特許第5892282号(P5892282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5892282導電性接着剤、導電性接着シート、および配線デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5892282
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】導電性接着剤、導電性接着シート、および配線デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/08 20060101AFI20160310BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160310BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160310BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160310BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20160310BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20160310BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160310BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20160310BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20160310BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   C09J201/08
   C09J163/00
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J9/02
   C09J175/04
   C09J7/02 Z
   H01B1/22 D
   H01B1/00 C
   H05K9/00 W
   H05K9/00 R
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-90211(P2015-90211)
(22)【出願日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年5月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早坂 努
(72)【発明者】
【氏名】西之原 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 英宣
(72)【発明者】
【氏名】松戸 和規
(72)【発明者】
【氏名】山田 加奈子
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/010524(WO,A1)
【文献】 特開2005−281494(JP,A)
【文献】 特開2009−110913(JP,A)
【文献】 特開2007−211040(JP,A)
【文献】 特開2012−211256(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164925(WO,A1)
【文献】 特開2004−052044(JP,A)
【文献】 特開2004−217952(JP,A)
【文献】 特開2009−290195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01B 1/00−1/02,1/20− 1/24
H05K 1/00− 1/03,9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(A)、エポキシ樹脂、銅を主成分とする導電性フィラー(B)、硬化剤、およびシランカップリング剤を含有し、
銅を主成分とする導電性フィラー(B)が、銅からなる核体と、銅とは異なる導電性物質からなる被覆層とを具備する導電性フィラーであって、
さらにシリカおよびタルクの少なくともいずれかである無機フィラーを含有し、
前記核体100重量部に対し、前記被覆層が40重量部以下であることを特徴とする導電性接着剤。
【請求項2】
無機フィラーの平均粒子径が、0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の導電性接着剤。
【請求項3】
シランカップリング剤が、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、およびアミノ系シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の導電性接着剤。
【請求項4】
熱硬化性樹脂(A)が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、およびメタクリル系ポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜いずれか1項記載の導電性接着剤。
【請求項5】
剥離性シート上に、請求項1〜いずれか1項記載の導電性接着剤より形成されてなる導電性接着剤層を備えることを特徴とする導電性接着シート。
【請求項6】
剥離性シートと、請求項1〜4いずれか1項記載の導電性接着剤より形成されてなる導電性接着剤層と、補強板とを備えることを特徴とする積層体。
【請求項7】
信号配線を備える配線板と、
前記配線板の少なくとも一方の面側に設けられた補強板と、
前記配線板と前記補強板とを接合する導電性接着剤層とからなる配線デバイスであって、該導電性接着剤層が、請求項1〜いずれか1項記載の導電性接着剤より形成されてなることを特徴とする配線デバイス。
【請求項8】
前記補強板が、導電性を有しており、
前記配線板が、さらに、前記補強板に接続されたグランド配線を備える請求項7に記載の配線デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤、導電性接着シート、および配線デバイスに関する。具体的には、電子部品等を実装する工程等において使用可能である導電性接着剤、かかる導電性接着剤から形成した導電性接着剤層を備える導電性接着シート、配線板と補強板とを、導電性接着剤層の硬化物で構成される接合層で接合してなる配線デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器、通信機器、携帯電話などの電子機器の更なる高性能化、小型化が進行している。フレキシブルプリント配線板は、湾曲可能な特性を有する。このため、フレキシブルプリント配線板は、電子回路を組み込むことにより、電子機器の狭く複雑な空間に配置する内部基板等として使用されている。この場合、発生する電磁波から、電子回路を遮蔽するために、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と表記する。)に、電磁波シールド層を設けることが一般的である。しかしながら、近年の電子回路に供給される情報量の増大による高周波化、および電子回路の小型化に起因して、電磁波対策は、さらに重要度を増している。
【0003】
電磁波シールド層を設けたFPCとして、特許文献1及び特許文献2には、導電性補強板とグランド回路とを導電性接着剤層で接続したFPCが開示されている。具体的には、導電性接着剤を用いて、ステンレス等の金属を使用した導電性補強板をFPCに貼り付けることにより、導電性補強板をグランド回路に電気的に相互接続する。これにより、電磁波シールド性が得られるため、FPCは、回路信号を安定的に伝送することができる。
【0004】
上述の導電性接着剤は、経時的な安定性も含めて優れた導電特性が求められており、シート中に含有される導電性フィラーの特性が重要となる。導電性フィラーとしては、銀粉が導電特性において優れるので、これまで銀粉を含有する導電性シート等が実用化されてきた。しかしながら、銀粉の価格は、導電性シート等に使用される樹脂や他の原料と比較して高価であり、コスト高となる。その上、昨今の銀価格の高騰により、銀粉を使用した導電性シート等の価格上昇が深刻な問題となっている。電子機器の低価格化を達成するためには、導電性フィラーの使用割合を減らす必要に迫られているが、導電性フィラーの使用割合を減らすと、所望の導電性を維持することができなくなるという問題に直面する。
