【実施例】
【0042】
実施例1
8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
【化11】
方法1
密閉管中で、8−ブロモ−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン(0.600g、1.7mmol)および2−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−3−ピリジル]プロパン−2−オール(0.9g、3.43mmole)をテトラヒドロフラン(75mL)および水(7.5mL)中に溶解する。混合物を窒素でパージする。フッ化カリウム(400mg、6.89mmole)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(200mg、0.22mmole)およびトリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(200mg、0.68mmole)を加える。反応物を窒素中で密閉し、65〜70℃にて一晩加熱する。混合物を室温に冷却し、濾過して、無機残渣を除去する。濾過物を濃縮し、それをジクロロメタン(120mL)および水(30mL)で希釈する。有機層を分離し、それを硫酸マグネシウム粉末で乾燥させる。それを真空中で濃縮して、茶色の油状物を得る。ヘキサン中の30〜65%の酢酸エチルの溶出溶媒、次いでジクロロメタン中の0〜7%のメタノールを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製する。生成物を含有する画分を濃縮し、ジエチルエーテル(2×10mL)、アセトン(10mL)、アセトンおよびジエチルエーテル(各々10mL)で順に共沸する。固体残渣を乾燥させて、橙色の粉末として標題化合物(0.30g、44%)を得る。MS(ESI)m/z(M+H)+407.0。
【0043】
方法2
1,4−ジオキサン(2.6L)中の2−(5−ブロモ−3−ピリジン)プロパン−2−オール(100g、464mmol、1.25当量)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(141.4g、557mmol、1.5当量)、および酢酸カリウム(127.5g、1.3mol)の懸濁液を室温にて30分間、窒素でパージする。ジクロロ−((ビス−ジフェニルホスフィノ)フェロセニル)−パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(9g、11.14mmol)を窒素下で加え、混合物を90℃に加熱する。混合物を3時間攪拌する。反応混合物を80℃に冷却し、次いで8−ブロモ−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン(130g、371mmol)、炭酸ナトリウム(118g、1.1mol)水溶液(910mL)およびジクロロ−((ビス−ジフェニルホスフィノ)フェロセニル)−パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(9g、11.14mmol)を加える。同じ温度にて1.5時間、混合物を攪拌する。相を分離し、有機層を得て、それを40℃に冷却し、その後、真空中で濃縮する。1:1:1〜1:1:20のジクロロメタン/酢酸エチル/メタノールの溶出溶媒混合物勾配を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣(350g)を精製する。生成物を含有する画分を得る。濃縮し、40℃にて15分間、酢酸エチル(10L/kg)中で残渣をスラリー状にし、濾過し、固体を酢酸エチル(2×1L/kg)およびメチルtert−ブチルエーテル(2×2L/kg)で洗浄する。洗浄した固体をメタノール(10L/kg)に溶解し、SiliaBond(登録商標)チオール(0.4g/g)で処理して、残留金属を除去する。23℃にて4時間、懸濁液を攪拌し、濾過する。固体をメタノール(1L/kg)で洗浄する。全ての濾過物を合わせ、メタノール洗浄し、真空中で濃縮する。固体を溶媒(約100mL)中に保持する。物質が溶媒から結晶化する。固体物質を濾過し、1mbar/40℃にて一晩乾燥させて、白色固体として標題化合物(77g、51%)を得る。MS(ESI)m/z(M+H)+407.1.1HNMR(500.23MHz,DMSO):9.05(s,1H),8.95(d,J=2.2Hz,1H),8.79(d,J=2.0Hz,1H),8.69(d,J=1.5Hz,1H),8.33(t,J=2.1Hz,1H),8.18(d,J=8.8Hz,1H),8.12(dd,J=1.7,8.8Hz,1H),5.41(s,1H),4.56(dd,J=8.3,15.2Hz,1H),4.37(dd,J=4.2,15.2Hz,1H),3.85−3.80(m,1H),3.57(s,3H),3.12(s,3H),1.56(d,J=1.2Hz,6H),1.26(d,J=6.1Hz,3H)。
【0044】
方法3
0℃以下の温度でN2保護下で、テトラヒドロフラン(320mL)中のエチル5−[1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−2−オキソ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−8−イル]ピリジン−3−カルボキシレート(32.0g、76.1mmol)の溶液に、MeMgBr(テトラヒドロフラン/トルエン中に1.4M、221.4g、6.92×)溶液をゆっくりと加える。N2保護下で−5〜0℃にて1時間、混合物を攪拌する。25℃以下に温度を維持しながら、NH4Cl溶液(15%、320mL)をゆっくりと加え、反応をクエンチする。次いで酢酸エチル(320mL)を加える。混合物を25〜30℃に加温し、30分間攪拌する。2層の分離後、テトラヒドロフラン(160mL)で水層を逆抽出する。合わせた有機物をブライン(192mL)で洗浄する。活性炭(1.6g)を有機層に加え、65〜75℃にて4〜5時間攪拌する。混合物をKieselguhr(登録商標)シリカ−チオール(1.6g)で濾過する。65〜75℃にて2〜3時間、有機層を攪拌し、次いで混合物をKieselguhr(登録商標)シリカ−チオールにより濾過する。有機層を真空下で除去し、酢酸エチル/テトラヒドロフランで再結晶して、8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オンを淡い黄色の固体(22.34g、72.2%)として得る。
【0045】
