特許第5892441号(P5892441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892441
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】キャップ体
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/28 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   B65D51/28 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-43353(P2012-43353)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180752(P2013-180752A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田端 真一
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526771(JP,A)
【文献】 特開2003−145659(JP,A)
【文献】 特開2003−321069(JP,A)
【文献】 特開2007−202533(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/110587(WO,A1)
【文献】 特開平07−285805(JP,A)
【文献】 特開2008−056305(JP,A)
【文献】 特開2011−051656(JP,A)
【文献】 実開昭56−038055(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製壜体の口筒部を密封するキャップ体であって、有頂筒状のキャップ本体(1)の内側に、前記合成樹脂製壜体の内部から水蒸気の状態で取り込んだ水分の作用により炭酸ガスを発生して該合成樹脂製壜体の内部に供給する炭酸ガス発生剤(27)を、前記水蒸気と前記炭酸ガスとを透す合成樹脂製の透過性フィルム(24)とベースフィルム(23)とが重ねられそれらの周縁部がシールされている袋状の包装材(22)で密封してなる包装体(21)が、前記包装材(22)のベースフィルム(23)側で固定されている構成とし、前記透過性フィルム(24)の水蒸気の透過係数を0.1g・mm/(m・day)以上としたことを特徴とするキャップ体。
【請求項2】
透過性フィルム(24)の炭酸ガスの透過係数を100cc・mm/(m・day)以上とした請求項1記載のキャップ体。
【請求項3】
透過性フィルム(24)をエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂製フィルムとした請求項1または2記載のキャップ体。
【請求項4】
炭酸ガス発生剤(27)を炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムの混合物とした請求項1、2または3記載のキャップ体。
【請求項5】
炭酸ガス発生剤(27)を錠剤状とした請求項1、2、3または4記載のキャップ体。
【請求項6】
包装体(21)が、包装材(22)の周縁部に形成されるシール部(25)でキャップ本体(1)に固定されている構成とした請求項1、2、3、4または5記載のキャップ体。
【請求項7】
包装材(22)のベースフィルム(23)を接着性ポリオレフィン樹脂製フィルムとした請求項1、2、3、4、5または6記載のキャップ体。
【請求項8】
包装材(22)のベースフィルム(23)が、キャップ本体(1)の頂壁(3)の下面に熱溶着あるいは超音波法により接着されている構成とした請求項1、2、3、4、5、6または7記載のキャップ体。
【請求項9】
ポリエチレンテレフタレート樹脂製の2軸延伸ブロー成形した壜体(31)の内部に炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部(32)を密封するのに使用する請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のキャップ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製壜体の口筒部に嵌合して使用されるキャップ体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する。)樹脂製の二軸延伸ブロー成形のボトル、所謂、ペットボトルは優れたガスバリア性、高い透明性、落下しても割れない強靱性を有し、しかも食品の匂いを転移させない非吸着性や、樹脂自体の匂いが発生しない低臭性をも有するなどの種々の利点を有し、飲料水、炭酸飲料、お茶、果汁等の飲料用等の用途に幅広く使用されている。