【0005】
そのため、銀の安価な代替導電性フィラーとして、銅の表面に、銀などの導電性物質によりメッキされた、導電性物質からなる被覆層を有する導電性フィラーを用いる方法が検討されている。しかし、さらなるコストダウンのため導電性物質からなる被覆層の被覆量を減らしていくと、内部の銅が露出しやすくなり、銅イオンの溶出によって導電性接着剤の粘度安定性が悪化するといった問題がある。また、銅および上述のような銅の露出面が多い導電性フィラーを用いた導電性接着剤層は、高温高湿環境下(例えば85℃85%)に長時間晒されると、銅の酸化によって導電性が劣化しシールド特性が悪化したり、接着強度が悪化し金属補強板が剥がれやすくなるといった問題があった。
【0006】
また、導電性接着剤を用いて導電性補強板をグランド回路に接続するにあたって、スルーホールに導電性接着剤が埋め込まれて硬化することで、導電性補強板を固定すると同時にグランド接続するが、銅を主成分とする導電性フィラーを用いる場合、スルーホールの段差が高い場合には接続信頼性が低い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−218443号公報
【特許文献2】国際公開第2014/010524号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、銅を主成分とする導電性フィラーを用い、コストダウンが可能でありながら、導電性接着剤の粘度が安定であり、長期にわたって湿熱環境に晒された後においても良好な接続信頼性と接着力を有し、グランド配線基板スルーホールの段差が高い回路でも接続信頼性が良好である、導電性接着剤、導電性接着シート、および配線デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、銅を主成分とする導電性フィラーを用いる場合に、カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(A)、エポキシ樹脂、硬化剤、およびシランカップリング剤を含有する導電性接着剤を用いることにより、上記した課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(A)、エポキシ樹脂、銅を主成分とする導電性フィラー(B)、硬化剤、およびシランカップリング剤を含有することを特徴とする導電性接着剤に関する。
【0011】
また、本発明は、導電性フィラー(B)が、銅からなる核体と、銅とは異なる導電性物質からなる被覆層とを具備することを特徴とする前記導電性接着剤に関する。
【0012】
また、本発明は、導電性フィラー(B)の前記核体100重量部に対し、前記被覆層が40重量部以下であることを特徴とする前記導電性接着剤に関する。
【0013】
また、本発明は、シランカップリング剤が、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、およびアミノ系シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする前記導電性接着剤に関する。
【0014】
また、本発明は、熱硬化性樹脂(A)が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、およびメタクリル系ポリウレタン熱硬化性樹脂からなる群より選ばれることを特徴とする前記導電性接着剤に関する。
【0015】
また、本発明は、剥離性シート上に、前記導電性接着剤より形成されてなる導電性接着剤層を備えることを特徴とする導電性接着シートに関する。
【0016】
また、本発明は信号配線を備える配線板と、
前記配線板の少なくとも一方の面側に設けられた補強板と、
前記配線板と前記補強板とを接合する導電性接着剤層とからなる配線デバイスであって、
該導電性接着剤層が、前記導電性接着剤より形成されてなることを特徴とする配線デバイスに関する。
【0017】
前記補強板が、導電性を有しており、
前記配線板が、さらに、前記補強板に接続されたグランド配線を備える前記配線デバイスに関する。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の本発明によれば、銅を主成分とする導電性フィラーを用い、コストダウンが可能でありながら、導電性接着剤の粘度が安定であり、長期にわたって湿熱環境に晒された後においても良好な接続信頼性と接着力を有し、グランド配線基板スルーホールの段差が高い回路でも接続信頼性が良好である、導電性接着剤、導電性接着シート、および配線デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】接続信頼性試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の導電性接着剤は、カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(A)(以下、「熱硬化性樹脂(A)」ということもある。)と、エポキシ樹脂と、導電性フィラーと、硬化剤と、シランカップリング剤とを含む。導電性接着剤は、そのまま、一般的な接着剤と同様に所望の場所に塗布して、部材同士を接着するために使用することができる。また、その他、導電性接着剤は、剥離性シートのような基材等に塗工して導電性接着シートを形成した後、部材同士を接着するために使用することも好ましい。
【0021】
前記導電性接着剤の硬化方法としては、例えば、これをシート状に形成する際に、硬化剤を熱硬化性樹脂(A)と硬化反応させ、導電性接着剤をいわゆる半硬化状態とした後、本硬化工程で、さらにエポキシ樹脂を熱硬化性樹脂(A)とシランカップリング剤とを硬化反応させることで、ハンダリフロー温度に耐えうる高い耐熱性を有する硬化状態とする硬化方法、または、本硬化工程で硬化剤およびエポキシ樹脂を、熱硬化性樹脂(A)と硬化反応させる硬化方法が挙げられる。なお、導電性接着剤の硬化方法には、他の硬化方法を任意に採用できることはいうまでもない。
【0022】
<カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(A)>
本発明において熱硬化性樹脂は、導電性接着剤の用途で使用可能であり、硬化後において優れた耐熱性を発現しうる熱硬化性樹脂である。そのため、熱硬化性樹脂(A)は、反応性官能基としてカルボキシル基を含むことが必要である。具体的には、熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびフェノール系樹脂等にカルボキシル基を導入することで得られた樹脂等を用いることができる。これらの中でも、その硬化後の耐湿熱性と段差追従性との面から、ポリウレタン系熱硬化性樹脂が好ましい。特に、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、およびメタクリル系ポリウレタン樹脂は、接続信頼性、および耐湿熱性試験後の接着力に優れるために好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂(A)の酸価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、3〜50mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が1mgKOH/g以上であると、エポキシ樹脂との架橋効率(反応効率)が高まり、導電性接着剤の湿熱経時後の抵抗値と接着力がより向上する。また、酸価が100mgKOH/g以下であると、導電性接着剤の粘度安定性がより向上する。
【0024】
熱硬化性樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜300,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、導電性接着剤の段差追従性が良化し接続信頼性がより向上する。また、重量平均分子量が300,000以下であると、導電性接着剤の粘度が低下し、取り扱いがより容易になる。
【0025】
