(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891231
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ガイドレールを有する外科移植片
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
A61F2/44
【請求項の数】31
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-531760(P2013-531760)
(86)(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公表番号】特表2013-542757(P2013-542757A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】US2011053637
(87)【国際公開番号】WO2012044666
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年7月24日
(31)【優先権主張番号】12/894,796
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520330
【氏名又は名称】ストライカー・スピン
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ,ブライアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】アルハイト,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ティボドー,リー・エル
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/050322(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0229627(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0182428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端、後端、腹側、背側、上面、および底面を有する本体と、
前記本体から離れる方に延在しており、前記本体の前記後端および前記背側に接続されている、円弧状インターフェイスであって、前記インターフェイスは、前記本体に接続されたネック部および前記ネック部に接続されたリップ部を備えるレールであり、前記リップ部は、前記上面と前記底面との間に延在する方向において、前記ネック部よりも広くなっている、インターフェイスと、
を備えていることを特徴とする、人工椎間スペーサ。
【請求項2】
前記レールを第1のレール区分と第2のレール区分とに分離するノッチをさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記ノッチは、前記スペーサの長軸と実質的に平行の方向に延在していることを特徴とする、請求項2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記第1のレール区分は、前記スペーサの前記後端に配置されており、前記第2のレール区分は、前記スペーサの前記背側に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記ネック部および前記リップ部は、T字状をなしていることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記後端は、湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項7】
前記後端の湾曲および前記円弧状インターフェイスの湾曲は、互いに同心の円上にあることを特徴とする、請求項6に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記前端は、湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項9】
前記前端は、前記スペーサの回転をもたらすために隣接する椎体と協働するように構成された操舵要素を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項10】
前記操舵要素は、フィンまたは襞であることを特徴とする、請求項9に記載のスペーサ。
【請求項11】
前記操舵要素は、前記スペーサの長軸に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、請求項9に記載のスペーサ。
【請求項12】
少なくとも1つの開口が、前記上面と前記底面との間に延在していることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項13】
前記前端は、凸状に湾曲しており、前記後端は、凸状に湾曲しており、前記腹側は、凸状であり、前記背側は、凹状であり、前記本体は、前記凸状に湾曲した前端、前記凸状に湾曲した後端、前記凸状の腹側、前記凹状の背側、前記上面、および前記底面によって画定された外壁を有しており、
前記円弧状インターフェイスは、前記外壁から突出しており、前記外壁は前記上面と前記底面との間に延在する方向において、前記リップ部よりも広くなっていることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項14】
前記レールを第1のレール区分と第2のレール区分とに分離するノッチをさらに備えていることを特徴とする、請求項13に記載のスペーサ。
【請求項15】
前記ノッチは、前記スペーサの長軸と実質的に平行の方向に延在していることを特徴とする、請求項14に記載のスペーサ。
【請求項16】
前記第1のレール区分は、前記スペーサの前記後端に配置されており、前記第2のレール区分は、前記スペーサの前記背側に配置されていることを特徴とする、請求項14に記載のスペーサ。
【請求項17】
前記ネック部および前記リップ部は、T字状をなしていることを特徴とする、請求項13に記載のスペーサ。
【請求項18】
前記前端は、前記スペーサの回転をもたらすために隣接する椎体と協働するように構成された操舵要素を備えていることを特徴とする、請求項13に記載のスペーサ。
【請求項19】
前記操舵要素は、フィンまたは襞であることを特徴とする、請求項18に記載のスペーサ。
【請求項20】
前記操舵要素は、前記スペーサの長軸に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、請求項18に記載のスペーサ。
【請求項21】
少なくとも1つの開口が、前記上面と前記底面との間に延在していることを特徴とする、請求項13に記載のスペーサ。
【請求項22】
