(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891192
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】発電装置及び発電システム
(51)【国際特許分類】
F01C 21/06 20060101AFI20160308BHJP
F01C 13/00 20060101ALI20160308BHJP
F01C 21/10 20060101ALI20160308BHJP
F01C 1/16 20060101ALI20160308BHJP
F01D 15/10 20060101ALI20160308BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20160308BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
F01C21/06
F01C13/00
F01C21/10
F01C1/16 E
F01D15/10 A
H02K7/18 Z
H02K9/19 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-62146(P2013-62146)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185609(P2014-185609A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/020630(WO,A1)
【文献】
特開平10−290543(JP,A)
【文献】
特開2012−127201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 1/16
F01C 13/00
F01C 21/06、10
F01D 15/10
F01D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張機と、
前記膨張機によって駆動されるロータ、及び、前記ロータの径方向外側に配置されるステータを有する発電機と、
前記膨張機を収容する膨張機収容室、及び、前記発電機を収容する発電機収容室を有するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングが、
前記膨張機収容室のうち前記膨張機により作動媒体を漸次膨張させる膨張室と、前記発電機収容室のうち前記発電機よりも前方に位置する発電機前方部とを連通する第1連通部と、
前記膨張室よりも下流側の部位であって前記発電機に対して前記膨張室側に位置する部位と前記発電機前方部とを連通する第2連通部と、
を備え、
前記第1連通部では、膨張過程にある前記膨張室から前記発電機収容室に作動媒体が流れる発電装置。
【請求項2】
前記ステータのコイルは、前記発電機前方部内で作動媒体が流れる流路に面している請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記ステータの後方に位置し、径方向内側に突出する段差部を備え、
前記ステータのステータコアは、
前記ケーシングの内周面に径方向に当接する径方向当接部と、
前記段差部と軸方向に当接する軸方向当接部と、
を備える請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記膨張室よりも下流側の部位は、前記膨張機の吐出室である請求項1から3の何れか1項に記載の発電装置。
【請求項5】
作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
請求項1から4の何れか1項に記載の発電装置と、
前記発電装置の前記膨張機によって膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した作動媒体を前記蒸発器に導入させるポンプと、を備えている発電システム。
【請求項6】
前記発電システムは、車載用のシステムである請求項5の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置及び発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1及び2に開示されているように、作動媒体で膨張機を駆動し、膨張機に直結された発電機で発電を行う発電装置が知られている。特許文献1に開示された発電装置では、凝縮器で凝縮した作動媒体を発電機の冷却器に導く冷却用配管が設けられている。これによって発電機の効率的な冷却が可能となっている。しかしながら、作動媒体を発電機の冷却器に導くための冷却用配管が必要になるという問題がある。これに対し、特許文献2に開示された発電装置では、冷却用配管を設けることなく、発電機の冷却が可能となっている。すなわち、特許文献2の発電装置では、膨張機と発電機がケーシング内に収容された構成となっており、このケーシングには、膨張機を収容する第1空間と、発電機を収容する第2空間とに仕切る隔壁部が設けられている。