(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892392
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】締付固定具
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20160310BHJP
F16L 3/137 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
F16B2/08 H
F16L3/137
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-515946(P2013-515946)
(86)(22)【出願日】2011年6月20日
(65)【公表番号】特表2013-534995(P2013-534995A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】FR2011051405
(87)【国際公開番号】WO2011161364
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年5月7日
(31)【優先権主張番号】1054984
(32)【優先日】2010年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507341552
【氏名又は名称】エタブリスマン カジョー
【氏名又は名称原語表記】ETABLISSEMENTS CAILLAU
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】リゴレ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】プレヴォ,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ジャクラン,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】メスナール,エリック
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−515376(JP,A)
【文献】
特開昭63−167189(JP,A)
【文献】
特開平04−231787(JP,A)
【文献】
特開平05−079588(JP,A)
【文献】
特開平04−210110(JP,A)
【文献】
実公昭37−024542(JP,Y1)
【文献】
特開平10−244844(JP,A)
【文献】
登録実用新案第34630(JP,Z1)
【文献】
特開平11−280971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/08
F16L 3/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のベルト(10;110;210)と、
互いに離隔しつつ前記ベルトに接続された締付け用の2つのつまみ(12,14;212,214)と、
前記ベルトと協働して前記2つのつまみの間に架け渡される架橋板(20;120;220)と、
を備えた締付固定具であって、
前記2つのつまみが、前記締付固定具の締付け時に互いに近づけられるものであり、
前記ベルトが、前記2つのつまみの一方である第1つまみ(14)を支持すると共に前記締付固定具の締付け状態において前記架橋板の第1端部(20A;220A)を覆う重複部(22;122;222)を含み、
前記重複部の内面(22A)に、前記締付固定具の締付け中に前記第1端部(20A;220A)が挿入され且つ前記締付固定具の締付け状態において前記第1端部(20A;220A)が前記締付固定具の径方向外側に露出しないように前記第1端部(20A;220A)を覆う後退部(24;224)が形成されており、
前記後退部が、前記ベルトの長手方向に延在する中心線(L)の両側に2つの面(26A,26B;226A,226B)を形成する端壁を有する第1ジョッグル(26;226)によって画定されており、
前記2つの面が、前記中心線に対して対称に設けられていると共に、前記長手方向及び前記ベルトの幅方向の両方に対してそれぞれ傾斜し、前記ベルトの幅を半分に分割した領域(lc)に亘ってそれぞれ延在していることを特徴とする、締付固定具。
【請求項2】
前記第1端部(20A;220A)が、先端(21C;221C)で交わると共に前記2つの面(26A,26B;226A,226B)と同様に傾斜した2つの自由縁(21A,21B;221A,221B)を有することを特徴とする、請求項1に記載の締付固定具。
【請求項3】
前記架橋板(20;120)の第2端部(20B)が、前記2つのつまみの他方である第2つまみ(12)の近傍において前記ベルトの内面に形成された別の後退部(34)に挿入されており、