以下、熱硬化性樹脂(A)の1例としてポリウレタン系熱硬化性樹脂の合成方法について説明する。しかしながら、熱硬化性樹脂(A)は、ポリウレタン系熱硬化性樹脂に限定して解釈されないことはいうまでもない。
【0026】
ポリウレタン系熱硬化性樹脂は、カルボキシル基を有するポリウレタン系熱硬化性樹脂で有ればよい。かかるポリウレタン系熱硬化性樹脂は、まず、カルボキシル基を有するジオール化合物(a)と、カルボキシル基を有しないポリオール化合物(b)と、有機ジイソシアネート(c)とを反応させて、カルボキシル基およびイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得る第一の工程と、次に、得られたカルボキシル基およびイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)とポリアミノ化合物(e)とを反応させる第二の工程とを経て得ることができる。なお、前記第二の工程では、必要に応じて、反応停止剤を使用することもできる。
【0027】
カルボキシル基を有するジオール化合物(a)としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸のようなジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基を有するジオール化合物(a)としては、ジメチロールプロピオン酸およびジメチロールブタン酸が好ましい。これらは、反応性、溶解性が特に高いためである。
【0028】
カルボキシル基を有しないポリオール化合物(b)としては、一般にポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として知られている各種のポリオール類が挙げられる。かかるポリオール類としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエングリコール等が挙げられる。なお、これらのポリオール類は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の単独重合体または共重合体などが挙げられる。
【0030】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、1)飽和または不飽和の低分子ジオール類と、ジカルボン酸類および/またはこれらの無水物とを脱水縮合して得られるポリエステルポリオール、2)環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
飽和または不飽和の低分子ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。
一方、ジカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0031】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1)ジオールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応生成物、2)ジオールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させて得られる反応生成物等を使用することができる。炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2,2,8,10−テトラオキソスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
また、ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールF、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドのようなアルキレンオキサイドを付加したビスフェノール類等が挙げられる。
これらのポリオール類の中でも、カルボキシル基を有しないポリオール化合物(b)としては、ポリエステルポリオールが好ましく、ポリエステルジオールがより好ましい。
【0032】
カルボキシル基を有しないポリオール化合物(b)の数平均分子量(Mn)は、通常は500〜8,000であることが好ましく、1,000〜5,000であることがより好ましい。カルボキシル基を有しないポリオール化合物(b)のMnが500以上であると、ポリウレタンポリウレア樹脂に適度な数のウレタン結合を導入することができ、よって高い接着強度を有する導電性接着剤が得易くなる。また、カルボキシル基を有しないポリオール化合物(b)のMnが8,000以下であると、ウレタン結合同士の間の距離が適切になりやすく、優れた硬化後の耐熱性を有する導電性接着剤が得易くなる。
【0033】
有機ジイソシアネート(c)としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が好ましい。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
なお、これらのジイソシアネートは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、有機ジイソシアネート(c)としては、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0037】
前記第一の工程の反応条件は、イソシアネート基の量が水酸基の量に対して過剰になるように、各成分(a)〜(c)を配合しさえすればよく、その他特に限定はない。具体的には、イソシアネート基/水酸基の当量比が、1.05/1〜3/1であることが好ましく、1.2/1〜2/1であることがより好ましい。また、反応温度は、好ましくは20〜150℃の範囲内、より好ましくは60〜120℃の範囲内で適宜設定される。
【0038】
前記第二の工程で使用するポリアミノ化合物(e)は、鎖延長剤として使用される。ポリアミノ化合物(e)の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、ノルボルナンジアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミノ化合物(e)としては、イソホロンジアミンが好ましい。
【0039】
前記第二の工程で使用可能な反応停止剤としては、例えば、ジ−n−ブチルアミンのようなジアルキルアミン類、ジエタノールアミンのようなジアルカノールアミン類、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール類等が挙げられる。
【0040】
前記第二の工程の反応条件は、ウレタンプレポリマー(d)の両末端に存在する遊離のイソシアネート基を1当量とした場合、アミノ基の当量が0.5〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.05であることがより好ましい。アミノ基の当量が0.5以上であると、ポリウレタン系熱硬化性樹脂の分子量をより大きくすることができる。また、アミノ基の当量が1.3以下であると、導電性接着剤の保存時の条件等によっては、その保存安定性が低下する恐れがある。
なお、アミノ基の当量は、反応停止剤としてアミン類(例えば、ジアルキルアミン類、ジアルカノールアミン類)を使用する場合、ポリアミノ化合物(e)が有するアミノ基と反応停止剤が有するアミノ基との合計当量とされる。
【0041】
ポリウレタン系熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、5,000〜200,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、導電性接着剤の硬化後の耐熱性がより向上する。また、重量平均分子量が200,000以下であると、導電性接着剤の粘度が低下し、取り扱いより容易になる。
【0042】
ポリウレタン系熱硬化性樹脂の合成には、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、カーボネート系溶剤、水等から適宜選択した溶剤を使用することができる。なお、これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル等が挙げられる。
【0044】
前記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサンノン等が挙げられる。
