特許第5891244号(P5891244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891244
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】複合材半径部を圧縮する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/12 20060101AFI20160308BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20160308BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20160308BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20160308BHJP
   B29L 31/30 20060101ALN20160308BHJP
【FI】
   B29C43/12
   B29C43/18
   B29K105:08
   B29L9:00
   B29L31:30
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-547477(P2013-547477)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-504564(P2014-504564A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】US2011061279
(87)【国際公開番号】WO2012094063
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】12/983,337
(32)【優先日】2011年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ, トーマス, ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】フッチ, デーヴィッド, エー.
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−352187(JP,A)
【文献】 特開2003−312590(JP,A)
【文献】 特開平04−270610(JP,A)
【文献】 特開2007−015351(JP,A)
【文献】 特開2001−150575(JP,A)
【文献】 特開平04−320826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/86
B29C 53/00−53/84
B29C 69/00
B64B 1/00− 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空バッグ(44)の内部において、平坦な上側部分(30)と前記上側部分(30)から連続して延びる円弧状に湾曲し前記上側部分(30)から離れるにつれて下方に向かう半径部(34)を有しておりマンドレル(38)に支持された未硬化の第1複合積層部品(22)の前記上側部分(30)を、前記第1の複合積層部品(22)の上方に配置された第2の複合積層部品(21)の下側部分(26)に圧密する間に、前記第2の複合積層部品(21)に接触していない前記第1の複合積層部品(22)の前記半径部(34)の上側縁部(45)の途中の低圧縮圧力領域(49)に発生する船首波を抑制する方法であって
前記マンドレル(38)に支持された前記第1の複合積層部品(22)の前記半径部(34)の前記上側縁部(45)を覆うように第1の当て板(50)を前記半径部(34)の上方に配置することと、
前記第1の当て板(50)の端部(56)と部分的に重なるように第2の当て板(52)を前記第2の複合積層部品(21)に取り付けることと、
前記第1の当て板(50)および前記第2の当て板(52)を用いて大気圧負荷を前記第1の複合積層部品(22)前記低圧縮圧力領域(49)に加えることとを含む、
方法。
【請求項2】
前記大気圧負荷を加えることが、
前記第1の複合積層部品(22)及び前記第2の複合積層部品(21)を覆うように前記真空バッグ(44)を配置することと、