前記別の後退部が、前記中心線(L)の両側に2つの面(36A,36B)を形成する端壁を有する第2ジョッグル(36)によって画定されており、
前記2つの面が、前記中心線に対して対称に設けられていると共に、前記長手方向及び前記幅方向の両方に対してそれぞれ傾斜し、前記ベルトの幅を半分に分割した領域(lc)に亘ってそれぞれ延在していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の締付固定具。
【請求項4】
前記第2端部(20B)が、先端(21C')で交わると共に前記第2ジョッグル(36)の前記端壁と同様に傾斜した2つの自由縁(21A',21B')を有することを特徴とする、請求項3に記載の締付固定具。
【請求項5】
前記第1ジョッグル(26;226)の前記端壁が、V字型であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の締付固定具。
【請求項6】
前記第2ジョッグル(36)の前記端壁が、V字型であることを特徴とする、請求項3及び請求項1〜5のいずれか一項に記載の締付固定具。
【請求項7】
前記V字型を構成する2つの分岐部が、60〜90°の内角(α)を形成していることを特徴とする、請求項5又は6に記載の締付固定具。
【請求項8】
前記V字型を構成する2つの分岐部が、70〜80°の内角(α)を形成していることを特徴とする、請求項7に記載の締付固定具。
【請求項9】
前記架橋板(20;120)の第2端部(20B)が、前記ベルト(10;110)における前記2つのつまみの他方である第2つまみ(12)を支持する部分に固定されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の締付固定具。
【請求項10】
前記第2端部(20B)が、かしめ及びクリンチのいずれかの方法で、前記ベルト(10)に固定されていることを特徴とする、請求項9に記載の締付固定具。
【請求項11】
前記架橋板の前記第2端部(20B)及び前記ベルトの一方が、前記架橋板及び前記ベルトのうち対応する部材の長手方向に延在する2つの縁のそれぞれに形成された、少なくとも2つの切欠部(28A,28B;128A,128B)を有し、
前記架橋板の前記第2端部(20B)及び前記ベルトの他方が、前記架橋板及び前記ベルトのうち対応する部材の長手方向に延在する2つの縁のそれぞれに形成されると共に前記切欠部のそれぞれに挿入される、少なくとも2つの突出部(38A,38B;138A,138B)を有することを特徴とする、請求項9に記載の締付固定具。
【請求項12】
前記第2端部(20B)が、前記架橋板の長手方向に延在する2つの縁(20',20")のそれぞれに形成された、前記切欠部(28A,28B)を有し、
前記ベルトが、内面に、前記ベルトの長手方向に延在する2つの縁のそれぞれに形成されると共に前記切欠部のそれぞれに挿入される、エンボス加工による前記突出部(38A,38B)を有することを特徴とする、請求項11に記載の締付固定具。
【請求項13】
前記つまみ(12,14)が、前記ベルト(10)における径方向に突出した部分であって、締付けねじ(16)の軸(16A)が挿入される孔が設けられた部分によって、構成されており、
前記軸が、前記つまみの背面を支持するねじ保持部(16B,18)と協働することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の締付固定具。
【請求項14】
前記ベルト(10)が、凹状の断面を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の締付固定具。
【請求項15】
前記凹状の断面が、V字型であることを特徴とする、請求項14に記載の締付固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のベルトと、互いに離隔しつつ前記ベルトに接続された締付け用の2つのつまみと、前記ベルトと協働して前記2つのつまみの間に架け渡される架橋板と、を備えた締付固定具であって、前記2つのつまみが、前記締付固定具の締付け時に互いに近づけられるものであり、前記ベルトが、前記2つのつまみの一方である第1つまみを支持する
と共に前記締付固定具の締付け状態において前記架橋板の第1端部を覆う重複部を含み、前記重複部の内面に、前記締付固定具の締付け中に前
記第1端部が挿入され
