特許第5891980号(P5891980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5891980
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】蓄電装置及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20160310BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20160310BHJP
   C23C 8/24 20060101ALN20160310BHJP
【FI】
   H01M2/02 A
   H01M2/04 A
   !C23C8/24
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-153775(P2012-153775)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-17118(P2014-17118A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】田島 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭一
【審査官】 植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−251474(JP,A)
【文献】 特開2010−262899(JP,A)
【文献】 特開2012−128961(JP,A)
【文献】 特開昭59−151750(JP,A)
【文献】 特開昭59−151748(JP,A)
【文献】 特開2010−007103(JP,A)
【文献】 特開2010−007102(JP,A)
【文献】 特開2012−001788(JP,A)
【文献】 特開2013−246877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
C23C 8/24
H01G 9/08
H01M 2/04
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体を挿入可能な開口部を有するケース本体と、前記開口部を塞ぐ蓋とで構成されたケース内に、前記電極組立体が収容されるとともに前記蓋が前記開口部を覆う状態で前記ケース本体に溶接された蓄電装置であって、
前記ケース本体及び前記蓋はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、
前記ケース本体の前記開口部の周縁に前記蓋との溶接代を残して、前記ケース本体の少なくとも側面に窒化物層が形成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記窒化物層は、前記ケース本体の内面にも形成されている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記窒化物層は、厚さが5μm以上である請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電装置はフォークリフト用の蓄電装置である請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置の構成を備えた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。また、電気自動車やハイブリッド自動車のように走行モータの電源として二次電池を使用する場合は、大電流充電や大電流放電及び大容量化が要求されるため、複数個の二次電池からなる組電池が使用されている。大電流での充・放電は電池内部の大きな発熱を伴い、また、組電池では限られたスペースに多数の電池を収納することから電池温度が上昇し、電池性能の劣化を促進してしまうという問題がある。
【0003】
電池のケース内で発生した熱を効率良く放出する技術として、ケースの表面に高放射率の塗料を塗布して高放射率層を形成することが提案されている。また、電池内の温度ムラを低減し、電池の耐久性の向上を図るため、ケースの表面全体に高放射率の塗料を塗布するのではなく、ケース内に収容される電極組立体(発電要素)の電流が集中し易い部位である電極端子に近い側に対応するケースの部分の表面に高放射率の塗装(黒色塗装)を施すことが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、電池を組電池の状態で使用する場合、複数の電池は隣接する電池の側面が当接した状態で、あるいは間隔保持部材を介した状態で固定される。そして、組電池が振動を受ける状態、例えば車両に搭載された状態で使用される場合、振動により隣り合う電池同士が摺動したり、電池が間隔部材に対して摺動したりすることにより摺動部分に摩耗が生じる。特にフォークリフト等の産業車両では、乗用車に比べて振動が激しいため、電池の耐久性を向上させるには摺動部の耐摩耗性が必要になる。
