特許第5892370号(P5892370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892370
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】充電器及び電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20160310BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   H02J7/00 301B
   H01M10/44 Q
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-66851(P2012-66851)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-217329(P2012-217329A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-67192(P2011-67192)
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(72)【発明者】
【氏名】塙 浩之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 伸二
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 治久
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】荒館 卓央
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−035755(JP,A)
【文献】 特開2000−235870(JP,A)
【文献】 特開2009−278832(JP,A)
【文献】 特開平11−069645(JP,A)
【文献】 特開2006−324064(JP,A)
【文献】 特開平08−304518(JP,A)
【文献】 特開平06−333604(JP,A)
【文献】 特開2000−217264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと、電力供給に関係する電力供給関連信号を出力可能な電気機器とのいずれか一方が給電対象装置として接続されるように構成された接続部と、
前記電池パック及び前記電気機器のいずれが前記給電対象装置であるかを判別する判別手段と、
前記接続部に前記電池パックが接続されたときは、前記接続部を介して前記電池パックを充電し、前記接続部に前記電気機器が接続されたときは、前記電力供給関連信号に基づき前記接続部を介して前記電気機器に対する電力供給に関係する制御を行う制御部と
を有し、
前記判別手段は、前記給電対象装置と通信可能であるか否かを判別し、通信可能である場合は、前記電気機器が前記接続部に接続されていると判別することを特徴とする充電器。
【請求項2】
前記判別手段は、前記給電対象装置と通信不能である場合は、前記電池パックが前記接続部に接続されていると判別することを特徴とする請求項1記載の充電器。
【請求項3】
前記判別手段は、前記給電対象装置から装置情報を受信したときは通信可能と判別することを特徴とする請求項2記載の充電器。
【請求項4】
電池パックと、電力供給に関係する電力供給関連信号を出力可能な電気機器とのいずれか一方が給電対象装置として接続されるように構成された接続部と、
前記電池パック及び前記電気機器のいずれが前記給電対象装置であるかを判別する判別手段と、
前記接続部に前記電池パックが接続されたときは、前記接続部を介して前記電池パックを充電し、前記接続部に前記電気機器が接続されたときは、前記電力供給関連信号に基づき前記接続部を介して前記電気機器に対する電力供給に関係する制御を行う制御部と
を有し、
前記制御部は、前記電気機器に対して充電器情報を出力し、前記充電器情報に基づいて前記電気機器によって調整された電力供給関連信号を受け取ることを特徴とする充電器。
【請求項5】
所定の機能を有すると共に電力供給に関係する電力供給関連信号を出力可能な電気機器と、
電池パック及び前記電気機器に対して選択的に給電可能な充電器と
を有し、
前記充電器は、
前記電気機器と前記電池パックとのいずれか一方が給電対象装置として接続されるように構成された接続部と、
前記電池パック及び前記電気機器のいずれが前記給電対象装置であるかを判別する判別手段と、
前記接続部に前記電池パックが接続されたときは、前記接続部を介して前記電池パックを充電し、前記接続部に前記電気機器が接続されたときは、前記電力供給関連信号に基づき、前記接続部を介して前記電気機器に対する電力供給に関係する制御を行う制御部と
を有し、
前記判別手段は、前記給電対象装置と通信可能であるか否かを判別し、通信可能である場合は、前記電気機器が前記接続部に接続されていると判別することを特徴とする電力供給システム。