且つ前記締付固定具の締付け状態において前記第1端部が前記締付固定具の径方向外側に露出しないように前記第1端部を覆う後退部が形成されている、締付固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の締付固定具は、平坦なベルトを含む締付固定具に適用されるものとして、特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に記載の締付固定具では、架橋板の端部が細長い舌状部で構成されており、ベルトの内面に形成された後退部に、舌状部が挿入される溝が形成されている。舌状部は、ベルトの長手方向に沿った長尺な側面を有すると共に、ベルトの幅方向(ベルトの長手方向と直交する方向)に沿った面を介して架橋板の端部以外の部分に接続されている。溝も、舌状部と同様、ベルトの長手方向に沿った長尺な側面を有する。溝及び舌状部は、共に、ベルトの長手方向に延在する中心線を実質的に中心として設けられており、ベルトの幅の1/4〜1/3程度の小さい幅を有する。
【0004】
舌状部は、締付固定具の締付け時に、溝に挿入される。このとき、溝の深さが舌状部の厚みと実質的に一致しているため、締付固定具の内面は、締付固定具によって締め付けられるもの(対象物)を実質的に連続的に支持する。即ち、舌状部が設けられた部分では、ベルトにおける溝の幅方向両側の縁と、舌状部の内面とで、連続的に、対象物が支持される。対象物を連続的に支持することは、対象物が2つのダクトやチューブの連結部分又は1のパイプと末端部との連結部分であって気密性が必要とされる部分である場合に、特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許発明第2522086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に高気密性を得るために必要となる締付力に関して、締付固定具に期待される性能がますます高くなっている。
【0007】
また、経済的観点から、ベルトの作製に用いられる材料をできるだけ抑制することが望まれている。これは、通常、ベルトの厚みを小さくすることで実現される。しかしながら、ベルトの厚みを小さくすると、締付力が大きい場合、ベルトが好ましくない態様で変形してしまい、締付性能及び気密性が悪化し得る。そのため、大きな締付力に耐え得ると共に少ない材料で作製された剛なベルトを用いることが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、上記の制限に対応可能であり、大きな締付力に耐え得ると共に、対象物を連続的に支持することができる、締付固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の構成により解決される。即ち、本発明に係る締付固定具は、前記後退部が、前記ベルトの長手方向に延在する中心線の両側に2つの面を形成する端壁を有する第1ジョッグルによって画定されており、前記2つの面が、前記中心線に対して実質的に対称に設けられていると共に、前記長手方向及び前記ベルトの幅方向の両方に対してそれぞれ傾斜し、前記ベルトの幅を実質的に半分に分割した領域に亘ってそれぞれ延在している。
【0010】
本発明では、後退部を画定する第1ジョッグルの端壁(即ち、第1ジョッグルにおける架橋板の第1端部の自由端に対向する内側部分)が、特有の形態を有する。
【0011】
本願の出願人は、上記端壁に、ベルトの長手方向及び幅方向の両方に対してそれぞれ傾斜した2つの面を設けると共に、当該2つの面を、ベルトの幅を実質的に半分に分割した領域に亘ってそれぞれ延在させることで、第1ジョッグルによりベルトの剛性を高めることが可能であることを見出した。
【0012】
即ち、本発明によれば、第1ジョッグルが、対象物の連続的な支持を実現するための後退部を画定するという機能、及び、大きな締付力による好ましくない変形を防止するために当該細長い片を局所的に補強する機能、という2つの機能を有する。
【0013】
本発明では、前記第1端部が、先端で交わると共に前記2つの面と実質的に同様に傾斜した2つの自由縁を有することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、架橋板の第1端部が第1ジョッグルの端壁の形状に対応した形状を有するため、締付固定具の締付け時に、架橋板の第1端部の自由端がその外縁の略全体に亘って第1ジョッグルの端壁に近接する。これにより、当該部分において、対象物を支持するベルトの幅を大きく確保することができる。
【0015】
また、上記のように、架橋板の第1端部は、締付固定具の締付け中に、後退部に挿入される。しかしながら、対象物が締付けによって径方向に変形し、対象物の締付力に対する反力によって架橋板の第1端部における後退部への挿入が阻害され得る。架橋板の第1端部が特許文献1に記載のような細長い舌状部で構成されていると、締付力が特に大きい場合、第1端部を後退部に挿入し難く、また、対象物の締付力に対する反力によって第1端部が延出方向と逆の方向に折れ曲がり易い。本願の出願人は、架橋板の第1端部を、先端で交わると共に傾斜した2つの自由縁が設けられた構成とすることにより、上記の問題を軽減できることを見出した。当該架橋板の自由縁は、合理的な形状(streamlined)であり、架橋板の挿入を阻害し得る対象物からの力に対して効果的な抵抗力を実現する。
【0016】
