすことが懸念される。
また当該尖った先端に、病原菌を含む患者の血液が付着している場合は、解放されている部分から汚染血液が飛散することもあり、衛生的でない。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の針安全装置の前記〈B〉のように、脚部の所定の箇所に、一対の係止部を設けるようにした。
これにより、針部材を上部方向に引き上げ(引き伸ばし)た後、一対の係止部の係止部分を相互に係止できるので、脚部が元の位置(下部方向)に戻る(縮む)のを防ぐことができる。
これにより、針部材の鋭利な末端は、脚部内に収納した後は、脚部より露出しない。
【0007】
しかしながら、これらの部材では、〈1〉針部材を上部方向に引き上げる(引き伸ばす)操作、さらに〈2〉一対の係止部の係止部分を相互に係止する操作、の二段階の操作が必要であった。
これにより針部材の鋭利な末端が、脚部の外部に露出するリスクは、解消した。
その反面、使用者(看護士等)に、一対の係止部の係止部分を相互に係止する操作が求められるので、使用者(看護士等)の負担になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特許文献1に代表される先行技術における医療用安全装置において、使用後の針の鋭利な末端(先端)が安全装置内に確実に封じこめ(contain or confine)られ、または装置内に固定され、血液等で汚染された尖った先端が、装置下部から偶発的に飛び出すことがない、また、付着血液の飛散することのない、医療用針安全装置を提供することである。
また本発明の目的は、特に、ワンアクション(ステップ)で、脚部を上部方向に引き上げて(引き伸ばして)、針部材の鋭利な末端を保護(シールド)することができる脚部と固定部材(プレート)の形態を改良した医療用針安全装置の改良に関する。
【0009】
本発明者らは、特許文献1に代表される先行技術における医療用針において、使用後の針の先端が安全装置内に確実に封じこめ(contain or confine)られ、または装置内に固定され、血液等で汚染された尖った先端が、装置下部から偶発的に飛び出すことがなん、また、付着血液の飛散することのない、医療用針安全装置を提供することである。
本発明者は、このような課題を達成するためになされたもので、本発明によれば、以下の新規な医療用針は安全装置が提供される。
【0010】
[1]本発明は、医療用針安全装置であって、
針部材(2)と、シールド部材(3)と、固定部材(5)とを有し、
前記針部材(2)は、末端(23)を有する針(21)を有し、当該針(21)は、基端(PE)側を針ハブ(22)に固定し、
前記シールド部材(3)は、シールドハブ(35)と、脚部(31・32)とを有し、
前記脚部(31・32)は、上部(U)側の第1脚部(31)と下部(D)側の第2脚部(32)とを有し、当該第1脚部(31)と第2脚部(32)は、中間ヒンジ(39)を介して接続し、
当該第1脚部(31)と第2脚部(32)は、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側に一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)として配置し、
当該一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)は、一対の第2脚部(32S1、32S2)の下部(D)側に固定部材接続部(40J)を接続し、
前記固定部材接続部(40J)は、固定部材回転促進部材(40)として、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側の一対の回転軸(40S1、40S2)を有し、
当該一対の回転軸(40S1、40S2)は、長手方向に略円柱状の形態を有し、長手方向水平軸線(HLL)に沿って、前記第2側部(S2)側の一対の第2脚部(32S1、32S2)の下部(D)側に配置し、
前記固定部材接続部(40J)は、針(21)の遮蔽促進部材(41)として、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側の一対の突起(41S1、41S2)を有し、
当該一対の突起(41S1、41S2)は、前記一対の回転軸(40S1、40S2)の略中腹部から突設し、
前記固定部材接続部(40J)は、固定部材回転ロック部材(42)として、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側の一対のストッパー(42S1、42S2)を有し、
