(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、ノズル表面に凹部を設けた挿入ノズルが従来から提案されているものの、挿入ノズルの先端部から中央部にかけてはフラットである。このような挿入ノズルを使用する場合、ノズルをスムーズに体内に挿入するためには、ノズル先端部を浣腸液やワセリン等で濡らしておくことが求められていた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、乾燥状態において、挿入抵抗を低減させることのできる浣腸容器および挿入ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う浣腸容器は、内部に浣腸液を貯蔵する容器本体と、容器本体に連結され、体内に挿入される挿入ノズルとを備える。挿入ノズルは、先端部に設けられ、浣腸液を噴出するための噴出口と、軸方向に沿って先端側に位置する基本径部と、基本径部に隣接して位置し、基本径部よりも内側に凹んだ環状凹部とを含む。挿入ノズルの先端から、先端側に位置する基本径部の後端までの軸方向長さは、10mm以下である。
【0009】
好ましくは、挿入ノズルの基本径部と環状凹部とは、軸方向に沿って交互に位置している。
【0010】
好ましくは、各基本径部の軸方向長さは、10mm以下であり、各環状凹部の軸方向長さは、10mm以下である。
【0011】
好ましくは、基本径部の外径と環状凹部の外径との差は、1mm以下である。
【0012】
好ましくは、基本径部と環状凹部との境界部は、R状に形成されている。
【0013】
さらに好ましくは、挿入ノズルの先端部から見て2番目以降の基本径部の軸方向長さは、3mm以下である。
【0014】
環状凹部の個数は、3個であることが望ましい。
【0015】
この発明の他の局面に従う挿入ノズルは、体内に挿入される、浣腸用のノズルであって、先端部に設けられ、浣腸液を噴出するための噴出口と、軸方向に沿って先端側に位置する基本径部と、基本径部に隣接して位置し、基本径部よりも内側に凹んだ環状凹部とを備える。先端部から、先端側に位置する基本径部の後端までの軸方向長さは、10mm以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乾燥状態において、挿入抵抗を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
(浣腸容器の構成について)
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係る浣腸容器1は、内部に浣腸液を貯蔵する容器本体11と、容器本体11から突設し、体内に挿入される挿入ノズル12とを備えている。浣腸容器1は、樹脂製であり、たとえば、ブロー成形により一体的に形成されている。浣腸容器1の説明において、挿入ノズル12の突出する方向(先端側)が上方であり、その反対方向が下方であるものとする。
【0020】
容器本体11は、たとえば蛇腹形状を有する貯蔵部21と、貯蔵部21の上方に設けられた円筒状の首部22とを含む。ユーザが貯蔵部21を把持してこれを握ると、浣腸液が首部22から流出する。
【0021】
挿入ノズル12については、
図3および
図4をさらに参照して説明する。挿入ノズル12は、容器本体11の首部22の上端に連結された保持用凹部33と、保持用凹部33の上端に連結された挿入軸部32とを含む。
【0022】
図4に示されるように、挿入軸部32の先端部(上端部)には、使用時に浣腸液を体内に噴出するための噴出口31が設けられており、その外径基準値φaは、略6mmである。また、挿入軸部32全体の軸方向長さL1は、略40mmである。なお、挿入軸部32の軸方向長さL1は、30mm以上であればよい。また、浣腸容器1は、いわゆる家庭用であるため、挿入軸部32の軸方向長さL1は、通常、50mm以下である。
【0023】
保持用凹部33は、製造工程において、噴出口31に挿入された充填芯から容器本体11の貯蔵部21内に浣腸液を充填する際に、充填装置によって保持される部位である。保持用凹部33の外径φcは、略5mmである。また、保持用凹部33の軸方向長さL2は、たとえば8mmである。なお、挿入ノズル12の厚みTは、上端から下端まで均一であり、たとえば1mmである。
【0024】
ここで、挿入ノズル12の挿入軸部32は、噴出口31を有するR状の先端部41と、複数の基本径部42と、複数の環状凹部43と、下端傾斜部44とで構成されている。基本径部42と環状凹部43とは、軸方向に沿って交互に位置している。基本径部42および環状凹部43は、ともに、挿入ノズル12の軸線13を中心とする環状の部位である。
【0025】
本実施の形態では、挿入ノズル12は、4つの基本径部42と3つの環状凹部43とを有している。