【0045】
前記グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルまたはこれらのモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルまたはこれらのモノエーテル類の酢酸エステル等が挙げられる。
【0046】
前記脂肪族系溶剤としては、例えば、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0047】
前記芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0048】
前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
【0049】
前記カーボネート系溶剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート等が挙げられる。
【0050】
<エポキシ樹脂>
本発明において、エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ樹脂の性状としては、液状および固形状を問わない。
エポキシ樹脂としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂等が好ましい。
【0051】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0052】
前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0053】
前記グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0054】
前記環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、およびテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンが好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いることにより、導電性接着剤の湿熱経時後の抵抗値と接着力がより向上する。
【0055】
導電性接着剤中へのエポキシ樹脂の配合量は、熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、3〜200重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましく、5〜40重量部であることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、3〜200重量部のエポキシ樹脂を配合することで、より高い湿熱経時後の接続信頼性と接着力を有する導電性接着剤が得られる。
【0056】
<導電性フィラー(B)>
本発明の導電性フィラー(B)は、銅を主成分とする導電性フィラーである。導電性フィラーは、導電性接着剤に導電性を付与する機能を有する。導電性フィラー(B)は、銅を主成分としていればよく、その他の元素との合金であってもよい。その他の合金元素としては、亜鉛、マンガン、鉄、鉛、リン、銀、ニッケル、シリカ、錫、アルミニウム、ベリリウム、チタンが挙げられる。
導電性フィラー(B)は、さらに、主成分である銅を核体とし、該核体の表面を導電性物質で被覆した被覆層を有する複合微粒子を使用することもできる。ここで核体となる銅は純粋な銅であってもよく、上記記載した元素との合金化した銅であってもよい。被覆層は、導電性を有する素材であればよく、導電性金属または導電性ポリマーが好ましい。導電性金属は、例えば、金、白金、銀、ニッケル、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。また導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの中でも価格と導電性の面から銀が好ましい。
【0057】
被覆層は、導電性フィラーの核体100重量部に対して、40重量部以下であることが好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がより好ましい。被覆層を40重量部以下にすることで導電性接着剤のコストダウンが可能となる。
本発明の導電性接着剤は、このようなコストダウンが可能となる、導電性物質の被覆量が少ない場合にも、導電性接着剤の粘度安定性が良好であり、かつ、高温高湿環境下に長時間晒されても、導電性が良好であり、シールド特性や金属補強板への接着強度も優れる導電性シートとすることが可能となるものである。
【0058】
導電性フィラーの形状は、所望の導電性が得られればよく、形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状が好ましい。
導電性フィラーは、単独または2種類以上を併用してもよい。
【0059】
導電性フィラーの平均粒子径は、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。平均粒子径が所定の範囲にあることで接続信頼性と粘度安定性を高度に両立できる。さらに、導電性フィラーの沈降を抑制する観点から12μm未満が好ましい。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置によって求めることが出来る。ここで、平均粒子径とは、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。
上記方法以外にも、走査型電子顕微鏡による導電性フィラーの拡大画像(例えば、千〜一万倍)から、約10〜20個程度の粒子を選択し、その粒子の直径を測定することで平均粒子径を測定することもできる。導電性フィラーの長手方向の長さと短手方向の長さとが大きく異なる場合は、長手方向の長さを使用して、導電性フィラーの平均粒子径を算出する。さらに、導電性フィラーが球状以外の形状である場合、導電性フィラーの平均粒子サイズは、導電性フィラーの最大長さを使用して算出する。
【0060】
導電性フィラー(B)において、核体を被覆する場合の、導電性物質の被覆層は、銅を主成分とする核体の少なくとも一部を被覆していればよいが、より優れた導電特性を得るためには、被覆率が高い方が好ましい。導電特性を良好に保つ観点からは、被覆層による平均被覆率を60%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。尚、本明細書における平均被覆率は、後述するESCAによる紛体の測定により求めた値をいう。
【0061】
導電性接着剤中への導電性フィラー(B)の配合量は、熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、200〜1,000重量部であることが好ましく、300〜600重量部であることがより好ましい。熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、200〜1,000重量部の導電性フィラー(B)を配合することで、導電性接着剤の導電性および導電性接着剤層の膜強度がより向上する。
【0062】
本発明の導電性接着剤は、導電性フィラー(B)以外の導電性フィラーを併用することもできる。導電性フィラー(B)以外の導電性フィラーは、例えば、金、白金、銀、ニッケル、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。
【0063】
<硬化剤>
本発明において、硬化剤は、導電性接着剤をシート状に形成して導電性接着剤層を得る際に、架橋反応により導電性接着剤層を半硬化状態とする機能を有するが、かかる機能を有さず、本硬化の際に架橋反応する機能を有していてもよい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、アミン系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等が好ましい。熱硬化性樹脂及び後述するエポキシ樹脂、シランカップリング剤が不飽和結合を有する場合は、過酸化物系硬化剤、アゾ系硬化剤が好ましい。
【0064】