当該一対のストッパー(42S1、42S2)は、突状の形態を有し、前記一対の突起(41S1、41S2)から突設し、
前記固定部材(5)は、固定プレート(50)とシールド部材接続部(50J)を有し、
前記固定プレート(50)は、上部(U)側に前記シールド部材接続部(50J)を配置し、
前記シールド部材接続部(50J)は、シールド部材回転促進部材(51)として、基端(PE)側と末端(DE)側の一対の固定プレート軸受(51PE、51DE)を有し、
当該一対の固定プレート軸受(51PE、51DE)は、前記固定プレート(50)から上部(U)方向に立設し、前記固定プレート(50)の略中央部に形成し、
当該一対の固定プレート軸受(51PE、51DE)は、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側の一対の固定プレート軸受腕部(52S1、52S2)を有し、
前記シールド部材接続部(50J)は、シールド部材第1回転ロック部材(53)として、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側の一対の突起(53S1、53S2)を有し、
当該一対の突起(53S1、53S2)は、略楔状の形態を有し、前記一対の固定プレート軸受腕部(52S1、52S2)から上部(U)方向に突設し、
前記固定プレート(50)は、略中央部ないし略中央部近傍に、針の通路(55)を形成し、
前記固定プレート(50)は、シールド部材第2回転ロック部材(54)として、第1側部(S1)側と第2側部(S2)側の一対のストッパー溝(54S1、54S2)を有し、
当該一対のストッパー溝(54S1、54S2)は、前記針の通路(55)の第1側部(S1)側と第2側部(S2)側に形成し、
前記固定プレート(50)は、前記針(21)の遮蔽部材として、突起(56)を有し、
当該突起(56)は、略板状の形態を有し、
当該突起(56)は、 固定プレート(50)の前記一対のストッパー溝(54S1、54S2)の間で、前記針の通路(55)の末端(DE)側に配置し、
前記固定プレート(50)の上部(U)側に、薄肉部(56T)を介して略垂直に立ち上がるように形成し、
前記一対の回転軸(40S1、40S2)を前記一対の軸受(51S1、51S2)に装着し、
前記一対の回転軸(40S1、40S2)と前記一対の軸受(51S1、51S2)との装着部位との間に、隙間(S)を設け、
当該隙間(S)の大きさ(h1)は、前記一対の突起(53S1、53S2)の大きさ(h2)よりも大きく形成し、
前記一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)は、前記一対の回転軸(40S1、40S2)の駆動とともに連動して、第一の折り畳み位置から第二の伸張位置まで伸張でき、
前記一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)が第一の折り畳み位置にあるときは、針の末端(23)は、前記固定プレート(50)よりも下部に位置し、
前記突起(56)は、針(21)の通路(55)を解放し、前記針(21)の挿入ないし通過を許容できる状態を維持し、
前記一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)が第二の伸長位置までに伸長したときは、
前記一対の第2脚部(32S1、32S2)の一対の下部壁(32DWS1、32DWS2)は、前記一対の突起(53S1、53S2)を乗り越えて、当該一対の突起(53S1、53S2)は、前記一対の下部壁(32DWS1、32DWS2)を固定し、
前記一対のストッパー(42S1、42S2)は、前記一対のストッパー溝(54S1、54S2)と係合し、
前記一対の回転軸(40S1、40S2)と固定プレート軸受(51PE、51DE)は、前記一対のストッパー(42S1、42S2)、前記一対の突起(53S1、53S2)及び前記一対のストッパー溝(54S1、54S2)よりロックされ、
前記針(21)及び当該針(21)の末端(23)は、前記一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)の内側に収納され、
前記突起(56)は、前記一対の突起(41S1、41S2)により、押されて、針(21)の通路(55)を遮断する状態に変位し、針の末端(23)が下部方向へ移動するのを阻止し、
前記一対の脚部(31S1、31S2・32S1、32S2)は、前記第二の伸長位置の状態を維持することができる、医療用針安全装置(1)を提供する。
【0011】
[
2]
本発明は、前記針(21)は、基端
(PE
)側から末端
(DE
)側へ向かう途中から、水平軸線
(HL
)に対して、垂直軸線
