【実施例1】
【0014】
実施例1に係る流体管分岐装置につき、
図1ないし
図9を参照して説明する。本発明の流体管分岐装置は、流体管1の外周面に密封状に外嵌されるケース体3と、ケース体3内を進退移動することで流体管1に作業孔4を穿設する穿孔装置50Aと、作業孔4の対向位置に作業孔4を介して分岐孔5を穿設する穿孔装置50Bと、作業孔4側を閉塞する本発明の閉塞手段である閉塞体6と、から構成され、分岐孔5を介して流体管1内を流れる流体を不断流状態で分岐させる流体管分岐装置である。
【0015】
本実施例の流体管1は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面が図示しない樹脂粉体塗装あるいはモルタル層等で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0016】
図1,2に示されるように流体管1は、上部ケース体3aと下部ケース体3bとから成るケース体3によって密封状に外嵌されている。より詳しく説明すると、上部ケース体3aは、流体管1の外周の上側を被覆しており、流体管1の管軸と略直交方向に延設される作業管部11を備え、下部ケース体3bは、流体管1の外周の下側を被覆しており、作業管部11と対向する側に延設される分岐管部12を備えている。これ等上部ケース体3a及び下部ケース体3bが、流体管1を挟む位置で対向し、ボルト・ナット20により締結されることでケース体3が形成される。
【0017】
図2に示されるように、ケース体3は、流体管1の外周面との間に中空の領域である連通部13を備えており、この連通部13を介して作業管部11及び分岐管部12が連通している。また、ケース体3における流体管1の軸方向の両端部には、ケース体3の内周面と流体管1の外周面との間隙に介設されるシール部材15、15が配設され、これによりケース体3内が密封状となっている。更に、ケース体3は、シール部材15、15に隣接して配置される押輪19,19によって移動防止されているとともに、押輪19,19がシール部材15、15をケース体3内方に圧接し、当該圧接状態で押輪19,19とケース体3とがボルト・ナット21によって接続されることでケース体3内が密封状に維持されている。
【0018】
このように流体管1にケース体3を密封状に外嵌させた後、ケース体3内に流体を流し込むとともに、圧力ゲージ9でケース体3内の圧力を確認しながらケース体3内に流体圧を加え、ケース体3の内周面と流体管1の外周面との間隙の密封性を事前に確認する。
【0019】
上記のようにケース体3の内周面と流体管1の外周面との間隙の密封性を確認した後、分岐管部12には、
図1に示したように分岐管部12に連通し下流側に配置される排出管14が接続される。この排出管14には、分岐孔5が穿設される際にケース体3内の流体を外部へ排出可能な排出開口14aと、この排出開口14aを開閉可能な弁体14bと、が設けられている(
図5参照)。尚、本発明のケース体は、3体以上の複数の分割体からなる分割構造であってもよいし、若しくは分割構造を有さず、鋳型、或いは、溶接加工や機械加工等で連続形成されていても構わない。
【0020】
先ず、
図3ないし
図5に示されるように、作業管部11の上フランジ11aには、作業弁36を配設した作業弁ケース35を密封状に接続し、この作業弁ケース35の上方には外ケース37を介して穿孔装置50Aを接続する。この穿孔装置50Aは、
図3に示されるモータ等の駆動手段が内設された駆動部55に接続され、作業管部11内を流体管1に向け軸方向に進退移動するとともに軸周りに回転する軸部材51aと、軸部材51aの先端に設置され、作業孔4を穿設する第1カッタ部材52aと、軸部材51aと同軸方向に延設され、第1カッタ部材52aの穿孔刃よりも進行方向に突設された第1センタードリル53aと、から主として構成されている。本実施例では、後述する穿設前に、予め作業管部11、連通部13及び分岐管部12内の空気を抜くとともに、流体管1内と同じ流体で充満させておく。このとき、排出管14の排出開口14aは、弁体14bによって閉鎖状態とされている。
【0021】
図4及び
図5に示されるように、前記駆動部55によって軸部材51aを回転させながら流体管1に向けて進行させることで、第1カッタ部材52aが流体管1の管頂に外周面からアプローチするとともに、作業管部11を介して作業孔4を穿設する。このときには、先ず第1センタードリル53aが流体管1の管頂に当接し、第1センタードリル53aによって第1カッタ部材52aが案内され、安定した状態で作業孔4を穿設することができる。更に、ケース体3には、穿孔時に発生する切粉等の夾雑物を外部へ排出可能なドレン16が作業孔4を穿設する位置の近傍に設けられており、前記夾雑物がケース体3内の流体と共にドレン16を介して外部へ排出される。
