(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1に示した実施形態1に係る不動態化処理では鋼材からなる配管1bの内面に対してオゾンガスと共にオゾン分解因子として不飽和炭化水素ガスを供して当該内面を不動態化する。本実施形態では不動態化済みの既存の配管1aに新たな配管1bが接続される毎にこの配管1bの内面が不動態化処理される。
【0016】
既存の配管1aの一端側には配管1a,1b内にてガス流を生じさせるための真空ポンプ2が予め気密に接続される。オゾンガスはオゾン発生装置3から供給されるようになっている。オゾン発生装置3は周知のオゾン発生装置(例えば特許文献3に開示のオゾン発生装置)を適用すればよい。特許文献3のオゾン発生装置はオゾン濃度100vol%のオゾンガスを供給できるが、オゾン濃度10vol%以上好ましくは20vol%以上のオゾンガスを供給できるオゾンガス発生装置であれば特に限定しない。不飽和炭化水素ガスは当該ガスを充填したボンベ4から供給される。不飽和炭化水素ガスとしてはエチレンガスが例示される。
【0017】
オゾン発生装置3には伸縮自在のガス供給管5が接続されている。ガス供給管5としてはオゾン耐性の材料(石英、不動態化処理されたステンレス等)から成る伸縮配管構造のものやフレキシブル配管構造のものが挙げられる。伸縮配管構造のものは二重配管の外側の配管部が駆動装置によって動作可能なものが挙げられる。
【0018】
ガス供給管5は配管1bよりも小径であり且つ先端部が密閉されている。また、ガス供給管5の先端付近の外周面にはオゾンガスを散気するための散気孔51が複数形成されている。ガス供給管5は配管1bの不動態化処理時に配管1b内に挿通され、配管1bの軸方向に伸縮動作可能となるようにマニホールド継ぎ手6にて支持される。ガス供給管5を気密に動作できるようにガス供給管5とマニホールド継ぎ手6との間に気密部材としてOリング61を介在させている。マニホールド継ぎ手6は配管1bの施工時すなわち配管1bを配管1aに接続する際に配管1aと対向しない配管1bの端部に装着される。また、マニホールド継ぎ手6にはボンベ4から不飽和炭化水素ガスが供されるガス供給管7が接続される。
【0019】
図1を参照しながら本実施形態の不動態化処理について説明する。
【0020】
不動態化済みの配管1aの一端側に配管1aと同径の新たな配管1bが溶接固定される。配管1aのもう一端側には真空ポンプ2が気密に接続される。次いで、ガス供給管5,7を備えたマニホールド継ぎ手6が配管1bの一端側に装着される。ガス供給管5は配管1b内に導入された先端部が配管1aと配管1bとの接続部分と略同位置となるように設定される。
【0021】
次いで、室温のもとで真空ポンプ2によって配管1a,1b内を負圧状態(数百Pa以下例えば200Pa)にした状態で配管1bとガス供給管5との間隙にガス供給管7から不飽和炭化水素ガスを供給する。一方、ガス供給管5の散気孔51からはオゾンガスを供給して配管1a,1b内にてオゾンと不飽和炭化水素とを反応させる。この反応により生じた原子状酸素やOHラジカル等の酸化性化学種(非特許文献2)によって配管1bの内面が酸化されクロム酸化物(Cr
2O
3)から成る不動態膜が形成される。その後、一定時間毎(例えば10分間毎)に散気孔51の位置がオゾンガスのガス流の上流方向に移行するようにガス供給管5を縮小させる。ガス供給管5の先端部がマニホールド継ぎ手6側の配管1bの一端に達した時点で配管1bの内面の不動態化が完了する。
【0022】
また、この不動態化処理した配管1bの内面に対してオゾンガスのみを供すると、当該表面に残留した不飽和炭化水素の構成成分が分解される。これにより、不飽和炭化水素由来の不純物を除去できる。この過程は炭素成分の混入を避けなければならないプロセス・用途で使用される配管の不動態化に好適である。
【0023】
配管1bの不動態化が完了すると、ガス供給管5,7と共にマニホールド継ぎ手6が配管1bから外される。そして、この配管1bの一端に新たな配管が溶接されると、上述と同じ方法で当該配管の内面が不動態化処理される。新たに配管が増設される毎にこの不動態化処理が実行される。
【0024】
