(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記基材の上方に第1ゲート電極を形成する工程と、前記基材の上方に前記第1ゲート電極と並設して第2ゲート電極を形成する工程と、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極の上にゲート絶縁膜を形成する工程と、少なくとも、前記第1ゲート電極の上方であって前記ゲート絶縁膜上の第1領域と、前記第2ゲート電極の上方であって前記ゲート絶縁膜上の第2領域とに、非結晶性半導体膜を形成する工程と、短軸及び長軸の両方向において凸形状の連続的な光強度分布を有するレーザ光を、前記第1領域と前記第2領域とに形成された前記非結晶性半導体膜に照射する工程と、前記第1領域の上方に第1ソース電極及び第1ドレイン電極を、前記第2領域の上方に第2ソース電極及び第2ドレイン電極を形成する工程と、を具備し、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の内部領域を前記第1領域に照射するときに、前記内部領域と連続する前記内部領域の外側の領域であって前記内部領域よりも前記光強度が低い領域である外部領域を前記第2領域に照射することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の前記内部領域を前記第1領域に照射して、前記非結晶性半導体膜の温度を、前記非結晶半導体膜が結晶化された結晶性半導体膜の融点以上に加熱し、前記レーザ光の前記外部領域を前記第2領域に照射して、前記第2領域における前記非結晶性半導体膜の温度を前記結晶性半導体膜の融点未満に加熱するものである。
【0015】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の前記外部領域を前記第2領域に照射して、前記第2領域における前記非結晶性半導体膜の温度を前記非結晶性半導体膜の融点以上に加熱するものである。
【0016】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の前記外部領域を前記第2領域に照射して、前記第2領域における前記非結晶性半導体膜の温度を、前記非結晶性半導体膜の融点未満であって前記非結晶半導体膜の結晶成長温度以上に加熱するものである。
【0017】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の前記外部領域を前記第2領域に照射して、前記第2領域における前記非結晶性半導体膜の温度を前記非結晶性半導体膜の結晶成長温度以下に加熱するものである。
【0018】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程は、前記第1領域における前記非結晶性半導体膜を加熱した後に当該非結晶性半導体膜を冷却し、前記非結晶性半導体膜を結晶化する工程を含むことが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記第1領域に形成された前記非結晶性半導体膜は、第1の平均結晶粒径の結晶粒を有する第1結晶半導体膜に結晶化され、前記第2領域に形成された前記非結晶性半導体膜は、前記第1の平均結晶粒径より小さい第2の平均結晶粒径の結晶粒を有する第2結晶半導体膜に結晶化されるものである。
【0020】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記レーザ光の光強度分布における最大光強度を100%としたときに、前記内部領域は、光強度が77%から100%の領域であることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記第1の平均結晶粒径は、60nmから1μmであることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記レーザ光の光強度分布における最大光強度を100%としたときに、前記外部領域は、光強度が61%から77%の領域であることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記第2領域に形成された前記非結晶性半導体膜は、平均結晶粒径が40nmから60nmの結晶粒を有する第2結晶半導体膜に結晶化されるものである。
【0024】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の前記外部領域を前記第2領域に照射して前記非結晶性半導体膜の温度を1100℃以上1414℃未満に加熱し、前記第2領域の前記非結晶性半導体膜を過冷却液体状態を経て結晶化させるものである。
【0025】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記レーザ光の光強度分布における最大光強度を100%としたときに、前記外部領域は、光強度が44%から61%の領域であることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記第2領域に形成された前記非結晶性半導体膜は、平均結晶粒径が25nmから35nmの結晶粒を有する第2結晶半導体膜に結晶化されるものである。
【0027】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記レーザ光を前記非結晶半導体膜に照射する工程において、前記レーザ光の前記外部領域を前記第2領域に照射して前記非結晶性半導体膜の温度を600℃以上1100℃未満に加熱し、前記第2領域の前記非結晶性半導体膜内に結晶を固相成長させるものである。
【0028】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記第1結晶性半導体膜と前記第2結晶性半導体膜とを離間して形成することが好ましい。
【0029】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様において、前記第1結晶性半導体膜と前記第2結晶性半導体膜との境界領域を、パターニングにより除去することが好ましい。
【0030】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様はにおいて、前記凸形状の連続的な光強度分布は、ガウシアン分布であることが好ましい。
【0031】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置の一態様は、前記第5工程において、前記非結晶性半導体膜にマイクロセカンドオーダにてレーザ照射するものである。
【0032】
(実施形態)
以下、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置、有機EL表示装置、及び薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、説明のための模式図であり、膜厚及び各部の大きさの比などは、必ずしも厳密に表したものではない。
【0033】
(CWレーザ光結晶化装置)
まず、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置を製造する際に用いられるCWレーザ光結晶化装置500について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本実施形態におけるCWレーザ光結晶化装置の構成例を示す図である。
図2Aは、本実施形態におけるCWレーザ光の長軸プロファイルを示す図である。
図2B及び
図2Cは、本実施形態におけるCWレーザ光の短軸プロファイルを示す図であり、
図2Cは、
図2Bのポジション範囲を小さくした図(拡大図)である。
【0035】
図1に示すように、本実施形態におけるCWレーザ光結晶化装置500は、アモルファスシリコン膜等の非晶質性半導体膜(非結晶性半導体膜)がガラス基板上に形成された試料501に対して、連続的なレーザ光であるCW(Continuous Wave)レーザ光を用いてマイクロセカンドオーダで照射する装置である。CWレーザ光結晶化装置500は、レーザ装置510と、長軸成形レンズ520と、ミラー530と、短軸成形レンズ540と、集光レンズ550と、ビームプロファイラー560と、石英ガラス570とを備える。
【0036】
レーザ装置510は、連続発振型のレーザ光であるCWレーザ光を発振する。また、本実施形態において、レーザ装置510は、例えば、グリーンレーザ光又はブルーレーザ光を、10〜100ナノセカンドという短時間ではなく10〜100マイクロセカンドという比較的長い時間で基板に照射する。
【0037】
CWレーザ光結晶化装置500において、レーザ装置510が発振したCWレーザ光は、長軸成形レンズ520を通過し、ミラー530によって照射方向が変更される。ミラー530で照射方向が変更されたCWレーザ光は、短軸成形レンズ540を通過し、集光レンズ550によって集光されて試料501に照射される。また、集光レンズ550で集光されたCWレーザ光の大半は、石英ガラス570を通過して試料501に照射されるが、集光レンズ550で集光されたCWレーザ光の一部は、ビームプロファイラー560に入射されて、ビームプロファイルが測定される。
【0038】