前記真空バック(44)で覆われた前記第1の複合積層部品(22)及び前記第2の複合積層部品(21)をオートクレーブ内に配置することと、
前記バッグ(44)内の真空吸引を行うことと、
前記オートクレーブを使用して前記バッグ(44)大気圧負荷を加えることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大気圧負荷を加えることが、前記第2当て板(52)を押して前記第1の当て板(50)に圧力を加えて、前記第1の当て板(50)が前記低圧縮圧力領域(49)を含む前記半径部(34)を押すようにすることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
平坦な上側部分(30)と前記上側部分(30)から連続して延びる円弧状に湾曲し前記上側部分(30)から離れるにつれて下方に向かう半径部(34)を有しておりマンドレル(38)に支持された未硬化の第1の複合積層部品(22)の前記上側部分(30)を、前記第1の複合積層部品(22)の上方に配置された第2の複合積層部品(21)の下側部分(26)に圧密する間に、前記第2の複合積層部品(21)に接触していない前記第1の複合積層部品(22)の前記半径部(34)の上側縁部(45)の途中の低圧縮圧力領域(49)に発生する船首波を抑制する装置であって
前記第1の複合積層部品(22)の前記半径部(34)に圧力を加えるための当て板装置を備え、
前記当て板装置が、第1の当て板(50)と第2の当て板(52)とを備え
前記第1の当て板(50)は、前記マンドレル(38)に支持された前記第1の複合積層部品(22)の前記半径部(34)の前記上側縁部(45)を覆うように前記半径部(34)の上方に配置され、
前記第2の当て板(52)は、前記第2の複合積層部品(21)に取り付けられ、前記第1の複合積層部品(22)の前記半径部(34)の前記上側縁部(45)に前記第2の当て板(52)を介して圧力を加えるために前記第1の当て板(50)の端部(56)及び前記半径部(34)の上側縁部(45)と部分的に重なるように構成された、装置。
【請求項5】
前記第1の当て板(50)の、前記半径部(34)周囲の厚みがテーパー状であり、前記第2の当て板(52)に重なる前記端部(56)が最大の厚さ(T)を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の複合積層部品(21)が、前記下側部分(26)である下部フランジ(26)を有しており前記下部フランジ(26)と前記第1の複合積層部品(22)との間に接着剤(40)の層が設けられており、第1の当て板(50)の最大の厚さ(T)が前記下部フランジ(26)と接着(40)の層とを合わせた厚さに匹敵する、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、繊維強化樹脂積層体を作製する方法および設備に関し、さらに詳細には、積層体の半径部を圧縮する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化部品における空隙および他の不整合を排除するために、繊維強化樹脂積層体を硬化前および/または硬化中に圧密化することができる。真空バッグ処理および/またはオートクレーブ処理を用いて未硬化積層体に圧力を加えることにより圧密化を達成することができる。一部の例では、加えられた圧力が特定の領域に亘って均等に分散されるように、半径部などの積層体の特定領域と真空バッグとの間に当て板が配置される。一部の部品の幾何学的形状において、低圧領域は、部品の特定の特徴に対する真空バッグの架橋など、様々な理由から部品の至る所に存在する。これらの低圧域により、積層体の外層で「船首波」が発生し、その外層において、層の面外の波が高圧領域から上述の低圧領域に押しやられる。船首波は、積層体において空隙の原因となり得る面外の繊維変形を引き起こす理由から望ましくない。
【0003】