【0005】
工業用材料として使用されるアルミニウム部材には、耐摩耗性の改善等を目的として表面窒化処理が施されることがある。そして、効率的にアルミニウム基材の表面を窒化処理する表面窒化方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、窒化アルミニウムは耐摩耗性の他、熱伝導性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−262899号公報
【特許文献2】特開2012−1788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケースの表面に高放射率の塗装を施すことで、電池の放熱性の改善は図れる。しかし、特許文献1では、電池を組電池として、かつ振動を受ける状態で使用する場合に関しては、何ら配慮がされていない。塗装が施された複数の電池を隣接する電池が当接する状態で組電池として使用され、かつ振動を受ける状態で使用されると、隣接する電池同士の摺動により塗装が剥がれて放熱性が損なわれる。また、ケースを金属製とした場合、隣接するケースの絶縁性を確保する必要があるが、特許文献1では、この点に関しても配慮されていない。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、放熱性が向上し、振動する状態で使用されても耐摩耗性が向上し、耐久性が向上する蓄電装置及び二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、電極組立体を挿入可能な開口部を有するケース本体と、前記開口部を塞ぐ蓋とで構成されたケース内に、前記電極組立体が収容されるとともに前記蓋が前記開口部を覆う状態で前記ケース本体に溶接された蓄電装置である。そして、前記ケース本体及び前記蓋はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、前記ケース本体の前記開口部の周縁に前記蓋との溶接代を残して、前記ケース本体の少なくとも側面に窒化物層が形成されている。ここで、「ケース本体の側面」とは、蓄電装置の電極端子がケースから突出した面と交差する方向に延びるように形成されたケース本体の面を意味する。
【0010】
蓄電装置ではケース本体と蓋とを溶接で気密状態に接合(固定)する。放熱性や耐摩耗性の向上を図るため、窒化物層をケース本体の側面全体に形成すると、ケース本体と蓋とを溶接する際に、窒化物層が溶接に支障を来す。しかし、この発明では、窒化物層は、ケース本体の開口部の周縁に蓋との溶接代を残して形成されているため、窒化物層がケース本体と蓋との溶接に支障を来すことがなく、ケース本体と蓋とを気密状態に溶接接合することができる。また、ケース本体の少なくとも側面に窒化物層が形成されているため、蓄電装置が組電池の状態で、かつ振動を受ける状態で使用されても、振動により摺動面となる蓄電装置の側面の摩耗が抑制される。したがって、放熱性が向上し、振動する状態で使用されても耐摩耗性が向上し、耐久性が向上する蓄電装置を提供することができる。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記窒化物層は、前記ケース本体の内面にも形成されている。蓄電装置をコンパクトに構成するには、ケース本体内に収容された電極組立体とケース本体の内面との隙間をできるだけ小さくする必要がある。一般的な積層型の電極組立体の場合、電極組立体は、金属箔の少なくとも一方の面に活物質が塗布された活物質層を有する正極及び負極が両者の間にセパレータが介在する状態で積層された構成である。そのため、ケース本体をアルミニウム又はアルミニウム合金製とした場合、電極組立体とケース本体の内面との隙間をあまり小さくすると、電極組立体の電極とケースとの電気的な絶縁性を確保するために、ケース本体の内面に電気的な絶縁部材を取着する必要がある。この発明では、窒化物層は、ケース本体の内面にも形成されているため、ケース本体の内面に電気的な絶縁部材を取着する工程を別に設けることが不要になる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記窒化物層は、厚さが5μm以上である。窒化物層があまり薄いと、組電池として振動する状態で使用された場合、摺動摩擦により窒化物層が剥がれ易くなる。この発明では、窒化物層は、厚さが5μm以上であるため、窒化物層が摺動摩擦によって剥がれ難くなる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記蓄電装置はフォークリフト用の蓄電装置である。蓄電装置はフォークリフトやショベ