【請求項6】
前記判別手段は、前記給電対象装置と通信不能である場合は、前記電池パックが前記接続部に接続されていると判別することを特徴とする請求項5記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記判別手段は、前記給電対象装置からの装置情報を受信したときは通信可能と判別することを特徴とする請求項6記載の電力供給システム。
【請求項8】
所定の機能を有すると共に電力供給に関係する電力供給関連信号を出力可能な電気機器と、
電池パック及び前記電気機器に対して選択的に給電可能な充電器と
を有し、
前記充電器は、
前記電気機器と前記電池パックとのいずれか一方が給電対象装置として接続されるように構成された接続部と、
前記電池パック及び前記電気機器のいずれが前記給電対象装置であるかを判別する判別手段と、
前記接続部に前記電池パックが接続されたときは、前記接続部を介して前記電池パックを充電し、前記接続部に前記電気機器が接続されたときは、前記電力供給関連信号に基づき、前記接続部を介して前記電気機器に対する電力供給に関係する制御を行う制御部と
を有し、
前記制御部は、前記電気機器に対して充電器情報を出力し、
前記電気機器は、前記充電器情報に基づいて調整された電力供給関連信号を前記制御部に向けて出力することを特徴とする電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックを充電する充電器と当該充電器を用いた電力供給システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電池パック用の充電器は、ニカド、ニッケル水素、またはリチウムイオン電池パックを充電する機能を有するが、充電機能以外の他の機能を備えてはいなかった。これに対し、電池パックが充電用に装着される電池実装部とは別にコネクタを設けた多機能充電器があり、コネクタに例えばコードレス工具を接続可能としているが、電池実装部は電池パックの充電専用として使われるのみであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−149006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電器は、電池パックの再充電に備えて、電池パックと共に持ち運ぶ場合が多い。しかしながら、電池パックを電動工具に装着しているときは、充電器を使用する必要が無いので、充電器の用途は非常に限られていた。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、様々な用途に有効活用できる充電器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の充電器は、電池パックと、電力供給に関係する電力供給関連信号を出力可能な電気機器とのいずれか一方が給電対象装置として接続されるように構成された接続部と、前記電池パック及び前記電気機器のいずれが前記給電対象装置であるかを判別する判別手段と、前記接続部に前記電池パックが接続されたときは、前記接続部を介して前記電池パックを充電し、前記接続部に前記電気機器が接続されたときは、前記電力供給関連信号に基づき前記接続部を介して前記電気機器に対する電力供給に関係する制御を行う制御部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2記載の充電器は、請求項1に記載の充電器であって、前記判別手段は、前記給電対象装置と通信可能であるか否かを判別し、通信可能である場合は、前記電気機器が前記接続部に接続されていると判別し、通信不能である場合は、前記電池パックが前記接続部に接続されていると判別することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3記載の充電器は、請求項2に記載の充電器であって、前記判別手段は、前記給電対象装置から装置情報を受信したときは通信可能と判別することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4記載の充電器は、請求項1から3のいずれか1に記載の充電器であって、前記電気機器に対して充電器情報を出力し、前記充電器情報に基づいて前記電気機器によって調整された電力供給関連信号を受け取ることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5記載の電力供給システムは、所定の機能を有すると共に電力供給に関係する電力供給関連信号を出力可能な電気機器と、電池パック及び前記電気機器に対して選択的に給電可能な充電器とを有し、前記充電器は、前記電気機器と前記電池パックとのいずれか一方が給電対象装置として接続されるように構成された接続部と、前記電池パック及び前記電気機器のいずれが前記給電対象装置であるかを判別