図3では、4つの基本径部42それぞれの範囲が記号A1〜A4で示され、3つの環状凹部43それぞれの範囲が記号B1〜B3で示されている。すなわち、先端部41側から順に、範囲A1で示される1番目の基本径部42、範囲B1で示される1番目の環状凹部43、範囲A2で示される2番目の基本径部42、範囲B2で示される2番目の環状凹部43、範囲A3で示される3番目の基本径部42、範囲B3で示される3番目の環状凹部43、範囲A4で示される4番目の基本径部42が設けられている。
図4では、互いに隣り合う基本径部42と環状凹部43との境界が破線にて示されている。
【0026】
各基本径部42は、断面が平坦な円筒状であり、その外径は、上記した外径基準値φaと同じ、略6mmである。環状凹部43は、基本径部42よりも内側に凹んでおり、その外径φbは、略5.6mmである。つまり、基本径部42の外径φaと環状凹部43の外径φbとの差は、略0.4mmである。なお、
図3および
図4では、理解の容易のために、挿入軸部32の凹凸形状を誇張して示している。また、環状凹部43の外径とは、環状凹部43の最小外径を表している。
【0027】
下端傾斜部44は、後端側に位置する4番目の基本径部42(A4)と、上述の保持用凹部33との間に設けられている。これらの境界部は、R状に形成されていることが望ましい。
【0028】
ここで、1番目の基本径部42(A1)の軸方向長さは、5mm程度である。先端部41の軸方向長さは、2mm程度であるため、挿入ノズル12の先端から1番目の基本径部42の後端までの軸方向長さL11は、略7mmである。これに対し、2番目以降の各基本径部42の軸方向長さL13は、略1mmであり、1番目の基本径部42の軸方向長さL11よりも十分に短い。1番目の基本径部42が、2番目以降の基本径部42よりも長い理由の1つとしては、挿入ノズル12の先端側にキャップ(図示せず)を被せる場合に、そのキャップを係止可能とするために、ある程度の長さが必要となることが挙げられる。
【0029】
各環状凹部43の軸方向長さL12は、略9mmである。環状凹部43の形状例については、
図5〜
図7に示す。これらの図には、
図4の縦断面図において楕円で囲った部分Pを拡大し、紙面左側に90°回転させた場合の環状凹部43の形状例が示されている。
【0030】
図5に示すように、環状凹部43は、平坦な谷底部51と、谷底部51を挟み、基本径部42に隣接する一対の傾斜部52とによって構成されてもよい。しかし、挿入抵抗を低減させるためには、
図6に示すように、谷底部51と傾斜部52との境界部61、および、傾斜部52と基本径部42との境界部62は、R状に形成されていることが望ましい。あるいは、
図7に示すように、環状凹部43は、平坦な谷底部51を有さず、その全体が滑らかな皿状に形成されてもよい。なお、少なくとも、基本径部42と環状凹部43との境界を示す境界部62が、R状であればよい。
【0031】
本実施の形態では、環状凹部43は、
図7のような形状をしているものとする。ただし、
図3においては、便宜上、平坦な基本径部42と環状凹部43との境界、および、環状凹部43の傾斜部分と谷底部分との境界が細線で示されている。
【0032】
上記のような挿入ノズル12によれば、先端から10mmまでの範囲内に、1番目の環状凹部43(B1)の上端が位置するため、使用時には、乾燥状態であっても挿入ノズル12の挿入抵抗を低減させることができる。このことを示す実験結果について、以下に説明する。
【0033】
(実験結果について)
実験は、株式会社トリニティーラボ社製TL201Ts型の摩擦力測定器を用いて行われた。
【0034】
第1実験では、
図10に示すように、ブレード摩擦用治具(図示せず)により45°傾けた発泡ゴム91を、乾燥状態の試料80に接触させて、速度:60mm/min、荷重:30g、距離:30mmの条件で軸方向に走査し、試料80と発泡ゴム91との接触部の摩擦力(動摩擦力)を測定した。
【0035】
第1実験の試料80は、本実施の形態の挿入ノズル12(以下「3波型挿入ノズル12」ともいう)、
図8に示す6波型挿入ノズル12A、および、
図9に示すフラット型挿入ノズル1012の3種類である。
【0036】
6波型挿入ノズル12Aの挿入軸部32Aは、3波型挿入ノズル12と同様に、基本径部42と環状凹部43とを交互に有しているが、環状凹部43の個数が6個である。また、環状凹部43の外径φdは、略5.8mmである。
【0037】
フラット型挿入ノズル1012の挿入軸部32Bは、表面に凹凸がなく、その外径は、上述の基本径部42の外径φaと同じ、略6mmである。
【0038】
第1実験における、試料80ごとの摩擦力(単位:gf)の測定結果が、
図11の棒グラフに示されている。
図11のグラフから明らかなように、3波型挿入ノズル12、および、6波型挿入ノズル12Aとも、フラット型挿入ノズル1012に比べ、摩擦力は大幅に低減されている。具体的には、3波型挿入ノズル12の摩擦力は17.1gf、6波型挿入ノズル12Aの摩擦力は17.6gf、フラット型挿入ノズル1012の摩擦力は25.0gfであった。3波型と6波型とを比較すると、3波型の方が、若干ながら、良い結果であった。
【0039】
第2実験では、第1実験を踏まえ、第1実験において最も摩擦力が低かった3波型挿入ノズル12、および、