そして、隔壁部には、第1空間と第2空間とを連通させる連通部が形成されている。連通部は、膨張機によって膨張した作動媒体が吐出される吐出口から第2空間に向かって延びている。これにより、第1空間内で膨張機によって膨張された作動媒体が連通部を通して第2空間に導入される。第2空間には、発電機が収容されているが、この発電機を挟んで連通部と反対側に、作動媒体の排出部が設けられている。このため、連通部を通して第2空間内に導入された作動媒体は、発電機内(例えばステータとロータとの間の間隙)を通過して、排出部からケーシングの外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−353571号公報
【特許文献2】特開2012−147567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示された発電装置では、冷却用配管を設けることなく、発電機の冷却が可能となっているが、以下の問題点が残されている。すなわち、この発電装置では、作動媒体が発電機内(例えばステータとロータとの間の間隙)を通過するように構成されているため、作動媒体の流通抵抗が増大し、発電効率が低下するという問題がある。また、万が一、作動媒体に異物が含まれている場合には、異物が発電機のロータとステータとの間のギャップに入り込んでしまうという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電機を冷却する際の作動媒体の流通抵抗を抑制しつつ簡易な構成で発電機の冷却を行うことができる発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、膨張機と、前記膨張機によって駆動されるロータ、及び、前記ロータの径方向外側に配置されるステータを有する発電機と、前記膨張機を収容する膨張機収容室、及び、前記発電機を収容する発電機収容室を有するケーシングと、を備え、前記ケーシングが、前記膨張機収容室のうち前記膨張機により作動媒体を漸次膨張させる膨張室と、前記発電機収容室のうち前記発電機よりも前方に位置する発電機前方部とを連通する第1連通部と、前記膨張室よりも下流側の部位であって前記発電機に対して前記膨張室側に位置する部位と前記発電機前方部とを連通する第2連通部と、を備え
、前記第1連通部では、膨張過程にある前記膨張室から前記発電機収容室に作動媒体が流れる発電装置である。
【0007】
本発明では、膨張室と発電機収容室とが第1連通部によって連通する。一方、発電機収容室と膨張室よりも下流側の部位とが第2連通部によって連通している。膨張室よりも下流側の部位は、膨張過程の途中にある膨張室内よりも低圧となっているため、両者の圧力差によって、膨張室内の作動媒体が第1連通部を通して発電機収容室に流れ、その後、第2連通部を通して膨張室よりも下流側の部位に流れる。このため、発電機収容室内の作動媒体によって発電機を冷却することができる。したがって、冷却用の配管を新たに設けることなく簡易な構成で、作動媒体による発電機の冷却が可能となっている。また、第2連通部が発電機に対して膨張室側に位置し且つ膨張室よりも下流側の部位と、発電機前方部とを連通しているため、作動媒体は、発電機内を流れることなく(或いは発電機内を流れることがあったとしても僅かに)発電機収容室内を流れる。このため、発電機収容室内を流れる際の作動媒体の流通抵抗が大きくならない。したがって、前記圧力差によって作動媒体を有効に流動させることができ、発電効率が低下することを防止することができる。しかも、作動媒体が発電機内を流れることがなく、或いは発電機内を流れることがあったとしても僅かであるため、異物が作動媒体に含まれている場合であっても、発電機内に異物が入り込む虞は少ない。
【0008】
ここで、前記ステータのコイルは、前記発電機前方部内で作動媒体が流れる流路に面していてもよい。この態様では、ステータのコイルが作動媒体の流路に面しているため、発熱しやすいコイルを効率的に冷却することができる。
【0009】
前記ケーシングは、前記ステータの後方に位置し、径方向内側に突出する段差部を備えていてもよい。この場合、前記ステータのステータコアは、前記ケーシングの内周面に径方向に当接する径方向当接部と、前記段差部と軸方向に当接する軸方向当接部と、を備えていてもよい。
【0010】
この態様では、ステータコアの熱がケーシングに直接伝わるが、この熱はケーシングを通して放熱させることができる。
【0011】
また、ケーシングに段差部を設けることにより、軸方向におけるステータの位置決めを容易に行うことができる。段差部の軸方向の位置を調整することにより、流路の幅の設計が容易となる。
【0012】
前記膨張室よりも下流側の部位は、前記膨張機の吐出室であってもよい。この態様では、第2連通部が発電機収容室と吐出室を連通する構成となるため、ケーシング内の構成が複雑化することを抑制でき、コスト面で有利となる。