三ツ口フラスコに、この方法3において上記のように調製した8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン(50.0g、123mmol)およびテトラヒドロフラン(1500mL)を加える。混合物を攪拌し、それを45〜55℃に加熱して、絶対溶液を形成する。濾過し、濾過物を45℃以下で真空下で2.0〜3.0Vまで濃縮し、酢酸エチル(500mL)を加え、次いで45℃以下で真空下で7〜8Vまで濃縮する。70〜80℃にて6〜10時間、スラリーを攪拌し、次いで20〜25℃に冷却し、濾過する。酢酸エチル(135〜140g)およびエタノール(13.5〜14.0g)を残渣に加える。70〜80℃にてスラリーを6〜10時間攪拌し、次いで20〜25℃に冷却し、濾過する。真空下で濃縮して、淡黄色の固体として標題化合物(37.9g、75.8%)を得る。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ8.86(d,1H,J=2Hz),8.76(d,1H,J=2.4Hz),8.71(s,1H),8.64(d,1H,J=1.6Hz),8.21(t,2H),7.85(d,1H,J=6.8Hz),4.36(q,2H),3.88(m,1H),3.62(s,3H),3.23(s,3H),2.79(s,1H),1.95(s,1H),1.71(d,6H,J=0.8Hz),1.33(d,3H,J=6.4Hz)。
【0046】
実施例2
8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン、形態I
方法1
純粋でない遊離塩基(実施例1)を酢酸エチル中でスラリーにし、白色固体で開始して茶色っぽい溶液から沈殿した。固体を排気フード内部に配置したグローブボックス内で濾過し、グローブボックス内で一晩真空中で乾燥させる。生成物を一晩真空下に置く(11g、63.18%収率)。
【0047】
結晶性固体のX線粉末回折(XRD)パターンを、35kVおよび50mAで作動するCuKa源(λ=1.54060Å)およびVantec検出計を備えたBruker D4 EndeavorX線粉末回折計で得る。2θにおいて0.0087°のステップサイズおよび0.5秒/ステップの走査速度で、ならびに0.6mmの発散、5.28mmの一定散乱防止、および9.5mmの検出器スリットで、試料を2θにおいて4から40°の間で走査する。乾燥粉末を石英試料ホルダに充填し、スライドガラスを使用して平滑面を得る。任意の所与に結晶形態について、角ピーク位置がわずかに変化し得ることは結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度もしくは湿度、試料の変位、または内部標準の存在もしくは非存在の変化に起因してシフトし得る。この場合、2θにおける±0.2のピーク位置の変動は、識別した結晶形態の明確な識別を妨げずにこれらの電位変化を考慮に入れる。結晶形態の確認は、特徴的なピーク(°2θの単位)、典型的にはより顕著なピークの任意の特有の組み合わせに基づいてなされ得る。室温および相対湿度で回収した結晶形態回折パターンは、8.85および26.77°2θにてNIST675標準ピークに基づいて調整する。
【0048】
このように、化合物の調製した試料を、以下の表1に記載した回折ピーク(2θ値)を有するとしてCuKa放射線を使用してXRDパターンにより特徴付ける。具体的には、パターンは、0.2°の回折角についての許容差で、8.57ならびに9.06、15.93、18.29および18.87の1つ以上にて生じる特性ピークを含む。
【0049】
【表1】
【0050】
方法2
十分な量の実施例1の遊離塩基をエタノールまたはテトラヒドロフランに溶解して、溶液を生成する。溶液を蒸発させて、標題化合物を得る。
【0051】
このように、標題化合物の調製した試料を、以下の表1に記載した回折ピーク(2θ値)を有するとしてCuKa放射線を使用してXRDパターンにより特徴付ける。具体的には、パターンは、0.2°の回折角についての許容差で、9.08、15.93、18.25および18.83からなる群から選択されるピークの1つ以上と併せて8.60にて生じる特性ピークを含む。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例3
8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン一水和物
【化12】
実施例3は、十分な量の水中で24時間、遊離塩基(実施例2を参照のこと)の無水形態と共に、遊離塩基のメタノレート(methanolate)形態(メタノレートは遊離塩基のメタノール溶液から得られる結晶形態である)の混合物をスラリーにすることにより調製できる。あるいは、遊離塩基(実施例2を参照のこと)の無水形態をアセトン/水(比95:5、aw=0.57)の溶液に懸濁し、一水和物形態を播種することにより、24時間以内に無水形態Iの所望の一水和物への完全な変換が生じる。
【0054】
実施例3のX線粉末回折(XRD)を得るための条件は実施例2に記載した条件と本質的に同様である。
【0055】
このように、標題化合物の調製した試料を、以下の表3に記載した回折ピーク(2θ値)を有するとしてCuKa放射線を使用してXRDパターンにより特徴付ける。具体的には、パターンは、0.2°の回折角についての許容差で、6.75、9.71、16.35、16.98および19.54からなる群から選択されるピークの1つ以上と併せて13.57にてピークを含む。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例4
8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オンマレート
【化13】
実施例4は、アセトン(2mL)に遊離塩基(53.5mg)を懸濁し、次いでL−リンゴ酸(22mg)を導入することにより調製できる。固体は透明な溶液に溶解する。白色結晶性固体は溶液から沈殿する。固体を真空濾過し、空気乾燥する。真空オーブン(65℃)中で一晩、リンゴ酸塩を乾燥させて標題化合物を得る。
【0058】
実施例4のX線粉末回折(XRD)を得る条件は実施例2に記載した条件と本質的に同様である。
【0059】
このように、標題化合物の調製した試料を、以下の表4に記載した回折ピーク(2θ値)を有するとしてCuKa放射線を使用してXRDパターンにより特徴付ける。具体的には、パターンは、0.2°の回折角についての許容差で、10.33、12.16、15.57および20.08からなる群から選択されるピークの1つ以上と併せて5.39にてピークを含む。
【0060】
【表4】
【0061】
実施例5
8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オンフマレート
【化14】
実施例5は、遊離塩基8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン(60.2mg)を1−ブタノール(0.5mL)に加え、次いで21.9mgのフマル酸を加えることにより調製できる。ヘプタン(5×0.5mL)を加え、厚い白色スラリーを生成し、90℃/500rpmにて攪拌する。真空濾過し、窒素下で乾燥させる。濾過物から回収している間に固体は損失するが、XRDには十分である。さらなる結晶性フマル酸塩を、遊離塩基(101.0mg)を1−ブタノール(0.5mL)に加え、次いで34mgのフマル酸を加えることにより調製する。ヘプタン(6×0.5mL)および最初の調製からのフマル酸塩の種晶を加え、90℃/500rpmにて1時間、混合物を攪拌する。真空濾過により固体を回収し、窒素下で固体を乾燥させる。真空オーブン(65℃)中で一晩、固体をさらに乾燥させて標題化合物を得る。
【0062】