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビス(2−クロロアニリン)、メチレンビス(2−メチル−6−メチルアニリン)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、n−ブチルベンジルフタル酸等が挙げられる。
【0066】
アジリジン系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0067】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト等が挙げられる。
【0068】
過酸化物系硬化剤としては、例えば、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルぺルオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0069】
アゾ系硬化剤としては、例えば、2、2’−アゾビスイソブチルニトリル、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
導電性接着剤中への硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、0.3〜20重量部であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、0.3〜20重量部の硬化剤を配合することで、半硬化後の導電性接着剤層を流動しにくくすることができるため、導電性接着剤層のブロッキングを抑制しやすくなる。
【0070】
<シランカップリング剤>
本発明において、シランカップリング剤は、シランカップリング剤のアルコキシシリル基が架橋反応することで、硬化後の塗膜の架橋密度が増し、導電性接着剤の耐湿熱性を向上することができる。その結果、耐湿熱性試験後においても抵抗値の上昇が抑制され、接着力が低下し難くなる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メタクリル系カップリング剤、チオール系カップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等が好ましい。
特に好ましくは、シランカップリング剤が、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、またはアミノ系シランカップリング剤である場合、導電性接着剤の粘度安定性に優れたものとなる。
【0071】
ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
アミノ系シランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
メタクリル系シランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
チオール系シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0077】
イソシアネート系シランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0078】
導電性接着剤中へのシランカップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜25重量部であることが好ましく、0.5〜15重量部であることがより好ましい。熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜25重量部のシランカップリング剤を配合することで、導電性接着剤の硬化後の耐熱性がさらに向上する。
【0079】
<無機フィラー>
本発明の導電性接着剤は、さらに無機フィラーを含むことが好ましい。無機フィラーを含むことで、導電性接着剤の耐湿熱信頼性及び打ち抜き加工性がより向上する。
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、タルク、モンモロリナイト、カオリン、ベントナイト等の無機化合物が挙げられる。これらの中でも、無機フィラーとしては、シリカ表面のシラノール基とハロゲン化シランとを反応させることにより得られる疎水性シリカが好ましい。疎水性シリカを使用することにより、導電性接着剤の含水率を低減することができる。なお、本発明において、無機フィラーは、導電性フィラーと異なる。
【0080】
無機フィラーの平均粒子径(平均粒子径D50)は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜8μmであることがより好ましい。無機フィラーの平均粒子径が0.01〜10μmであることで、打ち抜き加工性をより向上することができる。なお、無機フィラーの平均粒子サイズも、導電性フィラーと同様の方法で特定することができる。
【0081】
本発明の導電性接着剤には、他の任意成分として、耐熱安定剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤等を配合することができる。例えば、耐熱安定剤を配合すると、樹脂の分解を抑制することができるため、導電性接着剤の硬化後の耐熱性をより向上することができる。具体的には、耐熱安定剤としては、ヒンダートフェノール系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物、イオウ系化合物等が好ましく、ヒンダートフェノール系化合物がより好ましい。
【0082】
導電性接着剤は、これまで説明した材料を混合し攪拌して作成できる。攪拌は、例えばディスパーマット、ホモジナイザー等の公知の攪拌装置を使用できる。
【0083】
<導電性接着シートの製造方法>
本発明の導電性接着シートは、剥離性シートと、この剥離性シートの一方の面側に設けられた導電性接着剤層とを備えるシートである。導電性接着剤層は、例えば、導電性接着剤を剥離性シート上に塗工して形成され、好ましくは半硬化状態となっている。前記導電性接着シートの導電性接着剤層は、例えば、補強板(導電性補強板)と仮貼りした後に、高温加熱により本硬化することで、高い接続信頼性と耐湿熱性が得られる。
【0084】
前記導電性接着剤層は、剥離性シートの剥離面に、例えば、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等の方法で、導電性接着剤を塗工して塗膜を形成した後、通常、40〜150℃の温度で塗膜を加熱することで形成することができる。
【0085】
導電性接着剤層の厚さは、5〜500μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
前記導電性接着剤層は、その表面に剥離性シートを貼り合わせることで、その取り扱いが容易になる。
【0086】
本発明の導電性接着シートは、その導電性接着剤を補強板へ仮貼りして積層体(補強板付き導電接着シート)を作製した後、積層体を打ち抜き加工により所望の形状に加工する場合が多い。この場合、半硬化状態の導電性接着剤層は、所定の伸び率を有することで、積層体は、さらに良好な打ち抜き加工性を発揮する。
【0087】
<配線デバイス>
本発明の配線デバイスは、信号配線を備える配線板と、前記配線板の少なくとも一方の面側に設けられた補強板と、前記配線板と前記補強板とを接合する本発明の導電性接着剤より形成されてなる導電性接着剤層とからなる。
かかる配線デバイスは、例えば、配線板と導電性補強板とを半硬化状態の導電性接着剤層を介して仮貼りして積層体を形成した後、この積層体を高温で加熱することで、導電性接着剤層を本硬化することにより接合層を形成して得ることができる。本硬化により優れた接着強度および耐熱性を有する接合層(導電性接着剤層の硬化物)が得られる。
【0088】
また、本硬化での加熱温度は、130〜210℃であることが好ましく、140〜200℃であることがより好ましい。加熱の際に積層体を加圧することができるが、その圧力は、0.2〜12MPaであることが好ましく、0.3〜10MPaであることがより好ましい。
なお、配線板は、絶縁性基板と、この絶縁性基板上に設けられた信号配線と、この信号配線を覆うように絶縁性基板上に設けられた絶縁性層とを備える。通常、配線デバイスでは、配線板の絶縁性層と補強板とが接合層により接合される。
【0089】
