特許第5892399号(P5892399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5892399自動車両の圧縮空気生成システムを制御する方法、圧縮空気生成システム及び係るシステムを有する自動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892399
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】自動車両の圧縮空気生成システムを制御する方法、圧縮空気生成システム及び係るシステムを有する自動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/12 20060101AFI20160310BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   B60K6/12
   B60T17/00 B
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-542939(P2014-542939)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2015-500758(P2015-500758A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】IB2011003250
(87)【国際公開番号】WO2013079987
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503083889
【氏名又は名称】ボルボ トラック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(72)【発明者】
【氏名】プチ,ジャン−パスカル
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−196273(JP,A)
【文献】 特開2004−330839(JP,A)
【文献】 特表2008−514854(JP,A)
【文献】 特開2005−306191(JP,A)
【文献】 実開昭63−004870(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/106612(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/144271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/12
B60T 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両(V)の圧縮空気生成システム(S)を制御する方法であって、前記システムが、少なくとも1つの圧縮機(6)と第1の圧縮空気タンク(12)を有し、
a)車両の制動モード及び/又は惰行モードで、前記第1の圧縮空気タンク(12)の公称圧力より高い圧力に空気を圧縮する段階と、
b)段階a)で圧縮された空気を、前記圧縮空気生成システム(S)の高圧空気タンク(8)内に蓄積する段階と、
c)前記車両の動力モードで、トルクを生成するために空気圧モータ内で前記高圧空気タンク(8)の前記空気の少なくとも一部分を膨張させると同時に、膨張された前記空気は前記第1の圧縮空気タンク(12)を満たす段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
段階c)で、前記高圧空気タンク(8)の前記空気の少なくとも一部分が、前記空気圧モータ内で、前記第1の圧縮空気タンク(12)の圧力よりも低くない圧力まで膨張され、前記第1の圧縮空気タンク内に蓄積されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階c)で、前記高圧空気タンク(8)の前記空気の一部分が、前記空気圧モータ内で大気圧まで膨張されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
段階c)で生成されたトルクの少なくとも一部分が、前記車両(V)の動力伝達経路に提供されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