前記本体は、長軸を画定しており、前記前端は、湾曲している移行部分において前記腹側に結合しており、前記移行部分は、前記スペーサの挿入中に前記スペーサの回転をもたらすために、椎間板の線維輪と相互作用するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項23】
請求項1に記載のスペーサと、
前記スペーサを2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めするための外科工具であって、
近位端および遠位端を有する第1および第2のアームを備える把持部であって、前記遠位端は、第1の寸法だけ互いに分離されている把持部と、
内面を有するスリーブであって、前記スリーブは、前記把持部の周りに摺動可能に配置されており、前記内面の少なくとも一部は、前記第1の寸法よりも小さい内側寸法を有しているスリーブと、
前記第1および第2のアームの前記近位端に接続されたハンドル部であって、前記ハンドル部は、ロッドアクチュエータおよびスリーブアクチュエータを有しており、前記スリーブアクチュエータは、前記スリーブを前記第1および第2のアームに対して摺動させるように、前記スリーブに接続されているハンドル部と、
前記第1および第2のアームの前記遠位端に隣接して配置された第1の端、および第2の端を有するロッドであって、前記ロッドアクチュエータは、前記ロッドを前記把持部に対して摺動させるように、前記第2の端に接続されているロッドと、
を備えている外科工具と、
を備えていることを特徴とする、キット。
【請求項24】
前記第1および第2のアームは、前記第1および第2のアームの前記遠位端が、互いに向かうようにまたは互いから離れるように移動可能となるべく、前記ハンドル部に柔軟に接続されていることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記第1および第2のアームは、前記第1の距離よりも小さい第2の距離だけ互いに分離した近位端をさらに備えていることを特徴とする、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記内側寸法は、前記第2の距離よりも大きくなっていることを特徴とする、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記第1および第2のアームの前記遠位端の各々は、前記スペーサのインターフェイスに係合するために、対向アームの方を向いた突起をさらに備えていることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
前記第1および第2のアームの前記遠位端は、前記スペーサの前記インターフェイスに嵌合するように湾曲していることを特徴とする、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記ハンドル部は、グリップおよびシャフト部を備えており、前記シャフト部は、前記グリップに接続された近位端および前記把持部に接続された遠位端を有していることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項30】
前記スリーブアクチュエータは、前記ハンドル部に配置された回転可能なノブを備えていることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項31】
前記ロッドアクチュエータは、前記ハンドル部に配置された摺動可能なスイッチ、および前記摺動可能なスイッチを前記ハンドル部に対して係止するためのネジを備えていることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2010年9月30日に出願された「ガイドレールを有する外科移植片」と題する出願第12/894,796号の利得を主張するものであり、その開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、脊椎移植片およびこのような移植片を移植する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、挿入器具と協働するためのガイドレールを有する脊椎移植片、および該移植片の移植に関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背痛は、多くの異なる状況、例えば、脊椎の椎間板に悪影響を与えるいくつかの問題のいずれか1つによって生じる可能性がある。これらの椎間板の問題として、例えば、椎間板の変性、膨出、ヘルニア形成、薄化、および異常な動きが挙げられ、生じる苦痛は、一般的に、互いに隣接する椎骨の1つが不均一な圧力を椎間板に加えたときまたは互いに隣接する椎骨の両方がこのような圧力を椎間板に加えたときに不可避的に生じる摩擦または圧力に起因している。多くの場合、椎間板の問題によって、椎骨と脊柱内に位置する極めて多くの神経の1つとの衝突が生じることになる。
【0004】
このような椎間板の問題を解消するために一般的に利用されている1つの外科方法は、融合手術である。この手術では、外科医によって、互いに隣接する椎骨が、高さ方向における一箇所または複数箇所において、一緒に融合されることになる。頸部椎体、胸部椎体、または腰部椎体に対するこのような手術のための種々の方法(およびこれらの方法に用いられる種々の装置)が、開発されてきている。これらの融合手術は、本明細書では、椎体間融合または「IF」と称される。伝統的なIF技術は、一般的に、問題が生じている椎間板の少なくとも一部を患者から除去し、移植材料を適所に保持するために、かつ中実の骨塊が互いに隣接する椎骨間に生成する間、該椎骨を支持するために、脊椎移植装置を空間内に挿入し、さらに、椎間板の側面に位置する椎骨間の空間内に骨移植材料を追加することを含んでいる。多くの場合、移植片を挿入するステップおよび骨移植材料を挿入するステップは、最初、移植片に骨移植材料を装填し、その後、この組立物を移植することを含んでいる。
【0005】
IFは、前述の椎間板の問題を解消するための旧来の技術であるが、常に更新されている技術でもある。例えば、種々の移植片は、特定の要求に適するように作り出されてきており、このような移植片を挿入する方法および該移植片を受け入れるために椎骨を前処理する方法は、常に進展している。これまでに存在し、かつこれからも存在し続ける1つの重要な課題は、外科部位への視界が患者の生体組織によって遮られることが多いことである。例えば、脊椎の頸部では、椎体がかなり小さく、包囲している患者の生体組織、例えば、食道および他の体内部分が接近しており、外科部位の視認がかなり困難である。これは、多くの場合、外科医が移植片を椎骨に対して適切に位置決めするのを妨げることになる。さらに、多くのIF手術では、患者の生体組織の必要な取扱い、椎体の拡張、および椎体の前処理は、多くの場合、患者内に著しい組織の瘢痕をもたらすことになる。これは、後で必要な脊椎手術を行うときに弊害をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、これらの欠点を改良する脊椎移植片および該移植片を用いる方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、人工椎間スペーサである。この第1の態様の一実施形態によれば、スペーサは、前端、後端、腹側、背側、上面、および底面を有する本体と、本体から離れる方に延在しており、本体の後端および背側に接続されている円弧状インターフェイスとを備えている。