する判別手段と、前記接続部に前記電池パックが接続されたときは、前記接続部を介して前記電池パックを充電し、前記接続部に前記電気機器が接続されたときは、前記電力供給関連信号に基づき、前記接続部を介して前記電気機器に対する電力供給に関係する制御を行う制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6記載の電力供給システムは、請求項5に記載の電力供給システムであって、前記判別手段は、前記給電対象装置と通信可能であるか否かを判別し、通信可能である場合は、前記電気機器が前記接続部に接続されていると判別し、通信不能である場合は、前記電池パックが前記接続部に接続されていると判別することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7記載の電力供給システムは、請求項6に記載の電力供給システムであって、前記判別手段は、前記給電対象装置から装置情報を受信したときは通信可能と判別することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8記載の電力供給システムは、請求項5から7のいずれか1に記載の電力供給システムであって、前記制御部は、前記電気機器に対して充電器情報を出力し、前記電気機器は、前記充電器情報に基づいて調整された電力供給関連信号を前記制御部に向けて出力することを特徴とする。
【0014】
上記構成により、充電器は、接続部に接続された機器が電池パック又は電気機器のいずれであるかを判別する。接続部に電池パックが接続される場合、制御部は、接続部を介して電力を充電器から電池パックに向けて供給して、電池パックを充電する。一方、接続部に電気機器が接続されると、充電器の制御部は、電気機器から接続部を介して電力供給関連信号を受け取る。制御部は、受け取った電気供給関連信号に基づいて電気機器に対する電力供給に関する制御を行う。例えば、電気機器が、電力供給関連信号として、入力電圧及び入力電力に関する信号を出力し、さらに充電器からの給電開始を指示するときは、制御部は、受け取った電力供給関連信号に基づいた条件で充電器から電気機器への給電を開始する。そして、電気機器が、電力供給関連信号として、充電器からの電力供給の停止を指示する信号を充電器に向けて出力すると、制御部は、充電器から電気機器への電力供給を停止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池パックを充電する充電器の接続部に電気機器を接続できるように構成することによって、電池パックの充電のみならず、同一の接続部を経由して電気機器に対して電力を供給することができる。従って、充電器を電池パックの充電に使用していないときに、充電器からの給電を利用して電気機器を使用することができる。また、電池パック又は電気機器の接続部を共有できるので、充電器を小型にすることができる。さらに、電気機器への給電に必要な情報は、電気機器から電力供給関連信号として電気機器から入力されるので、充電器は、電気機器の仕様を検知する必要が無く、充電器の構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態による充電器を示す外観図である。
図2】(1)は電池パックが装着された差込式充電器を、(2)は電池パックが装着されたスライド式充電器を示す。
図3図1に示す充電器と電池パックとの接続を示すブロック図である。
図4図1に示す充電器と電気機器との接続を示すブロック図である。
図5】電気機器から出力される電力供給関連信号と充電器による制御との関係を示す図である。
図6】充電器の一般的な動作を説明するフローチャートである。
図7】(1)は差込式充電器に装着された扇風機、(2)はスライド式充電器に装着された扇風機を示す図である。
図8】扇風機が装着されたときの充電器の動作を説明するフローチャートである。
図9】(1)は差込式充電器に装着された缶冷温器、(2)はスライド式充電器に装着された缶冷温器を示す図である。
図10】缶冷温器が装着されたときの充電器の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1に、電池パック100を充電する充電器10を示す。充電器10は、内部に充電回路12を有する本体14と、本体14(充電回路12)を商用電源に接続するための電気コード17と、電池パック100又は電気機器30を給電対象装置として内部の充電回路12と電気的に接続させるための接続部18とを有する。充電器は、接続部18に対する電池パック100の装着構造の違いから、図2(1)に示すように、電池パック100を接続部18に差し込んで装着させる差込式充電器と、図2(2)に示すように、電池パック100を接続部18に対してスライドさせて装着させるスライド式充電器との2つのタイプがある。
【0019】
