(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892537
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ダイヤフラム体、差圧測定ユニット、液量推定装置、及び、液量推定システム
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20160310BHJP
G01F 23/18 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
G01L19/06 A
G01F23/18
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-275479(P2011-275479)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-125008(P2013-125008A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】豊田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−203344(JP,U)
【文献】
特開平7−243893(JP,A)
【文献】
実開平6−28653(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
G01F23/14−23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられたケースと、前記開口を塞ぐように前記ケースに接合して設けられたダイヤフラムと、を有するダイヤフラム体において、
前記ケースと前記ダイヤフラムとの接合箇所を少なくとも覆うように前記ケースと前記ダイヤフラムとに密に重ねて設けられた漏洩防止膜を有し、
前記ケースと別体に設けられるとともに前記ケースに接続された導圧管をさらに有し、
前記漏洩防止膜が、前記ケースと前記導圧管との接続箇所を覆うように前記ケースと前記導圧管とに密に重ねて設けられている
ことを特徴とするダイヤフラム体。
【請求項2】
前記導圧管が、互いに接続された複数の部分導圧管で構成されており、
前記漏洩防止膜が、前記複数の部分導圧管の接続箇所を覆うように前記部分導圧管に密に重ねて設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム体。
【請求項3】
前記導圧管には、前記ケースに接続された一端からその反対の他端に向かう流体の流動を阻止する逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤフラム体。
【請求項4】
前記漏洩防止膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アセタールの中から選択される樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイヤフラム体。
【請求項5】
液体タンクの気相部の圧力に応じた第1圧力を出力する気相ダイヤフラム部と、前記液体タンクの液相部の圧力に応じた第2圧力を出力する液相ダイヤフラム部と、前記気相ダイヤフラム部と前記液相ダイヤフラム部とに接続され、前記第1圧力及び前記第2圧力の差圧に応じた差圧信号を出力する差圧センサと、を有する差圧測定ユニットにおいて、
前記気相ダイヤフラム部及び前記液相ダイヤフラム部のうち少なくとも一方が請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイヤフラム体で構成されている
ことを特徴とする差圧測定ユニット。
【請求項6】
前記導圧管が、前記液体タンク内に配置され、
前記漏洩防止膜が、前記ケース、前記ダイヤフラム、及び、前記液体タンク内に配置された前記導圧管のそれぞれの表面全体を連続して覆うように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の差圧測定ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の差圧測定ユニットと、前記差圧測定ユニットの出力する差圧信号に基
づいて液体タンク内の液量を推定する液量推定手段と、を有することを特徴とする液量推
定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液量推定装置と、前記液量推定装置が設けられた液体タンクと、を有
することを特徴とする液量推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の燃料タンクなどの液体タンクに収容されたガソリンや液化ガスなどの液体の液量推定に用いられるダイヤフラム体、このダイヤフラム体を有する差圧測定ユニット、この差圧測定ユニットを有する液量推定装置、及び、この液量推定装置を備える液量推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される液量推定装置としての燃料残量検出装置は、液体タンクとしての燃料タンク内の燃料の液位(即ち、液面高さ)を検出する液位検出手段を有する。この液位検出手段として、例えば、特許文献1に開示されている圧力式液位計測装置が用いられていた。
【0003】
図5に示すように、特許文献1に示された圧力式液位計測装置801は、可動隔壁812で仕切られた可動容積室X、Yを内部に有する背圧箱810と、タンク底の液相部に設けられた差圧センサAと、タンク内上部空間の気相部に設けられた差圧センサBと、を有している。
【0004】
