(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892368
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20160310BHJP
G01J 5/10 20060101ALI20160310BHJP
H01L 35/30 20060101ALI20160310BHJP
H01L 37/02 20060101ALI20160310BHJP
H01L 35/10 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J5/10 Z
H01L35/30
H01L37/02
H01L35/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-19431(P2012-19431)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-156235(P2013-156235A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】田里 和義
(72)【発明者】
【氏名】石川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】白田 敬治
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢蔵
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/078004(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/046163(WO,A1)
【文献】
特開2011−13213(JP,A)
【文献】
特開2003−194630(JP,A)
【文献】
特開平7−63585(JP,A)
【文献】
特開平7−260579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02,1/42
5/02,5/10−5/16,5/20−5/26
H01C 7/02−7/22
H01L 31/00−31/0232,31/08−31/09
H01L 35/10,35/28−35/32
H01L 37/00−37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、
前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜と、
前記絶縁性フィルムの同じ端部側に設けられ対応する前記第1の配線膜及び前記第2の配線膜に接続された複数の端子電極と、
前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられ前記第1の配線膜と前記第2の配線膜とのうち前記端子電極からの配線距離の長い方の少なくとも一部に対向して金属膜で形成された熱抵抗調整膜とを備え、
前記第1の配線膜と前記第2の配線膜とのうち配線距離の長い一方の熱抵抗が前記熱抵抗調整膜により調整されて他方の熱抵抗と同じに設定されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線センサにおいて、
前記熱抵抗調整膜が、前記赤外線反射膜と同じ材料でパターン形成されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の赤外線センサにおいて、
前記第1の配線膜が、前記第1の感熱素子の周囲にまで配されて前記第2の配線膜よりも大きな面積で形成され、
前記配線距離の長い方が、前記第1の配線膜であり、
前記熱抵抗調整膜が、前記第1の配線膜の前記第1の感熱素子の周囲に配された部分に対向した領域を除いて形成されていることを特徴とする赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物からの赤外線を検出して該測定対象物の温度を測定する赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物から輻射により放射される赤外線を非接触で検出して測定対象物の温度を測定する温度センサとして、赤外線センサが使用されている。
例えば、特許文献1には、保持体に設置した樹脂フィルムと、該樹脂フィルムに設けられ保持体の導光部を介して赤外線を検出する赤外線検出用感熱素子と、樹脂フィルムに遮光状態に設けられ保持体の温度を検出する温度補償用感熱素子とを備えた赤外線温度センサが提案されている。この赤外線温度センサでは、樹脂フィルムの端部に複数のリード線が接続されている。