【0022】
図5に示されるように、作業孔4の穿設に伴い、作業孔4を介して流体管1内と作業管部11、連通部13及び分岐管部12内とが連通するようになり、すなわち、流体管1内と分岐管部12内とが同圧となる。尚、穿設前に、予め作業管部11、連通部13及び分岐管部12内を流体管1内と同じ流体で充満させずともよく、この場合、作業孔4の穿設に伴い、作業孔4を介して流体管1内の流体が作業管部11に流入し、更に連通部13を介して分岐管部12に流入して、やがてケース体3及び排出管14内に充満するようになり、すなわち、流体管1内と分岐管部12内との圧力差が解消され同圧となる。
【0023】
次に、
図6ないし
図8に示されるように、作業弁36によって作業管部11内を閉塞するとともに、穿孔装置50Aに替えて、穿孔装置50Bを取り付ける。この穿孔装置50Bは、
図6に示されるモータ等の駆動手段が内設された駆動部55’に接続され、前記した軸部材51aよりも長寸を有する軸部材51bと、第1カッタ部材52aよりも小径であり、分岐孔5を穿設する第2カッタ部材52bと、第2カッタ部材52bの穿孔刃よりも進行方向に突設されるとともに、第1センタードリル53aよりも長寸に突出した第2センタードリル53bと、から主として構成されている。
【0024】
図6に示されるように、先ず、ケース体3から分岐するホース39を接続し、ケース体3内と外ケース37内とを連通させ、ケース体3及び外ケース37内の空気を抜いて流体管1内と同じ流体で充満させて、作業弁36を境にしたケース体3側と外ケース37側とを同圧とする。このため、第2カッタ部材52bの進退移動が容易となる。次いで
図7に示されるように、排出管14の排出開口14aに排出ホース14cを接続するとともに、弁体14bによって排出開口14aを開放状態とする。この排出開口14aは、分岐孔5を穿設する際において作業孔4と第2カッタ部材52bとの間隙領域よりも小さい開口領域を有しており、排出開口14aから排出ホース14cを介して外方へ排出される流体の流量は、作業孔4からケース体3内に流出される流体の流量よりも少なくなっている。そのため、作業孔4から流出する流体がケース体3内に充満した状態を維持することができる。
【0025】
そして、前記駆動部55’によって軸部材51bを回転させながら流体管1に向けて進行させることで、第2カッタ部材52bが作業孔4を介し、作業孔4と対向位置に流体管1の内周面側からアプローチする。このときには、第1カッタ部材52aにより比較的大径の作業孔4が穿設されているとともに、第1カッタ部材52aを第2カッタ部材52bに取り替え、第2カッタ部材52bが作業孔4を介して進行移動することで作業孔4に引っかかることなく、容易に作業孔4の対向位置へアプローチできる。
【0026】
図8に示されるように、第2カッタ部材52bを作業孔4の対向位置にアプローチすると、第2センタードリル53bが第1センタードリル53aよりも進行方向に長寸に突設形成されていることにより、先ず第2センタードリル53bが前記対向位置に当接するようになる。すなわち、第2センタードリル53bによって第2カッタ部材52bが案内され、安定した状態で分岐孔5を穿設することができる。このとき、分岐孔5を穿設時に形成される切粉等の夾雑物を排出開口14aから排出ホース14cを介し、流体と共に外部へ排出することができる。
【0027】
従来、ケース体が流体管の外周面に密接して配設されているため、分岐孔の穿孔前における流体管内と分岐管部内との圧力差が穿孔時の過大な負荷の原因となっていたが、本発明の流体管分岐装置においては、上述したように、分岐孔5の穿孔前に連通部13を介して流体管1内と分岐管部12とが同圧となっているため、分岐孔5を穿設する際に流体管1に過大な負荷がかかることが防がれるとともに、穿孔装置50Bを用いて容易に分岐孔5を穿設することができる。
【0028】
そして、第2センタードリル53bが流体管1の管壁を貫通すると、作業孔4よりも小径の分岐孔5が形成される。このときにも、流体管1内と分岐管部12内とが同圧となっているため、分岐孔5から噴出する流体圧によって下流側に配設される排出管14等の配管に過大な負荷をかけず、影響を及ぼすことが防がれる。また、分岐孔5の穿設時に流体の大きな流動及び圧力変動が生じないため、分岐孔5の穿設により生じる切片を安定して回収することができる。