ステンレス製(SUS304)の配管の内面を処理温度50℃、圧力200Pa、オゾンガス(オゾン濃度100vol%):不飽和炭化水素(エチレン)=2:1の雰囲気のもとで本実施形態の処理方法により10分間処理した後のXPS測定結果を
図6に示した。配管の内面にてCr
2O
3の形成が確認された。従来ではステンレス製の鋼材の不動態化処理に数時間以上要していたのに対して本実施例によれば60分未満の短時間で鋼材表面を不動態化できることが示された。
【0025】
[実施形態2]
図2に示された実施形態2の不動態化処理はガス供給管5から不飽和炭化水素ガスを供給する一方でガス供給管5と配管1a,1bとの間隙にオゾンガスを供給すること以外は実施形態1と同じ処理態様を成している。すなわち、ガス供給管5には不飽和炭化水素ガスを供給するボンベ4が接続される一方でガス供給管7にはオゾン発生装置3が接続されている。
【0026】
図2を参照しながら本実施形態の不動態化処理について説明する。
【0027】
配管1aの一端側に配管1aと同径の新たな配管1bが溶接固定される。配管1aのもう一端側には真空ポンプ2が気密に接続される。次いで、ガス供給管5,7を備えたマニホールド継ぎ手6が配管1bの一端側に装着される。ガス供給管5は配管1b内に導入された先端部が配管1aと配管1bとの接続部分と略同位置となるように設定される。
【0028】
次いで、室温のもとで真空ポンプ2によって配管1a,1b内を負圧状態(数百Pa以下例えば200Pa)にした状態で配管1bとガス供給管5との間隙にガス供給管7からオゾンガスを供給する。一方、ガス供給管5の散気孔51からは不飽和炭化水素ガスを供給して配管1a,1b内にてオゾンと不飽和炭化水素とを反応させる。この反応により生じた原子状酸素やOHラジカル等の酸化性化学種によって配管1bの内面が酸化されクロム酸化物(Cr
2O
3)から成る不動態膜が形成される。
【0029】
その後、一定時間毎(例えば10分間毎)に散気孔51の位置がオゾンガスのガス流の上流方向に移行するようにガス供給管5を縮小させる。ガス供給管5の先端部がマニホールド継ぎ手6側の配管1bの一端に達した時点で配管1bの内面の不動態化が完了する。また、この不動態化処理した配管1bの内面に対してオゾンガスのみが供されることで、当該表面に残留した不飽和炭化水素の構成成分が分解除去される。
【0030】
配管1bの不動態化が完了すると、ガス供給管5,7と共にマニホールド継ぎ手6が配管1bから外される。そして、この配管1bの一端に新たな配管が溶接されると、上述と同じ方法で当該配管の内面が不動態化処理される。新たに配管が増設される毎にこの不動態化処理が実行される。
【0031】
[実施形態3]
図3に示された実施形態3の不動態化処理はオゾンガスを供給するガス供給管8と不飽和炭化水素ガスを供給するガス供給管9とを配管1b内に同軸挿通しこのガス供給管8,9を配管1bの軸方向に移動させることにより配管1bの内面を不動態化処理する。実施形態1,2と同様に既存の配管1aの一端側には配管1a,1b内にてガス流を生じさせるための真空ポンプ2が予め気密に接続される。
【0032】
ガス供給管8はガス供給管9よりも小径に形成されていると共に先端部が密閉されている一方で先端付近の外周面にはオゾンガスを散気するための散気孔81が複数形成されている。ガス供給管8は散気孔81が形成された外周面がガス供給管9から露出した状態でガス供給管9と同軸にガス供給管9内に具備される。ガス供給管8はオゾン発生装置3に接続されている。
【0033】
ガス供給管9は配管1bの軸方向に動作可能となるように配管1bの一端にて継ぎ手10によって気密に支持される。ガス供給管9と継ぎ手10との間には気密部材としてOリング101を介在させることでガス供給管9を気密に動作できるようになっている。継ぎ手10は配管1bの施工時すなわち配管1bを配管1aに接続する際に配管1aと対向しない配管1bの端部に装着される。ガス供給管9は不飽和炭化水素ガスが充填されたボンベ4に接続されている。
【0034】
また、実施形態2と同様にガス供給管8から不飽和炭化水素ガスを供給する一方でガス供給管9からオゾンガスを供給するようにしてもよい。
【0035】
図3を参照しながら本実施形態の不動態化処理について説明する。
【0036】