【0003】
この中で、炭酸飲料用のペットボトルでは水を主成分とする内容液、すなわち炭酸水に溶解した炭酸ガスがボトル内から外部に透過し、内容液の風味が損なわれるので賞味期限が短くなってしまうと云う問題がある。
上記のような炭酸ガスの透過を抑制する方法として、引用文献1に記載されるようにナイロン樹脂やエチレン−ビニルアルコール(EVOH)共重合樹脂製のガスバリア層を積層する方法、あるいはPET樹脂にナイロン樹脂をブレンドする方法があるが、
ガスバリア層を積層する方法では積層するための専用設備が必要であり、またPET樹脂層とガスバリア層が剥離すると云う問題を有する。
また、ナイロン樹脂をブレンドする方法ではヘーズが上昇、すなわちペットボトル本来のクリアな透明性が損なわれると云う問題がある。
【0004】
また、炭酸ガスの透過を抑制する方法として引用文献2にはアモルファスカーボン被膜を積層する方法についての発明が記載されているが、この方法ではアモルファスカーボンの蒸着設備が必要であり、また蒸着層が直接内容物に接触するため内容物が限定されると云う問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−168071号公報
【特許文献2】特開2008−137687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述したような炭酸水を主成分とする内容物を充填した壜体製品における時間の経過に伴う炭酸ガスの減少の抑制を、壜体の層構成等を変更することなく、また専用設備の設置をすることなく簡易に達成可能な手段を創出することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明の主たる構成は、
合成樹脂製壜体の口筒部を密封するキャップ体であって、
有頂筒状のキャップ本体の内側に、
合成樹脂製壜体の内部から水蒸気の状態で取り込んだ水分の作用により炭酸ガスを発生して該合成樹脂製壜体の内部に供給する炭酸ガス発生剤を、水蒸気と炭酸ガスとを透す合成樹脂製の透過性フィルムとベースフィルムとが重ねられそれらの周縁部がシールされている袋状の包装材(22)で密封してなる包装体(21)が、包装材のベースフィルム側で固定されている構成とし、
透過性フィルムの水蒸気の透過係数を0.1g・mm/(m・day)以上としたことを特徴する、と云うものである。
【0008】
上記構成のキャップ体は、主としてペットボトルの内部に炭酸水を主成分とした炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部を密封するのに好適に使用することができるものであるが、
炭酸水の水分が袋状の包装材の片面を形成する透過性フィルムから包装材の内部に進入し、炭酸ガス発生剤に作用して炭酸ガスが発生し、この炭酸ガスが包装材の透過性フィルムを透して壜体内部に供給され、
その分、壜体からの透過に起因する炭酸飲料中の炭酸ガスの減少を補完、抑制することができ賞味期限を長くすることが可能となる。
そして、透過性フィルムの水蒸気の透過係数を0.1g・mm/(m・day)以上とすることにより、透過性フィルムを透して包装体内部に水分を取り込んで、炭酸ガス発生剤から、炭酸飲料中の炭酸ガスの減少を補完する程度の炭酸ガスの発生を促進することができる。
なお、上記水蒸気の透過係数は温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した値である。
さらに上記構成では、包装材が、透過性フィルムとベースフィルムを重ね袋状に周縁部をシールしたものであるから、炭酸ガス発生剤を封入、密閉した包装体を高い生産性で製造することが可能となる。
【0009】
ここで、炭ガスの発生量は、炭酸ガス発生剤の組成と封入量、透過性フィルムの水蒸気透過係数、炭酸ガス透過係数、フィルム厚さ、フィルム面積により制御することができ、炭酸飲料の種類、許容される炭酸ガス溶解濃度の下限、賞味期限等に応じた包装体を製造し、キャップ体に配設することにより用途に応じた壜体製品を提供することが可能となる。
【0010】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、透過性フィルムの炭酸ガスの透過係数を100cc・mm/(m・day)以上とすると云うものである。
【0011】
上記構成により、炭酸ガス発生剤から発生した炭酸ガスを、透過性フィルムを透して壜体内部にスムーズに供給することができる。
なお、上記炭酸ガスの透過係数は温度25℃、相対湿度0%の条件で測定した値である。
【0012】