【0029】
その後、前記駆動部55’によって軸部材51bを退行させる。このときには、第2カッタ部材52bが第1カッタ部材52aにより穿設された作業孔4よりも小径であることから、第2カッタ部材52bが作業孔4の周縁面に引っかかることがなく、流体管1及び第2カッタ部材52bに損傷を与えず容易に穿孔作業を完了することができる。
【0030】
第2カッタ部材52bの退行移動が完了すると、作業弁36によって作業管部11内を閉塞するとともに、穿孔装置50Bに替えて、図示しない挿入機を取り付ける。該挿入機は、
図9に示されるように、閉塞体6が先端に取り付けられた挿入軸17を備えており、この挿入軸17は作業孔4に向けて進退移動可能となっている。この挿入軸17を作業孔4に向けて進行させることにより、作業管部11内に閉塞体6を設置し、作業孔4側を密封状に閉塞する。したがって、分岐孔5を介して流体管1内を流れる流体を不断流状態で分岐することができるようになる。尚、本発明の閉塞手段は、作業孔側からの流体の流出を閉塞するもの、詳しくは作業孔自体からの流体の流出及び連通部を介し作業孔に回り込む流体の流出を閉塞するものであれば、本実施例のように作業管部11の先端部に設置される閉塞体6でもよいし、あるいは作業管部の基端部に設置されるものでも構わない。すなわち本発明の作業孔側を閉塞する閉塞手段とは、作業孔自体からの流体の流出及び連通部を介し作業孔に回り込む流体の流出を閉塞する手段を意味する。
【0031】
以上説明したように、本発明の流体管分岐装置は、流体管1の外周面に密封状に外嵌されるケース体3と、該ケース体3内を進退移動することで流体管1に作業孔4を穿設するとともに、作業孔4の対向位置に作業孔4を介して分岐孔5を穿設する穿孔装置50A、50Bと、作業孔4側を閉塞する閉塞体6と、から成り、分岐孔5を介して流体管1内を流れる流体を不断流状態で分岐させる流体管分岐装置であって、ケース体3には、作業孔4を穿設するための作業管部11と、流体管1における分岐孔5に連通する分岐管部12と、作業管部11及び分岐管部12に連通する連通部13と、が設けられている。この特徴によれば、作業管部11を介し作業孔4を穿設した際に、作業孔4から流出した流体が連通部13を介して分岐管部12に流入し、流体管1内と分岐管部12内との圧力差を解消して同圧とすることができ、分岐孔5を穿設する際に流体管1に負荷がかかることが防がれるとともに、穿孔装置50Bによって容易に分岐孔5を穿設することができる。さらに、分岐孔5を穿設後には、流体管1内と分岐管部12内とが同圧となっているため、分岐孔5から噴出する流体圧によって下流側に配設される排出管14等の配管に影響を及ぼすことが防がれる。
【実施例2】
【0032】
次に、実施例2に係る流体管分岐装置につき、
図10及び
図11を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。
【0033】
先ず、前記実施例と同様の手順によって穿孔装置50Aを用いて作業孔4を穿設するとともに、穿孔装置50Bを用いて分岐孔5を穿設する。分岐孔5を穿設した後、第2カッタ部材52bを退行移動させ、作業弁36によって作業管部11内を閉塞するとともに、穿孔装置50Bに替えて、図示しない挿入機を取り付ける。
【0034】
前記挿入機は、前記実施例の挿入軸17と、
図10に示されるように、挿入軸17より長寸であり分岐孔5に嵌合する略円筒状の防錆コア7が先端に配設された挿入軸27と、を取り替え可能に備えている。この挿入軸27は、挿入軸27と直交方向に延設された断面視略T字形状の延設部27aを備えており、延設部27aの延設方向の両端部には、進行方向に突設された凸部27bが形成されている。更に、挿入軸27は、防錆コア7の上端面に当接する押え部27cが延設部27aと直交方向に延設されている。この押え部27cは、比較的弾性を有する材料によって形成されている。
【0035】
また、防錆コア7は、分岐孔5に沿って略環状に形成された環状部材7aと、環状部材7aの外周面に設けられ、流体管1の金属素地が露出した分岐孔5に亘って当接することで防錆する防錆部材7bと、を備えている。この環状部材7aは、断面視略コ字形状をなしており、分岐孔5に嵌合可能となっているとともに、平面視における環状部材7aの内周部は、その軸方向に連通している。更に、環状部材7aの上端面には、挿入軸27に接続される被接続部7cが凸部27bと対応する位置に突出形成されている。尚、防錆部材7bは、例えばゴムや合成樹脂等から成る比較的弾性変形し易い柔軟な材質の部材から形成されており、当該材質の部材が環状部材7aの外周面に亘って固着されている。
