【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年〜平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/挑戦研究(事前研究一体型)/超高耐圧酸化ガリウムパワーデバイスの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施の形態〕
(結晶積層構造体の構成)
図1は、第1の実施の形態に係る結晶積層構造体の垂直断面図である。結晶積層構造体1は、Ga
2O
3系基板10と、Ga
2O
3系基板10上にエピタキシャル結晶成長により形成されたGa
2O
3系結晶膜12を有する。
【0017】
Ga
2O
3系基板10は、Ga
2O
3系単結晶からなる基板である。ここで、Ga
2O
3系単結晶とは、Ga
2O
3単結晶、又は、Al、In等の元素が添加されたGa
2O
3単結晶をいう。例えば、Al及びInが添加されたGa
2O
3単結晶である(Ga
xAl
yIn
(1−x−y))
2O
3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)単結晶であってもよい。Alを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。なお、上記のGa
2O
3単結晶は、例えば、β型の結晶構造を有する。また、Ga
2O
3系基板10は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。
【0018】
Ga
2O
3系基板10の主面11の面方位は、(001)である。
【0019】
Ga
2O
3系基板10は、例えば、FZ(Floating Zone)法やEFG(Edge Defined Film Fed Growt)法等の融液成長法により育成したGa
2O
3系単結晶のバルク結晶をスライスし、表面を研磨することにより形成される。
【0020】
Ga
2O
3系結晶膜12は、Ga
2O
3系基板10と同様に、Ga
2O
3系単結晶からなる。また、Ga
2O
3系結晶膜12はGa
2O
3系基板10の主面11上にエピタキシャル結晶成長により形成されるため、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の面方位は、Ga
2O
3系基板10の主面11と同じく、(001)である。また、Ga
2O
3系結晶膜12は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。
【0021】
Ga
2O
3系結晶膜12は、例えば、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の物理的気相成長法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の化学的気相成長法により形成される。
【0022】
Ga
2O
3系結晶膜12は、750℃以上の成長温度でのエピタキシャル成長により形成される。成長温度を750℃以上とすることにより、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の平坦性が高くなる。具体的には、主面13のRMS値が1nm以下となる。
【0023】
ここで、RMS値は平坦性の指標となる数値であり、原子間力顕微鏡によりGa
2O
3結晶膜の主面の鉛直方向の高さと水平方向の位置との関係を表す曲線を測定し、その平均線から曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根を求めることにより得られる。
【0024】
RMS値が大きいと、例えば、結晶積層構造体1を用いてショットキーダイオードやMESFET(Metal-Semiconductor Field Effect Transistor)を製造する場合、Ga
2O
3系結晶膜12上に形成されたショットキー電極において電界集中が発生し、素子耐圧の低下を引き起こすおそれがある。これは、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の凹凸により形成されたショットキー電極の底面の凹凸の凸部に電界が集中することによる。この電界集中を抑えるためのショットキー電極の底面の表面粗さの条件として、RMS値が1nm以下であることが知られている。すなわち、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13のRMS値が1nm以下であれば、ショットキー電極における電界集中を抑えることができる。
【0025】
また、成長温度を750℃以上とすることにより、結晶品質の高いGa
2O
3系結晶膜12が得られる。なお、成長温度が900℃を超えると、供給したGaの再蒸発が急激に大きくなり、成長温度600℃の時と比較して、成長速度が1/10以下に低下する。このように、原料使用効率の面からは、成長温度は低い方が好ましい。したがって、Ga