ここで、前述したような水蒸気透過性や炭酸ガス透過性を有する透過性フィルム用の合成樹脂としては、
低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン・ブロック共重合体、ABS樹脂、水素化スチレン−ブタジエン共重合体、または水素化スチレン−イソプレン共重合体、アイオノマー、ポリブテン、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0013】
本発明のさらに他の構成は上記主たる構成において、透過性フィルムをエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂製フィルムとする、と云うものである。
【0014】
EVA樹脂製フィルムは、高い水蒸気透過性と炭酸ガスの透過性を有するので、このEVA樹脂製の透過性フィルムの厚さや面積を変えて、用途に適した透過性を幅広い範囲で設定することができる。
さらに、EVA樹脂製フィルムは優れた成形性、接着性等の二次加工性を有し、市販製品として安価に入手することもできる。
なお、本発明の目的に好適なEVAは酢酸ビニル含有量が3乃至50重量%の範囲にあるものである。
【0015】
本発明のさらに他の構成は上記主たる構成において、炭酸ガス発生剤を炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムの混合物とする、と云うものである。
水分の作用により炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生剤としては、一般には重炭酸塩と有機酸塩との組み合わせを用いるのが適当であり、その中でも炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムの混合物の使用が好適である。
また炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウム等のクエン酸塩の混合物の使用も適している。
また、炭酸ガス発生剤として他にもクエン酸モノエステルおよび/またはクエン酸ジエステルを単独或いは組み合わせで用いることもできる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は上記主たる構成において炭酸ガス発生剤を錠剤状に固めたものとする、と云うものである。
炭酸ガス発生剤を構成する重炭酸塩と有機酸塩は均一に混合する必要があり、その粒度は、一般に粒径が100マイクロメーター以下、特に0.1乃至90マイクロメーター程度の微細粒径のものが好ましいが、
さらにこのような微細粒子を錠剤成形機により錠剤状に固めておくことが好ましい。錠剤状にしておくことで、重炭酸塩と有機酸塩の分散状態を、偏在させることなく均一に保持することができ、また包装材への封入工程も容易となる。
また、小さい錠剤とし、必要に応じて封入する個数で炭酸ガス発生量を容易に、また正確に変更することも可能となる。
【0019】
本発明のさらに他の構成は上記構成において、ベースフィルムに接着性ポリオレフィン樹脂製フィルムを使用し、これを透過性フィルムと重ねて包装材にすると云うものである。
【0020】
接着性ポリオレフィン樹脂製フィルムはポリエチレン(PE)系樹脂あるいはポリプロピレン(PP)系樹脂等のポリオレフィン樹脂にエチレン系不飽和カルボン酸をグラフトする等して極性基を導入した樹脂(市販品としては三菱化学株式会社製の「モデイック」等がある。)からなるフィルムで
各種のEVA樹脂製フィルムは勿論、他の合成樹脂製の透過性フィルムと熱溶着、超音波法等により容易にシールすることができると共に、各種材質のキャップ体にも熱溶着、超音波法等により容易に接着することができる。
【0021】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、包装材のベースフィルムをキャップ本体の頂壁の下面に熱溶着あるいは超音波法により接着して、包装体をキャップ本体の内側に配設、固定する、と云うものであり、
キャップ本体の内側への包装体の配設、固定を容易に実施することができる。
この場合、包装材の周縁部に形成されたシール部を利用して包装体を固定することができる。
【0022】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の2軸延伸ブロー成形した壜体の内部に炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部を密封するのに使用する、と云うものであり、
本発明のキャップ体の代表的な用途に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明のキャップ体は主としてペットボトルの内部に水を主成分とした炭酸飲料を充填した壜体製品の口筒部を密封するのに好適に使用することができるものであるが、