【0036】
挿入軸27と防錆コア7との接続態様を詳しく説明すると、
図10の囲い部に示されるように、挿入軸27の凸部27bには、凸部27bよりも進行方向に突設され、防錆コア7を接続する接続部材18が設けられており、この接続部材18は、弾性により内径方向に向けて付勢されている係合部18aを有している。更に、環状部材7aの被接続部7cには、内径方向に凹設された凹部7dを有している。接続部材18が被接続部7cに嵌合するとともに、係合部18aが凹部7dに係合し、係合部18aの内径方向、すなわち凹部7dに向けて付勢される力によって防錆コア7が挿入軸27に取り付けられている。
【0037】
防錆コア7が接続された挿入軸27を分岐孔5に向けて進行させることにより、防錆コア7が分岐孔5に嵌合される。これによって、流体管1の金属素地が露出した分岐孔5の内周面が防錆コア7の防錆部材7bによって被覆され、分岐孔5に錆びが発生することを防止できる。更に、防錆コア7に別段の連通箇所を設ける工程を必要とせず、環状に形成された環状部材7aの内周部を利用して流体管1内と分岐管部12内とに流体を連通させることができる。またこのときには、防錆コア7が押え部27cによって流体管1に向けて押圧されている。
【0038】
その後、挿入軸27を退行移動させ、挿入軸27から防錆コア7を取り外す。この際には、防錆コア7が押え部27cによって分岐孔5に嵌合された状態を保持されながら、挿入軸27の退行移動に伴って係合部18aが凹部7dから外れるようになる。
【0039】
そして、作業弁36によって作業管部11内を閉塞するとともに、挿入軸27に替えて挿入軸17を前記挿入機に取り付ける。
図11に示されるように、挿入軸17の先端に取り付けられた本実施例における閉塞手段である閉塞体61は、作業孔4に嵌合する防錆部62が設けられている。防錆部62は、作業孔4に向けて延設される環状の筒状体62aと、筒状体62aの先端の外周面には、流体管1の金属素地が露出した作業孔4の内周面に亘り当接する防錆部材62bと、から構成されている。この筒状体62aには、筒状体62aの径方向に貫通する貫通孔62cを有している。また、防錆部材62bは、例えばゴムや合成樹脂等から成る比較的弾性変形し易い柔軟な材質の部材から形成されている。
【0040】
前記実施例と同様の手順により、この挿入軸17を作業孔4に向けて進行させることにより、作業管部11内に閉塞体61を設置し、作業孔4側を密封状に閉塞する。このときには、閉塞体61が作業孔4側を密封状に閉塞すると同時に、防錆部62の防錆部材62bが作業孔4の内周面に亘り当接するため、作業孔4が防錆される。尚、前述したように閉塞体61の筒状体62aには貫通孔62cが形成されているため、閉塞体61の設置時に、貫通孔62cを介し該閉塞体61の内外を同圧にできるため、閉塞体61を過度に押圧することなく容易に設置できる。
【0041】
このように、閉塞体61に防錆部62が設けられていることにより、作業孔4に錆びが発生することを防止できるとともに、別途に作業孔4を防錆する工程を行うことなく、作業孔4側を閉塞体61によって閉塞すると同時に作業孔4の防錆が行われるため、作業を簡略化できる。更に、作業孔4から筒状体41a内に流入する流体は、貫通孔62cを介して作業管部11内と筒状体62a内とに連通可能になっているため、該流体の滞留領域が形成されず、流体管1及びケース体3内の流体を清浄に保つことができる。
【0042】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0043】
例えば、前記実施例では、穿孔装置50Aによって作業孔4を穿設し、その後穿孔装置50Aを穿孔装置50Bに替えて分岐孔5を穿設しているが、これに限られず、第1カッタ部材及び第1センタードリルで作業孔を穿設した後、第2カッタ部材及び第2センタードリルのみを取り替えて分岐孔を穿設するようにしてもよい。
【0044】
また、例えば、センタードリルを軸部材の先端に固着し、第1カッタ部材及び第2カッタ部材のみを取り替えるようにしてもよく、センタードリルが第1カッタ部材から進行方向に突設される寸法よりも、センタードリルが第2カッタ部材から進行方向に突設される寸法の方が長寸に形成されるものであれば構わない。
【0045】
また、閉塞手段は、前記実施例の閉塞体のみに限られず、例えば空気弁や消火栓などの接続部材を用いて作業孔側を閉塞しても構わない。