段階c)で生成されたトルクの少なくとも一部分が、オルタネータ、前記車両(V)の空気調整システムの圧縮機、及び/又は前記車両(V)の冷蔵室の冷蔵システムの圧縮機に提供されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記高圧空気タンク(8)の前記空気の少なくとも一部分が、内燃機関(2)のインテークマニホールド(4)に導かれることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮機が、前記車両の動力伝達経路によって駆動されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮機が、電気モータによって駆動されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記車両の動力モードで、追加の圧縮機(7)が、圧縮空気を前記第1の圧縮空気タンク(12)に直接送ることができることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの空気圧縮機(6)と1つの第1の圧縮空気タンク(12)を有する自動車両(V)の圧縮空気生成システム(S)であって、前記空気圧縮機(6)が、前記第1の圧縮空気タンク(12)の公称圧力より高い圧力まで空気を圧縮するように適応され、
−少なくとも1つの高圧空気タンク(8)と、
−前記高圧空気タンク(8)に蓄積された前記圧縮空気を膨張させることによってトルクを生成する空気圧モータ(6)と、
−前記空気圧モータの出口を前記第1の圧縮空気タンクに接続する手段と、
を有することを特徴とする圧縮空気生成システム(S)。
【請求項11】
前記圧縮機(6)が、可逆的であり、トルクを生成するための前記空気圧モータを構成することを特徴とする、請求項10に記載の圧縮空気システム。
【請求項12】
前記圧縮機(6)の入口を大気圧空気取入管(10)又は前記第1の圧縮空気タンク(12)に選択的に接続する手段(14)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の圧縮空気システム。
【請求項13】
トルクを生成する前記手段が、前記圧縮機(6)から独立した空気圧モータを有することを特徴とする、請求項10に記載の圧縮空気システム。
【請求項14】
前記第1の圧縮空気タンク(12)が、前記車両(V)の補助空気圧式サブシステムに空気を供給するように適応された低圧空気タンクであることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれかに記載の圧縮空気システム。
【請求項15】
前記第1の空気圧縮空気タンク(12)に空気を供給する低圧圧縮機(7)と、前記高圧空気タンク(8)に空気を供給する高圧圧縮機(6)とを有することを特徴とする、請求項10乃至14のいずれかに記載の圧縮空気システム。
【請求項16】
前記低圧及び高圧空気圧縮機(7,6)が、直列に接続されて圧縮空気を前記高圧空気タンク(8)に送ることを特徴とする、請求項15に記載の圧縮空気システム。
【請求項17】
請求項10乃至16のいずれかに記載の圧縮空気生成システム(S)を有することを特徴とする自動車両(V)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の圧縮空気生成システムを制御する方法に関する。本発明は、また、係る方法に適応される圧縮空気生成システム、及び係る圧縮空気生成システムを有する自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの幾つかの自動車両は、ブレーキシステムなどの空気圧式サブシステムに空気を供給するように適応された圧縮空気システムを装備している。このシステムは、空気を8〜12バールの圧力に圧縮するように一般に適応された空気圧縮機を含む。圧縮機は、通常、車両の動力伝達経路によって機械的に駆動されるが、一方電気モータによって駆動されることがある。圧縮機が、車両動力伝達経路によって駆動されるときは、圧縮機を駆動するエネルギーが、車両エンジン内の燃料の燃焼によって得られるのではなく車両減速により回収されるので、車両の制動又は惰行局面でできるだけ多く圧縮機を作動させることが知られている。これにより、普通ならば圧縮機を駆動するために必要となる一定量の燃料を節約することができる。しかしながら、そのような方策は、市内バスや配達用トラックなどの特定用途に必要な全ての空気を生成できるわけではない。実際に、圧縮機は、エネルギーを車両減速から回収できる限られた時間内に十分な空気を生成できない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、自動車両の圧縮空気生成システムを制御する新しい方法を提案することを目的とし、このシステムは、圧縮空気生成と関連した正味エネルギー消費を更に低減するように圧縮空気システムの動作を最適化する。