2O
3系結晶膜12の成長温度は900℃以下であることが好ましい。
【0026】
Ga
2O
3系結晶膜12が結晶品質及び主面の平坦性に優れるため、Ga
2O
3系結晶膜12上に高品質な金属―半導体界面および絶縁膜―半導体界面を形成できる。このため、結晶積層構造体1を高品質な半導体装置の製造に用いることができる。
【0027】
(Ga
2O
3系結晶膜の評価)
以下に、Ga
2O
3系結晶膜の主面の平坦性、成長速度、結晶品質についての評価結果を示す。なお、本評価においては、Ga
2O
3系基板としてGa
2O
3基板を用いて、Ga
2O
3系結晶膜として厚さおよそ100〜300nmのGa
2O
3結晶膜をMBE法により形成した。また、Ga
2O
3結晶膜の酸素源にはオゾンを用いた。
【0028】
図2(a)、(b)は、それぞれ主面の面方位が(010)、(−201)であるGa
2O
3基板の主面上にGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させるときの、Ga
2O
3結晶膜の成長温度と主面の平坦性との関係を表すグラフである。
【0029】
図3(a)、(b)は、それぞれ主面の面方位が(101)、(001)であるGa
2O
3基板の主面上にGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させるときの、Ga
2O
3結晶膜の成長温度と主面の平坦性との関係を表すグラフである。
【0030】
図2(a)、(b)、及び
図3(a)、(b)の横軸はGa
2O
3結晶膜の成長温度(℃)を表し、縦軸はGa
2O
3結晶膜の主面のRMS値(nm)を表す。なお、RMS値は、1μm角の領域における原子間力顕微鏡像から算出した。
【0031】
図2(b)、及び
図3(a)は、Ga
2O
3基板の主面の面方位が(−201)又は(101)である場合は、成長温度に依らず、平坦性に優れた(例えば、主面のRMS値が1nm以下)のGa
2O
3結晶膜が得られないことを示している。Ga
2O
3結晶膜の平坦性が低い場合、研磨加工により平坦性を向上する方法も考えられるが、工程の増加に伴い製造コストが増加するため、好ましくない。
【0032】
また、
図2(a)は、Ga
2O
3基板の主面の面方位が(010)である場合、成長温度がおよそ550〜650℃のときに、Ga
2O
3結晶膜の主面のRMS値が1nm以下になることを示している。しかしながら、550〜650℃程度の成長温度では、結晶品質の高いGa
2O
3結晶膜を得ることはできない。具体的には、例えば、成長温度600℃で形成した場合は、Ga
2O
3結晶膜のエッチピット密度が10
6cm
−2程度であるのに対し、成長温度700℃で形成した場合には10
4cm
−2程度に減少する(すなわち、欠陥が1/100に減少する)。なお、Ga
2O
3基板のエッチピット密度は10
4cm
−2程度であり、成長温度を700℃以上にすることで、Ga
2O
3基板と同程度の品質のGa
2O
3結晶膜が得られる。
【0033】
そして、
図2(a)によれば、700℃以上の領域では、主面のRMS値が1nm以下のGa
2O
3結晶膜を得ることができない。このことは、Ga
2O
3基板の主面の面方位が(010)である場合、結晶品質と主面の平坦性の両方に優れたGa
2O
3結晶膜を得ることは困難であることを示している。
【0034】
また、
図3(b)は、Ga
2O
3基板の主面の面方位が(001)である場合、成長温度が750℃以上のときに、Ga
2O
3結晶膜の主面のRMS値が1nm以下になることを示している。
【0035】
なお、Ga
2O
3基板の代わりに他のGa
2O
3系基板を用いた場合であっても、Ga
2O
3結晶膜の代わりに他のGa
2O
3系結晶膜を形成した場合であっても、上記の評価結果と同様の評価結果が得られる。すなわち、Ga
2O
3系基板の主面の面方位が(001)である場合、Ga
2O
3系結晶膜の成長温度が750℃以上のときに、主面のRMS値が1nm以下になるといえる。
【0036】
図4は、主面の面方位が(001)であるGa
2O
3基板の主面上にGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させるときの、Ga
2O
3結晶膜の成長温度と成長速度との関係を表すグラフである。
【0037】
図4の横軸はGa
2O
3結晶膜の成長温度(℃)を表し、縦軸はGa
2O
3結晶膜の成長速度(μm/h)を表す。
【0038】
図4によれば、Ga
2O
3系結晶膜の主面のRMS値が1nm以下になる750℃以上の成長温度における成長速度は、600〜700℃の比較的低い成長温度における成長速度よりも低くなっているものの、0.4μm/h程度の値は得られており、Ga
2O
3結晶膜の量産性に問題がないことがわかった。