図3に、充電器10の充電回路12を示す。充電回路12は、電力の入力側(図中左)から出力側(図中右)に向けて、順に、整流回路20、スイッチング回路21、変圧部22、及び平滑回路23が接続されている。さらに、制御部としての制御回路24が、スイッチング回路21に接続されている。また、商用電源から制御回路24等の電源Vcc(例えば5V)を生成する定電圧回路28を備え、定電圧回路28の出力は、制御回路24、後述する電池パック識別部26、温度検出部27等の駆動電源となる。
【0020】
整流回路20は、電気コード17を介して商用電源から交流電力が入力される。整流回路20は、全波整流回路部と平滑用コンデンサからなり、交流電力を直流に平滑・整流する。
【0021】
スイッチング回路21は、スイッチング素子となる例えばMOSFETと、スイッチング素子を制御するPWM制御ICとからなる。変圧部22は、高周波トランスからなり、その一次側はスイッチング回路21のスイッチング素子と直列に接続されている。高周波トランスの二次側は平滑回路23に接続されている。スイッチング回路21のPWM制御ICは、スイッチング素子の駆動パルス幅を変えて整流回路20の出力電圧を調整するスイッチング電源ICで構成される。
【0022】
平滑回路23は、高周波トランスの二次側に直列に接続された第1ダイオードと、並列に接続された第2ダイオードと、第1ダイオードと直列に接続されたチョークコイルと、第2ダイオードと並列に接続された平滑用コンデンサからなる整流平滑回路である。
【0023】
制御回路24は、充電回路12の入力電圧及び出力電圧と、充電回路12を流れる電流とを検出して、出力端子25A、25Bから出力される出力電圧、出力電流など、出力電力を制御する。更に、制御回路24は、平滑回路23の出力電圧が所定値になるようにスイッチング回路21のPWM制御ICを制御する。出力端子25A、25Bは、接続部18に設けられて、接続部18に接続された電池パック100の対をなす充電用端子6、7にそれぞれ電気的に接続されるようになっている。
【0024】
制御回路24には、接続部18に設けられた信号端子25Cが直接接続されている。さらに、制御回路24には、電池パック識別部26と、温度検出部27とがそれぞれ接続されている。電池パック識別部26は、電池パック100が接続された場合に、接続部18に設けられた端子25Dを介して入力される信号から、電池パック100の情報(定格電圧、電池セルの総数及び接続形態、電池セルの種類等)を取得し、この情報を制御回路24に向けて出力する。温度検出部27は、電池パック100が接続された場合に、接続部18に設けられた端子25Eを介して入力される信号から、電池パック100の温度を検出し、検出温度を制御回路24に向けて出力する。このように、制御回路24は、電池パック100の過電流や過電圧、過昇温を検出したり、さらに充電時間の計測を行うなど、電池パック100の充電に必要な制御を行う。そして、制御回路24は、電池パック100の充電制御として、定電圧または定電流制御を行う。
【0025】
また、制御回路24は、判別手段として、接続部18に、電池パック100または電気機器30のいずれが接続されたかを判別する。例えば、制御回路24は、装着された装置との間で通信が可能であれば、すなわち、制御回路24が、装置の装着完了時点から所定時間内に信号端子25Cを介して装着された装置から装置情報を受信した場合は、接続部18に接続された装置は電気機器30であると判別する。この場合、制御回路24は、電気機器30から端子25Cを介して通信により装置情報として電力供給関連信号を受け取っている。従って、制御回路24は、電力供給関連信号に基づいて、充電回路12からの出力のオン・オフ、出力電圧や出力電力を設定し、電気機器30に対して電力を供給する。
【0026】
一方、装置が接続部18に装着されたにも拘わらず、装着完了時点から所定時間内に、制御回路24が当該装置から装置情報を信号端子25Cを介して受信しなければ、制御回路24は、接続部18に接続された装置は電池パック100であると判別する。そして、制御回路24は、電池パック100の充電制御を行う。なお、電池パック100側にも制御部を設け、制御部と制御回路24との通信によって電池パック100と判別することもできる。
【0027】
なお、上記充電器10に電気機器30が接続された場合、端子25Dと端子25Eとには、装置側の端子が接続されないことになる。一般に、充電器では、端子25Dと端子25Eの各々に接続された装置からの出力信号が入力されなければ、接続不良と判別して充電器10の動作を停止させている。しかし、本実施の形態では、装置との通信によって電気機器30が接続されたことを制御回路24が認識した場合には、充電器10は接続された装置に対する制御を行う。例えば、制御回路24が、装置側から装置情報を端子25Cを介して受信した場合は、端子25Dと端子25Eの各々に信号入力が無くても、充電器10はその動作を継続する。
【0028】