【0008】
第1の態様の他の実施形態によれば、インターフェイスは、本体に接続されたネック部およびネック部に接続されたリップ部を備えるレールから構成されている。リップ部は、上面と底面との間に延在する方向において、ネック部よりも広くなっていてもよい。インターフェイスのネック部およびリップ部は、T字状をなしていてもよい。加えて、ノッチがインターフェイスに設けられていてもよく、これによって、レールが、第1のレール区分と第2のレール区分とに分離されることになる。第1のレール区分は、スペーサの後端に配置されていてもよく、第2のレール区分は、スペーサの背側に配置されていてもよい。ノッチは、スペーサの長軸と実質的に平行の方向に延在していてもよい。
【0009】
第1の態様のさらに他の実施形態によれば、スペーサの後端は、湾曲しており、場合によっては、後端の湾曲および円弧状インターフェイスの湾曲は、互いに同心の円上にあってもよい。他の実施形態では、前端は湾曲しており、挿入中にスペーサの回転をもたらすために隣接する椎体と協働するように構成された操舵要素を備えている。いくつかの実施形態では、操舵要素は、フィンまたは襞であり、スペーサの長軸に対して傾斜して配置されている。さらに、スペーサは、上面と底面との間に延在する少なくとも1つの開口を備えていてもよい。開口は、骨成長誘導物質が該開口内に配置されることを可能にするようになっていてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様は、他の人工椎間スペーサである。第2の態様の一実施形態によれば、スペーサは、凸状に湾曲した前端、凸状に湾曲した後端、凸状の腹側、凹状の背側、上面、および底面を有する外壁によって画定された本体を備えている。スペーサは、外壁から突出しており、本体の後端および背側に接続されている円弧状インターフェイスをさらに備えており、インターフェイスは、本体に接続されたネック部およびネック部に接続されたリップ部を備えるレールである。リップ部は、ネック部の第2の寸法よりも大きい第1の寸法を有しており、外壁は、第1の寸法よりも大きい第3の寸法を有しており、第1の寸法、第2の寸法および第3の寸法は、上面と底面との間に延在している。
【0011】
この第2の態様の他の実施形態によれば、レールは、レールを第1のレール区分と第2のレール区分とに分離するノッチをさらに備えている。ノッチは、スペーサの長軸と実質的に平行の方向に延在していてもよい。第1のレール区分は、スペーサの後端に配置されていてもよく、第2のレール区分は、スペーサの背側に配置されていてもよい。さらに、インターフェイスのネック部およびリップ部は、T字状をなしていてもよい。
【0012】
第2の態様の他の実施形態では、前端は、スペーサの回転をもたらすために隣接する椎体と協働するように構成された操舵要素を備えている。操舵要素は、フィンまたは襞であってもよい。加えて、操舵要素は、スペーサの長軸に対して傾斜して配置されていてもよい。最後に、スペーサは、上面と底面との間に延在する少なくとも1つの開口を備えていてもよい。開口は、骨成長誘導物質が該開口内に配置されることを可能にするようになっていてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様は、他の人工椎間スペーサである。第3の態様によるこのスペーサは、前端、後端、腹側、背側、および長軸を有する本体を備えている。前端は、好ましくは、湾曲している移行部分において腹側に結合しており、移行部分は、スペーサの挿入中にスペーサの回転をもたらすために、椎間板の線維輪と相互作用するように構成されている。スペーサは、本体から離れる方に延在しており、本体の後端および背側に接続されている円弧状インターフェイスをさらに備えているとよい。いくつかの実施形態では、インターフェイスは、本体に接続されたネック部およびネック部に接続されたリップ部を備えるレールであり、リップ部は、上面と底面との間に延在する方向において、ネック部よりも広くなっている。
【0014】
本発明の第4の態様は、人工椎間スペーサを2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めするための外科工具である。第4の態様の一実施形態によれば、工具は、近位端および遠位端を有する第1および第2のアームを備える把持部であって、遠位端は、第1の寸法だけ互いに分離されている把持部と、内面を有するスリーブであって、把持部の周りに摺動可能に配置されており、内面の少なくとも一部は、第1の寸法よりも小さい内側寸法を有しているスリーブと、第1および第2のアームの近位端に接続されたハンドル部であって、ロッドアクチュエータおよびスリーブアクチュエータを有しており、スリーブアクチュエータは、スリーブを第1および第2のアームに対して摺動させるように、スリーブに接続されているハンドル部と、第1および第2のアームの遠位端に隣接して配置された第1の端、および第2の端を有するロッドであって、ロッドアクチュエータは、ロッドを把持部に対して摺動させるように、第2の端に接続されているロッドと、を備えている。
【0015】
本発明の第4の態様の他の実施形態によれば、第1および第2のアームは、第1および第2のアームの遠位端が、互いに向かうようにまたは互いから離れるように移動可能であって、ハンドル部に柔軟に接続されている。さらに、第1および第2のアームは、第1の距離よりも小さい第2の距離だけ互いに分離した近位端をさらに備えていてもよい。第1および第2のアームの遠位端の各々は、スペーサのインターフェイスに係合するために、対向アームの方を向いた突起をさらに備えていてもよい。第1および第2のアームの遠位端は、スペーサの内面に嵌合するように湾曲していてもよい。
【0016】
さらに他の実施形態では、内側寸法は、第2の距離よりも大きくなっている。ハンドル部は、グリップおよびシャフト部を備えていてもよく、シャフト部は、グリップに接続された近位端および把持部に接続された遠位端を有していてもよい。同様に、スリーブアクチュエータは、ハンドル部に配置された回転可能なノブを備えていてもよい。さらに、ロッドアクチュエータは、ハンドル部に配置された摺動可能なスイッチと、摺動可能なスイッチをハンドル部に対して係止するためのネジを備えていてもよい。
【0017】