【0003】
また、特許文献2には、赤外線の入射孔が形成された第1のケース部と、入射孔に対向する入射孔対向面部を有する第2のケース部と、第1のケース部と第2のケース部の入射孔対向面部との間に配置されると共に、入射孔対向面部の第1のケース部側に取り付けられ、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、基体に設けられ赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える非接触温度センサが記載されている。この非接触温度センサでは、感熱素子が樹脂フィルムに設けられ、該樹脂フィルムの端部に複数のリード線が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−156284号公報
【特許文献2】特開2006−118992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来の赤外線センサでは、コスト低減のためにコネクタに集約し、片側から複数のリード線を取り出すために、複数のリード線が樹脂フィルムの同じ端部に接続されている。その場合、一対の感熱素子の配置によっては感熱素子からリード線の接続部までの配線距離が互いに異なり、リード線からの熱伝導が異なって温度により感度が異なるという問題があった。すなわち、長さの異なる互いの配線膜の熱抵抗が異なって一対の感熱素子における熱バランス(熱流入のバランス)が崩れてしまう不都合があった。このため、一対の感熱素子によって正確に温度を検出することが困難であった。互いの配線膜における熱抵抗を同じにするために、配線距離の長い方の配線膜の幅を広くする方法も考えられるが、配線膜の幅を広くすると、赤外線センサを組み込む筐体と接触し易くなってショートするおそれがあり、好ましくない。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、片側にリード線が接続されていても、熱バランスを崩さずに測定対象物の温度を高精度に測定可能な赤外線センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る赤外線センサは、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜と、前記絶縁性フィルムの同じ端部側に設けられ対応する前記第1の配線膜及び前記第2の配線膜に接続された複数の端子電極と、前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられ前記第1の配線膜と前記第2の配線膜とのうち前記端子電極からの配線距離の長い方の少なくとも一部に対向して前記絶縁性フィルムよりも熱放散性の高い材料で形成された熱抵抗調整膜とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この赤外線センサでは、絶縁性フィルムの他方の面に設けられ第1の配線膜と第2の配線膜とのうち端子電極からの配線距離の長い方の少なくとも一部に対向して絶縁性フィルムよりも熱放散性の高い材料で形成された熱抵抗調整膜とを備えているので、熱抵抗調整膜の配置、形状及び面積により、配線距離の長い一方の配線膜の熱抵抗を調整して他方の配線膜の熱抵抗と同じになるように設定でき、良好な熱バランスを得ることができる。すなわち、絶縁性フィルムよりも熱放散性の高い金属膜等の材料で形成された熱抵抗調整膜が、対向する配線距離の長い一方の配線膜に対して配置、形状及び面積に応じて熱放散させる放熱板としての効果を有していることで、熱流入のバランスを調整することができる。したがって、端子電極に接続されるリード線に対して一対の感熱素子の間で熱抵抗を平衡させることができるので、温度特性を改善させることができる。また、配線膜の幅を広げる必要がないため、配線膜と筐体との接触によるショートのおそれもない。さらに、熱抵抗調整膜は、配線膜とは反対側の絶縁性フィルムの他方の面に形成されているので、配置位置、形状及び面積等の設計自由度が高いと共に、配線膜とは絶縁性フィルムにより電気的に絶縁されているので、ショートのおそれもない。
【0009】
第2の発明に係る赤外線センサは、第1の発明において、前記熱抵抗調整膜が、前記赤外線反射膜と同じ材料でパターン形成されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、熱抵抗調整膜が、赤外線反射膜と同じ材料でパターン形成されているので、赤外線反射膜の成膜時に同時に熱抵抗調整膜もパターン形成することができ、製造工程の削減を図ることができる。
【0010】
