特許第5891694号(P5891694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891694
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】内用液剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/258 20060101AFI20160310BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160310BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20160310BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   A61K36/258
   A61K47/08
   A61K47/12
   A61K47/10
   A61K47/22
   A61K9/08
   A61P3/00
   A61P1/00
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-222409(P2011-222409)
(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公開番号】特開2013-82644(P2013-82644A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108339
【氏名又は名称】ゼリア新薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】中野 大介
(72)【発明者】
【氏名】横田 和義
【審査官】 ▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−277014(JP,A)
【文献】 特開2003−171314(JP,A)
【文献】 特開2001−321114(JP,A)
【文献】 周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料,特許庁,2000年 1月14日,pp.139-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)コウジン、(B)ベンズアルデヒド含有香料、(C)クエン酸又はその塩、並びに(D)エリスリトール、スクラロース及びアセスルファムカリウムから選ばれる1種又は2種以上を含有し、成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が30〜200である内用液剤組成物。
【請求項2】
成分(D)が、エリスリトール、スクラロース及びアセスルファムカリウムを含有する請求項1記載の内用液剤組成物。
【請求項3】
成分(A)を内用液剤組成物100mL中1,000〜10,000mg含有するものである請求項1又は2記載の内用液剤組成物。
【請求項4】
成分(C)を内用液剤100mL中300〜1000mg含有するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【請求項5】
エリスリトールを内用液剤組成物100mL中1,000〜10,000mg含有するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【請求項6】
スクラロースを内用液剤組成物100mL中4〜100mg含有するものである請求項1〜5のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【請求項7】
アセスルファムカリウムを内用液剤組成物100mL中4〜100mg含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【請求項8】
成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が40〜120である請求項1〜7のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【請求項9】
成分(B)が、ウメフレーバー及びカリンフレーバーから選ばれるベンズアルデヒド含有香料である請求項1〜8のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【請求項10】
成分(B)が、ベンズアルデヒドを含有するウメフレーバーである請求項1〜のいずれか1項記載の内用液剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬であるコウジンを含有する内用液剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コウジンは、強壮、強精作用を有する薬用ニンジンの一種の生薬である。コウジンは、神経を活発にして、胃腸などの体の機能を高めるため、食欲不振や胃もたれ、病中病後の体の弱っているときに内用薬として用いられる。
【0003】
しかし、コウジンは、苦味及び特有の異味を有し、特に内用液剤にしたときの異味は強い。従って、コウジンを含有する内用液剤の服用性は極めて悪い。
【0004】
一方、生薬等の苦味のマスキングには、有機酸とフルーツ系香料の使用(特許文献1、2)や、脂肪酸エステル、果糖及び白糖の使用(特許文献3)等が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−171314号公報
【特許文献2】特開平09−249694号公報
【特許文献3】特開2008−94742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1〜3の手段をコウジンを含有する内用液剤に適用した場合には、単なる苦味ではないコウジン特有の異味は十分にマスキングできず、甘味を強くすると全体の味が悪化してしまうという問題があることが判明した。
従って、本発明の課題は、コウジン特有の異味を十分にマスキングし、味が良好で服用感の良好な内用液剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、コウジンを含有する液剤に種々の成分を配合して、コウジン特有の異味のマスキングについて種々検討した結果、コウジンに、一定量のベンズアルデヒド含有香料と、クエン酸又はその塩と、エリストリール、スクラロース及びアセスルファムカリウムから選ばれる1種又は2種以上の甘味料とを組み合わせて配合すれば、コウジン特有の異味がマスキングでき、かつ服用感の良好な内用液剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)コウジン、(B)ベンズアルデヒド含有香料、(C)クエン酸又はその塩、並びに(D)エリスリトール、スクラロース及びアセスルファムカリウムから選ばれる1種又は2種以上の甘味料を含有し、成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が30〜200である内用液剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内用液剤組成物は、有効量のコウジンを含有しており、コウジン特有の異味がマスキングされ、かつ全体の味のバランスが良好で服用感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の内用液剤組成物に用いられる(A)コウジンは、薬用ニンジンの一種の生薬である。(A)コウジンとしては、コウジンの乾燥粉末及びその抽出物のいずれも用いられる。コウジンの抽出物としては、コウジンの水、アルコール、含水アルコール等による抽出物が挙げられる。ここでアルコールとしてはエタノールが好ましい。
