(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【0016】
図1に示す車両1は、ハイブリッド車両である。
図1に示すように、車両1には、駆動伝達機構2を介して車輪3に駆動力を伝達する電動機としてのモータ4が搭載されている。車両1には、このモータ4に電力を供給する高圧バッテリ5が搭載され、高圧バッテリ5は外部からの充電が可能となっている。
【0017】
車両1には内燃機関であるエンジン6が搭載され、エンジン6の出力系7はクラッチ8を介して駆動伝達機構2に繋げられている。クラッチ8を構成する係合部材80は、エンジン6側に位置する第1クラッチ板(第1係合部材)81と、モータ4側に位置する第2クラッチ板(第2係合部材)82とからなる。エンジン6からの駆動力は、クラッチ8及び駆動伝達機構2を介して車輪3に伝達される。この駆動力の伝達経路を駆動力伝達経路とする。エンジン6の駆動によりジェネレータ9が作動するとジェネレータ9で発電された電力はインバータ10を介してモータ4及び高圧バッテリ5に適宜供給される。
【0018】
上述した車両1は、通常時は、クラッチ8は切断された状態であり、出力系7と駆動伝達機構2との間で動力が伝わらない状態にされ、モータ4の駆動により走行する。即ち、車両1は第1走行モード(EV走行モード及びシリーズ走行モード)による走行モードを選択する。ここで、第1走行モードにおけるモータ4による回転力を駆動伝達機構2に伝達する経路を回転力伝達経路とする。また、車両1は、高速走行等でモータ4の駆動力では必要な駆動出力が得られなくなる場合、クラッチ8が接続され、エンジン6の駆動力が駆動伝達機構2に伝達され、エンジン6の駆動力が付加されて(もしくは、エンジン6単独の駆動力で)走行する。即ち、車両1は第2走行モード(パラレル走行モード)による走行モードを選択する。
【0019】
車両1は、制御部11を備える。制御部11は、車両の統合制御を行うものである。制御部11は、上述したようなクラッチ8の状態を切換えるためのクラッチ制御装置としてのクラッチ制御部12を備える。クラッチ制御部12は、車両がシリーズ走行モード又はEV走行モード(第1走行モード)で走行中にパラレル走行モード(第2走行モード)に切り換える必要がある場合に、クラッチ8を接続するためのクラッチ制御を行う。
【0020】
クラッチ制御部12は、
図2に示すように、クラッチ回転制御部21と、クラッチ係合制御部22と、クラッチモード制御部23とを備える。また、車両1には、このクラッチ制御部12によるクラッチ制御に用いられる車速検出部31、モータ回転数検出部32、エンジン回転数検出部33がそれぞれ設けられている。各検出部では、各種センサから検出された検出結果に基づいて車速、モータ回転数、エンジン回転数を検出する。以下各制御部について詳細に説明する。
【0021】
クラッチ制御部12は、詳しくは後述するクラッチ係合禁止モードにない場合、クラッチ回転制御部21を作動させることができる。クラッチ回転制御部21は、車速検出部31から得られた車速が所定の値以上となった場合(シリーズ走行モード(若しくはEV走行モード)からパラレル走行モードに移行する場合)には、モータ側の第2係合部材の回転数にエンジン側の第1係合部材の回転数を合わせるように制御する。そして、モータ回転数検出部32部及びエンジン回転数検出部33から得た回転数から、第1係合部材及び第2係合部材の回転が同期したかどうかを判定する。回転数の同期は、モータ側の第2係合部材の回転数に対してエンジン側の第1係合部材の回転数が同一(若しくは略同一)となるように、ジェネレータによりエンジンを駆動することで行う。クラッチ回転制御部21は、第1係合部材及び第2係合部材の回転数が同期すると、クラッチ係合指示信号をクラッチ係合制御部22へ入力する。
【0022】