【0004】
この目的のため、本発明は、自動車両の圧縮空気生成システムを制御する方法に関し、システムが、少なくとも1つの圧縮機と、第1の圧縮空気タンクとを含み、方法は、
a)車両の制動及び/又は惰行モードで、空気を第1の圧縮空気タンクの公称圧力より高い圧力に圧縮する段階と、
b)段階a)で圧縮された空気を、圧縮空気生成システムの高圧空気タンク内に蓄積する段階と、
c)車両の動力モードで、トルクを生成するために空気モータ内の高圧空気タンクの空気の少なくとも一部分を膨張させる段階と、
を含む。
【0005】
本発明によって、車両減速度から回収されたエネルギーを使用して生成される圧縮空気の比率を高めることができ、そのように生成された高圧圧縮空気の少なくとも一部分を使用して、車両の様々な機械式サブシステムに送られる過剰トルクを作成することができ、このトルクは、車両サブシステムに利用可能な比較的低圧の圧縮空気の量を費やすことなく作成される。
【0006】
有利であるが必須でない本発明の更に他の態様によれば、係る方法は、
−段階c)で、高圧空気タンクの空気の少なくとも一部分が、空気圧モータ内で、第1の圧縮空気タンクの圧力より低くない圧力まで膨張され、前記第1の圧縮空気タンクに蓄積されること、
−段階c)で、高圧空気タンクの空気の一部分が、空気圧モータ内で大気圧まで膨張されること、
−段階c)で生成されたトルクの少なくとも一部分が、車両の動力伝達経路、例えばエンジン及び/又は車両の車輪に送られること、
−段階c)で生成されたトルクの少なくとも一部分が、オルタネータ、車両の空気調整システムの圧縮機、及び/又は車両の冷蔵室の冷蔵システムの圧縮機に送られること、
−高圧空気タンクの空気の少なくとも一部分が、内燃機関のインテークマニホールドに導かれること、
−圧縮機が、車両の動力伝達経路によって駆動されること、
−圧縮機が、電気モータによって駆動されること、
−車両の動力モードで、圧縮機が、圧縮空気を第1の圧縮空気タンクに直接送ることができること、
のうちの1つ又は幾つかの特徴を備えてもよい。
【0007】
本発明は、また、少なくとも1つの空気圧縮機と第1の圧縮空気タンクとを含む自動車両の圧縮空気生成システムに関し、空気圧縮機は、第1の圧縮空気タンクの公称圧力より高い圧力に空気を圧縮するように適応され、更に、
−少なくとも1つの高圧空気タンクと、
−高圧空気タンクに蓄積された圧縮空気を膨張させることによりトルクを生成する空気圧モータと、
−空気圧モータの出口を第1の圧縮空気タンクに接続する手段と、
を含む。
【0008】
有利であるが必須ではない本発明の更に他の態様によれば、係る圧縮空気生成システムは、
−圧縮機が、可逆的であり、トルクを生成する空気圧モータを構成すること、
−システムが、圧縮機の入口を、大気圧空気取入管又は第1の圧縮空気タンクに選択的に接続する手段を含むこと、
−トルクを生成する手段が、圧縮機から独立した空気圧モータを含むこと、
−第1の圧縮空気タンクが、車両の補助空気圧式サブシステムに空気を供給すように適応された低圧空気タンクであること、
−システムが、第1の空気圧縮空気タンクに空気を供給する低圧圧縮機と、高圧空気タンクに空気を供給する高圧圧縮機とを含むこと、
−低圧及び高圧空気圧縮機が、高圧空気タンクに圧縮空気を送るために直列に接続されてもよいこと、
のうちの1一つ又は幾つかの特徴を含んでもよい。
【0009】
本発明は、また、前述されたような圧縮空気生成システムを含む自動車両に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、次に、本発明の目的を限定しない実例として添付図面と対応して説明される。
【0011】
図1】第1の構成における、本発明による自動車両及び圧縮空気生成システムの一部分の概略図である。
図2図1のシステムの第2の構成の、図1と類似の概略図である。
