特許第5892326号(P5892326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892326
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】凍結防止装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/02 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   B60S1/02 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-48632(P2012-48632)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-184481(P2013-184481A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】福富 健
(72)【発明者】
【氏名】北川 省
(72)【発明者】
【氏名】中根 康樹
(72)【発明者】
【氏名】武居 昌史
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−000055(JP,U)
【文献】 特開2006−120600(JP,A)
【文献】 特開2005−335225(JP,A)
【文献】 特表2013−534489(JP,A)
【文献】 米国特許第05653903(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02405708(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00−60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボデー構造に接着剤を介して固定された車両窓と、ワイパーとの凍結を防止するための凍結防止装置であって、
前記車両窓の下縁部に配設された発熱部を前記ワイパーの停止位置と重複して設け、
前記発熱部は電熱線からなり、前記発熱部の配設された領域のうち、前記接着剤が配された領域と重複する領域の前記電熱線の電力密度は、その他の領域の前記電熱線の電力密度よりも高くなるように構成されていることを特徴とする凍結防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地においては車両の外気温低下によりフロントガラス表面とワイパーブレードとが凍結してしまい、これによってワイパーを動かすことができなくなることがあった。このため、フロントガラスのガラス面のワイパーの停止位置、即ちフロントガラスの下端部周縁に電熱線を装着し、発熱させることでワイパーブレードとフロントガラス表面の凍結を防止することが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−55号公報
【特許文献2】実公平2−144247号公報
【特許文献3】実公昭61−204863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような凍結防止装置を作動させて電熱線を発熱させると、電熱線が均一に発熱しているにも関わらずフロントガラスにおける熱分布にばらつきが生じてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、車両窓とワイパーとの凍結を防止すると共に、発熱時の熱分布のばらつきを抑制することができる凍結防止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の凍結防止装置は、車両のボデー構造に接着剤を介して固定された車両窓と、ワイパーとの凍結を防止するための凍結防止装置であって、前記車両窓の下縁部に配設された発熱部を前記ワイパーの停止位置と重複して設け、前記発熱部は電熱線からなり、前記発熱部の配設された領域のうち、前記接着剤が配された領域と重複する領域の前記電熱線の電力密度は、その他の領域の前記電熱線の電力密度よりも高くなるように構成されていることを特徴とする。前記発熱部の配設された領域のうち、前記接着剤が配された領域と重複する領域は、その他の領域よりも発熱量が多くなるように構成されていることで、熱分布のばらつきを抑制することができる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態としては、前記発熱部は電熱線からなることが挙げられる。
【0008】
前記電熱線は、前記接着剤が配された領域と重複する領域では、その他の領域よりも電力密度が高くなるように構成されていることが好ましい。このように構成されていることで、簡易に熱分布のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の凍結防止装置によれば、車両窓とワイパーとの凍結を防止すると共に、発熱時の熱分布のばらつきを抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態にかかる凍結防止装置を有する車両の斜視図である。
図2】実施形態にかかる凍結防止装置を説明するための車両の一部拡大模式図である。
図3】実施形態にかかる凍結防止装置を説明するための車両の一部拡大模式図である。
図4】実施形態にかかる凍結防止装置を説明するための図2のX−X’線における断面模式図である。
図5】実施形態にかかる凍結防止装置を説明するための(1)電気系統の模式図、(2)配線の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の凍結防止装置を有する車両について図1図5を用いて説明する。
【0012】