第3の発明に係る赤外線センサは、第1又は第2の発明において、前記第1の配線膜が、前記第1の感熱素子の周囲にまで配されて前記第2の配線膜よりも大きな面積で形成され、前記熱抵抗調整膜が、前記第1の配線膜の前記第1の感熱素子の周囲に配された部分に対向した領域を除いて形成されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、第1の配線膜が、第1の感熱素子の周囲にまで配されて第2の配線膜よりも大きな面積で形成されているので、大きな面積の第1の配線膜が、絶縁性フィルムを透過して筐体や実装基板に照射される赤外線を遮断すると共に筐体や実装基板から放射される輻射熱を遮断して絶縁性フィルムへの熱影響を抑制することができる。さらに、絶縁性フィルムの赤外線を吸収した部分からの熱収集を改善すると共に、絶縁性フィルムの赤外線反射膜が形成された部分と熱容量が近づくので、変動誤差を小さくすることができる。したがって、周囲の温度変動に敏感に反応することから、輻射熱を受ける部分と受けない部分との追従性が良く、検出精度がさらに改善される。なお、第1の配線膜の面積及び形状は、絶縁性フィルムの赤外線反射膜が形成された部分と熱容量がほぼ等しくなるように設定することが好ましい。
さらに、前記配線距離の長い方が、第1の配線膜であり、熱抵抗調整膜が、第1の配線膜の第1の感熱素子の周囲に配された部分に対向した領域を除いて形成されているので、第1の感熱素子の周囲に配された部分によって赤外線反射膜が形成された部分との熱容量を調整する際に、熱抵抗調整膜が影響を与えることを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る赤外線センサによれば、絶縁性フィルムの他方の面に設けられ第1の配線膜と第2の配線膜とのうち端子電極からの配線距離の長い方の少なくとも一部に対向して形成された熱抵抗調整膜とを備えているので、互いの配線膜の熱抵抗が同じになるように設定でき、良好な熱バランスを得ることができる。
したがって、リード線を片側に接続しても高精度な温度測定ができるので、本発明の赤外線センサは、細長い領域などにも設置し易くなり、特に、構造が細長い複写機等の定着ローラの温度検出に用いる温度センサとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る赤外線センサの一実施形態において、感熱素子を外した赤外線センサを示す背面図(a)及び平面図(b)である。
【
図2】本実施形態において、第1の配線膜に沿って切断した要部の断面図である。
【
図3】本実施形態において、感熱素子を接着した絶縁性フィルムを示す簡易的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る赤外線センサの一実施形態を、
図1から
図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために一部の縮尺を適宜変更している。
【0014】
本実施形態の赤外線センサ1は、
図1から
図3に示すように、絶縁性フィルム2と、該絶縁性フィルム2の一方の面(下面又は背面)に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bと、絶縁性フィルム2の一方の面に銅箔等でパターン形成され第1の感熱素子3Aに接続された導電性の第1の配線膜4A及び第2の感熱素子3Bに接続された導電性の第2の配線膜4Bと、第2の感熱素子3Bに対向して絶縁性フィルム2の他方の面に設けられた赤外線反射膜5と、絶縁性フィルム2の同じ端部側に設けられ対応する第1の配線膜4A及び第2の配線膜4Bに接続された複数の端子電極6と、絶縁性フィルム2の他方の面に設けられ第1の配線膜4Aと第2の配線膜4Bとのうち端子電極6から配線距離の長い方の少なくとも一部に対向して絶縁性フィルム2よりも熱放散性の高い材料で形成された熱抵抗調整膜7とを備えている。
【0015】
上記第1の配線膜4Aは、
図1及び
図2に示すように、第1の感熱素子3Aの周囲にまで配されて第2の配線膜4Bよりも大きな面積でパターン形成された幅広部4aを有している。これらの第1の配線膜4Aは、一対の幅広部4aの中央に第1の感熱素子3Aを配し、これら幅広部4aの一対で外形状が赤外線反射膜5と略同じ四角形状に設定されている。すなわち、第1の配線膜4Aの面積及び形状は、絶縁性フィルム2の赤外線反射膜5が形成された部分と熱容量がほぼ等しくなるように設定している。なお、
図1において、赤外線反射膜5等の金属箔でパターン形成された部分をハッチングで図示している。
【0016】