また、配線板は、信号配線に加えて、さらにグランド配線を備えることが好ましい。補強板として、導電性を有する補強板(導電性補強板)を用いて、グランド配線と電気的な接続を取ることで、この導電性補強板をシールド層(電磁波シールド層)として機能させることができる。導電性補強板の構成材料としては、導電性の金属およびその合金が好ましい。導電性補強板の構成材料の具体例としては、例えば、スレンレス、アルミニウム等が挙げられる。
なお、前記電気的な接続を取る方法としては、絶縁性層に貫通孔を形成し、当該貫通孔内に導電性接着剤を充填する方法、本硬化時の加熱圧着により導電性接着剤層を流動させて貫通孔内に充填する方法等が挙げられる。
【0090】
また、配線板は、フレキシブルプリント配線板(FPC)であることが好ましい。配線板がFPCである場合、絶縁性基板および絶縁性の構成材料としては、ポリイミド、液晶ポリマー等の耐熱性を有する樹脂材料が好ましい。一方、配線板がリジッド配線板の場合、絶縁性基板および絶縁性層(絶縁性基材)の構成材料としては、ガラスエポキシが好ましい。このような材料で絶縁性基板および絶縁性層を構成することにより、絶縁性基板および絶縁性層は、高い耐熱性を発揮する。
【0091】
以上説明した本発明の配線デバイスは、タッチパネル式の液晶ディスプレイ等またはこれらを組み込んだ携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等に使用することができる。また、本発明の導電性接着剤および導電性接着シートは、配線デバイスの製造に使用することができる他、導電性が必要な各種用途に使用することができる。好適な例として、電磁波シールドシート用の導電接着剤層、異方導電性シート、静電除去シート、グランド接続用シート、熱伝導性シート、ジャンパー回路用導電シート等が挙げられる。なお、配線板が有する信号配線およびグランド配線は、所望の機能を備える回路を形成していてもよい。
【実施例】
【0092】
次に、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表すものとする。また、「Mn」は数平均分子量を、「Mw」は重量平均分子量を表す。
【0093】
なお、樹脂の酸価、樹脂のガラス転移温度(Tg)、樹脂の重量平均分子量、導電性フィラーの被覆層の被覆率、および導電性フィラーの平均粒子径は以下の方法で測定した。
【0094】
<酸価の測定>
熱硬化性樹脂1gをメチルエチルケトン40mlに溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT−510」にビュレットとして同社製「APB−510−20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.1mol/Lのエタノール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0095】
<ガラス転移温度(Tg)>
Tgの測定は、示差走査熱量測定(メトラー・トレド社製「DSC−1」)によって測定した。
【0096】
<重量平均分子量の測定方法(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定で求めたポリスチレン換算の数値である。測定条件は、以下のとおりである。
装置:Shodex GPC System−21(昭和電工社製)
カラム:1本のShodex KF−802(昭和電工社製)と、1本のShodex KF−803L(昭和電工社製)と、1本のShodex KF−805L(昭和電工社製)とを直列に連結した連結カラム
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
温度:40℃
試料濃度:0.2%
試料注入量:100μL
【0097】
<導電性フィラーの被覆層の被覆率の測定方法>
導電性フィラーの被覆層の被覆率の測定方法として、銅からなる核体に対し、被覆層を銀とした場合における、銀の被覆率を例に示す。
AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)、X線源:Dual(Mg)15kV,10mA Pass energy 80eV、Step:0.1 eV/Step、Speed:120秒/元素、Dell:300、積算回数:8の条件でAg3d:2とCu2P:1のピーク面積から銀と銅の質量濃度を求め、銀の質量濃度の割合を被覆率とした。
導電性フィラーの被覆層の被覆率は、X線光電子分光分析(ESCA)で測定した。核体に銅、被覆層に銀を使用した導電性フィラー測定を例に説明する。まず専用台座に両面粘着テープを貼り、導電性フィラーを均一に付着させ、余分をエアーで除去したものを測定試料とした。測定試料を下記条件で、3箇所場所を変えて測定した。
装置:AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)
試料チャンバー内真空度:1×10−8Torr以下
X線源:Dual(Mg)15kV,5mA Pass energy 80eV
Step:0.1 eV/Step
Speed:120秒/元素
Dell:300、積算回数:5
光電子取り出し角:試料表面に対して90度
結合エネルギー:C1s主ピークを284.6eVとしてシフト補正
Cu(2p)ピーク領域:926〜936eV
Ag(3d)ピーク領域:376〜362eV
上記ピーク領域に出現したピークをスムージング処理し、直線法にてベースラインを引き、銀と銅の原子濃度「Atomic Conc」を求め、下記式にて算出した3箇所の値の平均値を導電性フィラーの被覆率とした。
被覆率=[銀の原子濃度]/([銅の原子濃度]+[銀の原子濃度])×100
尚、被覆層をニッケルとした場合、ピーク領域はNi(2p):848〜870eVとした。
【0098】
<導電性フィラーのD50平均粒子径の測定方法>
D50平均粒子径はレーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性フィラーを測定した。なお、屈折率の設定は1.6とした。
【0099】
以下、実施例で使用した材料を示す。
【0100】
<熱硬化性樹脂>
(熱硬化性樹脂1)
[合成例1:ポリカーボネート系ポリウレタンの合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、ポリカーボネート系ジオール「ダイセル社製、プラクセルCD220」194部、ジメチロールブタン酸7部、イソホロンジイソシアネート42部、及びトルエン70部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン250部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン6部、ジ−n−ブチルアミン0.6部、2−プロノール113部、及びトルエン185部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液506部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=50000、Tgは3℃、酸価7mgKOH/gであるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン、2−プロパノールを加えて、固形分30%である熱硬化性樹脂1(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)溶液を得た。
【0101】
(熱硬化性樹脂2)
[合成例2:ポリエステル系ポリウレタンの合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、ポリエステル系ジオール「クラレ株式会社製、P−2011」195部、ジメチロールブタン酸7部、イソホロンジイソシアネート40部、及びトルエン70部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン250部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン6部、ジ−n−ブチルアミン0.6部、2−プロノール113部、及びトルエン185部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液506部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=43,000、Tgは−5℃、酸価10mgKOH/gであるポリウレタン系熱硬化性樹脂の溶液を得た。これに、トルエン、2−プロパノールを加えて、固形分30%である熱硬化性樹脂2(ポリエステル系ポリウレタン樹脂)溶液を得た。