クラッチ係合制御部22は、第1係合部材及び第2係合部材の回転が同期してクラッチ係合指示信号が入力されると、クラッチソレノイドバルブを駆動することによりクラッチ油圧を上昇させて係合部材を軸方向に移動させる。クラッチ係合制御部22は、係合部材の移動開始後、予め設定された推定時間経過時に第1係合部材及び第2係合部材の回転数差が所定の値以内にあるか否かによって、係合できたかどうかを判定する。即ち、推定時間後に回転数差が所定の値以内であれば係合できたと判定し、推定時間後に回転数差が所定の値より大きければ第1係合部材と第2係合部材とが係合できなかったと判定する。
【0023】
具体的には、第1係合部材と第2係合部材との回転数差は、動力源をエンジンに切り換えた際に、係合部材の係合が完了して第1係合部材及び第2係合部材が完全に直結した状態であるので、第1係合部材及び第2係合部材の回転数に差は生じない。他方で、動力源をエンジンに切り換えた際に、係合部材が係合されていない状態(半クラッチ状態)になると、エンジン側の回転にスリップが発生して回転数が上昇する。これにより第1係合部材及び第2係合部材の回転数に差が生じるものである。なお、これらの回転数は、モータ回転数検出部及びエンジン回転数検出部から得る。
【0024】
また、この推定時間は、クラッチ係合制御部22が予め有するマップ、又はテーブルからクラッチ係合制御部22が取得する。該マップ又はテーブルは、後述するクラッチ係合不能判定回数と推定時間との関係を示すものである。該マップ又はテーブルでは、クラッチ係合不能判定回数が多くなるほど推定時間は長くなる。
【0025】
クラッチ係合制御部22は係合部材が接合(係合)できたと判定した場合、クラッチの接合を保持して車両はパラレル走行モードに切り換えられて走行を続ける。クラッチ係合制御部22は係合部材80が接合(係合)できなかったと判断した場合、クラッチ係合制御部22は、クラッチの係合制御を停止し、係合部材を解放する。即ち、車両はパラレル走行モードに切り換えられずシリーズ走行モード(若しくはEV走行モード)で走行することとなる。
【0026】
クラッチモード制御部23は、クラッチ係合制御部22により係合部材80が係合できなかったと判断した場合、判定フラグをセットすると共に、クラッチ係合不能判定回数をカウントアップする。即ち、クラッチ係合不能判定回数をNからN+1へ増加させる。そして、クラッチモード制御部23は、フラグが設定されている間は、車両が停止するまでクラッチ係合禁止モードをクラッチ制御部12に対して送出し続ける。走行中に連続してリトライすると再度係合が失敗する可能性もあるため、クラッチオイルの粘性が回復するまでに十分な時間を持たせるためである。クラッチ制御部12は、上述のようにクラッチ係合禁止モード中は、パラレル走行モードとなる運転状態となったとしても、クラッチ係合を行わない。そして、車両が停止すると、クラッチモード制御部23は、フラグを解除してクラッチ係合許可モードとなる。クラッチ係合許可モードとなると、クラッチ制御部12は、車両がシリーズ走行モード又はEV走行モードで走行中にパラレル走行モードに切り換えるためにクラッチ係合を再度行うことが可能となる。
【0027】
そして、クラッチ係合を再度行う場合には、上述したようにクラッチ回転制御部21により各係合部材の回転数が同期され、その後クラッチ係合制御部22によりクラッチの係合が行われる。
【0028】
クラッチ係合制御部22で設定される推定時間は、上述のようにクラッチ係合制御部22が予め有するマップにより設定される。ここで、前回の制御におけるクラッチ係合不能判定回数(N)よりも今回の制御におけるクラッチ係合不能判定回数(N+1)は1多くなっていることから、今回の制御における推定時間は、前回の制御における推定時間よりも長い。クラッチ係合制御部22は、前回のクラッチ係合判定時よりもクラッチの駆動時間が長くなるのでクラッチの油温が上がることにより、係合部材が係合することができれば、係合部材の回転数が同一となる。これによりクラッチ係合制御部22は、クラッチが係合されたと判断する。車両はパラレル走行モードに切り替わる。