本発明の内用液剤組成物100mL中のコウジンの含有量は、有効性、異味のマスキング効果の点から、乾燥固形分換算で1,000〜10,000mgが好ましく、1,200〜8,000mgがより好ましく、1,200〜6,000mgがさらに好ましく、2,000〜6,000mgがさらに好ましい。
【0011】
本発明の内用液剤組成物に用いられる(B)ベンズアルデヒド含有香料としては、ベンズアルデヒド特有の香気を有する香料であればよく、バラ目バラ科サクラ属又はカリン属のフレーバーが好ましく、ウメ、アンズ、プルーン、サクランボ、カリン等の香りを有する天然香料又は調合香料がより好ましく、ウメ特有の香りを有するベンズアルデヒドを含有するウメフレーバーが、コウジンの異味のマスキング効果、服用感の点からさらに好ましい。
本発明においては、成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が30〜200であるのが、コウジンの異味のマスキングとさわやかな服用感を得る点で重要である。当該含有質量比(A/B)は、30〜150がより好ましく、40〜120がさらに好ましい。
【0012】
本発明に用いられる(C)クエン酸又はその塩としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のクエン酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、クエン酸ナトリウムが好ましい。クエン酸とクエン酸アルカリ金属塩とを併用するのがより好ましく、クエン酸とクエン酸ナトリウムを併用するのがさらに好ましい。
本発明の内用液剤組成物100mL中の成分(C)の含有量は、コウジンの異味のマスキング効果、服用感の改善の点から300〜1000mgが好ましく、350〜900mgがより好ましく、400〜800mgがさらに好ましい。
【0013】
本発明に用いられる(D)エリスリトール、スクラロース及びアセスルファムカリウムから選ばれる1種又は2種以上の甘味料は、低カロリーで高い甘味度を有し、かつコウジン特有の異味のマスキング効果を有する。これらの甘味料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましく、2種以上組み合わせるのがより好ましく、エリスリトール、スクラロース及びアセスルファムカリウムの3成分を組み合わせて用いるのがさらに好ましい。
本発明の内用液剤組成物100mL中のエリスリトールの含有量は、コウジンの異味のマスキング効果及び服用感の点から、1,000〜10,000mgが好ましく、2,000〜8,000mgがより好ましく、3,000〜6,000mgがさらに好ましい。また、内用液剤組成物100mL中のスクラロースの含有量は、コウジンの異味のマスキング効果の点から、4〜100mgが好ましく、4〜90mgがより好ましく、4〜50mgがさらに好ましい。また、内用液剤組成物100mL中のアセスルファムカリウムの含有量は、コウジンの異味のマスキング効果の点から、4〜100mgが好ましく、4〜90mgがより好ましく、4〜50mgがさらに好ましい。
【0014】
本発明の内用液剤組成物には、さらにコウジンの異味のマスキング効果に悪影響を及ぼさない限り、ベンズアルデヒド以外の成分を含有するフレーバー、他の薬効成分、エタノール、pH調整剤、保存剤、着色剤、可溶化剤、グリセリン、水等を配合することができる。ここで他の薬効成分としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、肝臓加水分解物、ニコチン酸アミド、カルニチン、パンテノール等が挙げられる。
【0015】
また本発明の内用液剤組成物のpHは安定性の点から、4〜7が好ましく、特に4.5〜6.5が好ましい。
【0016】
本発明の内用液剤組成物はコウジンを有効量含有し、かつコウジン特有の異味がマスキングされ、服用感が良好であるから、コウジンの薬理作用、すなわち滋養強壮効果、食欲不振や胃もたれの改善効果、血行促進効果等が奏される。
【実施例】
【0017】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0018】
実施例1〜25及び比較例1〜13
表1〜表5に記載の処方に従い、内用液剤を製造し、その味を10名のパネラーにより、5段階評価した。表1〜表5中の配合量は、内用液剤50mL中の含有量(mg)である。
【0019】
(1)内用液剤の製法
コウジン乾燥エキスの水溶液を加熱攪拌し、冷却後、ろ過したところへ、クエン酸、クエン酸ナトリウム、エリスリトール、スクラロース、アセスルファムカリウム、及び香料を加えpH調整、ろ過、充てん、殺菌をして内用液剤とした。
【0020】
(2)味の評価方法
パネラー10名に、コウジン特有の異味のマスキング効果及び全体の服用感(味)を5段階で評価させた。表1〜表5にはその平均値を示した。
5:極めて良好
4:良好
3:改善されていない
2:悪い
1:極めて悪い
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
表1〜表5より、(A)コウジン、(B)ベンズアルデヒド含有香料、(C)クエン酸又はその塩、並びに(D)エリスリトール、スクラロース及びアセスルファムカリウムから選ばれる1種又は2種以上の甘味料を含有し、A/B=30〜200である本発明の内用液剤は、コウジン特有の異味が良好にマスキングされ、服用感(味)も良好であった。これに対し、A/Bが30〜200の範囲外の場合(比較例1及び2)や、他の種々のフレーバーを用いた場合(比較例3〜13)では、十分なマスキング効果が得られなかった。
【0027】
実施例26
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(900mg)とエリスリトール(2000mg)に水を加え加熱溶解後、トコフェロール酢酸エステル(100mg)、パラオキシ安息香酸ブチル(7mg)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、濃グリセリン及び水で調製した可溶化液を加え、さらに、コウジン乾燥エキス(300mg)(コウジンとして3000mg)に水を加え、加熱処理し、ろ過したものを加える。溶解を確認後、ニコチン酸アミド(12mg)、パンテノール(20mg)、クエン酸(50mg)、クエン酸ナトリウム(250mg)、安息香酸ナトリウム(35mg)、スクラロース(9mg)、アセスルファムカリウム(6mg)、カラメル(50mg)、ウメフレーバー(33mg:小川香料株式会社製)、チリフレーバー(17mg)を加えたのち、pH調整し50mLに調製したものを、ろ過、充てん、殺菌をして内用液剤とする。