実施例5のX線粉末回折(XRD)を得る条件は実施例2に記載した条件と本質的に同様である。
【0063】
このように、標題化合物の調製した試料を、以下の表5に記載した回折ピーク(2θ値)を有するとしてCuKa放射線を使用してXRDパターンにより特徴付ける。具体的には、パターンは、0.2°の回折角についての許容差で、8.55、15.45、15.78および22.50からなる群から選択されるピークの1つ以上と併せて5.10にてピークを含む。
【0064】
【表5】
【0065】
mTOR(FRAP1)インビトロ酵素アッセイ
mTORキナーゼに対する化合物IC50値を決定するためにmTOR LanthaScreen(商標)キナーゼアッセイ(Invitrogen)を使用する。これは、ドナー種として長い寿命のテルビウム標識抗体を使用する時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)アッセイフォーマットおよびレセプター種として緑色蛍光タンパク質(GFP)標識4E−BP1である。mTOR活性をモニターするためにTR−FRET比を使用し、ここでタンパク質のリン酸化の増加がTR−FRET比の増加を生じる。浅いブラック384−ウェルProxiplate中で12.5マイクロリットルの反応体積を使用してキナーゼ反応を実施する。試薬を加えて、50ミリモルのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)pH7.5、1ミリモルのエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、0.01%のTween20、10mMの塩化マンガン、2mMのDL−ジチオスレイトール(DTT)、0.4マイクロモルのGFP−4E−BP1(mTORの生理学的基質、緑色蛍光タンパク質との融合物として発現し、精製した4E−BP1、Invitrogen)、70ng/ミリリットルのmTOR(昆虫細胞中で標識し、発現させた組換えヒトmTOR、残基1360−2549、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、Invitrogen)、4%のジメチルスルホキシドおよび化合物の連続希釈(20,000から1nMまで1:3希釈)の最終反応条件を得る。酵素および基質を化合物に加え、次いでアデノシン三リン酸(ATP)を10μMまで加え、反応を開始する。60分間室温でインキュベートし、次いで4nMのテルビウム標識した抗ホスホ−トレオニン−46 4E−BP1抗体を含有する12.5μLの抗体希釈緩衝液および20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.67mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン塩酸塩(Trizma(登録商標))pH7.5、0.02%のアジ化ナトリウムおよび0.01%のノニルフェニルポリエチレングリコール(Nonidet(登録商標)P40)を加える。室温にて60分間インキュベートし、340nm波長励起フィルタならびに495nmおよび520mm波長の発光フィルタを用いてEnVisionプレートリーダーで読み取る。495フィルタ(テルビウムに特異的)で測定した信号に対して520nmフィルタ(GFPに特異的)で測定した信号を使用して、TR−FRET比を算出する。プレート上の対照に対する反応データから算出する阻害率データを使用して各化合物についてのIC50値を導く(ATPを含まないプレート上の対照に対するアッセイデータ点のTR−FRET比)。ACTIVITYBASE4.0を使用して、阻害率および10点化合物濃度データを4パラメータロジスティック式に適合する。
【0066】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、0.165μM(±0.0925、n=5)の絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がmTORの有効な阻害剤であることを示す。
【0067】
ホスホイノシチド3−キナーゼアルファ(PI3Ka)インビトロ酵素アッセイ
PI3Kaシンチレーション近接アッセイ(PI3Ka SPA)を使用して、PI3Kaキナーゼに対する化合物IC50値を決定する。このアッセイは、γ−P33−ATPのホスファチジルイノシトール(4,5)ビスホスフェート(PIP2)への組み込みを測定することにより、化合物阻害剤の存在下で活性PI3Kaを評価する。透明な底のポリスチレンプレートを有する白色の96ウェルハーフエリア平底中の40μLの反応体積でキナーゼ反応を実施する。PI3Kaを加えて、反応を開始する。最終反応条件は、43.75mMの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール(Bis−Tris)pH7.0、306mMの塩化ナトリウム(NaCl)、1.76mMのポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(Triton(商標)X−100)、10μMのアデノシン三リン酸(ATP)、2.9mMの塩化マグネシウム(MgCl2)および1μCi/ウェルのγ−P33−アデノシン三リン酸(γ−P33−ATP)、5.0nMのPI3Kaヒト組換え酵素、0.2mMのパルミトイル−オレオイルホスファチジルセリン(POPS)、0.04mMのホスファチジルイノシトール(4,5)ビスホスフェート(PIP2)、4%のDMSOおよび連続希釈の化合物(20,000〜1nMまで1:3連続希釈)である。PI3Kaを添加した後、室温にて90分間、インキュベートする。2.5mg/mLのネオマイシン結合ビーズ(Amersham、カタログ番号RPNQ0506)および21mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する40μLの停止緩衝液を添加することで反応を停止する。1000回転/分(RPM)にて30分間、プレートを遠心分離し、P33について正規化したWallac Microbeta Triluxを用いて放射能を計数する。プレート上の対照に対する反応データ(活性酵素対62.5ミリモルのEDTAにより阻害される酵素対照)を使用して算出される阻害率データを使用することによって実施例1についてのIC50値を導く。阻害率および10点化合物濃度データを、ACTIVITYBASE4.0を使用して4パラメータロジスティック式に適合する。
【0068】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、0.00607μM(±0.00338、n=2)の絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がPI3Kaの有効な阻害剤であることを示す。
【0069】
ホスホイノシチド3−キナーゼベータ(PI3Kb)インビトロ酵素アッセイ