【0029】
他方で、クラッチ係合制御部22は再び回転数が同一にならなかったら、即ち係合部材が係合できなかった場合には、再度係合部材の係合はできなかったものとして上記と同様の処理を行う。そして、クラッチ係合制御部22では、クラッチ係合不能判定回数が増えるにつれて推定時間は長くなる。
【0030】
本実施形態においては、クラッチの係合部材が係合されたか否かを、判定開始から(即ち係合部材が移動を開始してから)所定の推定時間経過時間経過後(所定接合時間経過後)における各係合部材の回転数差により判定している。このように判定することで、圧力センサがなくても、簡易にかつ正確にクラッチが接続できたかどうか判定を行うことができる。さらに、この推定時間をクラッチ係合不能判定回数に応じて長くすることで、クラッチの係合部材の係合を行うことができる。即ち、故障ではないがクラッチ油の温度が低くてクラッチが接続できなった場合に何回もリトライしている間に油の温度が上昇して係合部材が係合しやすくなる。これにより、クラッチ油温が低い等の一時的な要因によるクラッチ係合不能状態を脱することができ、クラッチを接続することができ、運転者の要求に応じた適切な走行モードで走行することができる。しかも、この場合に予め長く推定時間を設定すると、運転者の要求に対する車両の反応に影響するので、クラッチの状態に応じて推定時間を長くすることで、運転者の要求に対しても即時に応答することができる。
【0031】
なお、クラッチ係合不能判定回数が所定値を超えると、クラッチ制御部12はクラッチが故障していると判定する。
【0032】
かかるクラッチ制御部による制御について、
図3、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0033】
クラッチ制御部は、上述したクラッチ係合許可モードである場合に、フローチャートに示すような制御を行う。
【0034】
初めに、ステップS1で、クラッチ制御部は、運転者が要求する車速がシリーズ走行モード(もしくはEV走行モード)からパラレル走行に切り換えるべきパラレル判定車速よりも早いかどうかを判断する。運転者が要求する車速がパラレル判定車速以上の車速である場合には(YES)、ステップS2へ進む。運転者が要求する車速がパラレル判定車速よりも遅い場合(NO)、車両はそのままシリーズ走行モード(もしくはEV走行モード)を維持する。
【0035】
ステップS2では、パラレル走行モードへ移行すべく、クラッチの係合部材の回転の同期を開始する。この場合、第1係合部材(エンジン側の係合部材)の回転を、ジェネレータにより、第2係合部材(モータ側の係合部材の回転数)の回転に同期させるように上昇させる。
【0036】
ステップS3では、これにより第1係合部材と第2係合部材の回転がそれぞれ同期しているかどうかを判定する。回転数がそれぞれ所定範囲内であれば(YES)、ステップS4へ進む。回転数が未だ所定範囲内になければ、ステップS2へ戻る。
【0037】
ステップS4では、クラッチ係合指示信号が入力され、クラッチ係合制御部が制御を開始する。即ち、クラッチ係合制御部が係合部材80に油圧をかけて係合部材に対する圧力を高めて係合を開始する。ステップS5へ進む。
【0038】
ステップS5では、クラッチ係合制御部22は、クラッチ係合判定制御を行う。即ち、推定時間の測定を開始する。ステップS6へ進む。なお、ステップS4とステップS5とは同時に行われても良い。
【0039】
ステップS6では、係合部材の係合判定を行う。即ち、係合開始後、予め設定された推定時間において第1係合部材及び第2係合部材の回転数が所定の値以内にあるか否かによって、係合できたかどうかを判定する。推定時間後に回転数が所定の値以内であれば(YES)、係合できたと判定して、車両はそのままの状態を維持する。ステップS10へ進む。
【0040】