したがって、圧密化中の繊維強化樹脂積層体における船首波、特に積層体における半径部の縁部付近で起こり得る船首波を抑制する方法および装置が必要である。また、真空バッグの架橋に起因する積層体上の低圧領域を低減する必要もある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の方法および装置は、積層体を圧密化するために使用される真空バッグの架橋に起因する積層体層における船首波を抑制する。装置は、構造が比較的簡単で、再使用可能、かつ容易に設置される。装置は、半径部の縁部を覆うバッグの架橋に起因する、半径部の縁部などの積層体上の低圧域の領域を圧縮するために使用される。装置は、半径部を覆う第1当て板と、第1部分および半径部の縁部を覆う第2当て板とを含む。第2当て板はまた、第2積層体に加わる圧密圧力が第2当て板を介して半径部の縁部に伝達されるように第2積層体の上に重なってもよい。一実施形態において、第1当て板と第2当て板とが、単一のユニットを形成するように一体化してもよい。他の実施形態において、複数の装置を並べて互いに接合してもよい。本開示の実施形態では、圧密化工程中の積層体における船首波を抑制することができ、その結果、空隙および不整合の低減された、所望の機械的特性を示す硬化部品が得られる。
【0005】
本開示の一実施形態によれば、圧密化中の複合積層部品における船首波を抑制する方法が提供される。方法は、部品縁部での真空バッグの架橋による圧縮圧力の低い部品領域に大気圧負荷を伝達することを含む。低圧領域は、部品の半径部の縁部に位置してもよい。大気圧負荷を伝達することは、低圧領域における部品上の当て板を使用して伝達負荷を半径部の縁部に加えることを含んでもよい。
【0006】
別の実施形態によれば、真空バッグ内での第2複合部品との圧密化中に未硬化第1複合部品の圧縮圧力の低い領域内で生じる船首波を抑制する方法が提供される。方法は、低圧領域を覆う第1および第2部品に亘って当て板装置を配置することと、当て板を使用して第1部品の低圧領域に大気圧負荷を加えることとを含む。低圧領域は、第1部品上の半径部の縁部の途中にあってもよい。当て板を配置することは、第1部品上の半径部および半径部の縁部に亘って第1当て板を配置することと、第1当て板に重なる第2当て板を第2部品上に配置することとを含む。当て板を使用して圧力を加えることは、第2当て板を使用して低圧領域内における第1当て板に圧力を加えることを含む。
【0007】
さらなる実施形態によれば、圧密化中の繊維強化積層部品の半径部分を圧縮する方法が提供される。方法は、半径部分に隣接する部品に大半径部を形成することと、大半径部の繊維を圧縮することにより半径部分の繊維に張力を付与することを含む、部品に圧縮圧力を加えることとを含む。部品に大半径部を形成することは、部品上に余剰の湾曲フランジを形成することを含む。
【0008】
さらに別の実施形態によれば、圧密化中の複合積層部品の縁部における船首波を抑制する装置が提供される。装置は、縁部の形状に実質的に一致しかつ縁部に圧縮圧力を加えるように構成された当て板を備える。縁部は部品の半径部の途中に位置してもよく、当て板は、半径部上に配置されかつ半径部に圧力を加えるように適合された第1部分と、第1部分および部品縁部の上に重なる先端を有する第2部分とを含む。当て板の第1および第2部分を、互いに一体に成形してもよい。
【0009】
さらに別の実施形態において、圧密化中の繊維強化複合積層部品の半径部において繊維に張力を付与する装置が提供される。装置は、マンドレルの余剰のフランジ域内に大半径部を有するマンドレルを備え、大半径部が、部品の半径部の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する。
【0010】
別の実施形態においては、圧密化中に複合積層部品の半径部において発生する船首波を抑制する装置が提供される。装置は、部品の半径部に圧力を加えるための当て板を備える。当て板は、半径部と部品における船首波が発生する半径部に近接する縁部とを覆うように適合された第1部分を含む。当て板はさらに、当て板の第2部分を介して部品の縁部に圧力を加えるために第1部分および部品の縁部の上に重なる第2部分を含む。
【0011】
圧密化中の複合積層部品における船首波を抑制する方法であって、部品縁部での真空バッグの架橋による圧縮圧力の低い部品領域に大気圧負荷を伝達することを含む方法。
【0012】
低圧領域が部品における半径部の縁部に位置し、大気圧負荷を伝達することが、伝達される圧力負荷を半径部の縁部に加えることを含む方法。
【0013】
大気圧負荷を伝達することが、圧縮圧力の低い領域における部品上に当て板を配置すること含む方法。
【0014】
真空バック内での第2複合部品との圧密化中に未硬化第1複合部品の圧縮圧力の低い領域内で生じる船首波を抑制する方法であって、低圧領域を覆う第1および第2部品に亘って当て板装置を配置することと、当て板装置を使用して第1部品の低圧領域に大気圧負荷を加えることとを含む方法。