ここで、集光レンズ550により集光されたCWレーザ光のビームプロファイル、すなわち、CWレーザ光結晶化装置500によって試料501に照射するCWレーザ光のビームプロファイルは、
図2A〜
図2Cに示すように、長軸にも短軸にもガウシアン分布である凸形状の光強度分布となっている。但し、
図2A及び
図2Bに示すように、長軸における光強度分布は、ポジションが0〜6000μmにおいて、短軸に対して広い範囲でガウシアン分布となっている。また、
図2B及び
図2Cに示すように、短軸における光強度分布は、ポジションが0〜60μmの狭い範囲においてガウシアン分布となっている。なお、
図2A〜
図2Cにおいて、縦軸は、CWレーザ光のプロファイルのレーザ光強度が最大となる位置でのレーザ光強度を100%とした場合の相対強度を示している。
【0039】
このように、本実施形態において、集光レンズ550により集光されたCWレーザ光のビームプロファイルは、短軸及び長軸において凸形状のガウシアン分布の光強度分布である。この光強度分布は、レーザ装置510が発振するCWレーザ光が短軸成形レンズ540及び長軸成形レンズ520を通過することによって成形される。また、ビームプロファイラー560によって測定したビームプロファイルに基づいて、CWレーザ光のビームプロファイルが短軸及び長軸においてガウシアン分布の光強度分布となるように、長軸成形レンズ520及び短軸成形レンズ540を調整することができる。
【0040】
なお、集光レンズ550により集光されて試料501に照射されるCWレーザ光のビームプロファイルは、典型的には、ガウシアン分布の光強度分布を有するが、これに限るものではない。試料501に照射されるCWレーザ光としては、つりがね型である上に凸の連続的な光強度分布であればよい。
【0041】
ここで、集光レンズ550で集光されたCWレーザ光のビームプロファイルが短軸及び長軸ともにガウシアン型の光強度分布を有する場合が典型的である理由を説明する。CWレーザ光を発振する装置が発振するCWレーザ光の光強度分布は、元来ガウシアン分布かそれに相当するものである。そのため、CWレーザ光結晶化装置500の光学系に特別な付加装置や部品を導入しなくてもよいので、CWレーザ光結晶化装置500は、ビームプロファイルが短軸及び長軸ともにガウシアン型の光強度分布であるCWレーザ光を比較的簡便に照射することができる。
【0042】
(非結晶性半導体膜の結晶組織)
以上のように構成されたCWレーザ光結晶化装置500を用いて、非結晶性半導体膜に対してCWレーザ光を照射することにより、異なる結晶組織を有する結晶性半導体膜を得ることができる。
【0043】
例えば、非結晶性半導体膜として非晶質シリコン薄膜(アモルファスシリコン膜)を用いてCWレーザ光を照射してアニールすると、CWレーザ光のビームプロファイルによって、SPC範囲、Ex範囲又は溶融範囲によって結晶化した結晶組織を有するシリコン薄膜を得ることができる。
【0044】
SPC(Solid Phase Crystallization)範囲とは、アモルファスシリコンの融点以下の範囲、すなわち600℃〜1100℃の温度範囲において非結晶性シリコン薄膜が結晶化する温度範囲のことである。つまり、SPCは、アモルファスシリコンの融点以下の温度範囲、すなわち600℃〜1100℃の温度範囲で、固相成長で結晶化する現象である。SPCによるシリコンの結晶組織は、例えば、平均結晶粒径が25nm〜35nm程度である。
【0045】
Ex(Explosive Nucleation)範囲とは、アモルファスシリコンの融点以上で、かつ、シリコンの融点以下すなわち1100℃〜1414℃の温度範囲において非結晶性シリコン薄膜が結晶化する温度の範囲のことである。つまり、Exは、アモルファスシリコンの融点以上かつシリコンの融点以下の温度範囲、すなわち1100℃〜1414℃の温度範囲で、過冷却液体状態を経て結晶化する現象である。Exによるシリコンの結晶組織は、例えば、平均結晶粒径が40nm〜60nm程度である。
【0046】
溶融範囲とは、シリコンの融点以上の温度範囲、すなわち1414℃以上の温度範囲である。なお、アモルファスシリコンを溶融範囲で溶融して冷却することで結晶化した場合には、平均結晶粒径は60nm〜1μm程度のp−Si(多結晶シリコン)となる。
【0047】
ここで、シリコンの結晶化メカニズムについて、
図3を用いて説明する。
図3は、シリコンの結晶化に対する温度とエネルギーとの関係を示す図である。なお、
図3において、横軸は、温度を示しており、縦軸はエネルギー(熱)を示している。
【0048】
図3に示すように、アモルファス状態のシリコンは、例えばレーザ光の照射などで熱せられ、SPC範囲、すなわち600℃〜1100℃の温度範囲になるとする。この場合、アモルファス状態のシリコンは固相成長して微結晶化する。なお、このSPC範囲を経て結晶化したシリコンは、平均結晶粒径が25nmから35nmであるSPCの結晶性シリコンとなる。
【0049】
さらに、SPC範囲のシリコンに熱が加えられることにより、Ex範囲、すなわち、シリコン内の温度が、アモルファス状態のシリコンにおける原子のネットワーク構造が変化する融点として考えられる温度である1100℃を越え、かつ、シリコンの融点1414℃以下の範囲になるとする。この場合、シリコンの結晶粒径が、固相成長で得られる結晶(SPCの結晶性シリコン)からわずかに拡大する。これは、シリコンの温度が、アモルファスシリコンの融点以上の温度となることにより、シリコンが部分的に溶融することで粒径が大きくなると考えられる。なお、このEx範囲を経て結晶化したシリコンは、平均結晶粒径が40nm〜60nmであるEx範囲の結晶性シリコンとなる。
【0050】
そして、さらに、Ex範囲のシリコンに熱を加えて、溶融範囲、すなわちシリコンの融点である1414℃以上の温度範囲になるとする。そこで、Ex範囲で得られる結晶(Exの結晶性シリコン)は、シリコンの融点において熱エネルギーが潜熱として与えられ、溶融する(液相となる)。なお、溶融範囲を経て結晶化したシリコンは、溶融して体積が縮小した後に体積膨張を伴って結晶化し、平均結晶粒径は60nm以上のp−Si(多結晶シリコン)となる。
【0051】
次に、Ex範囲のシリコンが溶融するメカニズムについて、
図4を用いて説明する。
図4は、Ex結晶組織の成長メカニズムを説明するための図である。
【0052】
SPC範囲にあるシリコンでは、確率的に原子が複数集まって、臨界粒径(〜1nm)を越えると結晶核となり、結晶成長する。
【0053】
それに対し、Ex範囲にあるシリコンでは、アモルファスシリコンの融点以上の温度が加えられているため、原子の移動が促進され、
図4(a)に示すように、結晶核の形成が促進される。そして、成長性の核が発生した核の周囲は、
図4(b)に示すように、潜熱により溶融して結晶化する。
【0054】
以上のように、SPC範囲で結晶化した場合と、SPC範囲を超えてEx範囲を経て結晶化した場合と、溶融範囲を経て結晶化した場合とでは、結晶化するメカニズムが異なり結晶化後の粒径等が異なることになる。
【0055】
(非結晶性半導体膜の結晶組織とCWレーザ光との関係)
本願発明者らは、CWレーザ光のエネルギー密度とシリコンの結晶組織との関係について鋭意検討した結果、CWレーザ光の出力エネルギー密度に応じて上記のように粒径が異なる結晶組織を形成できることを見出した。以下、具体的に説明する。
【0056】
本願発明者らは、CWレーザ光によって非結晶性半導体膜を結晶化させて結晶性半導体膜を形成して、当該結晶性半導体膜をチャネル層とするTFTを作製し、CWレーザ光のエネルギー密度に対するTFTのオン電流(Ion)の変化を調べた。その結果、
図5A及び
図5Bに示すような関係を示す曲線を得ることができた。
図5Aは、CWレーザ光のエネルギー密度とTFTのオン電流(又はシリコン結晶組織)との関係を示す図である。また、
図5Bは、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーとオン電流(又はシリコン結晶組織)との関係を示す図である。なお、本実験では、非結晶性半導体膜として、非晶質シリコン膜(アモルファスシリコン膜)を用いた。
【0057】
図5Aに示すように、CWレーザ光のエネルギー密度を変化させると、エネルギー密度の上昇とともにTFTのオン電流も上昇することが分かる。すなわち、エネルギー密度の上昇によってシリコンの結晶組織における粒径が拡大してキャリア移動度が大きくなっていることが分かる。また、
図5Aに示される曲線には複数の特異点が存在し、この特異点が、シリコンにおける結晶組織の境界、すなわち、アモルファス、SPC範囲、Ex範囲及び溶融範囲の境界を表している。
【0058】
そして、CWレーザ光の出力エネルギー密度の上昇に伴って、シリコンの結晶組織が、アモルファス、SPC範囲、Ex範囲及び溶融範囲のこの順に変化している。
【0059】
具体的には、CWレーザ光のエネルギー密度が4.3[J/cm
2]未満の場合は、CWレーザ光が照射されたアモルファスシリコン膜は、平均結晶粒径が25nm未満のアモルファス状態の結晶組織となっている。すなわち、レーザ照射されたアモルファスシリコン膜は、アモルファスシリコンの結晶成長温度(600℃)以下の温度範囲で加熱される。
【0060】
また、CWレーザ光のエネルギー密度が4.3[J/cm
2]以上5.8[J/cm