クラッチ係合制御部22は、推定時間後に回転数が所定の値より大きければ(NO)、係合部材が係合できなかったと判定する。係合部材が係合できずクラッチの接続が完了していないことで半クラッチ状態となり、回転数差が生じているからである。ステップS7へ進む。
【0041】
ステップS7では、クラッチ係合制御部がクラッチの係合制御を停止し、係合部材を解放する。ステップS8へ進む。
【0042】
ステップS8ではクラッチモード制御部がクラッチ係合不能判定フラグを設定する。即ちフラグ=1となる。ステップS9へ進む。
【0043】
ステップS9では、クラッチモード制御部がクラッチ係合不能判定回数をカウントアップする(N回からN+1回となる)。これらの状態で、車両はパラレル走行モードに切り換えられずシリーズ走行モード(若しくはEV走行モード)で走行する。ステップS11へ進む。
【0044】
ステップS10ではカウントアップされたクラッチ係合不能判定回数をリセットする。パラレル走行モードへ移行する。
【0045】
以上のステップS1〜S10まではシリーズ走行モードからパラレル走行モード移行時の制御であり、以下のステップS11〜ステップS15までは走行中のクラッチ係合モード判定の制御である。
【0046】
ステップS11では、クラッチモード制御部によりクラッチ係合不能判定フラグが設定されている、即ちフラグ=1であるかどうかを判断する。フラグ=1である場合には(YES)、ステップS12へ進む。フラグ=1でない場合(NO)には、ステップS15へ進む。
【0047】
ステップS12では、クラッチモード制御部によりクラッチ係合禁止モードを設定する。ステップS13へ進む。
【0048】
ステップS13では、クラッチモード制御部により車両が停止しているかどうかを判定する。車両が停止している場合(YES)、ステップS14へ進む。車両が停止していない場合(NO)、ステップS11へ戻る。即ち、車両が停止するまでの間、クラッチ係合禁止モードは続く。
【0049】
ステップS14では、車両が停止した場合にクラッチ係合不能判定フラグを解除する。ステップS15へ進む。
【0050】
ステップS15では、クラッチモード制御部がクラッチ係合許可モードに設定する。これにより、車両はクラッチ係合許可モードになるので、シリーズ走行モード(若しくはEV走行モード)になった場合に、運転者が要求する車速がシリーズ走行モード(もしくはEV走行モード)からパラレル走行に切り換えるべきパラレル判定車速よりも早ければ、クラッチの係合を行うことができる。
【0051】
即ち、クラッチモード制御部がクラッチ係合禁止モードを設定すると、車両が停止するまでの間、クラッチ制御部はクラッチの接続を行わない。そして、クラッチモード制御部が車両が停止した後に再度クラッチ係合許可モードとすると、クラッチ制御部はクラッチの接続を行う。そして、その場合には、クラッチの係合判定において、推定時間を前回の推定よりも長くすることで、よりクラッチを接続させやすくしている。
【0052】
このように、本実施形態では、クラッチ制御部はこのようなフローチャートに従ってクラッチの係合制御を行っている。この制御においてクラッチの係合部材が係合されたか否かを、判定開始から(即ち係合部材が移動を開始してから)所定の推定時間経過後(所定接合時間経過時後)における各係合部材の回転数差により判定している。このように判定することで、圧力センサがなくても、簡易にかつ正確にクラッチが接続できたかどうか判定を行うことができる。さらに、この推定時間をクラッチ係合不能判定回数に応じて長くすることで、クラッチの係合部材の係合を行うことができる。即ち、故障ではないがクラッチ油の温度が低くてクラッチが接続できなった場合に何回もリトライしている間に油の温度が上昇して係合部材が係合しやすくなる。これにより、クラッチ油温が低い等の一時的な要因によるクラッチ係合不能状態を脱することができ、クラッチを接続することができ、運転者の要求に応じた適切な走行モードで走行することができる。しかも、この場合に予め長く推定時間を設定すると、運転者の要求に対する車両の反応に影響するので、クラッチの状態に応じて推定時間を長くすることで、運転者の要求に対しても即時に応答することができる。