PI3Kベータシンチレーション近接アッセイ(PI3KベータSPA)を使用して、化合物についてのPI3Kbに対するIC50値を決定する。このアッセイは、γ−P33−ATPのホスファチジルイノシトール(4,5)ビスホスフェート(PIP2)への組み込みを測定することによって化合物阻害剤の存在下で活性PI3Kベータを評価する。透明な底のポリスチレンプレートを有する白色の96ウェルハーフエリア平底中の40μLの反応体積でキナーゼ反応を実施する。PI3Kベータを加えて反応を開始する。最終反応条件は、43.75mMの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール(Bis−Tris)pH7.0、87.5mMの塩化ナトリウム(NaCl)、1.76mMのポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(TritonTM X−100)、40μMのアデノシン三リン酸(ATP)、1.0mMの塩化マグネシウム(MgCl2)および1μCi/ウェルのγ−P33−アデノシン三リン酸(γ−P33−ATP)、6.0nMのPI3Kベータヒト組換え酵素、0.2mMのパルミトイル−オレオイルホスファチジルセリン(POPS)、0.04mMのホスファチジルイノシトール(4,5)ビスホスフェート(PIP2)、4%のDMSOおよび連続希釈の化合物(20,000〜1nMまで1:3希釈)である。PI3Kベータを添加した後、室温にて90分間、インキュベートする。2.5mg/mLのネオマイシン結合ビーズ(Amersham、カタログ番号RPNQ0506)および21mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する40μLの停止緩衝液を添加することで反応を停止させる。1000回転/分(RPM)にて30分間、プレートを遠心分離し、P33について正規化したWallac Microbeta Triluxを用いて放射能を計数する。プレート上の対照に対する反応データ(活性酵素対62.5ミリモルのEDTAにより阻害した酵素対照)を使用して算出される阻害率データを使用することによって化合物についてのIC50値を導く。阻害率および10点化合物濃度データを、ACTIVITYBASE4.0を使用して4パラメータロジスティック式に適合する。
【0070】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、0.0776μM(±0.0401、n=2)の絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がPI3Kbの有効な阻害剤であることを示す。
【0071】
ホスホイノシチド3−キナーゼデルタ(PI3Kd)およびホスホイノシチド3−キナーゼガンマ(PI3Kg)インビトロ酵素アッセイ
ADPの蛍光ベースの免疫学的検定検出のためにAdapta(登録商標)キナーゼアッセイを使用する。これは、キナーゼADP産生をモニターするためにユーロピウム標識抗ADP抗体およびAlexa Fluor(登録商標)647(AF647)標識ADPトレーサーを使用する時間分解−FRET(TR−FRET)アッセイフォーマットである。TR−FRET比を使用して、PI3KデルタまたはPI3Kガンマ活性をモニターし、ここで、脂質リン酸化の増加および対応する増加したADP産生により、TR−FRETの減少が生じる。
【0072】
酵素反応:Corning(登録商標)、小容量の白色384ウェルプレート(Corning(登録商標)#3674)中の10マイクロリットルの反応体積を使用してPI3Kdについてのキナーゼ反応を実施する。試薬を加えて、0.47〜2.6ナノグラムのPI3Kデルタ(昆虫細胞中で発現し、昆虫細胞から精製した組換え完全長のヒトPI3Kd、Invitrogen)および32.5ミリモルのHEPES中の50マイクロモルのPIP2:PS、pH7.5、50ミリモルの塩化ナトリウム、0.015%のCHAPS、1.5ミリモルの塩化マグネシウム、0.5ミリモルのEGTA、25マイクロモルのATP、1%のDMSOおよび連続希釈した化合物(20,000から1ナノモルの1:3希釈)の最終反応条件を得る。ATPを化合物に添加し、次いで基質/キナーゼ混合物を添加して反応を開始する。プレートを30秒間振盪し、次いで室温にて60分間インキュベートする。Corning(登録商標)、小容積の白色384ウェルプレート(Corning(登録商標)#3674)中の10マイクロリットルの反応体積を使用してPI3Kgについてキナーゼ反応を実施する。試薬を加えて、3.5〜26ナノグラムのPI3Kガンマ(昆虫細胞中で発現し、昆虫細胞から精製した組換え完全長のヒトPI3Kg、Invitrogen)および32.5ミリモルのHEPES中の50マイクロモルのPIP2:PS、pH7.5、0.5ミリモルのEGTA、1.5ミリモルの塩化マグネシウム、25マイクロモルのATP、1%のDMSOおよび連続希釈した化合物(20,000から1ナノモルの1:3希釈)の最終反応条件を得る。ATPを化合物に加え、次いで基質/キナーゼ混合物を加えて反応を開始する。プレートを30秒間振盪し、1000×gにて2分遠心分離し、次いで室温にて60分間インキュベートする。
【0073】
ADP検出:5マイクロリットルの検出ミックス(30mMのEDTA、30nMのEu抗ADP抗体および5〜100μMのATPでの反応のためのEC60濃度のADPトレーサー、Invitrogen)をPI3Kデルタおよびガンマ酵素反応に加える。プレートを30秒間振盪し、1000×gにて2分遠心分離し、次いで室温にて60分間インキュベートする。340nm波長励起フィルタならびに665nmおよび615nm波長の発光フィルタを使用して蛍光プレートリーダーでプレートを読み取る。615フィルタ(ユーロピウムに特異的)で測定した信号に対して665nmフィルタ(AF647ポリGT発光に特異的)を用いて測定した信号を使用してTR−FRET比を算出する。TR−FRET比を使用して、シグモイド用量反応モデル番号205(IDBS製のXLfit)に適合するATP/ADP標準曲線への逆算によりADP濃度を算出する。プレート上対照に対する反応データ(ATPを含まないプレート上の対照に対するアッセイデータ点のADP濃度)から算出される阻害率データを使用して各化合物についてのIC50値を導く。XLfit(IDBS)を使用して、阻害率および10点化合物濃度データをシグモイド用量反応モデル205(IDBS製のXLfit)に適合する。
【0074】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこれらのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、PI3Kdについて0.0380μMの絶対IC50値およびPI3Kgについて0.0238μMの絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がPI3KdおよびPI3Kgの有効な阻害剤であることを示す。
【0075】
DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA−PK)インビトロ酵素アッセイ