本発明の第5の態様は、人工椎間スペーサを2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めするために、外科工具を用いる方法である。この態様の一実施形態によれば、該方法は、外科工具を準備するステップであって、外科工具は、近位端および遠位端を有する第1および第2のアームを有する把持部であって、遠位端は、第1の寸法だけ互いに分離されている把持部と、内面を有するスリーブであって、スリーブは、把持部の周りに摺動可能に配置されており、内面の少なくとも一部は、第1の寸法よりも小さい内側寸法を有しているスリーブと、第1および第2のアームの近位端に接続されたハンドル部であって、ハンドル部は、ロッドアクチュエータおよびスリーブアクチュエータを有しており、スリーブアクチュエータは、スリーブを第1および第2のアームに対して摺動させるように、スリーブに接続されているハンドル部と、第1および第2のアームの遠位端に隣接して配置された第1の端、および第2の端を有するロッドであって、ロッドアクチュエータは、ロッドを把持部に対して摺動させるように、第2の端に接続されているロッドとを備えている、ステップを含んでいる。また、該方法は、第1および第2のアームの遠位端を椎間スペーサのインターフェイスに隣接して位置決めするステップと、内側寸法を有するスリーブの内面の一部が第1および第2のアームの遠位端に被さるようにスリーブを移動させ、これによって、工具をスペーサのインターフェイスに係合させるステップと、ロッドの第1の端をスペーサのノッチに係合させるステップと、を含んでいるとよい。
【0018】
第5の態様の他の実施形態によれば、該方法は、スペーサを椎間板隙内に挿入するステップ、ロッドの第1の端をノッチから離脱させるステップ、および/またはロッドがノッチから離脱したときにスペーサを椎間板隙内にさらに挿入するステップをさらに含んでいる。工具は、スペーサに係合したとき、スペーサのインターフェイスに沿って摺動するように構成されていてもよく、この場合、スペーサをさらに挿入するステップは、スペーサを椎間板隙内において回転させながら、工具をスペーサのインターフェイスに沿って摺動させることを含むことになる。スペーサの相対的回転は、ロッドがノッチに係合しているとき阻止され、ロッドがノッチから離脱したとき可能になるようになっていてもよい。離脱ステップは、スペーサが椎間板隙の腹側部分における線維輪の部分に接触するときに、行われるようになっていてもよい。
【0019】
さらに他の実施形態では、第5の態様の方法は、線維輪の一部のみを貫通する孔を形成し、線維輪の残りを損なわないようにするステップをさらに含んでおり、この場合、挿入ステップは、スペーサを孔を通して挿入することを含むことになる。スリーブを移動させるステップは、スリーブアクチュエータを作動させることを含んでいてもよい。該方法は、スリーブアクチュエータの回転可能なノブを回転させることによって、スペーサに対する工具の把持を締め付けることをさらに含んでいてもよい。ロッドの第1の端を係合するステップは、ロッドアクチュエータを作動させることを含んでいてもよい。作動ステップは、ロッドアクチュエータ内において摺動可能なスイッチをハンドル部に対して摺動させ、次いで、ロッドアクチュエータのネジを締め付けることによって、摺動可能なスイッチをハンドル部に係止することを含んでいてもよい。該方法は、ネジを緩め、摺動可能なスイッチをハンドル部に対して摺動させることによって、ロッドの第1の端をノッチから離脱させるステップをさらに含んでいてもよい。工具の第1および第2のアームは、ハンドル部に柔軟に接続されていてもよく、スリーブを移動させるステップによって、第1および第2のアームの遠位端が互いに向かって移動するようになっていてもよい。さらに他の実施形態では、第1および第2のアームの遠位端の各々は、スペーサのインターフェイスに係合するために、対向アームの方を向いた突起を備えており、スリーブを移動させるステップによって、第1および第2のアームの遠位端は、突起をスペーサのインターフェイスの対応する溝に係合させるようになっている。加えて、ハンドル部は、グリップおよびシャフト部を備えていてもよく、シャフト部は、グリップに接続された近位端および把持部に接続された遠位端を有していてもよい。
【0020】
本発明の第6の態様は、人工椎間スペーサを2つの互い隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めするために、外科工具を用いる他の方法である。第6の態様による方法は、外科工具の第1および第2のアームの遠位端を椎間スペーサのインターフェイスに隣接して位置決めするステップであって、遠位端は、第1の寸法だけ互いに分離しているステップと、工具のスリーブを、第1の寸法よりも小さい内側寸法を有するスリーブの内面の一部が第1および第2のアームの遠位端に被さるように移動させ、これによって、工具をスペーサのインターフェイスに係合させるステップと、工具のロッドをスペーサのノッチ内に係合させるステップと、を含んでいる。
【0021】
第6の態様の実施形態によれば、該方法は、スペーサを椎間板隙内に挿入するステップ、ロッドをノッチから離脱させるステップ、および/またはロッドがノッチから離脱したとき、スペーサを椎間板隙内にさらに挿入するステップをさらに含んでいる。さらに他の実施形態では、工具は、スペーサに係合したときにスペーサのインターフェイスに沿って摺動するように構成されており、スペーサをさらに挿入するステップは、スペーサを椎間板隙内において回転させながら、工具をスペーサのインターフェイスに沿って摺動させることを含んでいる。スペーサと工具との間の相対的回転は、ロッドがノッチに係合しているときに阻止され、ロッドがノッチから離脱したときに可能となるようになっていてもよい。離脱ステップは、スペーサが椎間板隙の腹側部分における線維輪の部分に接触するとき、行われるようになっていてもよい。
【0022】
さらに、第6の態様の方法は、線維輪の一部のみを貫通する孔を形成し、線維輪の残りを損なわないようにするステップをさらに含んでいてもよく、この場合、挿入ステップは、スペーサを孔を通して挿入することを含むことになる。スリーブを移動させるステップは、工具のスリーブアクチュエータを作動させること、具体的には、スリーブアクチュエータの回転可能なノブを回転させることによって、スペーサに対する工具の把持を締め付けることを含んでいてもよい。ロッドを係合させるステップは、工具のロッドアクチュエータを作動させること、例えば、ロッドアクチュエータの摺動可能なスイッチをハンドル部に対して摺動させ、ロッドアクチュエータのネジを締め付けることによって、摺動可能なスイッチをハンドル部に係止することを含んでいてもよい。該方法は、ネジを緩め、摺動可能なスイッチをハンドル部に対して摺動させることによって、ロッドの第1の端をノッチから離脱させるステップをさらに含んでいてもよい。工具の第1および第2のアームは、工具のハンドル部に柔軟に接続されていてもよく、スリーブを移動させるステップによって、第1および第2のアームの遠位端が互いに向かって移動するようになっていてもよい。第1および第2のアームの遠位端の各々は、スペーサのインターフェイスに係合するために、対向アームの方を向いた突起を備えていてもよく、スリーブを移動させるステップによって、第1および第2のアームの遠位端は、突起をスペーサのインターフェイスの対応する溝に嵌合させるようになっていてもよい。