ルローダ等の産業車両に搭載された状態で使用される場合がある。産業車両に搭載された状態では蓄電装置は乗用車に搭載された場合に比べて大きな振動を受ける状態で使用され、振動に伴って、蓄電装置のケース側面の摺動も激しくなる。しかし、側面には窒化物層が形成されているため、摺動による摩耗が抑制防止される。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置の構成を備えた二次電池である。したがって、この発明の二次電池は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置が有する効果と同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放熱性が向上し、振動する状態で使用されても耐摩耗性が向上し、耐久性が向上する蓄電装置及び二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は一実施形態の二次電池の断面図、(b)は二次電池の部分斜視図。
図2】電極組立体の正極、負極及びセパレータの関係を示す概略斜視図。
図3】複数の二次電池を直列に接続した組電池の側面図。
図4】組電池の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を積層型の電極体を備えた二次電池に具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース本体11a及び蓋11bで構成された四角箱状のケース11内に、積層型の電極組立体12及び電解液(図示せず)が収容されている。ケース本体11aは電極組立体12を挿入可能な開口部11cを有し、蓋11bは開口部11cを塞ぐ状態でケース本体11aに溶接されている。この実施形態では開口部11cは、四角箱状のケース本体11aの上側に設けられている。
【0019】
図2に示すように、電極組立体12は、シート状の金属箔13の両面に活物質が塗布された活物質層14aを有する正極14と、シート状の金属箔13の両面に活物質が塗布された活物質層15aを有する負極15とが、両者の間にシート状のセパレータ16が介在する状態で積層されている。正極14は活物質層14aが形成された部分が矩形状に形成され、活物質が塗布されていない活物質非塗布部14bは、正極14の矩形状に形成された部分の一辺から突出するようにタブとして形成されている。負極15も同様に活物質層15aが形成された部分が矩形状に形成され、活物質が塗布されていない活物質非塗布部15bは、負極15の矩形状に形成された部分の一辺からタブとして突出するように形成されている。
【0020】
図1(a)に示すように、蓋11bには正極端子17及び負極端子18が固定されている。この実施形態においては、正極端子17及び負極端子18は、雄ねじ部17a,18a及び鍔部17b,18bを有し、蓋11bに形成された孔(図示せず)を、鍔部17b,18bがケース11の内側に位置する状態で貫通して蓋11bから突出する雄ねじ部17a,18aに螺合するナット19aにより、蓋11bに締め付け固定されている。雄ねじ部17a,18aにはナット19aの他にナット19bも螺合されている。ナット19bは、複数の二次電池10同士あるいは二次電池10を電気機器に接続する接続部材や配線を、正極端子17あるいは負極端子18に対してナット19aと共同して電気的に接続するために使用される。なお、鍔部17b,18bと蓋11bとの間及びナット19aと蓋11bとの間には図示しない電気的絶縁材製のシール部材が介装されている。
【0021】
正極14の活物質非塗布部14bの積層体20pは、導電部材21を介して正極端子17と接続されている。導電部材21は、積層体20p及び正極端子17にそれぞれ溶接されている。負極15の活物質非塗布部14bの積層体20nは、導電部材22を介して負極端子18と接続されている。導電部材22は、積層体20n及び負極端子18にそれぞれ溶接されている。