電池パック100は、図3に示すように、ニッケル水素電池セルやリチウムイオン電池セル、ニカドセルのいずれか1からなる単位セルを直列に接続した電池セル102と、充電路の両端に設けられた対をなす充電用正極端子106および負極端子107と、放電時には負極端子107と放電路を形成する放電用正極端子105とを有する。充電用正極端子106及び負極端子107は、それぞれ充電器10の出力端子25A、25Bと電気的に接続される。放電用正極端子105は、電池パック100が電動工具に接続されたときに、電動工具の正極端子と接続され、負極端子107が電動工具の負極端子と接続されるようになっている。
【0029】
さらに、電池パック100は、電池セル102の保護回路103と、電池セル102を流れる電流を検出する電流検出抵抗101と、充電時に電池セル102が異常温度に達した場合に充電路を開放するサーマルプロテクタ104と、電池パック100の定格電圧、単位セルの種類、総数及び接続形態等を示す情報をその種類に応じて異なる抵抗値として有する識別手段111と、電池セル102の近傍に配置され充電時の電池セル102の温度を検出する温度検出手段112とを有する。
【0030】
識別抵抗111は抵抗からなり、識別端子109及び充電器10の端子25Dを介して充電器10の電池パック識別部26に接続される。このとき、定電圧回路28の出力である基準電圧Vccに接続された抵抗を有する電池パック識別部26は、基準電圧Vccを電池パック識別部26の抵抗と識別抵抗111とで分圧し、分圧電圧を充電器10の制御回路24に出力する。識別抵抗111によって、充電器10は、電池パック100の定格電圧、電池セルの種類、総数及び接続形態等を判別することができる。なお、単位セルがニッケル水素セルやリチウムイオンセルからなる場合、電池パック100は識別抵抗111を有するが、単位セルがニカドセルからなる場合、電池パック100は識別抵抗111を有さないようにしても良い。この場合、充電器10は、端子25Eからの入力信号はあるが端子25Dからの入力信号がないために、接続された装置がニカドセルからなる電池パックと判別することができる。
【0031】
温度検出手段112はサーミスタからなり、温度端子110及び充電器10の端子25Eを介して充電器10の温度検出部27に接続される。この場合、定電圧回路28の出力である基準電圧Vccに接続された抵抗を有する温度検出部27は、基準電圧Vccを電流検出抵抗101とサーミスタ112とで分圧し、分圧電圧を充電器10の制御回路24に出力する。サーミスタ112は、温度によってその抵抗値が変化するため、分圧電圧も変化することになり、サーミスタ112によって、充電器10は、電池パック100の温度を検出することができる。
【0032】
本実施の形態では、電池セル102は、単位セルあたり3.6Vのリチウムイオン電池であり、電池パック100としては定格14.4Vとなる。保護回路103は、各単位セルのセル電圧及び電流検出抵抗101に流れる電流をモニタし、単位セルの電圧が第1所定値以上(例えば4.2V)となる過充電状態若しくは第2所定値以下(例えば2.0V)となる過放電状態、又は単位セルの電流が第3所定値以上(例えば25A)となる過電流状態を検出すると、端子8から充電器10に向けて異常信号を出力する。
【0033】
電気機器30は、例えば缶冷温器、扇風機、蚊取り器、ライトやラジオなどの小型の電気機器からなる。電気機器30は、図4に示すように、充電器10の接続部18に接続可能であり、充電器10の出力端子25A,25Bと接続可能な入力端子31A,31Bと、充電器の端子25Cに接続可能な信号端子35Cとを有する。電気機器30は、入力端子31A,31Bを介して供給される電力によって動作可能であり、さらに、制御回路32と、電気機器30の動作をオン・オフするスイッチ33とを有する。制御回路32は、図示せぬ記憶部を有し、電気機器30の動作に必要な電圧、電流、温度、動作時間、制御プログラムを電力供給関連信号として記憶部に記憶している。
【0034】
電気機器30は、充電器10に装着されると、制御回路32が、図5に示すように、電気機器30の動作に必要な電圧、電流、温度、動作時間、制御プログラムを、信号端子35Cを介して充電器10に向けて出力する。なお、制御プログラムとは、電気機器30の動作を制御するために使用されるプログラムを指す。また、電子機器30は、その機能に関連する動作条件を変更するための操作パネル(図示せぬ)を有して、電圧、電流、温度、動作時間、又は制御プログラムを変更することができる。
【0035】
次に、充電器10の動作について、図6を参照して説明する。
【0036】
まず、充電器10の接続部18に電池パック100及び電気機器30のいずれか一方が装着される(ステップS1)。次に、ステップS2にて、充電器10の制御回路24は、接続部18に装着された装置(以下、装着装置と称す)と通信可能か否かを判別する。ステップS2において、充電器10が接続部18の装着装置と通信可能であれば(ステップS2:YES)、制御回路24は、当該装着装置は電気機器30と判別する。一方、装着装置と通信が不可能であれば(ステップS2:NO)、制御回路24は、当該装着装置は電池パック100と判別する。
