【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明の主たる構成は、
合成樹脂製壜体の口筒部を密封するキャップ体であって、
有頂筒状のキャップ本体の内側に、
合成樹脂製壜体の内部から水蒸気の状態で取り込んだ水分の作用により炭酸ガスを発生して該合成樹脂製壜体の内部に供給する炭酸ガス発生剤
を、水蒸気と炭酸ガスとを透す合成樹脂製の透過性フィルム
とベースフィルムとが重ねられそれらの周縁部がシールされている袋状の包装材(22)で密封し
てなる包装体(21)
が、包装材のベースフィルム側で固定されている構成とし、
透過性フィルムの水蒸気の透過係数を0.1g・mm/(m
2・day)以上としたことを特徴
とする、と云うものである。
【0008】
上記構成のキャップ体は、主としてペットボトルの内部に炭酸水を主成分とした炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部を密封するのに好適に使用することができるものであるが、
炭酸水の水分が
袋状の包装材の
片面を形成する透過性フィルムから包装材の内部に進入し、炭酸ガス発生剤に作用して炭酸ガスが発生し、この炭酸ガスが包装材の透過性フィルムを透して壜体内部に供給され、
その分、壜体からの透過に起因する炭酸飲料中の炭酸ガスの減少を補完、抑制することができ賞味期限を長くすることが可能となる。
そして、透過性フィルムの水蒸気の透過係数を0.1g・mm/(m
2・day)以上とすることにより、透過性フィルムを透して包装体内部に水分を取り込んで、炭酸ガス発生剤から、炭酸飲料中の炭酸ガスの減少を補完する程度の炭酸ガスの発生を促進することができる。
なお、上記水蒸気の透過係数は温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した値である。
さらに上記構成では、包装材が、透過性フィルムとベースフィルムを重ね袋状に周縁部をシールしたものであるから、炭酸ガス発生剤を封入、密閉した包装体を高い生産性で製造することが可能となる。
【0009】
ここで、炭
酸ガスの発生量は、炭酸ガス発生剤の組成と封入量、透過性フィルムの水蒸気透過係数、炭酸ガス透過係数、フィルム厚さ、フィルム面積により制御することができ、炭酸飲料の種類、許容される炭酸ガス溶解濃度の下限、賞味期限等に応じた包装体を製造し、キャップ体に配設することにより用途に応じた壜体製品を提供することが可能となる。
【0010】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、透過性フィルムの炭酸ガスの透過係数を100cc・mm/(m
2・day)以上とすると云うものである。
【0011】
上記構成により、
炭酸ガス発生剤から発生した炭酸ガスを、透過性フィルムを透して壜体内部にスムーズに供給することができる。
なお、上記炭酸ガスの透過係数は温度25℃、相対湿度0%の条件で測定した値である。
【0012】
ここで、前述したような水蒸気透過性や炭酸ガス透過性を有する透過性フィルム用の合成樹脂としては、
低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン・ブロック共重合体、ABS樹脂、水素化スチレン−ブタジエン共重合体、または水素化スチレン−イソプレン共重合体、アイオノマー、ポリブテン、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0013】
本発明のさらに他の構成は上記主たる構成において、透過性フィルムをエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂製フィルムとする、と云うものである。
【0014】
EVA樹脂製フィルムは、高い水蒸気透過性と炭酸ガスの透過性を有するので、このEVA樹脂製の透過性フィルムの厚さや面積を変えて、用途に適した透過性を幅広い範囲で設定することができる。
さらに、EVA樹脂製フィルムは優れた成形性、接着性等の二次加工性を有し、市販製品として安価に入手することもできる。
なお、本発明の目的に好適なEVAは酢酸ビニル含有量が3乃至50重量%の範囲にあるものである。
【0015】
本発明のさらに他の構成は上記主たる構成において、炭酸ガス発生剤を炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムの混合物とする、と云うものである。
水分の作用により炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生剤としては、一般には重炭酸塩と有機酸塩との組み合わせを用いるのが適当であり、その中でも炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムの混合物の使用が好適である。
また炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウム等のクエン酸塩の混合物の使用も適している。
また、炭酸ガス発生剤として他にもクエン酸モノエステルおよび/またはクエン酸ジエステルを単独或いは組み合わせで用いることもできる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は上記主たる構成において炭酸ガス発生剤を錠剤状に固めたものとする、と云うものである。
炭酸ガス発生剤を構成する重炭酸塩と有機酸塩は均一に混合する必要があり、その粒度は、一般に粒径が100マイクロメーター以下、特に0.1乃至90マイクロメーター程度の微細粒径のものが好ましいが、
さらにこのような微細粒子を錠剤成形機により錠剤状に固めておくことが好ましい。錠剤状にしておくことで、重炭酸塩と有機酸塩の分散状態を、偏在させることなく均一に保持することができ、また包装材への封入工程も容易となる。
また、小さい錠剤とし、必要に応じて封入する個数で炭酸ガス発生量を容易に、また正確に変更することも可能となる。
【0019】
本発明のさらに他の構成は上記構成において、
ベースフィルムに接着性ポリオレフィン樹脂製フィルムを
使用し、これを透過性フィルムと重ね
て包装材にすると云うものである。
【0020】
接着性ポリオレフィン樹脂製フィルムはポリエチレン(PE)系樹脂あるいはポリプロピレン(PP)系樹脂等のポリオレフィン樹脂にエチレン系不飽和カルボン酸をグラフトする等して極性基を導入した樹脂(市販品としては三菱化学株式会社製の「モデイック」等がある。)からなるフィルムで
各種のEVA樹脂製フィルムは勿論、他の合成樹脂製の透過性フィルムと熱溶着、超音波法等により容易にシールすることができると共に、各種材質のキャップ体にも熱溶着、超音波法等により容易に接着することができる。
【0021】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、包装材の
ベースフィルムをキャップ本体の頂壁の下面に熱溶着あるいは超音波法により接着して、包装体をキャップ本体の内側に配設、固定する、と云うものであり、
キャップ本体の内側への包装体の配設、固定を容易に実施することができる。
この場合、包装材の周縁部に形成されたシール部を利用して包装体を固定することができる。
【0022】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の2軸延伸ブロー成形した壜体の内部に炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部を密封するのに使用する、と云うものであり、
本発明のキャップ体の代表的な用途に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明のキャップ体は主としてペットボトルの内部に水を主成分とした炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部を密封するのに好適に使用することができるものであるが、
飲料の水分が包装材の少なくとも一部を形成する透過性フィルムから包装材の内部に進入し、炭酸ガス発生剤に作用して炭酸ガスが発生し、その分、壜体からの透過に起因する飲料中の炭酸ガスの減少を補完、抑制することができ、
壜体の層構成等を変更することなく、また専用設備を設置することなく簡便に
賞味期限を長くすることができる。
【0024】
また、炭
酸ガスの発生量は、炭酸ガス発生剤の組成と封入量、透過性フィルムの水蒸気透過係数、炭酸ガス透過係数、フィルム厚さ、フィルム面積により制御することができ、
炭酸飲料の種類、許容される炭酸ガス溶解濃度の下限、賞味期限等に応じた包装体を用意してキャップ本体に配設することにより用途に応じた商品を提供することができる。