本発明では、前記架橋板の第2端部が、前記2つのつまみの他方である第2つまみの近傍において前記ベルトの内面に形成された別の後退部に挿入されており、前記別の後退部が、前記中心線の両側に2つの面を形成する端壁を有する第2ジョッグルによって画定されており、前記2つの面が、前記中心線に対して実質的に対称に設けられていると共に、前記長手方向及び前記幅方向の両方に対してそれぞれ傾斜し、前記ベルトの幅を実質的に半分に分割した領域に亘ってそれぞれ延在していることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ベルトにおける第2つまみ近傍に設けられた別の後退部により、当該部分においてベルトの剛性を局所的に高めることができる。また、架橋板の第2端部が上記別の後退部に挿入されていることにより、対象物の連続的な支持が実現されると共に、架橋板をベルトとは別の部材で構成して適宜の手段でベルトに固定することができる。
【0018】
本発明では、前記第2端部が、先端で交わると共に前記第2ジョッグルの前記端壁と実質的に同様に傾斜した2つの自由縁を有することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、架橋板の第2端部が第2ジョッグルの端壁の形状に対応した形状を有することにより、当該部分において、対象物を支持するベルトの幅を大きく確保することができる。
【0020】
本発明では、前記第1ジョッグルの前記端壁及び前記第2ジョッグルの前記端壁の少なくとも一方が、実質的にV字型であることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、V字型にすることで、端壁の形成が容易になると共に、上述した効果を得ることができる。なお、V字の先端部分は、鋭角であってもよいし、若干丸みを帯びてもよいし、平坦であってもよい。
【0022】
本発明では、前記架橋板の第2端部が、前記ベルトにおける前記2つのつまみの他方である第2つまみを支持する部分に固定されていることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、架橋板を、ベルトとは別の部材で構成し、ベルトに固定することができる。
【0024】
本発明では、前記第2端部が、かしめ及びクリンチのいずれかの方法で、前記ベルトに固定されていることが好ましい。
【0025】
溶接等の他の方法で架橋板の第2端部をベルトに固定することも可能であるが、かしめ及びクリンチのいずれかの方法によれば、ベルトを構成する材料の表面を損傷することなく、架橋板の第2端部をベルトに固定することができる。
【0026】
本発明では、前記架橋板の前記第2端部及び前記ベルトの一方が、前記架橋板及び前記ベルトのうち対応する部材の長手方向に延在する2つの縁のそれぞれに形成された、少なくとも2つの切欠部を有し、前記架橋板の前記第2端部及び前記ベルトの他方が、前記架橋板及び前記ベルトのうち対応する部材の長手方向に延在する2つの縁のそれぞれに形成されると共に前記切欠部のそれぞれに挿入される、少なくとも2つの突出部を有することが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、局所的な切削加工やダイによる浮き出し加工等の機械的加工によって、特に容易に、架橋板をベルトに固定することができる。
【0028】
本発明では、前記ベルトが、実質的に凹状の断面を有することが好ましい。また、前記凹状の断面が、実質的にV字型であることが好ましい。
【0029】
本発明は、凹状の断面を有するベルトを含む締付固定具に、特に好適に適用可能である。このような締付固定具は、特に、ベルトの凹部内に挿入される凸部が互いに対向する端部にそれぞれ設けられた2つのチューブを連結するのに用いられる。上記構成では、第1ジョッグルの端壁における傾斜した2つの面が、ベルトの凹部と結合される。即ち、ベルトを構成する材料は、上記2つの面が設けられる領域において、第1ジョッグル及び凹部の両方を形成するように、変形される。具体的には、上記2つの面は、ベルトの内面において凹部を画定する傾斜面に亘って延在する。そのため、上記2つの面は、ベルトの長手方向及び幅方向のみならず、ベルトの径方向に対しても傾斜する。したがって、上記2つの面を多くの量の材料が含まれる領域に割り当て、剛性を大きく向上させる領域を含む加工硬化部をベルトに局所的に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る締付固定具を示す側面図である。
【
図2】重複部の内面及び架橋板の第1端部を特に示す斜視図である。
【
図3】ベルトの内面における架橋板の第2端部が設けられた部分を特に示す斜視図である。
【
図4】
図3と同じ角度から見た分解斜視図であって、架橋板をより明確に示すために架橋板をベルトから分離させた分解斜視図である。
【
図5A】