飲料の水分が包装材の少なくとも一部を形成する透過性フィルムから包装材の内部に進入し、炭酸ガス発生剤に作用して炭酸ガスが発生し、その分、壜体からの透過に起因する飲料中の炭酸ガスの減少を補完、抑制することができ、
壜体の層構成等を変更することなく、また専用設備を設置することなく簡便に
賞味期限を長くすることができる。
【0024】
また、炭ガスの発生量は、炭酸ガス発生剤の組成と封入量、透過性フィルムの水蒸気透過係数、炭酸ガス透過係数、フィルム厚さ、フィルム面積により制御することができ、
炭酸飲料の種類、許容される炭酸ガス溶解濃度の下限、賞味期限等に応じた包装体を用意してキャップ本体に配設することにより用途に応じた商品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のキャップ体の一実施例を示す半縦断正面図である。
図2】包装体の一例を示す断面図である。
図3】錠剤状の炭酸ガス発生剤の一例を示す斜視図である。
図4】壜体の一例を示す正面図である。
図5】炭酸ガスロス試験の測定結果を示す表である。
図6】炭酸ガスロス試験の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を実施例に沿って、そのバリエーションにも言及しながら、図面を参照して説明する。
図1〜3は、本発明のキャップ体の一実施例を示すもので、図1は半縦断正面図、図2図1のキャップ体の頂壁3の下面に配設されている包装体21の断面図、図3は包装体21の中に封入されている錠剤状の炭酸ガス発生剤27の斜視図である。
【0027】
このキャップ体は、有頂筒状のキャップ本体1と、このキャップ本体1の頂壁3の下面に接着により固定、配設される図2に示される包装体21からなる。
キャップ本体1はPP樹脂成形品で、図4に示される壜体31の口筒部32に嵌合して使用されるものである。
なお、図4に示す壜体31は、内部が加圧状態となる炭酸飲料用の、所謂、耐圧ペットボトルで、円筒状の胴部34の上端にテーパー筒状の肩部を介して、ビードリング33aとネックリング33bを配設した口筒部32が起立設し、複数の脚を突出して所謂ペタロイド状の形状とした底部35を有し、容量が500mlで重量が32gのものである。
【0028】
キャップ本体1は基本的には頂壁3と側周壁2で有頂筒体に形成されるもので、所謂、ピルファープルーフ機構を有し、側周壁2の下端に連結片4を介してピルファープルーフリング5が連設されている。 このピルファープルーフリング5の内周面下端からは上記ペットボトル31の口筒部32のビードリング33aに下方から係止する係止片6が配設されている。
【0029】
次に、図2に示される包装体21は、図3に示すようにディスク状の錠剤とした炭酸ガス発生剤27を、接着性ポリオレフィン樹脂製のベースフィルム23とEVA樹脂製の透過性フィルム24を重ねて周縁部を熱シールした包装材22で密閉したものである。
そして、周縁部に形成されるシール部25をキャップ本体1の頂壁3の下面に熱溶着により接着することにより、包装体21をキャップ本体1の内側に固定、配設するようにしている。
【0030】
ここで、EVA樹脂(酢酸ビニル含有量25重量%)製フィルムの
水蒸気の透過係数は4.5g・mm/(m・day)、炭酸ガスの透過係数は1100cc・mm/(m・day)で、両透過係数共、市販のフィルムのなかで高い値を有する。
また、接着性ポリオレフィン樹脂製のベースフィルム23を使用することにより、EVA樹脂製の透過性フィルム24との熱溶着、超音波法等によるシールを容易に実施することができ、またキャップ本体1の頂壁3との熱溶着、あるいは超音波法による接着を容易に達成することができる。
【0031】
図3に示す錠剤状の炭酸ガス発生剤27は、粉状の炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムを重量比で5:3の割合で混合し、錠剤成形機でディスク状に固めたものである。
【0032】
次に、上記した包装体21の効果を確認するために「炭酸ガスロス測定試験」を以下のように実施した。
<試験方法>
(1)上記した包装体21の透過性フィルム24のフィルム厚さ、炭酸ガス発生剤の重量を変えて次の4種類(T1〜T4)の包装体21を作成準備した。なおT1〜T4の包装体21で使用した透過性フィルム24は直径が17mmの円形とし、一定の透過面積としている。
・T1;フィルム厚さ0.3mm、炭酸ガス発生剤の重量0.25g
・T2;フィルム厚さ0.3mm、炭酸ガス発生剤の重量0.50g
・T3;フィルム厚さ0.6mm、炭酸ガス発生剤の重量0.25g