(VL
)側に所定の角度で折れ曲がり、
前記針(21)の基端
(PE
)側の針ハブ(22)を、前記シールドハブ(35)に固定した、[1]に記載の医療用針安全装置(1)を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療用針安全装置によれば、
〈1〉脚部(31、32)が、シールド部材接続部50Jのシールド部材第1回転ロック部材53(突起53)を容易に乗り越えると同時に、固定部接続部材40Jの固定部材回転ロック部材42(ストッパー42)が、シールド部材接続部50Jのシールド部材第2回転ロック部材54(ストッパー溝54)と係合する。
脚部(31、32)は、シールド部材第1回転ロック部材53(突起53)と固定部接続部材40Jの固定部材回転ロック部材42(ストッパー42)で、支えられるので、直立(垂直)状態[「第二の状態」(第二の伸長位置)]を維持(自立)することができる。
針の遮蔽部材56(突起56)は、脚部(31、32)が垂直になるとき[「第二の状態」(第二の伸長位置)]、針の遮蔽促進部材41(突起41)に押されて「略水平」に変位(変形)し、針部材21の通路55を遮断する。このため一度、固定プレート50よりも上部Uに引き上げられた針の末端23は、固定プレート50よりも下部Dに露出しなくなる。
【0015】
〈2〉脚部(31、32)は、シールド部材接続部50Jのシールド部材回転促進部材51(軸受)の内壁面に沿って回転する。
固定部接続部材40Jの固定部材回転促進部材40(回転軸)とシールド部材接続部50Jのシールド部材回転促進部材51(軸受)との間の隙間Sの大きさh1は、シールド部材接続部50Jのシールド部材第1回転ロック部材53(突起)の大きさh2よりも、大きく形成している。
このため脚部(31、32)を第二の伸長位置まで伸長するときに、脚部32の
下部壁32DWは、シールド部材第1回転ロック部材53(突起)を容易に乗り越えることができる。
【0016】
〈3〉脚部(31、32)は、第一の折り畳み位置から第二の伸長位置まで伸長するときは、固定部接続部材40Jの固定部材回転促進部材40(回転軸)とシールド部材接続部50Jのシールド部材回転促進部材51(軸受)との駆動とともに、抵抗なく第二の伸長位置まで伸長する。
すなわちワンアクション(ステップ)で、脚部(31、32)を上部方向に引き上げて(引き伸ばして)、針部材の鋭利な末端を保護(シールド)することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
以下、本発明を明確に説明するため、次の定義をおく。
(定義1)本発明の医療用安全装置において 「第一の状態」(第一の折り畳み位置)とは、
図1に示すように、シールド部材3の第1・第2脚部(31・32)が完全に折り畳まれた位置にある状態を意味する。換言すれば、第1・第2脚部(31・32)が完全に折り畳まれた状態であり、一方、針21は下方に延伸し、輸液等の操作に供されうる又は使用時の状態であり、さらに言えば、末端23が保護(シールド)されていない状態を意味する。
【0019】
(定義2)同様に、
図3に示すように、「第二の状態」(第二の伸長位置)とは、シールド部材3の第1・第2脚部(31・32)が完全に伸長された位置にある状態を意味する。換言すれば、針の使用(穿刺)が終了し第1・第2脚部(31・32)が完全に伸長された状態で、針21の末端23が本医療用安全装置内に閉じこめられ、保護(シールド)されている状態を意味する。
(定義3)「移行状態」とは、「第一の状態」から「第二の状態」へ移行する途中の状態を意味する。
(定義4)「移行開始状態」とは、「第一の状態」から「第二の状態」へ移行を開始する初期の状態を意味する。
(定義5)「移行終了状態」とは、「第一の状態」から「第二の状態」へ移行を終了する間際の状態を意味する。
(定義6)本発明で、「基端PE(側または方向)」とは、
図2に示すように、針ハブ22のチューブTを接続する側の端部を意味する。
(定義7)「末端DE(側または方向)」とは、
図2に示すように、「基端PE(側または方向)」と反対側の端部を意味する。さらにいえば、針ハブ22のチューブTを接続しない側の端部、針21を装着した側の端部を意味する。
【0020】
(定義8)「水平軸線HL(方向)」とは、
図2に示すように、管状の針ハブ22の長手方向に延びる方向(図の破線参照)を意味する。なお説明で必要な場合は、長手L方向の水平軸線を「HLL」、側部S方向の水平軸線を「HLS」とそれぞれ区別して記載する。
(定義9)「垂直軸線VL(方向)」とは、
図2に示すように、針21の曲った末端23側が長手方向に垂下して延びる方向(図の破線参照)を意味する。