【0037】
装着装置との通信ができない場合(ステップS2:NO)、充電器10は、電池パック100の充電制御を開始する。最初に、ステップS3に進み、制御回路24は、電池パック100の識別抵抗111が識別可能であるか否かを判別する。識別抵抗111が識別できれば(ステップS3:YES)、ステップS4に進み、電池パック100の種類が、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池のいずれであるかを判別する。
【0038】
一方、ステップS3にて、電池パック100の識別抵抗111が識別できない場合(ステップS3:NO)、ステップS8に進み、電池パック100の電池電圧を検出する。電池電圧が検出された場合、すなわち電圧が0ボルトでなければ(ステップS8:YES)、ステップS9にて、電池パック100の種類はニカド電池パックであると判別する。
【0039】
ステップS8において、電池パック100の電池電圧が検出できない場合(ステップS8:NO)、ステップS10において、電池パック100に少電流を流して充電を試み、電池パック100の電池電圧に上昇がみられるか否かを確認する(ステップS11)。電池電圧が上昇すれば(ステップS11:YES)、電池パック100は、ニカド電池パックであると判別する(ステップS9)。これに対し、電池パック100に少電流を流したにも拘わらず電池電圧が上昇しない場合(ステップS11:NO)、電池パック100の種類が認識不可能、又は電池パック100が故障していると判別し(ステップS12)、電池パック100の充電を終了する(ステップS13)。
【0040】
電池パック100の種類が判明した場合、ステップS5にて、種類に応じて電池パック100の充電を開始する。電池パック100の充電は、ニカド電池パック、ニッケル水素電池パックに対しては周知の定電流充電が行われ、リチウムイオン電池パックに対しては定電流−定電圧充電が行われる。充電が開始されると、ステップS6にて、電池パック100が満充電になったか否か、充電開始から所定時間を経過したか否か、又は電池パック100に異常事態が発生したか否かが判断される。電池パック100が満充電されたり、充電開始から所定時間が経過したり、又は異常事態が発生した場合(ステップS6:YSE)、充電器10は、電池パック100の充電を終了する(ステップS7)。
【0041】
なお、電池パック100の満充電判断は、周知のように、−ΔV検出(ニカド電池パック、ニッケル水素電池パック)や充電電流が所定値以下に低下した場合(リチウムイオン電池パック)に満充電と判断する。また、充電中に、制御回路24は、図示しない周知の電池電圧検出手段、充電電流検出手段、電池温度検出手段等により電池パック100の充電状態(電池状態)を常に監視しており、満充電検出や充電異常等を判断する。
【0042】
一方、ステップS2にて、装着装置と通信できた場合(ステップS2:YES)、すなわち、装着完了から所定時間内に、充電器10の制御回路24に、装着装置から装置情報の入力が認められたため、制御回路24は、装着装置は電気機器30であると判断する。この場合、電気機器30から入力された装置情報は、電気機器30の制御回路32からの電力供給関連信号を含む。電力供給関連信号は、例えば、電圧(制御値及び異常値)、電流(制御値及び異常値)、温度(制御値及び異常値)、動作時間(制御値及びタイムアウト値)である。ステップS20において、充電器10の制御回路24は、電気機器30と充電器10で相互に通信を行い、電気機器30から受け取った電力供給関連信号に基づいて充電回路12を制御する。
【0043】
また、充電器10が、電気機器30に対して充電器情報、例えば最大出力電流、最大出力電圧を出力した後に、電気機器30が、その充電器情報に応じて変更された電力供給関連信号を充電器10に対して出力しても良い。この場合、電気機器30は、充電器10の性能を最大限に利用することができる。なお、充電器10の制御回路24にも記憶部が内蔵されており、記憶部には、充電器情報が記憶されている。
【0044】
次に、ステップS21にて、電気機器30のスイッチ33がオンにされると、充電器10から電気機器30に対して、電力供給関連信号に応じた電力供給が開始される(ステップS22)。次に、電気機器30のスイッチ33のオフ、又は、電気機器30に電圧、電流、或いは温度の異常、又は給電開始からの所定の時間の経過の少なくとも1つが発生した、と判断された場合は(ステップS23:YES)、充電器10は電気機器30への電力供給を停止する(ステップS24)。
【0045】