車両の斜視図である図1に示すように、車両1は、その前面にフロントガラス2を有する。フロントガラス2とこのフロントガラス表面を拭き取るワイパー3とは、フロントボデー本体4に固定されている。
【0013】
図2は、車両のワイパーが設けられている部分の一部拡大模式図であり、図3図2のワイパー部分を点線で示したものである。図4図2のX−X’線における断面模式図である。
【0014】
図4に示すように、フロントガラス2は、上面ガラス21及び下面ガラス22、並びに上面ガラス21及び下面ガラス22間に設けられた中間膜23とからなる、いわゆる合わせガラスとなっている。フロントガラス2は、接着剤層24を介して車体を構成するフロントボデー本体4に固定されている。接着剤層24は、例えばウレタン系接着剤からなる。
【0015】
接着剤層24は、図2に示すように、フロントガラス2の周縁に沿って設けられた接着剤領域25に亘って設けられている。この接着剤領域25は、フロントガラス2の下端部においてワイパー3のワイパーブレード33の停止位置と重複して設けられている。
【0016】
フロントガラス2の上面ガラス21と中間膜23との間には、ワイパー3の凍結防止装置の発熱部としての電熱線31が設けられている。電熱線31は、発熱することができるように構成されていればよく、本実施形態では、電熱線31は銀からなるプリント配線である。電熱線31は、図2に示すように電熱線領域32に亘って設けられている。電熱線領域32は、フロントガラス2の下端側に、ワイパー3のワイパーブレード33の停止位置に沿って設けられている。
【0017】
電熱線31は、図5に示すように、スイッチ部34を介して電源35に接続されている。即ち、これらの電熱線31、スイッチ部34及び電源35により凍結防止装置が構成されている。
【0018】
電熱線領域32及び接着剤領域25は、どちらもフロントガラス2の下端部のワイパー3のワイパーブレード33の停止位置に設けられていることから、フロントガラス2を正面視すると重複している領域がある。即ち、電熱線領域32は、接着剤領域25と重複する領域Aと、その他の領域、即ち接着剤領域25と重複しない領域Bとからなる。
【0019】
このように電熱線領域32が領域Aと領域Bとからなる場合に、本実施形態では、領域Aでは、電熱線31は、領域Bにおける電熱線31よりも電力密度が高くなるように構成されている。具体的には、図5(2)に示すように、電熱線31は、領域Bよりも領域Aでその電熱線31の幅が細くなることにより電力密度を高くしている。これにより、領域Aにおける電熱線31の発熱温度は、領域Bにおける電熱線31の発熱温度よりも高い。
【0020】
本実施形態では、スイッチ部34をオン状態とすることで電源35により通電されて電熱線31が発熱することで、フロントガラス2とワイパーブレード33との凍結を溶解して、ワイパーブレード33の駆動を確保することができる。
【0021】
この場合に、電熱線31では領域Aにおける電力密度が領域Bにおける電力密度よりも高くなるように構成されていることで、フロントガラス2における温度分布のばらつきを抑制できる。これは以下のような理由である。
【0022】
通常、フロントガラス2に接着剤領域25と電熱線領域32とが完全に重複するように設けることは車両のインテリアの制約上難しく、また、完全に重複しないように設けることも難しい。従って、必ず接着剤領域25と電熱線領域32とは上述のようにフロントガラス2の一部において重複してしまう。
【0023】
この電熱線領域32と接着剤領域25とが重複する領域Aでは、接着剤層24を介して電熱線31で発熱した熱がフロントボデー本体4に逃げてしまい温度が低下する。従って、例えば電熱線領域全体に亘って均一な発熱を行うように均一な電力密度で電熱線を構成すると、接着剤領域と重複する領域では重複しない領域に比べて温度が低下してしまう。そうすると、フロントガラスにおける温度分布が不均一となり、効率的に凍結を防止できないばかりか、フロントガラスの電熱線領域において温度差が発生している位置に応力が発生し、これがフロントガラスにひび割れ等を生じさせる可能性があると考えられる。
【0024】
そこで、本実施形態では、電熱線領域32全体に亘って温度分布が均一となるように、領域Aでは領域Bよりも高い電力密度となるように電熱線31を構成している。これにより、電熱線領域32のうち接着剤領域25と重複する領域Aでは接着剤層24を介して電熱線31による熱がフロントボデー本体4に逃げてしまったとしても、領域Bとは温度が変わらないので電熱線領域32全体に亘って温度分布が均一となる。これにより、フロントガラス2での応力の発生を抑制することができる。
【0025】
このように、電熱線31では領域Aにおける電力密度が領域Bにおける電力密度よりも高くなるように構成されていることで、フロントガラス2における温度分布のばらつきを抑制できる。
【0026】
上述した実施形態では、凍結防止手段として電熱線31を例示したが、これに限定されない。発熱することができればよく、例えば加熱流体を流通させることができるように構成してもよい。
【0027】
本実施形態では、電熱線領域32全体に亘って一の電熱線31を設けたが、これに限定されない。例えば、電熱線領域32の領域A、Bにそれぞれ別の電熱線を設けるように構成してもよい。この場合であっても、電熱線領域32の領域Aに設けられた電熱線が領域Bに設けられた電熱線よりも電力密度が高くなるように構成されていればよい。
また、電熱線31が複数の電熱線からなるように構成してもよい。
【0028】
本実施形態では、車両窓の一例としてフロントガラスを示したが、これに限定されない。ワイパーが設けられる車両窓であればよい。
【符号の説明】
【0029】
1 車両
2 フロントガラス
3 ワイパー
4 フロントボデー本体
21 上面ガラス
22 下面ガラス
23 中間膜
24 接着剤層
25 接着剤領域
31 電熱線
32 電熱線領域
33 ワイパーブレード
34 スイッチ部
35 電源
図1
図4
図5
図2
図3