2]未満の場合は、SPC範囲でアモルファスシリコン膜が結晶化され、平均結晶粒径が25nm以上35nm未満の結晶性シリコン膜が得られる。すなわち、レーザ照射されたアモルファスシリコン膜は、アモルファスシリコンの結晶成長温度以上かつアモルファスシリコンの融点以下の温度範囲(600℃〜1100℃)で加熱され、アモルファスシリコン膜内に結晶を固相成長させることにより結晶化する。
【0061】
CWレーザ光のエネルギー密度が5.8[J/cm
2]以上7.4[J/cm
2]未満の場合は、Ex範囲でアモルファスシリコン膜が結晶化され、平均結晶粒径が40nm以上60nm未満の結晶性シリコン膜が得られる。すなわち、レーザ照射されたアモルファスシリコン膜は、アモルファスシリコンの融点以上かつシリコンの融点以下の温度範囲(1100℃〜1414℃)で加熱されて、過冷却液体状態を経て結晶化する。
【0062】
CWレーザ光のエネルギー密度が7.4[J/cm
2]以上9.6[J/cm
2]未満の場合は、溶融範囲でアモルファスシリコン膜が結晶化され、平均結晶粒径が60nm以上1μm未満の結晶性シリコン膜が得られる。すなわち、レーザ照射されたアモルファスシリコン膜は、シリコンの融点(1414℃)以上の温度範囲で加熱されて溶融結晶化する。
【0063】
なお、CWレーザ光のエネルギー密度を9.6[J/cm
2]以上にしてアモルファスシリコン膜をレーザ照射すると、当該シリコン膜はアブレーション状態となりTFTのチャネル層として機能しなくなる。従って、本実施形態において、エネルギー密度の最大値は、9.6[J/cm
2]である。
【0064】
図5Bは、
図5Aをシリコンの一般式に換算したものであり、
図5Aに示すエネルギー密度(横軸)をシリコン単位体積あたりの吸収エネルギーとして表したものである。以下、この換算について説明する。
【0065】
まず、レーザ照射パワー密度をP[kW/cm
2]、レーザスキャン速度をss[mm/s]、レーザ光におけるビームプロファイルの短軸幅をS[μm]とすると、エネルギー密度Eirr[J/cm
2]は、Eirr=P×S/ssで表される。このとき、レーザ照射パワー密度P、レーザスキャン速度ss及びレーザ光におけるビームプロファイルの短軸幅Sの値を固定し、それぞれ、P=70[kW/cm
2]、ss=300[mm/s]、S=30[μm]とすると、Eirr=P×S/ss=7.0[J/cm
2]となる。
【0066】
ここで、シリコンの吸収率をAとすると、単位面積あたりのシリコンに吸収されるエネルギーEabs[J/cm
2]は、Eabs=A×Eirrで表される。また、アモルファスシリコンの膜厚をd[nm]とすると、単位体積あたりのシリコンに吸収されるエネルギーe_abs[J/cm
3]は、e_abs=Eabs/dで表される。従って、e_abs=(A/d)×Eirrとなる。このとき、アモルファスシリコンの膜厚dを45[nm]とし、シリコンの吸収率Aを25%とすると、e_abs=5.5×10
4×Eirrとなる。
【0067】
この変換式を用いて、
図5Aの横軸のエネルギー密度Eirrを換算すると、
図5Bになる。なお、他の膜厚構成(A’、d’)の場合における照射エネルギー密度Eirr’は、上記のe_absから、Eirr’=(d’/A’)×e_absの式から求めることができる。
【0068】
そして、
図5Bに示すように、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーが2.4×10
5[J/cm
3]未満の場合は、平均結晶粒径が25nm未満のアモルファス状態の結晶組織である。
【0069】
また、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーが2.4×10
5[J/cm
3]以上3.2×10
5[J/cm
3]未満の場合は、SPC範囲で結晶化された結晶組織であって、平均結晶粒径が25nm以上35nm未満である。
【0070】
また、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーが3.2×10
5[J/cm
3]以上4.1×10
5[J/cm
3]未満の場合は、Ex範囲で結晶化された結晶組織であって、平均結晶粒径が40nm以上60nm未満である。
【0071】
そして、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーが4.1×10
5[J/cm
3]以上5.3
×105[J/cm
3]未満の場合は、溶融範囲で結晶化された結晶組織であって、平均結晶粒径が60nm以上1μm未満である。
【0072】
なお、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーを5.3
×105[J/cm
3]以上でアモルファスシリコン膜をレーザ照射すると、当該シリコン薄膜はアブレーション状態となりTFTのチャネル層として機能しなくなる。
【0073】
(CWレーザ光を用いた非結晶性半導体膜の結晶化)
次に、CWレーザ光結晶化装置500を用いて非結晶性半導体膜にCWレーザ光を照射することにより、結晶組織が異なる2つの領域を有する半導体膜を同時に形成する方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態におけるCWレーザ光の長軸プロファイルを示したものであり、レーザ強度とシリコンの結晶組織との関係を表している。
【0074】
凸形状の光強度分布を有するCWレーザ光として、
図6に示されるように、長軸のビームプロファイルがガウシアン型であるCWレーザ光(以下、「長軸ガウシアン型CWレーザ光」と記載する)を用いて非結晶性半導体膜を照射すると、非結晶性半導体膜はCWレーザ光の光強度に応じた結晶組織に結晶化される。すなわち、CWレーザ光のビームプロファイルは、光強度がCWレーザ光の光強度分布の位置(領域)によって異なるように構成されているので、1回のレーザ照射によって非結晶性半導体膜に対して異なるレーザエネルギーを同時に与えることができる。これにより、レーザ照射された非結晶性半導体膜において、光強度分布の中の光強度の強い領域で照射された部分については相対的に高い温度となり、また、光強度分布の中の光強度の弱い領域で照射された部分については相対的に低い温度となる。
【0075】
このように、CWレーザ光の光強度分布の位置によってレーザ照射時における非結晶性半導体膜の加熱温度を異ならせることができるので、結晶組織の異なる半導体膜を同時に形成することができる。例えば、非結晶性シリコン薄膜に対して長軸ガウシアン型CWレーザ光を用いてレーザ照射すると、光強度分布内の光強度に応じて、アモルファス、SPC範囲、Ex範囲又は溶融範囲の結晶組織とすることができる。
【0076】
これにより、CWレーザ光のビームプロファイルを所望に設定することによって、アモルファス、SPC範囲、Ex範囲又は溶融範囲の結晶組織のうち、複数の範囲の結晶組織を有する半導体膜、すなわち、結晶粒径が異なる所望の2つの領域を有する半導体膜を同時に得ることができる。このようなCWレーザ光のビームプロファイルについては、作製したい結晶組織に応じて、
図5A及び
図5Bを用いて所望に設定することができる。
【0077】
例えば、溶融範囲で結晶化させた結晶組織とEx範囲で結晶化させた結晶組織とを同時に形成する場合、
図6に示すように、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における最大光強度を100%としたときに、当該光強度分布における一定の幅の内部領域(レーザ光内部領域)W
INは、光強度が77%〜100%となるように設定するとともに、当該光強度分布における一定の幅の内部領域の外側である外部領域(レーザ光外部領域)W
OUTは、光強度が61%〜77%となるように設定する。なお、レーザ光外部領域も、レーザ光内部領域の一定の幅とは異なる一定の幅を有する。
【0078】
この場合、CWレーザ光の出力エネルギー密度は、
図5Aに示すように、光強度分布におけるエネルギー密度の最大値が9.6[J/cm
2]である場合、光強度分布における内部領域(レーザ光内部領域)W
INについてはエネルギー密度が7.4[J/cm
2]から9.6m[J/cm
2]の範囲の領域となるように設定すればよく、また、光強度分布における外部領域W
OUTについては、エネルギー密度が5.8[J/cm
2]から7.4m[J/cm
2]の範囲の領域となるように設定すればよい。
【0079】
長軸ガウシアン型CWレーザ光の出力エネルギー密度をこのように設定してアモルファスシリコン膜に対して所定のビームスキャン方向に連続して照射すると、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における一定の幅の内部領域W
INによってレーザ照射された部分は、溶融範囲(1414℃以上)の温度分布を示し、溶融範囲で溶融して冷却されて結晶化した第1結晶性半導体膜を得ることができる。また、これと同時に、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における外部領域W
OUTによってレーザ照射された部分は、Ex範囲(1100℃〜1414℃)の温度分布を示し、Ex範囲で過冷却液体状態を経て結晶化された第2結晶性半導体膜を得ることができる。
【0080】