【0015】
低圧領域が第1部品上の半径部の縁部の途中にあり、第1部品上の半径部および半径部の縁部に亘って第1当て板を配置することと、第1当て板に重なる第2当て板を第2部品上に配置することとを含む方法。
【0016】
当て板装置を使用して大気圧負荷を加えることが、第2当て板を使用して低圧領域内における第1当て板に圧力を加えることを含む方法。
【0017】
圧密化中に繊維強化積層部品の半径部分を圧縮する方法であって、半径部分に隣接する部品に大半径部を形成することと、大半径部の繊維を圧縮することにより半径部分の繊維に張力を付与することを含む、部品に圧縮圧力を加えることとを含む方法。
【0018】
部品に大半径部を形成することが、部品上に余剰の湾曲フランジを形成することを含む方法。
【0019】
圧縮圧力を加えることが、部品を覆うように真空バッグを配置することと、真空バック処理の施される部品をオートクレーブ内に配置することと、バッグ内の真空引きを行うことと、オートクレーブを使用してバッグに圧力を加えることとを含む方法。
【0020】
圧密化中の複合積層部品上の半径部の縁部における船首波を抑制する装置であって、半径部の形状に実質的に一致しかつ半径部の縁部において部品に圧縮圧力を加えるように構成された当て板を含む装置。
【0021】
当て板が、半径部上に配置されかつ半径部に圧力を加えるように適合された第1部分と、第1部分および半径部の縁部の上に重なる先端を有する第2部分とを含む装置。
【0022】
当て板の第1および第2部分が互いに一体に成形される装置。
【0023】
圧密化中の繊維強化複合積層部品の半径部の繊維に張力を付与する装置であって、マンドレルの余剰のフランジ域に大半径部を有するマンドレルを含む装置。
【0024】
大半径部が、部品の半径部の半径よりも大きい半径を有する装置。
【0025】
圧密化中に複合積層部品の半径部の縁部に発生する船首波を抑制する別の装置であって、部品の半径部に圧力を加えるための当て板を含み、当て板が、半径部および半径部の縁部を覆うように適合された第1部分と、当て板の第2部分を介して半径部の縁部に圧力を加えるために第1部分および半径部の縁部に重なる第2部分とを含む装置。
【0026】
当て板装置の第1当て板の半径部周囲の厚みがテーパー状である装置。
【0027】
当て板装置の第2当て板が当て板装置の第1当て板および半径部の縁部の上に重なる装置。
【0028】
当て板の第1および第2部分が互いに一体に成形される装置。
【0029】
圧密化中に半径部の縁部に隣接する下部フランジを有するスティフナに接合された複合積層スパーの半径部の縁部の途中に発生する船首波を抑制するさらに別の装置であって、半径部の縁部に圧力を加えかつ半径部の縁部の曲率に沿ってテーパー状である厚みを有する第1湾曲当て板と、第1当て板と一体に形成された第2当て板であって、スティフナの下部フランジの上にそれぞれ重なる側方に延びるフランジを有し、かつスティフナのフランジから第1当て板を介して半径部の縁部に圧密圧力を伝達するために半径部の縁部の上に重なる先端を有し、スティフナをスリーブ状に覆うように適合されたウェブをさらに含む第2当て板とを含む装置。
【0030】
スティフナに接合された積層スパーを含む複合構造アセンブリを作製するさらに別の方法であって、スティフナを形成し、予備硬化することと、半径部を有するマンドレル上に積層スパーを積層することと、スティフナの下部フランジとスパーのウェブとの間に接着剤層を配置することを含む、予備硬化させたスティフナをスパーに組み付けることと、アセンブリ上に当て板装置を設置することと、下部フランジの上に重なる当て板装置の第1部分をスティフナの端部に成形し、かつ、スパーに形成された半径部に一致する第2部分を成形することを含む、当て板装置の第2部分を第1部分と一体に成形することと、アセンブリに真空バッグ処理を施すことと、オートクレーブ内にアセンブリを配置することと、当て板装置を使用して下部フランジからスパーに形成された半径部の縁部に圧力を伝達することを含む、オートクレーブ圧力を使用してアセンブリを圧密化することとを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、複合構造アセンブリの側面図である。
図2図2は、図1の方向’2’で見た側面図である。