配管1aの一端側に配管1aと同径の新たな配管1bが溶接固定される。配管1aのもう一端側には真空ポンプ2が気密に接続される。次いで、ガス供給管9を備えた継ぎ手10が配管1bの一端側に装着される。ガス供給管8は配管1b内に導入された先端部が配管1aと配管1bとの接続部分と略同位置となるように設定される。
【0037】
次いで、室温のもとで真空ポンプ2によって配管1a,1b内を負圧状態(数百Pa以下例えば200Pa)にした状態でボンベ4から不飽和炭化水素ガスをガス供給管9内に供給する。一方、オゾン発生装置3で生成されたオゾンガスをガス供給管8の散気孔81から供給して配管1a,1b内にてオゾンと不飽和炭化水素とを反応させる。この反応により生じた原子状酸素やOHラジカル等の酸化性化学種によって配管1bの内面が酸化されクロム酸化物(Cr
2O
3)から成る不動態膜が形成される。
【0038】
その後、一定時間毎(例えば10分間毎)に散気孔81の位置がオゾンガスのガス流の上流方向に移行するようにガス供給管8,9を配管1bの軸方向に移動させる。ガス供給管8の先端部が継ぎ手10側の配管1bの一端に達した時点で配管1bの内面の不動態化が完了する。また、この不動態化処理した配管1bの内面に対してオゾンガスのみが供されることで、当該表面に残留した不飽和炭化水素の構成成分が分解除去される。
【0039】
配管1bの不動態化が完了すると、ガス供給管9と共に継ぎ手10が配管1bから外される。そして、この配管1bの一端に新たな配管が溶接されると、上述と同じ方法で当該配管の内面が不動態化処理される。新たに配管が増設される毎にこの不動態化処理が実行される。
【0040】
[実施形態4]
図4に示された実施形態4の処理態様は配管1b内にオゾンガスと不飽和炭化水素ガスとの混合ガスを供給するガス供給管11を配管1bと同軸に挿通させている。そして、ガス供給管11の先端付近の外周面から前記オゾンガスと前記不飽和炭化水素ガスとの混合ガスを供給しながらガス供給管11を配管1bの軸方向に動作させることにより配管1bの内面を不動態化する。
【0041】
ガス供給管11はその一端がオゾン発生装置3に接続されている。配管1b内に導入される先端部は密閉されている一方で先端付近の外周面にはオゾンガスを散気するための散気孔111が複数形成されている。
【0042】
ガス供給管11の内部には不飽和炭化水素ガスを供給するためのガス供給管12がガス供給管11と同軸に具備されている。ガス供給管12もガス供給管11と同様に先端部が密閉されている一方で先端付近の外周面には不飽和炭化水素ガスを散気するための散気孔121が複数形成されている。
【0043】
ガス供給管11,12は実施形態1に係るガス供給管5と同様にオゾン耐性の材料(石英、不動態化処理されたステンレス等)から構成される。尚、実施形態2と同様にガス供給管11から不飽和炭化水素ガスを供給する一方でガス供給管12からオゾンガスを供給するようにしてもよい。
【0044】
図4を参照しながら本実施形態の不動態化処理について説明する。
【0045】
配管1aの一端側に配管1aと同径の新たな配管1bが溶接固定される。配管1aのもう一端側には真空ポンプ2が気密に接続される。次いで、ガス供給管11を備えた継ぎ手10が配管1bの一端側に装着される。ガス供給管11は配管1b内に導入された先端部が配管1aと配管1bとの接続部分と略同位置となるように設定される。
【0046】
次いで、室温のもとで真空ポンプ2によって配管1a,1b内を負圧状態(数百Pa以下例えば200Pa)にした状態でボンベ4から供給された不飽和炭化水素ガスがガス供給管12の散気孔121からガス供給管11内に供される。また、オゾン発生装置3からはオゾンガスがガス供給管11内に供される。そして、ガス供給管11の散気孔111からは前記オゾンガスと前記不飽和炭化水素の混合ガスが配管1bの内面に供される。前記混合ガスはオゾンガスと不飽和炭化水素ガスとの反応により生じた酸化性化学種(原子状酸素やOHラジカル)等)を含んでいる。配管1bの内面は前記酸化性化学種によって酸化されてクロム酸化物(Cr
2O
3)から成る不動態膜が形成される。
【0047】