これにより、共通の非結晶性半導体膜を用いて、溶融範囲で結晶化させた結晶組織の第1結晶性半導体膜とEx範囲で結晶化させた結晶組織の第2結晶性半導体膜とを同時に形成することができる。このとき、溶融範囲で結晶化された領域における結晶性シリコン膜(第1結晶性半導体膜)の結晶粒は、面内均一性を保ちつつ、その平均結晶粒径は、60nm〜1
μmとなる。また、Ex範囲で結晶化された領域における結晶性シリコン膜(第2結晶性半導体膜)の結晶粒は、面内均一性を保ちつつ、その平均結晶粒径は、40nm〜60nmとなる。
【0081】
このように、本実施形態よれば、結晶組織(結晶粒径)の異なる2つの領域を有する結晶性半導体膜を一括形成することができる。なお、
図6に示すビームプロファイルは一例であって、ビームプロファイルを所望に設定することにより、結晶組織の異なる2つの領域を有する所望の半導体膜を得ることができる。
【0082】
また、非結晶性半導体膜に対しては、10〜100マイクロセカンドなどのマイクロセカンドオーダでレーザ照射することが好ましい。具体的には、長軸ガウシアン型CWレーザ光を、10〜100マイクロセカンドなどのマイクロセカンドオーダにてレーザ照射することが好ましい。
【0083】
このように、長軸ガウシアン型CWレーザ光をナノセカンドオーダではなくマイクロセカンドオーダでレーザ照射することにより、長軸ガウシアン型CWレーザ光の照射時間を長くとることができる。これにより、アモルファスシリコン膜における原子の構造がアモルファスの状態から原子が再配列して結晶化するまでの十分な時間を確保することができるので、面内均一性に優れた結晶組織を有する結晶性半導体膜を形成することができる。
【0084】
(薄膜トランジスタアレイ装置の構成)
次に、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置について、図面を参照しながら説明する。
【0085】
図7は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置を備える薄膜トランジスタアレイ基板(TFTアレイ基板)200
を示す図である。また、
図8は、
図7のTFTアレイ基板における画素の構成を示す平面図である。
【0086】
図7に示すように、TFTアレイ基板200は、アクティブマトリクス基板であって、マトリクス状に配置された複数の画素20で構成される表示部220を備える。なお、
図7においては、2つの表示部220が形成されたTFTアレイ基板200を示しており、このTFTアレイ基板200を切断することによって、2つのTFTアレイ基板を得ることができる。また、
図7においては、画素20は表示部220の4隅の一部にしか図示されておらず、実際には、画素20は表示部220内にマトリクス状に配列されている。
【0087】
画素20は、
図8に示すように、ソース配線21、電源配線22及びゲート配線23によって区画されており、1つの画素20(単位画素)には、第1薄膜トランジスタである駆動用TFT10aと、第2薄膜トランジスタであるスイッチ用TFT10bとが形成されている。
【0088】
駆動用TFT(第1薄膜トランジスタ)10aは、有機EL素子(不図示)を駆動するための駆動トランジスタであり、第1ゲート電極3aと、第1ゲート電極3a上に島状に形成された第1チャネル層50aと、第1チャネル層50a上に形成された第1ソース電極8a及び第1ドレイン電極9aとを備える。
【0089】
スイッチ用TFT(第2薄膜トランジスタ)10bは、映像信号を当該画素に供給することを選択するためのスイッチングトランジスタであり、第2ゲート電極3bと、第2ゲート電極3b上に島状に形成された第2チャネル層50bと、第2チャネル層50b上に形成された第2ソース電極8b及び第2ドレイン電極9bとを備える。
【0090】
また、
図8に示すように、駆動用TFT10aにおいて、第1ドレイン電極9aは、コンタクト24を介して電源配線22と電気的に接続されており、第1ゲート電極3aは、コンタクト25を介してスイッチ用TFT10bの第2ドレイン電極9bと電気的に接続されている。なお、図示しないが、駆動用TFT10aの第1ソース電極8aは、有機EL素子の下部電極に電気的に接続される。
【0091】
また、スイッチ用TFT10bにおいて、第2ソース電極8bは、コンタクト26を介してソース配線21と電気的に接続され、第2ゲート電極3bは、コンタクト27を介してゲート配線23と電気的に接続される。スイッチ用TFT10bの第2ドレイン電極9bは、上述のように、駆動用TFT10aの第1ゲート電極3aと電気的に接続される。
【0092】
なお、駆動用TFT10aの第1ゲート電極3aと電源配線22とは、基板垂直方向において絶縁膜を介して重なるように構成されており、コンデンサ29(不図示)を形成している。
【0093】
本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置においては、第2ドレイン電極9bと第1ゲート電極3aとが電気的に接続されている。これにより、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとを最短の配線長さで接続することができる。この結果、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとの間の電気抵抗を最小にすることができる。従って、高速動作ができ、電力損失も小さい、薄膜トランジスタアレイ装置を実現することができる。なお、第2ドレイン電極9bではなく、第2ソース電極8bと第1ゲート電極3aとを電気的に接続するように構成しても構わない。
【0094】
次に、このように構成される画素の等価回路構成について、
図9を用いて説明する。
図9は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の画素の回路構成図である。
【0095】
図9に示すように、画素20は、駆動用TFT10aと、スイッチ用TFT10bと、コンデンサ29と、有機EL素子30とを備える。上述のとおり、駆動用TFT10aの第1ドレイン電極9aは電源配線22に接続され、第1ソース電極8aは有機EL素子30のアノードに接続されている。また、スイッチ用TFT10bの第2ソース電極8bはソース配線21に接続され、第2ゲート電極3bはゲート配線23に接続され、第2ドレイン電極9bはコンデンサ29及び駆動用TFT10aの第1ゲート電極3aに接続されている。
【0096】
この構成において、ゲート配線23にゲート信号が入力され、スイッチ用TFT10bをオン状態にすると、ソース配線21を介して供給された信号電圧がコンデンサ29に書き込まれる。そして、コンデンサ29に書き込まれた保持電圧は、1フレーム期間を通じて保持される。この保持電圧により、駆動用TFT10aのコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した駆動電流が、有機EL素子30のアノードからカソードへと流れる。これにより、有機EL素子30が発光し、画像として表示される。
【0097】
次に、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の構造について、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の構造を示す断面図である。なお、
図10は、
図8のY−Y’線に沿って切断した断面図である。
【0098】
図10に示すように、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100は、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとによって構成される。
【0099】
駆動用TFT10aは、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ装置であって、基板1上に順次形成された、アンダーコート層2、第1ゲート電極3a、ゲート絶縁膜4、第1結晶性半導体膜5a、第1非結晶性半導体膜6a、一対の第1コンタクト層7a、第1ソース電極8a及び第1ドレイン電極9aを備える。なお、駆動用TFT10aの第1チャネル層50aは、第1結晶性半導体膜5aと第1非結晶性半導体膜6aとで構成されている。
【0100】
また、スイッチ用TFT10bは、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ装置であって、基板1上に順次形成された、アンダーコート層2、第2ゲート電極3b、ゲート絶縁膜4、第2結晶性半導体膜5b、第2非結晶性半導体膜6b、一対の第2コンタクト層7b、第2ソース電極8b及び第2ドレイン電極9bを備える。なお、スイッチ用TFTの第2チャネル層50bは、第2結晶性半導体膜5bと第2非結晶性半導体膜6bとで構成されている。
【0101】
以下、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとの各構成について、さらに詳しく説明する。
【0102】
基板1は、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとに共通し、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、高耐熱性ガラス等のガラス材料からなるガラス基板である。