【0013】
本発明は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記発電装置と、前記発電装置の前記膨張機によって膨張した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した作動媒体を前記蒸発器に導入させるポンプと、を備えている発電システムである。本発明では、蒸発器、膨張機及び凝縮器間で作動媒体を循環させながら、発電装置において発電を行うことができる。
【0014】
前記発電システムは、車載用のシステムであってもよい。この態様では、車両に搭載されて利用されるため、車両で必要な電力の供給源として利用することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、発電機を冷却する際の作動媒体の流通抵抗を抑制できるとともに、簡易な構成で発電機の冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る発電システムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図1のIII−III線における断面図である。
【
図4】前記発電システムに設けられた発電装置を部分的に拡大して示す図である。
【
図5】本発明のその他の実施形態における膨張機を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本実施形態による発電システム1は、ランキンサイクルを利用した発電システムであり、
図1に示すように、発電装置2と、凝縮器6と、循環ポンプ8と、蒸発器10とを備えている。発電装置2、凝縮器6、循環ポンプ8及び蒸発器10はこの順で循環流路4に設けられている。循環流路4には作動媒体が循環する。作動媒体としては、例えばR245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン)等の沸点の低い冷媒が用いられる。したがって、発電システムは、低温の廃熱から動力を回収するバイナリー発電方式となっている。なお、本発電システムは、車載用のシステムとして構成されている。
【0019】
発電装置2は、スクリュ式膨張機(以下、単に膨張機という)14と、発電機16と、これら膨張機14及び発電機16を互いに連結された状態で収容するケーシング12とを備えている。発電装置2は、膨張機14においてガス状の作動媒体を膨張させることにより、発電機16を駆動する力を取り出す。なお、発電装置2の詳細については後述する。
【0020】
凝縮器6は、膨張機14から排出されたガス状の作動媒体を凝縮させて液状の作動媒体とするものである。凝縮器6は、ガス状の作動媒体が流れる作動媒体流路6aと、外部から供給される冷却媒体が流れる流路61と接続されることによりその冷却媒体が流れる冷却媒体流路6bとを有している。作動媒体流路6aを流れる作動媒体は、冷却媒体流路6bを流れる冷却媒体と熱交換することにより凝縮する。
【0021】
循環ポンプ8は、循環流路4における凝縮器6の下流側(蒸発器10と凝縮器6との間)に設けられており、循環流路4内で作動媒体を循環させるためのものである。循環ポンプ8は、凝縮器6で凝縮された液状の作動媒体を所定の圧力まで加圧して蒸発器10に送り出す。循環ポンプ8として、インペラをロータとして備える遠心ポンプや、ロータが一対のギアからなるギアポンプ等が用いられる。
【0022】
蒸発器10は、循環流路4における循環ポンプ8の下流側(循環ポンプ8と発電装置2との間)に設けられている。蒸発器10は、作動媒体が流れる作動媒体流路10aと、加熱媒体が流れる加熱媒体流路10bとを有している。加熱媒体流路10bは加熱媒体回路62に接続されていて、この加熱媒体流路10bには、外部の熱源から供給された加熱媒体が流れる。作動媒体流路10aを流れる作動媒体は、加熱媒体流路10bを流れる加熱媒体と熱交換して蒸発する。
【0023】
以上の構成により、本実施形態による発電システムでは、作動媒体が循環流路4を通じて蒸発器10、発電装置2、凝縮器6及び循環ポンプ8を順に流れるという循環回路が構成されている。
【0024】
次に、発電装置2の構成について詳細に説明する。
【0025】
発電装置2の膨張機14は、各々軸回りに回転する一対の膨張機ロータ32を有している。各膨張機ロータ32は、その外周面に沿って螺旋状に形成された歯を有するスクリュロータによって構成されている。
図2に示すように、両膨張機ロータ32の歯は互いに噛み合っており、各ロータ32が回転するのに伴い、噛み合い箇所が軸方向の次第に移動するようになっている。
【0026】
各膨張機ロータ32は、
図1に示すように、それぞれ回転軸34を有している。回転軸34はそれぞれ、膨張機ロータ32から軸方向の一方に延びる第1軸部34aと、膨張機ロータ32から軸方向の他方に延びる第2軸部34bとを有する。
【0027】