差圧センサAは、一方の受圧部にタンク底の液相圧力P1が導かれ、他方の受圧部である背圧部に導圧管823が接続されている。差圧センサBは、一方の受圧部にタンク内の気相圧力P2が導かれ、他方の受圧部である背圧部に導圧管824が接続されている。導圧管823と導圧管824とは連通されて、背圧箱810の可動容積室Xに接続されている。また、タンクの気相部は導圧管825により可動容積室Yに接続されている。
【0005】
液相部の液量に応じた液圧Pは、液相圧力P1から気相圧力P2を差し引くことにより得られる。そして、差圧センサAは、液相圧力P1と可動容積室Xの圧力P3との差圧を検出し、差圧センサBは、気相圧力P2と可動容積室Xとの圧力P3を検出して、差圧センサAの検出値から差圧センサBの検出値を差し引くことにより上記圧力P3が相殺されて、液圧Pを得ることができた。そして、図示しない制御部がこの液圧Pに基づいてタンク内の液位を検出していた。
【0006】
しかしながら、上述した圧力式液位計測装置801は、可動隔壁812で内部が仕切られた背圧箱810や複数の差圧センサA、Bを備えるなど構造が複雑で製造コストが高いという問題があった。そして、このような問題を解決するものとして、次に示す液量推定装置がある。
【0007】
図6に示すように、液量推定装置920は、差圧センサ930、気相ダイヤフラム部940及び液相ダイヤフラム部950で構成された差圧測定ユニット925と、制御部960と、を有している。この液量推定装置920は、液化ガスからなる燃料Fが収容された液体タンク910に設けられており、当該液体タンク910内の燃料Fの液量を推定する。
【0008】
差圧センサ930は、箱形のセンサケース931と、センサケース931の内部を第1受圧室931aと第2受圧室931bとに仕切る差圧検知ダイヤフラム932と、差圧検知ダイヤフラム932の第1受圧室931a側の面932aが受けた圧力と第2受圧室931b側の面932bが受けた圧力との差圧に応じた差圧信号を制御部960に出力する図示しない差圧信号出力部と、を有している。
【0009】
ダイヤフラム体としての気相ダイヤフラム部940は、
図7(a)に示すように、開口941aが設けられたケース941と、開口941aを塞ぐようにケース941に接合して設けられた薄膜状の金属からなるダイヤフラム942と、ケース941と上記第1受圧室931aとを接続する導圧管945と、を有している。ケース941は、導圧管945を介して第1受圧室931aと連通されている。ケース941、導圧管945、及び第1受圧室931aには、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液Dが封入されている。気相ダイヤフラム部940は、液体タンク910内の上壁910a付近にダイヤフラム942を底壁910b側に向けて配設されている。ダイヤフラム942が圧力を受けると、当該圧力に応じた第1圧力P1が圧力伝達溶液を介して第1受圧室931aに伝達される。
【0010】
ダイヤフラム体としての液相ダイヤフラム部950は、
図7(b)に示すように、上記気相ダイヤフラム部940と同一に構成されており、開口951aが設けられたケース951と、開口951aを塞ぐようにケース951に接合して設けられた薄膜状の金属からなるダイヤフラム952と、ケース951と上記第2受圧室931bとを接続する導圧管955と、を有している。ダイヤフラム952の面積は、上記ダイヤフラム942と同一面積に形成されている。ケース951は、導圧管955を介して第2受圧室931bと連通されている。ケース951、導圧管955、及び、第2受圧室931bには、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液Dが封入されている。液相ダイヤフラム部950は、液体タンク910の底壁910b付近にダイヤフラム952を上壁910a側に向けて配設されている。ダイヤフラム952が圧力を受けると、当該圧力に応じた第2圧力P2が圧力伝達溶液を介して第2受圧室931bに伝達される。
【0011】
気相ダイヤフラム部940は、液体タンク910の上壁910aに配設されているので、ダイヤフラム942が気相部TAの気相圧力Paを受け、この気相圧力Paに応じた第1圧力P1が第1受圧室931aに伝達される。液相ダイヤフラム部950は、液体タンク910の底壁910bに配設されているので、ダイヤフラム952が気相部TAの圧力Paと液体タンク910に収容された液体の液圧Pbとの合計圧力である液相圧力Plを受け、この液相圧力Plに応じた第2圧力P2が第2受圧室931bに伝達される。そして、差圧センサ930が出力する上記第1圧力P1と上記第2圧力P2との差圧に応じた差圧信号を出力して、図示しない制御部によって、この差圧信号に基づいて液体タンク910内の液量を推定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−243893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した気相ダイヤフラム部940では、ダイヤフラム942がそれに加わる圧力の変動により変形を繰り返すので、
図8(a)に示すように、金属疲労などによってケース941とダイヤフラム942との接合箇所Rに微小な亀裂Kなどが生じ、そのため、このような亀裂Kからケース941内の圧力伝達溶液Dが液体タンク内に漏れてしまったり、
図8(b)に示すように、このような亀裂Kから高圧の燃料Fがケース941内に侵入するとともに導圧管945や差圧センサ930等を通じて液体タンク外に漏れてしまったり、するという問題があった。ダイヤフラム942に生じるこのような亀裂は、衝突などの衝撃が生じた場合を除き、変形時の応力が集中するケースとの接合箇所Rにそのほとんどが発生していた。また、液相ダイヤフラム部950においても同様の問題があった。