一方、電気機器30のスイッチ33のオフ、又は電気機器30の電圧、電流、或いは温度の異常の発生、又は給電開始から所定の時間の経過のいずれも生じない場合(ステップS23:NO)、電気機器30の動作条件に変更があれば(ステップS25:YES)、変更された動作条件に対応する入力電圧値、電流値、温度、又は時間などの制御値を変更し(ステップS26)、電気機器30の稼働状態のモニタを継続する(ステップS23)。一方、電気機器30の動作条件に変更がない場合(ステップS25:NO)、現状の動作条件で充電器10から電気機器30への給電を継続し(ステップS27)、電気機器30の稼働状態のモニタを継続する(ステップS23)。
【0046】
上述のように、充電器10の電池パック100が接続される接続部18に、電気機器30を接続できるように構成することによって、充電器10が電池パック100を充電しないときに、充電器10の電力を電気機器30に供給して電気機器30を動作させることができる。
【0047】
また、接続部18は、選択的に電池パック100または電気機器30と機械的に接続でき且つ内部の充電回路12と電気的に接続可能に構成されているので、充電器10は、多機能ながらも接続部18を単一にでき、小型に構成できる。
【0048】
さらに、電気機器30への電力供給に必要な情報は、電力供給関連信号として、電気機器30が充電器10に対して提供する。従って、電力供給信号として、電気機器30の入力電圧、入力電流、温度情報、動作時間、或いは制御プログラムと様々な信号を充電器に送ることができるので、充電器10は、接続された電気機器30に応じた電力供給を行うことができる。
【0049】
また、充電器10は、外部への電力供給に必要な情報を自ら検出する必要がないので、情報検出に関するユニットを内部に有する必要がない。従って、充電器10の部品総数を減らして安価に製造することができる。
【0050】
次に、電気機器30として扇風機30aを充電器10に接続した場合の充電器10の動作について図7及び図8を参照して説明する。扇風機30aは、図7(1)に示すように、差込式充電器10に接続可能とする扇風機30aと、図7(2)に示すように、スライド式充電器10に接続可能とする扇風機30aとがある。しかし、いずれのタイプの扇風機であっても、接続部18との構造が異なるのみであり、動作は同じである。
【0051】
まず、充電器10の接続部18に扇風機30aが装着される(ステップS101)。次に、ステップS102にて、充電器10の制御回路24は、扇風機30aと通信可能か否かを判別する。すなわち、扇風機30aの接続部18への装着完了から所定時間内に、充電器10の制御回路24に、扇風機から装置情報として機器信号の入力があると、扇風機30aと通信可能であるので、制御回路24は、扇風機30aが装着されたことを認識し(ステップS102:YES)、ステップS120に進む。一方、扇風機30aと通信が不可能であれば(ステップS102:NO)、扇風機30aが故障しているか、あるいは誤って電池パックが装着された可能性があるので、図6に示す充電プロセスに進む。
【0052】
扇風機30aから入力された機器信号は、扇風機30aの制御回路32からの電力供給関連信号を含む。電力供給関連信号は、例えば、定電圧制御値、電流異常値(過電流値)、温度異常値(オーバーヒート発生等)、連続運転時間(タイムアウト値)である。ステップS120にて、充電器10の制御回路24は、扇風機30aと相互に通信を行い、扇風機30aから受け取った電力供給関連信号に基づいて充電回路12を制御する。また、充電器10が、扇風機30aに対して、充電器情報、例えば最大出力電流、最大出力電圧を出力した後に、扇風機30aは、その充電器情報に応じて変更された電力供給関連信号を充電器10に対して出力しても良い。この場合、扇風機30aは、充電器10の性能を最大限に利用することができる。
【0053】
次に、ステップS121にて、扇風機30aのスイッチ33がオンにされると、充電器10から扇風機30aに対して、電力供給関連信号に応じた電力供給が開始される(ステップS122)。この場合、制御回路24は、扇風機30aに対して定電圧制御を行う。次に、扇風機30aのスイッチ33のオフ、又は、扇風機30aに電圧、電流、或いは温度の異常、又は給電開始からの所定の時間の経過の少なくとも1つが発生した、と判断された場合は(ステップS123:YES)、充電器10は扇風機30aへの電力供給を停止する(ステップS124)。
【0054】
一方、扇風機30aのスイッチ33のオフ、又は扇風機30aの電圧、電流、或いは温度の異常の発生、又は給電開始から所定の時間の経過のいずれも生じない場合(ステップS123:NO)、例えば発生させる風量や運転時間など、扇風機30aの動作条件に変更があれば(ステップS125:YES)、出力電圧を変更したり、又は運転時間を変更するなどの定電圧制御の制御値を変更し(ステップS126)、扇風機30aの稼働状態のモニタを継続する(ステップS123)。一方、扇風機30aの動作条件に変更がない場合(ステップS125:NO)、現状の動作条件で充電器10から扇風機30aへの給電を継続し、扇風機30aの稼働状態のモニタを継続する(ステップS123)。
【0055】