【0039】
なお、Ga
2O
3基板の代わりに他のGa
2O
3系基板を用いた場合であっても、Ga
2O
3結晶膜の代わりに他のGa
2O
3系結晶膜を形成した場合であっても、上記の評価結果と同様の評価結果が得られる。すなわち、Ga
2O
3系基板の主面の面方位が(001)である場合、Ga
2O
3系結晶膜の成長温度が750℃以上のときに、0.4μm/h程度の成長速度が得られる。
【0040】
図5は、主面の面方位が(001)であるGa
2O
3基板の主面上にGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、X線ロッキングカーブ測定により得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。
【0041】
図5の横軸はX線の入射角ω(degree)を表し、縦軸はX線の回折強度(任意単位)を表す。
【0042】
図5は、Ga
2O
3基板(Ga
2O
3結晶膜なし)のスペクトル、及び600℃、650℃、700℃、725℃、750℃、及び775℃でそれぞれGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体のスペクトルを示す。ここで、
図5の各スペクトルに含まれる回折ピークは、(002)面の回折ピークである。
【0043】
図5は、いずれの結晶積層構造体の回折ピークも、Ga
2O
3基板の回折ピークとほぼ同じ半値幅を有することを示している。このことは、600〜775℃のいずれの成長温度でGa
2O
3結晶膜を成長させたとしても、結晶軸方向のばらつきが小さいGa
2O
3結晶膜が得られることを示している。
【0044】
なお、Ga
2O
3基板の代わりに他のGa
2O
3系基板を用いた場合であっても、Ga
2O
3結晶膜の代わりに他のGa
2O
3系結晶膜を形成した場合であっても、上記の評価結果と同様の評価結果が得られる。すなわち、Ga
2O
3系基板の主面の面方位が(001)である場合、600〜775℃のいずれの成長温度でGa
2O
3系結晶膜を成長させたとしても、結晶軸方向のばらつきが小さいGa
2O
3系結晶膜を得ることができる。
【0045】
図6は、主面の面方位が(001)であるGa
2O
3基板の主面上にGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。
【0046】
図6の横軸はX線の入射方位と反射方位のなす角2θ(degree)を表し、縦軸はX線の回折強度(任意単位)を表す。
【0047】
図6は、Ga
2O
3基板(Ga
2O
3結晶膜なし)のスペクトル、及び600℃、650℃、700℃、725℃、750℃、及び775℃でそれぞれGa
2O
3結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体のスペクトルを示す。
【0048】
図6は、600〜725℃の成長温度でGa
2O
3結晶膜を成長させた結晶積層構造体のスペクトルにおいて見られる異相の存在に起因する(−401)面の回折ピークが、750℃以上の成長温度でGa
2O
3結晶膜を成長させた結晶積層構造体のスペクトルにおいて消滅することを示している。このことは、750℃以上の成長温度でGa
2O
3結晶膜を成長させることにより、単相のGa
2O
3結晶膜が得られることを示している。なお、2θ=26°付近のブロードなピークは、X線回折装置の基板フォルダからの回折に起因するものである。
【0049】
また、750℃の成長温度で形成したGa
2O
3結晶膜のエッチピット密度は10
4cm
−2程度であり、10
4cm
−2程度であるGa
2O
3基板のエッチピット密度とほぼ等しかった。このことは、Ga
2O
3結晶膜がGa
2O
3基板と同程度の高い結晶品質を有することを示している。
【0050】
なお、Ga
2O
3基板の代わりに他のGa
2O
3系基板を用いた場合であっても、Ga
2O
3結晶膜の代わりに他のGa
2O
3系結晶膜を形成した場合であっても、上記の評価結果と同様の評価結果が得られる。すなわち、Ga
2O
3系基板の主面の面方位が(001)である場合、750℃以上の成長温度でGa
2O
3系結晶膜を成長させることにより、単相のGa
2O
3系結晶膜が得られる。
【0051】
そして、
図5のX線回折スペクトルから得られる評価結果と
図6のX線回折スペクトルから得られる評価結果を総合すれば、750℃以上の成長温度でGa
2O
3系結晶膜を成長させることにより、結晶品質に優れたGa
2O
3系結晶膜が得られることがわかる。
【0052】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態として、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む半導体装置の1つである高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)について説明する。