図3】本発明の第2の実施形態を示す図1と類似の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2に表わされたように、自動車両Vは、空気インテークマニホールド4を介して空気が供給されるように適応された内燃機関2などの主駆動エンジンを含む動力伝達経路を有する。あるいは、車両は、電気モータや、電気モータと内燃機関の組み合わせなどの別のタイプの主駆動エンジンを装備してもよい。ほとんどの場合、主駆動エンジンは、燃料の形態やバッテリーに蓄えられた電気エネルギーの形態などで、車両に蓄積されたエネルギーを使い果たすことによって動作する。車両Vは、この例では、例えばエンジン2の出力シャフト22によって駆動されるベルト62又はチェーン駆動を介して、エンジン2によって駆動される空気圧縮機6を有する圧縮空気生成システムSを含む。圧縮空気が必要なときだけ圧縮機6を動作させ、それにより圧縮機が消費するエネルギーが最小になるように、任意選択のクラッチ64によって、圧縮機6をベルト62に接続し切り離すことができる。圧縮機6を作動したり停止したり、空気圧縮が必要ないときに吸収するエネルギーの量を制限する他の適切な手段は、例えば、特許文献DE−A−39 09 531及びDE−A−40 26 684に記載されている。例えば、圧縮機6は、吸気弁と排気弁を有するピストン圧縮機でよい。圧縮機6には、空気取入管10を介して大気圧の空気が供給される。あるいは、圧縮機6は、エンジンによって直接ではなく、車両の動力伝達経路の他の構成要素によって駆動されてもよい。したがって、圧縮機は、ギアボックスによって駆動されてもよく、車輪へのトランスミッションによって駆動されてもよい。更に他の選択肢によれば、圧縮機6は、特に電気自動車又はハイブリッド電気自動車の場合には、電気モータによって駆動されてもよい。
【0013】
圧縮機6は、例えば20〜40バールでよい公称圧力で圧縮空気が蓄積されたシステムSの高圧空気タンク8に空気を供給するように構成される。したがって、圧縮機は、空気をそのような高圧で送出できなければならない。圧縮機は、多段圧縮機でよい。
【0014】
システムSは、更に、例えば7〜15バール(典型的には約12バール)の高圧より比較的低い公称圧力で圧縮空気が蓄積された低圧空気タンク12を含む。公称圧力は、車両の通常動作中に低圧リザーバ内で調整される圧力である。この低圧は、制動システム、空気圧懸架システム、又は他の空気圧サブシステム装備車両Vなどの、車両Vの1つ又は幾つかの図示されていない空気圧式サブシステムを動作させるために使用される運転空気圧力に対応する。例えば、市内バスの場合、タンク12から来る空気を空気圧式ドア開閉アクチュエータに供給することができる。換言すると、低圧空気タンク12は、車両Vの1つ又は幾つかの空気圧式サブシステムに空気圧で接続される。
【0015】
低圧空気タンク12は、例えば空気圧縮機6の空気口にも接続された三方向弁14を介して、空気取入管10に接続された吸気管120によって空気が供給される。弁14を介して、圧縮機6の空気口を低圧空気タンク12又は空気取入管10に接続することができる。
【0016】
示された実施形態では、圧縮機6は、可逆的圧縮機である。換言すると、圧縮機6は、第1の構成で使用されて、外部トルクを受け取るときに空気を圧縮することもでき、第2の構成で使用されて、出力トルクを生成するために空気を膨張させることもできる。その第2の構成では、圧縮機6は、空気圧モータとして動作する。しかしながら、本発明は、圧縮機と異なる空気圧モータで実現されてもよい。
【0017】
圧縮機6の第1又は圧縮構成が、図1に表わされる。この構成では、圧縮機6は、動力伝達経路によって提供されたトルクを使用し、矢印A1によって示されたように、大気圧で取入管10から入る空気を圧縮する。この構成では、圧縮機6は、矢印A2によって示されたように、高圧空気タンク8を満たす。この構成では、三方向弁14は、空気が低圧空気タンク12に入ることも出ることもできないように制御される。
【0018】
図2に表わされた第2又は膨張構成では、空気圧モータは、ここでは逆に使用される圧縮機6として実施され、矢印A3によって示されたように、高圧空気タンク8に蓄積された高圧空気が供給される。この動作中、矢印A4によって示されたように、空気は、圧縮機6内の減圧圧力に膨張させられ、空気取入管10を介して圧縮機6から流れ出る。この場合、圧縮機6の空気入口は、空気圧モータとして動作する圧縮機6の空気出口と見なすことができる。この構成では、三方向弁14は、空気圧モータ空気出口を低圧空気タンク12の吸気管120に接続するように制御されることが好ましく、その結果、第2の動作構成において圧縮機6内で膨張された空気は、少なくとも低圧空気タンクが満杯でない限り、外気に解放されずに低圧空気タンク12を満たす。この動作構成において、圧縮機が、従来の可逆ピストン圧縮機の場合、圧縮機6の吸気弁と排気弁の役割が逆にされ、即ち、排気弁は、高圧タンク8から圧縮空気を入れるために開かれ、圧縮機6内のピストン運動が始まる。空気膨張は、排気弁が閉じられているときに始まり、次にピストンがその端位置に達したときに終了する。次に、圧縮機6の吸気弁を開くことによって空気がシリンダから出される。