【0022】
ケース本体11a及び蓋11bはアルミニウム又はアルミニウム合金製である。アルミニウム合金とは、例えば、アルミニウムを主成分とし、銅、マンガン、亜鉛、シリコン、マグネシウムなどが添加されたものを含み、熱処理型合金も含む。
【0023】
図1(a),(b)及び図3に示すように、ケース本体11aは、開口部11cの周縁に蓋11bとの溶接代24を残して、ケース本体11aの少なくとも側面11dに窒化物層25が形成されている。この実施形態では、ケース本体11aの側面11dの他に、ケース本体11aの底面及び内面にも窒化物層25が形成されている。窒化物層25は、厚さが5μm以上である。窒化物層25は、バレル窒化法により形成されたものである。窒化物層25は、濃いグレーあるいは黒色である。窒化物層25は、窒化アルミニウム(AlN)のみから構成されているのではなく、バレル窒化法で使用された充填粉末の材質(例えば、アルミナやマグネシウム等)も含まれている。
【0024】
二次電池10は、ケース本体11a内に電極組立体12が収容された後、蓋11bがケース本体11aの開口部11cを覆う状態で、ケース本体11aに対して溶接により気密状態に接合される。その際、ケース本体11aの開口部11cの周縁に蓋11bとの溶接代24を残して、ケース本体11aの側面11dに窒化物層25が形成されているため、窒化物層25が溶接に支障を来すことがない。
【0025】
次に、ケース本体11aに窒化物層25を形成する方法を説明する。窒化物層25の形成は、バレル窒化法により行われる。バレル窒化法として、例えば、特許文献2に開示されている方法と基本的に同様な方法が使用される。具体的には、側方から見て正八角形のバレル容器内に、アルミニウム基材としてのケース本体11aと、研磨剤としてのアルミナ粉末と、活性化粉末としてのマグネシウム粉末とを充填粉末として入れた状態で、容器内を窒素ガス雰囲気とし、ヒータで容器内を所定の窒化温度まで加熱する。窒化温度は、通常600℃程度である。その状態で容器を揺動あるいは回転させる。但し、ケース本体11aの開口部11cの周縁に蓋11bとの溶接代24を残した状態で、ケース本体11aの側面11d、底面及び内面に窒化物層25を形成するため、ケース本体11aの外面の、開口部11cの周縁にマスキング材を取り付けた状態で窒化処理を行う。マスキング材としては、例えば、塗布式のガス浸炭防止剤、ガス窒化防止剤を用いることができる。また、例えば、酸化硼素にポリエチレン等の熱可塑性樹脂、シリカ、アルミナ等の無機添加材を混練分散した粉体をレーザー照射、高周波加熱等により所望の部分のみに熱融着することでマスキング材を設けることができる。バレル容器内が窒素雰囲気下で窒化温度に加熱された状態で、バレル容器が揺動あるいは回転されることにより、ケース本体11aの側面11d及び底面と、内面とに窒化物層25が形成される。
【0026】
二次電池10は単独でも使用されるが、通常は複数の二次電池10が端子接続部材を介して直列に接続された組電池を構成した状態で使用される。図3及び図4に示すように、組電池30は、複数の二次電池10が、正極端子17及び負極端子18が交互に対向し、かつ幅の広い側面11d同士が当接した状態で一列に配置され、端子接続部材31が正極端子17の雄ねじ部17a及び負極端子18の雄ねじ部18aに遊挿された状態で、ナット19aにより締め付け固定されている。ただし、一列に配置された両端に位置する二次電池10のうち、一方の端部に位置する二次電池10の正極端子17と、他方の端部に位置する二次電池10の負極端子18は端子接続部材31に接続されない状態にある。
【0027】
また、組電池30は、両端に配置される二次電池10の側面11dに密着した支持板32,33と、各二次電池10の幅狭の側面11dの上部に接した状態で支持板32,33に連結された上側連結板34と、各二次電池10の幅狭の側面11dの下部に接した状態で支持板32,33に連結された下側連結板35とで支持された状態で一体に移動可能に構成されている。支持板32,33には、組電池30を持ち上げ易いように、取っ手36が取り付けられている。
【0028】
次に前記のように構成された二次電池10及び組電池30の作用を説明する。組電池30は種々の用途に使用されるが、例えば、産業車両としてのフォークリフトに搭載されてフォークリフト用として使用され、走行用モータあるいは油圧ポンプ駆動用モータの電源として使用される。
【0029】