発電機16は、一方の膨張機ロータ32と第2軸部34bを介して連結された発電機ロータ38と、発電機ロータ38を囲むように配置されたステータ40とを有している。すなわち、発電機16は、発電機ロータ38がステータ40の内側に配置されたインナーロータ型の発電機として構成されている。ステータ40は、ステータコア40aとステータコア40aに装着されたコイル40bとを備えている。発電機ロータ38は、鉄心及び巻き線を有している。発電機ロータ38は、膨張機ロータ32と一体的に回転する。
【0028】
膨張機14及び発電機16を収容するケーシング12は、両端が開口した筒状の胴部22と、胴部22の一端側の開口を塞ぐように胴部22の一端部に結合される第1蓋部23と、胴部22の他端側の開口を塞ぐように胴部22の他端部に結合される第2蓋部24と、を有している。胴部22、第1蓋部23及び第2蓋部24は何れも金属製である。第1蓋部23は有底の筒状に形成されており、第1蓋部23の底部23aには、循環流路4が接続される導入ポート26が形成されている。第2蓋部24は有底の筒状に形成されており、第2蓋部24の底部は、第1蓋部23と異なり、塞がれている。胴部22には、循環流路4が接続される吐出ポート27が形成されている。
【0029】
胴部22には、その軸方向中間部に隔壁部22aが形成されている。隔壁部22aによってケーシング12内には、膨張機14が収容される膨張機収容室12aと、発電機16が収容される発電機収容室12bとが形成されている。隔壁部22aには、軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔には、第2軸部34bを回転自在に支持する軸受28が嵌め込まれている。この軸受28は、膨張機ロータ32と発電機ロータ38との間に位置しており、各第2軸部34bに対応して2つ設けられている。
【0030】
膨張機収容室12aは、仕切部22bによって流入室29と吐出室30とに仕切られている。仕切部22bは、隔壁部22aに対して発電機16とは反対側に位置し、かつ隔壁部22aとの間に空間を形成するように設けられている。流入室29は、仕切部22bと第1蓋部23とによって区画された空間であり、膨張機収容室12a内において導入ポート26が開口する空間である。吐出室30は、仕切部22bと隔壁部22aとによって区画された空間であり、膨張機収容室12a内において吐出ポート27が開口する空間である。
【0031】
仕切部22bには、開口部が形成されており、この開口部には膨張機ロータ32が配置されている。仕切部22bは、胴部22本体の上壁から内側(
図1における下側)に突出するように形成された上側部と、胴部22本体の底壁から内側(
図1における上側)に延出された下側部とを有している。
図2に示すように、上側部の下面22cは、膨張機ロータ32の外形形状に対応した2つの円弧状に形成されており、下側部の上面22dは、膨張機ロータ32の外形形状に対応した2つの円弧状に形成されている。そして、上側部の下面22cと下側部の上面22dとの間に形成された開口部内に一対の膨張機ロータ32が配置されている。膨張機ロータ32と上側部の下面22cと下側部の上面22dとの間の空間は、作動媒体が導入される空間となり、この空間内において、互いに噛み合った歯同士の間に形成される空間が、膨張室44となる。膨張室44は、膨張機ロータ32の回転に伴って軸方向に移動しつつ容積が次第に大きくなる。このため、膨張室44内において、作動媒体は漸次膨張する。
【0032】
仕切部22bの軸方向一端部には、
図1及び
図3に示すように、第1軸部34aの軸受46を保持する軸受保持部47が固定されている。軸受保持部47には、
図3に示すように、一対の軸受46が取り付けられており、これら軸受46を介して一対の第1軸部34aが回転自在に支持されている。
【0033】
仕切部22bの上側部には、軸方向の一端部(第1蓋部23側の端部)が切り欠かれることによって流入口49が形成されている。流入口49は、流入室29と仕切部22bの開口部内とを連通しており、流入室29内の作動媒体は、膨張機ロータ32の一端部(第1蓋部23側の端部)の上側に位置する流入口49を通して開口部内に導入される。
【0034】
仕切部22bの下側部は、膨張機ロータ32の一端部側を支持している。このため、膨張機ロータ32の他端部(第2蓋部24側の端部)においては、膨張室44は吐出室30と連通している。膨張室44と吐出室30とを連通する開口(流出口50)は、膨張機ロータ32の下側に位置しており、膨張室44内で膨張した作動媒体は、この流出口50を通して吐出室30に排出される。
【0035】
発電機収容室12bは、胴部22の隔壁部22aと第2蓋部24とによって区画された空間である。発電機収容室12bに収容された発電機16は、発電機収容室12b内において軸方向の中間部に配置されている。したがって、発電機収容室12bの内部は、発電機16によって前方部12cと後方部12dとに分かれている。前方部12cは、発電機16よりも前方(発電機16に対して膨張室44側)に位置する空間である。後方部12dは、発電機16よりも後方(発電機16に対して膨張室44とは反対側)に位置する空間である。前方部12cと後方部12dとはステータコア40aと発電機ロータ38との間のギャップを通して連通している。