(定義10)「第1側部S1(側または方向)」とは、
図2に示すように、例えば翼34の右側端部の方向(図の破線矢印参照)を意味する。
(定義11)「第2側部S2(側または方向)」とは、
図2に示すように、例えば翼34の左側端部の方向(図の破線矢印参照)を意味する。
(定義12)「上部U(側または方向)」とは、
図2に示すように、例えば針21の曲った末端23側と反対方向(図の破線矢印参照)を意味する。
(定義13)「下部D(側または方向)」とは、
図2に示すように、例えば針21の曲った末端23側方向(図の破線矢印参照)を意味する。
(定義14)「長手方向」とは、「針安全装置」全体の長手方向[水平軸線HL(方向)]を意味する(各部材、例えば「翼部」の長手方向、すなわち長く形成した方向ではない)。
(各構成部品の名称の位置・配置等の方向性を示す符号の記載について)
本発明の図面及び発明の説明の中で、例えば
図4に例示するように、第1側部S1側の第2脚部32を「32S1」、第2側部S2側の第1脚部31を「31S1」と記載した。
なおこれらの脚部(31・32)並びにこれら以外の各構成部品の名称で、「第1側部S1側」等の位置・配置等の方向性を示す符号は、発明の理解ができ、必要と認められる範囲内で、図面及び発明の説明の中で一部のみについて記載した。
【0021】
[医療用針安全装置1]
本発明の医療用針安全装置1(以下、単に「装置1」という場合がある。)について、以下、図面を参照しながら説明する。
本発明の医療用針安全装置1は、
図2に示すように、針部材2と、シールド部材3と、及び固定部材5とを有する。
針部材2、シールド部材3、及び固定部材5の形態と機能は、以下のとおりである。
【0022】
[針部材2]
針部材2は、針21と針ハブ22を有する。
図2に例示するように、針21は、基端PE側から末端DE側へ向かう途中から、水平軸線HLに対して、垂直軸線VL側に所定の角度(例えば、略90度)で折れ曲がっている。
針21は、下部Dに末端23を有する。末端23は下部D側に、鋭利な尖端を有する。
末端23は、垂直軸線VLに対して、若干の角度で、基端PE側へ向けて、わずかな所定の角度で折れ曲がっている。
針21の基端PE側は、管状の針ハブ22に装着(固定)している。
針21の末端23は、患者に植設した薬液注入ポート(図示せず)に穿刺する。針ハブ22の基端PE側に接続したチューブTより、末端23を経由して患者に薬液を注入する。チューブTは、通常、薬液バッグ等に接続され、当該バッグより薬液が供給される。
針21は、患者に薬液を注入し終えた後は、薬液注入ポート(図示せず)より引き抜かれる。
【0023】
[シールド部材3の概要]
シールド部材3とは、患者に薬液を注入し終えた後に、使用後の針21を収納する部材である。さらに針21の末端23が、外に露出しないように保護(シールド)する部材である。シールド部材3は、シールドハブ35、脚部(31・32)、及び固定部材接続部40Jを有する。
固定部材接続部40Jは、発明の説明の中で、記載を簡略化するために、単に「接続部40J」と記載する場合がある。
シールドハブ35は、針ハブ22を固定する。
脚部(31・32)は、少なくとも二つ以上の脚部(31・32)より構成される。すなわち第1脚部31と第2脚部32とを、折り畳んだり、伸長することにより、第一の折り畳み位置から第二の伸長位置まで伸長できるように形成している。
脚部(31・32)は、患者に薬液を注入し終えた後、この部分に針21の末端23を収納し、封じ込め、保護(シールド)するものである。
【0024】
[固定部材5の概要]
固定部材5は、使用時(針穿刺時)患者の皮膚に固定する部材でもあり、そのため固定プレート50を有する。
固定プレート50は、シールド部材接続部50Jを有する。シールド部材接続部50Jは、発明の説明の中で、記載を簡略化するために、単に「接続部50J」と記載する場合がある。接続部50Jは、シールド部材3の脚部(31・32)を接続(固定)するものである。
また固定プレート50は、シールド部材第2回転ロック部材54、針の遮蔽部材56及び針の通路55を有する。
【0025】
[シールド部材3の各部材の説明]
シールド部材3は、シールドハブ35と、第1・第2脚部(31・32)及び
接続部40Jを有する。
シールドハブ35は、上部U側に形成し、接続部40Jは、下部D側に形成している。
第1・第2脚部(31・32)は、上部U側と下部D側との間に形成している。
シールドハブ35と接続部40Jは、
図5等において例示しているように、第1・第2脚部(31・32)を介して接続している。
【0026】
[シールドハブ35]