Z’LYTE(登録商標)キナーゼアッセイフォーマット(Invitrogen)を使用して、化合物についてのDNA−PKに対するIC50値を決定する。これは、タンパク質分解に対するリン酸化対非リン酸化二重標識ペプチド基質(アミノ末端におけるクマリン(Coumerin)、カルボキシ末端におけるフルオレセイン)の感受性に基づいた蛍光ベースの共役酵素アッセイフォーマットである。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)比を使用して、ペプチドのリン酸化が、ペプチドがタンパク質分解的切断をすることを防ぎ、基質のFRETが維持されるDNA−PK活性をモニターする。Corning(登録商標)、小容積のNBS、ブラック384ウェルプレート(Corning(登録商標)#3676)中の10マイクロリットルの反応体積を使用してキナーゼ反応を実施する。試薬を加えて、50ミリモルのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)pH7.5、0.01%のBRIJ−35非イオン性界面活性剤、10ミリモルの塩化マグネシウム、1ミリモルのエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、1mMのDL−ジチオスレイトール(DTT)、2.5マイクログラム/ミリリットルの仔ウシ胸腺−DNA(CT DNA)、3.88〜27.3ナノグラムのDNA−PK、2マイクロモルのSer/Thr26標識ペプチド(Invitrogen)、1%のジメチルスルホキシドおよび連続希釈の化合物(20,000から1ナノモルの1:3希釈)の最終反応条件を得る。化合物に酵素および基質を加え、次いで25.0マイクロモルのアデノシン三リン酸(ATP)を加えて反応を開始する。プレートを30秒間振盪し、次いで室温にて60分間インキュベートする。5マイクロリットルの1:16希釈の展開試薬溶液B(Invitrogen)を加え、プレートを30秒間振盪し、次いで室温にて60分間インキュベートする。400nm波長励起フィルタならびに445および520nmの発光フィルタを用いてプレートを蛍光プレートリーダーで読み取る。520フィルタ(フルオレセインに特異的)で測定した信号に対して445nmフィルタ(クマリンに特異的)で測定した信号を使用してFRET比を算出する。プレート上対照に対する反応データから算出される阻害率データ(0%阻害についてDMSO対照および100%阻害についてATP反応なし)を使用して化合物についてのIC50値を導く。XLfit(IDBS)を使用して、阻害率および10点化合物濃度データをシグモイド用量反応モデル(モデル番号205)に適合する。
【0076】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、0.00424μMの絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がDNA−PKの有効な阻害剤であることを示す。
【0077】
U87MG細胞中のリン酸化P70S6キナーゼ(Thr389)、AKT(Thr308)、およびAKT(Ser473)のアルファスクリーンSureFire検出
p−p70S6キナーゼ(Thr389)(TGR Biosciences、TGRAS50K)、p−AKT(Thr308)(TGR Biosciences、TGRA2S50K)、およびp−AKT(Ser473)(TGR Biosciences、TGRAS50K)についてアルファスクリーンSureFire(登録商標)を使用して、内因性リン酸化p70S6キナーゼ(Thr389)、AKT(Thr308)およびAKT(Ser473)のそれぞれの生成に対する実施例1の効果を決定する。この均質アッセイフォーマットは、リン酸化検体の免疫サンドイッチ捕捉およびその後の増幅した信号を生成するために抗体でコーティングしたアルファスクリーンビーズでの検出を使用する。
【0078】
10%のウシ胎仔血清(FBS、GIBCO、10091−141)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO、11140−050)および1%のピルビン酸ナトリウム(GIBCO、11360−070)を補足したDMEM(GIBCO11965−092)からなるU87MG増殖培地中にU87MG細胞を維持する。標準的な細胞培養処理を使用して細胞を収集し、次いでVi−Cellを使用して計数する。Costar #3596の96ウェルプレートに、増殖培地(50,000細胞/ウェル)中の100μLのU87MG細胞をプレーティングし、37℃、5%CO2にて一晩インキュベートする。
【0079】
アッセイの日に、6%のDMSOを含有する培地中で希釈した実施例1(20μL/ウェル)で細胞を処理する。37℃にて1時間インキュベートし、次いで培地を除去し、50μLの1×SureFire溶解緩衝液(TGR Biosciences SureFire(登録商標)キット成分)を各ウェルに加え、穏やかに振盪しながら室温にて10分間インキュベートする。p−p70S6キナーゼ(Thr389)およびp−AKT(Ser473)アッセイのために、6μLの溶解物および10μLの反応混合物(60部の反応緩衝液/10部の活性化緩衝液/1部の各々のドナーおよびアクセプタービーズ、Perkin Elmer、6760617R)を384ウェルのプロキシプレート(Perkin Elmer、6006280)に移す。プレートを密封し、室温にて4時間インキュベートする。p−AKT(Thr308)アッセイのために、4μLの溶解物および5μLの反応混合物(40部の反応緩衝液/10部の活性化緩衝液/1部のアクセプタービーズ)を384ウェルのプロキシプレートに移す。室温にて2時間インキュベートし、次いで2μLの希釈混合物(20部の希釈緩衝液/1部のドナービーズ)を各ウェルに加える。プレートを密閉し、室温にてさらに2時間インキュベートする。標準的なアルファスクリーン(登録商標)設定(Ex680nmおよびEm520−620nm)を使用してTurboModuleを備えたPerkin Elmer EnVisionでプレートを読み取る。プレート上対照に対する反応データから阻害率データを算出する。次いでACTIVITYBASE4.0を使用して、10点化合物濃度データからの阻害率を4パラメータロジスティック式に適合して、実施例1についてのIC50値を導く。
【0080】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表6に与えるような絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物が、U87MG細胞中のPI3KおよびmTOR経路において酵素を阻害することを示す。
【0081】
【表6】
【0082】
細胞増殖アッセイ
CellTiter−Glo発光細胞生存アッセイシステム(Promegaから市販されている)を使用して、代謝的に活性な細胞の存在を示す、存在するATPの定量に基づいて培地中の生存細胞の数を決定することにより実施例1の抗増殖活性を測定する。
【0083】