・T4;フィルム厚さ0.6mm、炭酸ガス発生剤の重量0.50g
【0033】
(2)壜体として図4に示した壜体31、すなわち耐圧ペットボトルを使用し、炭酸ガス含有率が3.0ガスボリュームの炭酸水を充填し、図1に示すようにキャップ本体1の頂壁3に上記4種の包装体21を配設したキャップ体でシールし、炭酸水を充填し実施例1〜4の壜体製品を用意した。
なお、比較例として包装体21の配設のないキャップ体でシールした壜体製品も用意した。
ここで、ガスボリューム(vol)とは、「1気圧15.6℃の状態において、液中に溶解している炭酸ガスの体積を飲料の体積で割ったもの」を云う。
(3)23℃、相対湿度55%の状態で12週間に亘り含有される炭酸ガスの減少量を測定し、(含有される炭酸ガスの減少量/初期の含有量)×100%で算出される炭酸ガスロス率を測定した。
【0034】
図5の表は測定結果をまとめたもので、図6は測定結果をグラフで示したものである。
なお、図5の表中の改善度は、(比較例の12週目の炭酸ガスロス率)/(各実施例の12週目の炭酸ガスロス率)で算出した値である。
また、図6は横軸を経過時間(週)、縦軸を図5の表中の炭酸ガスロス率(%)としたもので、グラフ中T1〜T4はそれぞれ実施例1〜4のデータ、T5は比較例のデータである。
【0035】
この測定結果から、次のことが分かる。
(1)比較例と実施例1〜4を比較すると、包装体21による炭酸ガスロスの抑制効果が確認される。
(2)炭酸ガスロスの抑制効果は透過性フィルム24の厚さに反比例し、炭酸ガス発生剤の重量に比例している。
(3)(2)から分かるように、透過性フィルム24の厚さ及び/または炭酸ガス発生剤の重量により炭酸ガスロスの抑制効果を予測、制御することができる。
(4)図6からも分かるように、12週間の測定範囲では炭酸ガスロスは経過時間に比例して略直線状に増加する。
【0036】
さらに言及すると、特に上記(4)を考慮すると、改善度により比較例の壜体製品に比較して、包装体21を配設したキャップ体により炭酸ガスロスに起因する賞味期限をどの程度延長することができるかを推測することができる。
たとえば実施例1の製品では1.1倍程度、また実施例2の製品では1.3倍程度の賞味期限の延長が期待できる。
そして、透過性フィルム24の厚さ、炭酸ガス発生剤の重量、さらに炭酸ガス発生剤の組成、透過性フィルム24を形成する樹脂の種類、透過性フィルム24の面積等の要素により使用目的に応じた性能を有する包装体21を用意し、キャップ本体の内側に配設することにより、ペットボトル本体の軽量化や賞味期限の延長も含めた用途に応じた壜体製品を提供することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の態様を実施例に沿って説明したが、本発明のキャップ体の実施態様はこれまでの説明の中でも、個別的にそのバリエーションを記載したようにこれら実施例に限定されるものではない。
ここで、包装体21について見ると、
炭酸ガス発生剤を構成する組成物は、炭酸水素ナトリウムと第一リン酸カルシウムの組み合わせに限定されることなく、一般には重炭酸塩と有機酸塩を組み合わせたものを使用することができ、さらに包装体21の保存中における炭酸ガスの発生を抑制するために遮蔽剤としての機能を発揮するコーンスターチやデンプンを混合、分散させておくこともできる。
また、炭酸ガス発生剤は錠剤の他にも粉末、顆粒の状態でも使用することもできる。
【0038】
また包装材22には合成樹脂製フィルムを重ねた袋状のものの他にも、例えば有頂短円筒状の合成樹脂成形品の下端開口部を透過性フィルムでシールした中空ディスク状のもの等、他の態様のものを使用することもできる。
また、包装体21をキャップ本体1に配設する方法については接着する方法の他にも、キャップ本体1に適宜の係止片を設け、係止させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上、説明したように本発明のキャップ体は、内側に配設した炭ガス発生剤を封入した包装体により炭酸水中の炭酸ガスの減少を効果的に抑制できるものであり、炭酸飲料を充填したペットボトル製品等の用途で幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0040】
1 ;キャップ本体
2 ;側周壁
3 ;頂壁
4 ;連結片
5 ;ピルファープルーフリング
6 ;係止片
21;包装体
22;包装材
23;ベースフィルム
24;透過性フィルム
25;シール部
27;炭酸ガス発生剤(錠剤)
31;壜体(ペットボトル)
32;口筒部
33a;ビードリング
33b;ネックリング
34;胴部
35;底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6