【0014】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、ダイヤフラム体のケースとダイヤフラムとの接合箇所に亀裂が生じた場合でも、当該ケースの内容物の漏洩を防止できるとともに当該ケースへの圧力測定対象物の侵入を防止できるダイヤフラム体、このダイヤフラム体を有する差圧測定ユニット、この差圧測定ユニットを有する液量推定装置、および、この液量推定装置を備える液量推定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、開口が設けられたケースと、前記開口を塞ぐように前記ケースに接合して設けられたダイヤフラムと、を有するダイヤフラム体において、前記ケースと前記ダイヤフラムとの接合箇所を少なくとも覆うように前記ケースと前記ダイヤフラムとに密に重ねて設けられた漏洩防止膜を有
し、前記ケースと別体に設けられるとともに前記ケースに接続された導圧管をさらに有し、前記漏洩防止膜が、前記ケースと前記導圧管との接続箇所を覆うように前記ケースと前記導圧管とに密に重ねて設けられていることを特徴とするダイヤフラム体である。
【0017】
請求項
2に記載された発明は、請求項
1に記載された発明において、前記導圧管が、互いに接続された複数の部分導圧管で構成されており、前記漏洩防止膜が、前記複数の部分導圧管の接続箇所を覆うように前記部分導圧管に密に重ねて設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項
3に記載された発明は、請求項
1又は
2に記載された発明において、前記導圧管には、前記ケースに接続された一端からその反対の他端に向かう流体の流動を阻止する逆止弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項
4に記載された発明は、請求項1〜
3のいずれか一項に記載された発明において
、前記漏洩防止膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサル
ファイド、ABS樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、
フラン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アセタールの中から選択される樹脂材料で構成されて
いることを特徴とするものである。
【0020】
請求項
5に記載された発明は、上記目的を達成するために、液体タンクの気相部の圧力に応じた第1圧力を出力する気相ダイヤフラム部と、前記液体タンクの液相部の圧力に応じた第2圧力を出力する液相ダイヤフラム部と、前記気相ダイヤフラム部と前記液相ダイヤフラム部とに接続され、前記第1圧力及び前記第2圧力の差圧に応じた差圧信号を出力する差圧センサと、を有する差圧測定ユニットにおいて、前記気相ダイヤフラム部及び前記液相ダイヤフラム部のうち少なくとも一方が請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイヤフラム体で構成されていることを特徴とする差圧測定ユニットである。
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記導圧管が、前記液体タンク内に配置され、前記漏洩防止膜が、前記ケース、前記ダイヤフラム、及び、前記液体タンク内に配置された前記導圧管のそれぞれの表面全体を連続して覆うように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項7に記載された発明は、上記目的を達成するために、請求項6に記載の差圧測定ユニットと、前記差圧測定ユニットの出力する差圧信号に基づいて液体タンク内の液量を推定する液量推定手段と、を有することを特徴とする液量推定装置である。
【0022】
請求項8に記載された発明は、上記目的を達成するために、請求項7に記載の液量推定装置と、前記液量推定装置が設けられた液体タンクと、を有することを特徴とする液量推定システムである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1、
5、7、8に記載された発明によれば、ダイヤフラム体は、ケースとダイヤフラムとの接合箇所を少なくとも覆うように前記ケースと前記ダイヤフラムとのそれぞれに密に重ねて設けられた漏洩防止膜を有している。そして、ダイヤフラムに生じる亀裂は、変形時の応力が集中するケースとの接合箇所に生じやすく、そのため、このような接合箇所に漏洩防止膜を設けることにより、上記亀裂が生じた場合でも漏洩防止膜でその亀裂が塞がれて、当該亀裂からケース外に圧力伝達媒体などの内容物が漏れたり、当該亀裂からケース内に液化ガスなどの圧力測定対象物が侵入したり、することを防止できる。
【0024】
また、ケースと別体に設けられるとともに当該ケースに接続された導圧管を有し、漏洩防止膜が、ケースと導圧管との接続箇所を覆うようにこれらケースと導圧管とに密に重ねて設けられている。そして、ダイヤフラム体が車両などに搭載された場合に、走行時の振動などによりケースと導圧管との溶接等による接続箇所に亀裂や隙間などが生じてしまうことがあり、そのため、このような接続箇所に漏洩防止膜を設けることにより、上記亀裂などが生じた場合でも漏洩防止膜でその亀裂などが塞がれて、当該亀裂などからケース外に圧力伝達媒体が漏れたり、当該亀裂などからケース内に液化ガスなどの圧力測定対象物が侵入したり、することをさらに防止できる。
