【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0058】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
【0059】
<対数粘度>
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒は水)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T
1)を測定した。対数粘度は、ブランクの水の流下時間(T
0)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T
1/T
0)}/0.5
【0060】
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0061】
<ポリイミドフィルムサンプルの作成>
得られた電極用バインダー樹脂組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが25μmのポリイミドフィルムを形成した。このポリイミドフィルムを用いて特性を評価した。
【0062】
<機械的特性(引張試験)>
引張り試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を行い、引張弾性率、引張破断伸び、引張破断強度を求めた。
【0063】
<膨潤試験>
電極用バインダー樹脂組成物から得られたポリイミドフィルムを5cm角(厚さ:25μm)に切り出したものを試料として用いた。60℃で24時間真空乾燥後の質量を乾燥質量(Wd)とし、DMC溶液、或いはメトキシリチウムの10質量%メタノール溶液に、25℃で24時間浸漬後の質量を膨潤質量(Ww)とし、それぞれ次式により膨潤率Sを計算した。
S[質量%]=(Ww−Wd)/Ww×100
【0064】
<ガラス転移温度測定>
TAインスツルメンツ(株)製 固体粘弾性アナライザー RSAIII(圧縮モード 動的測定、周波数62.8rad/sec(10Hz)、歪量はサンプル高さの3%に設定)を用い、雰囲気窒素気流中、−140℃から450℃まで温度ステップ3℃で、各温度到達後30秒後に測定を行ない次の温度に昇温して測定を繰り返す方法で、損失弾性率(E'')の極大点を求め、その温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
【0065】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
a−BPDA:2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD:p−フェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度:120g/L、以下同様)
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.19g/L)
MPD:m−フェニレンジアミン(77g/L)
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(0.000019g/L)
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(0.0018g/L)
1,2−DMZ:1,2−ジメチルイミダゾ−ル
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール
2MZ:2−メチルイミダゾ−ル
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0066】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、25℃で12時間撹拌して、固形分濃度9.0質量%、溶液粘度16.3Pa・s、対数粘度0.95の電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0067】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物8.89g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0068】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、50℃で8時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度35.5Pa・s、対数粘度1.25の電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0069】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0070】
〔実施例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度63.0Pa・s、対数粘度1.86の電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0071】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0072】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、2E4MZの34.23g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.6質量%、溶液粘度10.3Pa・s、対数粘度0.64の電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0073】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0074】
〔実施例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの10.97g(0.055モル)及びPPDの5.92g(0.055モル)と、1,2−DMZの20.43g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの16.12g(0.055モル)及びODPAの16.99g(0.055モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度6.5Pa・s、対数粘度0.50の電極用バインダー樹脂組成物水溶液組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0075】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0076】
〔実施例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの14.86g(0.074モル)及びPPDの3.44g(0.032モル)と、1,2−DMZの20.43g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの21.83g(0.074モル)及びODPAの9.87g(0.032モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.0質量%、溶液粘度5.2Pa・s、対数粘度0.46の電極用バインダー樹脂組成物水溶液組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0077】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0078】
〔実施例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの20.25g(0.101モル)と、1,2−DMZの24.31g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの29.75g(0.101モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.7質量%、溶液粘度32.0Pa・s、対数粘度0.42の電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0079】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0080】
〔実施例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにMPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.9質量%、溶液粘度13.5Pa・s、対数粘度0.75の電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物及び電極用バインダーポリイミドについて、その特性を表1に示した。
【0081】
また、得られた電極用バインダー樹脂組成物を実施例1と同様に処理して、電極を好適に作成することができた。
【0082】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの17.92g(カルボキシル基に対して0.75倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0083】
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、2MZの25.50g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0084】
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、DBUの47.29g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0085】
〔比較例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにBAPPの29.13g(0.071モル)と、1,2−DMZの17.05g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの20.87g(0.071モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0086】
〔比較例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにTPE−Rの24.92g(0.085モル)と、1,2−DMZの20.49g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にa−BPDAの25.08g(0.085モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0087】
〔比較例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの23.93g(0.120モル)と、1,2−DMZの28.73g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にPMDAの26.07g(0.120モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0088】
〔比較例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにTPE−Rの24.26g(0.083モル)と、2E4MZの22.86g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にODPAの25.74g(0.083モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0089】
〔比較例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの8.94g(0.083モル)と、ODAの11.03g(0.055モル)と、1,2−DMZの33.10g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にPMDAの30.03g(0.138モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、電極用バインダー樹脂組成物水溶液を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】