【0103】
アンダーコート層2は、基板1の中に含まれる不純物が上層の半導体膜に侵入することを防止したり、レーザアニールなどの高温熱処理プロセスにおいて基板1への熱の影響を緩和させたりするために、基板1上に形成される。アンダーコート層2としては、例えば、シリコン窒化膜、酸化シリコン又はシリコン酸窒化膜を用いることができる。
【0104】
第1ゲート電極3a及び第2ゲート電極3bは、アンダーコート層2上に所定形状でパターン形成される。第1ゲート電極3a及び第2ゲート電極3bとしては、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びクロム(Cr)の単層構造又は多層構造からなり、例えばモリブデンタングステン(MoW)を用いることができる。
【0105】
ゲート絶縁膜4は、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとに共通する絶縁膜であって、第1ゲート電極3a及び第2ゲート電極3b上に、第1ゲート電極3a及び第2ゲート電極3bを覆うようにして全面に形成される。ゲート絶縁膜4としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム、酸化タンタル又はその積層膜を用いることができる。
【0106】
駆動用TFT10aの第1結晶性半導体膜5aは、ゲート絶縁膜4上に形成されており、CWレーザ光によって非結晶性半導体膜を結晶化することにより形成される。第1結晶性半導体膜5aの平均結晶粒径(第1の平均結晶粒径)は60nm〜1μmである。本実施形態において、第1結晶性半導体膜5aは、非結晶構造のアモルファスシリコンと結晶性シリコンの結晶構造との混晶を含むシリコン薄膜であっても構わない。
【0107】
スイッチ用TFT10bの第2結晶性半導体膜5bもゲート絶縁膜4上に形成されており、CWレーザ光によって非結晶性半導体膜を結晶化することにより形成される。第2結晶性半導体膜5bの平均結晶粒径(第2の平均結晶粒径)は、第1結晶性半導体膜5aの平均結晶粒径よりも小さく、40nm〜60nmである。本実施形態において、第2結晶性半導体膜5bも、非結晶構造のアモルファスシリコンと結晶性シリコンの結晶構造との混晶を含むシリコン薄膜であっても構わない。
【0108】
なお、上記の結晶粒径の異なる第1結晶性半導体膜5aと第2結晶性半導体膜5bとは、後述するように同一製造工程における同一レーザ照射によって同時に形成される。
【0109】
駆動用TFT10aの第1非結晶性半導体膜6aとスイッチ用TFTの第2非結晶性半導体膜6bとは、それぞれ第1結晶性半導体膜5a上と第2結晶性半導体膜5b上とに形成されており、いずれも、例えば、アモルファスシリコン膜(非晶質シリコン膜)等で構成されている。
【0110】
一対の第1コンタクト層7a及び一対の第2コンタクト層7bは、それぞれ第1非結晶性半導体膜6a上及び第2非結晶性半導体膜6b上に形成される。一対の第1コンタクト層7a及び一対の第2コンタクト層7bは、不純物を高濃度に含む非晶質性半導体膜で構成することができ、例えば、アモルファスシリコン膜に不純物としてリン(P)をドーピングしたn型半導体層とすることができる。また、一対の第1コンタクト層7a及び一対の第2コンタクト層7bは、1×10
19(atm/cm
3)以上の高濃度の不純物を含むように構成することが好ましい。
【0111】
駆動用TFT10aにおいて、第1ソース電極8a及び第1ドレイン電極9aは、第1コンタクト層7a上に形成されている。また、スイッチ用TFT10bにおいて、第2ソース電極8b及び第2ドレイン電極9bは、第2コンタクト層7b上に形成されている。第1ソース電極8a、第1ドレイン電極9a、第2ソース電極8b及び第2ドレイン電極9bは、それぞれ導電性材料又はその合金で構成された単層構造又は多層構造であり、例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)及びクロム(Cr)等の材料で構成される。
【0112】
以上、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100によれば、平均結晶粒径が相対的に大きい結晶粒の第1結晶性半導体膜5aをチャネル層とする駆動用TFT10aと、平均結晶粒径が相対的に小さい結晶粒の第2結晶性半導体膜5bをチャネル層とするスイッチ用TFT10bとを形成することができる。
【0113】
これにより、駆動用TFT10aについては、大きい結晶粒の第1結晶性半導体膜5aによってオン電流を増加させることができる。従って、また、スイッチ用TFT10bについては、アモルファス構造の半導体膜をチャネル層とするTFTに比べてオン電流を高くすることができるとともに、結晶粒径が大きい半導体膜をチャネル層とするTFTに比べてオフ電流を抑制することができる。従って、オン特性に優れた駆動用TFT10aと、オフ特性及びオン特性に優れたスイッチ用TFTとを有する薄膜トランジスタアレイ装置を実現することができる。
【0114】
なお、本実施形態において、第1結晶性半導体膜5aと第2結晶性半導体膜5bとは離間されている。これにより、第1結晶性半導体膜5aと第2結晶性半導体膜5bとの間において、電子又はホールのキャリアの流入が生じない。この結果、第1結晶性半導体膜5aをチャネル層とする駆動用TFT10aと、第2結晶性半導体膜5bをチャネル層とするスイッチ用TFT10bとにおいて、相互に影響を受けることなく動作させることができる。
【0115】
(有機EL表示装置の構成)
次に、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置300について、
図11を用いて説明する。
図11は、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置の一画素における断面図である。
【0116】
本発明の実施形態に係る有機EL表示装置300は、上述の駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとからなる薄膜トランジスタアレイ装置100を備えるものであり、上述の
図7に示すTFTアレイ基板200における複数の画素20において、薄膜トランジスタアレイ装置100が画素単位で配置されている。
【0117】
図11に示すように、本実施形態に係る有機EL表示装置300は、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10b(不図示)とが形成されたTFTアレイ基板200上に、第1層間絶縁膜310、第2層間絶縁膜320、第1コンタクト部330、第2コンタクト部340、バンク350、下部電極360、有機EL層370及び上部電極380を備える。なお、
図11においては、駆動用TFT10aが図示されており、スイッチ用TFT10bは図示されていない。
【0118】
図11に示すように、駆動用TFT10a及びスイッチ用TFT10bを覆うようにして、第1層間絶縁膜310が形成されている。第1層間絶縁膜310上にはソース配線21及び電源配線22が形成されており、電源配線22と駆動用TFT10aの第1ドレイン電極9aとは、第1層間絶縁膜310を貫通する第1コンタクト部330を介して電気的に接続されている。また、ソース配線21と電源配線22とを覆うようにして、第2層間絶縁膜320が形成されている。
【0119】
第2層間絶縁膜320上には、隣接する画素との境界部分にバンク350が形成されている。従って、バンク350はTFTアレイ基板200上に複数個形成されており、隣接するバンク350によって開口
部が形成される。バンク350の開口
部には、下部電極360と有機EL層370と上部電極380とで構成される有機EL素子30が形成されている。
【0120】
下部電極360は、画素単位で配置された陽極(アノード)であり、第2層間絶縁膜320上に形成されている。下部電極360と駆動用TFT10aの第1ソース電極8aとは、第1層間絶縁膜310と第2層間絶縁膜320とを貫通する第2コンタクト部340を介して電気的に接続されている。
【0121】
有機EL層(有機発光層)370は、色(サブ画素列)単位又はサブ画素単位で形成されており、所定の有機発光材料で構成されている。
【0122】
上部電極380は、有機EL層370の上方に配置され、複数の画素を跨ぐように形成された陰極(カソード)であり、ITO等の透明電極によって構成される。
【0123】
以上、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置300によれば、駆動用TFT10aにおける第1結晶性半導体膜5aの平均結晶粒径が60nmから1μmであるので、駆動用TFT10aの第1チャネル層50aに流れる電流を大きくすることができる。その結果、画素20の発光電流を大きくすることができるので、有機EL表示装置300の発光輝度を大きくすることができる。
【0124】
また、スイッチ用TFT10bにおける第2結晶性半導体膜5bの平均結晶粒径が40nmから60nmであるので、アモルファス構造の半導体膜をチャネル層とするスイッチ用TFTに比べて高速動作のTFTを構成することができるとともに、結晶粒径が大きい半導体膜をチャネル層とするTFTに比べてオフ電流を抑制することができる。その結果、動画特性に優れた有機EL表示装置を実現することができる。従って、発光輝度が大きく、かつ、高速表示をすることができる有機EL表示装置を実現することができる。