カラム1はブランク対照として培地のみを使用することを除いて、100μLの細胞特異的培地(U87MGについてDMEM、10%FBS、25mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、および0.1mMの非必須アミノ酸(ATCCカタログ番号30−2002)を使用し;HT1080についてイーグルMEM、10%FBS(ATCCカタログ番号30−2003)を使用し;H1975、A2780、SJSA−1および786−OについてRPMI 1640、10%FBS(ATCCカタログ番号30−2001)を使用し;A204についてMcCoy’s5A、10%FBS(ATCCカタログ番号30−2007)を使用する)入りの96ウェルプレート中に細胞を2000細胞/ウェルにてプレーティングする。プレートを37℃および5%CO2にて一晩インキュベートする。次の日に、DMSO中に1mMにて化合物ストックを調製し、DMSO入りの96ウェル丸底ポリプロピレンプレート中で連続希釈する。4種の化合物/プレートで、2連で10種の濃度にて化合物をアッセイする。
【0084】
4μLのDMSO連続希釈物を96ウェルプレートに移し、196μLの培養培地を加えて、投与のために10倍ストックを作製する。11μLの各々の用量ストックを細胞プレートの対応するウェルに徐々に移し、0.2%のDMSO濃度および111μLの最終体積を得る。11μLの培地を対照カラム(カラム12)およびバックグランドカラム(カラム1)に加える。37℃、5%CO2にて72または96時間(H1975、786−O、HT1080、A2780、A204およびSJSA−1について72時間を使用し、U87MGについて96時間を使用する)、細胞を化合物と共にインキュベートする。
【0085】
CellTiter−Glo試薬(Promega、カタログ:G7571)を調製し、インキュベーションが完了した後に100Lを各ウェルに加え、2分間、オービタルシェーカーで混合することにより細胞を均質化し、次いで室温にて10分間インキュベートして、発光信号を安定化させる。Wallac Victor Vプレートリーダーを用いて発光生データを記録する。阻害率データを使用して実施例1についてIC50値を算出する。4パラメータロジスティック曲線を各用量反応に適合する。
【0086】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表7に与えるように絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物が、U87MG、H1975、786−O、A2780、HT−1080、A204およびSJSA−1細胞株の増殖を阻害するのに有用であることを示す。
【0087】
【表7】
【0088】
Oncotest腫瘍クローン形成アッセイ
免疫不全ヌードマウスにおける皮膚下で増殖したヒト腫瘍異種移植片のOncotest(GmbH of Freiburg、独国)採取を使用して、様々な腫瘍種に対する実施例1による反応を測定する。患者から直接移植し、ヌードマウスで継代した異種移植片は、組織構造および高い程度まで標準的な抗癌剤に対するドナー患者の反応を繰り返す抗癌剤に対する感受性を含む親患者腫瘍の大部分の特徴を保持する。ヌードマウスで増殖するヒト腫瘍異種移植片から直接、腫瘍細胞を調製する。軟寒天中の腫瘍細胞の足場非依存性コロニー形成の阻害を測定する。
【0089】
13個の異なるヒト腫瘍組織型(histotype)、すなわち、膀胱癌、結腸癌、胃癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌(腺、扁平上皮細胞および大型細胞)、乳癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、および腎癌、ならびに黒色腫、ヒト胸膜中皮腫(pleuramesothelioma)、および肉腫の2〜10のモデルを含む、表10に示した患者由来のヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて実施例1を試験し、mdは中分化型であり、pdは低分化型であり、udは未分化型であり、wdは高分化型である。
【0090】
ヒト腫瘍異種移植片由来の単一細胞懸濁物の調製
固形のヒト腫瘍異種移植片を、胸腺無形成性のヌードマウス(NMRI nu/nu株)において連続継代で皮下で増殖させ、滅菌条件下で腫瘍を除去し、機械的に分離し、続いてRPMI 1640培地中にIV型コラーゲン(41U/ml)、DNase I(125U/ml)、ヒアルロニダーゼ(100U/ml)およびディスパーゼII(1.0U/ml)からなる酵素カクテルと共に37℃にて45分間、インキュベートする。細胞を200μmおよび50μmメッシュサイズの篩に通し、滅菌PBS緩衝液で2回洗浄する。トリパンブルー排除を使用してNeubauer−血球計において生存細胞の割合を決定する。
【0091】
ヒト腫瘍異種移植片由来の細胞を用いるコロニー形成アッセイ手順
改変された2層軟寒天アッセイ(Hamburgerら,Science 197:461−643,1997)に従って24ウェルフォーマット中でコロニー形成アッセイを実施する。底の層は、0.2ml/ウェルのIMDM(20%(v/v)のウシ胎仔血清、0.01%(w/v)のゲンタマイシンを補足した)および0.75%(w/v)の寒天からなる。0.8・104〜5・104個の細胞を、0.4%(w/v)の寒天を補足した0.2mLの同じ培養培地に加え、24ウェルディッシュ中で底の層上にプレーティングする。0.2mLの培養培地中での連続曝露(薬物オーバーレイ)により試験化合物を適用する。3倍濃度溶液として細胞を播種してから24時間後に薬物オーバーレイを加える。全てのディッシュにおいて3連で6個の未処理の対照ウェルおよび6種の濃度の薬物処理した群を含む。加湿雰囲気下で37℃および7.5%CO2にて20日までの間、培養物をインキュベートし、倒立顕微鏡を使用してコロニー増殖について厳密にモニターする。この期間内に、インビトロ腫瘍増殖は50μmより大きい直径を有するコロニーの形成を導く。最大コロニー形成の時に、自動画像分析システム(OMNICON3600、Biosys GmbH)を用いてコロニーを計数する。2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(1mg/ml、100μl/ウェル)の滅菌水溶液を用いて評価の24時間前に生きているコロニーを染色する。
【0092】
コロニー形成の割合の観点から薬物効果を示す。処理したウェルにおけるコロニーの平均数を、未処理の対照の平均コロニー数と比較する(試験対対照群値、T/C−値[%]により相対コロニー数を示す):
【数1】
【0093】
相対コロニー数に対して化合物濃度をプロットし、絶対IC50およびIC70値、または2点曲線適合によりコロニー形成を50%(T/C=50%)および70%(T/C=30%)それぞれ阻害するのに必要な薬物濃度を決定する。
【0094】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表8に与えるような絶対IC50値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がこれらの患者由来の細胞株の増殖を阻害するのに有用であることを示す。
【0095】
【表8-1】
【表8-2】
【0096】
E545Kp110a白血病モデル