【0025】
請求項
2に記載された発明によれば、導圧管が、互いに接続された複数の部分導圧管で構成されており、漏洩防止膜が、これら複数の部分導圧管の接続箇所を覆うように部分導圧管に密に重ねて設けられている。そして、ダイヤフラム体が車両などに搭載された場合に、走行時の振動などにより部分導圧管の間の溶接などによる接続箇所に亀裂や隙間などが生じてしまうことがあり、そのため、このような接続箇所に漏洩防止膜を設けることにより、上記亀裂などが生じた場合でも漏洩防止膜でその亀裂などが塞がれて、当該亀裂などから導圧管外に圧力伝達媒体が漏れたり、当該亀裂などから導圧管内に液化ガスなどの圧力測定対象物が侵入したり、することをさらに防止できる。
【0026】
請求項
3に記載された発明によれば、導圧管には、ケースに接続された一端から反対の他端に向けて流れる流体の流動を阻止する逆止弁が設けられているので、例えば、ケース内や導圧管内の圧力がこれらケースや導圧管が設置されたタンク内の圧力より低く保たれている構成においては、この導圧管の他端に接続される装置についてもケース内等の圧力を基に耐圧が設計されている場合があり、この場合に、ケース内に亀裂や隙間から高圧の液化ガスなどの流体が侵入すると、ケースや導圧管内の圧力が高まり、この圧力が上記装置まで達し当該装置が破損して流体が外部に漏洩してしまうという問題があるが、この逆止弁により流体の流動を導圧管内で阻止して、流体が外部に漏れてしまうことをさらに防止できる。
【0027】
請求項
4に記載された発明によれば、前記漏洩防止膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アセタールの中から選択される樹脂材料で構成されているので、これら合成樹脂は、液化石油ガスを含む各種液体に対して耐腐食性を有し、そのためダイヤフラム体を用いた計測対象の液体に対して耐腐食性を有する樹脂材料を上記から選択することで、漏洩防止膜の腐食による劣化を回避して、耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の液量推定システムの一実施形態の車両燃料システムの構成を示す図である。
【
図2】(a)は、
図1の車両燃料システムの液量推定装置が備える気相ダイヤフラム部の断面図であり、(b)は、
図1の車両燃料システムの液量推定装置が備える液相ダイヤフラム部の断面図である。
【
図3】(a)、(b)は、気相ダイヤフラム部の本発明に係る作用を説明する図である。
【
図4】(a)は、気相ダイヤフラム部の第1の変形例の構成を示す図であり、(b)は、気相ダイヤフラム部の第2の変形例の構成を示す図である。
【
図7】(a)は、
図6の液量推定装置が備える気相ダイヤフラム部の断面図であり、(b)は、
図6の液量推定装置が備える液相ダイヤフラム部の断面図である。
【
図8】(a)は、
図7の気相ダイヤフラム部に生じた亀裂を説明する図であり、(b)は、(a)の気相ダイヤフラム部の亀裂による流動が生じた状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の液量推定システムの一実施形態である車両燃料システムを、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0030】
以下に説明する車両燃料システムは、車両に搭載されて、液化石油ガス(LPG)を当該車両の燃料Fとして収容する燃料タンクを備えるとともに、当該燃料タンク内の燃料Fの液量を推定するシステムである。この車両燃料システムでは、燃料タンクの気相部の圧力と液相部の圧力とに基づいて、燃料Fの液量を推定する。
【0031】
車両燃料システム1は、
図1に示すように、燃料Fを収容する液体タンクとしての燃料タンク10と、燃料タンク10に収容された燃料Fの液量(即ち、LPG残量)を推定する液量推定装置20と、を有している。
【0032】
燃料タンク10は、例えば、車両の床下などに配置されて、当該車両の燃料Fを収容する周知の車両部品であり、本実施形態においては、直方体の箱形状に形成されている。燃料タンク10は、燃料供給スタンドなどから燃料Fが供給される車両の燃料充填口に、図示しない流入管を通じて接続されている。また、燃料タンク10は、車両の内燃機関に燃料Fを供給するためのインジェクション装置等に、図示しない流出管を通じて接続されている。燃料タンク10内には、気化した燃料F等が収容される気相部TAと、液体状の燃料Fが収容される液相部TLと、が存在する。燃料タンク10内には、燃料Fが空の場合は気相部TAのみ存在し、また、燃料Fが満量の場合でも若干の空間が設けられ、即ち、気相部TAが存在する。
【0033】
液量推定装置20は、差圧センサ30、気相ダイヤフラム部40及び液相ダイヤフラム部50、で構成された差圧測定ユニット25と、制御部60と、を有している。
【0034】
差圧センサ30は、箱形に形成されたセンサケース31と、センサケース31内を第1受圧室31a及び第2受圧室31bとに仕切る差圧検知ダイヤフラム32と、差圧検知ダイヤフラム32に設けられ、当該差圧検知ダイヤフラム32の変形量に応じた信号(即ち、差圧信号)を出力する差圧信号出力部としての図示しない歪みゲージと、を有している。差圧検知ダイヤフラム32は、一方の受圧面32aが第1受圧室31aに面し、他方の受圧面32bが第2受圧室31bに面しており、これら一方の受圧面32aと他方の受圧面32bとに加わる圧力が等しいとき、即ち、差圧検知ダイヤフラム32の変形がないときに、第1受圧室31aと第2受圧室31bとが同一容積となるようにセンサケース31を仕切って配設されている。差圧検知ダイヤフラム32は、第1受圧室31a内の圧力及び第2受圧室31bの圧力のバランスに応じて変形し、そして、この差圧検知ダイヤフラム32の変形量に応じて、歪みゲージが差圧信号を出力する。差圧センサ30は、燃料タンク10の上壁10a上方に設けられており、その歪みゲージが、後述する制御部60に接続されている。