【0125】
(薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0126】
図12Aは、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法のフローチャートである。また、
図12Bは、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法における結晶性半導体膜形成工程のフローチャートである。
【0127】
図12Aに示すように、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100の製造方法は、第1工程である基材準備工程(S10)と、第2工程である第1ゲート電極形成工程(S20)と、第3工程である第2ゲート電極形成工程(S30)と、第4工程であるゲート絶縁膜形成工程(S40)と、第5工程である結晶性半導体膜形成工程(S50)と、第6工程であるソースドレイン電極形成工程(S60)とを、この順に含む。さらに、
図12Bに示すように、第5工程である結晶性半導体膜形成工程(S50)は、第5−1工程である非結晶性半導体膜へのレーザ照射工程(S51)と、第5−2工程である非結晶性半導体膜の結晶化工程(S52)とを含む。
【0128】
次に、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100の具体的な製造方法について、
図13A〜
図13Mを用いて説明する。
図13A〜
図13Mは、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法における各工程を模式的に示した平面図及び断面図である。なお、各図において左側の図が平面図を表し、右側の図は当該平面図におけるY−Y’線に沿って切断した断面図を表している。
【0129】
まず、
図13Aに示すように、基材として、ガラス基板からなる基板1を準備する(S10)。その後、基板1上に、シリコン窒化膜等の絶縁膜からなるアンダーコート層2をプラズマCVD等によって形成する。
【0130】
次に、純水等で洗浄した後に、
図13Bに示すように、アンダーコート層2上にゲート金属膜3Mを例えば50nm程度の膜厚で成膜する。本実施形態では、モリブデンタングステン(MoW)からなるゲート金属膜3Mをスパッタによって成膜した。
【0131】
次に、ゲート金属膜3Mに対してフォトリソグラフィ及びウェットエッチングを施すことにより、ゲート金属膜3Mをパターニングして、
図13Cに示すように、所定形状の第1ゲート電極3aと第2ゲート電極3bとを形成する(S20、S30)。
【0132】
次に、
図13Dに示すように、第1ゲート電極3a及び第2ゲート電極3bを覆うようにして、第1ゲート電極3aと第2ゲート電極3bの上に、二酸化シリコンからなるゲート絶縁膜4を例えば100nm程度の膜厚で成膜する(S40)。なお、ゲート絶縁膜4は、プラズマCVD等によって成膜することができる。
【0133】
次に、
図13Eに示すように、ゲート絶縁膜4上に、非結晶性半導体膜5αとしてアモルファスシリコン膜を例えば50nm程度の膜厚で成膜する。なお、非結晶性半導体膜5αも、プラズマCVD等によって成膜することができる。
【0134】
その後、非結晶性半導体膜5αに長軸ガウシアン型CWレーザ光を照射する前準備として、脱水素処理を行う。具体的には、例えば400℃〜500℃で30分間のアニールを行う。これは、アモルファスシリコン膜からなる非結晶性半導体膜5αには、通常、5%〜15%の水素がSiHとして含有されており、水素を含有したままの非結晶性半導体膜5αを結晶化すると、水素がシリコンの手を塞いでしまい結晶化を阻害してしまうだけでなく、突沸のような現象が起こりやすくなるからである。
【0135】
次に、
図13Fに示すように、
図1に示したCWレーザ光結晶化装置を用いて、
図2Aに示す形状の光強度分布を有する長軸ガウシアン型CWレーザ光を非結晶性半導体膜5αに照射して、非結晶性半導体膜5αを結晶化する(S50)。
【0136】
具体的には、
図6に示すようなビームプロファイルに設定された長軸ガウシアン型のCWレーザ光を非結晶性半導体膜5αに照射する(S51)。なお、長軸ガウシアン型のCWレーザ光は、マイクロセカンドオーダにて照射する。
【0137】
このとき、本実施形態では、第1ゲート電極3aの上方に位置する非結晶性半導体膜5αに対しては、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における一定の幅の内部領域W
INによって照射されるようにレーザ照射を行う。また、第2ゲート電極3bの上方に位置する非結晶性半導体膜5αに対しては、当該長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における外部領域W
OUTによって照射されるようにレーザ照射を行う。
【0138】
これにより、
図13Gに示すように、上記内部領域W
INによって照射された非結晶性半導体膜5αの領域は、1414℃以上の温度範囲(溶融範囲)で加熱されて溶融する。その後、溶融させた非結晶性半導体膜5αを冷却することによって結晶化させて、溶融範囲で結晶化した結晶構造の結晶性半導体膜5Meを形成することができる(S52)。
【0139】
また、同図に示すように、上記外部領域W
OUTによって照射された非結晶性半導体膜5αの領域は、1100℃〜1414℃の温度範囲(Ex範囲)で結晶化した結晶構造の結晶性半導体膜
5Exとなる。
【0140】
その後、水素プラズマを用いた水素プラズマ処理を行う。水素プラズマ処理を行うことにより、レーザ未照射の非結晶性半導体膜5αを含めて、レーザ光が照射された非結晶性半導体膜5α(結晶性半導体膜5Me及び結晶性半導体膜5Ex)の水素終端化処理を行う。水素プラズマ処理は、例えばH
2、H
2/アルゴン(Ar)等の水素ガスを含むガスを原料として高周波電力により水素プラズマを発生させることにより行われる。
【0141】
次に、
図13Hに示すように、非結晶性半導体膜6αを例えば100nm程度の膜厚で成膜する。具体的には、プラズマCVD法により、レーザ未照射の非結晶性半導体膜5αを含めて、結晶性半導体膜5Me(第1結晶性半導体膜5a)及び結晶性半導体膜5Ex(第2結晶性半導体膜5b)の上に、アモルファスシリコン膜からなる非結晶性半導体膜6αを成膜する。
【0142】
次に、
図13Iに示すように、フォトリソグラフィ及びウェットエッチングを施すことにより、積層された結晶性半導体膜5Me及び非結晶性半導体膜6αを選択的にパターニングすることにより、第1結晶性半導体膜5a及び第1非結晶性半導体膜6aを島状に形成する。また、これと同時に、積層された結晶性半導体膜5Exと非結晶性半導体膜6αも選択的にパターニングして、第2結晶性半導体膜5b及び第2非結晶性半導体膜6bについても島状に形成する。
【0143】
このように、第1結晶性半導体膜5a(第1非結晶性半導体膜6a)と第2結晶性半導体膜5b(第2非結晶性半導体膜6b)との境界領域をパターニング除去することによって、第1結晶性半導体膜5a(第1非結晶性半導体膜6a)と第2結晶性半導体膜5b(第2非結晶性半導体膜6b)とを離間させて分離形成することができる。
【0144】
これにより、第1結晶性半導体膜5aと第1非結晶性半導体膜6aとが積層された第1チャネル層50aと、第2結晶性半導体膜5bと第2非結晶性半導体膜6bとが積層された第2チャネル層50bとを形成することができる。
【0145】
次に、
図13Jに示すように、プラズマCVD等によってアモルファスシリコン膜からなる非晶質性半導体膜を成膜し、当該非晶質性半導体膜に不純物をドーピングして、第1コンタクト層7a及び第2コンタクト層7bとなる不純物ドープの非晶質性半導体膜7αDを形成する。不純物としては、例えば、リン等の5価元素を用いることができる。また、不純物濃度が高濃度となるようにドーピングする。
【0146】
次に、
図13Kに示すように、不純物ドープの非晶質性半導体膜7αD上に、ソースドレイン金属膜8Mを成膜する。ソースドレイン金属膜8Mの材料は、第1ソース電極8a、第1ドレイン電極9a、第2ソース電極8b及び第2ドレイン電極9bを構成する材料である。本実施形態では、MoW/Al/MoWの三層構造のソースドレイン金属膜8Mをスパッタ法によって成膜した。
【0147】
次に、
図13Lに示すように、フォトリソグラフィ及びウェットエッチングを施すことにより、ソースドレイン金属膜8Mと不純物ドープの非晶質性半導体膜7αDとをパターニングする。これにより、第1ソース電極8a及び第1ドレイン電極9aと、第2ソース電極8b及び第2ドレイン電極9bとを形成する(S60)。
【0148】
その後、ソースドレイン金属膜8Mをパターニングするときのレジスト(
不図示)を残したまま、ドライエッチングを施すことにより、
図13Mに示すように、第1非結晶性半導体膜6a及び第2非結晶性半導体膜6bの上層一部をエッチングする。これにより、不純物ドープの非晶質性半導体膜7αDを分離して、n