白血病細胞株作製:トランスジェニック胚、B6.Cg−Tg[IghMyc]22Bri/J(Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)由来の胎生肝細胞を、ウイルス5’LTR(長い末端反復)の制御下でヒトp110α(アミノ酸変化としてE545K、ヌクレオチドレベルにおいてG1633A)の臨床的に単離された活性化突然変異を発現し、PGKプロモーター(MSCV6FLAG−p110αG1633A PGK/GFP)の制御下でGFP(緑色蛍光タンパク質)を発現するレトロウイルスで形質導入して、標的により駆動される白血病細胞を作製する。形質導入した細胞を致死的な放射線を浴びた宿主動物に導入する。形質導入した細胞は、レシピエントの骨髄の中に造血幹細胞を再配置させ、レシピエントの元の骨髄のアブレーションに起因する放射線に誘発される致死からレシピエント動物を救う。後眼窩(retro−orbitally)で採取した少量の血液(10μL)中の白血球数を週1回モニタリングすることにより、白血病の進行について救われた主要な動物を観察する。確認された白血病を罹患する主要な放射線を浴びた動物から血液を採取し、白血病細胞株として確立するために二次(放射線を浴びていない)宿主動物に連続継代する。
【0097】
被験動物:白血病レシピエント動物として、8〜10週齢および20〜22gの体重のメスのC57BL/6マウス(Taconic、Cambridge City、IN)を使用する。接種前に動物を通常の低脂肪食餌(4.5%)に慣らし、研究期間の間、その食餌を自由に取らせることを継続する。耳パンチにより各群から個々のマウスを識別する。ドナー動物由来の白血病細胞を動物に接種する(0日)。
【0098】
同系白血病モデル:対照の白血病細胞株を以前に接種したドナー動物から、少量の血液(10μL)を後眼窩で採取し、白血球数によって負荷された白血病細胞を測定する。十分に負荷された白血病を罹患する動物から、ドナー血液を採取し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で500,000個の白血病細胞/200μLで希釈し、0日目に200μL/動物を後眼窩に注射して、白血病を発生させる。p110α(E545K)/myc細胞を接種したマウスを、実施例1での処置について5匹の群およびビヒクルで処置した対照群について10匹の群に割り当てる。接種後、5日〜11日に、各群に強制経口投与によりビヒクルのみ;5、10、20mgの試験物QD/キログラム体重(mg/kg)で実施例1を毎日投与する。12日目に動物から少なくとも10μLの血液を後眼窩で採取して、白血病細胞アッセイにおいて白血病の進行を評価する。
【0099】
白血病細胞アッセイ:各研究動物から十(10)μLの全血を採取し、Coulter TQ−Prepで処理して、赤血球を溶解させ、分析のために残存有核白血球を固定する。即座に固定細胞を分析するか、またはそれらをさらなる分析のために4℃にて暗所で保存する。Cytomics FC500(Beckman Coulter)を用いて蛍光抗体細胞分類(FACS)分析により細胞をアッセイする。各試料中の前方散乱/側方散乱(FS/SS)プロットの特定の領域(正常な動物においてほとんど/全く白血病細胞を示さないが、白血病対照動物において有意な白血病細胞を示す領域として規定した)内の白血病細胞を計数する。これらのデータを、Beckman Coulter Flow−Count Fluorospheres/試料の一定のカットオフの使用により白血病細胞/血液の単位体積として正規化する(均一量のフルオロスフェア(Fluoroshpere)を各々の最初の血液試料に最初に加え、試料当たりの等しい数は試料当たりの計測した等しい体積と一致する)。
【0100】
試験物:週1回ベースで、実施例1を1%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)/0.25%のポリソルベート80/0.05%の消泡剤/精製水と混合し、プローブ超音波発生装置で超音波処理して懸濁する。配合した試験物を4℃にて冷蔵し、使用するまで暗所で保存する(各々の投与前に再懸濁する)。
【0101】
統計的分析:Beckman Coulter’s CXPソフトウェアを用いてフローサイトメトリーデータを表にする。対照群としてビヒクル群を使用してダネット法、1元ANOVAを用いて実施例1の効果の統計的有意性を決定する(JMP Statistical Discovery Software、SAS Institute)。
【0102】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表9に与えるような%TGI値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物が、腫瘍(その腫瘍の増殖は、多くのヒトの癌に見出されるホットスポット変異の1つである、突然変異体E545K PI3Kaにより駆動される)の増殖を阻害することを示す。
【0103】
【表9】
【0104】
異種移植腫瘍モデル
培養中の増殖したヒト膠芽細胞腫細胞U87MGおよびヒト腎癌細胞786−Oを収集し、無胸腺ヌードマウスの腓腹上で皮下に注射する。培養中の増殖したヒト非小細胞肺癌細胞NCI−H1975を収集し、CD−1nu/nuマウスの腓腹上で皮下に注射する。適切なビヒクル中で試験化合物を調製し、腫瘍が確立した場合(移植後7〜21日)、経口強制投与により投与する。処置の過程の間に1週間に2回実施した腫瘍体積測定により腫瘍反応を決定する。毒性の一般的な測定として体重を計る。
【0105】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表10に与えるような%TG1値を有することを見出す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物が、U87MG、786−O、およびNCI−H1975モデルにおいて用量依存性抗腫瘍活性を実証するのに有用であることを示す。
【0106】
【表10】
【0107】
PI3KaおよびmTORインビトロ標的阻害の決定
U87MGヒト膠芽細胞腫細胞(5×106)を0.2mLのマトリゲル中で無胸腺ヌードマウスの脇腹内に皮下で移植する。移植後10日に、TMED50(閾値最小有効量)を決定するために時間経過、単回投与/単一時点、または用量反応プロトコルに従ってマウスに経口投与する。収集時に腫瘍を急速冷凍し、親化合物血漿曝露の決定および用量反応研究の場合、TMEC50(閾値最小有効濃度)の算出のために血液を採取する。RNase Free Pellet Pestle(Kimble−Kontes)を使用して、500μLのXY溶解緩衝液(10μg/mLのロイペプチン、10μg/mLのトリプシン−キモトリプシン阻害剤、10μg/mLのトシルフェニル−アラニルクロロメチルケトン、10μg/mLのアプロチニン、60mMのベータ−グリセロールホスフェート、1%のTriton X100、25mMのTris pH7.5、2.5mMのピロホスフェート、150mMのNaCl、2mMのp−トシル−L−アルギニンメチルエステル、15mMのパラ−ニトロフェニルホスフェート、5mMのベンズアミジン、1mMのバナジウム酸ナトリウム、10mMのフッ化ナトリウム、50μg/mLのフッ化フェニル−メタンスルホニル、1mMの1,4−ジチオスレイトール(DTT)、15mMのEDTA pH8.0、5mMのEGTA pH8.0、1μMのミクロシスチン、1μMのオカダ酸、および1個のロシュコンプリートプロテアーゼ阻害剤ミニタブレット/10mL)中で腫瘍を均質化する。