【0035】
気相ダイヤフラム部40は、請求項中のダイヤフラム体に相当し、
図2(a)に示すように、ケース41と、ダイヤフラム42と、導圧管45と、第1漏洩防止膜47と、を有している。
【0036】
ケース41は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて、燃料タンク10内の圧力で変形しない剛性を有する略箱形に形成されており、一の面に開口41aが設けられている。
【0037】
ダイヤフラム42は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて薄膜状に形成されており、ケース41内が密閉空間となるように、ケース41の開口41aを塞ぐように配設されている。ダイヤフラム42は、ケース41における開口41aの周囲の箇所に、例えば、接着剤や溶接などによって隙間無く密着して接合されている。このように設けられたダイヤフラム42は、その外面に加わる圧力とその内面に加わる圧力との圧力差に比例して変形する。即ち、ダイヤフラム42は、前記圧力差が大きいほど変形量が多くなり、また自身の面積が大きいほど変形量が多くなる。
【0038】
導圧管45は、一端がケース41に接続され、他端が差圧センサ30の第1受圧室31aに接続されている。つまり、ケース41、導圧管45及び第1受圧室31aは互いに連通されている。導圧管45とケース41とは溶接によって接続されており、そして、導圧管45は、複数の配管部45aと、複数の配管部45aの間に直列に挿入された逆止弁45bと、が互いに溶接によって接続されて構成されている。これらは接着剤などによって互いに接着されていてもよい。逆止弁45bは、ケース41に接続された導圧管45の一端から第1受圧室31aに接続された導圧管45の他端に向かう流体(後述する圧力伝達溶液Dや、気体状又は液体状の燃料Fなど)の所定流量を超える流動を阻止するように設けられている。逆止弁45bは、ダイヤフラム42の変形に伴う圧力伝達溶液Dの流動程度では機能(流動阻止)せず、ダイヤフラム42や導圧管45の亀裂などによる燃料Fのケース41内等への侵入に伴う流動が生じたときに機能するように設定されている。逆止弁45bは、それとタンク10との間の配管部45aが極力短くなるようにして燃料タンク10内に配置されている。複数の配管部45a及び逆止弁45bは、請求項中の部分導圧管に相当する。
【0039】
ケース41、導圧管45及び第1受圧室31aには、例えば、シリコンオイルなどの圧力伝達溶液Dが封入されている。そして、ダイヤフラム42の外面に圧力が加えられると、圧力伝達溶液Dを介して導圧管45に第1圧力P1が出力される。
【0040】
第1漏洩防止膜47は、例えば、ポリエチレンなどの合成樹脂等のエラストマーを用いて薄膜状に形成されており、ケース41、ダイヤフラム42、及び、燃料タンク10内に配置された導圧管45のそれぞれの表面全体を連続して覆うように、これらの表面に密に重ねて設けられている。つまり、第1漏洩防止膜47は、ケース41とダイヤフラム42との接合箇所R1、ケース41と導圧管45との接続箇所R2、及び、導圧管の配管部45aと逆止弁45bとの接続箇所R3、のそれぞれを覆っている。第1漏洩防止膜47は、その機械的物性が柔らかくてねばり強いものが好ましく、ダイヤフラム42の変形に追従して自身も変形し、且つ、ダイヤフラム42の特性及び機能に支障を与えないように設けられている。
【0041】
液相ダイヤフラム部50は、請求項中のダイヤフラム体に相当し、上記気相ダイヤフラム部40と同様の構成を有し、
図2(b)に示すように、ケース51と、ダイヤフラム52と、導圧管55と、第2漏洩防止膜57と、を有している。
【0042】
ケース51は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて、燃料タンク10内の圧力で変形しない剛性を有する略箱形に形成されており、一の面に開口51aが設けられている。ケース51は、上記気相ダイヤフラム部40のケース41と同一形状に形成されている。
【0043】
ダイヤフラム52は、例えば、ステンレスなどの金属材料を用いて薄膜状に形成されており、ケース51内が密閉空間となるように、ケース51の開口51aを塞ぐように配設されている。ダイヤフラム52は、材料、厚み及び面積が上記気相ダイヤフラム部40のダイヤフラム42と同一に形成されている。ダイヤフラム52は、ケース51における開口51aの周囲の箇所に、例えば、接着剤や溶接などによって隙間無く密着して接合されている。このように設けられたダイヤフラム52は、その外面に加わる圧力とその内面に加わる圧力との圧力差に比例して変形する。即ち、ダイヤフラム52は、前記圧力差が大きいほど変形量が多くなり、また自身の面積が大きいほど変形量が多くなる。
【0044】
導圧管55は、一端がケース51に接続され、他端が差圧センサ30の第2受圧室31bに接続されている。つまり、ケース51、導圧管55及び第2受圧室31bは互いに連通されている。導圧管55とケース51とは溶接によって接続されており、そして、導圧管55は、複数の配管部55aと、複数の配管部55aの間に直列に挿入された逆止弁55bと、が互いに溶接によって接続されて構成されている。これらは接着剤などによって互いに接着されていてもよい。逆止弁55bは、ケース51に接続された導圧管55の一端から第2受圧室31bに接続された導圧管55の他端に向かう流体(後述する圧力伝達溶液Dや、気体状又は液体状の燃料Fなど)の所定流量を超える流動を阻止するように設けられている。逆止弁55bは、ダイヤフラム52の変形に伴う圧力伝達溶液Dの流動程度では機能(流動阻止)せず、ダイヤフラム52や導圧管55の亀裂などによる燃料Fのケース51内等への侵入に伴う流動が生じたときに機能するように設定されている。逆止弁55bは、それとタンク10との間の配管部55aが極力短くなるようにして燃料タンク10内に配置されている。複数の配管部55a及び逆止弁55bは、請求項中の部分導圧管に相当する。