図3図3は、スティフナ端部のスパー上層における船首波の形成を示す拡大断面図である。
図4図4は、図3に示す船首波を抑制する当て板装置の使用を示す、複合構造アセンブリの断面図である。
図5図5は、図4に示す当て板装置の一部を形成する第1当て板の断面図である。
図6図6は、図4に示す装置の一部を形成する第2当て板の端面図である。
図7図7は、第2当て板の斜視図である。
図8図8は、第2当て板が設置された図1〜4に示すスティフナの一方側の斜視図である。
図9図9は、スティフナ上に設置される当て板装置の別の形態の等角図である。
図10図10は、当て板装置の別の実施形態の一方側の斜視図である。
図11図11は、図10に示す当て板装置の反対側の等角図である。
図12図12は、一対のスティフナ上に設置された図10および図11に示す当て板装置の図である。
図13図13は、船首波を抑制する代替方法を示す積層体アセンブリの断面図である。
図14図14は、船首波を抑制する方法を示す簡略化したフロー図である。
図15図15は、船首波を抑制する代替方法の図である。
図16図16は、航空機の製造および整備方法のフロー図である。
図17図17は、航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず図1および図2を参照すると、複合構造アセンブリ20が、時には第2の部品と呼ばれるスティフナ21と、時には本明細書において第1の部品と呼ばれるスパー22とを備える。スティフナ21は、接着剤層40によりスパー22に接着される。スティフナ21は、繊維強化樹脂複合材を含んでもよく、図示の例では、ウェブ28により互いに接合された上部フランジと下部フランジにより形成されたI字形断面を有する。図にはI字形断面を示しているが、スティフナ21が、非限定的に、C字形、J字形、Z字形、L字形および逆U字形などの他の断面形状を有してもよい。スパー22は、ウェブ30およびフランジ32がL字形断面を形成する繊維強化樹脂積層体を備えるが、非限定的に、「C」形断面などの他の断面幾何学的形状が可能である。スパー22は、例えば、非限定的に、翼または安定板(図示せず)などの宇宙航行体(図示せず)の機体の一部を形成してもよい。
【0033】
ウェブ30は、図1の破線36により示す接点間に画定される半径部34を介してフランジ32に移行する。図2で最も良く分かるように、スティフナ21の下部フランジ26は、ウェブ32の上面35の上に重なり接着される。図1は、スパー22の圧密化および硬化中にスパー22を支持するマンドレル38を図示する。図示の例において、スティフナ21は、スパー22に接着している予備硬化させた部品であるが、他の実施形態において、スティフナ21が、スパー22と共硬化される未硬化複合部品を備えてもよい。スティフナ21およびスパー22の形状は、種々様々な考えられる部品の形状および幾何学的形状を例示しているに過ぎない。
【0034】
ここで図3を参照すると、スティフナ21とスパー22とが接着剤層40を間に介して組み立てられた後、真空バッグ(図3には図示せず)がアセンブリ20を覆うように密封され、次に、このアセンブリが圧密化および硬化のためにオートクレーブ(図示せず)内に配置される。半径部34は、スティフナ21の下部フランジの外端部46から間隔を隔てて位置する上縁部45を有する。真空排気されるときに、バッグが半径部34の縁部45に亘って架橋する場合がある。スパー22の圧密化および硬化中にオートクレーブ圧力Pが加えられると、縁部45を覆うバッグの架橋により、縁部45に圧縮圧力の低い領域49が生じ得る。加えられた圧縮圧力Pにより半径部34の途中の上層42に繊維の変形が生じ、この変形は、繊維が低圧領域49に向って矢印51の方向に移動するように付勢する。繊維が低圧領域49に向って移動することにより、上層42が半径部34の他の域内で圧縮されるので、スパー22の上層42に船首波44が発生し得る。船首波44により、硬化後のスパー22内にしわ、空隙または他の不所望の不整合が生じ得る。
【0035】