【0023】
本発明の第7の態様は、人工椎間スペーサを2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めする方法である。第7の態様の一実施形態によれば、該方法は、スペーサを準備するステップであって、スペーサは、前端、後端、および長軸を有する本体と、本体から離れる方に延在しており、本体の後端に接続されているインターフェイスとを備えているステップと、工具をインターフェイスに係合させるステップと、工具を挿入方向に沿って移動させることによって、スペーサを椎間板隙内に少なくとも部分的に挿入するステップと、工具を挿入方向に沿って継続的に移動させながら、スペーサが椎間板隙内において挿入方向に対して回転することを可能にするステップと、を含んでいる。
【0024】
第7の態様のいくつかの実施形態によれば、工具を挿入するステップおよびスペーサの回転を可能にするステップ中、工具は、インターフェイスに対するその係合を保持するようになっていてもよい。スペーサの回転を可能にするステップは、前端が椎間板の線維輪と相互作用し、挿入方向に対するスペーサの回転をもたらすことを可能にすることを含んでいてもよい。該方法は、線維輪の一部のみを貫通する孔を形成し、線維輪の残りを損なわないようにするステップをさらに含んでいてもよく、この場合、挿入ステップは、スペーサを孔を通して挿入することを含むことになる。スペーサは、椎間板隙の腹側に位置決めされるように、挿入されるようになっていてもよい。スペーサは、スペーサの長軸が挿入方向と直交する最終位置に挿入されるようになっていてもよい。スペーサの長軸は、椎間板隙の中央−側方軸と実質的に平行であってもよい。スペーサは、スペーサの長軸が挿入方向に対して略80°回転されるように、挿入されるようになっていてもよい。スペーサの回転を可能にするステップは、スペーサの回転中、工具がインターフェイスに沿って摺動することを可能にすることを含んでいてもよい。挿入方向は、椎間板隙の背側−腹側軸と実質的に平行であってもよい。スペーサのインターフェイスは、ノッチを備えていてもよく、工具は、ノッチに係合可能なロッドを備えていてもよく、この場合、該方法は、スペーサと工具との間の相対的回転を阻止するために、ロッドをノッチに係合させるステップと、スペーサと工具との間の相対的回転を可能にするために、ロッドをノッチから離脱させるステップと、をさらに含むことになる。スペーサの回転を可能にするステップは、ロッドがノッチから離脱した後に行われるようになっていてもよい。スペーサは、ロッドがノッチに係合した状態で少なくとも部分的に挿入され、ロッドがノッチから離脱した状態で少なくとも部分的に挿入されるようになっていてもよい。本体は、上面、底面、および上面と底面との間に延在する少なくとも1つの開口をさらに備えていてもよく、この場合、該方法は、骨移植材料を少なくとも1つの開口内に装填するステップをさらに含むことになる。スペーサは、椎間板隙内におけるスペーサの回転を助長するために、スペーサの後端の摩擦特性よりも大きい摩擦特性を有する前端を備えていてもよい。スペーサの回転を可能にするステップは、スペーサの前端に配置された操舵要素が、2つの互いに隣接する椎体の1つと協働し、挿入方向に対するスペーサの回転をもたらすことを可能にすることをさらに含んでいてもよい。操舵要素は、長軸に対して傾斜して配置されていてもよい。操舵要素は、フィンまたは襞であってもよい。
【0025】
本発明の第8の態様は、人工椎間スペーサを2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めする他の方法である。第8の態様の一実施形態によれば、該方法は、スペーサを準備するステップであって、スペーサは、前端、後端、および長軸を有する本体と、本体から離れる方に延在しており、本体の後端に接続されているインターフェイスとを備えており、インターフェイスは、ノッチを備えているステップと、工具をインターフェイスに係合するステップであって、工具は、ロッドを備えているステップと、スペーサと工具との間の相対的回転を阻止するために、ロッドをノッチに係合させるステップと、工具を挿入方向に沿って移動させることによって、スペーサを椎間板隙内に少なくとも部分的に挿入するステップと、ロッドをノッチから離脱させるステップと、工具を実質的に挿入方向に沿って移動させることによって、離脱ステップの後、スペーサを椎間板隙内にさらに挿入するステップと、工具を挿入方向に継続的に移動させながら、ロッドがノッチから離脱したとき、スペーサが椎間板隙内において挿入方向に対して回転することを可能にするステップと、を含んでいる。
【0026】
第8の態様のいくつかの実施形態によれば、該方法は、線維輪の一部のみを貫通する孔を形成し、線維輪の残りを損なわないようにするステップをさらに含んでおり、この場合、挿入ステップは、スペーサを孔を通して挿入することを含んでいる。スペーサの回転を可能にするステップは、前端が椎間板の線維輪と相互作用し、挿入方向に対するスペーサの回転をもたらすことを可能にすることを含んでいてもよい。挿入ステップおよびスペーサの回転を可能にするステップ中、工具は、インターフェイスに対するその係合を保持するようになっていてもよい。スペーサは、椎間板隙の腹側に位置するように、挿入されるようになっていてもよい。スペーサは、スペーサの長軸が挿入方向と直交する最終位置に挿入されるようになっていてもよい。スペーサの長軸は、椎間板隙の中央−側方軸と実質的に平行であってもよい。スペーサは、スペーサの長軸が挿入方向に対して略80°回転されるように、挿入されるようになっていてもよい。スペーサの回転を可能にするステップは、スペーサの回転中、工具がインターフェイスに沿って摺動することを可能にすることを含んでいてもよい。スペーサの前端は、操舵要素を備えていてもよく、スペーサの回転を可能にするステップは、操舵要素が互いに隣接する椎体の1つと協働し、挿入方向に対するスペーサの回転をもたらすことを可能にすることをさらに含んでいてもよい。操舵要素は、長軸に対して傾斜して配置されていてもよい。操舵要素は、フィンまたは襞であってもよい。挿入方向は、椎間板隙内に軸方向に進入して背側に向かう方向と実質的に平行であってもよい。
【0027】
さらに、本体は、上面、底面、および上面と底面との間に延在する少なくとも1つの開口をさらに備えていてもよく、この場合、該方法は、骨移植材料を少なくとも1つの開口内に装填するステップをさらに含むことになる。スペーサは、椎間板隙内におけるスペーサの回転を助長するために、スペーサの後端の摩擦特性よりも大きい摩擦特性を有する前端をさらに備えていてもよい。第1の挿入ステップは、スペーサの長軸と実質的に平行の第1の軸に沿って、スペーサに力を加えることを含んでいてもよく、第2の挿入ステップは、長軸に対して0°よりも大きい角度をなす第2の軸に沿って、スペーサに力を加えることを含んでいてもよい。