シールドハブ35は、針ハブ22を固定するためのハブである。シールドハブ35は、針ハブ22を受け入れる部材として機能する。
シールドハブ35は、
図2から
図4等に例示するように、略管状(略角筒状ないし略円筒状ともいう場合がある)に形成している。
シールドハブ35は、針ハブ22を受け入れ、かつ、その状態で固定できる形状であれば、どのような形状でも良い。
シールドハブ35は、下部D側に、基端側ヒンジ37を介して第1・第2脚部(31・32)を接続している。
シールドハブ35は、第1側部S1と第2側部S2に、それぞれ翼34S1、34S2を接続している。翼34S1、34S2は、(シールドハブ35が受け入れ固定化された)針21を 上部U方向にひきあげるときの取手として機能する。
翼34S1、34S2とシールドハブ35は、
図5等に例示するようにヒンジ34Hを介して接続している。これにより、翼34、34の第1側部S1と第2側部S2を指でつかんで、翼34S1、34S2を上部U方向に折り曲げて、第1・第2脚部(31・32)を第一の折り畳み位置から第二の伸長位置まで伸長するときに針21を上部U方向に引き上げることができる。
【0027】
[第1・第2脚部(31・32)]
第1・第2脚部(31・32)は、第一の折り畳み位置(第一の状態)から第二の伸長位置(第二の状態)まで伸長できるように形成している。
第1・第2脚部(31・32)は、第一の折り畳み位置から第二の伸長位置に伸長するときに、針21が連動して動く。第1・第2脚部(31・32)は、接続部40J・接続部50Jと針21のいわゆる「引き綱」のような機能を有する。
第1・第2脚部(31・32)が、第二の伸長位置まで伸長し終えたときに、針21と末端23は、第1・第2脚部(31・32)内に引き込まれる(収納される。)
【0028】
第1・第2脚部(31・32)は、
図1・
図2、
図3〜
図5に例示するように、二つの部材を折り畳んだ形態から伸長できる形態に形成している。
第1脚部31は、上部U側に配置している。第2脚部32は、下部D側に配置している。
第1・第2脚部(31・32)は、それぞれ第1側部S1側と第2側部S2側とで、対で形成している。第1脚部31、31は、上部側ヒンジ37を介して、シールドハブ35の下部D側と接続している。
第2脚部32、32は、シールド部材接続部40Jを介して、固定部材接続部50Jと接続している。
【0029】
第1脚部31と第2脚部32は、中間ヒンジ39を介して接続している。
以上の本発明の説明で、「脚部」は、「第1・第2脚部(31・32)」と記載し、二つの部材を使用して、これらを折り畳んだ形態から伸張できる形態について例示したが、二つ以上の部材を折り畳んだ形態から伸張できる形態にしてもよい。
要するに、「第一の状態」(脚部が完全に折り畳まれた位置にある状態、換言すれば、脚部が完全に折り畳まれた状態で、針21の末端23が保護(シールド)されていない状態、例えば、
図8等参照)から「第二の状態」(脚部が完全に伸長された位置にある状態、換言すれば、脚部が完全に伸張された状態で、針21の末端23が保護(シールド)されている状態、例えば、
図10等参照)にできる形態(形状、構造、材料)に形成できればよい。
【0030】
[シールド部材接続部40J]
シールド部材接続部40Jは、固定部材接続部50Jと接続する部材である。
接続部40Jは、固定部材回転促進部材40、固定部材回転ロック部材42及び針の遮蔽促進部材41を有する。
固定部材回転促進部材40として回転軸40を有し、固定部材回転ロック部材42としてストッパー42を有し、針の遮蔽促進部材41として突起41を有する。
回転軸40は、
図6に例示するように、一対の回転軸40(第1側部側回転軸40S1、第2側部側回転軸40S2)を有する。
回転軸40は、
図6に例示するように、いわゆる「長手方向に細長い略円柱状」に形成している。
回転軸40は、略中腹部に、いわゆる「略板状」の突起41を突設している。さらに突起41の下部D側には、長手方向水平軸線HLLに沿って、いわゆる「細長い突状」のストッパー42を突設している。
突起41及びストッパー42は、回転軸40と同様に一対形成している。
【0031】
[固定部材5の各部材の説明]
固定部材5は、前記したように使用時(針穿刺時)患者の皮膚に固定する部材でもあり、そのため平らな固定プレート50を有する。固定プレート50は、患者の皮膚に密着して固定しやすいように平らな接触面を有する。このため「平らな接触面」、「平らな接触面板」という場合がある。固定プレート50は、
図7の例示では板状(矩形)に形成しているが、円形、楕円形等でもよい。また固定プレート50は、例えば硬質プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)等の材料より形成する。