図1の矢印VA方向から見た、本発明の第1実施形態に係る締付固定具の内面を示す部分図である。
【
図5B】
図1の矢印VB方向から見た、本発明の第1実施形態に係る締付固定具の内面を示す部分図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る締付固定具を示す側面図である。
【
図7A】
図6の矢印VIIA方向から見た、本発明の第2実施形態に係る締付固定具の内面を示す部分図である。
【
図7B】
図6の矢印VIIB方向から見た、本発明の第2実施形態に係る締付固定具の内面を示す部分図である。
【
図8】架橋板をベルトに固定する手段の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明及びその効果は、以下に述べる実施形態に関する詳細な説明によって、より明確に理解されるであろう。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明の第1実施形態に係る締付固定具は、
図1に示すように、金属製のベルト10、及び、互いに離隔した締付け用の2つのつまみ12,14を有する。つまみ12,14は、公知の方法により、ベルト10における径方向に突出した部分であって、締付けねじ16の軸16Aが挿入される孔が設けられた部分によって、構成されている。軸16Aは、つまみ12,14の背面を支持するねじ保持部と協働する。本実施形態において、ねじ保持部は、第2つまみ12の背面を支持する締付けねじ16の頭16B、及び、ワッシャ19を介して第1つまみ14の背面を支持するナット18によって、構成されている。
【0033】
本発明の第1実施形態に係る締付固定具は、ベルト10と協働して2つのつまみ12,14の間に架け渡される、架橋板20をさらに有する。
図1は、締付固定具の非締付け時の状態(非締付け状態)を示しており、このとき架橋板20の第1端部20Aは、ベルト10における第1端部20Aと対向する部分から若干離隔している。また、このとき第1端部20Aは、第1つまみ14の近傍において、2つのつまみ12,14の間に位置している。ベルト10は、締付固定具の締付け時の状態(締付け状態)において第1端部20Aを覆う重複部22を含む。重複部22の内面22Aは、後退部24を有する。後退部24は、
図2に示すように、締付固定具の締付け中に第1端部20Aが挿入される部分である。
【0034】
後退部24における第1つまみ14から離隔した部分は、第1ジョッグル26によって画定されている。第1ジョッグル26は、ベルト10に実質的に径方向の段部を形成することで構成されている。後退部24の内面を基準とした第1ジョッグル26の高さhは、金属片における架橋板20が設けられた部分の厚みeと実質的に一致している。したがって、第1端部20Aが後退部24に挿入されるとき、架橋板20の内面がベルト10の内面と連続するように配置される。
【0035】
第1ジョッグル26の端壁(即ち、後退部24における第1端部20Aと対向する内面)は、
図2及び
図5Aに示すように、ベルト10の長手方向に延在する中心線Lの両側に、傾斜した2つの面26A,26Bを有する。当該2つの面26A,26Bは、中心線Lに対して実質的に対称に設けられていると共に、ベルト10の長手方向(中心線Lに沿った方向)及び幅方向Tの両方に対してそれぞれ傾斜している。
【0036】
2つの面26A,26Bは、ベルト10の幅を実質的に半分に分割した領域lcに亘ってそれぞれ延在している。本実施形態において、2つの面26A,26Bは、当該2つの面26A,26Bが交わると共に中心線Lに位置する接点26Cから、ベルト10の長手方向に沿った両側の縁10A,10Bまで、それぞれ延在している。ここで、「ベルトの幅を実質的に半分に分割した領域」とは、ベルトの幅を半分に分割した領域の全て又はほとんど全て(好ましくは当該領域の80%以上、少なくとも50%以上)を意味する。
【0037】
第1ジョッグル26の端壁は、中心線Lに対して対称である。
【0038】
本実施形態において、第1ジョッグル26の端壁は、
図5Aの下側から見た場合に特によく理解されるように、実質的にV字型である。
図5Aの下側から見た場合、2つの面26A,26Bは、V字の2つの分岐部を構成すると共に、V字の先端に対応する接点26Cで交わっている。当該先端は、若干丸みを帯びており、ベルト10の全幅lの略1/5に相当する幅lpに亘って延在している。
【0039】
本実施形態において、V字型を構成する2つの分岐部(2つの面26A,26Bによって構成される部分)は、
図5Aに示すように、直線状である。しかしながら、当該分岐部は、本発明の技術的範囲を逸脱しない限り、
図5Cに示すように若干曲がった形状であってもよい。
図5Cに示す2つの面26A’,26B’は、中心線Lに対して対称である。
【0040】
図5Aに、V字型を構成する2つの分岐部(2つの面26A,26Bによって構成される部分)の間に形成された内角αが示されている。内角αは、60〜90°(好ましくは70〜80°)である。