【0028】
本発明の第9の態様は、人工椎間スペーサを2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めする他の方法である。第9の態様の一実施形態によれば、該方法は、スペーサを準備するステップであって、スペーサは、前端、後端、および長軸を有する本体と、本体から離れる方に延在しており、本体の後端に接続されているインターフェイスとを備えているステップと、インターフェイスに係合された工具に力を加え、スペーサを椎間板隙内に移動させるステップであって、力は、挿入方向に沿って向けられているステップと、前端が、椎間板の線維輪と相互作用し、工具を挿入方向に継続的に移動させながら、挿入方向に対するスペーサの回転をもたらすことを可能にするステップと、
を含んでいる。
【0029】
第9の態様の他の実施形態では、該方法は、線維輪の一部のみを貫通する孔を形成し、線維輪の残りを損なわないようにするステップと、スペーサを孔を通して挿入するステップと、をさらに含んでいる。工具とインターフェイスとの間の係合は、力を加えるステップおよびスペーサの回転を可能にするステップ中、保持されるようになっていてもよい。スペーサの回転を可能にするステップは、スペーサの回転中、工具がインターフェイスに沿って摺動することを可能にすることを含んでいてもよい。スペーサのインターフェイスは、ノッチを備えていてもよく、工具は、ノッチに係合されるロッドを備えていてもよく、この場合、該方法は、スペーサと工具との間の相対的回転を阻止するために、ロッドをノッチに係合させるステップと、スペーサと工具との間の相対的回転を可能にするために、ロッドをノッチから離脱させるステップと、をさらに含むことになる。スペーサの回転を可能にするステップは、ロッドがノッチから離脱された後に、行われるようになっていてもよい。スペーサは、ロッドがノッチに係合した状態で少なくとも部分的に挿入され、ロッドがノッチから離脱した状態で少なくとも部分的に挿入されるようになっていてもよい。スペーサの回転を可能にするステップは、スペーサの前端に配置された操舵要素が、隣接する椎体と協働し、挿入方向に対するスペーサの回転をもたらすことを可能にすることを含んでいてもよい。操舵要素は、長軸に対して傾斜して配置されていてもよい。操舵要素は、フィンまたは襞であってもよい。力を加えるステップは、挿入方向がスペーサの長軸と実質的に平行であることを含んでいてもよく、該方法は、長軸に対して0°よりも大きい角度をなす第2の軸に沿って、スペーサに第2の力を加えるステップをさらに含んでいてもよい。
【0030】
本発明の主題のさらに完全な理解およびその種々の利点は、添付の図面に基づいて以下の詳細な説明を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による人工椎間スペーサの前方斜視図である。
【
図2】
図1に示されているスペーサの上部斜視図である。
【
図3】
図1に示されているスペーサの上面図である(底面図は、この上面図と鏡象関係にある)。
【
図4】
図1に示されているスペーサの側面図である。
【
図5】
図1に示されているスペーサの修正形態の断面図であって、断面が
図1の線X−Xと同様の箇所に沿って切断されている、断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による人工椎間スペーサを挿入し、次いで位置決めするのに用いられる外科工具の斜視図である。
【
図7】
図6に示されている挿入工具の分解斜視図である。
【
図9】
図1に示されているスペーサと
図6に示されている挿入工具との間の初期接続を示す図である。
【
図10】挿入工具がロック位置にある、
図9に示されているスペーサと挿入工具との組立体を示す図である。
【
図11】スペーサが挿入工具に対して回転された状態にある、
図9に示されているスペーサと挿入工具との組立体を示す図である。
【
図12】スペーサが挿入工具に対して完全に回転された状態にある、
図9に示されているスペーサと挿入工具との組立体を示す図である。
【
図13】スペーサが挿入工具から離脱された状態にある、
図9に示されているスペーサと挿入工具との組立体を示す図である。
【
図14】椎間腔に関連して
図9に示されているスペーサと挿入工具との組立体を示す図である。
【
図15】スペーサが完全な挿入位置にある、椎間腔に関連して
図9に示されているスペーサと挿入工具との組立体を示す図である。
【
図16a-16g】
図6に示されている挿入工具および椎体に関連して
図1に示されているスペーサの挿入の種々の段階を示す図である。
【
図17】本発明の他の実施形態による人工椎間スペーサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図示され、かつ図面に関連して記載されることになる対象の好ましい実施形態を説明するに際して、明瞭にするために、特定の専門用語が用いられることになる。しかし、本発明は、本明細書に用いられるどのような特定の用語にも制限されることを意図しておらず、特定の用語の各々は、同様の目的を達成するために同じように作用する全ての技術的に等価の用語を含んでいることを理解されたい。
【0033】
骨または体の他の部分を参照するとき、本明細書に用いられる「近位側(proximal)」という用語は、心臓により近い側を意味しており、「遠位側(distal)」という用語は、心臓からより遠い側を意味している。「低い(inferior)」という用語は、脚に向かう方を意味しており、「高い(superior)」という用語は、頭に向かう方を意味している。「腹側(anterior)」という用語は、体の前部または顔に向かう側を意味しており、「背側(posterior)」という用語は、体の背中に向かう側を意味している。「中央の(medial)」という用語は、体の正中線に向かう方を意味しており、「側方の(lateral)」という用語は、体の正中線から離れる方を意味している。
【0034】
図1〜
図4を参照すると、本発明の一実施形態による人工椎間スペーサ10が示されている。図示されているように、スペーサ10は、本体12を備えている。本体12は、前端14、後端16、腹側18、背側20、上面22、および底面24を備えている。スペーサ10は、インターフェイス26をさらに備えている。インターフェイス26は、ネック部28、リップ部30およびノッチ32を備えている。ノッチ32は、インターフェイス26を(
図2および
図3に最もよく示されている)第1の区分26aと第2の区分26bとに分離している。
図1〜