二次電池10の内部に収容されている電極組立体12の活物質が、充電時や放電時に発熱するため、組電池30が発熱し、急速充電時や急速放電時に発熱が大きくなる。二次電池10のケース11はアルミニウム又はアルミニウム合金製で、かつケース本体11aの側面11dに窒化物層25が形成されている。窒化物層25は、熱伝導性が高く、濃いグレーあるいは黒色のため、放射率も高い。そのため、二次電池10のケース11内で発生した熱を効率良く放出することができる。
【0030】
また、組電池30が振動を受ける状態で使用される場合、振動により隣り合う二次電池10同士が摺動する。また、二次電池10は支持板32,33や上側連結板34及び下側連結板35に対しても摺動する。摺動部となるケース本体11aの側面11dに耐摩耗処理が行われていない場合は、摺動部に摩耗が生じる。特にフォークリフト等の産業車両では、乗用車に比べて振動が激しいため、摩耗が生じ易い。しかし、この実施形態の組電池30を構成する二次電池10は、ケース本体11aの側面11dに耐摩耗性の高い窒化物層25が形成されているため、隣り合う二次電池10の側面11d同士が摺動したり、二次電池10が支持板32,33や上側連結板34及び下側連結板35に対して摺動したりしても側面11dの摩耗が抑制される。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)二次電池10(蓄電装置)は、電極組立体12を挿入可能な開口部11cを有するケース本体11aと、開口部11cを塞ぐ蓋11bとで構成されたケース11内に、電極組立体12が収容されるとともに蓋11bが開口部11cを覆う状態でケース本体11aに溶接されている。そして、ケース本体11a及び蓋11bはアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、ケース本体11aの開口部11cの周縁に蓋11bとの溶接代24を残して、ケース本体11aの少なくとも側面11dに、放熱性や耐摩耗性の高い窒化物層25が形成されている。したがって、ケース本体11aと蓋11bとを溶接で気密状態に接合(固定)する場合、窒化物層25がケース本体11aと蓋11bとの溶接に支障を来すことがなく、放熱性が向上する。
【0032】
(2)二次電池10は、複数の二次電池10が端子接続部材31を介して直列に接続され、隣り合う二次電池10のケース本体11aの側面11dが当接した状態で組電池30を構成して使用される。したがって、組電池30の状態で、かつ振動を受ける状態で使用されても、振動により摺動面となる二次電池10の側面11dの摩耗が抑制され、耐摩耗性が向上し、耐久性が向上する。
【0033】
(3)窒化物層25は、バレル窒化法により形成されたものである。アルミニウム又はアルミニウム合金製のケース本体11aに窒化物層25を形成する方法として、イオン窒化法及びバレル窒化法等があるが、バレル窒化法は、イオン窒化法に比べて窒化物層25の形成速度が速く、効率良く窒化物層25が形成されるため、製造工程においてケース本体11aの窒化処理を効率良く行うことができる。特に、ケース本体11aの内面にも窒化物層25を形成する場合は、より効率が良くなる。また、バレル窒化法で形成された窒化物層25はイオン窒化法で形成された窒化物層に比べてアルミニウム基材に深く食い込む状態で形成されるため、アンカー効果により剥がれ難い。
【0034】
(4)窒化物層25は、ケース本体11aの内面にも形成されている。二次電池10をコンパクトに構成するには、ケース本体11a内に収容された電極組立体12とケース本体11aの内面との隙間をできるだけ小さくする必要がある。一般的な積層型の電極組立体12の場合、電極組立体12は、金属箔13の少なくとも一方の面に活物質が塗布された活物質層14a,15aを有する正極14及び負極15が両者の間にセパレータ16が介在する状態で積層された構成である。そのため、ケース11をアルミニウム又はアルミニウム合金製とした場合、電極組立体12とケース本体11aの内面との隙間をあまり小さくすると、電極組立体12の電極とケース本体11aとの電気的な絶縁性を確保するためケース本体11aの内面に電気的な絶縁部材を取着する必要がある。しかし、この実施形態では、窒化物層25は、ケース本体11aの内面にも形成されているため、ケース本体11aの内面に電気的な絶縁部材を取着する工程を別に設けることが不要になる。また、アルミニウムやアルミニウム合金はアルカリに対する耐蝕性が弱いが、ケース本体11aの内面にも窒化物層25が形成されることにより、アルカリに対する耐蝕性が向上する。
【0035】