次に、電気機器30として缶冷温器30bを充電器10に接続した場合の充電器10の動作について図9及び図10を参照して説明する。缶冷温器30bは、ペルチェ素子を用いて缶飲料の保温又は冷却を行う装置である。図9(1)に示すように、差込式充電器10に接続可能とする缶冷温器30bと、図9(2)に示すように、スライド式充電器10に接続可能とする缶冷温器30bとがある。しかし、いずれのタイプの缶冷温器であっても、充電器10の接続部18との接続構造が異なるのみであり、動作は同じである。
【0056】
まず、充電器10の接続部18に缶冷温器30bが装着される(ステップS201)。次に、ステップS202にて、充電器10の制御回路24は、缶冷温器30bと通信可能か否かを判別する。すなわち、缶冷温器30bの接続部18への装着完了から所定時間内に、充電器10の制御回路24に、缶冷温器30bから機器信号の入力があると、缶冷温器30bと通信可能であるとして、制御回路24は、缶冷温器30bが装着されたことを認識し(ステップS202:YES)、ステップS220に進む。一方、缶冷温器30bと通信が不可能であれば(ステップS202:NO)、缶冷温器30bが故障しているか、あるいは誤って電池パックが装着された可能性があるので、図6に示す充電プロセスに進む。
【0057】
缶冷温器30bから入力された機器信号は、缶冷温器30bの制御回路32からの電力供給関連信号を含む。電力供給関連信号は、例えば、温度制御値、電流異常値(過電流値)、温度異常値(オーバーヒート発生等)、連続運転時間(タイムアウト値)である。ステップS220にて、充電器10の制御回路24は、缶冷温器30bと相互に通信を行い、缶冷温器30bから受け取った電力供給関連信号に基づいて充電回路12を制御する。また、充電器10が、缶冷温器30bに対して、充電器情報、例えば最大出力電流、最大出力電圧を出力した後に、缶冷温器30bが、その充電器情報に応じて変更された電力供給関連信号を充電器10に対して出力しても良い。この場合、缶冷温器30bは、充電器10の性能を最大限に利用することができる。
【0058】
次に、ステップS221にて、缶冷温器30bのスイッチ33がオンにされると、充電器10から缶冷温器30bに対して、電力供給関連信号に応じた電力供給が開始される(ステップS222)。この場合、缶冷温器30bは、充電器10からの給電により、温度制御値に応じて缶を保温したり冷却したりする。次に、缶冷温器30bのスイッチ33のオフ、又は、缶冷温器30bに電圧、電流、或いは温度の異常、又は給電開始からの所定の時間の経過の少なくとも1つが発生した、と判断された場合は(ステップS223:YES)、充電器10は缶冷温器30bへの電力供給を停止する(ステップS224)。
【0059】
一方、缶冷温器30bのスイッチ33のオフ、又は缶冷温器30bの電圧、電流、或いは温度の異常の発生、又は給電開始から所定の時間の経過のいずれも生じない場合(ステップS223:NO)、例えば設定温度や運転時間など、缶冷温器30bの動作条件に変更があれば(ステップS225:YES)、出力電流を変更したり、又は運転時間を変更し(ステップS226)、缶冷温器30bの稼働状態のモニタを継続する(ステップS223)。一方、缶冷温器30bの動作条件に変更がなくても(ステップS225:NO)、缶冷温器30bの検出された温度が設定温度と異なれば(ステップS227:NO)、フィードバック制御を行って缶冷温器30bの検出温度が設定温度になるように制御し(ステップS228)、缶冷温器30bの稼働状態のモニタを継続する(ステップS223)。一方、缶冷温器30bの検出温度が設定温度であれば(ステップS227:YES)、缶冷温器30bの稼働状態のモニタを継続する(ステップS223)。
【0060】
上述のように、扇風機30aや缶冷温器30bを充電器10に接続し、充電器10からの給電が可能となるので、電池パック100の充電を行わないときの充電器10の用途の多角化を図ることができる。
【0061】
なお、充電器10で給電可能な電気機器としては、上記実施の形態に限定されず、接続部18に電気的に接続可能な適宜の電気機器を対象とする。
【0062】
尚、本発明の充電器は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電池パックの充電のみならず、缶冷温器、扇風機、蚊取り器、ライトやラジオなどの小型の電気機器に電力供給を行い得る、いわゆる多機能充電器に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 充電器
18 接続部
24 制御部
30 電気機器
100 電池パック
図1
図2
図3
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図6
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図8
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図10