【0032】
[固定プレート50]
固定プレート50は、
図7に例示するように、上部にシールド部材接続部50Jを有する。
固定プレート50は、シールド部材第2回転ロック部材54、針の遮蔽部材56及び針の通路55を形成している。
シールド部材第2回転ロック部材54としてストッパー溝54を有し、針の遮蔽部材56としていわゆる「略板状」の突起56を有する。
ストッパー溝54と針の通路55は、いわゆる「細長い溝」状に形成している。
針の通路55は、固定プレート50の略中央部ないし略中央部近傍から基端PE方向に(長手方向水平軸線HLLに沿って)形成している。
ストッパー溝54は、固定プレート50の略中央部、さらにいえば針の通路55の両側(第1側部S1方向と第2側部S2方向)に、長手方向水平軸線HLLに沿って形成している。
【0033】
略板状の突起56は、固定プレート50の略中央部(ストッパー溝54、針の通路55の近傍)に配置し、固定プレート50の上部U側に「略垂直」に立ち上がるように形成している。突起56は、基端PE側から末端DE側に見て略矩形状に形成し、第1側部S1側から第2側部S2側に見て、いわゆる「略L字状」に形成している。突起56は、下部D側(固定プレート50側)に薄肉部56Tを形成している。
後述するように、針の遮蔽促進部材41(略板状の突起41)に押されて、薄肉部56Tより下部D側(固定プレート50側)に「略水平」(固定プレート50の側部方向の水平軸線HLSに沿うように)に倒れて、針21の通路55を塞ぐ(遮蔽する)ことができるようにするためである。
【0034】
[シールド部材接続部50J]
接続部50Jは、シールド部材3の脚部(31・32)を固定するものである。
接続部50Jは、
図7に例示するように、脚部(31・32)の接続部40J
と接続する。
接続部50Jは、シールド部材回転促進部材51とシールド部材第1回転ロック部材53を有する。
シールド部材回転促進部材51として、軸受51を有し、前記シールド部材第1回転ロック部材53として、突起53を有する。
軸受51は、固定プレート50から上部U方向に立設し、側部方向水平軸線HLSに沿って、一対(基端PE方向と末端DE方向)形成している。
軸受51は、固定プレート軸受腕部52及び軸受腕部上の突起53を有する。
固定プレート軸受腕部52及び軸受腕部上の突起53は、軸受51と同様に一対形成している。
固定プレート軸受腕部52及び軸受腕部上の突起53は、発明の説明の中で、記載を簡略化するために、それぞれ、単に「腕部52」、「突起53」と記載する場合がある。
軸受51は、
図7(A)に例示するように、上部U方向から見て、いわゆる「略T字状」に形成している。
図7(F)に例示するように、基端PE方向(末端DE方向)から見て、
「腕部52」は、いわゆる「略L字状」に形成している。
「突起53」は、いわゆる「略楔状」(略V字形状、略三角形状)に形成している。
【0035】
前記固定部接続部材40Jの固定部材回転促進部材40(回転軸40)と前記シールド部材接続部50Jのシールド部材回転促進部材51(軸受51)との装着部位の間には、
図12に示すように、いわゆる「隙間S」が設けている。隙間Sについてさらにいえば、
図12に例示するように、固定プレート軸受腕部52内側壁の上部Uと、回転軸40の上部Uとの間の隙間である。
当該隙間Sの大きさh1は、前記シールド部材接続部50Jのシールド部材第1回転ロック部材53(突起53)の大きさh2よりも大きく形成している。
このため脚部(31、32)を第二の伸長位置まで伸長するときに、脚部32の
下部壁32DWは、シールド部材接続部50Jのシールド部材第1回転ロック部材(突起53)を容易に乗り越えることができる。
【0036】
[第一の状態への組み立て:シールド部材3と固定部材5との組み立て]
〈1〉
図1に示すように、針ハブ22を、シールド部材3のシールドハブ35(の円筒形状空隙部35S)に差し込んで固定する。
〈2〉脚部(31、32)を「第二の状態」(伸長状態)で、固定部材接続部40Jを、固定プレート50のシールド部材接続部50Jに接続する。
さらにいえば、接続部40Jの回転軸40を、接続部50Jの軸受51に装着(軸着)する。
軸受腕部上の突起53は、脚部(31、32)の内側に位置する。
回転軸40のいわゆる「略板状」の突起41は、「略垂直」に立設している。
固定プレート50のいわゆる「略板状」の突起56は、「略垂直」に立設し、針の通路55は、解放されている。
〈3〉脚部(31、32)を「第一の状態」(第一の折り畳み位置)にして、針21を、針の通路55に差し込む。
針21の末端23は、固定プレート50よりも下部D側に露出する。露出した針21に、針カバー(図示せず)を装着する。