【0053】
次に、
図5及び
図6を用いて、クラッチ制御部による制御についてタイムチャートにより詳細に説明する。
【0054】
初めに、クラッチの接続が成功する場合について
図5を用いて説明する。
【0055】
t=t0〜t1(t1除く)のシリーズ走行中は、クラッチは解放された状態である。t=t0では、クラッチの係合指示信号は0であり、また、クラッチ圧も0である。なお、クラッチに圧力センサはないのでこのクラッチ圧は推定によるものである。この時はエンジンのトルクは大きいが、ジェネレータのトルクがマイナスであることからもわかるようにエンジンの動力は発電に用いられている。回転数は、シリーズ走行中でありモータで走行していることからモータの回転数(Nm)が高く、発電を行っているエンジンの回転数(Ne)は低い。
【0056】
t=t1で、車両の要求速度がパラレル走行速度以上となり、クラッチ制御部による制御が始まる。
【0057】
t=t1〜t2(t2除く)では、クラッチ回転数制御部により、エンジンの回転数がモータの回転数に同期するように上昇する。
【0058】
t=t2でエンジンの回転数がモータの回転数に同期し、クラッチ回転数制御部が、回転数が同期したと判定する。これにより、t=t3までの間にクラッチ係合指示信号がクラッチ係合制御部に入力される。
【0059】
t=t3で、クラッチ係合指示信号がクラッチ係合制御部に入力されたことで、クラッチ係合制御部によるクラッチ係合制御が開始され、同時に推定時間の測定が開始される。クラッチ係合制御が開始されると、クラッチ圧の上昇が始まり、第1係合部材及び第2係合部材が軸方向に移動する。t=t4でクラッチが接触して、クラッチの係合が開始される。クラッチにかかる圧力はここからより増大する。
【0060】
t=t5で、車両が駆動力源をモータからエンジンへ切り換えるため、モータのトルクとエンジンのトルクとの逆転が開始される。
【0061】
t=t6で、モータのトルクとエンジンのトルクとが逆転した状態で一定値となる。そのままの状態でt=t7まで進む。このt=t5〜t7(t7除く)の間、モータとエンジンの各回転数は同一である。
【0062】
t=t7では、クラッチ係合制御部が所定の推定時間になったとして、検出されたモータの回転数とエンジンの回転数とを比較する。これらの値が所定値以内であるので係合部材が係合されたとして、車両は実質的にパラレル走行モードに移行される。
【0063】
このようにクラッチの接続が成功した場合には、エンジンに動力源を切り換えた場合に、エンジンによる回転とモータによる回転とが同期しているので、エンジンの回転のスリップが生じないため、推定時間における回転数はほぼ同一であり、所定の範囲内に回転数が含まれている。
【0064】
次に、クラッチの接続が失敗する場合について
図6を用いて説明する。
【0065】
t=t0〜t3(t3除く)まで、上述したクラッチの接続が成功する場合と同様であるので省略する。
【0066】
t=t3で、クラッチ係合制御部によるクラッチ係合制御が開始され、同時に推定時間の測定が開始される。クラッチ係合制御が開始されると、クラッチ圧の上昇が始まり、各係合部材が軸方向に移動することで、クラッチの係合が行われる。
【0067】
t=t3〜t5(t5除く)までの間、
図5に示す場合と異なり、係合部材が係合しないのでクラッチ圧は当初と同様に徐々に高まる。
【0068】
t=t5で、駆動源をエンジンに切り換えるが、クラッチ係合が完了していないため、半クラッチ状態となり、エンジン側の回転数のスリップが生じ始める。
【0069】