一対の第1の配線膜4Aには、その一端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上にパターン形成された第1の接着電極8Aが接続されていると共に、他端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上にパターン形成された上記端子電極6が接続されている。
また、一対の第2の配線膜4Bは、線状又は帯状に形成されており、その一端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上にパターン形成された第2の接着電極8Bが接続されていると共に、他端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上にパターン形成された上記端子電極6が接続されている。
【0017】
なお、上記第1の接着電極8A及び第2の接着電極8Bには、それぞれ第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bのチップ端子電極3aが半田等の導電性接着剤で接着される。
また、各端子電極6は、対応するリード線Lに半田等の導電性接着剤で接続される。
上記端子電極6は、第1の配線膜4Aの一方に接続されたものと、第2の配線膜4Bの一方に接続されたものと、第1の配線膜4Aの他方と第2の配線膜4Bの他方とに接続されたものの3つが設けられている。
【0018】
上記絶縁性フィルム2は、ポリイミド樹脂シートで形成され、赤外線反射膜5、熱抵抗調整膜7、第1の配線膜4A及び第2の配線膜4Bが銅箔で形成されている。すなわち、これらは、絶縁性フィルム2とされるポリイミド基板の両面に、赤外線反射膜5、熱抵抗調整膜7、第1の配線膜4A及び第2の配線膜4Bが銅箔でパターン形成された両面フレキシブル基板によって作製されたものである。
【0019】
さらに、上記赤外線反射膜5は、
図1に示すように、第2の感熱素子3Bの直上に四角形状で配されており、上記銅箔と、該銅箔上に積層された金メッキ膜とで構成されている。
この赤外線反射膜5は、絶縁性フィルム2よりも高い赤外線反射率を有する材料で形成され、上述したように、銅箔上に金メッキ膜が施されて形成されている。なお、金メッキ膜の他に、例えば鏡面のアルミニウム蒸着膜やアルミニウム箔等で形成しても構わない。この赤外線反射膜5は、第2の感熱素子3Bよりも大きなサイズでこれを覆うように形成されている。
【0020】
上記第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bは、
図3に示すように、両端部にチップ端子電極3aが形成されたチップサーミスタである。このサーミスタとしては、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bとして、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタは、Mn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
【0021】
特に、本実施形態では、第1の感熱素子3Aおよび第2の感熱素子3Bとして、Mn,CoおよびFeの金属酸化物を含有するセラミックス焼結体、すなわちMn−Co−Fe系材料で形成されたサーミスタ素子を採用している。さらに、このセラミックス焼結体は、立方晶スピネル相を主相とする結晶構造を有していることが好ましい。特に、セラミックス焼結体としては、立方晶スピネル相からなる単相の結晶構造が最も望ましい。
【0022】
本実施形態では、第1の感熱素子3Aの方が第2の感熱素子3Bよりも端子電極6から遠い方に配置され、第1の配線膜4Aの方が第2の配線膜4Bよりも配線距離が長く設定されている。
また、上記熱抵抗調整膜7は、第1の配線膜4Aの第1の感熱素子3Aの周囲に配された部分(幅広部4a)に対向した領域を除いて形成されている。すなわち、熱抵抗調整膜7は、幅広部4aの両側から端子電極6が形成された端部側に向けて延在した一対の略台形状パターンとされている。
【0023】
この熱抵抗調整膜7は、絶縁性フィルム2よりも熱放散性の高い材料で形成されていればよいが、特に本実施形態では、赤外線反射膜5と同じ材料でパターン形成されている。すなわち、熱抵抗調整膜7は、銅箔と、該銅箔上に積層された金メッキ膜とで構成された、配線膜には接続していない、電気的に浮いているフロート電極である。
【0024】
このように本実施形態の赤外線センサ1では、絶縁性フィルム2の他方の面に設けられ第1の配線膜4Aと第2の配線膜4Bとのうち端子電極6から配線距離の長い方の少なくとも一部に対向して形成された熱抵抗調整膜7とを備えているので、熱抵抗調整膜7の配置、形状及び面積により、配線距離の長い一方の配線膜の熱抵抗を調整して他方の配線膜の熱抵抗と同じになるように設定でき、良好な熱バランスを得ることができる。