【0041】
図5Cに、2つの直線a1,a2の間に形成された内角αが示されている。直線a1,a2は、第1ジョッグル26の端壁と中心線Lとの交点と、2つの面26A’,26B’における当該交点とは反対側の端部とによって、それぞれ画定される。
図5Cに示す内角αは、第1ジョッグル26の端壁による傾斜した2つの分岐部の間に形成された内角に対応し、60〜90°(好ましくは70〜80°)である。
【0042】
第1端部20Aは、
図2及び
図5Bに示すように、先端21Cで交わると共に傾斜した2つの自由縁21A,21Bを有する。先端21Cは、中心線L上に位置している。自由縁21A,21Bの傾きは、2つの面26A,26Bの傾きと実質的に同じである。
【0043】
締結固定具が締付け状態にあるときの、後退部24内における第1端部20Aの位置が、
図5Aに破線で示されている。このとき自由縁21A,21Bは、第1ジョッグル26の端壁の2つの面26A,26Bのそれぞれと対向している。本実施形態において、自由縁21A,21Bは、
図5Aの下側から見た場合、直線状である。しかしながら、自由縁は、
図5Cに示す面26A’,26B’のように曲がった形状であってもよい。
【0044】
締結固定具が締付け状態にあるとき、自由縁21A,21Bが第1ジョッグル26の端壁に近接し、締付固定具の内面が、第1端部20Aにおける第1ジョッグル26の端壁に近接した部分においても、対象物を支持することが理解されるであろう。なお、自由縁21A,21Bと第1ジョッグル26の端壁との隙間jにおいて、若干、対象物の支持の連続性が途切れる。しかしながら、当該若干の途切れは対象物の支持の連続性にさほど悪影響を及ぼすものではない。なぜなら、締付固定具の幅方向に沿って隙間jの領域を通る直線を引いた場合、当該直線は、ベルト10、第1ジョッグル26の端壁の近傍、及び架橋板20のいずれかによる連続支持部(ベルト10の幅と略等しい締付け幅を呈する部分)を常に横切るからである。また、架橋板20がつまみ12,14の間に架け渡されると共に、第1端部20Aが後退部24に係合することで、架橋板20が対象物を全体的に連続的に支持する。
【0045】
図1、
図3、
図4、及び
図5Bに示すように、架橋板20の第2端部20Bが、第2つまみ12の近傍においてベルト10の内面に形成された別の後退部34に挿入されている。当該別の後退部34は、中心線Lの両側に傾斜した2つの面36A,36Bを形成する端壁を有する第2ジョッグル36によって画定されている。
図1、
図3、
図4、及び
図5Bに示す後退部34を画定する第2ジョッグル36と、
図1、
図2、及び
図5Aに示す後退部24を画定する第1ジョッグル26とは、互いに同じ構成である。
【0046】
第1ジョッグル26について説明した内容は、第2ジョッグル36にも該当する。特に、2つの面36A,36Bは、中心線L上に位置する先端36Cで交わると共に、下側から見た場合に直線状又は曲がった形状であってよい。
【0047】
また、第2端部20Bは、第1端部20Aと同じ構成である。特に、第2端部20Bは、先端21C’で交わる2つの自由縁21A’,21B’を有する。第2端部20Bは、別の後退部34に挿入されている。特に
図5Bに示すように、2つの自由縁21A’,21B’の傾きは、第2ジョッグル36の端壁の傾きと実質的に同じである。架橋板20は、2つの自由縁21A’,21B’が2つの面36A,36Bのそれぞれに近接するようにして、ベルト10に固定されている。自由縁21A’,21B’と2つの面36A,36Bとの隙間j’は、上記の隙間jより小さい場合が多い。第2ジョッグル36の端壁の形状及び架橋板20の第2端部20Bの形状をそれぞれ考慮すると、隙間j’は対象物の支持の連続性にさほど悪影響を及ぼすものではない。なぜなら、締付固定具の幅方向に沿って隙間j’の領域を通る直線を引いた場合、当該直線は、ベルト10及び架橋板20のいずれかによる連続支持部(ベルト10の幅と略等しい締付け幅を呈する部分)を常に横切るからである。
【0048】
本実施形態において、架橋板20は、ベルト10とは別の金属片で構成され、ベルト10に固定されている。より詳細には、第2端部20Bは、ベルト10における第2つまみ12を支持する部分に固定されている。
【0049】
本実施形態において、架橋板20は、溶接や接合等の手段ではなく機械的手段のみによって、ベルト10に固定されている。
図4に示すように、第2端部20Bは2つの切欠部28A,28Bを有する。切欠部28A,28Bは、架橋板20の長手方向に延在する2つの縁20’,20”のそれぞれにおいて、互いに逆方向を向くように形成されている。ベルト10は、切欠部28A,28Bのそれぞれに挿入される2つの突出部38A,38Bを有する。
【0050】
本実施形態において、突出部38A,38Bは、エンボス加工により形成されており、ベルト10の長手方向に延在する2つの縁10A,10Bのそれぞれに設けられている。