溶解物をアリコートし、即座にアッセイするか、または後の試験のために−80℃で保存する。Meso Scale Discovery(Gaithersburg、MD)ELISA技術の多重フォーマットを使用し、PI3KおよびmTORの真空標的阻害中で測定して、PI3Kの下流エフェクターである、AKTのトレオニン308部位のリン酸化;mTORC1の下流エフェクターであるp70 S6Kのトレオニン389部位およびS6RPのセリン240/244部位におけるリン酸化;mTORC2の下流エフェクターである、AKTのセリン473部位のリン酸化に対する効果を評価する。20μgの溶解物を、適切な捕捉抗体を予めスポットした96ウェルプレートを含む炭素電極に加える。ルテニウム標識した検出抗体を使用して対照のタンパク質をプローブする。共反応物TPAを含有する読み取り緩衝液の存在下で電極上に電流を流し、MSD Sector 6000機器を用いて電気化学発光により生成される光を定量し、記録する。ビヒクル対照群に対する阻害率を算出し、統計的有意性を決定するためにJMPソフトウェアパッケージを使用してANOVA分析を実施する。
【0108】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表11に与えるような活性を有することを見出し、表11において下線の値は有意性を示す。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物がインビボでPI3KおよびmTORを阻害する能力を実証することを示す。
【0109】
【表11】
【0110】
溶解度測定
バイアル内で約1mgの化合物を秤量することによって必要な培地の各々において実施例2の2mg/mL溶液を調製し、各バイアル中に対応する培地の必要な体積(すなわち0.5mL)を加える。蓋をしたバイアルに入れ、周囲条件にて一晩(約16時間)混合物を回転させ、次いで0.22umのUltrafree−MCフィルタ(Millipore(商標))を使用して濾過し、濾過物のpHを測定する(Orion 720A pHメーター)。100μLの濾過物をHPLCバイアルに移すことによって、HPLC分析のための試料を調製し、900μLの50%アセトニトリル/水溶液を加える。HPLC法を使用して溶解度を測定する(0.1%TFAを含む15%アセトニトリルおよび0.1%TFAを含む85%水のHPLC移動相;カラムBonus RP、4.6×75mm、3.5cm;264nm UVにおける検出器;カラム温度=40℃;流速1.5mL/分;注入量=1μL)。
【0111】
【表12】
* pH2=pH2における50mMのリン酸緩衝液
pH4=pH4における50mMのリン酸緩衝液
pH6=pH6における50mMのリン酸緩衝液
pH8=pH8における50mMのリン酸緩衝液
SGF=疑似胃酸(Aburubら,Int.J.of Pharmaceutics,347:16−22,2008)。
Fed=疑似腸液給餌状態(Dressman Jら,Pharma.Res.,15(1):11−21,1998)。
Fast=疑似腸液絶食状態(Dressman Jら,Pharma.Res.,15(1):11−21,1998)。
【0112】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例2の化合物を試験し、表12に与えるような溶解度の結果を有することを見出す。これらの結果は、実施例2が、消化管(GIT)の生理学的pHより望ましい溶解度を実証することを示す。この物理化学的特性は、GITの生理学的pHより様々な溶解度を有する薬物との薬物間相互作用で生じ得るプロトンポンプ阻害剤(PPI)などの複数の医薬で起こり得る癌患者における曝露の変動性を回避するのに役立つ。これは、胃のpHの変化(すなわち、PPIの作用または食事の作用を受けているかまたは受けていない患者)が、溶解度の差に起因して曝露の変動性を生じ得るためである。癌患者が通常、同時に受容する多くの薬物、多くの抗癌剤の狭い治療域ならびに患者の個人間および個人内の大きな変動性のために、潜在的な薬物間相互作用の回避は特に癌において重要である。望ましい溶解度を有する化合物はまた、低い溶解度に起因する有効性に必要とされる全身曝露を増加させるため、または食物作用およびPPIに起因する曝露の変動性を減少させるために使用され得る複雑かつ高価な製剤の必要性を回避する。
【0113】
イヌにおける薬物動態特性
ビーグル犬を医薬品のインビボでの曝露および薬物動態パラメータを決定するために慣用的に使用する。イヌの胃腸の生理はヒトのものと一部の態様において異なるが、薬物吸収を予測し、非線形薬物動態を用いて潜在的な問題を確認することは有用である。
【0114】
イヌにおいて実施例1の薬物動態パラメータを決定するために、オスおよびメスのイヌ(別個の研究において、4匹以下の動物/用量)に、1%のヒドロキシエチルセルロース、0.25%のポリソルベート80、精製水懸濁液中の0.05%の消泡剤(「HEC懸濁液」)中の実施例1を強制経口投与により与える。投与量の範囲はHEC懸濁液中に1から12mg/kgの間である。
【0115】
投与から0(投与前)、0.5、1、2、4、8、および24時間後における各々のイヌ由来の血液試料を、エチレンジアミン四酢酸カリウムを含有する管内に採取する。一部の研究はまた、0.25時間および12時間の時点で採取した試料も含む。これらの試料を遠心分離して、血漿を得、その後、分析の前に凍結する。試料をタンパク質沈殿させ、液体クロマトグラフィー/PE−Sciex API4000質量分析計を使用する、タンデム質量分析により実施例1の存在について抽出物を分析する。標準曲線は1〜5000ng/mLの範囲である。定量の上限以上の血漿濃度を希釈により決定する。実施例1の測定濃度をWatson v.7.4に保存し、有効な実験室情報管理システムを保存のために利用し、電子データを管理し、WATSONソフトウェアを使用した非コンパートメント分析により薬物動態パラメータを算出する。
【0116】
本発明の範囲内の化合物を上記のように実質的にこのアッセイの実施により試験する。例えば、実施例1の化合物を試験し、表13に与えるように平均AUCを有することを見出す。実施例1の曲線下面積(AUC)値は以下の表に示すように1〜12mg/kgの範囲で用量と共に直線的に増加する。個々のAUC値の線形回帰分析の結果、0.86の決定係数R2およびy=1474.3x+44.311の線形方程式が得られる。各用量についての平均AUC値の線形回帰分析の結果、0.96の決定係数R2およびy=1544.7x−735.34の線形方程式が得られる。これらの結果は、本発明の範囲内の化合物が、吸収の飽和が証明されていない、薬理学的に関連する用量範囲にわたってイヌにおいて線形薬物動態特性を有することを示す。これは、経口投与による全身曝露の予測可能な増加を可能にする、薬物開発および臨床投与についての有益な特性である。
【0117】
【表13】