【0045】
ケース51、導圧管55及び第2受圧室31bには、例えば、上記気相ダイヤフラム部40と同一の圧力伝達溶液Dが封入されている。そして、ダイヤフラム52の外面に圧力が加えられると、圧力伝達溶液Dを介して導圧管55に第2圧力P2が出力される。なお、ダイヤフラム52は、ダイヤフラム42と材料、厚み及び面積が同一に形成されているので、ダイヤフラム42の外面に加わる圧力とダイヤフラム52の外面に加わる圧力とが同一であれば、第1圧力P1及び第2圧力P2も同一の大きさとなる。
【0046】
第2漏洩防止膜57は、例えば、ポリエチレンなどの合成樹脂等のエラストマーを用いて薄膜状に形成されており、ケース51、ダイヤフラム52、及び、燃料タンク10内に配置された導圧管55のそれぞれの表面全体を連続して覆うように、これらの表面に密に重ねて設けられている。つまり、第2漏洩防止膜57は、ケース51とダイヤフラム52との接合箇所R1、ケース51と導圧管55との接続箇所R2、及び、導圧管の配管部55aと逆止弁55bとの接続箇所R3、のそれぞれを覆っている。第2漏洩防止膜57は、その機械的物性が柔らかくてねばり強いものが好ましく、ダイヤフラム52の変形に追従して自身も変形し、且つ、ダイヤフラム52の特性及び機能に支障を与えないように設けられている。
【0047】
本実施形態において、第1漏洩防止膜47と第2漏洩防止膜57とは、ポリエチレンで構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、ポリエチレン以外にも、フッ素樹脂、エポキシ樹脂など、燃料FであるLPGに対して耐腐食性を有する樹脂材料で構成されていてもよい。
【0048】
気相ダイヤフラム部40は、ダイヤフラム42を燃料タンク10の底壁10bに向けるようにして、燃料タンク10の上壁10a付近に配設されている。そのため、ダイヤフラム42には、気相部TAの気相圧力Paが加わる。気相ダイヤフラム部40は、ダイヤフラム42に気相圧力Paが加わると当該気相圧力Paに比例した第1圧力P1を出力する。当該第1圧力P1は、圧力伝達溶液Dを介して第1受圧室31aに伝達される。
【0049】
また、液相ダイヤフラム部50は、ダイヤフラム52を燃料タンク10の上壁10aに向けるようにして、燃料タンク10の底壁10b付近に配設されている。そのため、ダイヤフラム52には、液相部TLの液相圧力Plが加わる。この液相圧力Plは、気相部TAの気相圧力Paと液相部TLの燃料Fの自重による液圧Pbとを合計した圧力である。燃料タンク10内に収容された燃料Fの液面高さ(深さ)が高いほど、つまり、液量が多いほど上記液圧Pbは高くなり、つまり、液圧Pbは液量に応じた圧力となる。特に、本実施形態においては、燃料タンク10が直方体の箱形状に形成されているので、液圧Pbは液量に比例した圧力となる。液相ダイヤフラム部50は、ダイヤフラム52に液相圧力Plが加わると当該液相圧力Plに比例した第2圧力P2を出力する。当該第2圧力P2は、圧力伝達溶液Dを介して第2受圧室31bに伝達される。
【0050】
そして、第1圧力P1が、差圧検知ダイヤフラム32の一方の受圧面32aに加わり、第2圧力P2が、差圧検知ダイヤフラム32の他方の受圧面32bに加わると、これら第1圧力P1と第2圧力P2とのバランスに応じて差圧検知ダイヤフラム32が変形する。このとき、第1圧力P1は、気相圧力Paに応じた圧力成分のみで構成され、第2圧力P2は、気相圧力Paに応じた圧力成分と液圧Pbに応じた圧力成分とで構成されているので、第1圧力P1と第2圧力P2とのそれぞれに含まれる気相圧力Paに応じた圧力成分が相殺されて、これにより、液圧Pbに応じた圧力成分に比例して差圧検知ダイヤフラム32が変形することになる。そして、差圧検知ダイヤフラム32の変形量に応じて、即ち、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧に応じて、歪みゲージから差圧信号が、制御部60に向けて出力される。
【0051】
また、圧力伝達媒体Dによって第2圧力P2が気相ダイヤフラム部40のケース41まで伝達されて、このケース41内で第2圧力が液相圧力Plとなり、この液相圧力Plがダイヤフラム42の内面に加わる。同様に、圧力伝達媒体Dによって第1圧力P1が液相ダイヤフラム部50のケース51まで伝達されて、このケース51内で第1圧力P1が気相圧力Paとなり、この気相圧力Paがダイヤフラム52の内面に加わる。そのため、ダイヤフラム42及びダイヤフラム52は、気相圧力Pa及び液相圧力Plの差圧に応じて変形する。
【0052】
気相ダイヤフラム部40の製造方法の一例を以下に示す。まず、ケース41の開口41aを塞ぐようにダイヤフラム42を配置して、溶接により当該開口41a周囲の接合箇所R1にダイヤフラム42を接合する。次に、複数の配管部45a及び逆止弁45bを互いに嵌め合って接続するとともに溶接によりこれら接続箇所R3固定して、1本の導圧管45を組み立てる。そして、ケース41に、導圧管45の一端を嵌め込んで接続するとともに溶接によりこれら接続箇所R2を固定する。そして、このようにケース41、ダイヤフラム42及び導圧管45が互いに組み合わされた組立体における燃料タンク10内に収容される部分を、ポリエチレン溶融液に浸したのち引き上げて、ポリエチレンを固化させて第1漏洩防止膜47を形成し、気相ダイヤフラム部40が完成する。液相ダイヤフラム部50についても同様にして製造する。