図4を参照すると、低圧領域49(図3)に起因する図3に示す船首波44を抑制または排除するために、当て板装置48が、スパー22の半径部34およびスティフナ21の下部フランジ26に亘って設置されている。当て板装置48は、上縁部45を含む、スパー22の半径部34を覆う第1底部当て板50を含む。第1当て板50の上端56は、下部フランジ26の外端部26に当接する。当て板装置48はさらに、下部フランジ26に載置されかつ第1当て板50の上端56の上に重なる第2の、上部当て板52を含む。第2当て板52は、予め選択された距離Dの分、第1当て板50の上端56に重なる。以下により詳細に論じられるように、一実施形態において、第1および第2当て板50,52は単一のユニットに一体化されてもよいし、一方で、他の実施形態において、別個のユニットであってもよい。真空バッグ44はアセンブリ20を覆うように密封され、この真空バッグ44を使用して部品および当て板装置48に圧縮圧力を加える。
【0036】
図5に示すように、第1当て板50は、半径部34と実質的に一致する内側半径Rを有する。第1当て板50の上端56は、下部フランジ26と接着剤層40とを合わせた厚みにほぼ合致する厚みTを有する。第1当て板50の厚みは、第1当て板の上端56から下端58にかけてテーパー状である。このテーパーによる下端58の減少した厚みは、圧縮工程中に第1当て板50によりスパー22に付与される型あと(mark off)を抑制する。他の実施形態において、第1当て板50の厚みがテーパー状でなくてもよい。
【0037】
図6を参照すると、第2当て板52が、スティフナ21のウェブ28を覆う切込みウェブ52aと、スティフナ21のフランジ26の上に重なる長手方向に延びるフランジ52bとを含む。
【0038】
図4を参照するに、使用時には、当て板装置48が、別個のユニットかまたは単一のユニットとしてアセンブリ20上に設置され、その結果、第1当て板50が半径部34の上に重なり、かつ第1当て板50の上端56がフランジ26の外端部26aに当接する。第2当て板52の切込みウェブ52aは、フランジ54がスティフナ21のフランジ26に載置され、端部60が第1当て板50の上端56の上に重ねて載置されるように、ウェブ28の両側をスリーブ状に覆う。上記のように当て板装置48が設置された状態で、アセンブリ20を覆うように真空バッグ44を設置し、組み付け部品に圧力Pを加えるオートクレーブ内でアセンブリ20を処理してもよい。第1当て板50は、半径部34の上縁部45の上に重なる上端56を含む半径部34にオートクレーブ圧力Pを加えて分散させる。オートクレーブ圧力Pはまた、フランジ52bをスティフナ21のフランジ26および第1当て板50の上端56に押し付ける。
【0039】
下部フランジ26に加わる圧力は、第2当て板52により第1当て板50に伝達される。縁部45に船首波44を生じさせる上層42(図3)の傾向は、第2当て板52の前端部60により上端56に加わる圧力により抑えられる。したがって、半径部34の上層42図3)は、圧縮工程の間、実質的に面内に留まるように抑制される。当て板50,52を単一部品ユニットに一体化することにより、半径部の上縁部45における層42の船首波44(図4)または類似のうねりもしくはしわの発生を抑えるのに役立つ追加の剛性当て板装置48にもたらされる。
【0040】
図7および図8は、第2当て板52のさらなる詳細を図示する。直立ウェブ52aは、直立ウェブ52a内に長手方向に延びるスロット62と、ウェブ52aから側方外側に延びるフランジ52bとを含む。前端部60は、図4に示すように、ウェブ52aよりも外側に延び、第1当て板50の上端56の上に重なるように適合される。第2当て板52は、これに限定されるものではないが、非限定的に、炭素繊維強化エポキシ樹脂などの繊維強化樹脂複合材を含む、必要な強度および剛性を有する任意の適切な材料から作製することができる。第2当て板52を設置する際に、スロット62は、スロット62内に収容されるスティフナ21のウェブ28を収容し、フランジ52bはスティフナ21のフランジ26に載置される。
【0041】
図9は、スティフナ21の端部周囲に当て板装置48を成形することにより製造される単一のユニットに第1および第2当て板50,52を一体化した当て板装置48の別の実施形態を図示する。
【0042】
ここで、複数の当て板装置48をユニット化された構造に一体化した装置20の別の実施形態を図示する図10図11および図12に注目する。図示の例では、2つの単一片当て板装置48が並べて配設され、連結部分66および外側延長部68と一体に形成される。第1当て板50は、装置48の全長に亘って実質的に連続して延びる。図12に示すように、装置48は、スパー22上の半径部34(図10図12には図示せず)を覆う、単一のユニットとして2つの隣接するスティフナ21に亘って設置してもよい。図10図12に示す実施形態では、I字形断面を有する複数のスティフナ21と共に使用するために複数の装置48を一体化するが、複数の一体化した当て板装置48が、非限定的に、C字形、J字形、Z字形、L字形、逆U字形を含む他の断面形状を有するスティフナと共に使用されるように適合されてもよい。