(5)窒化物層25は、厚さが5μm以上である。窒化物層25があまり薄いと、組電池30として振動する状態で使用された場合、摺動摩擦により窒化物層25が剥がれ易くなる。この実施形態では、窒化物層25は、厚さが5μm以上であるため、窒化物層25が摺動摩擦によって剥がれ難くなる。
【0036】
(6)二次電池10は、産業車両用(この実施形態ではフォークリフト用)の二次電池(蓄電装置)である。二次電池10がフォークリフトやショベルローダ等の産業車両に搭載された状態で使用される場合、二次電池10は乗用車に搭載された場合に比べて大きな振動を受ける状態で使用され、振動に伴って、二次電池10のケース本体11aの側面11dの摺動も激しくなる。しかし、ケース本体11aの側面11dには窒化物層25が形成されているため、摺動による摩耗が抑制防止される。
【0037】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 窒化物層25は、ケース本体11aの少なくとも側面11dに形成されていればよく、ケース本体11aの内面やケース本体11aの外側底面には形成しなくてもよい。ケース本体11aの内面に窒化物層25を形成しない場合は、ケース本体11aの開口部11cを溶接代24の部分に嵌合する蓋をマスキング材として使用し、ケース本体11aの側面11d及び底面に窒化物層25を形成してもよい。
【0038】
○ ケース本体11aの内面にも窒化物層25を形成する場合、ケース本体11aの溶接代24となる部分をマスキングする場合、開口部11cの周縁にマスキング材を取り付ける代わりに、溶接代24となる部分全体と嵌合可能な四角筒状のマスキング材をケース本体11aに嵌合してもよい。溶接代24となる部分全体と嵌合可能な四角筒状のマスキング材としては例えばステンレス製のマスキングを用いることができる。
【0039】
○ 窒化物層25は、バレル窒化法により形成されたものに限らず、例えば、イオン窒化処理やプラズマ窒化処理により形成してもよい。また、流動床炉中にアルミナ粒子とマグネシウム粉末を処理剤として充填し、窒素ガスを流動床に流動化ガスとして導入して前記処理剤を流動化し、この流動層内にケース本体11aを入れて、アルミニウムの融点以下で処理して窒化物層25を形成してもよい。
【0040】
○ 二次電池10を組電池30の状態で使用する場合、複数の二次電池10は、隣接する二次電池10の側面11dが当接した状態ではなく、間隔保持部材を介した状態で固定されてもよい。この場合、組電池30を振動する状態で使用した場合、二次電池10の側面11d同士の摺動は無くなるが、二次電池10は間隔保持部材に対して摺動する状態となり、側面11dは摺動部分になる。しかし、摺動部分になる側面11dに窒化物層25が形成されているため、摺動による摩耗が抑制防止される。
【0041】
○ 二次電池10を構成する電極組立体12は、積層型の電極組立体12に限らず、巻回型の電極組立体12であってもよい。
○ 巻回型の電極組立体12は、帯状の金属箔の幅方向の片側に存在する一定幅の活物質非塗布部を除いた部分全面に活物質層が形成された正極及び負極が、活物質非塗布部が電極組立体12の軸方向の異なる端部に位置する状態で、セパレータを介在させた状態で巻回された構成に限らない。例えば、正極及び負極の活物質非塗布部がそれぞれタブとして形成され、タブが電極組立体12の同じ端部から突出するように、セパレータを介在させた状態で巻回された構成であってもよい。
【0042】
○ 巻回型の電極組立体12は長円柱状に限らず、例えば、円柱状や楕円柱状に形成してもよい。
○ 正極14及び負極15は、金属箔13の片面に活物質層14a,15aが存在する構造でもよい。即ち、正極14及び負極15は、金属箔13の少なくとも一方の面に活物質層14a,15aが存在すればよい。
【0043】
○ 二次電池10は電解液が必須ではなく、電解質として電解液を使用する構成であっても、電解液を使用せずに固体電解質や高分子電解質を使用する構成であってもよい。例えば、セパレータ16が高分子電解質で形成されていてもよい。
【0044】
○ 組電池30が搭載される車両は、フォークリフトやショベルローダ等の産業車両に限らず、乗用車であってもよい。また、運転者を必要とする車両に限らず無人搬送車であってもよい。
【0045】
○ 蓄電装置は、二次電池10に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…蓄電装置としての二次電池、11…ケース、11a…ケース本体、11b…蓋、11c…開口部、11d…側面、12…電極組立体、24…溶接代、25…窒化物層。
図1
図2
図3
図4