【0102】
(熱硬化性樹脂3)
[合成例3:ポリエーテル系ポリウレタンの合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、ポリエーテル系ジオール「保土ヶ谷工業株式会社製、PTG−2000sn」196部、ジメチロールブタン酸6部、イソホロンジイソシアネート41部、及びトルエン70部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン250部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン6部、ジ−n−ブチルアミン0.6部、2−プロノール113部、及びトルエン185部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液506部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=70000、Tgは−10℃、酸価15mgKOH/gであるポリエーテル系ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン、2−プロパノールを加えて、固形分30%である熱硬化性樹脂3(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂)溶液を得た。
【0103】
(熱硬化性樹脂4)
[合成例4:ビニル系ポリウレタンの合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、ポリブタジエン系ジオール「日本宗達株式会社製、G−2000」196部、ジメチロールブタン酸6部、イソホロンジイソシアネート41部、及びトルエン70部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン250部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン6部、ジ−n−ブチルアミン0.6部、2−プロノール113部、及びトルエン185部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液506部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=30000、Tgは5℃、酸価13mgKOH/gであるポリブタジエン系ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン、2−プロパノールを加えて、固形分30%である熱硬化性樹脂4(ポリブタジエン系ポリウレタン樹脂)溶液を得た。
【0104】
(熱硬化性樹脂5)
[合成例5:ポリエステルの合成]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸ジメチル184.4部、ネオペンチルグリコール94.8部、エチレングリコール94.2部、2−メチル−1,3−プロパンジオール54.7部及び酢酸亜鉛0.035部を仕込んだ。原料を加熱溶融して撹拌できるようになったら撹拌を開始して、留出するメタノールを常圧下で反応系外に除きながら170℃から220℃まで3時間かけて徐々に昇温し、220℃で1時間保持した。内温を一旦170℃まで冷却し、アジピン酸92.6部、イソフタル酸65.8部、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸113.6部を加え、留出する水を常圧下で反応系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温し、さらに240℃で保持して、生成物の酸価が15mgKOH/gになるまで反応を続けた。次に、装置を真空減圧装置に替えて、テトラブチルチタネート0.06部を加え、240℃の温度で2トールの減圧下で6時間反応を続けた後、ポリフッ化エチレン樹脂製の容器に取り出した。この樹脂の数平均分子量は18000、ガラス転移温度は27℃であった。続いて、得られたポリエステル樹脂100部に対して、トルエン100部を加えて溶解した。次いでそれぞれのフラスコにエチレングリコールビストリメリテート二無水物を5部添加し、100℃の温度で5時間反応させ、Mw=50000、酸価19mgKOH/gであるポリエステル樹脂の溶液を得た。これにトルエンを加え希釈して、固形分が30%である熱硬化性樹脂5(カルボキシル基を有するポリエステル樹脂)溶液を得た。
【0105】
(熱硬化性樹脂6)
[合成例6:ポリアミドの合成]
攪拌機及び還流脱水装置を備えたフラスコに、ジカルボン酸成分としてダイマー酸100重量部、ジアミン成分としてブタンジアミン7.62重量部、ピペラジン7.44重量部を仕込んだ。内温25℃から115℃/時間の割合で230℃にまで昇温し、その温度で6時間反応を継続したのち冷却を行い、熱硬化性樹脂6(ポリアミド樹脂)を得た。なお、ポリアミド樹脂の酸価は4(mgKOH/g)、重量平均分子量は66000であった。
【0106】
<その他の樹脂>
(その他の樹脂1)
[合成例7:カルボン酸レス−ポリエステル系ポリウレタンの合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンカーボネートジオールとから得られるMn=981であるジオール432部、イソホロンジイソシアネート137部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン25部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液818部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=100000、酸価0mgKOH/gであるポリエステル系ウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるその他の樹脂1(ポリエステル系ウレタン樹脂)溶液を得た。
【0107】
合成した熱硬化性樹脂、およびその他の樹脂の特性を表1にまとめた。
【表1】
【0108】
<導電性フィラー>
実施例において用いた導電性フィラーを下記に記す。
【表2】
【0109】
熱硬化性樹脂および導電性フィラー以外に使用した材料はそれぞれ以下の通りである。
エポキシ樹脂1:エポキシ当量190g/eqのビスフェノールAタイプエポキシ(「アデカレジンEP−4100」、ADEKA社製)
エポキシ樹脂2:エポキシ当量150g/eqの3官能反応型エポキシ(「ED−505」、ADEKA社製)
硬化剤1:トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート
硬化剤2:クメンハイドロパーオキサイド
エポキシ系シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
アミン系シランカップリング剤:n−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
ビニル系シランカップリング剤:ビニルトリエトキシシラン
メタクリル系シランカップリング剤:3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン
チオール系シランカップリング剤:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
無機フィラー1:平均粒子径1.2μmの市販疎水性シリカ
無機フィラー2:平均粒子径3.8μmの市販超微粒子タルク
【0110】
[実施例1]
熱硬化性樹脂1(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)(固形分)100部と、エポキシ樹脂2を30部と、導電性フィラー5を350部と、硬化剤1を2部と、エポキシ系シランカップリング剤を3部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45重量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(重量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性接着剤を得た。