【0053】
図7は、第2の実施の形態に係る高電子移動度トランジスタの垂直断面図である。この高電子移動度トランジスタ2は、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む。さらに、高電子移動度トランジスタ2は、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13上の電子供給層21、電子供給層21上のゲート電極23、ソース電極24、及びドレイン電極25を含む。ゲート電極23は、ソース電極24とドレイン電極25との間に配置される。
【0054】
ゲート電極23は電子供給層21の主面22に接触してショットキー接合を形成する。また、ソース電極24及びドレイン電極25は、電子供給層21の主面22に接触してオーミック接合を形成する。
【0055】
本実施の形態においては、Ga
2O
3系基板10は、Mg等のII族の元素を含み、高い電気抵抗を有する。また、Ga
2O
3系結晶膜12はi型であり、電子走行層として機能する。
【0056】
電子供給層21は、例えば、Si、Sn等のドナーが添加されたβ−(AlGa)
2O
3単結晶からなり、Ga
2O
3系結晶膜12上にエピタキシャル成長により形成される。
【0057】
Ga
2O
3系結晶膜12と電子供給層21とはバンドギャップの大きさが異なるので、その界面ではバンドの不連続が生じ、電子供給層21のドナーから発生した電子がGa
2O
3系結晶膜12側に集まって界面近傍の領域に分布し、二次元電子ガスと呼ばれる電子層が形成される。
【0058】
このように、電子供給層21には、ゲート電極23とのショットキー接合により発生する第1の空乏層と、二次元電子ガスの形成による第2の空乏層とが発生する。電子供給層21は、第1の空乏層と第2の空乏層とが接するような厚さを有する。
【0059】
そして、ゲート電極23に電圧を加えることにより、第1及び第2の空乏層の厚さを変化させて二次元電子ガスの濃度を調節し、ドレイン電流を制御する。
【0060】
Ga
2O
3系結晶膜12の厚さは、特に限定されないが、1nm以上であることが好ましい。また、電子供給層21の厚さは、ドーピング濃度に応じて0.001〜1μmに設定される。
【0061】
高電子移動度トランジスタ2においては、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の平坦性が高いため、Ga
2O
3系結晶膜12上に形成される電子供給層21の主面22の平坦性も高くなり、電子供給層21とショットキー接合を形成するゲート電極23における電界集中が抑えられる。このため、高電子移動度トランジスタ2の耐圧性能の低下が抑えられる。
【0062】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態として、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む半導体装置の1つであるMESFET(Metal-Semiconductor Field Effect Transistor)について説明する。
【0063】
図8は、第3の実施の形態に係るMESFETの垂直断面図である。このMESFET3は、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む。さらに、MESFET3は、Ga
2O
3系結晶膜12上のゲート電極31、ソース電極32、及びドレイン電極33を含む。ゲート電極31は、ソース電極32とドレイン電極33との間に配置される。
【0064】
ゲート電極31はGa
2O
3系結晶膜12の主面13に接触してショットキー接合を形成する。また、ソース電極32及びドレイン電極33は、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13に接触してオーミック接合を形成する。
【0065】
本実施の形態においては、Ga
2O
3系基板10は、Mg等のII族の元素を含み、高い電気抵抗を有する。
【0066】
本実施の形態においては、Ga
2O
3系結晶膜12はn型であり、ソース電極32及びドレイン電極33との接触部付近におけるドナー濃度が他の部分におけるドナー濃度よりも高い。
【0067】
ゲート電極31に印加するバイアス電圧を制御することにより、Ga
2O
3系結晶膜12内のゲート電極31下の空乏層の厚さを変化させ、ドレイン電流を制御することができる。
【0068】
MESFET3においては、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の平坦性が高いため、Ga
2O
3系結晶膜12とショットキー接合を形成するゲート電極31における電界集中が抑えられる。このため、MESFET3の耐圧性能の低下が抑えられる。
【0069】