【0036】
発電機16のステータコア40aは、
図4に示すように、ケーシング12の第2蓋部24に形成された段差部52によって位置決めされた上で、第2蓋部24に固定されている。段差部52は、第2蓋部24のうち、底部24aの周縁部に形成された筒部24bに、径方向内側に突出するように形成されている。段差部52は、筒部24bの周方向に全体に亘って連続して形成されているが、周方向に断続的に形成されていてもよい。段差部52における胴部22側の端面52aは軸方向に略垂直な面となっている。
【0037】
ステータコア40aは、第2蓋部24に圧入されていて、ステータコア40aの外周面(径方向当接部)は、第2蓋部24の筒部24bにおける内周面に当接し、ステータコア40aの一端面(軸方向当接部)は、段差部52における胴部22側の端面52aに当接している。したがって、発電機16は、第2蓋部24によってケーシング12内の所定位置に保持されている。
【0038】
ケーシング12には、
図1に示すように、第1連通部53と第2連通部54とが設けられている。第1連通部53は、膨張機ロータ32よりも上側の位置で、隔壁部22aを貫通する貫通孔によって構成されている。第1連通部53の一端部は、仕切部22bの上側部において、膨張機ロータ32の軸方向中間部に面している。このため、第1連通部53は、膨張過程の途中にある膨張室44と連通する。第1連通部53の他端部は、発電機収容室12bの前方部12cに面している。したがって、第1連通部53は、膨張室44と発電機収容室12bの前方部12cとを連通している。
【0039】
第2連通部54は、膨張機ロータ32よりも下側の位置で、隔壁部22aを貫通する貫通孔によって構成されている。第2連通部54の一端部は、吐出室30に面しており、他端部は、発電機収容室12bの前方部12cに面している。したがって、第2連通部54は、発電機収容室12bの前方部12cと吐出室30とを連通している。
【0040】
ここで、本実施形態による発電システムの運転動作について説明する。循環ポンプ8が駆動されると、循環ポンプ8から送出された液状の作動媒体は、蒸発器10の作動媒体流路10aに流入する。この作動媒体は、加熱媒体流路10bを流れる加熱媒体によって加熱されて蒸発する。蒸発器10で蒸発した作動媒体は、導入ポート26から発電装置2の流入室29内に導入される。流入室29に流入した作動媒体は、仕切部22bに形成された流入口49から膨張室44に導入される。作動媒体が膨張室44内に導入されることにより、膨張機ロータ32が回転駆動され、発電機16の発電機ロータ38が回転して発電が行われる。このとき、膨張機ロータ32の回転に伴い、膨張室44は、軸方向に移動しつつ作動媒体を漸次膨張させる。したがって、膨張室44内の作動媒体の圧力は漸次低下する。そして、発電に利用された作動媒体は、流出口50から吐出室30内に吐出される。膨張室44は、膨張過程の途中で第1連通部53が連通するため、膨張室44内の作動媒体の一部は、第1連通部53を通して発電機収容室12b内の前方部12cに導入される。この作動媒体は、前方部12c内を流れるが、このとき、ステータ40のコイル40b、発電機ロータ38を冷却する。そして、前方部12c内の作動媒体は第2連通部54を通して吐出室30内の作動媒体に合流される。すなわち、膨張過程の途中にある膨張室44内の圧力が、吐出室30内の圧力よりも高圧となっているため、両者の圧力差によって、作動媒体が発電機収容室12b内を流通する。このとき、発電機収容室12bにおいては、後方部12dを構成する第2蓋部24が塞がれているため、前方部12c内の作動媒体は、ほとんど後方部12d内に流れ込まない。
【0041】
吐出室30内の作動媒体は、吐出ポート27を通して循環流路4に排出される。発電装置2から排出されたガス状の作動媒体は、凝縮器6の作動媒体流路6aに導入される。凝縮器6においては、作動媒体は、冷却媒体流路6bを流れる冷却媒体によって冷却されて凝縮する。この液状の作動媒体は、循環流路4を流れて循環ポンプ8に吸入される。循環流路4では、このような循環が繰り返されて発電装置2において発電が行われる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、膨張室44と発電機収容室12bとが第1連通部53によって連通する。一方、発電機収容室12bと膨張室44よりも下流側の部位とが第2連通部54によって連通している。膨張室44よりも下流側の部位は、膨張過程の途中にある膨張室44内よりも低圧となっているため、両者の圧力差によって、膨張室44内の作動媒体が第1連通部53を通して発電機収容室12bに流れ、その後、第2連通部54を通して膨張室44よりも下流側の部位に流れる。このため、発電機収容室12b内の作動媒体によって発電機16を冷却することができる。