図3に示すように、突出部38A,38Bは、切欠部28A,28Bに係合し、切欠部28A,28B内にぴったりと収まっている。本実施形態のようにベルト10及び架橋板20が凹状の断面を有する場合、切欠部28A,28Bにおける長手方向の端壁は、傾斜し、突出部38A,38Bの内側の縁によって保持される。
【0051】
架橋板20の外面が後退部34の内面に十分押し付けられ、架橋板20がベルト10に固定されている。切欠部28A,28Bは、第2端部20Bの自由縁21A’,21B’から若干離隔した位置に形成されている。
【0052】
突出部38A,38Bをエンボス加工で形成することで、突出部38A,38Bを切削加工で形成した場合に比べ、締付固定具における当該突出部が設けられた部分の剛性を高めることができる。
【0053】
図8の部分的な斜視図に示すように、ベルト110が2つの切欠部128A,128Bを有し、架橋板120が切欠部128A,128Bのそれぞれに挿入される2つの突出部138A,138Bを有し、これにより架橋板120がベルト110に固定されてもよい。
図8に示す変形例において、突出部138A,138Bは、架橋板120の縁に切削加工を施した後、当該部分を、径方向に立ち上がるように折り曲げ、さらに、架橋板120の上方に亘って延在し且つ切欠部128A,128Bの長手方向の縁よりも上方に位置するように折り曲げることで形成された、留め金(catches)の形態を有する。
【0054】
図1〜
図5Bに示す本発明の第1実施形態に係る締付固定具は、凹状の断面を有するものであり、特に、当該凹状の空間に挿入される凸状のフランジが設けられた2つのチューブの端部間を連結するのに用いられる。また、当該凹状の断面は、実質的にV字型である。この構成は、締付固定具の支持面が対象物であるチューブの軸に対して傾斜して円錐台形状を有する場合に特に好適である。
【0055】
本願明細書の導入部で説明したように、ベルトのジョッグルの端壁に傾斜した面(特にV字型の面)を設けることは、凹状の断面を有する締付固定具において特に好ましい。ジョッグルの部分に設けられた加工硬化部は、規模が特に大きく、比較的多くの量の材料に割り当られる。これにより、ベルトの剛性を大きく向上させることができる。
【0056】
本発明は、
図6〜
図7Bに示すようにベルトの断面が平坦な締付固定具にも適用可能である。
【0057】
図6に示す本発明の第2実施形態に係る連結固定具は、平坦な断面を有するベルト210、及び、締付け用の2つのつまみ212,214を有する。本実施形態では、締付けがフック形式で行われ、第1つまみ212はフック形状であり、第2つまみ214は径方向外側に延出したひだ形状である。締付固定具の締付け時に、第1つまみ212の縁212Aが第2つまみ214の後面に引っ掛けられる。なお、このような締付け手段は一例にすぎず、例えば
図1〜
図5Bや特許文献1に示されているような、ねじによる締付け手段を採用してもよい。
【0058】
本実施形態に係る締付固定具は、一部品として一体に形成されている。具体的には、架橋板220が、ベルト210を第2つまみ214から延長した部分で構成されている。締付固定具の締付け時に、架橋板220が後退部224に挿入される。後退部224は、第1つまみ212の後ろ側に設けられた重複部222に形成されており、第1ジョッグル226によって画定されている。第1ジョッグル226の端壁は、
図7Bに示すように、傾斜した2つの面226A,226Bを有する。本実施形態において、第1ジョッグル226の端壁は下側から見てV字型であり、2つの面226A,226Bが当該V字の2つの分岐部を構成している。締付固定具の締付け時に、架橋板220の第1端部220Aが後退部224に挿入される。このとき第1端部220Aは、第1ジョッグル226の端壁に近接するまで挿入される。
図7Aに示すように、第1端部220Aは、先端221Cで交わると共に傾斜した2つの自由縁221A,221Bを有する。自由縁221A,221Bの傾きは、第1ジョッグル226の端壁の傾きと実質的に同じである。
【0059】
第1ジョッグル226は、平坦な(即ち、断面が凹状でない)金属片に形成されている点を除き、上述したジョッグル26,36と同じ構成であってよい。つまり、第1ジョッグル226は、下側(即ち、金属片の内側)から見て、ジョッグル26,36と同じ形状を有してよい。具体的には、第1ジョッグル226は、
図7Bに示すようなV字型であってもよいし、
図5Cに示すような上下逆さまの放物線形状を形成するよう湾曲した2つの分岐部から構成されるV字型であってもよい。同様に、第1端部220Aは、断面が平坦である点を除き、上述した第1端部20Aと同じ形状であってよい。
【0060】
第1ジョッグル226の端壁、及び、架橋板200(特に第1端部220A)は、ベルト210の長手方向に延在する中心線に対して対称な形状であることが好ましい。