図4に示されている実施形態では、インターフェイス26は、円弧状であり、最も好ましくは、レールとして特徴付けられているとよい。しかし、他の実施形態では、インターフェイス26は、形状、大きさ、および形態が変更されてもよく、唯一の制限は、以下により詳細に記載されるような挿入工具との協働作用である。同様に、
図1〜
図4に示されている実施形態では、ノッチ32は、スペーサ10の長軸と実質的に平行の方向に延在するものとして示されており、ネック部28およびリップ部30は、T字状をなすものとして示されている。ここでも、これらの要素は、他の実施形態において変更されてもよい。
【0035】
スペーサ10は、好ましくは、ポリマー材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(Peek)から構成されている。しかし、スペーサ10は、実用的には、ヒトの体内への移植に適するどのような材料から構成されていてもよい。前端14および後端16は、湾曲しているものとして示されており、後端の湾曲および円弧状インターフェイス26の湾曲は、互いに同心の円上にあるものとして示されている。ここでも、他の実施形態では、この構成は、変更されてもよい。例えば、実質的に正方形状または矩形状のスペーサ10を提供することも考慮されている。
図1〜
図4に示されている実施形態では、前端14は、スペーサ10のテーパー付きノーズ部を画定している。しかし、他の実施形態では、前端14は、(テーパー付きノーズ構造に加えてまたはテーパー付きノーズ構造に代わって)、操舵要素を備えていてもよい。この操舵要素は、挿入中にスペーサ10の回転をもたらすために、スペーサ10が介装されることになる互いに隣接する錐体の少なくとも1つと協働するように構成されている。このような操作要素は、フィンまたは襞から構成されているとよく、スペーサ10の長軸に対して傾斜して配置されているとよい。この種の1つの例示的スペーサ110が、
図17に示されている。この場合、操作要素112は、襞の形態を取っている。勿論、このような操舵要素を用いる他の実施形態では、他の設計が用いられてもよい。
【0036】
図示されている実施形態では、上面22および底面24は、各々、歯34の形態にある複数の骨係合特徴部を備えている。互いに隣接する錐体へのスペーサ10の固定を助長するための他の特徴部が、用いられてもよい。スペーサ10は、上面22および底面24を貫通して形成された開口36a,36bも備えている。開口36a,36bは、ストラット38によって、互いに分離されている。ストラット38は、上面22および底面24の両方に対して凹んでいる。他の実施形態では、ストラット38は、上面22および底面24と同一平面をなすように形成されていてもよいし、または上面22および底面24の一方または他方に対してのみ凹んでいてもよい。開口36a,36bは、好ましくは、以下にさらに詳細に説明するように、骨成長材料を受け入れるように設計されている。また、開口36a,36bは、鋭利なコーナを避けるために、楕円形状を有している。鋭利なコーナは、一般的に、工学的な応力を生じ、患者の内部生体組織を傷付ける可能性がある。スペーサ10は、横方向穿孔40a,40bおよび複数の垂直方向マーカー42a,42bをさらに備えている。横方向穿孔40a,40bは、好ましくは、(スペーサを介して)上下椎骨間に発達する融合が横方向にも拡がることを可能にするように設計されている。垂直方向マーカー42a,42bは、好ましくは、タンタルから構成されており、スペーサ10内に圧入されている。マーカー42a,42bは、通常のX線技術によるスペーサ10の視覚的識別を容易にするものである。
【0037】
好ましくは、
図1〜
図4に示されているスペーサ10は、好ましくは15mmから40mmの範囲内、さらに好ましくは26mmから31mmの範囲内にある前端14から後端16までの長さ寸法、および、好ましくは17mmから42mmの範囲内、さらに好ましくは28mmから32mmの範囲内にある前端14からインターフェイス26の端までの長さ寸法を備えている。
図1〜
図4に示されているスペーサ10の腹側18から背側20までの幅寸法は、好ましくは、8mmから16mmの範囲内にあり、さらに好ましくは、略12mmである。また、
図1〜
図4に示されているスペーサ10も、好ましくは、6mmから15mmの範囲内にある上面22から底面24までの高さ寸法を備えている。勿論、他の実施形態では、スペーサ10は、どのような寸法を有していてもよい。例えば、脊椎の頸領域に用いられるように設計されたスペーサ10は、胸椎または腰椎に用いられるように設計されたスペーサ10よりも小さくなっているとよい。
【0038】
図1〜
図4では、スペーサ10は、互いに平行に配置された上面22および底面24を有するものとして示されているが、
図5は、上面22および底面24が腹側18から背側20に向かってテーパーが付されているスペーサ10の態様を示している。このテーパー構造は、好ましくは、互いに隣接する椎骨の自然前弯角度の回復に役立つことになる。各テーパー角度は、好ましくは、自然前湾角度に適合するために、スペーサ10の中央平面に対して0°から10°の範囲内にあるが、脊椎に用いられるのに適するどのような角度であってもよい。一般的に、
図1〜
図4に示されているようなスペーサまたは
図5に示されているようなスペーサのいずれが必要であるかは、特定の患者の生体組織によって、決定されることになる。しかし、外科医が、他の理由からこれらの設計の一方または他方を用いてもよい。
【0039】
図6〜
図9は、人工椎間スペーサ、例えば、前述のスペーサ10を2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めするのに用いられる挿入工具50を示している。
図7および
図8の分解図により明瞭に示されているように、挿入工具50は、第1および第2のアーム54a,54bを有する把持部52を備えている。第1および第2のアーム54a,54bは、好ましくは、互いに対して移動可能になっている。図示されている特定の実施形態では、アーム54a,54bは、把持部52の他の部分に取り付けられた近位端と、遠位端であって、該遠位端間の寸法が変化可能になっている、遠位端とを有するバネクリップとして作用するようになっている。他の実施形態では、アーム54a,54bは、別の形態で移動可能、例えば、回転可能になっていてもよい。工具50は、スリーブ56をさらに備えている。スリーブ56は、把持部52の周りに摺動可能に配置された内面57を有している。スリーブ56の内面57の一部は、互いに向き合った面を備えており、これらの面は、好ましくは、アーム54a,54bの外側部分間の静止寸法よりも小さい寸法だけ互いに離間している。これによって、スリーブの遠位側への摺動時に、アーム54a,54b間の距離を短縮させることができる。これによって、好ましくは、アーム54a,54bを(例えば、静止寸法だけ互いに離れており、スペーサ10を受け入れることができる)初期位置に配置させ、次いで、スリーブ56の摺動によって、アーム54a,54bをインターフェイス26に固定させることが可能になる。これに関連して、アーム54a,54bは、好ましくは、それぞれ、インターフェイス26のネック部28とリップ部30との間に形成された肩に隣接して配置される突起58a,58bを備えている。さらに、アーム54a,54bおよび突起58a,58bは、好ましくは、インターフェイス26の湾曲と適切に協働するように湾曲されており、これによって、工具50に対するスペーサ10の回転が可能になる。スペーサ10と工具50との間の回転関係は、以下にさらに詳細に説明する。