【0019】
圧縮機6の膨張動作期間に、空気膨張は、圧縮機6のシャフト66に与えられる出力トルクの生成を誘発する。その場合、シャフト66は、圧縮機6の出力シャフトと見なされる。但し、少なくとも低圧空気タンクが満杯でない限り、空気圧力が、低圧空気タンク内の空気の圧力までしか低下せず、それより低下しないという点で、この膨張が部分的にすぎないことに注意されたい。即ち、高圧下で空気によって蓄積されたエネルギー、即ち車両の動力学的エネルギーから回収されたエネルギーは、空気圧モータ内で機械エネルギーに部分的に変換されるが、その一部は、車両に搭載された圧縮空気消費機構によって使用できる空気圧エネルギーの形態のままである。
【0020】
低圧空気タンク12と高圧空気タンク8は、金属材料で作成されてもよく、また空気タンク8及び12の外部との熱交換による圧力損失を制限するように熱的に分離されてもよい。あるいは、一方又は両方の空気タンクを繊維強化樹脂複合材で作成することができる。
【0021】
本発明は、車両Vが、制動及び/又は惰行モードのとき、即ち、例えば、車両Vの制動システムが作動したとき、又はエンジンに燃料が噴射されないか最小量の燃料しか噴射されないとき、車両の動力伝達経路は、エンジン2によって駆動されない。しかしながら、車両はまだ横揺れしており、したがって、車両の動きによって動力伝達経路の少なくとも一部分が駆動される。したがって、圧縮機が、車両動力伝達経路に機械的に接続された場合、トルクを圧縮機6に伝えて、燃料過剰消費なしに空気を圧縮することができる。電動圧縮機の場合、圧縮機を駆動するために使用される電気は、燃料消費の不利益なしに動力伝達経路によって駆動できるジェネレータによって生成することができる。圧縮機6のこの第1の動作構成では、使用エネルギーを車両の運動エネルギーから回収できるので、エネルギーを犠牲にせずに圧縮空気の量を最大にするために、空気が、圧縮機6によって高圧に圧縮される。このことは、そのような局面において、原理的にかなり大量のエネルギーを回収できるのできわめて有用であるが、電気自動車やハイブリッド電気自動車であっても、回収エネルギーを蓄積するために使用されるバッテリーが、比較的短期間に効果的に回収できるエネルギー量を制限する電力制限を有するという事実によって、あまりエネルギーを回収できないことが多い。圧縮空気は、高圧空気タンク8に蓄積される。
【0022】
高圧空気タンク8に蓄積された空気は、後で、例えば車両Vが動力モードのとき、即ち、主駆動エンジン2が、車両Vの動力伝達経路にトルクを伝えているときに使用することができる。最初に、圧縮機6の第2の動作構成を使用して過剰トルクを生成し、同時に低圧空気タンク12を満たすことができる。追加の動力が必要な場合、圧縮機6の逆動作によって生成された過剰トルクを使用して、追加の動力を動力伝達経路、例えばエンジン2の出力シャフト22又は車両の車輪に導くことができる。これは、上り坂で車両Vを始動するときに追加トルクを提供しなければならない場合でよい。別の場合、圧縮機6によって生成された過剰トルクを使用して、圧縮機を稼動させて車両Vの空気調整システムに動力を供給することができる。また、過剰トルクを使用してオルタネータを稼動させることもできる。また、特に冷蔵室を装備したトラックの場合は、冷蔵システムの圧縮機を駆動するために使用することもできる。
【0023】
低圧空気タンク12に満たされた膨張空気を使用して、車両の幾つかのサブシステムにいつでも空気圧で動力を提供することができる。
【0024】
高圧空気が、空気圧モータ内で部分膨張しかしないことは、回収エネルギー(即ち、実質的に自由なエネルギー)を用いて圧縮された空気で低圧空気タンクを満杯にするのに有利であるが、同時に、空気圧モータによって提供される機械エネルギーの形態での高圧から低圧への膨張による恩恵を受ける。当然ながら、これにより、動力伝達経路の運転モードで圧縮機を圧縮機として動作させる必要性が減少するか更にはなくなる。
【0025】