【0037】
[針21の末端23の保護(シールド)]
〈4〉「移行開始状態」(
図11)
針部材21を、垂直軸線VLの上部U側に持ち上げると、第1・第2脚部(31・32)がこれに連動して、垂直軸線VLの上部U側に伸長を開始する。
さらにこれに連動して、接続部40Jの回転軸40が、軸受51にそって回転する。(
図11参照)
【0038】
〈5〉「移行終了状態」
第1・第2脚部(31・32)は、垂直軸線VLの上部U側に伸びきろうとする。
図13、
図14、
図15に示すように、第2脚部32が垂直方向に立ち上がるにつれて、第2脚部32の下部壁32DWは、軸受腕部52上の突起53(「略楔状」の斜面に沿って)を乗り越えようと移動する。
回転軸40のいわゆる「略板状」の突起41は、「略垂直」から「略水平」方向に
変位(移動)する。これに伴い突起56は、突起41に押されて、「略垂直」から「略水平」方向に変位(移動)する。
【0039】
〈5〉(第二の状態)(
図16、
図17)
第1・第2脚部(31・32)は、垂直軸線VLの上部U側に完全に伸びきる。
図16、
図17に示すように、第2脚部32の下部壁32DWは、軸受腕部52上の突起53(「略楔状」の斜面)を完全に乗り越え、突起53は(「略楔状」の斜面)で、第2脚部32の下部を固定する。
これにより、第1・第2脚部(31・32)は、第二の状態(完全に伸びきった状態)から第一の状態へ戻るのを防止することができる。
さらにストッパー42が、固定プレート50のストッパー溝54と係合することにより、脚部(31・32)は、第二の状態を維持することができる。
【0040】
回転軸40のいわゆる「略板状」の突起41は、「略水平」に変位(移動)する。
針21の末端23は、第1・第2脚部(31・32)内に引き込まれ、固定プレート50の上部に位置する。
突起56は、突起41に押されて「略水平」に変位(移動)し、針の通路55を遮断(閉塞)する。突起56は、これにより針21の挿入ないし通過を遮断し、いわゆる「蓋」の役割を果たし、針21の末端23が、固定プレート50の下部から露出するのを防止することができる。(
図10、17参照)
【0041】
さらに、患者への取付け、薬液の注入、患者からの取外しと廃棄までの使用例について説明する。
[患者への取り付け、薬液の注入]
〈1〉第一の状態において針先には針カバー(図示せず)が取り付けられ保護されている。使用に際しては、針カバー(図示せず)を、取り外して、針21の末端23を露出する。
〈2〉垂直軸線VLの下部D方向に垂下して、患者に埋め込まれたポート(図示せず)へ針21の末端23を穿刺する。固定部材5の固定プレート50(平らな接触面)を、テープ等で患者に固定する。
〈3〉抗癌等を含んだ薬液等を、針ハブ22の基端PE側に接続された薬液注入チューブ(図示せず)から薬液等を、針21の末端23、ポート(図示せず)を経由して、注入する。このように第一の状態で輸液等が行われる。
【0042】
[患者からの取外しと廃棄まで]
薬液の注入が終了したら、作業者(医師、看護士等)は、一方の手を患者の皮膚に当て、もう一方の手で翼部34を、つかんで上部Uに持ち上げる。
これにより、ポート(図示せず)から針21の末端23が引き出され、第1・第2脚部(31・32)を伸長させる。第1・第2脚部(31・32)が伸長中、針21の末端23は、上部方向に移動する。
第1・第2脚部(31・32)は、垂直軸線VLの上部U側に伸びきろうとする。
図13、
図14、
図15に示すように、第2脚部32が垂直方向に立ち上がるにつれて、第2脚部32の下部壁32DWは、軸受腕部52上の突起53(「略楔状」の斜面に沿って)を乗り越えようと移動する。
【0043】
第1・第2脚部(31・32)は、垂直軸線VLの上部U側に完全に伸びきる。
図16、
図17に示すように、第2脚部32の下部壁32DWは、軸受腕部上の突起53(「略楔状」の斜面)を完全に乗り越え、突起53は(「略楔状」の斜面)で、第2脚部32の下部を固定する。
これにより、第1・第2脚部(31・32)は、第二の状態(完全に伸びきった状態)から第一の状態へ戻るのを防止することができる。
さらにストッパー42が、固定プレート50のストッパー溝54と係合することにより、脚部(31・32)は、第二の状態を維持することができる。
回転軸40のいわゆる「略板状」の突起41は、「略垂直」から「略水平」方向に変位(移動)する。これに伴い突起56は、突起41に押されて、「略垂直」から「略水平」方向に変位(移動)し、突起56は、針の通路55を遮断(閉塞)する。これにより、針21の挿入ないし通過を遮断し、針21の末端23が、固定プレート50よりも再び下部D方向に移動するのを防ぐことができる。