【0040】
図6に最もよく示されているように、工具50は、把持部52に接続されたハンドル部60をさらに備えている。ハンドル部60は、好ましくは、スリーブ56の摺動をもたらすためのスリーブアクチュエータ62をさらに備えている。図示されている実施形態では、スリーブアクチュエータ62は、回転可能なノブを備えており、このノブの回転によって、スリーブ56の摺動を生じさせるようになっている。ハンドル部60は、好ましくは、ロッドアクチュエータ63も備えている。ロッドアクチュエータ63は、スペーサ10の回転ロックとして作用する(
図7および
図8に最もよく示されている)ロッド64の運動を生じさせるためのものである。図示されている実施形態では、ロッドアクチュエータ63は、スイッチの形態を取っており、その摺動によって、ロッド64の運動を生じさせるようになっている。ハンドル部60は、好ましくは、グリップ66も備えている。グリップ66は、外科医によって把持されるのに適する材料によって、人間工学的な形状に形成されているとよい。
【0041】
図9〜
図13は、スペーサ10と挿入工具50との間の協働関係を示している。
図9を参照すると、スペーサ10と工具50との間の初期接続が示されている。前述したように、アーム54a,54bは、好ましくは、スペーサ10のインターフェイス26を受け入れるのに適する初期状態にある。
図10を参照すると、スリーブ56がアーム54a,54bを覆って摺動し、スペーサ10を工具50に固定した状態にある挿入器が示されている。加えて、ノッチ32内に配置されたロッド64が示されている。従って、スペーサ10は、工具50から取り外すことができず、工具50に対して回転することもできない。
図11は、工具50に対して回転したスペーサ10を示している。本質的に、
図11では、ロッド64は、ロッドアクチュエータ63の作動によって、ノッチ32から離脱されている。インターフェイス26およびアーム54a,54bの円弧状の特性によって、これらの構成要素間の回転が可能になっている。
図12は、工具50に対して最大限に回転されたスペーサ10を示している。この角度は、略80°であるが、他の実施形態では、さらに大きい角度、例えば、略90°であってもよい。
図9および
図10は、工具50の大部分がインターフェイス26の第1の区分26aに接続された状態を示しているが、
図12は、工具50に対するスペーサ10の回転によって、工具50の大部分が第2の区分26bに接続されている状態を示している。最後に、
図13は、スリーブ56を
図10〜
図12に示されている方向と逆の方向に摺動させることによって、スペーサ10が工具50から離脱された状態を示している。
【0042】
図14および
図15は、ヒトの脊椎の互いに隣接する2つの錐体と関連して前述のスペーサ10と工具50との組立体を示している。
図14は、脊椎の背側から挿入されたスペーサ10を示しているが、スペーサ10は、どの側から挿入されてもよい。例えば、他の実施形態では、スペーサ10は、脊椎の腹側から挿入されてもよい。同様に、
図15には、椎間板隙の腹側部分の最終位置に配置されたスペーサ10が示されているが、スペーサ10は、最終的に、該椎間板隙の多くの異なる領域に配置されてもよい。例えば、スペーサ10は、最終的に、椎間板隙の背側部分に配置されるように移植されてもよい。
【0043】
図16a〜
図16gは、工具50を用いて、スペーサ10を2つの互いに隣接する椎骨間の椎間板隙内に挿入し、次いで位置決めするさらに詳細な一実施形態による方法を示している。これらの図に示されている方法を行う前に、外科医は、好ましくは、椎間板隙の生体組織特徴部の大部分に触れないようにしながら、該椎間板隙の線維輪を貫通する孔を形成するとよい。次いで、外科医は、スペーサ10を挿入するために、(形成された孔またはそれ以外の箇所を通して)、椎間板隙からいくらかの材料を除去するとよい。その後、
図16aに示されているように、
図10に示されているロックされたスペーサ10と工具50との組立体が、線維輪を貫通して形成された孔を通して挿入されることになる。ここでも、
図16aにおいて、この挿入は、背側の側方から行われるように示されているが、スペーサ10の挿入において、他の進入方位が利用されてもよい。スペーサ10が線維輪の残っている部分と接触したとき(
図16b参照)、ロッドアクチュエータ63を作動させ、ノッチ32内に配置されたロッド64によってもたらされている回転ロックを解除する。その結果、前端14が線維輪の残っている部分に係合しているので、スペーサ10は、椎間板隙内への組立体のさらなる挿入中に、工具50に対して回転可能になる。
図16c〜
図16eは、この挿入プロセスにおける後続の一連のステップを示している。
図16fは、挿入工具50に対して完全に回転され、椎間板隙の腹側部分内に配置されたスペーサ10を示している(なお、この実施形態では、スペーサ10は、椎間板隙のこの腹側部分内に留置されることになる)。
図16gは、工具50がスペーサ10から取り外されている状態を示している。この取外しは、スリーブ56を把持部52に対して摺動させるように、スリーブアクチュエータ62を操作することによって行われる。この段階で、スペーサ10は、その最終位置にあり、工具50を椎間板隙から取り外すことができる。
【0044】
スペーサ10を挿入する方法は、開口36a,36bを骨成長誘導物質、例えば、骨形成タンパク質または自然骨材料によって充填するステップをさらに含んでいるとよい。スペーサ10が操作要素を備えている実施形態では、スペーサ10と工具50との間の回転は、スペーサ10と線維輪の残っている部分との係合の前に生じるようになっているとよい。加えて、スペーサ10の前端14のテーパー付きノーズ部が、好ましくは、椎間板隙内へのスペーサの初期挿入およびスペーサと線維輪の残っている部分との協働作用を助長することを理解されたい。
【0045】
特定の実施形態を参照して、本発明をここに説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および応用の単なる例示にすぎないことを理解されたい。従って、例示的な実施形態に対して多くの修正がなされてもよいこと、および添付の請求項に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、広い産業上の利用可能性、例えば、制限されるものではないが、人工椎間スペーサを提供し、かつ移植するシステムおよび方法を享有するものである。