したがって、冷却用の配管を新たに設けることなく簡易な構成で、作動媒体による発電機の冷却が可能となっている。また、第2連通部54が発電機16に対して膨張室44側に位置し且つ膨張室44よりも下流側の部位と、発電機前方部12cとを連通しているため、作動媒体は、発電機16内を流れることなく(或いは発電機16内を流れることがあったとしても僅かに)発電機収容室12b内を流れる。このため、発電機収容室12b内を流れる際の作動媒体の流通抵抗が大きくならない。したがって、前記圧力差によって作動媒体を有効に流動させることができ、発電効率が低下することを防止することができる。しかも、作動媒体が発電機16内を流れることがなく、或いは発電機16内を流れることがあったとしても僅かであるため、異物が作動媒体に含まれている場合であっても、発電機16内に異物が入り込む虞は少ない。
【0043】
また本実施形態では、ステータ40のコイル40bが発電機収容室12bの前方部12c内で作動媒体が流れる流路に面しているため、発熱しやすいコイル40bを効率的に冷却することができる。
【0044】
また本実施形態では、ステータコア40aがケーシング12に接合されているため、ステータコア40aの熱がケーシング12に直接伝わるが、この熱はケーシング12を通して放熱させることができる。また、ケーシング12に段差部52が設けられているため、軸方向におけるステータ40の位置決めを容易に行うことができる。また、段差部52の軸方向の位置を調整することにより、流路の幅の設計が容易となる。したがって、前方部12c内を流れる作動媒体の流量が調整され、発電機16を効率よく冷却できるとともに、膨張機14を駆動する作動媒体量が過度に低下してしまうことを防止することができる。
【0045】
また本実施形態では、第2連通部54が吐出室30に繋がっているため、ケーシング12内の構成が複雑化することを抑制でき、コスト面で有利となる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。前記実施形態の発電システム1は車載用のシステムとして構成されているが、これに限られるものではない。例えば、坑井(蒸気井)から採取された蒸気や、工場等から排出された蒸気のほか、太陽熱を熱源とする集熱器により生成された蒸気や、エンジン、圧縮機等の排熱から生成された蒸気や温水、バイオマスや化石燃料を熱源とするボイラーから生成された蒸気、温水等を加熱媒体として、これら蒸気等の熱を回収して発電を行う発電システムとして構成してもよい。
【0047】
前記実施形態では、第2連通部54が吐出室30に繋がる構成となっているが、これに限られるものではない。例えば、第2連通部54が隔壁部22aを貫通するのではなく、ケーシング12の胴部22を貫通するととともに、配管によって循環流路4に接続される構成、或いは胴部22を貫通して配管によって凝縮器6に直接接続される構成となっていてもよい。
【0048】
前記実施形態では、膨張機14が螺旋状に形成された歯を有するスクリュロータによって構成された一対の膨張機ロータ32を有しているが、この構成に限られない。例えば、
図5に示すように、膨張機14がスクロールタイプの膨張機として構成されていてもよい。この場合、膨張機14は、渦巻き状に形成された固定スクロール65と、この固定スクロール65に対して一部が接触した状態で稼働する旋回スクロール66と、両スクロール65,66を収容するケーシング12と、を有している。ケーシング12の径方向中央部に導入ポート26が形成されており、ケーシング12の外周部に吐出ポート27が形成されている。そして、導入ポート26を通して、固定スクロール65及び旋回スクロール66間の膨張室44に導入された作動媒体が旋回スクロール66を動作させる。旋回スクロール66が回動することにより、膨張室44内の容積が漸次大きくなり、作動媒体は次第に膨張する。ケーシング12の径方向中間部には、第1連通部53の一端部が開口しているため、膨張過程にある作動媒体の一部は、第1連通部53を通して発電機収容室12b内の前方部12cに導かれる。この構成でも、膨張室44内の作動媒体の圧力と、吐出室30内の作動媒体の圧力との圧力差によって、発電機収容室12b内に作動媒体を流通させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 発電システム
2 発電装置
4 循環流路
6 凝縮器
8 循環ポンプ
10 蒸発器
12 ケーシング
12a 膨張機収容室
12b 発電機収容室
12c 前方部
12d 後方部
14 膨張機
16 発電機
22 胴部
22a 隔壁部
22b 仕切部
23 第1蓋部
24 第2蓋部
26 導入ポート
27 吐出ポート
29 流入室
30 吐出室
32 膨張機ロータ
34 回転軸
38 発電機ロータ
40 ステータ
40a ステータコア
40b コイル
44 膨張室
49 流入口
50 流出口
52 段差部
52a 端面
53 第1連通部
54 第2連通部