【0043】
ここで、スパー30の圧密化中に発生する船首波を抑制するようにして半径部34を圧縮する別の方法を図示する図13に注目する。この例において、スパー30は、側方延長部38aを有するマンドレル38の上に積層される。側方延長部38aは、一般に半径部34よりも大きい大半径部74を有する余剰の外側に曲がったフランジ72を形成する、湾曲した成形面70を含む。「余剰」は、フランジ72の主な目的が半径部34の繊維を張力の付与された状態にすることであり、フランジ72が他の実質的な機能的目的を有さなくてもよい事実を示す。スパー30に圧密圧力Pが加わるとき、大径フランジ72に作用する圧力は、半径部34に加わる圧力よりも大きく、上層42(図3)の繊維に張力を生じさせ、この張力が半径部34の繊維に伝達される。半径部34の上層42の繊維に付与されるこの張力は、上縁部45(図3)を含む半径部34域内のしわおよび/または船首波44を抑制または排除する。本明細書で使用する場合、「大」半径部は、船首波44を抑制または排除するために必要となる上層42における張力を生み出すのに十分に大きい半径部74を指す。
【0044】
ここで、硬化中の積層体における船首波を抑制するようにして複合部品を接合する方法を図示する図14に注目する。ステップ76において、第1および第2部品22,21が組み立てられる。次にステップ78において、当て板装置48の第1当て板50が、第1部品22の半径部34上に配置され、半径部34の縁部45を覆いかつ第1部品2に当接する。ステップ80において、当て板装置48の第2当て板52は第2部品21上に設置され、半径部の上縁部45において第1当て板50に少なくとも部分的に重なる。当て板50,52が単一のユニットに一体化されるこれらの実施形態では、ステップ78および80が、単一の作業に組み合わされる。ステップ82において、当て板50,52が設置された組み付け部品21,22に真空バッグ処理が施される。84において、例えば、オートクレーブ処理を用いて、真空引きが行われ、圧密圧力がバッグに加えられる。ステップ86において、当て板50,52は、半径部の上縁部45に大気圧負荷を伝達しかつ第1部品における船首波の形成を抑制する目的で、半径部の上縁部45を含む半径部34に圧力を加えるために使用される。
【0045】
図15は、図14に示す装置を使用して積層体における船首波を抑制する方法のステップを図示する。ステップ88において、大半径部74は、積層部品21の小半径部分34に隣接する部品21に形成される。ステップ80において、部品21に圧縮圧力を加えるが、これは大半径部74の繊維を圧縮することにより半径部分34の繊維に張力を付与することを含む。
【0046】
次に図16および図17を参照すると、本開示の実施形態は、図16に示す航空機の製造および整備方法98ならびに図17に示す航空機100との関連で使用することができる。製造前の段階では、例示的な方法92は、航空機100の仕様および設計102と、材料調達104とを含み得る。製造段階では、航空機100の構成部品および部分組立品の製造106と、システム統合108とが行われる。ステップ106の間、本開示の方法および装置を、次にステップ108で組み立てる胴体セクションなどの複合部品を作製するために使用することができる。その後、航空機100は認証および納入110を経て運航112される。顧客により運航される間、航空機100には日常的な保守および整備114(改良、再構成、改修なども含み得る)が予定される。
【0047】
方法98の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、および/またはオペレータ(例えば、顧客)により実施または実行することができる。この説明の目的ために、システムインテグレータは、非限定的に、任意の数の航空機製造業者および主要システムの下請業者を含み得、第三者は、非限定的に、任意の数の納入業者、下請業者、および供給業者を含み得、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織などであり得る。