【0053】
制御部60は、例えば、周知のマイクロコンピュータなどで構成されており、液量推定装置20全体の制御を司る。制御部60のマイクロコンピュータは、中央演算処理装置(CPU)、ROM、RAM、データメモリ、外部インタフェースなどを備えている。
【0054】
CPUは、車両燃料システム1における各種制御を司り、ROMに記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。ROMは、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROMは、CPUを、液量推定手段などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPUは、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAMは、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。データメモリは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの電源断となってもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成されている。このデータメモリには、液量推定処理で用いられる数式やパラメータ等の各種情報が記憶されている。特に、このデータメモリには、差圧信号と燃料タンク10内に収容された燃料Fの液量との関係を示すデータテーブルが記憶されている。外部インタフェースは、上述した差圧センサ30に接続されており、差圧センサ30からの差圧信号が外部インタフェースを通じてCPUに入力される。また、外部インタフェースは、他の電子機器(ECU)と通信可能なように図示しない車両ネットワークに接続されている。
【0055】
CPUは、差圧センサ30からの差圧信号が入力されると、データメモリに記憶されている上記データテーブルを参照して、差圧信号に対応する液量を取得し、この液量に応じた表示信号を生成して、当該表示信号を図示しないコンビネーションメータ(メータECU)に向けて車両ネットワークを通じて送信する。コンビネーションメータは、この表示信号を受信すると、それが有する燃料計に当該表示信号が示す液量を表示する。CPU(制御部60)は、請求項中の液量推定手段に相当する。
【0056】
次に、上述した車両燃料システムにおける本発明に係る動作(作用)について、
図3(a)、(b)を参照して説明する。
【0057】
気相ダイヤフラム部40は、気相圧力Paに応じた第1圧力P1を出力し、液相ダイヤフラム部50は、液相圧力Plに応じた第2圧力P2を出力する。そして、ダイヤフラム42が気相圧力Pa及び液相圧力Plの圧力差に応じて変形を繰り返すと、ケース41とダイヤフラム42との接合箇所R1に亀裂Kが生じる場合があるが、
図3(a)に示すように、第1漏洩防止膜47が、接合箇所R1を覆うようにケース41及びダイヤフラム42に密に重ねて設けられているので、当該亀裂Kが第1漏洩防止膜47によって塞がれて、ケース41内の圧力伝達溶液Dが漏れたり、また、ケース41外の気化状態の燃料Fがケース41内に侵入したりすることがない。また、万が一、第1漏洩防止膜47が破損して上記亀裂Kからケース41内に燃料Fが侵入した場合でも、逆止弁45bによって、上記燃料Fの侵入に伴う、ケース41から第1受圧室31aに向かう当該燃料Fや圧力伝達溶液Dなどの流体の流れが阻止される。液相ダイヤフラム部50においても同様である。
【0058】
以上より、本発明によれば、気相ダイヤフラム部40は、ケース41とダイヤフラム42との接合箇所R1を少なくとも覆うようにケース41とダイヤフラム42とのそれぞれに密に重ねて設けられた第1漏洩防止膜47を有している。そして、ダイヤフラム42に生じる亀裂Kは、変形時の応力が集中するケース41との接合箇所R1に生じやすく、そのため、このような接合箇所R1に第1漏洩防止膜47を設けることにより、上記亀裂Kが生じた場合でも第1漏洩防止膜47でその亀裂Kが塞がれて、当該亀裂Kからケース41外に圧力伝達溶液Dが漏れたり、当該亀裂Kからケース内に燃料Fが侵入したり、することを防止できる。
【0059】
また、気相ダイヤフラム部40は、ケース41と別体に設けられるとともに当該ケース41に接続された導圧管45を有し、第1漏洩防止膜47が、ケース41と導圧管45との接続箇所R2を覆うようにこれらケース41と導圧管45とに密に重ねて設けられている。そして、気相ダイヤフラム部40が車両などに搭載された場合に、走行時の振動などによりケース41と導圧管45との溶接による接続箇所R2に亀裂や隙間などが生じてしまうことがあり、そのため、このような接続箇所R2に第1漏洩防止膜47を設けることにより、亀裂などが生じた場合でも第1漏洩防止膜47でその亀裂などが塞がれて、当該亀裂などからケース41外に圧力伝達溶液Dが漏れたり、当該亀裂などからケース41内に燃料Fが侵入したり、することをさらに防止できる。
【0060】