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態として、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む半導体装置の1つであるショットキーバリアダイオードについて説明する。
【0070】
図9は、第4の実施の形態に係るショットキーバリアダイオードの垂直断面図である。このショットキーバリアダイオード4は、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む。さらに、ショットキーバリアダイオード4は、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13上のショットキー電極41、Ga
2O
3系基板10の主面11と反対側の主面14上のオーミック電極42を含む。
【0071】
ショットキー電極41はGa
2O
3系結晶膜12の主面13に接触してショットキー接合を形成する。また、オーミック電極42は、Ga
2O
3系基板10の主面14に接触してオーミック接合を形成する。
【0072】
本実施の形態においては、Ga
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12はn型であり、Ga
2O
3系結晶膜12のドナー濃度はGa
2O
3系基板10のドナー濃度よりも低い。
【0073】
ショットキーバリアダイオード4に対して順方向の電圧(ショットキー電極41側が正電位)を印加すると、Ga
2O
3系基板10からGa
2O
3系結晶膜12へ移動する電子が増加する。これにより、ショットキー電極41からオーミック電極42へ順方向電流が流れる。
【0074】
一方、ショットキーバリアダイオード4に対して逆方向の電圧(ショットキー電極41側が負電位)を印加すると、ショットキーバリアダイオード4を流れる電流はほぼゼロとなる。
【0075】
ショットキーバリアダイオード4においては、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の平坦性が高いため、Ga
2O
3系結晶膜12とショットキー接合を形成するショットキー電極41における電界集中が抑えられる。このため、ショットキーバリアダイオード4の耐圧性能の低下が抑えられる。
【0076】
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態として、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む半導体装置の1つであるMOSFET(Metal-oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)について説明する。
【0077】
図10は、第5の実施の形態に係るMOSFETの垂直断面図である。このMOSFET5は、第1の実施の形態に係るGa
2O
3系基板10及びGa
2O
3系結晶膜12を含む。さらに、MOSFET5は、Ga
2O
3系結晶膜12上の酸化物絶縁膜52、ゲート電極51、ソース電極53、及びドレイン電極54を含む。酸化物絶縁膜52、ゲート電極51は、ソース電極53とドレイン電極54との間に配置される。
【0078】
ゲート電極51はGa
2O
3系結晶膜12の主面13上に酸化物絶縁膜52を介して形成される。また、ソース電極53及びドレイン電極54は、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13に接触してオーミック接合を形成する。
【0079】
本実施の形態においては、Ga
2O
3系基板10は、Mg等のII族の元素を含み、高い電気抵抗を有する。
【0080】
ゲート電極51に印加するバイアス電圧を制御することにより、Ga
2O
3系結晶膜12内を流れるドレイン電流を制御することができる。
【0081】
MOSFET5においては、Ga
2O
3系結晶膜12の主面13の平坦性が高いため、Ga
2O
3系結晶膜12と酸化物絶縁膜52との界面を急峻にでき、電界集中やチャネル移動度の低下等を抑制できる。
【0082】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、量産に十分な成長速度で、結晶品質や主面の平坦性に優れるGa
2O
3系結晶膜を成膜することができる。また、Ga
2O
3系結晶膜が結晶品質及び主面の平坦性に優れるため、Ga
2O
3系結晶膜上に品質のよい結晶膜を成長させることができる。このため、本実施の形態に係るGa
2O
3系結晶膜を含む結晶積層構造体を高品質な半導体装置の製造に用いることができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0084】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。