【0025】
すなわち、金属膜等で形成された熱抵抗調整膜7が、対向する配線距離の長い一方の配線膜に対して配置、形状及び面積に応じて熱放散させる放熱板としての効果を有していることで、熱流入のバランスを調整することができる。したがって、端子電極6に接続されるリード線Lに対して一対の感熱素子3A,3Bの間で熱抵抗を平衡させることができるので、温度特性を改善させることができる。
【0026】
また、配線膜の幅を広げる必要がないため、赤外線センサ1を収納する筐体と配線膜との接触によるショートのおそれもない。さらに、熱抵抗調整膜7は、配線膜4A,4Bとは反対側の絶縁性フィルム2の他方の面に形成されているので、配置位置、形状及び面積等の設計自由度が高いと共に、配線膜4A,4Bとは絶縁性フィルム2により電気的に絶縁されているので、ショートのおそれもない。
さらに、熱抵抗調整膜7が、赤外線反射膜5と同じ材料でパターン形成されているので、赤外線反射膜5の成膜時に同時に熱抵抗調整膜7もパターン形成することができ、製造工程の削減を図ることができる。
【0027】
また、第1の配線膜4Aが、第1の感熱素子3Aの周囲にまで配されて第2の配線膜4Bよりも大きな面積で形成されているので、大きな面積の第1の配線膜4Aが、絶縁性フィルム2を透過して筐体や実装基板に照射される赤外線を遮断すると共に筐体や実装基板から放射される輻射熱を遮断して絶縁性フィルム2への熱影響を抑制することができる。さらに、絶縁性フィルム2の赤外線を吸収した部分からの熱収集を改善すると共に、絶縁性フィルム2の赤外線反射膜5が形成された部分と熱容量が近づくので、温度変動誤差を小さくすることができる。
【0028】
したがって、周囲の温度変動に敏感に反応することから、輻射熱を受ける部分と受けない部分との追従性が良く、検出精度がさらに改善される。なお、第1の配線膜4Aの面積及び形状は、絶縁性フィルム2の赤外線反射膜5が形成された部分と熱容量がほぼ等しくなるように設定することが好ましい。
【0029】
さらに、熱抵抗調整膜7が、第1の配線膜4Aの第1の感熱素子3Aの周囲に配された部分に対向した領域を除いて形成されているので、第1の感熱素子3Aの周囲に配された部分によって赤外線反射膜5が形成された部分との熱容量を調整する際に、熱抵抗調整膜7が影響を与えることを抑制できる。
【0030】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
例えば、上記実施形態では、第1の感熱素子が赤外線を直接吸収した絶縁性フィルムから伝導される熱を検出しているが、第1の感熱素子の直上であって絶縁性フィルム上に赤外線吸収膜を形成しても構わない。この場合、さらに第1の感熱素子における赤外線吸収効果が向上して、第1の感熱素子と第2の感熱素子とのより良好な温度差分を得ることができる。すなわち、この赤外線吸収膜によって測定対象物からの輻射による赤外線を吸収するようにし、赤外線を吸収し発熱した赤外線吸収膜から絶縁性フィルムを介した熱伝導によって、直下の第1の感熱素子の温度が変化するようにしてもよい。
【0032】
この赤外線吸収膜は、絶縁性フィルムよりも高い赤外線吸収率を有する材料で形成され、例えば、カーボンブラック等の赤外線吸収材料を含むフィルムや赤外線吸収性ガラス膜(二酸化珪素を71%含有するホウケイ酸ガラス膜など)で形成されているもの等が採用可能である。特に、赤外線吸収膜は、アンチモンドープ酸化錫(ATO)膜であることが望ましい。このATO膜は、カーボンブラック等に比べて赤外線の吸収率が良いと共に耐光性に優れている。また、ATO膜は、紫外線で硬化させるので、接着強度が強く、カーボンブラック等に比べて剥がれ難い。
なお、この赤外線吸収膜は、第1の感熱素子よりも大きなサイズでこれを覆うように形成することが好ましい。また、赤外線吸収膜を設ける場合は、赤外線反射膜側の熱容量と略等しくなるように各配線膜を含めて面積や形状を設定する必要がある。
【0033】
また、チップサーミスタの第1の感熱素子及び第2の感熱素子を採用しているが、薄膜サーミスタで形成された第1の感熱素子及び第2の感熱素子を採用しても構わない。
なお、感熱素子としては、上述したように薄膜サーミスタやチップサーミスタが用いられるが、サーミスタ以外に焦電素子等も採用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…赤外線センサ、2…絶縁性フィルム、3A…第1の感熱素子、3B…第2の感熱素子、4A…第1の配線膜、4B…第2の配線膜、5…赤外線反射膜、6…端子電極、7…熱抵抗調整膜、L…リード線