また、気相ダイヤフラム部40は、導圧管45が、互いに接続された複数の配管部45a及び逆止弁45bで構成されており、第1漏洩防止膜47が、これら複数の配管部45a及び逆止弁45bの接続箇所R3を覆うように配管部45a及び逆止弁45bに密に重ねて設けられている。そして、気相ダイヤフラム部40が車両などに搭載された場合に、走行時の振動などにより複数の配管部45a及び逆止弁45bの間の溶接による接続箇所R3に亀裂や隙間などが生じてしまうことがあり、そのため、このような接続箇所R3に第1漏洩防止膜47を設けることにより、亀裂などが生じた場合でも第1漏洩防止膜47でその亀裂などが塞がれて、当該亀裂などから導圧管45外に圧力伝達溶液Dが漏れたり、当該亀裂などから導圧管45内に燃料Fが侵入したり、することをさらに防止できる。
【0061】
また、気相ダイヤフラム部40の導圧管45には、ケース41に接続された一端から反対の他端に向けて流れる流体の流動を阻止する逆止弁45bが設けられているので、例えば、ケース41内や導圧管45内の圧力がこれらケース41や導圧管45が設置されたタンク10内の圧力より低く保たれている構成においては、この導圧管45の他端に接続される差圧センサ30についてもケース41内等の圧力を基に耐圧が設計されている場合があり、この場合に、ケース41内に亀裂や隙間から高圧の燃料Fなどの流体が侵入すると、ケース41や導圧管45内の圧力が高まり、この圧力が差圧センサ30まで達し当該差圧センサ30が破損して燃料Fなどが外部に漏洩してしまうという問題があるが、この逆止弁45bにより燃料Fや圧力伝達溶液Dなどの流体の流動を導圧管45内で阻止して、燃料Fなどが外部に漏れてしまうことをさらに防止できる。
【0062】
また、気相ダイヤフラム部40の第1漏洩防止膜47が、ポリエチレンで構成されているので、ポリエチレンは、LPGに対して耐腐食性を有し、そのためLPGを圧力測定対象物とする場合において、第1漏洩防止膜47の腐食による劣化を回避して、耐久性を向上できる。
【0063】
上記効果は、液相ダイヤフラム部50においても同様に奏するものである。
【0064】
本実施形態において、気相ダイヤフラム部40及び液相ダイヤフラム部50のそれぞれに、第1漏洩防止膜47及び第2漏洩防止膜57が設けられていたが、これら漏洩防止膜は、少なくとも一方のダイヤフラム部(即ち、ダイヤフラム体)に設けられていればよい。
【0065】
また、本実施形態において、気相ダイヤフラム部40の第1漏洩防止膜47は、ケース41、ダイヤフラム42、及び、燃料タンク10内に配置された導圧管45のそれぞれの表面全体を連続して覆うように、これらの表面に密に重ねて設けられているものであったが、これに限定されるものではない。例えば、
図4(a)に示すように、ケース41とダイヤフラム42との接合箇所R1を少なくとも覆うようにケース41とダイヤフラム42とに重ねて設けられていればよく、より好ましくは、
図4(b)に示すように、接合箇所R1に加えて、ケース41と導圧管45との接続箇所R2、又は/及び、導圧管の配管部45aと逆止弁45bとの接続箇所R3、についても覆うようにケース41、配管部45a及び逆止弁45bに重ねて設けられていればよい。液相ダイヤフラム部50の第2漏洩防止膜57についても同様である。
【0066】
上述した第1漏洩防止膜47及び第2漏洩防止膜57は、ポリエチレンである樹脂材料により構成されているものであったが、これに限定されるものではない。これら第1漏洩防止膜47及び第2漏洩防止膜57は、燃料タンク10内に収容される燃料Fなどの液体に対して耐腐食性を有する樹脂材料により構成されるのが好ましい。液体と樹脂材料との組み合わせの一例を挙げると、例えば、液体がLPGであれば、ポリエチレン、フッ素樹脂、及び、エポキシ樹脂の中から選択される樹脂材料、また、液体がジメチルエーテル(DME)であれば、フッ素樹脂、フェノール樹脂、及び、フラン樹脂の中から選択される樹脂材料、また、液体がアンモニアであれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ABS樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アセタールの中から選択される樹脂材料、により第1漏洩防止膜47及び第2漏洩防止膜57が構成されるのが好ましい。このような組み合わせとすることで、漏洩防止膜の腐食による劣化を回避して、耐久性を向上できる。
【0067】
上述した実施形態は、車両に搭載され、液化ガスを収容するとともにその液量を推定する車両燃料システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置され、各種液体燃料や各種薬液などを収容するとともにその液量を推定する液量推定システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意である。また、液量の推定対象となる液体についても、液化石油ガスに限らず、例えば、窒素、酸素、アンモニアのなどの工業用途の液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)、各種薬液等、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
【0068】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 車両燃料システム(液量推定システム)
10 燃料タンク(液体タンク)
20 液量推定装置
25 差圧測定ユニット
30 差圧センサ
40 気相ダイヤフラム部(ダイヤフラム体)
41 ケース
42 ダイヤフラム
45 導圧管
45a 配管部(部分導圧管)
45b 逆止弁(部分導圧管)
47 第1漏洩防止膜(漏洩防止膜)
50 液相ダイヤフラム部(ダイヤフラム体)
51 ケース
52 ダイヤフラム
55 導圧管
55a 配管部(部分導圧管)
55b 逆止弁(部分導圧管)
57 第2漏洩防止膜(漏洩防止膜)
60 制御部(液量推定手段)