【0048】
図17に示すように、例示的な方法98により製造された航空機100は、複数のシステム118および内装120を有する機体116を含み得る。本開示の方法および装置は、航空機110の一部を形成する胴体セクションを作製するために使用することができる。高レベルのシステム118の例には、推進システム122、電気システム124、油圧システム126、および環境システム128のうちの1つまたは複数を含むことができる。任意の数の他のシステムを含むことができる。航空宇宙産業の例を示しているが、本開示の原理を自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0049】
本明細書に具現化された装置は、製造および整備方法98の1つまたは複数の任意の段階で使用することができる。例えば、製造プロセス106に対応する構成部品または部分組立品は、航空機100の運航中に製造される構成部品または部分組立品と同様の方法で作製または製造することができる。また、1つまたは複数の装置の実施形態は、例えば、航空機100の組立を大幅に効率化するか、または航空機100のコストを削減することにより、製造段階106および108中に利用することができる。同様に、1つまたは複数の装置の実施形態は、航空機100の運航中に、例えば、非限定的に、保守および整備114に利用することができる。
【0050】
本開示の実施形態を特定の例示的実施形態に関連させて説明してきたが、当然ながら、当業者であれば他の変形例が想起されるように、具体的な実施形態は説明を目的とするものであり、限定するものではない。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
圧密化中に繊維強化積層部品の半径部分を圧縮する方法であって、
前記半径部分に隣接する前記部品に大半径部分を形成することと、
前記大半径部の繊維を圧縮することにより前記半径部分の前記繊維に張力を付与することを含む、前記部品に圧縮圧力を加えることを含む、方法。
(態様2)
前記部品に前記大半径部を形成することが、前記部品上に余剰の湾曲フランジを形成することを含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記圧縮圧力を加えることが、前記部品を覆うように真空バッグを配置することと、真空バック処理が施される部品をオートクレーブ内に配置することと、前記バッグ内の真空引きを行うことと、前記オートクレーブを使用して前記バッグに圧力を加えることとを含む、態様1に記載の方法。
(態様4)
当て板装置を使用して前記第1部品の低圧力領域に大気圧負荷を加えることをさらに含む、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記低圧領域が、第1部品上の半径部の縁部の途中にあり、前記当て板装置を配置することが、前記第1部品上の半径部および半径部の縁部に亘って第1当て板を配置することと、前記第1当て板に重なる前記第2当て板を第2部品上に配置することとを含む、態様4に記載の方法。
(態様6)
前記当て板装置を使用して大気圧負荷を加えることが、前記第2当て板を使用して前記低圧領域内における前記第1当て板に圧力を加えることを含む、態様5に記載の方法。
(態様7)
低圧領域を覆う第1および第2部品に亘って当て板装置を配置することをさらに含む、態様1に記載の方法。
(態様8)
圧密化中に複合積層部品の半径部の縁部に発生する船首波を抑制する装置であって、
前記部品の前記半径部に圧力を加えるための当て板を備え、
前記当て板が、半径部および半径部の縁部を覆うように適合された第1部分と、前記当て板の第2部分を介して前記半径部の縁部に圧力を加えるために前記第1部分および前記半径部の縁部の上に重なる前記第2部分とを含む、装置。
(態様9)
前記当て板の前記第1部分の前記半径部周囲の厚みがテーパー状である、態様8に記載の装置。
(態様10)
前記当て板の前記第2部分が、前記当て板の前記第1部分および前記半径部の縁部の上に重なる、態様8に記載の装置。
(態様11)
前記当て板の前記第1および第2部分が、互いに一体である、態様8に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17