図9に示すフラット型挿入ノズル1012を試料80とし、人体の皮膚を対象に摩擦力を測定した。
【0040】
具体的には、
図12に示すように、固定治具93に固定された試料80を、人体の腕部92に接触させて、乾燥状態および濡れ状態の双方において、速度:60mm/min、荷重:10g,20g,50g、距離:20mmの条件で軸方向に走査し、試料80と腕部92との接触部の摩擦力を測定した。なお、20mmの走査区間のうち、7.2mm〜16.8mmの区間内のデータから摩擦力を算出した。また、濡れ状態においては、測定前に腕部92の表面を浣腸液で濡らした。
【0041】
第2実験における、乾燥状態の試料80ごとの摩擦力(単位:gf)の測定結果が、
図13の折れ線グラフに示されている。また、第2実験における、濡れ状態の試料80ごとの摩擦力(単位:gf)の測定結果が、
図14の折れ線グラフに示されている。
図13および
図14では、3波型挿入ノズル12の摩擦力の推移が実線で示され、フラット型挿入ノズル1012の摩擦力の推移が、一点鎖線で示されている。
【0042】
具体的には、乾燥状態における3波型挿入ノズル12の摩擦力は、荷重10gで5.8gf、荷重20gで11.1gf、荷重50gで30.1gfであった。乾燥状態におけるフラット型挿入ノズル1012の摩擦力は、荷重10gで7.3gf、荷重20gで17.1gf、荷重50gで39.1gfであった。また、濡れ状態における3波型挿入ノズル12の摩擦力は、荷重10gで6.6gf、荷重20gで13.6gf、荷重50gで32.3gfであった。濡れ状態におけるフラット型挿入ノズル1012の摩擦力は、荷重10gで6.8gf、荷重20gで14.6gf、荷重50gで34.1gfであった。
【0043】
乾燥状態での摩擦力は、
図13のグラフに示されるように、3波型挿入ノズル12の方が、どの荷重においても、フラット型挿入ノズル1012よりも低かった。一方、濡れ状態での摩擦力は、
図14のグラフに示されるように、どちらもあまり差異が見られなかった。また、乾燥状態における3波型挿入ノズル12の摩擦力は、濡れ状態におけるフラット型挿入ノズル1012の摩擦力よりも若干良い結果であった。
【0044】
以上より、一般的なフラット型挿入ノズル1012では、スムーズに体内に挿入するためには、使用前に先端部を浣腸液またはワセリン等で濡らしておくことを推奨していたが、本実施の形態の3波型挿入ノズル12では、乾燥状態であってもスムーズに体内に挿入可能であることが明らかとなった。
【0045】
(変形例)
本実施の形態の浣腸容器1は、3波型挿入ノズル12を備えることとしたが、第1実験より、6波型挿入ノズル12Aであっても、乾燥状態において、フラット型よりも摩擦力が低減することが証明された。そのため、浣腸容器1は、3波型挿入ノズル12に代えて、6波型挿入ノズル12Aを備えてもよい。
【0046】
あるいは、挿入ノズル12の挿入軸部32に、少なくとも1つの環状凹部43が形成され、かつ、ノズル先端から1番目の基本径部42の後端までの軸方向長さ(L1)が10mm以下であれば、挿入ノズル12の形状は上記した形状に限定されない。
【0047】
ただし、基本径部42の外径φaと環状凹部43の外径φbとの差は、1mm以下であることが望ましい。上記した充填芯の直径が略2mmであることから、挿入ノズル12の内径として3mm程度確保したいためである。なお、基本径部42の外径φaが6mmより大きい場合であっても、基本径部42の外径φaと環状凹部43の外径φbとの差は、1mm以下であることが望ましい。
【0048】
また、各環状凹部43の軸方向長さ(L12)は、いずれも、10mm以下であることが望ましい。また、2番目以降の基本径部42の軸方向長さ(L13)は、3mm以下であることが望ましい。なお、2番目以降の基本径部42の軸方向長さ(L13)も、10mm以下であればよい。
【0049】
また、各環状凹部43の軸方向長さは、異なっていてもよい。同様に、2番目以降の各基本径部42の軸方向長さも、異なっていてもよい。
【0050】
また、環状凹部43は、軸線13に対して直角に配置されたが、軸線13に対して多少傾いて配置されてもよい。この場合、複数の環状凹部43が螺旋状に繋がっていてもよい。
【0051】
また、挿入ノズル12は、上記した保持用凹部33を含まなくてもよい。この場合、挿入軸部32の下端に位置する下端傾斜部44がなく、後端側に位置するたとえば4番目の基本径部42が、容器本体11の首部22に連結されてもよい。また、この場合、後端側に位置する基本径部42の軸方向長さは、先端側に位置する1番目の基本径部42の長さ以上であってもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、挿入ノズル12を備えた浣腸容器1について説明したが、挿入ノズル12は、独立の容器本体11、または、注射器等の専用器具に連結されて用いられてもよい。つまり、挿入ノズル12のみを流通させてもよい。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。