t=t6で、モータのトルクとエンジンのトルクとが逆転した状態で一定値となるが回転数差は徐々に時間経過に伴いどんどん大きくなる。なお、このt=t5〜t6についても、クラッチ圧は徐々に上昇するのみである。
【0070】
t=t7では、クラッチ係合制御部が所定の推定時間になったとして、検出されたモータの回転数とエンジンの回転数とを比較する。これらの値が所定値以上であるので、係合部材が完全係合されなかったとしてクラッチ係合指示がオフとなり、クラッチ圧も解除される。
【0071】
このようにクラッチの接続が失敗した場合には、エンジンに動力源を切り換えた場合にエンジンの回転がスリップしてしまうため、推定時間におけるエンジンの回転数とモータの回転数との差が大きく、回転数差は所定の範囲内になく、係合部材が係合されなかったとして判定されるのである。
【0072】
そして、次回クラッチ係合の判定を行う場合には、この判定時の推定時間をt=t3〜t7よりも長い推定時間として、より長い時間クラッチの係合を行い、クラッチの係合部材を係合させやすくしてクラッチを接続させる。
【0073】
このように、本実施形態では、クラッチ制御部による制御によって、クラッチの係合部材が係合されたか否かを、圧力センサがなくても、簡易にかつ正確に判定することができる。
【0074】
(実施形態2)
本発明の第2実施形態について、
図7を用いて説明する。本実施形態では、クラッチ係合制御部は推定時間を設定する際にクラッチ油温についても考慮する点が第1実施形態とは異なる。
【0075】
本実施形態では、クラッチ判定制御部は、クラッチの油温による推定時間(第2の設定時間)と、クラッチ係合不能判定回数による推定時間(第1の設定時間)とを比較して、これらのうち長い方を推定時間として設定する。また、クラッチの油温による推定時間と、クラッチ係合不能判定回数による推定時間とにそれぞれの係数をかけて推定時間を設定しても良い。クラッチ判定制御部は、クラッチの油温を検出し、取得する。
図7に示すように、クラッチの油温に対する推定時間はクラッチの油温が上昇するほど推定時間は短くなるというものである。即ち、クラッチの油温が高いほど油の粘性が低くなり、係合部材は係合しやすくなるので、係合したか否かの判定にかかる推定時間を短くすることができる。
【0076】
他方で、
図7に示すようにクラッチ係合不能判定回数と推定時間とは、クラッチ係合不能判定回数が増えるほど推定時間が長くなる関係にある。即ち、クラッチ係合不能判定回数が多いほどクラッチは接続しにくい状態であるので、推定時間を長くしてよりクラッチが接続しやすいようにしている。
【0077】
そして、クラッチ判定制御部は、クラッチの油温に対する推定時間と、クラッチ係合不能判定回数に対する推定時間とを取得し、これらを比較して、これらのうち長い方を推定時間として設定する。このことから、初めのうちは、油温による推定時間がクラッチ係合不能判定回数による推定時間よりも長いために優先され、その後、クラッチ係合不能判定回数による推定時間が油温による推定時間よりも長いために優先される。
【0078】
このようにより長い推定時間を優先するように構成されていることで、本実施形態ではクラッチ判定部による判定をより確実に、かつ正確に行うことができると共に、一回の判定時にクラッチをより接続しやすくできるように構成されている。即ち、所定時間をクラッチの状態に応じてより適切に設定することができる。
【0079】
本発明の実施形態は、上述したものに限定されない。例えば、上述した実施形態では、シリーズ走行モードからパラレル走行モードに切り換える場合について説明したが、これに限定されない。EV走行モードからパラレル走行モードに切り換える場合も同様である。また、本実施形態では、パラレル走行モードではエンジンのみを駆動源として走行したがこれに限定されない。エンジン及びモータを駆動源として走行してもよい。
【0080】
また、クラッチが油圧クラッチの場合について説明したが、これに限定されない。電磁クラッチであっても同様の制御を行うことができる。