+層である一対の第1コンタクト層7a及び一対の第2コンタクト層7bを形成することができる。また、非晶質性半導体膜7αDの上層をエッチングすることにより、所望の膜厚の第1チャネル層50a及び第2チャネル層50bを形成することができる。
【0149】
これにより、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100を製造することができる。
【0150】
なお、製造方法は図示しないが、その後、
図11に示すように、第1層間絶縁膜310、第2層間絶縁膜320、第1コンタクト部330、第2コンタクト部340、バンク350、下部電極360、有機EL層370及び上部電極380、並びに、ソース配線21、電源配線22及びゲート配線23を形成することにより、有機EL表示装置を製造することができる。
【0151】
また、以上の説明では一つの画素について説明したが、他の画素の薄膜トランジスタアレイ装置についても同様に形成することができる。以下、複数の画素を含む表示部全体におけるCWレーザのビームスキャン方法について、
図14を用いて説明する。
図14は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法に関し、表示部全体をビームスキャンする様子を模式的に示す図である。
【0152】
図14に示すように、上述した本実施形態における長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームスキャン方法は、複数行及び複数列のマトリクス状に配置された複数の画素20に対して、一行(1ライン)単位でレーザ照射を行うものである。このとき、
図13Gで説明したように、駆動用TFT10aの第1結晶性半導体膜5aとなる部分における非結晶性半導体膜5αについては、CWレーザ光の光強度分布における内部領域W
INによって照射されるように、また、スイッチ用TFT10bの第2結晶性半導体膜5bとなる部分における非結晶性半導体膜5αについては、CWレーザ光の光強度分布のうちレーザ光外部領域W
OUTによってレーザ照射されるようにしてビームスキャンを行う。
【0153】
図15は、このときのレーザ照射の様子を拡大して示した図である。
図15に示すように、本実施形態において、レーザ照射は、行方向に配列された複数の画素20に対して連続してスキャンすることにより行単位で行う。なお、
図15では、レーザ光の光強度分布に対する駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとの位置関係が分かるように、レーザ照射時には存在しないトランジスタの電極等の構成要素も図示している。
【0154】
また、本実施形態では、左側から右側に向かう一方向で順次ビームスキャンしたが、1ライン目は左側から右側に向かう方向に、次の2ライン目は、右側から左側に向かう方向に、1ラインごとに交互に折り返すようにしてビームスキャンしても構わない。
【0155】
次に、本実施形態に製造方法によって製造した薄膜トランジスタアレイ装置100の電流特性について
図16を用いて説明する。
図16は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置における結晶粒径に対する電流特性を示す図である。
【0156】
図16に示すように、本実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100において、駆動用TFT10aの第1チャネル層50aにおける第1結晶性半導体膜5aの平均結晶粒径が60nm〜1μmと比較的に大きくすることができるので、駆動用TFT10aのオン電流を大きくすることができる。また、スイッチ用TFT10bの第2チャネル層50bにおける第2結晶性半導体膜5bの平均結晶粒径が40nm〜60nmと比較的に小さくすることができるので、スイッチ用TFT10bのオフ電流を小さくすることができる。
【0157】
以上、本実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100の製造方法によれば、オン電流が高くオン特性に優れた駆動用TFT10aと、オフ電流が低くオフ特性に優れたスイッチ用TFT10bとを同時に形成することができる。
【0158】
次に、駆動用TFT10aのオン電流とスイッチ用TFT10bのオフ電流に対する有機EL表示装置の表示性能の関係について、
図17A及び
図17Bを用いて説明する。
図17Aは、駆動用TFTのオン電流と有機EL表示装置の発光輝度との関係を示す図である。また、
図17Bは、スイッチ用TFTのオフ電流と有機EL表示装置の階調変動との関係を示す図である。
【0159】
図17Aに示すように、駆動用TFT10aのオン電流が増加するに従って、有機EL表示装置の発光輝度は増加する。また、
図17Bに示すように、スイッチ用TFT10bのオフ電流が低減するに従って、有機EL表示装置における階調変動が減少する。階調変動が減少するのは、スイッチ用TFT10bのオフ電流が小さくなることにより、駆動用TFT10aのゲート電圧の変動が小さくなるからである。
【0160】
従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタアレイ装置100を備える有機EL表示装置300によれば、上述のとおり、駆動用TFT10aのオン電流を大きくすることができるので、有機EL表示装置300の発光輝度を増加させることができる。また、スイッチ用TFT10bのオフ電流を小さくすることができるので、有機EL表示装置300における階調変動を小さくすることができる。これにより、高画質の画像を表示することのできる有機EL表示装置300を得ることができる。
【0161】
(変形例)
上記の実施形態では、
図6に示すようなビームプロファイルの長軸ガウシアン型CWレーザ光によってレーザ照射したが、これに限らない。長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイルパターンについては、形成すべき結晶組織に応じて、
図5A及び
図5Bを用いて所望に設定することができる。以下、長軸ガウシアン型CWレーザ光の他のビームプロファイルパターンについて、
図18〜
図21を用いて説明する。
【0162】
なお、以下の変形例において、CWレーザ光結晶化装置としては上記の実施形態と同じものを用いることができる。すなわち、各ビームプロファイルは、
図1に示されるCWレーザ光結晶化装置を用いて変更することができる。また、以下の変形例は、第1結晶性半導体膜5a及び第2結晶性半導体膜5bの結晶組織以外の構成については、上記の実施形態と同様である。さらに、レーザのビームスキャン方法も上記の実施形態と同様の方法によって行うことができる。
【0163】
(変形例1)
図18は、本発明の変形例1に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法おけるビームプロファイル及びレーザ照射位置を示す図である。
【0164】
図18に示すように、本変形例では、駆動用TFT10aのチャネル層としては、非結晶性半導体膜が溶融範囲で結晶化した第1結晶性半導体膜5aとなるように、かつ、スイッチ用TFT10bのチャネル層としては、非結晶性半導体膜がSPC範囲で結晶化した第2結晶性半導体膜5bとなるように、長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイルが設定されている。
【0165】
本変形例は、溶融範囲で結晶化させた結晶組織とSPC範囲で結晶化させた結晶組織とを同時に形成する場合であって、
図18に示すように、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における最大光強度を100%としたときに、当該光強度分布における一定の幅の内部領域W
INについては、光強度が77%〜100%となるように設定するとともに、当該光強度分布における外部領域W
OUTについては、光強度が44%〜61%となるように設定する。
【0166】
この場合、CWレーザ光の出力エネルギー密度は、
図5Aに示すように、光強度分布におけるエネルギー密度の最大値が9.6[J/cm
2]である場合、光強度分布における内部領域(レーザ光内部領域)W
INについては、エネルギー密度が7.4[J/cm
2]から9.6m[J/cm
2]の範囲の領域となるように設定すればよく、また、光強度分布における外部領域W
OUTについては、エネルギー密度が4.3[J/cm
2]から5.8m[J/cm
2]の範囲の領域となるように設定すればよい。
【0167】
なお、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーに換算すると、
図5Bに示すように、光強度分布における単位体積あたりの吸収エネルギーの最大値が5.3×10
5[J/cm
3]である場合、光強度分布における内部領域W
INについては、単位体積あたりの吸収エネルギーが4.1×10
5[J/cm
3]から5.3×10
5[J/cm
3]の範囲の領域となるように設定すればよく、また、光強度分布における外部領域W
INについては、単位あたりの吸収エネルギーが2.4×10
5[J/cm
3]から3.2×10
5[J/cm
3]の範囲の領域となるように設定すればよい。
【0168】