低圧空気タンク12が満杯のとき、図示されない実施形態では、空気圧モータの排気口をインテークマニホールド4に接続して、エンジン2に圧縮空気を提供して、特に急発進の際などの過渡動作の際に内燃機関の動作を支援することができる。
【0026】
空気圧モータとして使用される従来の可逆的ピストン圧縮機の場合、空気膨張率を調整するために弁開閉時間を管理することによって、圧縮機6の動作を制御することができる。圧縮機6の出口圧力は、低圧空気タンク12の圧力と、車両Vの空気圧式サブシステムの空気圧エネルギー需要とにしたがって制御することができる。
【0027】
本発明の副次的効果は、高圧圧縮機6を使用することによって車両制動効率を高めることであり、高圧圧縮機6は、比較的低圧の圧縮空気のみを生成するように適応された圧縮機と比べて、動力伝達経路から大量の動力を吸収することができる。
【0028】
圧縮機6の弁の制御は、様々なタイプのものでよい。制御は、受動的な自動でよく、即ち、入口と出口の空気圧力の釣り合いに基づいて制御されてもよい。これらの弁は、カムシャフトによって制御されてもよく、例えば電子制御ユニットによって圧縮機6のピストンの位置に関係なく制御された電気機械弁でもよい。
【0029】
図3に、本発明による第2の実施形態が示され、圧縮空気生成システムは、第1の空気圧縮空気タンクに空気を供給する低圧圧縮機と、高圧空気タンクに空気を供給する高圧圧縮機6とを含む。基本的に、この第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、低圧圧縮機7がシステムに追加されたことと、三方向弁を四方弁14によって置き換えることができ、この四方弁14によって、低圧圧縮機7の出口を、低圧空気タンク12に空気を直接供給することを考慮して、低圧空気タンク12に接続するか、高圧空気圧縮機6が、高圧空気タンク8内の高圧に圧縮できる事前圧縮空気を高圧圧縮機タンクに供給することを考慮して、高圧空気圧縮機6の入口に接続することができる点だけである。後者の場合、低圧圧縮機7と高圧空気圧縮機6は直列に空気が入った状態で接続されて、圧縮空気を高圧空気タンク8に送る。次に、これらは2段圧縮機として動作する。低圧圧縮機7は、例えばベルト72を介して動力伝達経路によって駆動されてもよく、電気的に駆動されてもよい。
【0030】
高圧空気が、反転高圧空気圧縮機6内で膨張されたとき、弁140は、好ましくは高圧圧縮機の入口(部分的膨張空気の出口)を低圧空気タンク12に接続し、それにより、部分的膨張空気が低圧空気タンク12に蓄積されるように設定される。
【0031】
このような設計は、車両動作が、車両運転モード中を含む、コスティングモード又は制動モードで十分な高圧空気を生成できない場合は、最も効率的なエネルギーコストで低圧空気タンク12を満たすことを可能にする。実際には、高圧及び低圧圧縮機6,7は、それぞれの圧力動作範囲に最良に適応された異なるタイプのものでよい。
【0032】
弁140は、運転モードと制動又は惰行モードの両方と、圧縮機又は空気圧モータとしての両方の動作中に、高圧圧縮機の入口を直接的に外気に接続するように設定されてもよいことが分かる。
【0033】
図示されていない実施形態によれば、本発明は、可逆的圧縮機の代わりに、圧縮機と別個の空気圧モータとを使用して出力トルクを生成し同時に高圧空気タンク8に蓄積された高圧空気を膨張させるように実施されてもよい。そのような場合、前記別個の空気圧モータは、エンジン2の出力シャフト22などの動力伝達経路構成要素又は別の機械式サブシステムに、機械的に接続された出力シャフトを有してもよい。好ましい形態では、別個の空気圧モータの空気入口は、高圧空気タンク8に接続され、その空気出口は、低圧空気タンク又は外気に接続され、これらは両方とも適切な弁を介して行われる。そのような場合、圧縮機と空気圧モータは、異なるタイプの空気圧機械でもよい。例えば、圧縮機は、ピストン圧縮機でよく、空気圧モータは、タービン又はスクロール膨張機でよい。
【0034】
図示されない実施形態によれば、圧縮構成でのエンジン2と圧縮機6間の伝達、及び/又は膨張構成での圧縮機6とエンジン2間の伝達は、例えば、専用ギアボックス又は連続可変トランスミッションを使用して一定比率もしくは可変比率とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
2 エンジン
4 インテークマニホールド
6,7 圧縮機
8 高圧空気タンク
10 空気取入管
12 低圧空気タンク
14 弁
S 圧縮空気生成システム
V 自動車両
図1
図2
図3