作業者(医師・看護士等)は、偶発的な針の露出による針刺事故を心配せずに針21を処分することができる。
【0044】
[本発明のその他の実施例]
本発明の医療用安全装置1は、以上の説明と
図1〜
図17に記載した形態に限定されない。次に例示する実施例のような形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。以下その他の実施例について各部位(部材)ごとに詳細に説明する。
すなわち、脚部(31・32)が第一の折り畳み位置から第二の伸長位置まで伸長を促す部位(部材)として、回転促進部材[固定部材回転促進部材40(回転軸40)とシールド部材回転促進部材51(軸受51)のコンビネーション]を
図5から
図7に例示したが、これらに限定されない。
また、第1・第2脚部(31・32)を固定し、第1・第2脚部(31・32)が、第二の状態(完全に伸びきった状態)から第一の状態へ戻るのを防止することができる部位(部材)、さらに針21の末端23が、固定プレート50よりも再び下部D方向に移動するのを防ぐことができる部位(部材)として、回転ロック部材[固定部材回転ロック部材42(ストッパー42)、シールド部材第1回転ロック部材53(突起53)及びシールド部材第2回転ロック部材54(ストッパー溝54)のコンビネーション]を
図5から
図7に例示したが、これらに限定されない。
【0045】
[回転促進部材]
固定部材回転促進部材40として、回転軸40を形成する代わりに、「軸受」を形成し、シールド部材回転促進部材51として、軸受51を形成する代わりに「回転軸」を形成してもよい。
回転軸40の形態は、
図5から
図6に記載した形状の他に、いわゆる「球状」のものでもよい。これにあわせて、軸受51の形態もいわゆる「球状の溝」のものでもよい。
[回転ロック部材]
固定部材接続部40J側のストッパー42を形成する代わりに、「ストッパー溝」を形成し、シールド部材接続部50J側の突起53を形成するかわりに「溝」を形成し、溝54を形成する代わりに、「突起」を形成してもよい。
これらと同様の役割を果たすことができるものであれば何でもよい。
図5から
図7に例示した形態に限定されない。
針の遮蔽部材56(針21の末端23が、固定プレート50よりも再び下部D方向に移動するのを防ぐことができる部材)として、いわゆる「略板状」の突起56を例示したが、これらと同様の役割を果たすことができるものであれば何でもよい。
図7に例示した形態(略矩形状)に限定されない。
また針の遮蔽促進部材41として、いわゆる「略板状」の突起41を例示したが、
これらと同様の役割を果たすことができるものであれば何でもよい。
図6に例示した形態(略矩形状)に限定されない。
【0046】
[脚部(31・32)]
脚部(31・32)は、第一の折り畳み位置から第二の伸長位置まで伸長でき、第二の伸長位置にあるときに、脚部(31・32)内に、針21の末端23を、引き込んで、保護(シールド)できる形態であればよい。
図3〜
図5の例示では、いわゆる「略板状」のものが記載されているが、いわゆる「紐状、棒状、帯状、鎖状」等のものでも良い。
【0047】
[シールドハブ35]
シールドハブ35は、針ハブ22を固定でき、脚部(31・32)が第一の折り畳み位置から第二の伸長位置まで伸長するときに、脚部(31・32)と連動して、針21を上部U方向に引き上げることができる形態であればよい。
【0048】
医療用針安全装置1を構成する、シールド部材3、固定部材5は、同一材料で一体成形により形成しているので、製造が容易で引用文献1に記載の発明と比較して安価に製造できる。
シールド部材3は、シールドハブ35、脚部(31・32)、及び固定部材接続部40Jを、同一材料で一体成形により形成することが好ましい。
固定部材5は、固定プレート50とシールド部材接続部50Jを同一材料で一体成形により形成することが好ましい。
シールド部材3や固定部材5の材料は、射出成形や注形成型できる合成樹脂で形成することが好ましく、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PB(ポリブチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVdC(ポリビニリデンクロライド)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PMA(ポリメチルアクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PAm(ポリアミド)、ETFE共重合体等があげられるが、これに限定されるものではない。