長軸ガウシアン型CWレーザ光の出力エネルギー密度をこのように設定してアモルファスシリコン膜に対して所定のビームスキャン方向に連続して照射すると、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における一定の幅の内部領域W
INによってレーザ照射された部分は、溶融範囲(1414℃以上)で加熱溶融し、その後、冷却されることによって結晶化されて第1結晶性半導体膜となる。また、これと同時に、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における外部領域W
OUTによってレーザ照射された部分は、SPC範囲(600℃〜1100℃)でアモルファスシリコン膜内に結晶を固相成長させることによって結晶化されて第2結晶性半導体膜となる。
【0169】
これにより、共通の非結晶性半導体膜を用いて、溶融範囲で結晶化させた結晶組織の第1結晶性半導体膜とSPC範囲で結晶化させた結晶組織の第2結晶性半導体膜とを同時に形成することができる。このとき、溶融範囲で結晶化された領域における結晶性シリコン膜(第1結晶性半導体膜)の結晶粒は、面内均一性を保ちつつ、その平均結晶粒径は、60nm〜1
μmとなる。また、SPC範囲で結晶化された領域における結晶性シリコン膜(第2結晶性半導体膜)の結晶粒は、面内均一性を保ちつつ、その平均結晶粒径は、25nm〜35nmとなる。
【0170】
(変形例2)
図19は、本発明の変形例2に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法おけるビームプロファイル及びレーザ照射位置を示す図である。
【0171】
図19に示すように、本変形例では、駆動用TFT10aのチャネル層としては、非結晶性半導体膜が溶融範囲で結晶化した第1結晶性半導体膜5aとなるように、かつ、スイッチ用TFT10bのチャネル層としては、非結晶性半導体膜が当該非結晶性半導体膜の結晶成長温度以下の温度範囲でレーザ照射されたとなるように、長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイルが設定されている。すなわち、本変形例では、スイッチ用TFT10bのチャネル層が、上記の実施形態のような結晶性半導体膜(第2結晶性半導体膜5b)ではなく、非結晶性半導体膜のままの状態である。
【0172】
本変形例は、溶融範囲で結晶化させた結晶組織と非結晶性の結晶組織とを同時に形成する場合であって、
図19に示すように、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における最大光強度を100%としたときに、当該光強度分布における一定の幅の内部領域W
INについては、光強度が77%〜100%となるように設定するとともに、当該光強度分布における外部領域W
OUTについては、光強度が44%以下となるように設定する。
【0173】
この場合、CWレーザ光の出力エネルギー密度は、
図5Aに示すように、光強度分布におけるエネルギー密度の最大値が9.6[J/cm
2]である場合、光強度分布における内部領域(レーザ光内部領域)W
INについては、エネルギー密度が7.4[J/cm
2]から9.6m[J/cm
2]の範囲の領域となるように設定すればよく、また、光強度分布における外部領域W
OUTについては、エネルギー密度が4.3[J/cm
2]以下の範囲の領域となるように設定すればよい。
【0174】
なお、シリコン単位体積あたりの吸収エネルギーに換算すると、
図5Bに示すように、光強度分布における単位体積あたりの吸収エネルギーの最大値が5.3×10
5[J/cm
3]である場合、光強度分布における内部領域W
INについては、単位体積あたりの吸収エネルギーが4.1×10
5[J/cm
3]から5.3×10
5[J/cm
3]の範囲の領域となるように設定すればよく、また、光強度分布における外部領域W
INについては、単位あたりの吸収エネルギーが2.4×10
5[J/cm
3]以下の範囲の領域となるように設定すればよい。
【0175】
長軸ガウシアン型CWレーザ光の出力エネルギー密度をこのように設定してアモルファスシリコン膜に対して所定のビームスキャン方向に連続して照射すると、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における一定の幅の内部領域W
INによってレーザ照射された部分は、溶融範囲(1414℃以上)で加熱溶融し、その後、冷却されることによって結晶化されて結晶性半導体膜となる。また、これと同時に、長軸ガウシアン型CWレーザ光の光強度分布における外部領域W
OUTによってレーザ照射された部分は、非結晶性半導体膜の結晶成長温度以下の温度範囲となりアモルファス状態のままとなる。
【0176】
これにより、共通の非結晶性半導体膜を用いて、溶融範囲で結晶化させた結晶組織の結晶性半導体膜とアモルファス状態の非結晶性半導体膜とを同時に形成することができる。このとき、溶融範囲で結晶化された領域における結晶性シリコン膜(第1結晶性半導体膜)の結晶粒は、面内均一性を保ちつつ、その平均結晶粒径は、60nm〜1
μmとなる。また、非結晶性半導体膜の結晶成長温度以下の温度範囲でレーザ照射され、アモルファス状態のままの非結晶性半導体膜の結晶粒は、面内均一性を保ちつつ、その平均結晶粒径は、25nm以下となる。
【0177】
(変形例3)
図20は、本発明の変形例3に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法おけるビームプロファイル及びレーザ照射位置を示す図である。
【0178】
図20に示すように、本変形例では、駆動用TFT10aのチャネル層としては、非結晶性半導体膜がSPC範囲で結晶化した第2結晶性半導体膜5bとなるように、かつ、スイッチ用TFT10bのチャネル層としては、非結晶性半導体膜が溶融範囲で結晶化した第1結晶性半導体膜5aとなるように、長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイルが設定されている。
【0179】
本変形例は、駆動用TFT10aとスイッチ用TFT10bとにおけるチャネル層の結晶性半導体膜が変形例1と入れ替わった構成となっている。従って、本変形例と変形例1とは、長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイルは同じであるが、CWレーザ光のビームスキャン位置が異なっている。
【0180】
すなわち、
図20に示すように、CWレーザ光に光強度分布における一定の幅の内部領域W
INは、スイッチ用TFT10bの第2結晶性半導体膜5bを形成するために用いられ、当該光強度分布における外部領域W
OUTは、駆動用TFT10aの第1結晶性半導体膜5aを形成するために用いられる。
【0181】
(変形例4)
図21は、本発明の変形例3に係る薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法おけるビームプロファイル及びレーザ照射位置を示す図である。
【0182】
図21に示すように、本変形例では、駆動用TFT10aのチャネル層としては、非結晶性半導体膜がSPC範囲で結晶化した第2結晶性半導体膜5bとなるように、かつ、スイッチ用TFT10bのチャネル層としては、非結晶性半導体膜が溶融範囲で結晶化した第1結晶性半導体膜5aとなるように、長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイルが設定されている。
【0183】
本変形例は、TFTのレイアウトが変形例1と異なり、長軸ガウシアン型CWレーザ光のビームプロファイル及びビームスキャン位置は変形例1と同様である。
【0184】
すなわち、
図21に示すように、CWレーザ光に光強度分布における一定の幅の内部領域W
INは、スイッチ用TFT10bの第2結晶性半導体膜5bを形成するために用いられ、当該光強度分布における外部領域W
OUTは、駆動用TFT10aの第1結晶性半導体膜5aを形成するために用いられる。
【0185】
以上、本発明の変形例について説明したが、これらの変形例に係る薄膜トランジスタアレイ装置は、上述の有機EL表示装置300に適用することができる。
【0186】
また、本発明の実施形態及び変形例に係る有機EL表示装置300は、フラットパネルディスプレイ等として利用することができる。例えば、
図22に示すようなテレビジョンセット400、又は、携帯電話機やパーソナルコンピュータなどのあらゆる表示装置に適用することができる。
【0187】
以上、本発明に係る薄膜トランジスタアレイ装置、有機EL表示装置及び薄膜トランジスタアレイ装置の製造方法について、実施形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。
【0188】
例えば、上記の実施形態では、駆動用TFT10aの第1チャネル層50a及びスイッチ用TFT10bの第2チャネル層50bは、いずれも結晶性半導体膜と非結晶性半導体膜との2層構造としたが、これに限らない。例えば、第1チャネル層50a及び第2チャネル層50bとしては、所定の結晶組織を有する半導体膜の単層構造としても構わない。
【0189】
その他、各実施形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。