この導電性接着剤を乾燥厚みが60μmになるようにドクターブレードを使用して剥離性シートに塗工し、100℃で2分間乾燥することで導電性接着シートを得た。
【0111】
[実施例2〜25および比較例1〜4]
各成分およびその配合量(重量部)を表3〜5に示すように変更した以外は、実施例1
と同様にして、導電性接着剤および導電性接着シートを作成した。
なお、表3〜5に示す樹脂の配合量は固形分重量である。
ただし、実施例1〜21、および25は参考例である。
【0112】
得られた導電性接着剤、および導電性接着シートについて、下記物性を評価した。その結果を表3〜5に示す。
【0113】
<導電性接着剤の粘度安定性>
導電性接着シートは、導電性接着剤を塗工して形成するが、導電性接着剤の粘度安定化が不十分である場合、塗工中に導電性接着剤が急激に増粘し均一な膜厚の導電性接着シートを得ることができない。
作製直後の導電性接着剤を140mlマヨビンに仕込み、「VISCOMERER TVB−10M」東機産業社製で6rpmにおける初期粘度を測定した。その後、上記マヨビンを室温25度の恒温環境にてミックスローターで攪拌しながら24時間放置した。24時間後の導電性接着剤の粘度を経時粘度として、初期と同じ条件で粘度を測定した。下記式にて増粘率を算出した。
増粘率(%)=経時粘度/初期粘度×100
評価基準は以下の通りである。

◎:増粘率が110%未満。良好な結果である。
○:増粘率が110%以上、130%未満。実用上問題ない。
△:増粘率が130%以上、150%未満。実用上問題ない。
×:増粘率が150%以上。実用不可
【0114】
<接続信頼性(段差37.5μm)>
金属補強板が電磁波シールド性を発現するためには金属補強板が導電性接着剤層を介してグランド回路に接続し導通パスが確保されていることが重要である。グランド回路上に設置されたカバーレイ層のスルーホールから導電性接着剤層が充填され接着することで導通が確保されるが、スルーホールへの埋め込み性と接着性が十分でないと、電磁波シールド性、つまり初期の接続信頼性が悪化してしまう。
幅15mm・長さ20mmの導電性接着シートと、幅20mm・長さ20mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)を重ねて、ロールラミネーターで90℃、3Kgf/cm、1M/minの条件で貼り付けて試料を得た。
図1(1)の平面図を示して説明すると試料から剥離性フィルムを剥がし、露出した面を別に作製したフレキシブルプリント配線板(厚み25μmのポリイミドフィルム11上に、互いに電気的に接続されていない厚み18μmの銅箔回路12A、および銅箔回路12Bが形成されており、銅箔回路12A上に、接着剤付きの、厚み37.5μm、直径1.2mmのスルーホール14を有するカバーフィルム13が積層された配線板)にロールラミネーターで90℃、3Kgf/cm、1M/minの条件で貼り付けた。
そして、これらを170℃、2MPa、5分の条件で圧着をした後、160℃の電気オーブンで60分間加熱を行なうことで測定試料を得た。
次いで、図1(4)の平面図に示す12A−12B間の接続信頼性を、抵抗値測定器とBSPプローブを用いて接続抵抗値を測定することにより評価した。なお、図1(2)は、図1(1)のD−D’断面図、図1(3)は図1(1)のC−C’断面図である。同様に図1(5)は、図1(4)のD−D’断面図、図1(6)は図1(4)のC−C’断面図である。
評価基準は以下の通りである。

◎:接続抵抗値が20mΩ/□未満。良好な結果である。
○:接続抵抗値が20mΩ/□以上、100mΩ/□未満。実用上問題ない。
△:接続抵抗値が100mΩ/□以上、300mΩ/□未満。実用上問題ない。
×:接続抵抗値が300mΩ/□以上。実用不可
【0115】
<接続信頼性(段差60μm)>
図1(1)のカバーフィルム13の厚みを60μmに変えた以外は、接続抵抗値(段差37.5μm)と同様の方法、評価基準で接続信頼性を評価した。
【0116】
<耐湿熱性試験後の接続信頼性>
FPCが組み込まれた電子部品は多様な環境下で使用される。耐湿熱経時後の接続信頼性が十分でないと、たとえば高温多湿な環境で長時間使用された際に、電磁波シールド性が悪化し、貼り付けた信号回路の周波数特性が悪化してしまう。
接続信頼性(段差37.5μm)の試験で作成した測定試料を85℃85%のオーブンに500時間投入した。その後、図1(4)の平面図に示す12A−12B間の接続信頼性(湿熱経時後の接続信頼性)を、抵抗値測定器とBSPプローブを用いて抵抗値を測定することにより耐湿熱経時後の接続信頼性を評価した。
評価基準は以下の通りである。

◎:接続抵抗値が20mΩ/□未満。良好な結果である。
○:接続抵抗値が20mΩ/□以上、100mΩ/□未満。実用上問題ない。
△:接続抵抗値が100mΩ/□以上、300mΩ/□未満。実用上問題ない。
×:接続抵抗値が300mΩ/□以上。実用不可
【0117】
<耐湿熱性試験後の接着力>
導電性接着シートを幅25mm×長さ100mmの大きさに切断した後、剥離性シートを剥がして導電性接着剤層を得た。この導電性接着剤層を、厚さ40μmの銅張積層板(「エスパーフレックス」、住友金属鉱山社製)のポリイミド面と、厚さ200μmのステンレス板(SUS304)との間に挟んで積層体を形成した。その後、得られた積層体を170℃、2MPa、5分の条件で圧着した後、160℃の電気オーブンで60分間加熱した。これにより、「銅張積層板/導電性接着剤層の硬化物/SUS板」の積層体を得た。この積層体を85℃85%のオーブンに500時間投入した後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、引っ張り速度50mm/minでTピール剥離試験を行い、その接着強度(N/cm)を測定した。

◎:接着強度が10N/cm以上。良好な結果である。
○:接着強度が10N/cm未満、7N/cm以上。実用上問題ない。
△:接着強度が7N/cm未満、4N/cm以上。実用上問題ない。
×:接着強度が4N/cm未満。実用不可。
【0118】
<打ち抜き加工性>
実施例及び比較例で得られた導電性接着シートと、SUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)を重ねて、ロールラミネーターで90℃、3Kgf/cm2、1M/minの条件で貼り付けて試料を得た。
この試料を10mm×30mmのサイズに100ピース抜き加工機にて型抜きし、不良品が何ピースあるかを下記の通り評価した。なお、不良品とは、型抜きの形に加工された後に、部分的に抜けていないもの、SUS板と導電性接着剤層が剥がれたもの、および導電性接着剤層を打ち抜いた端部の形状が歪であるもののことである。

◎・・・10%未満
○・・・10%以上15%未満
△・・・15%以上25%未満
×・・・25%以上
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
表3〜5の結果から、実施例の導電性接着剤により、銅を主成分とする導電性フィラーを用いた場合にも、コストダウンが可能でありながら、導電性接着剤の粘度が安定であり、長期にわたって湿熱環境に晒された後においても良好な接続信頼性と接着力を有し、グランド配線基板スルーホールの段差が高い回路でも接続信頼性が良好な導電性接着層、および配線デバイスを提供可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0123】
11 ポリイミドフィルム
12A、12B 銅箔回路
13 カバーフィルム
14 スルーホール
15a 金属補強板
15b 導電性接着剤層

【要約】
【課題】銅を主成分とする導電性フィラーを用い、コストダウンが可能でありながら、導電性接着剤の粘度が安定であり、長期にわたって湿熱環境に晒された後においても良好な接続信頼性と接着力を有し、グランド配線基板スルーホールの段差が高い回路でも接続信頼性が良好である、導電性接着剤、導電性接着シート、および配線デバイスを提供することにある。
【解決手段】カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂(A)、エポキシ樹脂、銅を主成分とする導電性フィラー(B)、硬化剤、およびシランカップリング剤を含有することを特徴とする導電性接着剤によって解決される。
【選択図】図1
図1