その後、一定時間毎(例えば10分間毎)に散気孔111の位置がオゾンガスのガス流の上流方向に移行するようにガス供給管11を配管1bの軸方向に移動させる。ガス供給管11の先端部が継ぎ手10側の配管1bの一端に達した時点で配管1bの内面の不動態化が完了する。また、この不動態化処理した管1bの内面に対してオゾンガスのみが供されることで、当該表面に残留した不飽和炭化水素の構成成分が分解除去される。
【0048】
配管1bの不動態化が完了すると、ガス供給管11と共に継ぎ手10が配管1bから外される。そして、この配管1bの一端に新たな配管が溶接されると、上述と同じ方法で当該配管の内面が不動態化処理される。新たに配管が増設される毎にこの不動態化処理が実行される。
【0049】
[実施形態5]
図5に示された実施形態5の不動態化処理では配管1b内に光供給管13を挿通して光供給管13の端面からオゾン分解因子として紫外光を照射させると共に光供給管13と配管1bとの間隙にオゾンガスを供給する。そして、この状態で光供給管13の端面を配管1bの軸方向に動作させることにより配管1bの内面を不動態化する。実施形態1〜4と同様に既存の配管1aの一端側には配管1a,1b内にてガス流を生じさせるための真空ポンプ2が予め気密に接続される。
【0050】
光供給管13は配管1bよりも小径に形成された光ファイバーからなり、マニホールド継ぎ手14によって配管1b内に当該配管1bと略同軸に気密に挿通されている。光ファイバーは紫外光を透過させると共にオゾンに耐性のある石英から成るものが適用される。また、配管1b内に導入された光供給管13の先端部の位置を調節できるように光供給管13とマニホールド継ぎ手14との間に気密部材としてOリング141を介在させている。光供給管13の動作手段には例えば光ファイバー用の巻き取り装置が適用される。
【0051】
配管1b内に導入されない方の光供給管13の一端には紫外光領域を含む光(250nm程度の波長領域を含む光)を発する光源15が具備されている。光源15には周知の紫外光の光源を適用すればよい。マニホールド継ぎ手14は配管1bの施工時すなわち配管1bを配管1aに接続する際に配管1aと対向しない配管1bの端部に装着される。また、マニホールド継ぎ手14にはオゾン発生装置3からオゾンガスが供されるガス供給管16が接続される。
【0052】
図5を参照しながら本実施形態の不動態化処理について説明する。
【0053】
不動態化済みの配管1aの一端側に配管1aと同径の新たな配管1bが溶接固定される。配管1aのもう一端側には真空ポンプ2が気密に接続される。次いで、マニホールド継ぎ手14が配管1bの一端側に装着される。光供給管13は配管1b内に導入された先端部が配管1aと配管1bとの接続部分と略同位置となるように設定される。
【0054】
次いで、室温のもとで真空ポンプ2によって配管1a,1b内を負圧状態(数百Pa以下例えば200Pa)にした状態で配管1bと光供給管13との間隙にガス供給管16からオゾンガスを供給する。一方、光供給管13の端面からは光源15の光が配管1b内のオゾンガスのガス流に照射される。この照射によって生じた酸化性化学種である原子状酸素(非特許文献3)によって配管1bの内面が酸化されクロム酸化物(Cr
2O
3)から成る不動態膜が形成される。
【0055】
その後、一定時間毎(例えば10分間毎)に光供給管13の端面の位置がオゾンガスのガス流の上流方向に移行するように光供給管13を配管1bの軸方向に動作させる。光供給管13の先端部がマニホールド継ぎ手14側の配管1bの一端に達した時点で配管1bの内面の不動態化が完了する。
【0056】
配管1bの不動態化が完了すると、光供給管13と共にマニホールド継ぎ手14が配管1bから外される。そして、この配管1bの一端に新たな配管が溶接されると、上述と同じ方法で当該配管の内面が不動態化処理される。新たに配管が増設される毎にこの不動態化処理が実行される。尚、本実施形態ではオゾン分解因子に不飽和炭化水素ガスを用いていないので不飽和炭化水素由来成分の除去過程が不要となる。
【0057】
ステンレス製(SUS304)の配管の内面を処理温度30℃、圧力60Pa、波長250nmを含む紫外光の照射のもとオゾン濃度100vol%のガス雰囲気で本実施形態の処理方法により10分間処理した。本実施例においても、
図6に示された特性図と略同等のXPS結果が得られ、室温に近い温度条件のもとでも60分未満の短時間で鋼材表面を不動態化できるが示された。